直流電源装置とそれを用いた機器
【課題】高調波電流低減と高力率を図った直流電源装置においてコンデンサに流れるリップル電流の最大値を低減する。
【解決手段】交流電源1とリアクトル8を介して接続されるダイオードブリッジ6と、ダイオードブリッジ6の交流入力端子と直流出力端子の間にスイッチ9を介して接続されるコンデンサ10と、ゼロクロス検出手段13と、スイッチ制御手段16と、直流電圧検出手段17および交流電圧推定手段19を備えた直流電源装置において、交流電源1の電圧が低下した際に目標電圧を下げることによりコンデンサ10に流れるリップル電流の増加を防ぐことが可能となる。
【解決手段】交流電源1とリアクトル8を介して接続されるダイオードブリッジ6と、ダイオードブリッジ6の交流入力端子と直流出力端子の間にスイッチ9を介して接続されるコンデンサ10と、ゼロクロス検出手段13と、スイッチ制御手段16と、直流電圧検出手段17および交流電圧推定手段19を備えた直流電源装置において、交流電源1の電圧が低下した際に目標電圧を下げることによりコンデンサ10に流れるリップル電流の増加を防ぐことが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流を直流に変換するとともに交流電源に流れる高調波電流を低減し、力率の改善を図る直流電源装置とそれを用いた機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、数kW出力程度までの直流電源装置においては、1個ないしは2個のスイッチを用いて、そのスイッチを交流電源の半周期に1度ないしは数度動作させることで交流電源の高調波電流を低減するとともに力率を改善し、交流を目標の直流電圧に変換する方式が取られてきた。
【0003】
例えば従来の単相入力の直流電源装置としては、交流電源からの交流を全波整流する4個のダイオードで形成されたブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路の直流出力端に接続された平滑コンデンサとを有し、交流電源とブリッジ整流回路の交流入力端との間に接続されたリアクトルと、ブリッジ整流回路の交流入力端と直流出力端との間にコンデンサを介して接続されたスイッチと、交流電源の電圧のゼロ点を検出するゼロクロス検出手段と、ゼロクロス検出手段の出力に基づきスイッチの駆動信号を生成するスイッチ駆動信号生成手段と、スイッチを駆動するスイッチ駆動手段を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、図面を参照しながら従来の直流電源装置について説明する。図6は特許文献1の図2に記載されているインバータエアコン用の直流電源装置の構成を示している。図6に示したインバ−タエアコン用の直流電源装置は、4つのダイオード2から5で形成されたブリッジ整流回路6と、交流電源1とを備えている。交流電源1とブリッジ整流回路6の交流入力端との間にはリアクタ8が、ブリッジ整流回路の交流入力端と直流出力端との間にはスイッチ9を介してコンデンサ10が接続されている。
【0005】
また、ブリッジ整流回路6の正の直流出力端6dと、負の直流出力端6cとの間には、平滑コンデンサ7が接続されている。この平滑コンデンサ7により、ブリッジ整流回路6によって得られた変化の激しい直流を滑らかな直流にすることができる。
【0006】
さらに、交流電源1の電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段13と、前記ゼロクロス検出手段13の出力に基づき、スイッチ9の駆動信号を生成するスイッチ駆動信号生成手段14とスイッチ駆動手段15を有している。
【0007】
スイッチ駆動信号生成手段14では、ゼロクロス検出手段13で検出されたゼロクロスタイミング信号に基づいて、直流電圧の目標値と直流電圧の検出値が一致するようにゼロクロスタイミング信号からのスイッチ9の駆動遅延時間とその駆動時間を計算し、スイッチ駆動手段15に駆動信号を送出する。
【0008】
次に、各部の電圧と電流の挙動について図7から図10を用いて説明する。ここで、図7と図8は交流電源1の電源電圧Viが正の半周期の間の動作を示し、図9と図10は電源電圧Viが負の半周期の間の動作を示す。また、図11は交流電源1の電源電圧Viとリアクトル8を流れるリアクトル電流IL、コンデンサ10を流れるコンデンサ電流Icとコンデンサ電圧Vc、スイッチ駆動手段15の駆動出力Vgおよび直流電圧Vdcを示した従来の直流電源装置の電圧電流波形図である。
【0009】
図7は電圧ゼロクロス点からの駆動遅延時間の経過後にスイッチ駆動手段15による駆
動出力Vgによってスイッチ9が導通したときの状態を示している。図7における矢印はその時の電流の流れを示したものである。(以下、図8から図10でも同様に矢印で電流の流れを示すものとする。)コンデンサ10にはスイッチ9の導通によりリアクトル8を介して充電が開始され、コンデンサ電流Icが流れ始める。そして、駆動時間の経過後にスイッチ9を開放するよう駆動出力Vgを停止する。
【0010】
図8は駆動時間の経過後の状態を示し、リアクトル8はスイッチ9が開放した時点のリアクトル電流ILによって蓄えられたエネルギーを放出するため、電源電圧Viと直流電圧Vdcとの差電圧を発生して平滑コンデンサ7を充電するよう電流を流す。
【0011】
次に、電源電圧Viが負の半周期の動作について説明する。電源電圧Viのゼロクロスからの駆動遅れ時間の経過後に駆動出力Vgによりスイッチ9が導通した状態を図9に示す。このとき、コンデンサ10には直流電圧Vdcに近い電圧まで充電されているため、コンデンサ10は放電のためのコンデンサ電流Icを流すことになる。そして、駆動時間の経過後に駆動出力Vgを停止することでスイッチ9は開放される。また、図10はその駆動時間の経過後、スイッチ9が開放された状態を示している。
【0012】
図10では、リアクトル8はスイッチ9が開放された時点に流れていたリアクトル電流ILによって蓄積されたエネルギーを放出するため、電源電圧Viと直流電圧Vdcの差電圧を発生して平滑コンデンサ7を充電するよう電流を流し、リアクトル電流ILが流れなくなるとスイッチ9が投入される前の初期状態に戻る。
【0013】
以上の一連の動作により、本実施の形態においてはリアクトル電流ILの通流角度を大きく広げることができ、リアクトル電流ILが正弦波に近づくことで高調波電流の低減と力率改善が実現できる。
【0014】
また、例えば従来の三相入力の直流電源装置としては、特許文献2の図1に記載された直流電源装置などがある(例えば、特許文献2参照)。
【0015】
これを図12に示し、その概要について以下に説明する。この三相入力の直流電源装置は、三相交流電源21と6つのダイオードから成る三相ブリッジ整流回路22の交流入力端の各々との間にリアクトル8u、8v、8wをそれぞれ接続し、スイッチ9u、9v、9wとコンデンサ10u、10v、10wを直列接続したものを三相ブリッジ整流回路22の各相の交流入力端と直流出力端との間に接続するよう構成した直流電源装置である。
