説明

石油残渣の燃料供給方法及び装置

【課題】石油精製設備から取り出される石油残渣を固形化し且つ固形状態を保持して火炉等の燃料として安定して供給できるようにする。
【解決手段】石油精製設備から取り出される石油残渣を固形化して燃料として供給するための石油残渣の燃料供給方法であって、石油残渣2と液化天然ガス5とを接触させ、液化天然ガス5が気化して気化天然ガス5aとなる気化冷熱を用いて石油残渣2を冷却・固化することにより固形燃料6を得、得られた固形燃料6を気化天然ガス5aが有する冷熱により固形状態を保持して火炉12に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油精製設備から取り出される石油残渣を固形化し且つ固形状態を保持して火炉等の燃料として安定して供給できるようにした石油残渣の燃料供給方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石油を精製する石油精製設備では、分子量が小さい軽質の油が分離され、最終的に石油ピッチ或いはアスファルト等の重質の油が石油残渣として取り出される。このような石油残渣は炭素分を多く含むため、有効利用されることが求められており、従来よりボイラ等の燃料として用いることが行われている。
【0003】
石油精製設備から取り出される石油残渣は通常高温に保持されているために流動性を有している。これらの石油残渣は、常温では一般に固形化した状態を呈しているが、数十℃の温度で軟化する(溶け始める)ものが多い。
【0004】
このような石油残渣をボイラやその他の火炉の燃料として利用するには、ハンドリング上の問題から石油残渣を液体或いは固形の状態にして供給する必要がある。
【0005】
石油残渣を液体燃料として供給する場合は、石油残渣を所定の流動性が保持される温度にまで加熱することになるが、この石油残渣を加熱するための手段、配管及び貯蔵設備を加熱する手段が必要であり、装置構成が複雑になると共に加熱のためのエネルギーが必要であり、しかも、粘性が高い液体燃料をポンプで搬送するには更に余分なエネルギーが必要になる問題がある。
【0006】
又、石油残渣を固形燃料として供給する場合は、粉砕工程等で粉砕する際に温度が上昇して軟化することにより、粉砕が不能になってしまう場合があり、又、外気温度の上昇によっても軟化して搬送等のハンドリングができなくなる場合がある。
【0007】
しかし、石油残渣を固形燃料として供給する方法によれば、石油残渣を液体燃料として供給する方法に比して設備の簡略化、エネルギーの削減が図れることから、従来より石油残渣は固形燃料として供給する方法が主に採用されている。
【0008】
石油残渣を固形化する方法としては、ペレット状に形成した石油残渣を水スプレイ或いは水浴区中で固形状態するようにしたものがある(特許文献1)。
【0009】
又、石油残渣を多孔ノズルにより造粒塔内に噴霧し、造粒塔に冷風を吹き込むことにより石油残渣を固形化するようにしたものがある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−192671号公報
【特許文献2】特開昭59−147092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に示されるように、ペレット状に形成した石油残渣を水スプレイ或いは水浴区中で固形化する場合には、大量の冷却水が必要であり、従って水を循環使用する場合においても、昇温した水の温度を下げるために大きな設備が必要になるという問題がある。
【0011】
又、特許文献2に示されるように、石油残渣を多孔ノズルにより噴霧して冷風により固形状態する場合においても、前記冷却水に比して更に大量の冷却空気が必要となるため、設備が更に大型になるという問題がある。
【0012】
