説明

研削盤システムおよび研削方法

【課題】加工用主軸台21に保持された工作物の端面位置の測定または工作物の位相の割出しに要する時間を短縮し、加工効率を向上することが可能な研削盤システムおよび研削方法を提供することを目的とする。
【解決手段】加工用主軸台21と砥石台36と第一駆動手段とを有する加工部と、工作物の端面位置の測定または工作物の位相の割出しを行うプリセットステーション50と、プリセットステーション50から加工部へ工作物を搬送する搬送部と、研削加工の制御と工作物の端面位置の測定または工作物の位相の割出しとを同時に行う制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物の端面位置の測定または位相の割出しを行い、砥石車により工作物を研削加工する研削盤システムおよび研削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作物の円筒部を研削加工する研削盤は、工作物を保持して回転駆動する主軸台と、砥石車を回転駆動する砥石台とを備える。この研削盤は、主軸台に対して砥石台を主軸の回転軸方向(Z軸方向)および回転軸直交方向(X軸方向)に相対的に移動させることで工作物を研削している。このような研削盤において、例えば、クランクシャフトの円筒部(クランクピンなど)を研削加工することがある。
【0003】
ここで、クランクピンの外周面を研削加工する場合には、砥石車をクランクピンの軸方向幅を考慮した適正な位置に接触させる必要がある。しかし、クランクシャフトは、前工程において個体差があり、クランクピンの両端に位置するクランクウェブの対向する端面間の距離にばらつきがある。さらに、クランクシャフトは、主軸台にセンタまたはチャックなどにより保持されているが、センタ穴径やシャフト端面にも同様に個体差があり、Z軸方向にずれて保持されることがあった。これにより、前工程を終えたクランクシャフトを主軸台に保持した後に、それぞれのクランクシャフトに対して、保持状態の測定や調整をする必要があった。
【0004】
そこで、研削加工前に前工程を終えて主軸台に保持されたクランクシャフトについて、クランクウェブの端面位置を測定し、適正なZ軸方向の加工位置を特定していた。例えば、特開2001−38618号公報(特許文献1)には、エアフローメーターからクランクウェブに向けてエアーを噴出し、クランクシャフトの適正なZ軸方向位置を測定する装置が開示されている。
【0005】
また、クランクシャフトのように偏心した加工部位を有する軸状の工作物の場合に、主軸台がクランクシャフトのクランク軸を軸として保持すると、被研削部位であるクランクピンは偏心回転することになる。よって、このような場合において、クランクピンの外周面を研削加工するには、主軸台の回転駆動と砥石台のX軸方向への移動を同期させる必要がある。従って、前工程を終えたクランクシャフトを主軸台に保持した後に、それぞれのクランクシャフトに対して、位相の割出しや調整をする必要があった。例えば、特開平5−329756号公報(特許文献2)には、複数のクランクピンからなるクランクシャフトの位相を割出す装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−38618号公報
【特許文献2】特開平5−329756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような工作物のZ軸方向位置や位相割出しの測定は、工作物が主軸台に保持された状態において正確に測定する必要がある。そのため、計測器や治具装置の操作や交換に時間を要し、非加工時間が長くなるという問題があった。これにより、トータルの加工時間が長くなり、加工効率が低下することがあった。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、主軸台に保持された工作物の端面位置の測定、または工作物の位相の割出しに要する時間を短縮し、加工効率を向上することが可能な研削盤システムおよび研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の研削盤システムの発明の構成上の特徴は、
軸状からなる工作物を研削加工する研削盤システムであって、
前記工作物を保持し前記工作物を回転駆動する加工用主軸台と、砥石車を回転駆動し前記加工用主軸台に対して相対的に移動可能な砥石台と、前記加工用主軸台と前記砥石台を相対的に移動させる第一駆動手段と、を有する加工部と、
前記加工用主軸台に前記工作物を所定の状態に保持するためであると共に、前記加工用主軸台に前記所定の状態に保持された前記工作物を前記砥石車により研削加工するために、前記加工用主軸台による前記工作物の保持に先行して、前記工作物の端面位置の測定を行うプリセットステーションと、
前記プリセットステーションから前記加工部へ前記工作物を搬送する搬送部と、
前記砥石車による前記工作物の研削加工の制御と、前記プリセットステーションにおける前記工作物の端面位置の測定とを同時に行う制御手段と、
を備えることである。
【0009】
請求項2に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1において、
前記プリセットステーションは、前記工作物を保持するプリセット主軸台と、前記プリセット主軸台に保持された前記工作物の端面位置を測定する計測器と、前記計測器と前記工作物を相対的に移動させる第二駆動手段と、を有し、
前記制御手段は、前記計測器により測定された前記工作物の端面位置に基づいて前記砥石車による前記工作物の研削加工を制御することである。
【0010】
請求項3に記載の発明の構成上の特徴は、請求項2において、
前記工作物は、ジャーナルとクランクピンとクランクウェブとを有するクランクシャフトであって、
前記計測器は、前記ジャーナルまたは前記クランクピンの両端に位置する前記クランクウェブの端面位置を測定することである。
【0011】
請求項4に記載の発明の構成上の特徴は、請求項2または3において、
前記加工部は、前記プリセットステーションから搬送され前記加工用主軸台に保持された前記工作物について、前記プリセットステーションにおいて前記計測器が測定した端面位置のうち少なくとも一つの同一な端面の端面位置を測定する端面計測器を有し、
