説明

発電式水栓の電源回路

【課題】発電機で発電した電力を、より有効的に利用することのできる発電式水栓の電源回路を提供すること。
【解決手段】給水管を流れる水の流れによって発電する発電機60と、発電機60で発電した交流電流を整流する整流回路と、整流回路で整流した電流を蓄電するリチウムイオンキャパシタ75と、リチウムイオンキャパシタ75で蓄電している電力によって吐水の制御を行う制御部40と、を備える発電式水栓の電源回路1において、整流回路は、2つの整流ダイオード12と2つのショットキーバリアダイオード14とを有するダイオードブリッジ10により構成されており、ダイオードブリッジ10は、リチウムイオンキャパシタ75の2つの極性側にそれぞれ接続される2つのダイオードが、極性側ごとに同じ種類のダイオードになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電式水栓の電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の給水装置では、水栓の吐水口の付近に差し出された手を、吐水口の近傍に設けられるセンサによって検知し、吐水口から自動吐水する自動水栓が増えている。また、このような自動水栓として、吐水経路に水流によって水車を回転させて発電を行う発電機と、発電機で発電した電力を蓄電するコンデンサと、を有し、コンデンサで蓄電した電力を用いて電磁弁を作動させているものがある。例えば、特許文献1に記載の給水装置における給電装置では、4つの整流ダイオードによってダイオードブリッジを構成することにより、発電機から電磁弁までの電気回路内に全波整流回路を設けている。これにより、発電機からの交流出力を全波整流回路によって直流に変換した上でコンデンサに給電して蓄電し、このコンデンサを電源として電磁弁を駆動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−251018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、整流を行う際に一般的に用いる整流ダイオードは、整流ダイオードにおける電力を流すことができる方向である順方向での電圧降下が大きくなっている。このため、自動水栓で用いる水車発電機等、小電力しか発電できない発電機で発電した電流を整流する場合、発電した電力に対する整流ダイオードでの電力損失の割合が大きくなっている。
【0005】
一方、整流に用いるダイオードとして、一般的に用いる整流ダイオードの他に、ショットキーバリアダイオードがある。このショットキーバリアダイオードは、順方向電圧降下が小さいため、整流を行うことを目的としてショットキーバリアダイオードを用いた場合は、意図した方向に電流を流す場合における電力損失を小さくすることができる。
【0006】
しかし、ショットキーバリアダイオードは、逆方向への電流の漏れが大きくなっている。このため、発電機で発電した電流をコンデンサ等に蓄電した場合、漏洩量が多くなる。このように、ダイオードを用いて整流を行う場合、発電機で発電した電力を有効利用するのは、大変困難なものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、発電機で発電した電力を、より有効的に利用することのできる発電式水栓の電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る発電式水栓の電源回路は、給水管を流れる水の流れによって発電をする発電機と、前記発電機で発電した交流電流を整流する整流回路と、前記整流回路で整流した電流を蓄電する蓄電手段と、前記蓄電手段で蓄電している電力によって吐水の制御を行う制御部と、を備える発電式水栓の電源回路において、前記整流回路は、2つの整流ダイオードと2つのショットキーバリアダイオードとを有するダイオードブリッジにより構成されており、前記ダイオードブリッジは、前記蓄電手段の2つの極性側にそれぞれ接続される2つのダイオードが、極性側ごとに同じ種類の前記ダイオードになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る発電式水栓の電源回路は、発電機で発電した電力を、より有効的に利用することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施形態に係る発電式水栓の電源回路の構成例を示す摸式図である。
