説明

発光装置

【課題】Ag反射膜を用いて光の取り出し効率を良好に維持したまま、Ag反射膜と透光性基板との剥がれを抑制し、信頼性の高い発光装置を提供する
【解決手段】第1の主面と第2の主面とを有する透光性基板12の第1の主面上に半導体層14が形成されてなる発光素子10と、
前記第2の主面上に形成されたAg又はAg合金の反射層16と、
前記反射層16側が共晶合金22により接合されるリードフレーム24と、を有し、
前記リードフレーム24は、Feを含む合金からなる第1の金属部材26と、前記第1の金属部材と異なる金属からなる第2の金属部材28とが接合されてなるクラッド材からなることを特徴とする発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、照明器具、ディスプレイ、液晶ディスプレイのバックライト光源等に利用可能な発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な電子部品が提案され、また実用化されており、これらに求められる性能も高くなっている。特に、電子部品には、厳しい使用環境下でも長時間性能を維持することが求められている。発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)をはじめとする発光装置も同様で、一般照明分野、車載照明分野等で求められる性能は日増しに高まっており、更なる高出力(高輝度)化、高信頼性が要求されている。
【0003】
従来から、サファイア等の基板上に半導体発光素子構造及び電極を形成し、得られた発光素子を、共晶半田などを介して、実装基板に実装することによって半導体装置が製造されている。このような半導体発光素子において、光の出力を増大させるために、例えば発光素子の基板側を実装基板に固定する場合、基板裏面に反射層を設け、素子構造側への光の反射率を向上させて、光の取り出し効率を上げるという方法がある。
【0004】
具体的には、発光素子の基板裏面に、金属積層体を形成する(反射層としてAg等、基板と反射層との間に密着層としてTi等、Auを含む共晶半田でダイボンドを行うときに共晶半田との密着性を向上させるためのAu層、等を積層)及びダイボンド材料としてAu−Sn系半田等を用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−72148号公報
【0006】
現在、反射膜としてAlやAlを用いた合金が用いられることが多いが、照明用途等での使用のためにさらに高輝度・高出力の半導体発光素子が求められており、光取り出し効率の向上が必要とされている。そのため、さらに反射率に優れた膜が求められている。
一方、反射率の高いAgを用いて反射膜を形成する場合には、理論上光取り出し効率はよくなるが、基板、特に透光性基板とAg反射膜との密着性が悪く、熱衝撃試験時に剥がれが生じるという問題があった。さらには、実装基板への放熱性が低下して電流−光出力特性が悪化し、高出力化が困難となってしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、Ag反射膜を用いて光の取り出し効率を良好に維持したまま、Ag反射膜と透光性基板との剥がれを抑制し、信頼性の高い発光装置を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る発光装置は第1の主面と第2の主面とを有する透光性基板の第1の主面上に半導体層が形成されてなる発光素子と、前記第2の主面上に形成されたAg又はAg合金の反射層と、前記反射層側が共晶合金により接合されるリードフレームと、を有し、前記リードフレームは、Feを含む合金からなる第1の金属部材と、前記第1の金属部材と異なる金属からなる第2の金属部材とが接合されてなるクラッド材からなることを特徴とする。
【0009】
また、前記発光装置は、さらに以下の構成を有していることが好ましい。
第2の金属部材が、Cuを含んでなる。
リードフレームに樹脂パッケージが接合されてなる。
リードフレームが凹部を有し、前記凹部に前記発光素子が載置される。
第1の金属部材がInver又はSPCCである。
リードフレーム内において、前記第1の金属部材は、前記第2の金属部材よりも前記反射層に近い位置に配置されている。
クラッド材の上面において、前記第1の金属部材及び前記第2の金属部材が露出されてなる。
クラッド材の端部が電極端子とされており、前記電極端子の端面には前記第1の金属部材が露出されない。