前記制御手段は、前記端面計測器により測定された前記工作物の端面位置に基づいて前記砥石車による前記工作物の研削加工を制御することである。
【0012】
上記の課題を解決するため、請求項5に記載の研削盤システムの発明の構成上の特徴は、
非真円または偏心の加工部位を有する軸状からなる工作物を研削加工する研削盤システムであって、
前記工作物を保持し前記工作物を回転駆動する加工用主軸台と、砥石車を回転駆動し前記加工用主軸台に対して相対的に移動可能な砥石台と、前記加工用主軸台と前記砥石台を相対的に移動させる第一駆動手段と、を有する加工部と、
前記加工用主軸台に前記工作物を所定の状態に保持するためであると共に、前記加工用主軸台に前記所定の状態に保持された前記工作物を前記砥石車により研削加工するために、前記加工用主軸台による前記工作物の保持に先行して、前記工作物の位相の割出しを行うプリセットステーションと、
前記プリセットステーションから前記加工部へ前記工作物を搬送する搬送部と、
前記砥石車による前記工作物の研削加工の制御と、前記プリセットステーションにおける前記工作物の位相の割出しとを同時に行う制御手段と、
を備えることである。
【0013】
請求項6に記載の発明の構成上の特徴は、請求項5において、
前記プリセットステーションは、前記工作物を保持するプリセット主軸台と、前記プリセット主軸台に保持された状態の前記工作物の位相の割出しを行う位相割出し手段と、を有し、
前記制御手段は、前記位相割出し手段により割出された前記工作物の位相に基づいて前記砥石車による前記工作物の研削加工を制御することである。
【0014】
請求項7に記載の発明の構成上の特徴は、請求項6において、
前記搬送部は、前記プリセットステーションと前記加工部との間において、前記工作物の位相を維持した状態で前記工作物を搬送可能であることである。
【0015】
請求項8に記載の発明の構成上の特徴は、請求項7において、
前記加工部は、前記プリセットステーションから搬送され前記加工用主軸台に保持された前記工作物について、前記プリセットステーションにおいて前記計測器が測定した位相を測定する位相計測器を有し、
前記制御手段は、前記位相計測器により割出された前記工作物の位相に基づいて前記砥石車による前記工作物の研削加工を制御することである。
【0016】
請求項9に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1〜8のいずれか一項において、
前記加工用主軸台は、前記工作物の一端を保持する第一加工用保持部を有し、
前記プリセット主軸台は、前記第一加工用保持部に擬似的に形成され、前記工作物の一端を保持する第一プリセット用保持部を有することである。
【0017】
請求項10に記載の発明の構成上の特徴は、請求項9において、
前記加工部は、前記工作物の他端を保持する第二加工用保持部を有し、
前記プリセットステーションは、前記第二加工用保持部に擬似的に形成され、前記工作物の他端を保持する第二プリセット用保持部を有することである。
【0018】
請求項11に記載の発明の構成上の特徴は、請求項10において、
前記第一加工用保持部および前記第一プリセット用保持部は、前記工作物の一端における前記工作物の回転軸を心押しするセンタであり、
前記第二加工用保持部および前記第二プリセット用保持部は、前記工作物の他端における前記工作物の回転軸を心押しするセンタであることである。
【0019】
請求項12に記載の発明の構成上の特徴は、請求項10において、
前記第一加工用保持部と前記第二加工用保持部の少なくとも一方は、前記工作物の端部を把持するチャックであり、
前記第一プリセット用保持部と前記第二プリセット用保持部の少なくとも一方は、前記工作物の端部を把持するチャックであることである。
【0020】
請求項13に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1〜12のいずれか一項において、
前記加工部、前記プリセットステーションおよび前記搬送部は、研削盤の機内に配置されていることである。
【0021】
請求項14に記載の発明の構成上の特徴は、請求項13において、
前記プリセットステーションは、前記加工用主軸台に保持された前記工作物の軸と、前記プリセット主軸台に保持された前記工作物の軸とが同一の鉛直平面上に位置するように配置され、
前記搬送部は、前記工作物を把持可能なローダハンドを有し、前記加工用主軸台に対して鉛直方向および前記加工用主軸台に保持された前記工作物の軸方向の2方向のみに移動可能なローダであることである。
【0022】
上記の課題を解決するため、請求項15に記載の研削盤システムの発明の構成上の特徴は、
非真円または偏心の加工部位を有する軸状からなる工作物を研削加工する研削盤システムであって、
前記工作物を保持し前記工作物を回転駆動する加工用主軸台と、砥石車を回転駆動し前記加工用主軸台に対して相対的に移動可能な砥石台と、前記加工用主軸台と前記砥石台を相対的に移動させる第一駆動手段と、を有する加工部と、
前記加工用主軸台に前記工作物を所定の状態に保持するためであると共に、前記加工用主軸台に前記所定の状態に保持された前記工作物を前記砥石車により研削加工するために、前記加工用主軸台による前記工作物の保持に先行して、前記工作物の端面位置の測定および前記工作物の位相の割出しを行うプリセットステーションと、
前記プリセットステーションから前記加工部へ前記工作物を搬送する搬送部と、
前記砥石車による前記工作物の研削加工の制御と、前記プリセットステーションにおける前記工作物の端面位置の測定および前記工作物の位相の割出しとを同時に行う制御手段と、
を備えることである。
【0023】
上記課題を解決するために、請求項16に記載の研削方法の発明の構成上の特徴は、
軸状からなる工作物を研削加工する研削方法であって、
加工用主軸台に回転可能に保持された前記工作物に対して、砥石車を回転駆動する砥石台を相対的に移動させることで、前記工作物を研削加工する研削工程と、
前記加工用主軸台に前記工作物を所定の状態に保持するためであると共に、前記加工用主軸台に前記所定の状態に保持された前記工作物を研削加工するために、前記加工用主軸台による前記工作物の保持に先行して、プリセットステーションにおいて前記工作物の端面位置の測定を行う研削準備工程と、
前記プリセットステーションから前記加工用主軸台へ前記工作物を搬送する搬送工程と、
を備え、