【0016】
そして、スイッチ9u、9v、9wは各相電圧のゼロクロス点を検出する相電圧ゼロクロス検出手段29から得たゼロクロス信号に基づいてスイッチ駆動を制御するためのスイッチ制御手段16によって所定の時間だけ駆動され、このことにより商用周波数でコンデンサ10u、10v、10wの充電と放電を交互に繰り返すように制御されている。
【0017】
このように動作することによって、各相電流を相電圧の電圧ゼロクロス付近から立ち上げることができるとともに、リアクトル9u、9v、9wの作用によって入力電流波形を正弦波に近づけることが可能となり、力率の改善と高調波の低減を図ることができる。
【特許文献1】特開2003−106616号公報
【特許文献2】特開2006−121890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記従来の直流電源装置は、単相入力のものも三相入力のものについても、一定の交流電源電圧のもとで高調波電流低減を図り、出力電圧を直流電圧目標値に維持するようにス
イッチの動作が制御されているものである。
【0019】
しかしながら、交流電源電圧は一定とは限らず、交流電源電圧が低下した場合や、定常的に交流電源の電圧が定格電圧に対して低めの電圧値となって需要家において使用される場合には、出力電圧を維持するためスイッチの導通期間が大きくなり、コンデンサに流れるリップル電流が増大してしまう。
【0020】
一方、直流電源装置においては、リアクトルとコンデンサが最も体積の大きい部品であり、単品の部品としてはコスト比率も大きいことが一般的である。しかしながら、上記のようにコンデンサのリップル電流にはマージンを持った設計とする必要があるため、装置全体の体積、コストのアップの原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記従来の課題を解決するために、本発明の直流電源装置は交流電源電圧を検出することによって、交流電源電圧値の低下に応じて目標直流電圧を低下させ、コンデンサに流れるリップル電流の最大値を低減するよう構成したものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の直流電源装置は、交流電源の電圧が低下してもコンデンサに流れるリップル電流の増大を防ぐことができるため、最適なコンデンサ特性設計が可能となるものであり、コンデンサの体積とコスト低減により、直流電源装置全体の小型化と低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
第1の発明は、交流電源と、交流を全波整流する4個のダイオードで形成されたブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、交流電源とブリッジ整流回路の2つの交流入力端子のどちらか一方との間に接続されたリアクトルと、ブリッジ整流回路の交流入力端子といずれかの直流出力端子との間にコンデンサを介して接続されたスイッチと、交流電源の電圧のゼロ点を検出するゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、起動時の出力電圧から交流電源電圧の値を推定する交流電圧推定手段と、その推定した電圧値に基づき目標電圧を決定するとともにスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置であり、交流電源電圧に応じて出力電圧を変化させることによりコンデンサに流れるリップル電流を制限することができ、コンデンサ特性の最適設計が可能となることによって装置全体の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0024】
第2の発明は、第1の発明において交流電源の電圧が所定の値を下回った場合にのみ、目標電圧を交流電源電圧値に応じて一義的に定められる値とすることを特徴とする直流電源装置であり、コンデンサのリップル電流を制限しつつ、直流出力電圧の安定化を図ることができる。
【0025】
第3の発明は、交流電源と、交流を全波整流する4個のダイオードで形成されたブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、交流電源とブリッジ整流回路の2つの交流入力端子のどちらか一方との間に接続されたリアクトルと、ブリッジ整流回路の交流入力端子といずれかの直流出力端子との間にコンデンサを介して接続されたスイッチと、交流電源の電圧を検出する交流電圧検出手段と、交流電源のゼロ点を検出するゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、検出された電圧値に基づいて目標電圧を決定してスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置であり、起動時だけでなく運転中も交流電圧検出手段で検出した電圧値に応じて出力電圧を変化させることによりコンデンサに流れるリップル電
流を制限することができ、コンデンサ特性の最適設計が可能となることによって装置全体の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0026】
第4の発明は、第3の発明において交流電源の電圧が所定の値を下回った場合にのみ、目標電圧を交流電源電圧値に応じて一義的に定められる値とすることを特徴とする直流電源装置であり、コンデンサのリップル電流を制限しつつ、直流出力電圧の安定化を図ることができる。
【0027】
第5の発明は、三相交流電源と、6個のダイオードで形成された三相ブリッジ整流回路と、三相ブリッジ整流回路の直流出力端に接続された平滑コンデンサと、三相交流電源と三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端との間に接続されたリアクトルと、三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端と直流出力端との間にスイッチを介して接続されたコンデンサと、三相交流電源の各相の電圧ゼロクロス点を検出する相電圧ゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、起動時の出力電圧から交流電源電圧の値を推定する交流電圧推定手段と、交流電圧推定手段で推定した電圧値に基づき目標電圧を決定するとともにスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置であり、交流電源電圧に応じて出力電圧を変化させることによりコンデンサに流れるリップル電流を制限することができ、コンデンサ特性の最適設計が可能となることによって装置全体の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0028】