更に、特許文献1、2のいずれにおいても、石油残渣を固形化した固形燃料を粉砕する場合には粉砕時に温度が上昇して軟化するために粉砕が不能になる場合があり、又、外気温度の上昇によっても軟化して搬送等のハンドリングができなくなる場合があるため、火炉等の燃料として安定して供給することができないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、石油精製設備から取り出される石油残渣を固形化し且つ固形状態を保持して火炉等の燃料として安定して供給できるようにした石油残渣の燃料供給方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、石油精製設備から取り出される石油残渣を固形化して燃料として供給するための石油残渣の燃料供給方法であって、石油残渣と液化天然ガスとを接触させ、液化天然ガスが気化して気化天然ガスとなる気化冷熱を用いて石油残渣を冷却・固化することにより固形燃料を得、得られた固形燃料を前記気化天然ガスが有する冷熱により固形状態を保持して火炉に供給することを特徴とする石油残渣の燃料供給方法、に係るものである。
【0015】
上記石油残渣の燃料供給方法において、固形燃料を、気化天然ガスに空気を熱交換させて得られた搬送用冷却空気によって火炉に供給することは好ましい。
【0016】
又、上記石油残渣の燃料供給方法において、固形燃料を、気化天然ガスによって火炉に供給することは好ましい。
【0017】
又、上記石油残渣の燃料供給方法において、固形燃料を微粉砕機により微粉砕して微粉固形燃料を得ることは好ましい。
【0018】
又、上記石油残渣の燃料供給方法において、石油残渣を微粒化ノズルにより噴射し液化天然ガスと接触させて微粒固形燃料を得ることは好ましい。
【0019】
本発明は、石油精製設備から取り出される石油残渣を固形化して燃料として供給するための石油残渣の燃料供給装置であって、石油残渣と液化天然ガスとを接触させ、液化天然ガスが気化して気化天然ガスとなる際の気化冷熱を用いて石油残渣を冷却・固化することにより固形燃料を得る石油残渣固化装置と、前記気化天然ガスに空気を熱交換させて搬送用冷却空気を得る熱交換器と、該熱交換器からの搬送用冷却空気により前記石油残渣固化装置で固化した固形燃料を火炉に搬送するための空気搬送流路とを有することを特徴とする石油残渣の燃料供給装置、に係るものである。
【0020】
上記石油残渣の燃料供給装置において、前記熱交換器及び前記空気搬送流路に代えて、気化天然ガスにより固形燃料を火炉に搬送する天然ガス搬送流路を有することは好ましい。
【0021】
又、上記石油残渣の燃料供給装置において、固形燃料を微粉砕して微粉固形燃料とする微粉砕機を備えることは好ましい。
【0022】
又、上記石油残渣の燃料供給装置において、石油残渣固化装置に、石油残渣を微粒状に噴射する微粒化ノズルを備えることは好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の石油残渣の燃料供給方法及び装置によれば、液化天然ガスを気化天然ガスとして出荷する際の気化冷熱を利用して石油残渣を冷却・固化して固形燃料を得、得られた固形燃料を気化天然ガスが有する冷熱により固形状態を保持して火炉に供給するようにしたので、液化天然ガス出荷時の冷熱を有効に利用した簡単な構成によって、石油残渣から固形燃料を生成する操作と、火炉へ固形燃料を供給する操作を安定して行えるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1は本発明を実施する石油残渣の燃料供給装置の形態の一例を示すものであり、石油精製設備1から取り出される所要の粘性を有する石油残渣2を石油残渣固化装置3に供給し、これと同時に液化天然ガス貯蔵タンク4に−160℃で貯蔵されている液化天然ガス5(LNG)を取り出して前記石油残渣固化装置3に供給し、石油残渣固化装置3において石油残渣2と液化天然ガス5とを接触させることにより、液化天然ガス5が気化して気化天然ガスとなる際の気化冷熱を用いて石油残渣2を冷却・固化して固形燃料6を生成するようにしている。ここで、石油精製設備1と液化天然ガス貯蔵タンク4は、港に近い同一地域に設置される場合が多いため、液化天然ガス貯蔵タンク4から気化天然ガスを出荷する際の気化冷熱を利用して石油残渣2を効果的に冷却・固化することができる。石油残渣固化装置3で生成した固形燃料6は下部の貯留タンク7に落下して貯留されるようになっている。前記石油残渣固化装置3では流動性が低い石油残渣2を例えば3〜5mm径の開口から押し出すことによって粒径が10mm以下程度の固形燃料6が生成されるようにしている。
