説明

発泡樹脂ブロック

【課題】EPS工法を用いた土木構造物の工期、工費の増大をさらに抑制することが可能な発泡樹脂ブロックを提供する。
【解決手段】発泡樹脂ブロックは、略直方体形状を有し、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成する発泡樹脂ブロックであって、側面10Aと、該側面10Aに面して設けられた切り欠き部10Bとを含む発泡樹脂部分10Cと、発泡樹脂部分10Cとともに施工現場に搬送可能となるように発泡樹脂部分10Cの側面上に取り付けられた保護壁50と、発泡樹脂部分10Cおよび保護壁50とともに施工現場に搬送可能となるように発泡樹脂部分10Cおよび保護壁50に取り付けられ、発泡樹脂ブロックが並べられたときに隣接する保護壁50どうしの隙間および切り欠き部を埋める目地材60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂ブロックに関し、特に、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成する発泡樹脂ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
軽量な発泡スチロールからなる発泡樹脂ブロックを土木材料として利用する工法が、「EPS(Expanded Poly-Styrol)工法」として従来から知られている。この発泡スチロール材料は、軟弱地盤上に土木構造物を設ける場合に軽量であることのメリットを大きく発揮できる。また、上記材料は、自立性を有するため、擁壁工事や土留工事の工数を大幅に低減することが可能である。結果として、EPS工法によれば、工期の短縮(災害時の早期復旧)や工費の削減などを実現することが可能である。
【0003】
なお、EPS工法に関する従来の技術としては、たとえば、下記の特許文献1,2に記載のものなどが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−33348号公報
【特許文献2】特開2006−138157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EPS工法においては、発泡樹脂ブロックを保護するための保護壁が各発泡樹脂ブロックに取り付けられる。ここで、保護壁は、各発泡樹脂ブロックごとに分離して設けられる。
【0006】
発泡樹脂ブロックは、土木構造物に対して上方から作用する荷重により圧縮され、クリープ変形する。したがって、複数の発泡樹脂ブロックに跨って保護壁を設けた場合、発泡樹脂ブロックの変形に保護壁が追随できず、構造物が損傷する。したがって、上述のように、各発泡樹脂ブロックごとに分離して保護壁を設ける必要がある。
【0007】
さらに、各発泡樹脂ブロックごとに分離して設けられた保護壁の間には、発泡樹脂ブロックのクリープ圧縮歪を吸収するための隙間を設ける必要がある。
【0008】
他方、各保護壁の間に隙間を設けるため、その隙間に面する発泡樹脂ブロックは保護壁に覆われないことになる。発泡樹脂ブロックを外部に露出させることはできないため、上記隙間には、耐熱性、耐油性、緩衝性を備えた目地材を設ける必要がある。これにより、発泡樹脂ブロックを保護しながら、発泡樹脂ブロックのクリープ圧縮歪を吸収することが可能となる。
【0009】
保護壁が付いた発泡樹脂ブロックに目地材を取り付ける際、足場を組む必要があり、このための工期、工費が増大する。
【0010】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、EPS工法を用いた土木構造物の工期、工費の増大をさらに抑制することが可能な発泡樹脂ブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る発泡樹脂ブロックは、略直方体形状を有し、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成する発泡樹脂ブロックであって、側面と、該側面に面して設けられた切り欠き部とを含む発泡樹脂部分と、発泡樹脂部分とともに施工現場に搬送可能となるように発泡樹脂部分の側面上に取り付けられた保護パネルと、発泡樹脂部分および保護パネルとともに施工現場に搬送可能となるように発泡樹脂部分および保護パネルに取り付けられ、発泡樹脂ブロックが並べられたときに隣接する保護パネルどうしの隙間および切り欠き部を埋める目地材とを備える。
【0012】
1つの実施態様では、上記発泡樹脂ブロックにおいて、目地材は、施工現場における水平方向に沿って設けられる部分を含み、当該部分は、保護パネル間の隙間および切り欠き部の幅よりも狭い幅に形成される。
【0013】
1つの実施態様では、上記発泡樹脂ブロックにおいて、目地材は、施工現場における鉛直方向に沿って設けられる部分を含み、当該部分は、保護パネル間の隙間および切り欠き部の幅よりも広い幅に形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、EPS工法を用いた土木構造物の工期、工費の増大をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】EPS工法による土木構造物の一例を示す図である。
【図2】参考例に係る発泡樹脂ブロックを用いたEPS工法による土木構造物における保護壁間の隙間に設けられる目地材を示す図である。