第6の発明は、第5の発明において、スイッチ制御手段は推定した三相交流電源電圧が所定の値を下回ったときに目標電圧を低減するよう動作することを特徴とした直流電源装置であり、コンデンサのリップル電流を制限しつつ、直流出力電圧の安定化を図ることができる。
【0029】
第7の発明は、三相交流電源と、6個のダイオードで形成された三相ブリッジ整流回路と、三相ブリッジ整流回路の直流出力端に接続された平滑コンデンサと、三相交流電源と三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端との間に接続されたリアクトルと、三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端と直流出力端との間にスイッチを介して接続されたコンデンサと、三相交流電源の電圧を検出する交流電圧検出手段と、三相交流電源の各相の電圧ゼロクロス点を検出する相電圧ゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、交流電圧検出手段で検出した電圧値に応じて目標電圧を決定するとともにスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置であり、起動時だけでなく運転中も交流電圧検出手段で検出した電圧値に応じて出力電圧を変化させることによりコンデンサに流れるリップル電流を制限することができ、コンデンサ特性の最適設計が可能となることによって装置全体の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0030】
第8の発明は、第7の発明においてスイッチ制御手段は交流電圧検出手段で検出した電圧値が所定の値を下回ったときに目標電圧を低減するよう動作することを特徴とした直流電源装置であり、コンデンサのリップル電流を制限しつつ、直流出力電圧の安定化を図ることができる。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における直流電源装置のブロック図である。図1において、交流電源1がブリッジ整流回路6で整流されたのち平滑コンデンサ7で直流に平滑され、負荷18に直流電圧を供給する基本構成は図6に示した従来例と同様である。また、ブリッジ整流回路6の交流入力端子と負極出力端子の間にコンデンサ10を介してスイッチ9が接続され、スイッチ制御手段16によってスイッチ9のオンオフ時間が調整されて高い入力力率で負荷18に直流電力を供給ができる動作についても従来と同様である
。
【0032】
ただし、本実施の形態においては、従来例に対して直流電圧を検出するための直流電圧検出手段17と、直流電源装置の起動時に直流電圧検出手段17によって検出された出力電圧から交流電源電圧を推定する交流電源電圧推定手段19とが追加されており、図6のスイッチ駆動信号生成手段14とスイッチ駆動手段15の機能については、スイッチ制御手段16に含めた構成としている。
【0033】
また、本実施の形態においては、スイッチ9の駆動時間を出力電圧が目標電圧と等しくなるよう、スイッチ制御手段16よって制御させる点において従来技術とは異なる。
【0034】
次に目標電圧を変化させることによる効果について図1と図2とを用いて説明する。 図2は交流電源電圧が変化した場合のリップル電流の変化を目標電圧別に示したリップル電流特性図であり、図1におけるリアクトル8を6mH、コンデンサ10を300uF、平滑コンデンサ7を4.8mFとして入力電力が3kWの場合の特性を示している。
【0035】
交流電源電圧が低下すると、出力電圧を維持しようとしてスイッチ9の導通時間が増えることに伴い、コンデンサ7に流れるリップル電流は増大する。しかし、目標電圧を312Vとした場合と300Vとした場合とでは全体的に1A強の電流差があり、目標電圧を下げることでリップル電流を低減することができる。
【0036】
本実施例は、このようなリップル電流特性を利用したものであり、電源電圧が低下するに従って目標電圧を下げ、それによってコンデンサ7のリップル電流を低減する。これによりコンデンサ7の最適設計が可能となり、ひいては装置全体の小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0037】
なお、本実施の形態においては交流電源電圧を推定して目標電圧を定めていたが、図3に示すように、交流電圧検出手段20を用いて交流電源電圧を直接検出するようにしても良い。
【0038】
また、本実施の形態においては交流電源電圧が変化すると必ず目標電圧も変化させるようにしてもよいが、リップル電流が許容値よりも低い範囲内での交流電源電圧の低下については目標電圧を一定としておき、リップル電流が許容値を超える交流電源電圧低下の場合のみ目標電圧を低下させるようにしてもよい。このようにすることにより出力電圧の安定化を図ることが可能となる。
【0039】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における直流電源装置のブロック図である。図4においては、図12に示した従来の三相入力の直流電源装置に対して、直流電圧を検出するための直流電圧検出手段17と、直流電源装置の起動時に直流電圧検出手段17によって検出された出力電圧から交流電源電圧を推定する交流電源電圧推定手段19が追加されている。
【0040】
また、本実施の形態においてはスイッチ9u、9v、9wの駆動時間を出力電圧が目標電圧と等しくなるようスイッチ制御手段16よって制御させる点において異なるが、相電圧のゼロクロスを基準としてスイッチ9u、9v、9wの駆動タイミングをとり、入力力率を高めるとともに高調波電流を低減する効果については実施の形態1と同様である。
【0041】
そして、本実施の形態においても目標電圧を変えなければ、実施の形態1で示したようにコンデンサ7u、7v、7wに流れるリップル電流は、交流電源電圧が低下すると出力
電圧を維持するためスイッチ9u、9v、9wの導通時間が増えることに伴って増大する。
【0042】
そこで、本実施の形態においても、リップル電流特性を利用して交流入力電圧が低下した場合に目標電圧を下げることでリップル電流を低減するものである。従って、本実施の形態では、入力電源が三相交流電源の直流電源装置においても、コンデンサ7u、7v、7wのリップル電流を低減できる。これによってコンデンサ7u、7v、7wの最適設計が可能となり、ひいては装置全体の小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0043】
