直播機
【課題】本発明では、鉄コーティング種籾を播種する場合には、覆土板が自動的に作用しないようにして播種作業を軽快に行えるようにすることが課題である。
【解決手段】種籾ホッパーから繰り出される種籾が鉄コーティング種籾であるかを識別する識別センサ6と覆土板59を作用と引作用に切り換える制御装置4を設け、該識別センサ6で鉄コーティング種籾を判別すると、制御装置4が覆土板59を非作用に切り換えるよう制御して直播機を構成した。
【解決手段】種籾ホッパーから繰り出される種籾が鉄コーティング種籾であるかを識別する識別センサ6と覆土板59を作用と引作用に切り換える制御装置4を設け、該識別センサ6で鉄コーティング種籾を判別すると、制御装置4が覆土板59を非作用に切り換えるよう制御して直播機を構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、種籾を直接圃場へ播く直播機で、鉄コーティング種籾を播種するに適した技術に関する
【背景技術】
【0002】
直播機は、例えば、特開2008−22721号公報に記載の如く、走行車体上に設けた種籾タンクから移送案内された種籾を播種用点播ロールにて間欠的に繰り出して、播種用作溝器にて圃場に形成された播種溝に播種し覆土板で覆土するようにしている。
【特許文献1】特開2008−22721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
直播機で使用する種籾は、発芽や発根を良くするためにカルパー剤やその他の発芽発根剤がコーティングされている。また、圃場に播いた種籾が灌水によって浮き上がって移動しないように種籾の比重を高めるために鉄粉でコーティングした鉄コーティング種籾が使われる。この鉄コーティング種籾を使用すると、種籾を土中に埋める覆土作業の必要が無く、覆土板を作用させないで作業を行うと走行が軽快に行えるが、従来の直播機でカルパー剤コーティング種籾や鉄コーティング種籾を使い分けて播種する場合に、種籾の種類によって播種用作溝器と覆土板を着脱することは面倒である。
【0004】
そこで、本発明では、鉄コーティング種籾を播種する場合には、覆土板が自動的に作用しないようにして播種作業を軽快に行えるようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、種籾ホッパー48から繰り出される種籾が鉄コーティング種籾であるかを識別する識別センサ6と覆土板59を作用と引作用に切り換える制御装置4を設け、該識別センサ6で鉄コーティング種籾を判別すると、制御装置4が覆土板59を非作用に切り換えるよう制御して直播機を構成した。
【0006】
この構成で、鉄コーティング種籾を播種する場合には、覆土板59が作用しないので、軽快に播種作業を行える。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明では、カルパー剤コーティング種籾や鉄コーティング種籾を適宜に使い分けて播種する場合に、鉄コーティング種籾の場合には自動的に覆土板59を使用しなくなって切り換えの必要が無く、播種走行も覆土板59が作用していないので軽快である。また、覆土板59を非作用状態とすることにより、覆土量を少なくでき、種籾の発芽率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施例を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、施肥装置付きの乗用型の直播機の左側面図を示すものであり、この乗用型の直播機は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して直播装置47が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0009】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪10,10及び後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該前輪ファイナルケース13の変向可能な前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪10,10が取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸18a(図3参照)を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0010】
原動機となるエンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及び第二ベルト伝動装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内のトランスミッションにて変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けたクラッチケース25に伝達され、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0011】
図9は、施肥伝動機構28の一部を示し、クラッチケース25で回転駆動する施肥駆動軸86にクランクアーム87,87を取り付け、このクランクアーム87,87の先端にクランクピン89で枢支したクランクロッド88が往復運動を行い、施肥装置5を駆動する。