【図2】図2は、図1に示すダイオードブリッジの説明図である。
【図3】図3は、図2に示すダイオードブリッジで整流する場合の説明図である。
【図4】図4は、図2に示すダイオードブリッジで整流する場合の説明図であり、発電機で発電する電流の方向が図3に示す方向と反対方向の場合の説明図である。
【図5】図5は、図2に示すダイオードの非発電時の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る発電式水栓の電源回路の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る発電式水栓の電源回路の構成例を示す摸式図である。同図に示す電源回路1は、水栓の吐水口の付近に差し出された手を、吐水口の近傍に設けられる検出センサ44によって検知し、吐水口から自動吐水する自動水栓の電源回路1として構成されている。また、この自動水栓は、給水管を流れる水の流れによって発電をする発電機60によって発電した電力で、電磁弁である吐止水弁85を駆動することにより吐水や止水を切り替える発電式水栓になっており、本実施形態に係る電源回路1は、この発電式水栓の電源回路1として設けられている。即ち、発電機60は、吐水口から吐水する水が流れる給水管内に、水の流れによって回転する水車を有しており、この水の流れによって水車が回転することにより、発電機60は発電可能になっている。
【0013】
また、この電源回路1は、発電機60で発電した電力を蓄電する蓄電手段を有しており、蓄電手段にはリチウムイオンキャパシタ75が用いられている。吐止水弁85は、このリチウムイオンキャパシタ75で蓄電した電力によって駆動する。さらに、電源回路1には、リチウムイオンキャパシタ75での蓄電量が低下した場合における補助的な電源として補助電池80が接続されており、リチウムイオンキャパシタ75での蓄電量の低下時は、吐止水弁85は、補助電池80からの電力によって駆動する。
【0014】
これらの発電機60、リチウムイオンキャパシタ75、補助電池80、吐止水弁85は、それぞれ着脱可能なコネクタによって電気回路に接続されている。即ち、発電機60は、発電機用コネクタ61によって回路に対して着脱可能に配設されており、リチウムイオンキャパシタ75は、蓄電素子用コネクタ76によって着脱可能に配設されており、補助電池80は、補助電池用コネクタ82によって着脱可能に配設されており、吐止水弁85は、吐止水弁用コネクタ86によって着脱可能に配設されている。発電機60、リチウムイオンキャパシタ75、補助電池80、吐止水弁85は、これらのようにそれぞれコネクタによって回路に接続されることにより、本実施形態に係る電源回路1の一部として設けられている。
【0015】
また、電源回路1は、発電機60で発電した電流を整流する整流回路であるダイオードブリッジ10を有している。つまり、発電機60は交流電流を発電するのに対し、リチウムイオンキャパシタ75は、直流電流を蓄電したり放電したりする。また、吐止水弁85等の各部も、直流電流によって作動する。これらのため、電源回路1には、発電機60で発電した交流電流を整流して直流にする整流回路としてダイオードブリッジ10が設けられている。このダイオードブリッジ10は、電流を整流させる際に一般的に用いられる半導体ダイオードである整流ダイオード12と、金属と半導体とのショットキー接合の整流作用を利用するショットキーバリアダイオード14とを、それぞれ2つずつ用いることにより構成されている。
【0016】
図2は、図1に示すダイオードブリッジの説明図である。ダイオードブリッジ10は、2つの整流ダイオード12と2つのショットキーバリアダイオード14とにより構成されているが、その組み合わせの形態について説明すると、ダイオードブリッジ10は、リチウムイオンキャパシタ75の2つの極性側にそれぞれ接続される2つのダイオードが、極性側ごとに同じ種類のダイオードになっている。つまり、ダイオードブリッジ10は、4つのダイオードのうち、一方の種類の2つのダイオードがリチウムイオンキャパシタ75の+(プラス)側に接続され、もう一方の種類の2つのダイオードがリチウムイオンキャパシタ75の−(マイナス)側に接続されている。
【0017】
