説明

監視カメラ装置

【課題】被写体の種類に応じて、優先的に実行される監視カメラ機能及びその実行順位を設定でき、監視活動の実効性を向上できる監視カメラ装置を提供する。
【解決手段】監視対象画像の動きを重視する動き優先モード、監視対象画像の色彩を重視するカラー優先モード、或いは監視対象画像のノイズの少なさを重視するS/N優先モードを、被写体照度の高低に応じて優先的に実行する順序を設定でき、監視活動の実効性を向上できる。また、レンズの絞り値の領域設定、AGC制御によるゲインが最大値の設定及びCCD蓄積時間の最大値の設定も、リモコン9により設定できるから、モニターに表示される撮像画像の画質を最適に保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視用カメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の監視カメラ装置は、低照度の被写体を撮像する際、モニターに表示される撮像画像を所定の画質に保持するため、監視カメラ機能として(a)撮像レンズの絞り量を変更するレンズ絞り機能、(b)撮像感度を変更するオートゲイン機能、(c)特定波長に対する色フィルタを着脱するフィルター着脱機能及び(d)撮像素子に電荷を蓄積する蓄積時間を変更する蓄積時間変更機能を備えていた。そして、該監視カメラ装置は、これらの機能を実行する順番を(a)〜(d)の順に固定していた。
【0003】
しかしながら、監視対象となる被写体の種類及び該被写体の照度によって、上記各監視カメラ機能(a)〜(d)の何れかを優先的に実行することにより、モニターに表示される撮像画像を所定の画質に保持することができる。例えば、監視対象画像の動きを重視する場合、監視対象画像の色彩を重視する場合、或いは監視対象画像のノイズの少なさを重視する場合の各場合で、被写体照度の高低に応じて優先的に実行される機能及びその実行順位を設定できれば、監視活動の実効性を向上できることが考えられる。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、解決しようとする問題点は、被写体の種類に応じて、優先的に実行される監視カメラ機能及びその実行順位を設定でき、監視活動の実効性を向上できる監視カメラ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するための請求項1に記載の監視カメラ装置は、被写体を撮像する際、モニターに表示される撮像画像を所定の画質に保持するため、撮像レンズの絞り量を制御するレンズ絞り制御手段、撮像感度を制御するオートゲイン制御手段、特定波長に対する色フィルタを着脱するフィルター着脱制御手段及び撮像素子に電荷を蓄積する蓄積時間を制御する蓄積時間制御手段を備え、各制御手段を順次作動させるようにした監視カメラ装置において、被写体の種類に応じて、前記各制御手段の作動順位を任意に設定できる作動順位設定手段を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の監視カメラ装置は、請求項1に記載の構成において、前記各制御手段の制御量に対するしきい値を任意に設定できるしきい値設定手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の監視カメラ装置によれば、作動順位設定手段により被写体の種類に応じて、撮像レンズの絞り量を制御するレンズ絞り制御手段、撮像感度を制御するオートゲイン制御手段、特定波長に対する色フィルタを着脱するフィルター着脱制御手段及び撮像素子に電荷を蓄積する蓄積時間を制御する蓄積時間制御手段の作動順位を任意に設定できるから、監視活動の実効性を向上できる監視カメラ装置を提供できる。
【0008】
請求項2に記載の監視カメラ装置によれば、前記各制御手段の制御量に対するしきい値を任意に設定できるしきい値設定手段を設けたから、モニターに表示される撮像画像の画質を最適に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