【0026】
前記液化天然ガス5が石油残渣2を冷却して気化することにより石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aは、熱交換器8に導かれて空気9と熱交換することにより搬送用冷却空気9aを生じるようにしている。そして、搬送用冷却空気9aは、前記貯留タンク7の下部に設けたエゼクタ等の搬送装置10に供給され、貯留タンク7に貯留された固形燃料6を前記搬送用冷却空気9aにより空気搬送流路11を介して火炉12に供給するようにしている。
【0027】
図1の形態での火炉12としては、流動層燃焼炉13と、該流動層燃焼炉13の燃焼排ガスから流動媒体を分離し、分離した流動媒体を再び流動層燃焼炉13に導くサイクロン分級器等の分離器14を備えた循環流動層ボイラ、或いは、図示しないが流動媒体を加熱する流動層燃焼炉と分離器とガス化炉を備えて流動媒体を循環させ、加熱された流動媒体によってガス化炉において原料のガス化を行うようにした循環流動層ガス化炉のように、流動層燃焼炉13を備えている火炉12が好ましく、流動層燃焼炉13からなる火炉12の場合には、前記したような粒径が10mm以下程度の粗粒子の固形燃料6を有効に燃焼させることができる。
【0028】
図2は、前記図1の形態に類似した形態の一例を示すものであり、図1の形態では貯留タンク7に貯留された固形燃料6を搬送用冷却空気9aによって空気搬送流路11を介して流動層燃焼炉13からなる火炉12に供給するようにしているが、図2の形態では、前記石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aの一部を、貯留タンク7の下部に設けたエゼクタ等の搬送装置10に供給することにより、気化天然ガス5aによって固形燃料6を天然ガス搬送流路15を介して流動層燃焼炉13からなる火炉12に供給するようにしている。その他の構成については、図1の形態と同様である。
【0029】
図1の形態では、石油精製設備1から取り出される石油残渣2と液化天然ガス貯蔵タンク4から取り出した液化天然ガス5とが石油残渣固化装置3に供給され、石油残渣2と液化天然ガス5が接触することによって、液化天然ガス5が気化して気化天然ガスとなる際の気化冷熱によって石油残渣2が冷却・固化されて固形燃料6が生成される。生成した固形燃料6は貯留タンク7に落下して貯留される。このとき、石油残渣固化装置3では粒径が10mm以下程度の固形燃料を生成するようにしている。
【0030】
石油残渣固化装置3において液化天然ガス5が気化することにより取り出された気化天然ガス5aは熱交換器8に導かれ、空気9と熱交換することにより搬送用冷却空気9aを得る。搬送用冷却空気9aは前記貯留タンク7の下部に設けたエゼクタ等の搬送装置10に供給されることにより、貯留タンク7に貯留された固形燃料6は前記搬送用冷却空気9aによって空気搬送流路11を介して流動層燃焼炉13からなる火炉12に供給される。この時、固形燃料6は搬送用冷却空気9aによって搬送されるために低温が保持され、よって固形燃料6が軟化する問題を防止して安定して火炉12へ供給することができる。前記搬送用冷却空気9aは流動層燃焼炉13に対して燃焼用空気の一部として供給される。
【0031】
又、図2の形態では、前記石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aを貯留タンク7の下部に設けたエゼクタ等の搬送装置10に供給しており、貯留タンク7の固形燃料6は気化天然ガス5aによって天然ガス搬送流路15を介して流動層燃焼炉13からなる火炉12に供給される。この時、固形燃料6は気化天然ガス5aによって搬送されるために低温が保持され、よって固形燃料6が軟化する問題を防止して安定して火炉12へ供給することができる。前記気化天然ガス5aは固形燃料6と共に流動層燃焼炉13の燃料として供給される。