例えば、ダイオードブリッジ10は、リチウムイオンキャパシタ75の+側に接続される2つのダイオードが整流ダイオード12になっており、リチウムイオンキャパシタ75の−側に接続される2つのダイオードがショットキーバリアダイオード14になっている。発電機60は、これらのように設けられる2箇所の整流ダイオード12とショットキーバリアダイオード14との間に接続されている。また、これらのダイオードの向きは、整流ダイオード12は、発電機60側の電流をリチウムイオンキャパシタ75の+側の方向にのみ流すことができる向きになっており、ショットキーバリアダイオード14は、リチウムイオンキャパシタ75の−側からの電流を発電機60の方向にのみ流すことができる向きになっている。
【0018】
また、リチウムイオンキャパシタ75は、使用電圧が所定の範囲内になる蓄電状態で使用する必要がある。このため、電源回路1は、使用電圧がリチウムイオンキャパシタ75の使用可能電圧の上限値であるか否かを判定する上限側電圧判定部20と、下限値であるか否かを判定する下限側電圧判定部25と、を有している。
【0019】
これらの上限側電圧判定部20と下限側電圧判定部25とは、共に所定の電圧時に信号を切り替えるボルテージディテクタによって設けられている。詳しくは、リチウムイオンキャパシタ75は、使用電圧が概ね2.2V〜3.8Vの範囲内になる蓄電状態で使用する必要がある。このため、本実施形態に係る電源回路1では安全性を考慮して電圧の判定値を余裕を持って設定し、上限側電圧判定部20は3.5Vで出力信号が切り替わるものが使用され、下限側電圧判定部25は2.5Vで出力信号が切り替わるものが使用されている。
【0020】
また、これらの上限側電圧判定部20と下限側電圧判定部25とには、これらの判定部からの信号に基づいて、回路中の電流の流れを実際に切り替える切替部が接続されている。即ち、上限側電圧判定部20には、上限側電圧判定部20からの信号に基づいて電流の流れを切り替える上限側切替部21が接続されており、下限側電圧判定部25には、下限側電圧判定部25からの信号に基づいて電流の流れを切り替える下限側切替部26が接続されている。これらの上限側切替部21と下限側切替部26とは、共にn型のMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)によって設けられており、上限側切替部21と下限側切替部26とにおけるゲート電極が、上限側電圧判定部20や下限側電圧判定部25に接続されている。
【0021】
また、下限側切替部26には、リチウムイオンキャパシタ75と、当該リチウムイオンキャパシタ75で蓄電している電力によって吐水の制御を行う制御部40との接続と遮断とを切替える切替手段としてp型のFET(Field−Effect Transistor:電界効果トランジスタ)30が接続されている。このFET30は、ソース電極側がリチウムイオンキャパシタ75側に接続され、ドレイン電極側が整流ダイオード12のカソード側に接続されており、下限側切替部26は、FET30のゲート電極側に接続されている。
【0022】
また、下限側電圧判定部25の出力は、下限側切替部26の他に電源切替伝達部28に接続されている。この電源切替伝達部28は、下限側切替部26と同様にn型のMOSFETによって設けられており、下限側電圧判定部25は、電源切替伝達部28のゲート電極に接続されている。また、電源切替伝達部28のドレイン電極は制御部40に接続されており、これにより、制御部40は、下限側電圧判定部25の信号の状態を、電源切替伝達部28を介して検出可能になっている。
【0023】
また、制御部40は、電子制御装置として構成されており、ハード構成は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部等を備えた公知の構成であるため、説明は省略する。
【0024】
この制御部40は、リチウムイオンキャパシタ75での蓄電した電圧を調整する電圧調整回路である制御部用昇圧コンバータ50から供給される電力によって駆動する。また、吐止水弁85は、制御部用昇圧コンバータ50とは異なる電圧調整回路である電磁弁用昇圧コンバータ52から供給される電力によって駆動可能になっている。即ち、電磁弁用昇圧コンバータ52は、制御部用昇圧コンバータ50と同様に、リチウムイオンキャパシタ75で蓄電した電圧を調整して吐止水弁85に供給する。
【0025】