被写体の種類に応じて、優先的に実行される監視カメラ機能及びその実行順位を設定でき、監視活動の実効性を向上できる監視カメラ装置を提供するという目的を、撮像レンズの絞り量を制御するレンズ絞り制御手段、撮像感度を制御するオートゲイン制御手段、特定波長に対する色フィルタを着脱するフィルター着脱制御手段及び撮像素子に電荷を蓄積する蓄積時間を制御する蓄積時間制御手段の作動順位を任意に設定できる作動順位設定手段を設けることにより実現した。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本実施例に係る監視カメラ装置1の概略構成を示したブロック図である。監視カメラ装置1は、絞り機構を備えたレンズ装置2、IR(INFRARED)フィルタ3、撮像素子(CCD)4、信号処理チップ5、タイミングジェネレータ6、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという。)7及び画像メモリ8から構成されている。そして、設定用リモートコントローラ(以下、リモコンという。)9を備えている。
【0011】
上記マイコン7は、インストールされた制御プログラムを実行して後述する撮像レンズの絞り量を制御するレンズ絞り制御、撮像感度を制御するオートゲイン制御(以下、AGC制御制御という。)、特定波長に対する色フィルタを着脱するフィルター着脱制御及び撮像素子に電荷を蓄積する蓄積時間を制御する蓄積時間制御(以下、CCD蓄積時間制御という。)を行なう。
【0012】
このため、マイコン7はレンズ装置2からレンズ絞り値情報を得るとともに、絞り制御信号を出力する。また、マイコン7は、IRフィルタ3に対して着脱制御信号を出力する。信号処理チップ5は、撮像素子4からの画像信号を入力してその輝度情報をマイコン7に出力する。マイコン7からは、信号処理チップ5に対して、所定の制御信号が出力される。そして、信号処理チップ5は、タイミングジェネレータ6に対してタイミング信号を出力する。タイミングジェネレータ6は、このタイミング信号に基づいて、撮像素子4に対してCCD蓄積時間制御を行なう。
【0013】
また、信号処理チップ5は、撮像素子4からの画像信号を入力して画像メモリ8に記憶するとともに、所定のタイミングで読み出してNTSC等のコンポジットのビデオ信号に変換する。そして、図示しないモニターに送り画像を表示する。マイコン7に対しては、リモコン9により各種制御信号及び設定信号が送られる。
【0014】
図2は、マイコン7が実行するレンズ絞り制御処理の概略を示したフローチャートである。同図(a)は、監視カメラの輝度レベルが下がり画像が暗くなった場合のレンズ絞り制御処理を示したものである。処理が開始されると、ステップS10でレンズの絞り値が「0」(開放)になったかが判定される。肯定判定の場合は処理を終了する。否定判定ではステップS12に進みレンズ絞りをさらに開く(コントロール電圧を下げる。)。続いてステップS14では、ビデオ出力レベル(撮像素子4からの画像信号レベル)が標準レベル(100IRE(0.714Vp−p)、以下同じ。)になったかを判定する。否定判定では、ステップS10に戻ってレンズ絞り制御を継続する。肯定判定の場合は処理を終了する。
【0015】
図2(b)は、監視カメラの輝度レベルが上がり画像が明るくなった場合のレンズ絞り制御とこれに続くフィルター着脱制御処理を示したものである。処理が開始されると、ステップS100でレンズの絞り値が絞り側の最大値(クローズ)になったかが判定される。肯定判定の場合は処理を終了する。否定判定ではステップS102に進みレンズ絞りをさらに閉じる(コントロール電圧を上げる。)。続いてステップS104では、ビデオ出力レベルが標準レベルになったかを判定する。否定判定では、ステップS100に戻ってレンズ絞り制御を継続する。肯定判定の場合は、ステップS106でレンズの絞り値が設定された領域外となったかを判定する。
【0016】
絞り値の領域設定は、クローズ(0)から開放(255)の絞り値に対して、開放側を240,192,160,144,128,112の何れかに設定する。ステップS106で否定判定の場合は、画像信号レベルが標準レベルでありしかも絞り値の設定領域内であるため処理を終了する。肯定判定の場合は、画像信号レベルが標準レベルでありしかも絞り値の設定領域外であるため、レンズ絞り制御に続けてステップS108でフィルター着脱制御を行ない、IRフィルタ3を装着し処理を終了する。
【0017】