【0012】
施肥装置5は、肥料貯留タンク60に貯留されている肥料を肥料繰出部61,・・・によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,・・・でセンターフロート55とサイドフロート56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63(図7参照),・・・まで導き、施肥ガイド63,・・の前側に設けた播種用作溝器64,・・・によって播種条の側部近傍に形成される施肥構内に吐出するようになっている。肥料貯留タンク60の底部には、図10に示すごとく、エアチャンバ69を設け、モータ(図示せず)で駆動のブロア90でエンジンマフラ92の周りから吸引する温風を吸引ダクト91から左右方向に長いエアチャンバ69に吹き込んで肥料を温めて乾燥し、さらに施肥ホース62,・・・内に吹き込み、施肥ホース62,・・・内の肥料を植付部側の肥料吐出口へ強制的に移送するようになっている。
【0013】
吸引ダクト91内には高分子吸収剤などの乾燥剤を封入し、温風の水分を除去して肥料の乾燥が促進されるようにしている。また、図11に示すごとく、肥料貯留タンク60内の底部に金属フィルタ93を設け、その金属フィルタ93に繋がる伝熱線94をエアチャンバ69内に延ばして金属フィルタ93を加熱することでも肥料の乾燥を行う。
【0014】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びボンネット32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0015】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これら上リンク40と下リンク41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、直播装置47がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0016】
直播装置47の下部にはセンターフロート55及びサイドフロート56,56が設けられている。これらセンターフロート55とサイドフロート56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、センターフロート55とサイドフロート56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に直播装置47により種籾が播かれる。センターフロート55とサイドフロート56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、直播作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角センサ24により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて直播装置47を昇降させることにより、種籾の播種深さを常に一定に維持する。
【0017】
図2に、図1の直播装置47の整地ロータ支持構造の要部背面図を示し、図3に整地ロータ27とセンターフロート55とサイドフロート56,56部分の要部平面図を示す。
整地ロータ支持構造には、左右方向の支持杵と上下方向に伸びる両側辺部材からなる矩形の支持枠体65(図1)の両側辺部材に上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられている。該ロータ支持フレーム68の下端には整地用サイドロータ27aのサイドロータ駆動軸70aが取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、センターフロート55とサイドフロート56,56との配置位置の関係でセンターフロート55の前方にあるセンタロータ27bはサイドフロート56の前方にあるサイドロータ27aより前方に配置されている。そのためサイドロータ27aのサイドロータ駆動軸70aへの動力は後輪11のギヤケース18内の整地変速装置72(図1)等を介して伝達され、センタロータ27bのセンタロータ駆動軸70bは両方のサイドロータ27a,27aのサイドロータ駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される左右一対のチェーンケース73,73内の一対のチェーン(図示せず)から動力伝達される。
【0019】
なお、整地変速装置72内には変速ベルトコンベア操作モータ14があり、車速に応じて整地サイドロータ27a,27aの回転速度を変更することができる。
センタロータ27bのセンタロータ駆動軸70bは左右一対のチェーンケース73,73を介して支持されているだけなので、チェーンケース73,73の補強のために左右一対のチェーンケース73,73を橋渡しする補強部材74が設けられている。
【0020】
また、センタロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対の第一リンク部材76と第二リンク部材77によりスプリング78を介して吊り下げられている。この第一リンク部材76と第二リンク部材77は梁部材66に一端部が固着支持された第一リンク部材76と該第一リンク76の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材77からなり、該第二リンク部材77の他端部と補強部材74に回動自在に支持された取付片74aとの間に前記スプリング78が接続している。