前記研削工程と前記研削準備工程とを同時に行うことである。
【0024】
請求項17に記載の発明の構成上の特徴は、請求項16において、
さらに、前記プリセットステーションから搬送され前記加工用主軸台に保持された前記工作物について、前記研削準備工程において測定した前記工作物の端面位置のうち少なくとも一つの同一な端面の端面位置を測定する補助測定工程を備え、
前記研削工程は、前記研削準備工程において測定された前記工作物の端面位置および前記補助測定工程において測定された前記工作物の端面位置に基づいて、前記砥石車による前記工作物を研削加工することである。
【0025】
上記課題を解決するために、請求項18に記載の研削方法の発明の構成上の特徴は、
非真円または偏心の加工部位を有する軸状からなる工作物を研削加工する研削方法であって、
加工用主軸台に回転可能に保持された前記工作物に対して、砥石車を回転駆動する砥石台を相対的に移動させることで、前記工作物を研削加工する研削工程と、
前記加工用主軸台に前記工作物を所定の状態に保持するためであると共に、前記加工用主軸台に前記所定の状態に保持された前記工作物を研削加工するために、前記加工用主軸台による前記工作物の保持に先行して、プリセットステーションにおいて前記工作物の位相の割出しを行う研削準備工程と、
前記プリセットステーションから前記加工用主軸台へ前記工作物を搬送する搬送工程と、
を備え、
前記研削工程と前記研削準備工程とを同時に行うことである。
【0026】
請求項19に記載の発明の構成上の特徴は、請求項18において、
さらに、前記プリセットステーションから搬送され前記加工用主軸台に保持された前記工作物について、前記研削準備工程において割出された前記工作物の位相を割出す補助割出工程を備え、
前記研削工程は、前記研削準備工程において割出した前記工作物の位相および前記補助割出工程において割出した前記工作物の位相に基づいて、前記砥石車による前記工作物を研削加工することである。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明によると、加工部において、加工用主軸台に保持された工作物の端面位置の測定を省略することができる。つまり、加工部で別の工作物を研削加工している間に、プリセットステーションにおいて先行して、工作物の端面位置の測定を行う。これにより、加工用主軸台では非加工時間である端面位置の測定に要する時間を省略できる。よって、加工用主軸台が工作物を保持してから研削加工を開始するまでの時間が短くでき、その分だけトータルの加工時間を短縮することができる。さらに、工作物の端面位置の測定に十分な時間を確保できるので、加工効率を低下させることなく、より正確な研削加工を実施することができる。
【0028】
また、上述した端面位置の測定の目的は、従来、前加工を終えた工作物の形状などを把握するための測定とは異なる。本発明においては、工作物を加工用主軸台に所定の状態で保持すること、および、所定の状態に保持した工作物を砥石車で研削加工することを目的とする。つまり、従来においては、加工用主軸台に工作物が保持されてから端面位置の測定を行い、研削加工するという一連の工程であった。これに対して本発明では、別の工作物の研削加工の制御と同時に、端面位置の測定を行うので、上述したような効果を奏するものである。
【0029】
請求項2に係る発明によると、加工部において加工用主軸台に保持された工作物の端面位置の測定を省略することができる。非真円または偏心の加工部位を有する軸状からなる工作物は、工作物の軸と平行でない端面や斜面、曲面などを有する。そして工作物の端面などは、前加工によりばらつきが生じていることがある。よって、このような工作物の端面などに挟まれた部位やその近傍を研削加工する場合には、砥石車を適正な位置に接触するために、このばらつきを把握する必要がある。しかし、加工用主軸台に工作物を保持してから端面位置を測定すると、非加工時間が延びることになり、トータルの加工時間が長くなってしまう。そこで、加工部で別の工作物を研削加工している間に、第二駆動手段により計測器と工作物を相対的に移動させ、工作物の端面位置を測定する。これにより、加工用主軸台では非加工時間である端面位置の測定に要する時間を省略できる。
【0030】
請求項3に係る発明によると、工作物がクランクシャフトの場合に、加工部においてクランクウェブの端面位置の測定を省略することができる。クランクウェブは、クランクピンとジャーナルを連結し、クランクシャフトの軸と直交する。例えば、クランクピンを研削加工する場合には、クランクピンの両端でクランクウェブの対向する端面位置を正確に把握することが好ましい。これは、前工程でクランクウェブの端面位置のばらつきが生じていることがあるためである。このばらつきを考慮せずにクランクピンを研削加工すると、研削加工後に内部応力歪が生じ、クランクシャフトの振れ精度悪化の要因となるおそれがある。よって、研削加工の対象であるクランクシャフトの円筒部において、その両端に位置するクランクウェブの端面位置を測定することにより、前加工で生じた端面位置のばらつきを把握することができる。
【0031】
請求項4に係る発明によると、工作物の端面位置をより正確に把握した研削加工ができる。プリセットステーションから加工部へ工作物を搬送すると、測定した工作物の端面位置に誤差が生じることがある。このような場合でも、測定した端面位置の少なくとも一つの同一な端面位置を加工部の端面計測器で再度測定することにより、誤差を把握できる。よって、制御手段は、加工部およびプリセットステーションで測定した工作物の端面位置に基づいて研削加工を制御することで、より正確な研削加工ができる。これにより、例えば、加工部において複数箇所の端面位置の測定が必要な場合でも、本発明により加工部においては少数の箇所を測定するのみで済むので、端面位置の測定に要する時間を短縮することができる。
【0032】
請求項5に係る発明によると、加工部において、加工用主軸台に保持された工作物の位相の割出しを省略することができる。つまり、加工部で別の工作物を研削加工している間に、プリセットステーションにおいて先行して、工作物の位相の割出しを行う。これにより、加工用主軸台では非加工時間である位相の割出しに要する時間を省略できる。よって、加工用主軸台が工作物を保持してから研削加工を開始するまでの時間が短くでき、その分だけトータルの加工時間を短縮することができる。さらに、工作物の位相の割出しに十分な時間を確保できるので、加工効率を低下させることなく、より正確な研削加工を実施することができる。