これらの制御部用昇圧コンバータ50と電磁弁用昇圧コンバータ52とは、効率よく電圧を調整して電力を供給することができる電力の範囲が異なっており、制御部用昇圧コンバータ50は、制御部40で使用する電力の範囲で効率よく電圧を調整することができ、電磁弁用昇圧コンバータ52は、吐止水弁85で使用する電力の範囲で効率よく電圧を調整することが可能になっている。具体的には、電磁弁用昇圧コンバータ52は、制御部用昇圧コンバータ50よりも、大きな電力の範囲で、効率よく電圧を調整して吐止水弁85に供給することが可能になっている。
【0026】
また、電磁弁用昇圧コンバータ52と吐止水弁85との間には、吐止水弁85の開閉を切り替える回路である吐止水弁制御回路55が設けられている。この吐止水弁制御回路55は、複数の開閉制御用トランジスタ56と複数の開閉制御用ダイオード57とにより構成されている。開閉制御用トランジスタ56のベース電極には制御部40が接続されており、制御部40で複数の開閉制御用トランジスタ56を制御することにより、電磁弁用昇圧コンバータ52から吐止水弁85に流れる電流の経路を切り替えることが可能になっている。これにより、吐止水弁85の開閉を切り替えることが可能になっている。
【0027】
なお、この吐止水弁85は、ラッチ式の電磁弁になっている。このため、開方向、または閉方向の電流を吐止水弁85に供給して吐止水弁85を駆動させた場合、その後に吐止水弁85に対する電流を遮断しても、吐止水弁85は、開状態、または閉状態が維持される。
【0028】
また、水栓の吐水口の付近に差し出された手を検出する検出センサ44は、発光ダイオードからなるセンサ発光部45と、フォトダイードからなるセンサ受光部46とを有している。このうち、センサ発光部45は、電磁弁用昇圧コンバータ52で調整した電圧によって間欠的に発光し、吐水口付近を照射する。また、センサ受光部46は、制御部40に接続されており、吐水口付近に差し出された手に照射されたセンサ発光部45からの光が、手で反射した際における反射光を受光することにより電流が流れる。制御部40は、この電流を検知することにより、吐水口付近に手が差し出されたことを検知する。
【0029】
この実施形態に係る発電式水栓の電源回路1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。この電源回路1が備えられる自動水栓は、制御部40によって制御されるが、制御部40は、制御部用昇圧コンバータ50で電圧が調整されたリチウムイオンキャパシタ75からの電力によって駆動する。また、制御部40には、常時電力が供給され、制御部40は常時駆動している。また、電磁弁用昇圧コンバータ52は、センサ発光部45の発光時、及び吐止水弁85吐止水駆動時のみ、制御部40からの信号により駆動される。
【0030】
この状態で、自動水栓の使用者が手を吐水口の付近に差し出すと、センサ発光部45からの光が手に当たり、光が手で反射する。このように手で反射した反射光をセンサ受光部46で受光した場合、制御部40は、手が差し出されていることを検出する。
【0031】
手が差し出されていることを検出した制御部40は、吐止水弁制御回路55の開閉制御用トランジスタ56に対して、吐止水弁85を開く方向の制御信号を送信する。これにより、吐止水弁85には、当該吐止水弁85が開弁する方向の電流が流れる。この場合における電流は、電磁弁用昇圧コンバータ52で電圧が調整されたリチウムイオンキャパシタ75からの電力を使っており、吐止水弁85の駆動に適した大電力を効率よく供給する。吐止水弁85は、この電力によって駆動して開弁する。
【0032】
なお、この吐止水弁85への電力の供給は短時間のみ行われ、電力の供給開始後、吐止水弁85を開弁することができる程度の時間が経過したら、電力の供給を停止する。ラッチ式電磁弁である吐止水弁85は、このように電力の供給が停止しても、開弁状態を維持する。吐止水弁85が開かれた場合、給水管内を流れる水の流れ方向における吐止水弁85よりも下流側に水が流れ、この水が自動水栓の吐水口から吐水する。
【0033】
このようにして、給水管内を水が流れる場合、発電機60は、この水の流れによって水車が回転して発電する。発電機60で発電した電流は交流であるため、リチウムイオンキャパシタ75に供給する前に整流し、直流の状態でリチウムイオンキャパシタ75に供給する。
【0034】
図3は、図2に示すダイオードブリッジで整流する場合の説明図である。発電機60で発電した電流は、そのとき+の極性になっている側からダイオードブリッジ10に流入し、接続されている整流ダイオード12とショットキーバリアダイオード14とのうち、電流の流れが順方向になる整流ダイオード12aの方向に流れる。