【0021】
また、支持枠体65に取り付けたロータ昇降用モータ44のモータ軸には折曲片82が固着されている。そして前記ロータ昇降用モータ44のモータ軸が車両の左右方向に回動制御されると、支持枠体65の両側辺部材に回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがロータ昇降用モータ44のモータ軸の機体右方向(図2の矢印S方向)の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してセンタロータ27bを上方に上げることができる。センタロータ27bを上方に移動させると、センタロータ駆動軸70bとサイドロータ駆動軸70aを介してサイドロータ27aも同時に上方に移動する。
【0022】
本実施例ではロータ昇降用モータ44のモータ軸の標準位置で圃場面より40mmの高さにあるサイドロータ27a,27bを図2の矢印S方向への回動で標準位置より最大15mm高くでき、図2の矢印S方向の反対方向への回動で標準位置より最大15mm低くできるように設定している。
【0023】
本実施例の直播機は乗用4輪駆動走行形態の直播機であり、直播装置47は、図1に示すように通常は作業機として直播装置47がトラクタの後部に装着される。直播装置47はメインフレーム15の後側に、昇降可能な昇降リンク装置3を介して連結される。平行リンク40,41の後端の縦リンク43に直播装置47の中央部がローリング軸(図示せず)周りに回動自在に連結される。
【0024】
直播装置47は、上部の種籾ホッパー48から種籾を繰り出す繰出ロール49、種籾を繰出案内する繰出筒51、更に、この繰出筒51から繰出案内される種籾を下方に放出する種籾打込ロータ52及び放出筒53等からなる。そして、この直播装置47の下方には、播種フレーム58の下方に吊持され土壌面に接地して滑走するセンターフロート55とサイドフロート56,56を配置している。各センターフロート55とサイドフロート56,56の左右両側部に播種筒54が設けられて、上側部に各放出筒53及び繰出筒51下端部をのぞませて、下方に放出される種籾と肥料をセンターフロート55とサイドフロート56,56で均平にされる土壌面に案内する。
【0025】
なお、センターフロート55とサイドフロート56,56の両側には一対の播種用作溝器64と該播種用作溝器64でできた圃場の溝を埋める一対の覆土板59が設けられている。
【0026】
図4には、直播装置47の繰出部の円筒状の繰出ロール49部分を示す。繰出ロール49の外周には八等配位置に繰出穴50が形成され、所定量の種籾を上側の種籾ホッパー48内で受け入れる。繰出ロール49は回転方向Aが下方から種籾ホッパー48内に向かう位置でその外周面がホッパー器壁に接近し、種籾ホッパー48内から出る位置ではスクレーパブラシ79とガイド板80を接近或は擦接して設けているので、繰出ロール49の回転に伴って、種籾ホッパー48内で繰出穴50に溜まった所定粒数の種籾が下側で放出される。
【0027】
繰出ロール49上の種籾ホッパー48内には、種籾の色で鉄コーティング種籾を判別する色彩判別センサからなる識別センサ6を設けている。鉄コーティング種籾は茶色でカルパー剤コーティング種籾は白色になるので識別できる。この識別センサ6は、一定量の種籾の重量で比重の重い鉄コーティング種籾を判別する重量識別センサで構成しても良い。
【0028】
また、繰出筒51内には、鉄コーティング種籾の繰り出しを磁気変化で検出する種籾繰出しセンサ7を設けて、繰り出し量が減少したり無くなると警報を鳴らしたり操作パネルに籾繰出し異常を表示する。
【0029】
図5と図6には、繰出ロール49の別実施例を示す。この繰出ロール49の繰出穴50の回転後側壁37を回転方向に移動可能にすると共に回転方向前に向かって付勢して設け、この回転後側壁37を回転によって遠心力で放射方向へ移動する錘39とワイヤ38で連結し、繰出ロール49の回転が速くなると回転後側壁37が後退して種籾の放出力を弱めるようにしている。この実施例の繰出ロール49を使用すると回転速度が変化しても種籾の落下位置が変わらない。
【0030】
図7にはセンターフロート55とサイドフロート56,56部分の平面略図を示し、センターフロート55とサイドフロート56,56に設けられた覆土板59の作動用部材の機構図を示す。
【0031】
制御装置4により作動制御される覆土板作動用モータ9の入・切でワイヤ71を介して一対のアーム75,75を揺動させてアーム先端の覆土板59を矢印B方向に揺動させる。次に説明するように覆土板59が揺動することで播種用作溝器64が形成した溝に播種した種籾を覆土することができる。
【0032】
すなわち、覆土板作動用モータ9を切から入に動かすとワイヤ71を経由して一対のアーム75,75の基部が牽引され、各アーム75の先端に設けたトルクスプリング(図示せず)を介して所定の角度で連結している覆土板59が揺動する。
【0033】
制御装置4には、前記識別センサ6から種籾が鉄コーティング種籾であるかの情報が入力し、鉄コーティング種籾であれば種籾に覆土しなくても種籾が浮き上がったり鳥に捕食されたりすることが無いので、覆土板作動用モータ9に覆土板59を引作用位置に保持するように作動司令される。また、制御装置4からは種籾繰出用モータ8へ繰出ロール49の駆動・停止及び回転速度の制御信号が出力される。