【図3】本発明の1つの実施の形態に係る発泡樹脂ブロックを2つ重ねた状態を示す図である。
【図4】本発明の1つの実施の形態に係る発泡樹脂ブロックの変形例を示す図である。
【図5】本発明の1つの実施の形態に係る発泡樹脂ブロックの他の変形例を示す図である。
【図6】目地材の幅の変形例を示す図(その1)である。
【図7】目地材の幅の変形例を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0017】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
【0018】
図1は、EPS工法による土木構造物の一例を示す図である。図1に示すように、この土木構造物は、発泡樹脂ブロック部10と、発泡樹脂ブロック部10上に設けられたコンクリート床版20と、コンクリート床版20上に設けられた路盤30と、路盤30上に設けられた舗装40とを含む。
【0019】
図1に示す構造は、たとえば、斜面に面した道路を拡幅する工事にEPS工法を用いたものである。したがって、コンクリート床版20、路盤30、および舗装40の端部において、発泡樹脂ブロック10の側面は垂直に切り立っている。
【0020】
垂直に切り立った発泡樹脂ブロック10の側面上には、保護壁50が設けられている。保護壁50は、発泡樹脂ブロック10が外部に露出することを防ぐものである。保護壁50は、各発泡樹脂ブロック10ごとに分けて設けられている。保護壁50は、コンクリート、モルタル、ガラス繊維補強コンクリート(GRC)、金属板、または合成木材(木粉と樹脂粉とを混合溶解して成型されたもの)などにより構成される。
【0021】
発泡樹脂ブロック部10は、各々が直方体形状を有している。発泡体樹脂ブロック部10は、発泡スチロールにより形成された軽量の部分である。コンクリート床版20は、舗装40上に作用する輪荷重を分散させて発泡樹脂ブロックに伝達するための部材である。これにより、発泡樹脂ブロック部10の一部分に応力集中が生じることによる発泡樹脂ブロック部10の局所的な変形が抑制される。
【0022】
発泡樹脂ブロック部10は非常に軽量であり、これを並べるだけで図1のような拡幅構造を形成することができるので、当該拡幅構造を形成するための工期を大幅に短縮することが可能である。この結果、工費を低減することも可能である。これは、EPS工法の大きなメリットの1つである。
【0023】
ところで、各発泡樹脂ブロック10ごとに分離して設けられた保護壁50の間には、発泡樹脂ブロック10のクリープ圧縮歪を吸収するための隙間が設けられている。その隙間には、発泡樹脂ブロック10のクリープ圧縮歪を吸収することが可能な緩衝性を備えるとともに、耐熱性、耐油性を備えた目地材60が設けられる。これにより、発泡樹脂ブロック10を保護しながら、発泡樹脂ブロック10のクリープ圧縮歪を吸収することが可能となる。
【0024】
図2は、参考例に係る発泡樹脂ブロック10の側面に設けられた保護壁50の隙間に設けられる目地材60を示す図である。図2に示す例では、保護壁50は発泡樹脂ブロック10に予め一体化されているため、発泡樹脂ブロック10に保護壁50を取り付けるために足場70(図1参照)を組む必要はない。しかし、図2の例では、複数の発泡樹脂ブロック10を積み上げた後、保護壁50の隙間に目地材60を設けているため、結局、目地材60を設けるために足場70(図1参照)を設ける必要がある。したがって、図2の例では、足場70の設置、除去に関して工期、工費が増大する。
【0025】
これに対し、本実施の形態に係る発泡樹脂ブロックは、予め保護壁および目地材を発泡樹脂部分と一体化していることを特徴とする。
【0026】
図3は、本実施の形態に係る発泡樹脂ブロックを2つ重ねた状態を示す図である。図3に示すように、本実施の形態に係る発泡樹脂ブロックは、側面10Aおよび切り欠き部10Bを有する発泡樹脂部分10Cと、側面10Aに取り付けられた保護壁50と、切り欠き部10Bに取り付けられた目地材60とを含む。
【0027】
図3に示すように、発泡樹脂ブロックを2つ重ねたとき、目地材60は、2つの保護壁50の間の隙間を埋める。これにより、発泡樹脂部分10Cは外部に露出することがなく、土木構造物の耐火性、耐油性等を確保することができる。
【0028】
切り欠き部10Bは、側面10A上から土木構造物の内部に向けて延在する。切り欠き部10Bの深さは、保護壁50の厚みよりも大きい。目地材60は、切り欠き部10Bの全体にわたって設けられている。したがって、目地材60は、保護壁50および発泡樹脂部分10Cの両方に接するように設けられる。
【0029】
目地材60は、所定の耐火性、耐油性、干渉性を備えたゴムスポンジなどにより構成される。目地材60は、たとえば接着剤などにより化学的に固定されてもよいし、たとえばピンなどにより機械的に固定されてもよい。
【0030】
図3の例では、板状の保護壁50を設けた場合について説明したが、図4に示すように、略C字状の保護壁50であって、発泡樹脂部分10Cに食い込んでいるものが用いられてもよい。図4の例によれば、保護壁50と発泡樹脂部分10Cとを、より強固に結合することができる。そして、保護壁50および発泡樹脂部分10Cに対して目地材60が固定されている。なお、図4に示すような構造は、発泡樹脂部分10Cを成型する型内に保護壁50を収納した上で発泡樹脂部分10Cを成型することで、形成可能である。
【0031】