リードフレームの板厚方向において、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とが積層配置されてなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る発光装置によれば、Ag反射膜を用いて光の取り出し効率を良好に維持したまま、Ag反射膜と透光性基板との剥がれを抑制し、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の一例を示す平面図である。
【図2】図2は、図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図3は、図1における発光素子の近傍を示す図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る発光装置の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1に、本発明の第1実施形態に係る発光装置100を平面図で示す。また、図2は図1のA−A線断面図であり、図3は図1の発光素子10の近傍を発光素子の側面側から見た図である。
発光装置100は、リードフレーム24に発光素子10が載置されてなる。発光素子10の周囲にリフレクタを形成するように、光反射性樹脂からなる樹脂パッケージ36がリードフレーム24に接合され、樹脂パッケージ36によりリフレクタを内側面とする凹部48が形成されている。この凹部48の底面に露出して配置されたリードフレーム24に発光素子10が6個載置されており、リードフレーム24の表面と導電ワイヤ40により電気的に接続されている。
【0014】
さらに、発光素子10が載置されていない側のリードフレームには保護素子42が載置され、発光素子10が載置されている側のリードフレームと導電ワイヤにより電気的に接続されている。発光素子10と保護素子42が収納された凹部48内には、封止樹脂38が充填されている。リードフレーム24は、その外形が略直方体の樹脂パッケージ36の対向する側面からそれぞれ外部に突出されて、正負一対の電極端子とされている。
【0015】
発光素子10は、図3に示すように、第1の主面と第2の主面とを有する透光性基板12の第1の主面上に半導体層14が形成されており、第2の主面上にはAg又はAg合金からなる反射層16を有している。半導体層14には、導電ワイヤ40等を接続するための正電極32及び負電極34が形成されている。
【0016】
発光素子10は、反射層16側において共晶合金22によりリードフレーム24と接合されている。なお、反射層16と共晶合金22の間には、さらに別の金属膜を有していてもよい。例えば、リードフレーム24との密着性を高めるための密着膜や、反射層の材料が拡散することを防ぐバリア層などである。これらの金属膜としては、例えば、Rh、Ru、Pt、Pd、Os、Ir、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Co、Fe、Mn、Mo、Cr、W、Au等の金属又はこれらの合金が挙げられる。
図3では、反射層16の下にNi膜18、Rh膜20、Au膜21がこの順に形成されており、Au膜21と共晶合金22が接合されている。
【0017】
本実施形態において、リードフレーム24は、Feを含む合金からなる第1の金属部材26と、第1の金属部材26と異なる金属からなる第2の金属部材28とが接合されてなるクラッド材である。第1の金属部材26と、第2の金属部材28との接合界面は拡散結合されており、合金間での剥離が生じないように形成されている。第1の金属部材26として、リードフレームとして通常用いられるCuよりも線膨張係数の低いFeを含有させることにより、リードフレームの線膨張係数を低下させて透光性基板12の線膨張係数と近づけることができるため、Ag反射膜と透光性基板との剥がれを抑制することができる。
【0018】
第1の金属部材26の具体例としては、Inver、SPCC、Kovar、SUS等が挙げられる。なかでも、汎用性や加工性に優れたSPCC又は常温付近での熱膨張率が小さいInverを用いることが好ましい。
【0019】
第1の金属部材26はFeを含むことにより磁性を有している。これにより、発光装置が実装される側に磁石を配置して、実装時の位置決めに用いることができる。
【0020】
第2の金属部材28の具体例としては、Cu、Al、Ni等の金属が挙げられる。なかでも、放熱性に優れるCuを用いることが好ましい。特に、無酸素銅であることが好ましい。無酸素銅は不純物が少なく、Cu系材料の中で最も熱伝導率が高いためである。
【0021】
また、第1の金属部材26を、線膨張係数を下げる目的で使用する一方で、第2の金属部材28の材料は所望の目的により選択することができる。