【0034】
図8は、直播装置47の昇降を自動制御する制御装置4への制御信号入出力を示す制御ブロック図である。
入力信号は、ハンドル34の近傍に設けた播種終了スイッチ16から播種作業終了を作動させるためのオン・オフ信号、走行車体2に設けた前後傾斜角センサ17からの傾斜角度信号、後輪11の回転数を検出する後輪回転数センサ19からの回転数信号、昇降リンク装置3に設ける昇降リンクセンサ22からの直播装置47の走行車体2に対する位置信号、センターフロート55に設けた迎角センサ24からのセンターフロート55の傾き信号、植付スイッチ26から繰出ロール49を作動させるためのオン・オフ信号である。
【0035】
出力信号は、昇降油圧シリンダ46の伸縮を制御する播種部昇降用電磁バルブ29への伸縮指令信号と播種クラッチモータ85への繰出ロール49の駆動信号である。また、ロータ昇降用モータ44への整地ロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の昇降駆動信号である。さらに、ミッションケース12に付設する油圧無段変速装置の変速を行うトラにオン軸を回動する変速用アクチュエータ83への駆動信号である。
【0036】
制御装置4の制御は、播種終了スイッチ16をオンすると、ロータ昇降用モータ44に整地ロータ27を上昇させる制御を行い、迎角センサ24による直播装置47の油圧制御感度を敏感にし、変速用アクチュエータ83に油圧無段変速装置を減速にさせる制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】乗用型直播機の右側面図である。
【図2】乗用型直播機の一部拡大背面図である。
【図3】乗用型直播機の一部拡大平面図である。
【図4】種籾繰出しロールの側断面図である。
【図5】別実施例の種籾繰出しロールの側断面図である。
【図6】別実施例の種籾繰出しロールの一部拡大断面図である。
【図7】覆土板の作動連係図である。
【図8】制御ブロック図である。
【図9】別実施例を示す施肥装置駆動部の平面図である。
【図10】施肥装置における肥料乾燥部の斜視図である。
【図11】別実施例を示す施肥装置における肥料乾燥部の斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
4 制御装置
6 識別センサ
48 種籾ホッパー
59 覆土板
【技術分野】
【0001】
この発明は、種籾を直接圃場へ播く直播機で、鉄コーティング種籾を播種するに適した技術に関する
【背景技術】
【0002】
直播機は、例えば、特開2008−22721号公報に記載の如く、走行車体上に設けた種籾タンクから移送案内された種籾を播種用点播ロールにて間欠的に繰り出して、播種用作溝器にて圃場に形成された播種溝に播種し覆土板で覆土するようにしている。
【特許文献1】特開2008−22721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
直播機で使用する種籾は、発芽や発根を良くするためにカルパー剤やその他の発芽発根剤がコーティングされている。また、圃場に播いた種籾が灌水によって浮き上がって移動しないように種籾の比重を高めるために鉄粉でコーティングした鉄コーティング種籾が使われる。この鉄コーティング種籾を使用すると、種籾を土中に埋める覆土作業の必要が無く、覆土板を作用させないで作業を行うと走行が軽快に行えるが、従来の直播機でカルパー剤コーティング種籾や鉄コーティング種籾を使い分けて播種する場合に、種籾の種類によって播種用作溝器と覆土板を着脱することは面倒である。
【0004】
そこで、本発明では、鉄コーティング種籾を播種する場合には、覆土板が自動的に作用しないようにして播種作業を軽快に行えるようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、種籾ホッパー48から繰り出される種籾が鉄コーティング種籾であるかを識別する識別センサ6と覆土板59を作用と引作用に切り換える制御装置4を設け、該識別センサ6で鉄コーティング種籾を判別すると、制御装置4が覆土板59を非作用に切り換えるよう制御して直播機を構成した。
【0006】
この構成で、鉄コーティング種籾を播種する場合には、覆土板59が作用しないので、軽快に播種作業を行える。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明では、カルパー剤コーティング種籾や鉄コーティング種籾を適宜に使い分けて播種する場合に、鉄コーティング種籾の場合には自動的に覆土板59を使用しなくなって切り換えの必要が無く、播種走行も覆土板59が作用していないので軽快である。また、覆土板59を非作用状態とすることにより、覆土量を少なくでき、種籾の発芽率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施例を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、施肥装置付きの乗用型の直播機の左側面図を示すものであり、この乗用型の直播機は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して直播装置47が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0009】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪10,10及び後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該前輪ファイナルケース13の変向可能な前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪10,10が取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸18a(図3参照)を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0010】
