説明

真空弁ユニット

【課題】真空弁ユニットの汚水槽内で発生する吸引音が外部に伝達されることで生じる騒音を低減可能な真空弁ユニットを提供すること。
【解決手段】汚水を貯留する汚水槽5と、開弁時に、汚水槽5に貯留された汚水を、汚水吸引管8から真空下水管1に送出可能に汚水槽5内に設けられた真空弁7と、汚水槽5に外気を供給可能に汚水槽5に接続された空気吸入管9と、を備えた真空弁ユニットであって、空気吸入管9の内部に、音を振動エネルギに変換して吸音可能な第1吸音部材11および第2吸音部材12が設けられていることを特徴とする真空弁ユニットとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空式下水道システムに用いられる真空弁ユニットに関し、特に、汚水吸引時の騒音低減を図るものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭や工場などの建物から排出される汚水を、真空圧を利用して搬送し集めるようにした真空式汚水収集システムが、例えば、特許文献1などにより知られている。
この真空式汚水収集システムは、家庭などの建物から汚水が導かれる汚水槽を有した真空弁ユニットと、汚水槽に貯留された汚水を、真空下水管を介して集める真空ステーションと、を備えている。そして、汚水槽に貯留された汚水が所定量に達すると、真空弁ユニット内の真空弁が開弁して真空下水管の負圧により、汚水槽内の汚水が真空下水管を介して真空ステーションに集められるようになっている。なお、真空ステーションに集められた汚水は、下流の下水処理施設に集められて所定の浄化処理を受けた後、河川などに放流される。
【0003】
真空弁ユニットは、前述した汚水槽を備えるとともに、汚水槽には、汚水槽下部から真空下水管に汚水を吸い上げる汚水吸引管が設けられ、この汚水吸引管と真空下水管との間には、汚水槽の汚水が所定量になると開弁する真空弁が設けられている。さらに、汚水槽には、外部から空気を取り入れる吸入路が設けられており、この吸入路は、大気中に開放されている。
したがって、汚水槽内に貯留された汚水および空気が真空下水管に吸引されたときには、吸入路から外気が汚水槽内に吸入され、汚水槽内の圧力低下が防止される。
【特許文献1】特開2001−81852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、真空弁ユニットにおいて、真空弁により汚水を真空下水管側に吸引する際に吸引音が発生するもので、特に、汚水が汚水吸引管に吸い上げられた後、空気を吸い上げる状態となったときに、大きな吸引音が発生する。そして、この吸引音が、汚水槽と外部とを常時連通する空気吸入管を介して外部に伝達されることで、真空弁ユニットの設置位置によっては、騒音となって問題となる。
【0005】
本発明は、上述の問題点に着目して成されたもので、真空弁ユニットの汚水槽内で発生する吸引音が外部に伝達されることで生じる騒音を低減可能な真空弁ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題に着目してなされたもので、請求項1に記載の発明は、建物から排出された汚水を貯留する汚水槽と、前記汚水槽の外部の真空下水管に接続される一方、前記汚水槽の下部に開口された汚水吸引管に接続されて、開弁時に、前記汚水槽に貯留された汚水を前記真空下水管に送出可能に前記汚水槽内に設けられた真空弁と、前記汚水槽に外気を供給可能に前記汚水槽に接続された空気吸入管と、を備えた真空弁ユニットであって、前記空気吸入管の内部に、吸音部材が設けられていることを特徴とする真空弁ユニットとした。吸音部材としては、周波数500〜2000Hzでの吸音力が大きい吸音材を採用した。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の真空弁ユニットにおいて、前記空気吸入管は、前記汚水槽への接続部位から横方向に延びる水平管部と、この水平管部から立ち上げられ、先端に外気を吸引する開口部が設けられた立上管部と、を備え、前記吸音部材が、前記立上管部に設けられていることを特徴とする真空弁ユニットとした。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の真空弁ユニットにおいて、前記吸音部材が、前記立上管部の内周に当接可能な筒状を成したグラスウールと、このグラスウールの内周に当接され、前記グラスウールの円筒形状を保持するとともに、その内側に空気流路を確保する網状の部材により筒状に形成された保持部材と、を備えていることを特徴とする真空弁ユニットとした。