【0032】
上記したように、固形燃料6を、循環流動層ボイラ或いは循環流動層ガス化炉等の流動層燃焼炉13からなる火炉12に供給しているので、流動層燃焼炉13では前記したような粒径が10mm以下程度の粗粒子の固形燃料6を効果的に燃焼させることができる。
【0033】
図3は本発明を実施する石油残渣の燃料供給装置の他の形態の一例を示すものであり、図1と同様に、石油精製設備1から取り出される所要の粘性を有する石油残渣2を石油残渣固化装置3に供給し、これと同時に液化天然ガス貯蔵タンク4から取り出した液化天然ガス5(LNG)を前記石油残渣固化装置3に供給し、石油残渣固化装置3において石油残渣2と液化天然ガス5とを接触させることにより、石油残渣2を冷却・固化して固形燃料6を生成している。石油残渣固化装置3で生成した固形燃料6は貯留タンク7に落下して貯留される。前記石油残渣固化装置3では粒径が10mm程度の固形燃料6が生成されるようにしている。
【0034】
前記液化天然ガス5が石油残渣2を冷却して気化することにより石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aの一部は、前記貯留タンク7の下部に設けたエゼクタ等の搬送装置10に供給して、貯留タンク7に貯留された固形燃料6を、ボールミル或いはローラミル等の微粉砕機16に供給するようにしている。微粉砕機16では、前記固形燃料6の粒径を数十〜数百μm程度に微粉砕して微粉固形燃料6aを得るようにしている。
【0035】
微粉砕機16で生成した微粉固形燃料6aはサイクロン分級器等の分離器17に供給されて微粉固形燃料6aと気化天然ガス5aとに分離され、微粉固形燃料6aは下部の微粉貯留タンク18に貯留される。分離器17で分離された気化天然ガス5aは、熱交換器19に導いて空気9と熱交換することにより搬送用冷却空気9aを得るようにしている。ここで、熱交換器19は、石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aと空気9を熱交換させて搬送用冷却空気9aを得るようにしてもよい。前記搬送用冷却空気9aは、前記微粉貯留タンク18の下部に設けたエゼクタ等の搬送装置20に供給して、微粉貯留タンク18に貯留された微粉固形燃料6aを前記搬送用冷却空気9aによって空気搬送流路11を介して火炉12に供給するようにしている。
【0036】
この形態での火炉12としては、微粉焚ボイラ21を用いることができ、微粉焚ボイラ21によれば、前記したような粒径が数十〜数百μm程度の微粉固形燃料6aを微粉バーナ22に供給して有効に燃焼させることができる。
【0037】
図4は、前記図3の形態に類似した形態の一例を示すものであり、図3の形態では微粉砕機16で生成した微粉固形燃料6aを分離器17で分離して微粉貯留タンク18に貯留し、該微粉貯留タンク18の微粉固形燃料6aを、気化天然ガス5aと熱交換して冷却された搬送用冷却空気9aによって搬送装置20を介して微粉焚ボイラ21からなる火炉12に供給しているが、図4の形態では、微粉砕機16で生成した微粉固形燃料6aをそのまま気化天然ガス5aと共に天然ガス搬送流路15を介して微粉焚ボイラ21からなる火炉12に供給するようにしている。その他の構成については、図3の形態と同様である。
【0038】
図3の形態では、石油精製設備1から取り出される石油残渣2と液化天然ガス貯蔵タンク4から取り出した液化天然ガス5とが石油残渣固化装置3に供給され、石油残渣2と液化天然ガス5が接触され、液化天然ガス5が気化して気化天然ガスとなる際の気化冷熱によって石油残渣2が冷却・固化されて固形燃料6が生成される。生成した固形燃料6は貯留タンク7に落下して貯留される。このとき、石油残渣固化装置3では粒径が数十〜数百μm程度の固形燃料6が生成される。
【0039】