原動機となるエンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及び第二ベルト伝動装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内のトランスミッションにて変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けたクラッチケース25に伝達され、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0011】
図9は、施肥伝動機構28の一部を示し、クラッチケース25で回転駆動する施肥駆動軸86にクランクアーム87,87を取り付け、このクランクアーム87,87の先端にクランクピン89で枢支したクランクロッド88が往復運動を行い、施肥装置5を駆動する。
【0012】
施肥装置5は、肥料貯留タンク60に貯留されている肥料を肥料繰出部61,・・・によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,・・・でセンターフロート55とサイドフロート56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63(図7参照),・・・まで導き、施肥ガイド63,・・の前側に設けた播種用作溝器64,・・・によって播種条の側部近傍に形成される施肥構内に吐出するようになっている。肥料貯留タンク60の底部には、図10に示すごとく、エアチャンバ69を設け、モータ(図示せず)で駆動のブロア90でエンジンマフラ92の周りから吸引する温風を吸引ダクト91から左右方向に長いエアチャンバ69に吹き込んで肥料を温めて乾燥し、さらに施肥ホース62,・・・内に吹き込み、施肥ホース62,・・・内の肥料を植付部側の肥料吐出口へ強制的に移送するようになっている。
【0013】
吸引ダクト91内には高分子吸収剤などの乾燥剤を封入し、温風の水分を除去して肥料の乾燥が促進されるようにしている。また、図11に示すごとく、肥料貯留タンク60内の底部に金属フィルタ93を設け、その金属フィルタ93に繋がる伝熱線94をエアチャンバ69内に延ばして金属フィルタ93を加熱することでも肥料の乾燥を行う。
【0014】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びボンネット32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0015】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これら上リンク40と下リンク41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、直播装置47がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0016】
直播装置47の下部にはセンターフロート55及びサイドフロート56,56が設けられている。これらセンターフロート55とサイドフロート56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、センターフロート55とサイドフロート56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に直播装置47により種籾が播かれる。センターフロート55とサイドフロート56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、直播作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角センサ24により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて直播装置47を昇降させることにより、種籾の播種深さを常に一定に維持する。
【0017】
図2に、図1の直播装置47の整地ロータ支持構造の要部背面図を示し、図3に整地ロータ27とセンターフロート55とサイドフロート56,56部分の要部平面図を示す。