【0035】
整流ダイオード12aに流れた電流は、リチウムイオンキャパシタ75の+側に流れ、リチウムイオンキャパシタ75の−側から再びダイオードブリッジ10に流れる。リチウムイオンキャパシタ75は、このように発電機60で発電した電流が流れる際に、この電流を蓄電する。ダイオードブリッジ10に流れた電流は、この電流が流れる導線に接続されている2つのショットキーバリアダイオード14のうち、発電機60の−側に接続されているショットキーバリアダイオード14aに流れて、発電機60に戻る。
【0036】
図4は、図2に示すダイオードブリッジで整流する場合の説明図であり、発電機で発電する電流の方向が図3に示す方向と反対方向の場合の説明図である。交流電流を発電する発電機60からの電流の極性が反対方向になった場合も同様に、発電機60で発電した電流は、+の極性になっている側からダイオードブリッジ10に対して流れる。即ち、極性が変化する前とは異なる導線を伝わって、発電機60からダイオードブリッジ10に対して電流が流れる。
【0037】
ダイオードブリッジ10に流れた電流は、この電流が流れる導線に接続されている整流ダイオード12であり、極性が変化する前に電流が流れた整流ダイオード12aとは異なる整流ダイオード12bを流れる。整流ダイオード12bに流れた電流は、リチウムイオンキャパシタ75によって蓄電されながらリチウムイオンキャパシタ75を通って、再びダイオードブリッジ10に流れる。
【0038】
ダイオードブリッジ10に流れた電流は、この電流が流れる導線に接続されている2つのショットキーバリアダイオード14のうち、発電機60の−側に接続されているショットキーバリアダイオード14であり、極性が変化する前のショットキーバリアダイオード14aとは異なるショットキーバリアダイオード14bに流れて、発電機60に戻る。
【0039】
発電機60で発電した交流電流は、このようにダイオードブリッジ10で整流され、直流の状態でリチウムイオンキャパシタ75に流されてリチウムイオンキャパシタ75で蓄電するが、発電機60からの電流をダイオードブリッジ10で整流する場合、整流ダイオード12とショットキーバリアダイオード14とを1つずつ通過する。このうち、ショットキーバリアダイオード14は、整流ダイオード12と比較して順方向電圧降下が小さいため、発電機60で発電した電力は、2つの整流ダイオード12を通過する場合と比較して電力損失が小さい状態でリチウムイオンキャパシタ75に供給され、リチウムイオンキャパシタ75で蓄電する。
【0040】
図5は、図2に示すダイオードブリッジの非発電時の状態を等価的に示す説明図であり、発電機の抵抗リアクタンスを省略している説明図である。ダイオードブリッジ10は、リチウムイオンキャパシタ75の+側に接続される2つのダイオードが整流ダイオード12になり、リチウムイオンキャパシタ75の−側に接続される2つのダイオードがショットキーバリアダイオード14になっている。このため、リチウムイオンキャパシタ75からの電流がダイオードブリッジ10を流れる場合、電流の方向に関わらず、この電流は必ず整流ダイオード12を通ることになる。つまり、ショットキーバリアダイオード14は、逆方向への電流の漏れが、整流ダイオード12での逆方向への電流の漏れと比較して大きくなっているが、ダイオードブリッジ10に流れる電流は必ず整流ダイオード12を通ることにより、逆方向への電流の漏れは整流ダイオード12により抑えられる。
【0041】
このように、自動水栓の吐水時に、給水管内を流れる水の流れによって発電機60で発電した電流を、ダイオードブリッジ10で整流した後、リチウムイオンキャパシタ75に蓄電する。
【0042】
また、吐水口から吐水している状態で、センサ受光部46が反射光を受光しなくなることにより、吐水口に差し出されていた手が移動したことを制御部40で検出した場合には、制御部40は、開閉制御用トランジスタ56に対して、吐止水弁85を閉じる方向の制御信号を送信する。これにより、吐止水弁85には、電磁弁用昇圧コンバータ52から、当該吐止水弁85が閉弁する方向の電流が流れる。吐止水弁85は、この電流により駆動して閉弁し、吐水口からの水は止水する。吐止水弁85を閉弁したら、吐止水弁85への電流の供給を停止する。この閉弁時も開弁時と同様に、吐止水弁85は、電流の供給が停止しても閉弁状態を維持する。
【0043】