【0033】
また、上述した位相の割出しの目的は、従来、前加工を終えた工作物の形状などを把握するための測定とは異なる。本発明においては、工作物を加工用主軸台に所定の状態で保持すること、および、所定の状態に保持した工作物を砥石車で研削加工することを目的とする。つまり、従来においては、加工用主軸台に工作物が保持されてから位相の割出しを行い、研削加工するという一連の工程であった。これに対して本発明では、別の工作物の研削加工の制御と同時に、位相の割出しを行うので、上述したような効果を奏するものである。
【0034】
請求項6に係る発明によると、加工部において加工用主軸台に保持された工作物の位相の割出しを省略することができる。非真円または偏心の加工部位を有する軸状からなる工作物は、被研削部位となる外周面と工作物の軸との距離が一定でない。また、例えば、クランクシャフトのクランクピンを研削加工する場合に、クランク軸を軸として保持すると被研削部位のクランクピンは偏心回転する。よって、これらの場合には、加工用主軸台の回転駆動と砥石台のX軸方向への移動を同期させて研削加工する。従って、加工用主軸台に保持した工作物の初期状態から、工作物の位相を割出して所定の状態に保持する必要がある。しかし、加工用主軸台に工作物を保持してから位相の割出しを行うと、非加工時間が延びることになり、トータルの加工時間が長くなってしまう。そこで、加工部で別の工作物を研削加工している間に、プリセット主軸台に保持した工作物の位相を位相割出し手段により割出す。これにより、加工用主軸台では非加工時間である位相の割出しに要する時間を省略できる。
【0035】
請求項7に係る発明によると、プリセットステーションにおいて工作物の位相を測定した状態を維持し、工作物を加工部に搬送できる。これにより、加工部では位相の測定に要する時間を省略できると共に、加工用主軸台に工作物を簡易に位相を割出して位置決めすることができる。
【0036】
請求項8に係る発明によると、工作物の位相をより正確に割出した研削加工ができる。プリセットステーションから加工部へ工作物を搬送すると、割出した工作物の位相に誤差が生じることがある。このような場合でも、割出した位相を加工部の位相計測器で再度割出すことにより、誤差を把握できる。よって、制御手段は、加工部およびプリセットステーションで割出した工作物の位相に基づいて研削加工を制御することで、より正確な研削加工ができる。これにより、例えば、加工部において工作物の位相を割出すのに要していた時間は、誤差を解消するための微調整で済むため、割出しに要する時間を短縮することができる。
【0037】
請求項9に係る発明によると、プリセットステーションにおいて、工作物の一端を加工部と同様の保持状態にすることができる。これにより、プリセットステーションにおける工作物の端面位置の測定または位相の割出しの精度を向上できる。プリセット主軸台は、第一加工用保持部に擬似的に形成された第一プリセット保持部によって工作物の一端を保持する構成となっている。よって、加工用主軸台による工作物の保持状態と同様の保持状態とすることができ、保持状態の違いによる測定や割出しに誤差が生じることを防止できる。
【0038】
請求項10に係る発明によると、プリセットステーションにおいて、工作物の他端を加工部と同様の保持状態にすることができる。これにより、プリセットステーションにおける工作物の端面位置の測定または位相の割出しの精度を向上できる。プリセット主軸台は、第二加工用保持部に擬似的に形成された第二プリセット保持部によって工作物の他端を保持する構成となっている。よって、加工用主軸台による工作物の保持状態と同様の保持状態とすることができ、保持状態の違いによる測定や割出しに誤差が生じることを防止できる。
【0039】
請求項11に係る発明によると、プリセットステーションにおける工作物の端面位置の測定または位相の割出しの精度を向上できる。工作物には前加工により、回転軸に平行に加工されたセンタ穴の穴径に個体差が生じることがある。このような場合に、加工部でセンタにより工作物の回転軸を心押しすると、工作物の個体間で回転軸方向にずれが生じる。そこで、プリセットステーションにおいて、加工部と同様に工作物をセンタにより心押しすることで、加工部で生じる固体間のずれを把握することができる。よって、このずれの量を考慮した測定や割出しが可能となり、精度を向上できる。
【0040】
請求項12に係る発明によると、プリセットステーションにおける工作物の端面位置の測定または位相の割出しの精度を向上できる。工作物には前加工または素材形状などに起因して、端部の形状や位置に個体差が生じていることがある。このような場合に、加工部でチャックにより工作物の端部を把持すると、工作物の個体間で回転軸方向にずれが生じる。そこで、プリセットステーションにおいて、加工部と同様に工作物の端部をチャックにより把持することで、加工部で生じる固体間のずれを把握することができる。よって、このずれの量を考慮した測定や割出しが可能となり、精度を向上できる。
【0041】
請求項13に係る発明によると、研削盤全体を小型化することができる。また、プリセットステーションから加工部への距離を短くすることができる。よって、搬送部は、工作物を加工部への搬送する際に、工作物の端面位置の測定または位相の割出しを行った状態を確実に維持できる。従って、搬送によって誤差が発生することを防止できる。
【0042】
請求項14に係る発明によると、加工用主軸台に保持された工作物の軸とプリセット主軸台に保持された工作物の軸とが同一の鉛直平面上に位置しているため、2方向のみに移動するローダを搬送部に適用することができる。つまり、簡易な構成からなるローダを用いることができる。さらに、ローダは、前工程からプリセットステーションへ工作物を搬送することにも適用でき、さらに、加工用主軸台に保持された加工後の工作物を次工程へ搬出することにも適用できる。
【0043】