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の真空弁ユニットにおいて、前記吸音部材は、前記立上管部の開口部から挿込可能に形成され、かつ、前記吸音部材には、前記立上管部の所定位置に配置したときに、前記開口部に係合状態となって、それ以上の差込方向への移動を規制する係合部が設けられていることを特徴とする真空弁ユニットとした。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の真空弁ユニットにおいて、前記立上管部の開口部を空気流通可能な間隙を介して雨水の浸入を抑制可能に覆う吸入管ヘッドが設けられ、前記吸入管ヘッドにおいて、前記立上管部の開口部に対向する部分に、音の反射を抑制する反射防止部材が設けられていることを特徴とする真空弁ユニットとした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明では、真空弁を開弁さて汚水槽に貯留された汚水を吸引するときに生じる吸引音が、空気吸入管を介して外部に伝達される際に、空気吸入管に設けられた吸音部材により振動エネルギに変換することで、外部に伝達される騒音レベルを低減できる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、空気吸入管の立上管部に吸音部材を設けたため、吸音部材を水平管部に設けた場合と比較して、汚水槽に貯留された汚水が空気吸入管に流入したときに吸音部材が濡れることを抑制できる。よって、吸音性能を安定して維持することを図ることができる。
さらに、吸音部材は、重力を立上管部の軸方向に受けることになり、水平管部に設置して重力を軸直交方向に受ける場合よりも、吸音部材が重力によって変形することを抑制でき、吸音性能を安定して維持することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、吸音部材として使用しているグラスウールは、吸音性能が高いものの、形状保持が難しいが、グラスウールを、形状保持部材により円筒形状に保持するようにしたため、空気吸入管の空気流路を確保することができる。
加えて、形状保持部材は、網状に形成されていることで、グラスウールと空気との接触状態を保つことができ、空気吸入管を伝達される吸引音の吸音作用を確保することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、吸音部材を、立上管部の開口部から挿し込み可能であるため、吸音部材を立上管部に設置する作業は、真空弁ユニットの埋設前と埋設後のいずれでも実行可能であり、汎用性を高めることが可能となる。
また、吸音部材の設置時に、吸音部材を、立上管部の開口部から所定量だけ下方に挿し込んだ時点で、係合部が開口部の周縁に係合し、吸音部材を、その位置に保持させることができる。
このように、吸音部材は、開口部から挿し込んだだけで、保持されるため、設置作業が簡便であり、作業性に優れる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、立上管部の開口部から外部に伝達された音が、吸入管ヘッドで反射する際に、吸入管ヘッドに設けた反射防止部材により反射が抑制される。このため、外部に伝達される騒音レベルを低減させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態の真空弁ユニットは、建物(HU)から排出された汚水を貯留する汚水槽(5)と、前記汚水槽(5)の外部の真空下水管(1)に接続される一方、前記汚水槽(5)の下部に開口された汚水吸引管(8)に接続されて、開弁時に、前記汚水槽(5)に貯留された汚水を、汚水吸引管(8)から前記真空下水管(1)に送出可能に前記汚水槽(5)内に設けられた真空弁(7)と、前記汚水槽(5)に外気を供給可能に前記汚水槽(5)に接続された空気吸入管(9)と、を備えた真空弁ユニットであって、前記空気吸入管(9)の内部に、吸音部材(11,12)が設けられていることを特徴とする真空弁ユニットとした。
【実施例1】
【0017】
以下に、本発明の最良の形態の実施例1の真空弁ユニットAについて説明する。
実施例1の真空弁ユニットAについて説明するのにあたり、まず、この真空弁ユニットAを適用した真空式下水システムSIVの構成について説明する。
【0018】
真空式下水システムSIVは、図3に示すように、真空弁ユニットA、真空下水管1、真空ステーションSTを備えている。
【0019】
真空弁ユニットAは、住宅などの建物HUと汚水流入管2を介して接続されており、建物HUから排出される汚水を自流下により貯留可能に形成されている。