また、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧は、上限側電圧判定部20により、その電圧が上限値を上回るか否かを判定され、下限側電圧判定部25により、この電圧が下限値を下回るか否かを判定される。
【0044】
まず、上限側電圧判定部20は、検出した電圧が3.5Vを超えるとHiの信号を出力し、3.5V以下になるとLoの信号を出力する。この出力信号は、上限側切替部21に伝達される。上限側切替部21は、この上限側電圧判定部20からの信号がHiの場合はONになり、信号がLoの場合はOFFになる。上限側切替部21は、ONの場合は、発電機60で発電した電流をグランドに逃がす経路を接続する。このため、リチウムイオンキャパシタ75の電圧が3.5Vを超えた場合には、発電機60で発電した電流はグランドに流れ、リチウムイオンキャパシタ75には流れなくなるので、リチウムイオンキャパシタ75は、それ以上蓄電されなくなる。
【0045】
一方、下限側電圧判定部25は、検出した電圧が2.5Vを超えるとHiの信号を出力し、2.5V以下になるとLoの信号を出力する。この出力信号は、下限側切替部26に伝達される。下限側切替部26は、この下限側電圧判定部25からの信号がHiの場合はONになり、信号がLoの場合はOFFになる。また、下限側切替部26は、ONの場合は、FET30のゲート電極をグランドと接続することにより、ゲート電極の電圧を低下させる。
【0046】
このFET30は、ソース電極の電圧に比べてゲート電極の電圧が十分下がると、ソース電極とドレイン電極との間がONになる。このため、下限側電圧判定部25からの信号がHiになることにより下限側切替部26がONになった場合は、FET30はONになる。このようにFET30がONになると、ソース電極のリチウムイオンキャパシタ75とドレイン電極側の昇圧コンバータ50、52とが接続され、リチウムイオンキャパシタ75の電流が回路に供給されることになる。
【0047】
これに対し、下限側切替部26がOFFの場合は、FET30は、ソース電極とゲート電極とで電位差が無くなるので、ソース電極とドレイン電極との間はOFFになる。このため、下限側電圧判定部25からの信号がLoになることにより下限側切替部26がOFFになった場合は、FET30はOFFになる。このようにFET30がOFFになると、ソース電極のリチウムイオンキャパシタ75とドレイン電極側の昇圧コンバータ50、52とは切り離され、リチウムイオンキャパシタ75は回路に対して切り離される。この場合、リチウムイオンキャパシタ75に蓄電されている電流は、回路側には供給されなくなる。これらにより、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧を所定範囲内に収め、リチウムイオンキャパシタ75の過充電と過放電を抑制する。
【0048】
また、下限側電圧判定部25からの信号は、電源切替伝達部28にも伝達される。この電源切替伝達部28も下限側切替部26と同様に、下限側電圧判定部25からの信号がHiの場合はONになり、信号がLoの場合はOFFになる。また、下限側切替部26のドレイン電極は制御部40に接続され、ソース電極はグランドに接続されているため、制御部40は、下限側切替部26との間の電位差によって、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電不足を検出することができる。
【0049】
以上の実施形態に係る発電式水栓の電源回路1は、ダイオードブリッジ10を、2つの整流ダイオード12と2つのショットキーバリアダイオード14により構成し、さらに、この4つのダイオードのうち、同じ種類の2つのダイオードをリチウムイオンキャパシタ75の+側に接続し、他方の種類の2つのダイオードをリチウムイオンキャパシタ75の−側に接続している。これにより、発電機60で発電した電流をダイオードブリッジ10で整流する場合には、必ずショットキーバリアダイオード14を通すことができるため、電力の損失が小さい状態でリチウムイオンキャパシタ75によって蓄電することができる。
【0050】
また、ダイオードブリッジ10が有する2つの整流ダイオード12と2つのショットキーバリアダイオード14とのリチウムイオンキャパシタ75に対する接続を、上記のようにすることにより、リチウムイオンキャパシタ75からダイオードブリッジ10を流れる電流を、電流の方向に関わらず整流ダイオード12を通すことができる。これにより、ショットキーバリアダイオード14の逆方向の電流の漏れに起因する電流の漏洩を抑えることができる。これらの結果、発電機60で発電した電力を、より有効的に利用することができる。