請求項15に係る発明によると、加工部において、加工用主軸台に保持された工作物の端面位置の測定または位相の割出しを省略することができる。つまり、加工部で別の工作物を研削加工している間に、プリセットステーションにおいて先行して、工作物の端面位置の測定または位相の割出しを行う。これにより、加工用主軸台では非加工時間である端面位置の測定または位相の割出しに要する時間を省略できる。よって、加工用主軸台が工作物を保持してから研削加工を開始するまでの時間が短くでき、その分だけトータルの加工時間を短縮することができる。さらに、工作物の端面位置測定や位相の割出しに十分な時間を確保できるので、加工効率を低下させることなく、より正確な研削加工を実施することができる。
【0044】
また、上述した測定または割出しの目的は、従来、前加工を終えた工作物の形状などを把握するための測定とは異なる。本発明においては、工作物を加工用主軸台に所定の状態で保持すること、および、所定の状態に保持した工作物を砥石車で研削加工することを目的とする。つまり、従来においては、加工用主軸台に工作物が保持されてから測定または割出しを行い、研削加工するという一連の工程であった。これに対して本発明では、別の工作物の研削加工の制御と同時に、測定および割出しを行うので、上述したような効果を奏するものである。
【0045】
さらに、本発明では上述した他の特徴を適用することができる。そして、他の特徴を適用した場合にはそれぞれ同様の効果を奏する。
【0046】
請求項16に係る発明によると、加工用主軸台に保持された工作物の端面位置の測定を省略することができる。つまり、別の工作物を研削加工している研削工程と、プリセットステーションにおいて工作物の端面位置の測定を行う研削準備工程を同時に行う。そして、別の工作物の研削加工が終了後に、プリセットステーションから加工用主軸台に工作物を搬送する。これにより、加工用主軸台では非加工時間である端面位置の測定に要する時間を省略できる。よって、加工用主軸台が工作物を保持してから研削加工を開始するまでの時間が短くでき、その分だけトータルの加工時間を短縮することができる。さらに、工作物の端面位置の測定に十分な時間を確保できるので、加工効率を低下させることなく、より正確な研削加工を実施することができる。
【0047】
請求項17に係る発明によると、工作物の端面位置をより正確に把握した研削加工ができる。プリセットステーションから加工用主軸台に工作物を搬送する搬送工程において、研削準備工程で測定した工作物の端面位置に誤差が生じることがある。このような場合でも、研削準備工程において測定した端面位置の少なくとも一つの同一な端面位置を補助測定工程で再度測定することにより、誤差を把握できる。よって、研削工程が研削準備工程および補助測定工程において測定した工作物の端面位置に基づいて研削加工することで、より正確な研削加工ができる。また、例えば、研削工程において複数箇所の端面位置の測定が必要な場合でも、本発明により研削工程においては少数の箇所を測定するのみで済むので、端面位置の測定に要する時間を短縮することができる。
【0048】
請求項18に係る発明によると、加工用主軸台に保持された工作物の位相の割出しを省略することができる。つまり、別の工作物を研削加工している研削工程と、プリセットステーションにおいて工作物の位相の割出しを行う研削準備工程を同時に行う。そして、別の工作物の研削加工が終了後に、プリセットステーションから加工用主軸台に工作物を搬送する。これにより、加工用主軸台では非加工時間である位相の割出しに要する時間を省略できる。よって、加工用主軸台が工作物を保持してから研削加工を開始するまでの時間が短くでき、その分だけトータルの加工時間を短縮することができる。さらに、工作物の位相の割出しに十分な時間を確保できるので、加工効率を低下させることなく、より正確な研削加工を実施することができる。
【0049】
請求項19に係る発明によると、工作物の位相をより正確に割出した研削加工ができる。プリセットステーションから加工用主軸台に工作物を搬送する搬送工程において、研削準備工程で割出した工作物の位相に誤差が生じることがある。このような場合でも、研削準備工程において割出した位相を補助測定工程で再度割出すことにより、誤差を把握できる。よって、研削工程が研削準備工程および補助測定工程において割出した工作物の位相に基づいて研削加工することで、より正確な研削加工ができる。また、例えば、研削工程において工作物の位相を割出すのに要していた時間は、誤差を解消するための微調整で済むため、割出しに要する時間を短縮することができる。
【0050】
また、本発明の研削盤としての他の特徴部分について、本発明の研削方法に同様に適用可能である。そして、この場合における効果についても、上記研削盤としての効果と同様の効果を奏する。なお、本発明の研削盤における各「手段」は、「ステップ」と置き換えることで、本発明の研削方法として把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明の研削盤システムを具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0052】
<第一実施形態>
本発明の研削盤システム1について、図1〜図4を参照して説明する。図1は、第一実施形態の研削盤システム1からプリセットステーション50とローダ60を省略した平面図である。図2は、研削盤システム1からローダを省略した平面図である。図3は、研削盤システム1の正面図である。図4は、図3におけるA方向矢視図である。
【0053】
研削盤システム1は、研削盤10と、プリセットステーション50と、ローダ60から構成される。また、後述するクランクシャフト70aは、加工用主軸台21に保持された工作物であり、クランクシャフト70bは、プリセット主軸台51に保持された工作物である。
【0054】
まず、研削盤10の機械構成を説明する。研削盤10は、図1に示すように、ベッド11と、主軸装置20と、砥石支持装置30と、制御装置40から構成される。
【0055】
ベッド11は、ほぼ矩形状からなり、床上に配置される。このベッド11の上面には、砥石支持装置30を構成する砥石台トラバースベース31が摺動可能な砥石台用ガイドレール12、13が、図1の上側であって、図1の左右方向(Z軸方向)に延びるように、且つ、相互に平行に形成されている。また、主軸装置20を配置するために、工作物テーブル14がベッド11の上面に固定されている。さらに、ベッド11には、砥石台用ガイドレール12,13の間に、砥石台トラバースベース31を図1の左右方向に駆動するための、砥石台用Z軸ボールねじ15が配置され、この砥石台用Z軸ボールねじ15を回転駆動する砥石台用Z軸モータ16が配置されている。