整地ロータ支持構造には、左右方向の支持杵と上下方向に伸びる両側辺部材からなる矩形の支持枠体65(図1)の両側辺部材に上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられている。該ロータ支持フレーム68の下端には整地用サイドロータ27aのサイドロータ駆動軸70aが取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、センターフロート55とサイドフロート56,56との配置位置の関係でセンターフロート55の前方にあるセンタロータ27bはサイドフロート56の前方にあるサイドロータ27aより前方に配置されている。そのためサイドロータ27aのサイドロータ駆動軸70aへの動力は後輪11のギヤケース18内の整地変速装置72(図1)等を介して伝達され、センタロータ27bのセンタロータ駆動軸70bは両方のサイドロータ27a,27aのサイドロータ駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される左右一対のチェーンケース73,73内の一対のチェーン(図示せず)から動力伝達される。
【0019】
なお、整地変速装置72内には変速ベルトコンベア操作モータ14があり、車速に応じて整地サイドロータ27a,27aの回転速度を変更することができる。
センタロータ27bのセンタロータ駆動軸70bは左右一対のチェーンケース73,73を介して支持されているだけなので、チェーンケース73,73の補強のために左右一対のチェーンケース73,73を橋渡しする補強部材74が設けられている。
【0020】
また、センタロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対の第一リンク部材76と第二リンク部材77によりスプリング78を介して吊り下げられている。この第一リンク部材76と第二リンク部材77は梁部材66に一端部が固着支持された第一リンク部材76と該第一リンク76の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材77からなり、該第二リンク部材77の他端部と補強部材74に回動自在に支持された取付片74aとの間に前記スプリング78が接続している。
【0021】
また、支持枠体65に取り付けたロータ昇降用モータ44のモータ軸には折曲片82が固着されている。そして前記ロータ昇降用モータ44のモータ軸が車両の左右方向に回動制御されると、支持枠体65の両側辺部材に回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがロータ昇降用モータ44のモータ軸の機体右方向(図2の矢印S方向)の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してセンタロータ27bを上方に上げることができる。センタロータ27bを上方に移動させると、センタロータ駆動軸70bとサイドロータ駆動軸70aを介してサイドロータ27aも同時に上方に移動する。
【0022】
本実施例ではロータ昇降用モータ44のモータ軸の標準位置で圃場面より40mmの高さにあるサイドロータ27a,27bを図2の矢印S方向への回動で標準位置より最大15mm高くでき、図2の矢印S方向の反対方向への回動で標準位置より最大15mm低くできるように設定している。
【0023】
本実施例の直播機は乗用4輪駆動走行形態の直播機であり、直播装置47は、図1に示すように通常は作業機として直播装置47がトラクタの後部に装着される。直播装置47はメインフレーム15の後側に、昇降可能な昇降リンク装置3を介して連結される。平行リンク40,41の後端の縦リンク43に直播装置47の中央部がローリング軸(図示せず)周りに回動自在に連結される。
【0024】
直播装置47は、上部の種籾ホッパー48から種籾を繰り出す繰出ロール49、種籾を繰出案内する繰出筒51、更に、この繰出筒51から繰出案内される種籾を下方に放出する種籾打込ロータ52及び放出筒53等からなる。そして、この直播装置47の下方には、播種フレーム58の下方に吊持され土壌面に接地して滑走するセンターフロート55とサイドフロート56,56を配置している。各センターフロート55とサイドフロート56,56の左右両側部に播種筒54が設けられて、上側部に各放出筒53及び繰出筒51下端部をのぞませて、下方に放出される種籾と肥料をセンターフロート55とサイドフロート56,56で均平にされる土壌面に案内する。
【0025】
なお、センターフロート55とサイドフロート56,56の両側には一対の播種用作溝器64と該播種用作溝器64でできた圃場の溝を埋める一対の覆土板59が設けられている。
【0026】
図4には、直播装置47の繰出部の円筒状の繰出ロール49部分を示す。繰出ロール49の外周には八等配位置に繰出穴50が形成され、所定量の種籾を上側の種籾ホッパー48内で受け入れる。繰出ロール49は回転方向Aが下方から種籾ホッパー48内に向かう位置でその外周面がホッパー器壁に接近し、種籾ホッパー48内から出る位置ではスクレーパブラシ79とガイド板80を接近或は擦接して設けているので、繰出ロール49の回転に伴って、種籾ホッパー48内で繰出穴50に溜まった所定粒数の種籾が下側で放出される。
【0027】
繰出ロール49上の種籾ホッパー48内には、種籾の色で鉄コーティング種籾を判別する色彩判別センサからなる識別センサ6を設けている。鉄コーティング種籾は茶色でカルパー剤コーティング種籾は白色になるので識別できる。この識別センサ6は、一定量の種籾の重量で比重の重い鉄コーティング種籾を判別する重量識別センサで構成しても良い。
【0028】
また、繰出筒51内には、鉄コーティング種籾の繰り出しを磁気変化で検出する種籾繰出しセンサ7を設けて、繰り出し量が減少したり無くなると警報を鳴らしたり操作パネルに籾繰出し異常を表示する。
【0029】