なお、本実施の形態においては交流電源電圧を推定して目標電圧を定めていたが、図5に示すように交流電圧検出手段20を用いて交流電源電圧を直接検出するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施の形態においては、交流電源電圧が変化すると必ず目標電圧も変化させるようにしてもよいが、リップル電流が許容値よりも低い範囲内での交流電源電圧の低下については目標電圧を一定としておき、リップル電流が許容値を超える交流電源電圧低下の場合のみ目標電圧を低下させるようにしてもよい。このようにすることにより出力電圧の安定化を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる直流電源装置は、高調波電流低減と力率改善を実現する直流電源装置においてコンデンサの最大リップル電流を低減することを可能としたものであり、汎用インバータの入力段回路やエアコンまたは冷蔵庫などのコンプレッサを用いた家電機器の入力段回路の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1における直流電源装置のブロック図
【図2】コンデンサのリップル電流特性図
【図3】本発明の実施の形態1の交流電圧検出方法を変更した場合のブロック図
【図4】本発明の実施の形態2における直流電源装置のブロック図
【図5】本発明の実施の形態2の交流電圧検出方法を変更した場合のブロック図
【図6】従来の単相入力直流電源装置のブロック図
【図7】従来の単相入力直流電源装置の正の半周期でのスイッチオン時動作説明図
【図8】従来の単相入力直流電源装置の正の半周期でのスイッチオフ時動作説明図
【図9】従来の単相入力直流電源装置の負の半周期でのスイッチオン時動作説明図
【図10】従来の単相入力直流電源装置の負の半周期でのスイッチオフ時動作説明図
【図11】従来の単相入力直流電源装置の電圧電流波形図
【図12】従来の三相入力直流電源装置のブロック図
【符号の説明】
【0047】
1 交流電源
2、3、4、5、23、24、25、26、27、28 ダイオード
6 ブリッジ整流回路
7 平滑コンデンサ
8、8u、8v、8w リアクトル
9、9u、9v、9w スイッチ
10、10u、10v、10w コンデンサ
13 ゼロクロス検出手段
16 スイッチ制御手段
17 直流電圧検出手段
18 負荷
19 交流電圧推定手段
20 交流電圧検出手段
21 三相交流電源
22 三相ブリッジ整流回路
29 相電圧検出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流を直流に変換するとともに交流電源に流れる高調波電流を低減し、力率の改善を図る直流電源装置とそれを用いた機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、数kW出力程度までの直流電源装置においては、1個ないしは2個のスイッチを用いて、そのスイッチを交流電源の半周期に1度ないしは数度動作させることで交流電源の高調波電流を低減するとともに力率を改善し、交流を目標の直流電圧に変換する方式が取られてきた。
【0003】
例えば従来の単相入力の直流電源装置としては、交流電源からの交流を全波整流する4個のダイオードで形成されたブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路の直流出力端に接続された平滑コンデンサとを有し、交流電源とブリッジ整流回路の交流入力端との間に接続されたリアクトルと、ブリッジ整流回路の交流入力端と直流出力端との間にコンデンサを介して接続されたスイッチと、交流電源の電圧のゼロ点を検出するゼロクロス検出手段と、ゼロクロス検出手段の出力に基づきスイッチの駆動信号を生成するスイッチ駆動信号生成手段と、スイッチを駆動するスイッチ駆動手段を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、図面を参照しながら従来の直流電源装置について説明する。図6は特許文献1の図2に記載されているインバータエアコン用の直流電源装置の構成を示している。図6に示したインバ−タエアコン用の直流電源装置は、4つのダイオード2から5で形成されたブリッジ整流回路6と、交流電源1とを備えている。交流電源1とブリッジ整流回路6の交流入力端との間にはリアクタ8が、ブリッジ整流回路の交流入力端と直流出力端との間にはスイッチ9を介してコンデンサ10が接続されている。
【0005】
また、ブリッジ整流回路6の正の直流出力端6dと、負の直流出力端6cとの間には、平滑コンデンサ7が接続されている。この平滑コンデンサ7により、ブリッジ整流回路6によって得られた変化の激しい直流を滑らかな直流にすることができる。
【0006】
さらに、交流電源1の電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出手段13と、前記ゼロクロス検出手段13の出力に基づき、スイッチ9の駆動信号を生成するスイッチ駆動信号生成手段14とスイッチ駆動手段15を有している。
【0007】
スイッチ駆動信号生成手段14では、ゼロクロス検出手段13で検出されたゼロクロスタイミング信号に基づいて、直流電圧の目標値と直流電圧の検出値が一致するようにゼロクロスタイミング信号からのスイッチ9の駆動遅延時間とその駆動時間を計算し、スイッチ駆動手段15に駆動信号を送出する。
【0008】
次に、各部の電圧と電流の挙動について図7から図10を用いて説明する。ここで、図7と図8は交流電源1の電源電圧Viが正の半周期の間の動作を示し、図9と図10は電源電圧Viが負の半周期の間の動作を示す。また、図11は交流電源1の電源電圧Viとリアクトル8を流れるリアクトル電流IL、コンデンサ10を流れるコンデンサ電流Icとコンデンサ電圧Vc、スイッチ駆動手段15の駆動出力Vgおよび直流電圧Vdcを示した従来の直流電源装置の電圧電流波形図である。
【0009】
図7は電圧ゼロクロス点からの駆動遅延時間の経過後にスイッチ駆動手段15による駆
動出力Vgによってスイッチ9が導通したときの状態を示している。図7における矢印はその時の電流の流れを示したものである。(以下、図8から図10でも同様に矢印で電流の流れを示すものとする。)コンデンサ10にはスイッチ9の導通によりリアクトル8を介して充電が開始され、コンデンサ電流Icが流れ始める。そして、駆動時間の経過後にスイッチ9を開放するよう駆動出力Vgを停止する。
【0010】
図8は駆動時間の経過後の状態を示し、リアクトル8はスイッチ9が開放した時点のリアクトル電流ILによって蓄えられたエネルギーを放出するため、電源電圧Viと直流電圧Vdcとの差電圧を発生して平滑コンデンサ7を充電するよう電流を流す。
【0011】
次に、電源電圧Viが負の半周期の動作について説明する。電源電圧Viのゼロクロスからの駆動遅れ時間の経過後に駆動出力Vgによりスイッチ9が導通した状態を図9に示す。このとき、コンデンサ10には直流電圧Vdcに近い電圧まで充電されているため、コンデンサ10は放電のためのコンデンサ電流Icを流すことになる。そして、駆動時間の経過後に駆動出力Vgを停止することでスイッチ9は開放される。また、図10はその駆動時間の経過後、スイッチ9が開放された状態を示している。