貯留タンク7に貯留された固形燃料6は、石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aの一部を貯留タンク7下部の搬送装置10に供給することにより微粉砕機16に供給され、微粉砕機16により粒径が数十〜数百μm程度に微粉砕されて微粉固形燃料6aが得られる。微粉砕機16で生成した微粉固形燃料6aは分離器17に供給されて微粉固形燃料6aと気化天然ガス5aとに分離され、微粉固形燃料6aは下部の微粉貯留タンク18に貯留される。
【0040】
石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aと熱交換器19で熱交換して得られた搬送用冷却空気9aが前記微粉貯留タンク18の下部に設けた搬送装置20に供給されることにより、微粉貯留タンク18の微粉固形燃料6aは前記搬送用冷却空気9aによって空気搬送流路11を介して微粉焚ボイラ21からなる火炉12の微粉バーナ22に供給される。この時、微粉固形燃料6aは搬送用冷却空気9aによって搬送されるために低温が保持され、よって微粉固形燃料6aが軟化する問題を防止して安定して火炉12へ供給することができる。前記搬送用冷却空気9aは微粉焚ボイラ21の微粉バーナ22に対して燃焼用空気の一部として供給される。
【0041】
又、図4の形態では、前記石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aの一部を貯留タンク7の下部に設けた搬送装置10に供給して、貯留タンク7の固形燃料6を微粉砕機16に供給し、更に、微粉砕機16で微粉砕した微粉固形燃料6aをそのまま気化天然ガス5aによって天然ガス搬送流路15を介して微粉焚ボイラ21からなる火炉12に供給される。この時、微粉固形燃料6aは気化天然ガス5aによって搬送されるために低温が保持され、よって微粉固形燃料6aが軟化する問題を防止して安定して微粉焚ボイラ21からなる火炉12へ供給することができる。前記気化天然ガス5aは微粉固形燃料6aと共に微粉焚ボイラ21の微粉バーナ22に燃料として供給される。
【0042】
上記したように、微粉固形燃料6aを、微粉焚ボイラ21からなる火炉12に供給しているので、微粉焚ボイラ21では前記したような粒径が数十〜数百μm程度の微粉固形燃料6aを微粉バーナ22によって効果的に燃焼させることができる。
【0043】
図5は本発明を実施する石油残渣の燃料供給装置の更に他の形態の一例を示すものであり、石油精製設備1から取り出される所要の粘性を有する石油残渣2を、微粒化ノズル23を介して石油残渣固化装置3に噴射するようにし、これと同時に液化天然ガス貯蔵タンク4から取り出した液化天然ガス5(LNG)を前記石油残渣固化装置3に供給し、石油残渣固化装置3において微粒化した石油残渣2と液化天然ガス5とを接触させることにより、液化天然ガス5が気化して気化天然ガスとなる際の気化冷熱を用いて石油残渣2を冷却・固化して微粒固形燃料6cを生成するようにしている。石油残渣固化装置3で生成した微粒固形燃料6cは貯留タンク7に落下して貯留されるようになっている。前記石油残渣固化装置3では、微粒化ノズル23で噴射した石油残渣2を冷却して粒径が例えば数十〜数百μm程度の微粒固形燃料6cを生成するようになっている。
【0044】
前記液化天然ガス5が石油残渣2を冷却して気化することにより石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aは、サイクロン分級器等の固体分離器24に導いて気化天然ガス5a中の微細な固体25を分離し、分離した微細な固体25は前記貯留タンク7に落下供給され、固体分離器24で微細な固体25が分離された気化天然ガス5aは熱交換器26に導いて空気9と熱交換することにより搬送用冷却空気9aを得るようにしている。そして、搬送用冷却空気9aは、前記貯留タンク7の下部に設けたエゼクタ等の搬送装置10に供給して、貯留タンク7に貯留された微粒固形燃料6c及び微細な固体25を前記搬送用冷却空気9aにより空気搬送流路11を介して火炉12に供給するようにしている。
【0045】