【0056】
端面計測器17は、後述する加工用主軸台21に保持されたクランクシャフト70aの端面位置を測定する接触センサである。また、端面計測器17は、図示しない端面計測器送り装置により、測定部位まで移動する。端面計測器送り装置は、例えば、ボールねじとモータの組み合わせからなる送り装置であり、端面計測器17をZ軸方向およびX軸方向に移動可能な機構を備える。位相計測器18は、ベッド11に対して固定された回転軸台(図示しない)により根本部を支持されている。この回転軸台によって位相計測器18は根本部を中心に回転し、先端部がクランクシャフト70aの一部に当接するように配置されている。そして、位相計測器18の傾き角に基づきクランクシャフト70aの位相を割出している。
【0057】
主軸装置20は、加工用主軸台21と、主軸22と、主軸センタ23(本発明の「第一加工用保持部」に相当する)と、主軸回転用モータ24と、加工用心押台25と、心押センタ26(本発明の「第二加工用保持部」に相当する)を備えている。加工用主軸台21は、ベッド11に固定された工作物テーブル14の上面に配置されている。そして、加工用主軸台21は、図1の左右方向に貫通する穴が形成されている。この加工用主軸台21の貫通孔に、主軸22が主軸軸周り(図1のZ軸周り)に回転可能に挿通支持されている。この主軸22の右端に、工作物であるクランクシャフト70aの軸方向の一端を保持する主軸センタ23が取り付けられている。また、加工用主軸台21は、主軸22を介して主軸センタ23で保持したクランクシャフト70aを主軸回転用モータ24により回転駆動している。加工用心押台25は、加工用主軸台21のZ軸方向に対向して同軸的に設けられている。そして、加工用心押台25の左端に、クランクシャフト70aの軸方向の他端を保持する心押センタ26が取付けられている。よって、クランクシャフト70aは、両側端面に形成されたセンタ穴を介して、主軸センタ23と心押センタ26により両持ち支持されている。
【0058】
砥石支持装置30は、砥石台トラバースベース31と、X軸ガイドレール32,33と、X軸ボールねじ34と、X軸モータ35と、砥石台36と、砥石車37と、砥石回転用モータ38を備えている。砥石台トラバースベース31は、矩形の平板状に形成されており、ベッド11の上面のうち、砥石台用ガイドレール12,13上を摺動可能に配置されている。砥石台トラバースベース31は、砥石台用ボールねじ15のナット部材に連結されており、砥石台用Z軸モータ16の駆動により砥石台用ガイドレール12,13に沿って移動する。この砥石台トラバースベース31の上面には、砥石台36が摺動可能なX軸ガイドレール32,33が、図1の上下方向(X軸方向)に延びるように、且つ、相互に平行に形成されている。さらに、砥石台トラバースベース31には、X軸ガイドレール32、33の間に、砥石台36を図1の上下方向に駆動するための、X軸ボールねじ34が配置され、このX軸ボールねじ34を回転駆動するX軸モータ35が配置されている。
【0059】
砥石台36は、砥石台トラバースベース31の上面のうち、X軸ガイドレール32,33上を摺動可能に配置されている。そして、砥石台36は、X軸ボールねじ34のナット部材に連結されており、X軸モータ35の駆動によりX軸ガイドレール32,33に沿って移動する。つまり、砥石支持装置30は、砥石台36がベッド11および主軸装置20に対して、X軸方向およびZ軸方向に相対移動可能となるような構成(本発明の「第一駆動手段」に相当する)としている。
【0060】
そして、この砥石台36のうち図1の下側部分には、図1の左右方向に貫通する穴が形成されている。この砥石台36の貫通孔に、砥石車回転軸部材(図示せず)が、砥石中心軸周り(Z軸周り)に回転可能に支持されている。この砥石車回転軸部材の一端(図1の左端)に、砥石車37が同軸的に取り付けられている。また、砥石台36の上面には、砥石回転用モータ38が固定されている。そして、砥石車回転軸部材の他端(図1の右端)と砥石回転用モータ38の回転軸とにプーリが懸架されることで、砥石回転用モータ38の駆動により、砥石車37が砥石軸周りに回転する。
【0061】
このように、研削盤10は、加工用主軸台21と加工用心押台25により保持したクランクシャフト70aを回転駆動させ、砥石台36が砥石車37を回転駆動させ、砥石台トラバース31が砥石台36を加工用主軸台21に対して相対的に移動させることで加工部を構成している。従って、加工部は研削盤10の機内に配置されていることとなる。
【0062】
制御装置40(本発明の「制御手段」に相当する)は、主軸装置20の回転、並びに、砥石台36の回転、X軸位置およびZ軸位置をNC制御している。さらに、加工用主軸台21および後述するプリセットステーション50における工作物の端面位置の測定または位相の割出しを行っている。工作物の端面位置の測定および位相の割出しの詳細については後述する。
【0063】
次に、プリセットステーション50の構成を説明する。プリセットステーション50は、図2に示すように、プリセット主軸台51と、疑似主軸センタ52(本発明の「第一プリセット用保持部」に相当する)と、プリセット心押台53と、疑似心押センタ54(本発明の「第二プリセット保持部」に相当する)と、計測器55と、計測器送り装置56(本発明の「第二駆動手段」に相当する)と、位相割出しロッド57(本発明の「位相割出し手段」に相当する)と、仮受台58を備えている。また、プリセットステーション50は、図3に示すように、加工用主軸台21の上方かつ研削盤10の機内に配置されている。
【0064】
プリセット主軸台51は、加工用主軸台21の主軸センタ23に擬似的に形成された疑似主軸センタ52が取り付けられている。そして、このプリセット主軸台51の疑似主軸センタ52は、プリセットステーション50において、クランクシャフト70bの一端を保持している。また、プリセット主軸台51は、疑似主軸センタ52で保持したクランクシャフト70bをプリセット主軸回転用モータ(図示しない)により回転駆動している。プリセット心押台53は、プリセット主軸台51のZ軸方向に対向して同軸的に設けられている。そして、プリセット心押台53の左端に、クランクシャフト70bの軸方向の他端を保持する疑似心押センタ54が取り付けられている。よって、クランクシャフト70bは、両側端面に形成されたセンタ穴を介して、疑似主軸センタ52と疑似心押センタ54により両持ち支持されている。また、プリセットステーション50は、加工用主軸台21に保持されたクランクシャフト70aのクランク軸71aと、プリセット主軸台51に保持されたクランクシャフト70bのクランク軸71bとが同一の鉛直平面上に位置するように配置されている。