図3は、マイコン7が実行するAGC制御処理の概略を示したフローチャートである。同図(a)は、監視カメラの輝度レベルが下がり画像が暗くなった場合のAGC制御処理を示したものである。処理が開始されると、ステップS20でAGC制御によりゲインが最大値なったかが判定される。この最大値は、4,8,12,16,20,24dBの中から選択して設定できる。肯定判定の場合は処理を終了する。否定判定では、ステップS22に進みAGC制御のコントロール電圧を上げてゲインを上げる。続いてステップS24では、ビデオ出力レベルが標準レベルになったかを判定する。否定判定では、ステップS20に戻ってAGC制御を継続する。肯定判定の場合は処理を終了する。
【0018】
図3(b)は、監視カメラの輝度レベルが上がり画像が明るくなった場合のAGC制御処理を示したものである。処理が開始されると、ステップS120でAGC制御によりゲインが最小の0dBとなったかが判定される。肯定判定の場合は処理を終了する。否定判定では、ステップS122に進みAGC制御のコントロール電圧を下げてゲインを下げる。続いてステップS124では、撮像素子4からの画像信号レベルが標準レベルになったかを判定する。否定判定では、ステップS120に戻ってAGC制御を継続する。肯定判定の場合は処理を終了する。
【0019】
図4は、マイコン7が実行するCCD蓄積時間制御の概略を示したフローチャートである。同図(a)は、監視カメラの輝度レベルが下がり画像が暗くなった場合のCCD蓄積時間制御処理を示したものである。処理が開始されると、ステップS30でCCD蓄積時間が最大値なったかが判定される。この最大値は、2〜80フィールドの中から選択して設定できる。肯定判定の場合は処理を終了する。否定判定では、ステップS32に進みCCD蓄積時間を増やして表示画像の明度を高める。続いてステップS34では、ビデオ出力レベルが標準レベルになったかを判定する。否定判定では、ステップS30に戻ってCCD蓄積時間制御を継続する。肯定判定の場合は処理を終了する。
【0020】
図4(b)は、監視カメラの輝度レベルが上がり画像が明るくなった場合のCCD蓄積時間制御処理を示したものである。処理が開始されると、ステップS130でCCD蓄積時間が最小の1/60secとなったかが判定される。肯定判定の場合は処理を終了する。否定判定では、ステップS132に進みCCD蓄積時間を減らして表示画像の明度を下げる。続いてステップS134では、撮像素子4からの画像信号レベルが標準レベルになったかを判定する。否定判定では、ステップS130に戻ってCCD蓄積時間制御を継続する。肯定判定の場合は処理を終了する。
【0021】
本実施例に於ける監視カメラ装置1では、監視対象画像の動きを重視する場合、監視対象画像の色彩を重視する場合、或いは監視対象画像のノイズの少なさを重視する場合の各場合で、被写体照度の高低に応じて優先的に実行される上記各制御処理及びその実行順位を設定して高感度処理を行なう。図5はこの高感度処理の概略を示したフローチャートである。
【0022】
処理が開始されると、ステップS50で監視カメラの輝度レベルが設定レベル100IRE以下かが判定される。肯定判定の場合はステップS52で、制御モードを選択する。制御モードは、監視対象画像の動きを重視する動き優先モード、監視対象画像の色彩を重視するカラー優先モード及び監視対象画像のノイズの少なさを重視するS/N優先モードの3種類が設定されている。
【0023】
監視カメラの輝度レベルが設定値以下での動き優先モードの制御ルーチンでは、ステップS54のレンズ絞り制御(ステップS10〜14、以下同じ。)、ステップS56のAGC制御(ステップS20〜24、以下同じ。)、ステップS58のAGC制御によりゲインが最大値なったと判定された場合(ステップS20の肯定判定)のIRフィルタ3を外すフィルター着脱制御、ステップS60のCCD蓄積時間制御(ステップS30〜34、以下同じ。)の順に設定して制御する。カラー優先モードの制御ルーチンでは、ステップS62のレンズ絞り制御、ステップS64のAGC制御、ステップS66のCCD蓄積時間制御、ステップS68のCCD蓄積時間制御によりCCD蓄積時間が最大値なったと判定された場合(ステップS30の肯定判定)のIRフィルタ3を外すフィルター着脱制御の順に設定して制御する。
【0024】
また、S/N優先モードの制御ルーチンでは、ステップS70のレンズ絞り制御、ステップS72のCCD蓄積時間制御、ステップS74のCCD蓄積時間制御によりCCD蓄積時間が最大値なったと判定された場合(ステップS30の肯定判定)のIRフィルタ3を外すフィルター着脱制御、ステップS76のAGC制御の順に設定して制御する。