【0020】
真空弁ユニットAは、真空下水管1を介して真空ステーションSTに接続されており、真空ステーションSTに設けられた図示を省略した真空ポンプによる圧力差により、真空弁ユニットAに貯留された汚水を、真空ステーションSTに設けられた図示を省略した集水タンクに、集めることができるように構成されている。
なお、真空ステーションSTに集められた汚水は、排水管3を介して集合汚水処理場4に集められて所定の浄化処理を受けた後、河川などに放流される。
【0021】
次に、実施例1の真空弁ユニットAの構成について説明する。
真空弁ユニットAは、図1に示すように、地中に埋設される汚水槽5を備えている。この汚水槽5は、略円筒状に形成されており、上端部に設けられた開口部51が、蓋部材52で塞がれている。この汚水槽5としては、FRP樹脂製のものやコンクリート製のものなどが存在するが、本実施例1では、特に、硬質のレジンコンクリート製のものを用いている。
汚水槽5の中間部側面に、汚水流入管2が接続され、建物HU(図3参照)から排出される汚水は、汚水槽5の下部の汚水溜まり部53に貯留される。
【0022】
汚水槽5の中間部において、汚水流入管2の接続位置よりも上方位置に、真空下水管1が接続されている。この真空下水管1の先端部は、汚水槽5の内部に、略水平に挿入されており、その先端に、仕切弁6が接続されている。さらに、この仕切弁6の上流側には、真空弁7を介して汚水吸引管8が接続されている。
この汚水吸引管8は、その先端の開口8aが汚水溜まり部53に配置されるように、真空弁7との接続部分から下方に向けて屈曲されている。
なお、仕切弁6は、真空弁ユニットAのメンテナンスなどに際して、真空下水管1と真空弁7および汚水吸引管8内との連通状態を遮断するために設けられている。
【0023】
真空弁7は、汚水溜まり部53の水位が所定の高さになると開弁するもので、真空弁7から水位を検出する水位検出管71が汚水槽5の底部まで延びている。この水位検出管71は、汚水の水位の上昇に伴う圧力上昇を検知し、真空弁7は、この水位検出管71の圧力と、大気圧との差圧に基づき、設定水位となると開弁し、汚水吸引管8から汚水が吸引されない状態となった後、空気吸入管9から空気を所定時間吸入した時点で、閉弁するように構成されている。これらの制御は、真空弁7本体上部の真空弁コントローラ72で行っている。
【0024】
汚水槽5の中間部には、空気吸入管9が接続されている。この空気吸入管9は、樹脂あるいは金属(例えば、SUS)製の内径200mm程度の大きさの管であり、汚水槽5への接続位置から略水平に延びる水平管部91と、この水平管部91の先端から上方へ立ち上げられ、先端の開口部92aが、地表から略1〜2m程度の高さに配置される立上管部92と、により略L字状に形成されている。
なお、図2に示すように、立上管部92の上端部には、複数の吸気口92bが開口されており、この吸気口92bと開口部92aとの間に、覗き窓92cが開口されている。
【0025】
立上管部92の先端の開口部92aは、吸入管ヘッド94で覆われている。この吸入管ヘッド94は、開口部92aを上方から覆う円盤状の蓋部94aと、立上管部92の先端部を外周方向から覆う円筒状のフランジ部94bとにより、図示のように、略逆U字断面状に形成されている。そして、蓋部94aおよびフランジ部94bと、立上管部92との間には、空気の流通が可能な隙間95が確保されている。なお、吸入管ヘッド94は、立上管部92の先端部から外径方向に延びる複数の支持ロッド92dにより、立上管部92に支持されている。
【0026】
さらに、空気吸入管9の内部は、空気吸入管9よりも小径の吸気弁用吸気管96ならびにブリーザ管97が、配索されている。
吸気弁用吸気管96は、仕切弁6を介して、真空下水管1内に空気吸入管9内の空気を直接供給するもので、汚水槽5が水没した場合でも、真空下水管1内に確実に空気を供給可能としている。
ブリーザ管97は、真空弁7の作動のために必要な大気圧を真空弁コントローラ72に供給する配管である。
【0027】
これら吸気弁用吸気管96およびブリーザ管97は、図2に示すように、その先端の開口端分が、空気吸入管9の立上管部92の上端部において、吸気口92bよりも下方位置に配置されている。
【0028】
次に、真空弁ユニットAの吸音構造および遮音構造について説明する。
すなわち、本実施例1では、空気吸入管9に吸音構造が採用され、また、汚水槽5の開口部51に遮音構造が採用されている。
【0029】
まず、吸音構造について説明すると、本実施例1では、周波数500〜2000Hzでの吸音力が大きい吸音材を採用しており、空気吸入管9の立上管部92の上端部に、第1吸音部材11と、第2吸音部材12とが設けられている。