例えば、電極端子として用いる部分にCuを用いることで、半田付けが容易かつ放熱性に優れた発光装置とすることができる。
また、パッケージ樹脂36との接合部分には無酸素銅を用いることで、パッケージ樹脂36とリードフレーム24との密着性が向上し、これらの剥離を抑制することができる。これは、無酸素銅が、通常用いられるCuよりも柔らかいため、加工断面が粗くなり、パッケージ樹脂との密着性が向上するためと考えられる。
【0022】
さらに、電極端子を実装基板等に実装する際に、実装基板と電極端子との線膨張係数の差が有りすぎると、半田クラックなどが生じてしまうため、実装基板との線膨張係数の差も考慮して第1の金属部材26及び第2の金属部材28の材料を選択することが好ましい。
【0023】
本実施形態のクラッド材は、図2に示すようにリードフレーム24の板厚方向において、第1の金属部材26と第2の金属部材28とが積層配置されてなる、いわゆるオーバーレイ型のクラッド材である。図2では、3層構造としたが、2層であっても良いし、4層以上であっても良い。
【0024】
本実施形態のように、板厚方向において、第1の金属部材26の両側が等しい厚みの第2の金属部材28により挟まれるようにすることにより、熱によるリードフレームの変形を抑制することができる。なお、板厚方向に積層することにより、リードフレーム24の端面においては、第1の金属部材26が露出されている。
【0025】
なお、積層された第1の金属部材の配置箇所は、図2の例に限定されない。例えば、リードフレームの板厚方向の最上面に第1の金属部材26を配置してもよい。これにより、リードフレーム内において、第2の金属部材よりも第1の金属部材のほうが反射層16に近い位置に配置されることとなるため、反射層16近傍での熱膨張係数を下げ、Ag反射膜と透光性基板との剥がれを効果的に抑制することができる。
【0026】
以下、本発明に係る実施形態の各構成について、図1〜3を参照しながら詳述する。
(透光性基板12)
透光性基板としては、特に限定されるものではなく、例えば窒化物半導体層を成長させる基板としてサファイア、スピネル、NGO基板、LiAlO基板、LiGaO基板、GaN等が挙げられ、好ましくは酸化物基板であり、更に好ましくはウルツ鉱型結晶である。なかでもサファイア基板が最も有効である。これは、比較的硬質な酸化物基板、さらにはウルツ鉱型結晶の基板とAg又はAg合金の反射層との密着性が低くなる傾向にあり、特に、サファイア基板とAg又はAg合金の反射層との密着性は極端に悪いため、Ag又はAg合金の反射層を透光性基板表面に形成すると接合強度が問題となるが、本発明の構成によって、接合強度が低くても剥がれを生じさせ難くすることができるからである。
【0027】
(半導体層14)
透光性基板の第1の主面上に形成される半導体層14は、少なくとも発光構造を有する。透光性基板12の第2の主面上に設けられるAg又はAg合金からなる反射層16は、可視光域における反射率の波長依存性が比較的大きく、特に、近紫外域から長波長側において、反射率が急激に増大する。よって、発光素子の発光波長は、このような好適な反射率が利用できる波長とすることが好ましい。具体的には、350nm以上、好ましくは380nm以上、更に好ましくは400nm以上の波長域(赤色まで)において、優れた発光効率の発光素子とすることができる。
【0028】
(反射層16)
透光性基板12の第2の主面上に形成されるAg又はAg合金の反射層16は、半導体層から発光された光を反射させて、光を効率的に取り出す層である。また、反射層としてAg又はAg合金を用いることにより、放熱性の良好な発光装置とすることができる。そのため、大電流を流したときの発熱を緩和することができ、素子を高出力することが可能となる。
【0029】
反射層16は、透光性基板12に接触して形成されていることが好ましい。Ag又はAg合金層は、ここに照射された光を効率的に反射させること及び透光性基板12との応力を考慮して、例えば200Å〜1μm程度が適当である。
【0030】
Ag合金としては、Agと、Pt、Co、Au、Pd、Ti、Mn、V、Cr、Zr、Rh、Cu、Al、Mg、Bi、Sn、Ir、Ga,Nd及びReからなる群から選択される1種又は2種以上の合金が挙げられる。
【0031】
(共晶合金22)
好ましい共晶合金としては、AuとSnを主成分とする合金、AuとSiとを主成分とする合金、またはAuとGeとを主成分とする合金などが挙げられる。これらの中でも特にAu−Snの共晶合金が好ましい。Au−Snの共晶合金膜を用いると、熱圧着によるAg又はAg合金の反射層16の劣化が少なく、また、実装された際の強度も強いという利点がある。