この形態での火炉12としては、微粉焚ボイラ21を用いることができ、微粉焚ボイラ21によれば、前記したような粒径が数十〜数百μm程度の微粒固形燃料6c及び微細な固体25を有効に燃焼させることができる。
【0046】
図6は、前記図5の形態に類似した形態の一例を示すものであり、図5の形態では貯留タンク7に貯留された微粒固形燃料6c及び微細な固体25を搬送用冷却空気9aによって空気搬送流路11を介して微粉焚ボイラ21からなる火炉12に供給するようにしているが、図6の形態では、前記石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aの一部を、貯留タンク7の下部に設けたエゼクタ等の搬送装置10に供給することにより、気化天然ガス5aによって微粒固形燃料6c及び微細な固体25を天然ガス搬送流路15を介して微粉焚ボイラ21からなる火炉12に供給するようにしている。その他の構成については、図5の形態と同様である。
【0047】
図5の形態では、石油精製設備1から取り出される石油残渣2と液化天然ガス貯蔵タンク4から取り出した液化天然ガス5とが微粒化ノズル23を介して石油残渣固化装置3に供給され、微粒化された石油残渣2と液化天然ガス5が接触することによって、液化天然ガス5が気化して気化天然ガスとなる際の気化冷熱により石油残渣2が冷却・固化されて微粒固形燃料6cが生成される。生成した微粒固形燃料6cは貯留タンク7に落下して貯留される。このとき、石油残渣固化装置3では前記微粒化ノズル23によって粒径が数十〜数百μm程度の微粒固形燃料6cが生成される。
【0048】
一方、前記液化天然ガス5が石油残渣2を冷却して気化することにより石油残渣固化装置3から取り出される気化天然ガス5aは、固体分離器24に導かれて気化天然ガス5a中の微細な固体25が分離され、分離された微細な固体25は前記貯留タンク7に落下供給され、固体分離器24で微細な固体25が分離された気化天然ガス5aは熱交換器26に導かれて空気9と熱交換することにより搬送用冷却空気9aを得る。そして、搬送用冷却空気9aは、前記貯留タンク7の下部に設けた搬送装置10に供給されて、貯留タンク7に貯留された微粒固形燃料6c及び微細な固体25を前記搬送用冷却空気9aにより空気搬送流路11を介して微粉焚ボイラ21からなる火炉12の微粉バーナ22に供給される。この時、微粒固形燃料6c及び微細な固体25は搬送用冷却空気9aによって搬送されるために低温が保持され、よって微粒固形燃料6c及び微細な固体25が軟化する問題を防止して安定して微粉焚ボイラ21からなる火炉12へ供給することができる。前記搬送用冷却空気9aは微粉焚ボイラ21の微粉バーナ22に対して燃焼用空気の一部として供給される。
【0049】
又、図6の形態では、前記固体分離器24で微細な固体25が分離された気化天然ガス5aの一部を、貯留タンク7の下部に設けた搬送装置10に供給しているので、貯留タンク7の微粒固形燃料6c及び微細な固体25は気化天然ガス5aによって天然ガス搬送流路15を介して火炉12に供給される。この時、微粒固形燃料6c及び微細な固体25は気化天然ガス5aによって搬送されるために低温が保持され、よって微粒固形燃料6c及び微細な固体25が軟化する問題を防止して安定して微粉焚ボイラ21からなる火炉12へ供給することができる。この場合の気化天然ガス5aは微粒固形燃料6c及び微細な固体25と共に微粉バーナ22に燃料として供給される。
【0050】
上記したように、微粒固形燃料6c及び微細な固体25を、微粉焚ボイラ21からなる火炉12に供給しているので、微粉焚ボイラ21では前記したような粒径が数十〜数百μm程度の微粒固形燃料6c及び微細な固体25を微粉バーナ22によって効果的に燃焼させることができる。
【0051】
前記石油精製設備1と液化天然ガス貯蔵タンク4は、港に近い同一地域に設置される場合が多いことから、液化天然ガス貯蔵タンク4から気化天然ガスを出荷する際の気化冷熱を利用して石油残渣2を効果的に冷却・固化し、固化した固形燃料6,6a,6bを流動層ボイラ13や微粉焚ボイラ22に供給して電力や蒸気等を石油精製設備1内或いは外部に供給したり、更には固形燃料6を循環流動層ガス化炉等に供給してガス化ガスを得るようにすることができる。