第1吸音部材11は、立上管部の内周に沿うように円筒状に形成され、立上管部92の吸気口92bよりも下方位置の内周に設置されており、上端部が吸気弁用吸気管96およびブリーザ管97の上端部と略同じ高さに配置されている。
この第1吸音部材11は、立上管部92の開口部92aから挿入可能な外径の略円筒状に形成されており、図2に示すように、内側の形状保持部材111と、この形状保持部材の外周に設けられたグラスウール112と、を備えている。
形状保持部材111は、グラスウール112を円筒状に形状保持させるとともに、空気吸入管9の中央部に直径110mm程度の空気流通用の空間である空気流路113を確保するもので、合成樹脂により網状に形成されている。
グラスウール112は、厚さ24mm程度で、180×360mm程度の長方形シート状のものを、複数枚重ねている。
【0030】
本実施例1では、形状保持部材111の外周にグラスウール112を積層状態で巻き付け、グラスウール112の外周に、さらに飛散防止用の図示を省略した不織布を巻き付けて第1吸音部材11を形成している。
そして、この第1吸音部材11は、立上管部92の開口部92aから所定高さまで挿し込んで、立上管部92の外周から複数のねじ98を内径方向に貫通させ、ねじ98を形状保持部材111に係合させて固定されている。
【0031】
第2吸音部材12は、立上管部92の開口部92aから挿入可能な外径の略円筒状に形成され、吸気口92bよりも上方位置の立上管部92の先端部の内周に設置されており、内周の吸音材121と、その外周の反射防止シート122とを備えている。
反射防止シート122は、音の反射を防止するもので、例えば、ウレタン製のシートで形成され円筒状に巻かれ、外周面が立上管部92の内周に接着材(例えば、両面接着シートなど)を用いて貼設されている。
吸音材121は、音を振動に変えて吸音するものであり、本実施例1では、内部に独立気泡素材の柔らかい発泡内面部を備え、外部がオレフィン系硬質発泡体により縦横両方向に凹凸が連続する形状に形成され、その表面にPET不織布で覆われたものを用いており、略長方形のシートを略円筒状に巻いている。
【0032】
吸入管ヘッド94の蓋部94aにおいて、立上管部92の開口部92aに対向する裏面には、反射防止部材13が貼設されている。この反射防止部材13は、音の反射を抑制するもので、本実施例1では、ウレタンシートが用いられている。
本実施例1では、遮音構造として、図1に示すように、汚水槽5の開口部51を塞いで遮音部材14が設けられている。
遮音部材14は、吸入音が開口部51を通過するのを抑制するものであり、開口部51を遮蔽して設置されている。本実施例1では、遮音部材14として、厚さ略50mmで、直径が開口部51を塞ぐことができるように、直径600mm程度の大きさの円盤状の発泡ウレタン材が用いられている。
さらに、本実施例1では、蓋部材52の裏面に、制振部材15が貼設されている。この制振部材15は、蓋部材52が吸引音により振動するのを抑制するもので、本実施例1では、下から順に、薄い金属シート、制振樹脂シート、粘着層を積層したもの(例えば、積水化学工業株式会社製の制振シート「レアルシルト」(商標))を用いている。
【0033】
次に、実施例1の作用について説明する。
真空弁ユニットAでは、建物HUから排出された汚水が、汚水溜まり部53に溜まって水位が所定以上になると、真空弁7が開弁し、溜まった汚水が吸引され、真空下水管1を介して、真空ステーションSTに送られる。
【0034】
そして、汚水槽5に溜まった汚水が送出され、汚水吸引管8の先端の開口8aから空気を吸い込む状態となると、所定時間空気吸入管9から空気を吸い込んだ後に、真空弁7が閉弁される。このような汚水の吸引動作において、特に、汚水の吸引後に空気を吸引する状態において、「ゴー」という吸込音が発生する。
【0035】
この汚水吸引管8で生じる吸引音が、汚水槽5の外部に伝達されると、周囲の状況によっては騒音として捉えられる場合がある。この吸引音が汚水槽5の外部に伝達される場合の経路としては、外部に連通された空気吸入管9を介して伝達される第1の経路と、蓋部材52を介して外部に伝達される第2の経路とが存在する。
【0036】
本実施例1では、第1の経路である空気吸入管9を介して伝達される場合に、立上管部92において、第1吸音部材11と第2吸音部材12とで、音が吸音材の振動に変換されることで吸収されるため、音圧(騒音レベル(dB))が低下する。
この場合、特に、第1吸音部材11と第2吸音部材12とを、直列に設けているため、いずれか一方のみの場合よりも、騒音レベルを低下させることができる。