【0051】
また、リチウムイオンキャパシタ75は、直列等価抵抗、漏れ電流共に低いため、蓄放電時の電気消費量が小さく、出力の変動も小さいので、過電圧防止回路への影響を低減できる。また、リチウムイオンキャパシタ75は、大電流供給も可能なので、出力側の大容量ケミコンの削減や省略を可能にすることができる。この結果、発電機60で発電した電力を、より有効的に利用することができる。
【0052】
なお、上述した電源回路1では、ダイオードブリッジ10は、リチウムイオンキャパシタ75の+側に2つの整流ダイオード12を接続するようにし、−側に2つのショットキーバリアダイオード14を接続するように構成しているが、これらの接続は反対でもよい。即ち、2つのショットキーバリアダイオード14を、リチウムイオンキャパシタ75の+側に接続するようにし、2つの整流ダイオード12を、リチウムイオンキャパシタ75の−側に接続するようにしてもよい。ダイオードブリッジ10は、リチウムイオンキャパシタ75の極性に関わらず、同じ種類のダイオードをリチウムイオンキャパシタ75の同じ極性側に接続するように構成すれば、接続するダイオードの種類とリチウムイオンキャパシタ75の極性との関係は問わない。
【0053】
また、上述した電源回路1では、リチウムイオンキャパシタ75の電圧の低下時は、制御部40側との接続を遮断しているのみであるが、リチウムイオンキャパシタ75の電圧が低下した場合には、使用者に異常を報知するようにしてもよい。これにより、異常時には早急な修理依頼が可能になり、補助電池80の無駄な消費を抑えることができる。
【0054】
また、上述した電源回路1では、蓄電手段としてリチウムイオンキャパシタ75を用いているが、蓄電手段はこれ以外でもよく、例えば、EDLC(電気二重層コンデンサ)を用いてもよい。蓄電手段の形態に関わらず、ダイオードブリッジ10を上述した構成にすることにより、発電機60で発電した電力を有効的に利用することができる。
【0055】
また、上述した電源回路1は、手を差し出したことを検知することにより自動的に吐水する自動水栓用の電源回路1であり、洗面台等で用いられる水栓を想定して説明しているが、電源回路1によって吐水の制御を行う発電式水栓は、これ以外のものでもよい。発電式水栓は、例えば、検出センサ44で人を検知して自動的に洗浄を行う小便器であってもよい。電源回路1で制御する発電式水栓は、検出対象物を検出センサ44で検出し、検出対象物の状態に応じて給水管を流れる水の吐水や止水を切り替えるものであれば、その用途は問わない。
【符号の説明】
【0056】
1 電源回路
10 ダイオードブリッジ(整流回路)
12 整流ダイオード
14 ショットキーバリアダイオード
20 上限側電圧判定部
21 上限側切替部
25 下限側電圧判定部
26 下限側切替部
28 電源切替伝達部
30 FET(電界効果トランジスタ)
40 制御部
44 検出センサ
50 制御部用昇圧コンバータ
52 電磁弁用昇圧コンバータ
55 吐止水弁制御回路
60 発電機
75 リチウムイオンキャパシタ(蓄電手段)
80 補助電池
85 吐止水弁(電磁弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管を流れる水の流れによって発電をする発電機と、
前記発電機で発電した交流電流を整流する整流回路と、
前記整流回路で整流した電流を蓄電する蓄電手段と、
前記蓄電手段で蓄電している電力によって吐水の制御を行う制御部と、
を備える発電式水栓の電源回路において、
前記整流回路は、2つの整流ダイオードと2つのショットキーバリアダイオードとを有するダイオードブリッジにより構成されており、
前記ダイオードブリッジは、前記蓄電手段の2つの極性側にそれぞれ接続される2つのダイオードが、極性側ごとに同じ種類の前記ダイオードになっていることを特徴とする発電式水栓の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−93994(P2013−93994A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235120(P2011−235120)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】