【0065】
計測器55は、プリセット主軸台51に保持されたクランクシャフト70bの端面であるクランクウェブ74の位置を測定する接触センサである。また、計測器55は、計測器送り装置56により、測定対象であるクランクウェブ74の位置まで移動する。計測器送り装置56は、例えば、ボールねじとモータの組み合わせからなる送り装置であり、計測器55をZ軸方向およびX軸方向に移動可能な機構を備える。位相割出しロッド57は、プリセットステーション50に固定された回転軸台(図示しない)により根本部を支持されている。そして、この回転軸台によって位相割出しロッド57は根本部を中心に回転し、先端部がクランクシャフト70bの一部に当接するように配置されている。仮受台58は、後述するローダ60が、クランクシャフト70bのジャーナル72を複数箇所で支持可能な台座である。仮受台58、後述するローダ60がプリセットステーション50に搬入するクランクシャフト70bをプリセット主軸台51が保持するまで一時的に支持している。
【0066】
次に、ローダ60の構成を説明する。ローダ60は、図3に示すように、ローダビーム61と、ローディングユニット62を備えている。
【0067】
ローダ60は、研削盤10の他に複数の工作機械や複数の周辺装置からなる生産ラインにおいて、工作物を搬送する装置である。このような場合に、例えば複数の研削盤は、それぞれの主軸台に保持される工作物の軸が同一の鉛直平面上に位置するように配置されている。そして、これらの複数の工作機械の上方において、ローダビーム61はZ軸方向へ水平に架設されている。
【0068】
ローディングユニット62は、ローダアーム63と、ローダハンド64と、把持爪65a,65b,66a,66bと、アクチュエータ67を備えている。ローディングユニット62は、ローダビーム61に沿って移動および位置決めするようにNC制御されている。ローダアーム63は、ローダビーム61に懸架されるローディングユニット62のキャリア部から鉛直方向(Y軸方向)に移動および位置決め可能に設けられている。ローダハンド64は、ローダアーム63の下端において、Z軸周りに傾動可能に連結されている。また、ローダハンド64には把持爪65a,65bと把持爪66a,66bが設けられている。把持爪65aおよび把持爪65bは、それぞれ逆V字状に形成され、図3に示すように、把持中心がZ軸方向に一致するように併設されている。把持爪66aおよび把持爪66bは、把持爪65aおよび65bと同様に構成され、図4に示すように、ローダハンド64の傾動軸を中心に90度ずれて配置されている。また、把持爪65a,65b,66a,66bは、図示しないアクチュエータによって開閉制御され、工作物の把持と解放を行っている。アクチュエータ67は、ローダアーム63の下端に設けられ、制御指令によりローダハンド64を傾動させ、所定の角度に位置決めしている。
【0069】
このように、ローダ60は、複数の工作機械や複数の周辺装置からなる生産ラインにおいて、工作物の搬送が可能となっている。ここで、プリセットステーション50は、プリセット主軸台51に保持する工作物の軸と、加工用主軸台21に保持する工作物の軸とが同一の鉛直平面上に位置するように配置されている。つまり、ローダ60は、プリセットステーション50から加工用主軸台21を有する加工部への搬送が可能な搬送部を構成している。本実施形態においては、プリセットステーション50が研削盤10の機内にあることからも搬送部は、研削盤10の機内に配置されていることとなる。
【0070】
クランクシャフト70aは、クランク軸71aを軸とするジャーナル72と、クランクピン73と、クランクウェブ74を備えている。ジャーナル72は、クランク軸71aを軸とした円柱状に形成される部位である。また、クランクシャフト70aの両端に位置するジャーナル72は、端面にセンタ穴が形成されている。これにより、加工部において、加工用主軸台21の主軸センタ23および加工用心押台25の心押センタ26によって保持される。クランクピン73は、クランク軸71aに対して偏心して位置する円筒状に形成された部位であり、本実施形態における被加工部位である。クランクウェブ74は、クランクピン73の両端に位置し、クランクウェブ74に垂直な板状の部位であり、ジャーナル72とクランクピン73とを連結している。
【0071】
クランクシャフト70bは、クランクシャフト70aと同一の工作物であり、本実施形態では、加工部での研削工程前にあり、プリセットステーション50において保持されている。
【0072】
本実施形態の研削盤システム1において、クランクシャフト70a,70bを研削する方法について、図5および図6を参照して説明する。図5は、クランクシャフト70bの端面位置の測定を示す図である。図6は、クランクシャフト70bの位相の割出しを示す図である。
【0073】
まず、加工部の研削盤10では、クランクシャフト70aが加工用主軸台21と加工用心押台25により保持されている。主軸22は、主軸回転用モータ24により回転し、主軸センタ23を介してクランクシャフト70aを回転駆動している。一方、砥石台36は、加工用主軸台21に対して相対移動することで、被研削部位であるクランクピン73の幅中央と砥石車37の幅中央とがX軸方向に一致するように位置決めする。そして、内蔵する砥石回転用モータにより回転駆動させた砥石車37をクランクピン73に接触させることで研削加工を行う。
【0074】
また、研削加工は、クランクピン73の全周に亘って行うため、クランクピン73に砥石車37を接触させた状態を維持し、主軸22の回転と砥石台トラバース31のX軸方向の移動とを同期させて加工を行う。そして、一つのクランクピン73に対する研削加工を終えると、別のクランクピン73に対して上述した位置決めを行い、クランクピン73に砥石車37を接触させ全周に亘って研削加工を行う。これをクランクシャフト70aが有するクランクピン73の数だけ繰り返し、一つの研削工程とする。
【0075】