【0012】
図10では、リアクトル8はスイッチ9が開放された時点に流れていたリアクトル電流ILによって蓄積されたエネルギーを放出するため、電源電圧Viと直流電圧Vdcの差電圧を発生して平滑コンデンサ7を充電するよう電流を流し、リアクトル電流ILが流れなくなるとスイッチ9が投入される前の初期状態に戻る。
【0013】
以上の一連の動作により、本実施の形態においてはリアクトル電流ILの通流角度を大きく広げることができ、リアクトル電流ILが正弦波に近づくことで高調波電流の低減と力率改善が実現できる。
【0014】
また、例えば従来の三相入力の直流電源装置としては、特許文献2の図1に記載された直流電源装置などがある(例えば、特許文献2参照)。
【0015】
これを図12に示し、その概要について以下に説明する。この三相入力の直流電源装置は、三相交流電源21と6つのダイオードから成る三相ブリッジ整流回路22の交流入力端の各々との間にリアクトル8u、8v、8wをそれぞれ接続し、スイッチ9u、9v、9wとコンデンサ10u、10v、10wを直列接続したものを三相ブリッジ整流回路22の各相の交流入力端と直流出力端との間に接続するよう構成した直流電源装置である。
【0016】
そして、スイッチ9u、9v、9wは各相電圧のゼロクロス点を検出する相電圧ゼロクロス検出手段29から得たゼロクロス信号に基づいてスイッチ駆動を制御するためのスイッチ制御手段16によって所定の時間だけ駆動され、このことにより商用周波数でコンデンサ10u、10v、10wの充電と放電を交互に繰り返すように制御されている。
【0017】
このように動作することによって、各相電流を相電圧の電圧ゼロクロス付近から立ち上げることができるとともに、リアクトル9u、9v、9wの作用によって入力電流波形を正弦波に近づけることが可能となり、力率の改善と高調波の低減を図ることができる。
【特許文献1】特開2003−106616号公報
【特許文献2】特開2006−121890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記従来の直流電源装置は、単相入力のものも三相入力のものについても、一定の交流電源電圧のもとで高調波電流低減を図り、出力電圧を直流電圧目標値に維持するようにス
イッチの動作が制御されているものである。
【0019】
しかしながら、交流電源電圧は一定とは限らず、交流電源電圧が低下した場合や、定常的に交流電源の電圧が定格電圧に対して低めの電圧値となって需要家において使用される場合には、出力電圧を維持するためスイッチの導通期間が大きくなり、コンデンサに流れるリップル電流が増大してしまう。
【0020】
一方、直流電源装置においては、リアクトルとコンデンサが最も体積の大きい部品であり、単品の部品としてはコスト比率も大きいことが一般的である。しかしながら、上記のようにコンデンサのリップル電流にはマージンを持った設計とする必要があるため、装置全体の体積、コストのアップの原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記従来の課題を解決するために、本発明の直流電源装置は交流電源電圧を検出することによって、交流電源電圧値の低下に応じて目標直流電圧を低下させ、コンデンサに流れるリップル電流の最大値を低減するよう構成したものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の直流電源装置は、交流電源の電圧が低下してもコンデンサに流れるリップル電流の増大を防ぐことができるため、最適なコンデンサ特性設計が可能となるものであり、コンデンサの体積とコスト低減により、直流電源装置全体の小型化と低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
第1の発明は、交流電源と、交流を全波整流する4個のダイオードで形成されたブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、交流電源とブリッジ整流回路の2つの交流入力端子のどちらか一方との間に接続されたリアクトルと、ブリッジ整流回路の交流入力端子といずれかの直流出力端子との間にコンデンサを介して接続されたスイッチと、交流電源の電圧のゼロ点を検出するゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、起動時の出力電圧から交流電源電圧の値を推定する交流電圧推定手段と、その推定した電圧値に基づき目標電圧を決定するとともにスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置であり、交流電源電圧に応じて出力電圧を変化させることによりコンデンサに流れるリップル電流を制限することができ、コンデンサ特性の最適設計が可能となることによって装置全体の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0024】
第2の発明は、第1の発明において交流電源の電圧が所定の値を下回った場合にのみ、目標電圧を交流電源電圧値に応じて一義的に定められる値とすることを特徴とする直流電源装置であり、コンデンサのリップル電流を制限しつつ、直流出力電圧の安定化を図ることができる。
【0025】
第3の発明は、交流電源と、交流を全波整流する4個のダイオードで形成されたブリッジ整流回路と、ブリッジ整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、交流電源とブリッジ整流回路の2つの交流入力端子のどちらか一方との間に接続されたリアクトルと、ブリッジ整流回路の交流入力端子といずれかの直流出力端子との間にコンデンサを介して接続されたスイッチと、交流電源の電圧を検出する交流電圧検出手段と、交流電源のゼロ点を検出するゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、検出された電圧値に基づいて目標電圧を決定してスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置であり、起動時だけでなく運転中も交流電圧検出手段で検出した電圧値に応じて出力電圧を変化させることによりコンデンサに流れるリップル電
流を制限することができ、コンデンサ特性の最適設計が可能となることによって装置全体の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0026】
第4の発明は、第3の発明において交流電源の電圧が所定の値を下回った場合にのみ、目標電圧を交流電源電圧値に応じて一義的に定められる値とすることを特徴とする直流電源装置であり、コンデンサのリップル電流を制限しつつ、直流出力電圧の安定化を図ることができる。