【0025】
上記ステップS50で否定判定の場合(監視カメラの輝度レベルが設定値100IREを超えた場合)は、ステップS78で制御モードを選択する。制御モードはステップS52の場合と同様、監視対象画像の動きを重視する動き優先モード、監視対象画像の色彩を重視するカラー優先モード及び監視対象画像のノイズの少なさを重視するS/N優先モードの3種類が設定されている。
【0026】
監視カメラの輝度レベルが設定値を超えた場合での動き優先モードの制御ルーチンでは、ステップS80のCCD蓄積時間制御(ステップS130〜134、以下同じ。)、ステップS82のAGC制御(ステップS120〜124、以下同じ。)、ステップS84のレンズ絞り制御(ステップS100〜106、以下同じ。)、ステップS86のレンズ絞り制御のレンズの絞り値が設定領域外となった場合(ステップS106の肯定判定)のIRフィルタ3を装着するフィルター着脱制御の順に設定して制御する。カラー優先モードの制御ルーチン(ステップS88〜94)は、上記動き優先モードの制御ルーチンと同一である。
【0027】
また、S/N優先モードの制御ルーチンは、ステップS96のAGC制御、ステップS97のCCD蓄積時間制御、ステップS98のレンズ絞り制御、ステップS99のレンズ絞り制御のレンズの絞り値が設定領域外となった場合(ステップS106の肯定判定)のIRフィルタ3を装着するフィルター着脱制御の順に設定して制御する。
【0028】
上記各優先モードは、リモコン9によりマイコン7に対して設定信号をおくることにより設定できる。また、レンズの絞り値の領域設定、AGC制御によるゲインが最大値の設定及びCCD蓄積時間の最大値の設定も、リモコン9により設定できる。
【0029】
上記したように、被写体の照度に応じて、撮像レンズの絞り量を制御するレンズ絞り制御、撮像感度を制御するAGC制御、特定波長に対する色フィルタを着脱するフィルター着脱制御及び撮像素子に電荷を蓄積する蓄積時間を制御するCCD蓄積時間制御の作動順位を任意に設定できる。従って、監視対象画像の動きを重視する動き優先モード、監視対象画像の色彩を重視するカラー優先モード、或いは監視対象画像のノイズの少なさを重視するS/N優先モードを、被写体照度の高低に応じて優先的に実行する順序を設定でき、監視活動の実効性を向上できる。
【0030】
また、レンズの絞り値の領域設定、AGC制御によるゲインが最大値の設定及びCCD蓄積時間の最大値の設定も、リモコン9により設定できるから、モニターに表示される撮像画像の画質を最適に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施例に係る監視カメラ装置の概略構成を示したブロック図である。
【図2】レンズ絞り制御処理の概略を示したフローチャートである。
【図3】AGC制御処理の概略を示したフローチャートである。
【図4】CCD蓄積時間制御の概略を示したフローチャートである。
【図5】高感度処理の概略を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 監視カメラ装置
2 レンズ装置
3 IRフィルタ
4 撮像素子
7 マイコン
9 リモコン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する際、モニターに表示される撮像画像を所定の画質に保持するため、撮像レンズの絞り量を制御するレンズ絞り制御手段、撮像感度を制御するオートゲイン制御手段、特定波長に対する色フィルタを着脱するフィルター着脱制御手段及び撮像素子に電荷を蓄積する蓄積時間を制御する蓄積時間制御手段を備え、各制御手段を順次作動させるようにした監視カメラ装置において、
被写体の種類に応じて、前記各制御手段の作動順位を任意に設定できる作動順位設定手段を設けたことを特徴とする監視カメラ装置。
【請求項2】
前記各制御手段の制御量に対するしきい値を任意に設定できるしきい値設定手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−86712(P2006−86712A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268361(P2004−268361)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】