図4の例では、略C字条の保護壁50の厚みと切り欠き部10Bの幅とが同じであるが、図4中に二点鎖線で示すように、切り欠き部10Bをさらに深く形成してもよいし、逆に、図4に示すよりも切り欠き部10Bを浅く形成してもよい。
【0032】
図5は、保護壁50のさらなる変形例を示すものである。図5の例では、金具50Aと発泡樹脂部分10Cを一体に成型し、その金具50Aと保護壁50とを固定ネジ50Bで固定している。そして、保護壁50、金具50Aおよび発泡樹脂部分10Cに対して目地材60が固定されている。なお、図5に示すような構造は、発泡樹脂部分10Cを成型する型内に金具50Aを収納した上で発泡樹脂部分10Cを成型することで、形成可能である。
【0033】
次に、目地材の幅の変形例について、図6、図7を用いて説明する。
図3〜図5の例では、目地材60の幅(図3〜図5における上下方向の寸法)は、切り欠き部10Bの幅(同上下方向の寸法)と同じであった。
【0034】
これに対し、図6の例では、目地材60の幅(A)は、切り欠き部10Bの幅(B)よりも狭く形成されている。このようにすることで、目地材60が発泡樹脂ブロックの運搬中に意図しない形で外部に接触し、目地材60が発泡樹脂部分10C等から離脱してしまうことを抑制することができる。なお、図6の状態のままでは、保護壁50間の隙間が完全に埋められず、発泡樹脂部分10Cが露出してしまうことになるが、実際に発泡樹脂ブロックを積層したときは、発泡樹脂部分10Cが圧縮変形し、目地材60の幅(A)が切り欠き部10Bの幅(B)よりも狭い分を吸収可能である(なお、図6における(A)(B)の差は、図示および説明の便宜上、実際よりも誇張して描かれている。)。したがって、図6に示す構造は、施工現場において、目地材60が水平方向に沿って設けられる部分に適用される。
【0035】
また、図7の例では、目地材60の幅(A)は、切り欠き部10Bの幅(B)よりも広く形成されている。このようにすることで、施工現場における発泡樹脂ブロックの設置の際の若干の位置ずれにより、保護壁50の間の隙間が若干拡大した場合にも、目地材60が保護壁50の間の隙間を完全に埋めることができる。図7に示す構造は、発泡樹脂ブロックの圧縮変形による隙間の縮小が期待できない部分、すなわち、施工現場において、目地材60が鉛直方向に沿って設けられる部分に適用することが、特に有効である。
【0036】
本実施の形態に係る発泡樹脂ブロックによれば、上述のとおり、参考例(図2)に示す発泡樹脂ブロックと比較して、EPS工法を用いた土木構造物の工期、工費の増大をさらに抑制することが可能である。
【0037】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る発泡樹脂ブロックは、略直方体形状を有し、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成する発泡樹脂ブロックであって、側面10Aと、該側面10Aに面して設けられた切り欠き部10Bとを含む発泡樹脂部分10Cと、発泡樹脂部分10Cとともに施工現場に搬送可能となるように発泡樹脂部分10Cの側面上に取り付けられた保護壁50と、発泡樹脂部分10Cおよび保護壁50とともに施工現場に搬送可能となるように発泡樹脂部分10Cおよび保護壁50に取り付けられ、発泡樹脂ブロックが並べられたときに隣接する保護壁50どうしの隙間および切り欠き部を埋める目地材60とを備える。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
10 発泡樹脂ブロック、10A 側面、10B 切り欠き部、10C 発泡樹脂部分、20 コンクリート床版、30 路盤、40 舗装、50 保護壁、50A 金具、50B 固定ネジ、60 目地材、70 足場。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状を有し、施工現場において複数並べられることで土木構造物を構成する発泡樹脂ブロックであって、
側面と、該側面に面して設けられた切り欠き部とを含む発泡樹脂部分と、
前記発泡樹脂部分とともに前記施工現場に搬送可能となるように前記発泡樹脂部分の前記側面上に取り付けられた保護パネルと、
前記発泡樹脂部分および前記保護パネルとともに前記施工現場に搬送可能となるように前記発泡樹脂部分および前記保護パネルに取り付けられ、前記発泡樹脂ブロックが並べられたときに隣接する前記保護パネルどうしの隙間および前記切り欠き部を埋める目地材とを備えた、発泡樹脂ブロック。
【請求項2】
前記目地材は、前記施工現場における水平方向に沿って設けられる部分を含み、当該部分は、前記保護パネル間の隙間および前記切り欠き部の幅よりも狭い幅に形成される、請求項1に記載の発泡樹脂ブロック。
【請求項3】
前記目地材は、前記施工現場における鉛直方向に沿って設けられる部分を含み、当該部分は、前記保護パネル間の隙間および前記切り欠き部の幅よりも広い幅に形成される、請求項1に記載の発泡樹脂ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−17573(P2012−17573A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154115(P2010−154115)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(510187406)株式会社CPC (4)
【Fターム(参考)】