【0027】
第5の発明は、三相交流電源と、6個のダイオードで形成された三相ブリッジ整流回路と、三相ブリッジ整流回路の直流出力端に接続された平滑コンデンサと、三相交流電源と三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端との間に接続されたリアクトルと、三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端と直流出力端との間にスイッチを介して接続されたコンデンサと、三相交流電源の各相の電圧ゼロクロス点を検出する相電圧ゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、起動時の出力電圧から交流電源電圧の値を推定する交流電圧推定手段と、交流電圧推定手段で推定した電圧値に基づき目標電圧を決定するとともにスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置であり、交流電源電圧に応じて出力電圧を変化させることによりコンデンサに流れるリップル電流を制限することができ、コンデンサ特性の最適設計が可能となることによって装置全体の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0028】
第6の発明は、第5の発明において、スイッチ制御手段は推定した三相交流電源電圧が所定の値を下回ったときに目標電圧を低減するよう動作することを特徴とした直流電源装置であり、コンデンサのリップル電流を制限しつつ、直流出力電圧の安定化を図ることができる。
【0029】
第7の発明は、三相交流電源と、6個のダイオードで形成された三相ブリッジ整流回路と、三相ブリッジ整流回路の直流出力端に接続された平滑コンデンサと、三相交流電源と三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端との間に接続されたリアクトルと、三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端と直流出力端との間にスイッチを介して接続されたコンデンサと、三相交流電源の電圧を検出する交流電圧検出手段と、三相交流電源の各相の電圧ゼロクロス点を検出する相電圧ゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、交流電圧検出手段で検出した電圧値に応じて目標電圧を決定するとともにスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置であり、起動時だけでなく運転中も交流電圧検出手段で検出した電圧値に応じて出力電圧を変化させることによりコンデンサに流れるリップル電流を制限することができ、コンデンサ特性の最適設計が可能となることによって装置全体の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0030】
第8の発明は、第7の発明においてスイッチ制御手段は交流電圧検出手段で検出した電圧値が所定の値を下回ったときに目標電圧を低減するよう動作することを特徴とした直流電源装置であり、コンデンサのリップル電流を制限しつつ、直流出力電圧の安定化を図ることができる。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における直流電源装置のブロック図である。図1において、交流電源1がブリッジ整流回路6で整流されたのち平滑コンデンサ7で直流に平滑され、負荷18に直流電圧を供給する基本構成は図6に示した従来例と同様である。また、ブリッジ整流回路6の交流入力端子と負極出力端子の間にコンデンサ10を介してスイッチ9が接続され、スイッチ制御手段16によってスイッチ9のオンオフ時間が調整されて高い入力力率で負荷18に直流電力を供給ができる動作についても従来と同様である
。
【0032】
ただし、本実施の形態においては、従来例に対して直流電圧を検出するための直流電圧検出手段17と、直流電源装置の起動時に直流電圧検出手段17によって検出された出力電圧から交流電源電圧を推定する交流電源電圧推定手段19とが追加されており、図6のスイッチ駆動信号生成手段14とスイッチ駆動手段15の機能については、スイッチ制御手段16に含めた構成としている。
【0033】
また、本実施の形態においては、スイッチ9の駆動時間を出力電圧が目標電圧と等しくなるよう、スイッチ制御手段16よって制御させる点において従来技術とは異なる。
【0034】
次に目標電圧を変化させることによる効果について図1と図2とを用いて説明する。 図2は交流電源電圧が変化した場合のリップル電流の変化を目標電圧別に示したリップル電流特性図であり、図1におけるリアクトル8を6mH、コンデンサ10を300uF、平滑コンデンサ7を4.8mFとして入力電力が3kWの場合の特性を示している。
【0035】
交流電源電圧が低下すると、出力電圧を維持しようとしてスイッチ9の導通時間が増えることに伴い、コンデンサ7に流れるリップル電流は増大する。しかし、目標電圧を312Vとした場合と300Vとした場合とでは全体的に1A強の電流差があり、目標電圧を下げることでリップル電流を低減することができる。
【0036】
本実施例は、このようなリップル電流特性を利用したものであり、電源電圧が低下するに従って目標電圧を下げ、それによってコンデンサ7のリップル電流を低減する。これによりコンデンサ7の最適設計が可能となり、ひいては装置全体の小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0037】
なお、本実施の形態においては交流電源電圧を推定して目標電圧を定めていたが、図3に示すように、交流電圧検出手段20を用いて交流電源電圧を直接検出するようにしても良い。
【0038】
また、本実施の形態においては交流電源電圧が変化すると必ず目標電圧も変化させるようにしてもよいが、リップル電流が許容値よりも低い範囲内での交流電源電圧の低下については目標電圧を一定としておき、リップル電流が許容値を超える交流電源電圧低下の場合のみ目標電圧を低下させるようにしてもよい。このようにすることにより出力電圧の安定化を図ることが可能となる。
【0039】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における直流電源装置のブロック図である。図4においては、図12に示した従来の三相入力の直流電源装置に対して、直流電圧を検出するための直流電圧検出手段17と、直流電源装置の起動時に直流電圧検出手段17によって検出された出力電圧から交流電源電圧を推定する交流電源電圧推定手段19が追加されている。
【0040】
また、本実施の形態においてはスイッチ9u、9v、9wの駆動時間を出力電圧が目標電圧と等しくなるようスイッチ制御手段16よって制御させる点において異なるが、相電圧のゼロクロスを基準としてスイッチ9u、9v、9wの駆動タイミングをとり、入力力率を高めるとともに高調波電流を低減する効果については実施の形態1と同様である。