【0052】
なお、本発明の石油残渣の燃料供給方法及び装置は上記形態にのみ限定されるものではなく、種々の火炉に対する固形燃料の供給に適用できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明を実施する石油残渣の燃料供給装置の形態の一例を示す構成ブロック図である。
【図2】図1の形態に類似した形態の一例を示す構成ブロック図である。
【図3】本発明を実施する石油残渣の燃料供給装置の他の形態の一例を示す構成ブロック図である。
【図4】図3の形態に類似した形態の一例を示す構成ブロック図である。
【図5】本発明を実施する石油残渣の燃料供給装置の更に他の形態の一例を示す構成ブロック図である。
【図6】図5の形態に類似した形態の一例を示す構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1 石油精製設備
2 石油残渣
3 石油残渣固化装置
4 液化天然ガス貯蔵タンク
5 液化天然ガス
5a 気化天然ガス
6 固形燃料
6a 微粉固形燃料
6c 微粒固形燃料
8 熱交換器
9 空気
9a 搬送用冷却空気
11 空気搬送流路
12 火炉
13 流動層燃焼炉(火炉)
15 天然ガス搬送流路
16 微粉砕機
21 微粉焚ボイラ(火炉)
23 微粒化ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油精製設備から取り出される石油残渣を固形化して燃料として供給するための石油残渣の燃料供給方法であって、石油残渣と液化天然ガスとを接触させ、液化天然ガスが気化して気化天然ガスとなる気化冷熱を用いて石油残渣を冷却・固化することにより固形燃料を得、得られた固形燃料を前記気化天然ガスが有する冷熱により固形状態を保持して火炉に供給することを特徴とする石油残渣の燃料供給方法。
【請求項2】
固形燃料は、気化天然ガスに空気を熱交換させて得られた搬送用冷却空気によって火炉に供給する請求項1に記載の石油残渣の燃料供給方法。
【請求項3】
固形燃料は、気化天然ガスによって火炉に供給する請求項1に記載の石油残渣の燃料供給方法。
【請求項4】
固形燃料を微粉砕機により微粉砕して微粉固形燃料を得る請求項1〜3のいずれか1つに記載の石油残渣の燃料供給方法。
【請求項5】
石油残渣を微粒化ノズルにより噴射し液化天然ガスと接触させて微粒固形燃料を得る請求項1〜3のいずれか1つに記載の石油残渣の燃料供給方法。
【請求項6】
石油精製設備から取り出される石油残渣を固形化して燃料として供給するための石油残渣の燃料供給装置であって、石油残渣と液化天然ガスとを接触させ、液化天然ガスが気化して気化天然ガスとなる際の気化冷熱を用いて石油残渣を冷却・固化することにより固形燃料を得る石油残渣固化装置と、前記気化天然ガスに空気を熱交換させて搬送用冷却空気を得る熱交換器と、該熱交換器からの搬送用冷却空気により前記石油残渣固化装置で固化した固形燃料を火炉に搬送するための空気搬送流路とを有することを特徴とする石油残渣の燃料供給装置。
【請求項7】
前記熱交換器及び前記空気搬送流路に代えて、気化天然ガスにより固形燃料を火炉に搬送する天然ガス搬送流路を有する請求項6に記載の石油残渣の燃料供給装置。
【請求項8】
固形燃料を微粉砕して微粉固形燃料とする微粉砕機を備えた請求項6又は7に記載の石油残渣の燃料供給装置。
【請求項9】
石油残渣固化装置に、石油残渣を微粒状に噴射する微粒化ノズルを備えた請求項6又は7に記載の石油残渣の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−300054(P2009−300054A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157807(P2008−157807)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】