【0032】
(樹脂パッケージ36)
樹脂パッケージ36は、リードフレーム24を固定する部材である。発光素子10からの光を反射可能な反射面(凹部48の側壁)を有するものが好ましい。好ましい材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂を用いることができ、具体的にはエポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、シリコーン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂組成物、エポキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物、変性ポリイミド樹脂組成物、ポリフタルアミド(PPA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂等の樹脂であり、これら樹脂中に酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどを含有させることで、発光素子10からの光を効率よく反射させることができる。発光素子10からの光に対する反射率が60%以上であるものが好ましく、より好ましくは90%以上反射するものが好ましい。酸化チタン等の光反射性物質の充填量は、樹脂成形法や樹脂流動性などの成形条件によって、また反射率や機械強度などの特性よって適宜選択されるが、例えば、酸化チタンを用いる場合は、好ましくは20〜40wt%、より好ましくは25〜35wt%配合させるのが好ましい。
凹部48の側壁は、効率よく光を反射するために、開口側に広がるように傾斜していることが好ましいが、これに限定されない。
【0033】
(リードフレーム24)
リードフレーム24は、発光素子10の電極32、34と電気的に接続されて電流を流す導電部材として用いられる。また、パッケージ樹脂36の外部に引き出されて外部端子としても用いられる。
リードフレーム24は、少なくとも正負の電極端子となる一対のリードフレームを有してなり、一対のリードフレームの間には、パッケージ樹脂36が埋め込まれて絶縁されている。リードフレーム24の形状は、上述の機能を持つものであれば、特に限定されないが、板状であることが好ましい。また、部分的に厚くなる又は薄くなっていてもよい。リードフレーム24は、図2に示すように、板状のものを曲げずに用いても良いし、適宜折り曲げて形成されていてもよい。
【0034】
また、リードフレーム24と樹脂パッケージ36の密着性を考慮して、リードフレーム24にアンカー構造を持たせることが好ましい。つまり、リードフレーム24の厚み方向に設けた貫通孔に段差を設けて樹脂とリードフレーム24との密着面積を大きくすることが好ましい。図2に示す例では、リードフレーム24の上側から中間部まで漸次小さくなるように孔を設け、下側では上側よりも大きい孔を設けることで段差を形成し、アンカー効果を持たせている。
【0035】
クラッド材からなるリードフレーム24の表面には、図3に示すように、発光素子10からの光を効率よく取り出すために反射メッキ30が施されていることが好ましい。メッキの材料としては、Ag、Al、Au等が挙げられ、中でもAgメッキであることが好ましい。この反射メッキは、プレス加工等で、リードフレーム24を打ち抜き形成した後に行うことが好ましく、これにより、切断面に露出した第1金属部材26をメッキで被覆することができる。
【0036】
<第2実施形態>
図4に、本発明の第2実施形態に係る発光装置200〜400を断面図で示す。第1実施形態と同一の要素については同じ符号を付して説明を省略する。
図4(a)は、リードフレーム24として、オーバーレイ型ではなく、エッジレイ型のクラッド材を用いた発光装置200であり、図4(b)は、インレイ型のクラッド材を用いた発光装置300であり、図4(c)はサイドレイ型のクラッド材を用いた発光装置400である。第2の金属部材28に、半田付け性及び放熱性に優れた材料(例えば、Cu)を適用する例について以下に説明する。
【0037】
図4(a)は、いわゆるエッジレイ型のクラッド材であり、リードフレーム24の角部に第1の金属部材26が配置され、第1の金属部材26の下面及び側面の片側が、第2の金属28と接合されている。リードフレームの上面においては、第1の金属部材26及び第2の金属部材28が露出されている。第1の金属部材26の上部に、発光素子10が接合されている。反射層16に近い箇所に第1金属部材26が配置されているため、Ag反射膜と透光性基板との剥がれを抑制することができ、さらに、電極端子となる部分においては、第2の金属部材28の単一部材により形成されており電極端子の端面においても、第1金属部材26が露出されないため、容易に半田付けすることができ、電極端子での放熱性を向上させることができる。