【0041】
そして、本実施の形態においても目標電圧を変えなければ、実施の形態1で示したようにコンデンサ7u、7v、7wに流れるリップル電流は、交流電源電圧が低下すると出力
電圧を維持するためスイッチ9u、9v、9wの導通時間が増えることに伴って増大する。
【0042】
そこで、本実施の形態においても、リップル電流特性を利用して交流入力電圧が低下した場合に目標電圧を下げることでリップル電流を低減するものである。従って、本実施の形態では、入力電源が三相交流電源の直流電源装置においても、コンデンサ7u、7v、7wのリップル電流を低減できる。これによってコンデンサ7u、7v、7wの最適設計が可能となり、ひいては装置全体の小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0043】
なお、本実施の形態においては交流電源電圧を推定して目標電圧を定めていたが、図5に示すように交流電圧検出手段20を用いて交流電源電圧を直接検出するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施の形態においては、交流電源電圧が変化すると必ず目標電圧も変化させるようにしてもよいが、リップル電流が許容値よりも低い範囲内での交流電源電圧の低下については目標電圧を一定としておき、リップル電流が許容値を超える交流電源電圧低下の場合のみ目標電圧を低下させるようにしてもよい。このようにすることにより出力電圧の安定化を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる直流電源装置は、高調波電流低減と力率改善を実現する直流電源装置においてコンデンサの最大リップル電流を低減することを可能としたものであり、汎用インバータの入力段回路やエアコンまたは冷蔵庫などのコンプレッサを用いた家電機器の入力段回路の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1における直流電源装置のブロック図
【図2】コンデンサのリップル電流特性図
【図3】本発明の実施の形態1の交流電圧検出方法を変更した場合のブロック図
【図4】本発明の実施の形態2における直流電源装置のブロック図
【図5】本発明の実施の形態2の交流電圧検出方法を変更した場合のブロック図
【図6】従来の単相入力直流電源装置のブロック図
【図7】従来の単相入力直流電源装置の正の半周期でのスイッチオン時動作説明図
【図8】従来の単相入力直流電源装置の正の半周期でのスイッチオフ時動作説明図
【図9】従来の単相入力直流電源装置の負の半周期でのスイッチオン時動作説明図
【図10】従来の単相入力直流電源装置の負の半周期でのスイッチオフ時動作説明図
【図11】従来の単相入力直流電源装置の電圧電流波形図
【図12】従来の三相入力直流電源装置のブロック図
【符号の説明】
【0047】
1 交流電源
2、3、4、5、23、24、25、26、27、28 ダイオード
6 ブリッジ整流回路
7 平滑コンデンサ
8、8u、8v、8w リアクトル
9、9u、9v、9w スイッチ
10、10u、10v、10w コンデンサ
13 ゼロクロス検出手段
16 スイッチ制御手段
17 直流電圧検出手段
18 負荷
19 交流電圧推定手段
20 交流電圧検出手段
21 三相交流電源
22 三相ブリッジ整流回路
29 相電圧検出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と、前記交流電源からの交流を全波整流する4個のダイオードで形成されたブリッジ整流回路と、前記ブリッジ整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、前記交流電源と前記ブリッジ整流回路の2つの交流入力端子のどちらか一方との間に接続されたリアクトルと、前記ブリッジ整流回路の交流入力端子といずれかの直流出力端子との間にコンデンサを介して接続されたスイッチと、前記交流電源の電圧のゼロ点を検出するゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、起動時の出力電圧から交流電源電圧の値を推定する交流電圧推定手段と、前記交流電圧推定手段で推定した電圧値に基づき目標電圧を決定するとともにスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記スイッチ制御手段は、前記交流電圧推定手段で推定した電圧値が所定の値を下回ったときに目標電圧を低減するよう動作することを特徴とした請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
交流電源と、前記交流電源からの交流を全波整流する4個のダイオードで形成されたブリッジ整流回路と、前記ブリッジ整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、前記交流電源と前記ブリッジ整流回路の2つの交流入力端子のどちらか一方との間に接続されたリアクトルと、前記ブリッジ整流回路の交流入力端子といずれかの直流出力端子との間にコンデンサを介して接続されたスイッチと、前記交流電源の電圧を検出する交流電圧検出手段と、前記交流電源のゼロ点を検出するゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、前記交流電圧検出手段で検出された電圧値に基づいて目標電圧を決定して前記スイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項4】
前記スイッチ制御手段は、前記交流電圧検出手段で検出した電圧値が所定の値を下回ったときに目標出力電圧を低減するよう動作することを特徴とした請求項3に記載の直流電源装置。
【請求項5】
三相交流電源と、6個のダイオードで形成された三相ブリッジ整流回路と、前記三相ブリッジ整流回路の直流出力端に接続された平滑コンデンサと、前記三相交流電源と前記三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端との間に接続されたリアクトルと、前記三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端と直流出力端との間にスイッチを介して接続されたコンデンサと、前記三相交流電源の各相の電圧ゼロクロス点を検出する相電圧ゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、起動時の出力電圧から前記三相交流電源の電圧を推定する交流電圧推定手段と、前記交流電圧推定手段で推定した電圧値に基づき目標電圧を決定するとともにスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項6】