【0037】
そして、これら両吸音部材11,12を通過した吸引音は、立上管部92の開口部92aから吸入管ヘッド94の蓋部94aで反射し、隙間95を介して外部に伝達されるが、蓋部94aで反射する際に、反射防止部材13により反射を抑制される。したがって、反射防止部材13を設けない場合よりも、騒音レベルをより一層低下させることができる。
【0038】
一方、第2の経路では、吸引音が開口部51を通過する際に、遮音部材14で遮音されることで、蓋部材52への伝達が抑制される。
さらに、蓋部材52では、裏面に制振部材15を貼設していることで、蓋部材52の振動が抑制され、蓋部材52が振動して、吸引音が汚水槽5の外部に伝達するのが抑制される。
【0039】
以上のような、第1の経路による吸音効果、反射抑制効果、および、第2の経路による遮音効果、および制振効果により、騒音レベルを大幅に低減することができた。
【0040】
この効果を検証するために、実際に、空気吸入管9から1m離れた位置で、道路から1.5mの高さに騒音計をセットして騒音レベルの測定を行なった。
この場合、比較のために、本実施例1のもので複数回の測定を実行するとともに、比較例として、第1・第2吸音部材11,12、反射防止部材13、遮音部材14、制振部材15を設けないものでも、複数回の測定を行なった。
【0041】
このとき、比較例の騒音レベルは、66〜69.7dBの範囲であり、その平均値は、70dBを僅かに下回る騒音レベルであった。これは、汚水槽5が、レジンコンクリート製で硬質であったため、特に、騒音レベルが高くなったと思われる。
【0042】
それに対し、本実施例1の場合の騒音レベルは、45〜48dBの範囲に収まっており、平均値は50dBを下回った。
なお、上述の測定時の暗騒音は、39〜43dBであった。
【0043】
以上説明したように、本実施例1の真空弁ユニットでは、以下に列挙する効果が得られる。
a)真空弁7を開弁させて汚水槽5に貯留された汚水を吸引するときに生じる吸引音が、空気吸入管9を介して外部に伝達される際に、空気吸入管9に設けられた第1吸音部材11および第2吸音部材12により、振動エネルギに変換され、外部に伝達される音量を低減できる。したがって、騒音の低減を図ることができる。
【0044】
b)第1吸音部材11と第2吸音部材12は、空気吸入管9の立上管部92の、それも上端部に設けたため、施工後であっても、後付の設置が容易である。加えて、両吸音部材11,12の両方あるいは一方を、水平管部91に設置した場合よりも、汚水槽5に貯留された汚水が空気吸入管9に浸入したときに両吸音部材11,12が汚水で濡れることを抑制でき、吸音性能を安定して維持することを図ることができる。
さらに、円筒形状の両吸音部材11,12は、重力を立上管部92の軸方向に受けることになり、水平管部91に設置して重力を軸直交方向に受ける場合よりも、円筒形状の両吸音部材11,12が重力によって変形することを抑制でき、吸音性能を安定して維持することができる。
【0045】
c)第1吸音部材11は、グラスウール112を使用している。このグラスウール112は、吸音材として高い性能が得られるものの、形状保持が難しい。それに対し、本実施例1では、グラスウール112を、内周に設けた形状保持部材111により、円筒形状を保持するようにしたため、安定して吸音性能を得ることができる。しかも、形状保持部材111は、網状のものを使用したため、グラスウール112と空気流路113とが空気接触状態を維持可能で、空気流路113を伝達される音の吸音性能を確保することができる。
さらに、グラスウール112は、雨水などに濡れても変質することが無く、乾燥後は、所期の吸音性能を得ることができ、吸音性能の安定性に優れる。
【0046】
d)立上管部92において、第1吸音部材11と第2吸音部材12とを、直列に並べて設置した。このため、両吸音部材11,12のいずれか一方のみを設けた場合よりも高い吸音性能を得ることが可能である。しかも、第1吸音部材11には、グラスウール112を用い、第2吸音部材12には、グラスウール112とは素材の異なる吸音材121を用いるようにした。したがって、第1吸音部材11と第2吸音部材12とで、異なる周波数帯の音を吸音可能であり、同じ素材の吸音部材を直列に並べるよりも、高い吸音性能を得ることが可能である。
【0047】
e)両吸音部材11,12は、空気吸入管9の開口部92aから挿し込み可能な外径の円筒形状に形成したため、設置の際には、空気吸入管9の製造時に設置可能であるのに加え、真空弁ユニットAの設置後であっても、両吸音部材11,12を設置することができ、汎用性に優れる。