図5と図6には、繰出ロール49の別実施例を示す。この繰出ロール49の繰出穴50の回転後側壁37を回転方向に移動可能にすると共に回転方向前に向かって付勢して設け、この回転後側壁37を回転によって遠心力で放射方向へ移動する錘39とワイヤ38で連結し、繰出ロール49の回転が速くなると回転後側壁37が後退して種籾の放出力を弱めるようにしている。この実施例の繰出ロール49を使用すると回転速度が変化しても種籾の落下位置が変わらない。
【0030】
図7にはセンターフロート55とサイドフロート56,56部分の平面略図を示し、センターフロート55とサイドフロート56,56に設けられた覆土板59の作動用部材の機構図を示す。
【0031】
制御装置4により作動制御される覆土板作動用モータ9の入・切でワイヤ71を介して一対のアーム75,75を揺動させてアーム先端の覆土板59を矢印B方向に揺動させる。次に説明するように覆土板59が揺動することで播種用作溝器64が形成した溝に播種した種籾を覆土することができる。
【0032】
すなわち、覆土板作動用モータ9を切から入に動かすとワイヤ71を経由して一対のアーム75,75の基部が牽引され、各アーム75の先端に設けたトルクスプリング(図示せず)を介して所定の角度で連結している覆土板59が揺動する。
【0033】
制御装置4には、前記識別センサ6から種籾が鉄コーティング種籾であるかの情報が入力し、鉄コーティング種籾であれば種籾に覆土しなくても種籾が浮き上がったり鳥に捕食されたりすることが無いので、覆土板作動用モータ9に覆土板59を引作用位置に保持するように作動司令される。また、制御装置4からは種籾繰出用モータ8へ繰出ロール49の駆動・停止及び回転速度の制御信号が出力される。
【0034】
図8は、直播装置47の昇降を自動制御する制御装置4への制御信号入出力を示す制御ブロック図である。
入力信号は、ハンドル34の近傍に設けた播種終了スイッチ16から播種作業終了を作動させるためのオン・オフ信号、走行車体2に設けた前後傾斜角センサ17からの傾斜角度信号、後輪11の回転数を検出する後輪回転数センサ19からの回転数信号、昇降リンク装置3に設ける昇降リンクセンサ22からの直播装置47の走行車体2に対する位置信号、センターフロート55に設けた迎角センサ24からのセンターフロート55の傾き信号、植付スイッチ26から繰出ロール49を作動させるためのオン・オフ信号である。
【0035】
出力信号は、昇降油圧シリンダ46の伸縮を制御する播種部昇降用電磁バルブ29への伸縮指令信号と播種クラッチモータ85への繰出ロール49の駆動信号である。また、ロータ昇降用モータ44への整地ロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の昇降駆動信号である。さらに、ミッションケース12に付設する油圧無段変速装置の変速を行うトラにオン軸を回動する変速用アクチュエータ83への駆動信号である。
【0036】
制御装置4の制御は、播種終了スイッチ16をオンすると、ロータ昇降用モータ44に整地ロータ27を上昇させる制御を行い、迎角センサ24による直播装置47の油圧制御感度を敏感にし、変速用アクチュエータ83に油圧無段変速装置を減速にさせる制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】乗用型直播機の右側面図である。
【図2】乗用型直播機の一部拡大背面図である。
【図3】乗用型直播機の一部拡大平面図である。
【図4】種籾繰出しロールの側断面図である。
【図5】別実施例の種籾繰出しロールの側断面図である。
【図6】別実施例の種籾繰出しロールの一部拡大断面図である。
【図7】覆土板の作動連係図である。
【図8】制御ブロック図である。
【図9】別実施例を示す施肥装置駆動部の平面図である。
【図10】施肥装置における肥料乾燥部の斜視図である。
【図11】別実施例を示す施肥装置における肥料乾燥部の斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
4 制御装置
6 識別センサ
48 種籾ホッパー
59 覆土板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種籾ホッパー(48)から繰り出される種籾が鉄コーティング種籾であるかを識別する識別センサ(6)と覆土板(59)を作用と引作用に切り換える制御装置(4)を設け、該識別センサ(6)で鉄コーティング種籾を判別すると、制御装置(4)が覆土板(59)を非作用に切り換えるよう制御した直播機。
【請求項1】
種籾ホッパー(48)から繰り出される種籾が鉄コーティング種籾であるかを識別する識別センサ(6)と覆土板(59)を作用と引作用に切り換える制御装置(4)を設け、該識別センサ(6)で鉄コーティング種籾を判別すると、制御装置(4)が覆土板(59)を非作用に切り換えるよう制御した直播機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−51214(P2010−51214A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218438(P2008−218438)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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