前記スイッチ制御手段は、前記交流電圧推定手段で推定した電圧値が所定の値を下回ったときに目標電圧を低減するよう動作することを特徴とした請求項5に記載の直流電源装置。
【請求項7】
三相交流電源と、6個のダイオードで形成された三相ブリッジ整流回路と、前記三相ブリッジ整流回路の直流出力端に接続された平滑コンデンサと、前記三相交流電源と前記三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端との間に接続されたリアクトルと、前記三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端と直流出力端との間にスイッチを介して接続されたコンデンサと、前記三相交流電源の電圧を検出する交流電圧検出手段と、前記三相交流電源の各相の電圧ゼロクロス点を検出する相電圧ゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流
電圧検出手段と、前記交流電圧検出手段で検出した電圧値に基づき目標電圧を決定するとともに前記スイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項8】
前記スイッチ制御手段は、前記交流電圧検出手段で検出した電圧値が所定の値を下回ったときに目標電圧を低減するよう動作することを特徴とした請求項7に記載の直流電源装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の直流電源装置を備えた機器。
【請求項1】
交流電源と、前記交流電源からの交流を全波整流する4個のダイオードで形成されたブリッジ整流回路と、前記ブリッジ整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、前記交流電源と前記ブリッジ整流回路の2つの交流入力端子のどちらか一方との間に接続されたリアクトルと、前記ブリッジ整流回路の交流入力端子といずれかの直流出力端子との間にコンデンサを介して接続されたスイッチと、前記交流電源の電圧のゼロ点を検出するゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、起動時の出力電圧から交流電源電圧の値を推定する交流電圧推定手段と、前記交流電圧推定手段で推定した電圧値に基づき目標電圧を決定するとともにスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記スイッチ制御手段は、前記交流電圧推定手段で推定した電圧値が所定の値を下回ったときに目標電圧を低減するよう動作することを特徴とした請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
交流電源と、前記交流電源からの交流を全波整流する4個のダイオードで形成されたブリッジ整流回路と、前記ブリッジ整流回路の出力を平滑する平滑コンデンサと、前記交流電源と前記ブリッジ整流回路の2つの交流入力端子のどちらか一方との間に接続されたリアクトルと、前記ブリッジ整流回路の交流入力端子といずれかの直流出力端子との間にコンデンサを介して接続されたスイッチと、前記交流電源の電圧を検出する交流電圧検出手段と、前記交流電源のゼロ点を検出するゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、前記交流電圧検出手段で検出された電圧値に基づいて目標電圧を決定して前記スイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項4】
前記スイッチ制御手段は、前記交流電圧検出手段で検出した電圧値が所定の値を下回ったときに目標出力電圧を低減するよう動作することを特徴とした請求項3に記載の直流電源装置。
【請求項5】
三相交流電源と、6個のダイオードで形成された三相ブリッジ整流回路と、前記三相ブリッジ整流回路の直流出力端に接続された平滑コンデンサと、前記三相交流電源と前記三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端との間に接続されたリアクトルと、前記三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端と直流出力端との間にスイッチを介して接続されたコンデンサと、前記三相交流電源の各相の電圧ゼロクロス点を検出する相電圧ゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流電圧検出手段と、起動時の出力電圧から前記三相交流電源の電圧を推定する交流電圧推定手段と、前記交流電圧推定手段で推定した電圧値に基づき目標電圧を決定するとともにスイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項6】
前記スイッチ制御手段は、前記交流電圧推定手段で推定した電圧値が所定の値を下回ったときに目標電圧を低減するよう動作することを特徴とした請求項5に記載の直流電源装置。
【請求項7】
三相交流電源と、6個のダイオードで形成された三相ブリッジ整流回路と、前記三相ブリッジ整流回路の直流出力端に接続された平滑コンデンサと、前記三相交流電源と前記三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端との間に接続されたリアクトルと、前記三相ブリッジ整流回路の各相の交流入力端と直流出力端との間にスイッチを介して接続されたコンデンサと、前記三相交流電源の電圧を検出する交流電圧検出手段と、前記三相交流電源の各相の電圧ゼロクロス点を検出する相電圧ゼロクロス検出手段と、出力電圧を検出する直流
電圧検出手段と、前記交流電圧検出手段で検出した電圧値に基づき目標電圧を決定するとともに前記スイッチの駆動を制御するスイッチ制御手段とを備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項8】
前記スイッチ制御手段は、前記交流電圧検出手段で検出した電圧値が所定の値を下回ったときに目標電圧を低減するよう動作することを特徴とした請求項7に記載の直流電源装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の直流電源装置を備えた機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−99510(P2008−99510A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281100(P2006−281100)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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