【0038】
なお、実装基板に半田等で実装した際の半田クラックが生じないように、実装基板とリードフレーム24の実装面に位置する材料との線膨張係数差が小さくなるようにすることが好ましい。つまり、第1の金属部材26と第2の金属部材28のうち、より実装基板の線膨張係数に近い材料が実装面側に位置するように配置することが好ましい。
【0039】
図4(b)は、いわゆるインレイ型のクラッド材であり、リードフレーム24の板面方向において、第1の金属部材26が、第2の金属部材28に挟まれて形成されている。第1の金属部材26は、各発光素子10に対応して複数個所上面に露出されており、そのそれぞれに発光素子10が接合されている。図4(a)と同様に、反射層16に近い箇所に第1金属部材26が配置されているため、Ag反射膜と透光性基板との剥がれを抑制することができ、さらに、電極端子となる部分においては、第2の金属部材28の単一部材により形成されており電極端子の端面においても、第1金属部材26が露出されないため、容易に半田付けすることができ、電極端子での放熱性を向上させることができる。
【0040】
図4(c)は、いわゆるサイドレイ型のクラッド材であり、リードフレーム24の一方の端部であって発光素子10が載置される箇所において、板厚方向に全て第1の金属部材26が配置されるように形成されている。このように、発光素子10の直下を第1の金属部材26で形成することにより、Ag反射膜と透光性基板との剥がれをより一層抑制することができる。
【0041】
なお、リードフレーム24は、プレス加工などで切断して所望の形状とされるが、切断面が第1の金属部材26又は第2の金属部材28の単一材料からなるように設定することにより、異種金属を重ねて切断する必要がなくなるため、プレス加工やエッチング加工でのリードフレーム24の切断が容易となるため好ましい。
【0042】
<第3実施形態>
図5に、本発明の第3実施形態に係る発光装置500を断面図で示す。第1、第2実施形態と同一の要素については同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、第1実施形態と同様に、オーバーレイ型のクラッド材を用い、リードフレームに凹部48を形成し、この凹部48に発光素子10が載置されている。図5では、厚みが均一な板状のリードフレーム24を屈曲させて凹部48を形成しているが、リードフレーム自体に厚みの差を設けることで凹部48を形成してもよい。クラッド材(リードフレーム)の表面には、凹部48の内面を被覆するように反射メッキ46が施されている。
【0043】
本実施形態の発光装置500では、リードフレームの凹部48の反射メッキ46によって発光素子の光を反射させて外部に取り出す構成とされているため、樹脂パッケージ36の部材は、光反射性である必要はない。
【0044】
本実施形態においても、実施形態1と同様に、Ag反射膜と透光性基板との剥がれを効果的に抑制することができる。また、本実施形態では、封止樹脂38の上部に、樹脂パッケージ36の端部までを覆うように、透光性材料からなるレンズ44が形成されており、これにより光取り出し効率を向上させることができる。
【実施例】
【0045】
本実施例では、図1及び図2に示す構造の発光装置を以下の仕様により作製した。
リードフレーム24は、第1の金属部材26としてSPCCを用い、第2の金属部材28として無酸素銅を用い、Cu/SPCC/Cuの積層からなるオーバーレイ型のクラッド材とした。Cu/SPCC/Cuの厚みは、それぞれ0.1mm/0.3mm/0.1mmである。なお、本実施例のリードフレームの線膨張係数は13.8ppm、熱伝導率は109W/m・Kである
このようなリードフレームの表面にAgメッキを施し、発光素子10を接合して発光装置を作製した。発光素子10の透光性基板12としてサファイア(線膨張係数5.3ppm、熱伝導率46W/m・K)を用い、反射層16としてAgを用い、共晶合金22としてAuSnの共晶合金を用いた。
【0046】
[比較例]
また、比較例として、リードフレーム24の材料にSPCCではなく、Cu材(線膨張係数17.6ppm、熱伝導率262W/m・K)を用い、それ以外は実施例と同じ材料からなる発光装置を作製した。
【0047】
作製した実施例、比較例について−40℃1分、100℃1分で10000サイクルの条件で熱衝撃試験を行った。比較例では熱衝撃試験後ダイシェア強度が初期値の30%程度に低下するのに対して、実施例では80%程度で維持しており、良好な結果となった。