【0048】
f)吸入管ヘッド94に反射防止部材13を設け、立上管部92の開口部92aから外部に伝達された音が、吸入管ヘッド94で反射するのを抑制するようにしたため、外部に伝達される音量を低減させることが可能である。
【0049】
g)汚水槽5の蓋部材52の手前に、遮音部材14を設けたため、吸引音が蓋部材52に伝達されるのを抑制し、この吸引音が蓋部材52を介して外部に伝達されるのを抑制することができる。
さらに、蓋部材52の裏面には、制振部材15を設け、蓋部材52が吸引音で振動するのを抑制するため、これによっても、吸引音が蓋部材52を介して外部に伝達されるのが抑制される。
【0050】
h)汚水槽5を高硬度のレジンコンクリートを用いて形成したため、汚水槽をFRP樹脂や一般的なコンクリートを用いて形成した場合よりも、汚水槽5の内部で吸引音が反響し、外部への伝達音、すなわち騒音が大きくなる。
そこで、本実施例1のように、第1吸音部材11、第2吸音部材12、反射防止部材13、遮音部材14、制振部材15を用いて、吸入音が外部に伝達されるのを抑制することが、より有効となる。
【0051】
(他の実施例)
以下に、本発明の実施の形態の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例は、実施例1の変形例であるため、実施例1との相違点のみを説明し、実施例1と同様の構成を図示する場合には実施例1と同じ符号を付けて説明を省略する。また、実施例1と同様の作用効果についても説明を省略する。
【実施例2】
【0052】
実施例2の真空弁ユニットは、第1吸音部材201の立上管部92へ固定する手段が実施例1のものと異なっている。
【0053】
すなわち、実施例2では、図4に示すように、第1吸音部材201の立上管部92への固定を、形状保持部材202に一体に形成した係合フランジ204により行うようにしている。すなわち、形状保持部材202は、実施例1で示した形状保持部材111と同様に、合成樹脂により網状に形成されたもので、この形状保持部材202に、第2吸音部材12の内周に挿通されて立上管部92の開口部92aに達する長さの延長部203が形成されている。そして、この延長部203の先端に、開口部92aの周縁に係合して、第1吸音部材201の下方への移動を規制して設置位置に保持する係合フランジ204が形成されている。
【0054】
したがって、第1吸音部材201および第2吸音部材12の設置時には、第2吸音部材12を第1吸音部材201の延長部203の上端部外周に装着させた状態で、第1吸音部材201および第2吸音部材12を立上管部92の開口部92aから順に挿し込む。そして、両吸音部材201,12が所定の位置に達したときに、係合フランジ204が開口部92aの周縁に係合し、それ以上の両吸音部材201,12のそれ以上の下方への移動が規制されるとともに、その位置に保持される。このとき、第1吸音部材201の立上管部92への挿し込み量を測定しなくても、係合フランジ204が係合することで、所定位置に達したことを把握できる。なお、その後、係合フランジ204をねじなどで、立上管部92に固定するのがより好ましい。
このように、実施例2では、第1吸音部材201の形状保持部材202に、第1吸音部材201の下方への移動を規制して、立上管部92に挿し込んだ状態を保持可能な係合フランジ204を設けたため、真空弁ユニットの設置時に、第1吸音部材201の挿し込み量を測定しなくても、所定の設置位置に配置されたことを把握できるとともに、それ以上の挿し込みが規制されるため、作業性に優れる。
【実施例3】
【0055】
実施例3の真空弁ユニットは、図5に示すように、空気吸入管9の水平管部91に、第3吸音部材301を設けた例である。なお、第3吸音部材301は、詳細な図示は省略するが、第1吸音部材11と同様に、形状保持部材111とグラスウール112とを内外に重ねて円筒形状に形成されている。
【0056】
この実施例3では、第3吸音部材301は、空気吸入管9に前もって設置するか、もしくは、施工時に、空気吸入管9を汚水槽5に接続する時点で挿入して、設置する。
【0057】
この実施例3では、第3吸音部材301を追加した分だけ、吸音性能が向上する。また、グラスウール112は、水に浸かったとしても、変質することなく、乾燥後には、吸音性能が復帰されるため、浸水の可能性がある箇所に用いるのに好適である。
【0058】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1〜3について詳述してきたが、具体的な構成は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0059】
例えば、実施例1〜3では、吸音部材を、空気吸入管9の一部に設置した例を示したが、空気吸入管の全体に亘って設けてもよい。また、吸音部材を立上管部92に設けるにあたって、実施例1では、その上端部に設けた例を示したが、立上管部の全体に亘って設けてもよい。また、吸音部材としては、吸音性能を有していれば、実施例で示した以外の素材のものを用いてもよい。
【0060】
また、実施例1〜3では、吸引音が、汚水槽5の蓋部材52から外部に伝達されるのを防止する遮音部材14および制振部材15を設けた例を示したが、これらは、いずれか一方のみを設けてもよい。また、吸引音が外部に伝達されるのを防止するには、外部と連通された空気吸入管9を介して伝達されるのを抑制するのが最も有効であり、蓋部材52を介した伝達を抑制する構成を設けなくても、所望の吸音性能は得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態の実施例1の真空弁ユニットAを示す断面図である。
【図2】実施例1の真空弁ユニットAに設けられた立上管部92の上端部に取り付けられた第1吸音部材11および第2吸音部材12を示す断面図である。
【図3】実施例1の真空弁ユニットAを含む真空式下水システムSIVを示す模式図である。
【図4】本発明実施例2の真空弁ユニットに設けられた立上管部92の上端部に取り付けられた第1吸音部材201および第2吸音部材12を示す断面図である。
【図5】本発明実施例3の真空弁ユニットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 真空下水管
5 汚水槽
7 真空弁
8 汚水吸引管
8a 開口
9 空気吸入管
11 第1吸音部材
12 第2吸音部材
13 反射防止部材
14 遮音部材
15 制振部材
52 蓋部材
92 立上管部
92a 開口部
94 吸入管ヘッド
95 隙間
111 形状保持部材
112 グラスウール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物から排出された汚水を貯留する汚水槽と、
前記汚水槽の外部の真空下水管に接続される一方、前記汚水槽の下部に開口された汚水吸引管に接続されて、開弁時に、前記汚水槽に貯留された汚水を前記真空下水管に送出可能に前記汚水槽内に設けられた真空弁と、
前記汚水槽に外気を供給可能に前記汚水槽に接続された空気吸入管と、
を備えた真空弁ユニットであって、
前記空気吸入管の内部に、吸音部材が設けられていることを特徴とする真空弁ユニット。
【請求項2】
前記空気吸入管は、前記汚水槽への接続部位から横方向に延びる水平管部と、この水平管部から立ち上げられ、先端に外気を吸引する開口部が設けられた立上管部と、を備え、
前記吸音部材が、前記立上管部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の真空弁ユニット。
【請求項3】
前記吸音部材が、前記立上管部の内周に当接可能な筒状を成したグラスウールと、このグラスウールの内周に当接され、前記グラスウールの円筒形状を保持するとともに、その内側に空気流路を確保する網状の部材により筒状に形成された保持部材と、を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空弁ユニット。
【請求項4】
前記吸音部材は、前記立上管部の開口部から挿込可能に形成され、かつ、前記吸音部材には、前記立上管部の所定位置に配置したときに、前記開口部に係合状態となって、それ以上の差込方向への移動を規制する係合部が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の真空弁ユニット。
【請求項5】
前記立上管部の開口部を空気流通可能な間隙を介して雨水の浸入を抑制可能に覆う吸入管ヘッドが設けられ、
前記吸入管ヘッドにおいて、前記立上管部の開口部に対向する部分に、音の反射を抑制する反射防止部材が設けられていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の真空弁ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−116693(P2010−116693A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289504(P2008−289504)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】