【0048】
また、リードフレームの線膨張が17.0ppm以上の場合にAg反射層と透光性基板の剥がれが発生し、リードフレームの熱伝導率が18W/m・K以下の場合に発光装置としての熱抵抗が上がることがわかった。さらに、実施例のクラッド材において、SPCCの厚みが両側それぞれのCuの厚みに対して3倍以下の厚みの場合にリードフレームの熱抵抗が比較例と同等に維持できることがわかった。
これらの実験結果より、リードフレームの線膨張は17.0ppmより小さくすることが好ましく、熱伝導率が18W/m・K以上とすることが好ましいと考えられる。
【0049】
以上に説明した実施形態以外にも、所謂サイドビュー型の発光装置など、本発明は、リードフレームを用いる全ての発光装置に適用可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る発光装置は、照明用光源、各種インジケーター用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源、液晶のバックライト用光源、センサー用光源、信号機等、種々の発光装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100、200、300、400、500 発光装置
10 発光素子
12 透光性基板
14 半導体層
16 反射層
18 Ni膜
20 Rh膜
21 Au膜
22 共晶合金
24 リードフレーム
26 第1の金属部材
28 第2の金属部材
30 反射メッキ
32 正電極
34 負電極
36 樹脂パッケージ
38 封止樹脂
40 導電性ワイヤ
42 保護素子
44 レンズ
46 反射メッキ
48 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と第2の主面とを有する透光性基板の第1の主面上に半導体層が形成されてなる発光素子と、
前記第2の主面上に形成されたAg又はAg合金の反射層と、
前記反射層側が共晶合金により接合されるリードフレームと、を有し、
前記リードフレームは、Feを含む合金からなる第1の金属部材と、前記第1の金属部材と異なる金属からなる第2の金属部材とが接合されてなるクラッド材からなることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第2の金属部材が、Cuを含んでなる請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記リードフレームに樹脂パッケージが接合されてなる請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記リードフレームが凹部を有し、前記凹部に前記発光素子が載置される請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1の金属部材がInver又はSPCCである請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記リードフレーム内において、前記第1の金属部材は、前記第2の金属部材よりも前記反射層に近い位置に配置されている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記クラッド材の上面において、前記第1の金属部材及び前記第2の金属部材が露出されてなる請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記クラッド材の端部が電極端子とされており、前記電極端子の端面には前記第1の金属部材が露出されない請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記リードフレームの板厚方向において、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とが積層配置されてなる請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の発光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−58573(P2013−58573A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195483(P2011−195483)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】