このように、研削加工する場合には、加工用主軸台21に工作物を保持した後に、クランクピン73の幅中央の位置の測定、およびクランクシャフト70aの位相の割出しが必要となる。クランクピン73の幅中央の位置は、クランクピン73の両端に位置するクランクウェブ74の端面位置を測定することで求めてもよい。また、クランクシャフト70aの位相の割出しは、クランクピン73に位相割出しロッド57を当接させた状態でクランクシャフト70aを回転し、位相割出しロッド57の傾きから割出してもよい。その他に、ジャーナル72やクランクウェブ74にピン穴を設ける方法や、非接触センサを用いた方法が知られている。従来、このような工作物の端面位置の測定や位相の割出しは、いずれにしても加工用主軸台21に工作物を保持した後に行っていた。これに対し、本実施形態では、プリセットステーション50で先行して、工作物の端面位置の測定または位相の割出しを行う。
【0076】
ローダ60が加工部へクランクシャフト70aを搬送し研削工程が行われている状態において、プリセットステーション50ではクランクシャフト70bに対して端面位置の測定および位相の割出しであう研削準備工程が行われている。ここで、クランクシャフト70bは、次に加工部へと搬送され、研削工程が行われる工作物である。
【0077】
次に、プリセットステーション50において、クランクシャフト70bの端面位置の測定について説明する。図5に示すように、クランクシャフト70bは、プリセット主軸台51の疑似主軸センタ52およびプリセット心押台53の疑似心押センタ54によって保持されている。そして、計測器55は、計測器送り装置56により、被研削部位であるクランクピン73のほぼ中央部へと移動する。その後、計測器55の先端部をクランクピン73に接近するようにX軸方向に移動させ、計測器55をZ軸方向に往復することで、それぞれクランクウェブ74と接触する位置を測定する。これをクランクシャフト70bが有するクランクピン73の数だけ繰り返し、それぞれのクランクピン73の幅中央の位置を測定する。
【0078】
また、クランクシャフト70bは、加工部におけるクランクシャフト70bの保持状態と同様にするために、主軸センタ23に擬似的に形成された疑似主軸センタ52を採用し、心押センタ26に擬似的に形成された疑似心押センタ54を採用している。ここで、クランクシャフト70bの両端面に形成されたセンタ穴の穴径に個体差によるばらつきが生じている場合には、センタによって工作物を保持すると、このばらつきに起因して工作物がZ軸方向にずれるおそれがある。しかし、本実施形態では、上述したような疑似主軸センタ52と疑似心押センタ54を採用しているので、加工部でZ軸方向のずれが生じる場合には、同様のずれがプリセットステーション50においても生じることとなる。よって、このずれを算入した状態でクランクシャフト70bの端面位置の測定を行ったこととなる。
【0079】
次に、プリセットステーション50において、クランクシャフト70bの位相の割出しについて説明する。クランクシャフト70bは、ローダ60によりプリセットステーション50へ搬送されると、まず仮受台58に載置される。この状態では、クランクシャフト70bの位相は不明である。次に、クランクシャフト70bは、プリセット主軸台51およびプリセット心押台53により保持される。そして、図6に示すように、位相割出しロッド57が傾斜し先端部をクランクピン73に当接させる。そして、位相割出しロッド57の先端部を当接させた状態を維持し、プリセット主軸台51によりクランクシャフト70bを回転駆動させる。これにより、位相割出しロッド57は、徐々に傾き角が変化する。そして、この傾き角からクランクシャフト70bの位相を検知できるので、所定の位相となるまでクランクシャフト70bを回転させ、位相を割出す。
【0080】
このように、プリセットステーション50において、次に研削工程を行われる工作物について、研削準備工程として、端面位置の測定または位相の割出しを行う。そして、ローダ60によりプリセットステーション50から加工部へと搬送する搬送工程を経て、クランクシャフト70bは加工用主軸台21に保持される。さらに、加工部では、端面計測器17および位相計測器18による補助測定工程を行う。これは、プリセットステーション50で擬似的に形成された疑似主軸センタ52と疑似心押センタ54であっても、誤差が生じると研削準備工程の結果に影響があるためである。また、その他には、計測器による誤差や搬送工程による誤差などが考えられるので、加工部で再度、端面位置の測定または位相の割出しを行う。この時、従来のように詳細な測定や割出しを行う必要はなく、上述した誤差を把握するための補助的な測定または割出しとしている。端面計測器17は、例えば、プリセットステーション50の計測器55や非接触センサとしてもよい。同様に位相計測18は、例えば、プリセットステーション50の位相割出しロッド57や非接触センサとしてもよい。
【0081】
上述した各工程を一連にして説明する。まず、ローダ60は、前加工を終えたクランクシャフト70bをプリセットステーション50に搬入する。この時、プリセットステーション50で研削準備工程を終えたクランクシャフト70aと、クランクシャフト70bを交換する。次に、搬送工程として、クランクシャフト70aの位相を維持した状態でプリセットステーション50から加工部へ搬送し、研削工程を終えたクランクシャフトと交換する。次に、加工用主軸台21にクランクシャフト70aが保持されると、補助準備工程として端面計測器17および位相計測器18によりクランクシャフト70aの端面位置の測定および位相の割出しが簡易に行わる。この時、ローダ60は、把持している研削工程を終えたクランクシャフトを次工程に搬出するとともに、前工程を終えたクランクシャフト70をプリセットステーション50へと搬入する。このように、一連の工程において、研削行程と研削準備工程が同時に行われるように制御装置40が制御している。
【0082】
<効果>
以上説明した研削盤システム1および研削方法によれば、加工部で工作物の研削加工を行うのと同時に、次に研削加工を行う工作物について、研削準備工程を行えるため、トータルの加工時間を短縮することができる。プリセットステーション50では、工作物を加工用主軸台21に所定の状態に保持する目的、および工作物を砥石車37により研削加工する目的として端面位置の測定または位相の割出しを行っている。これにより、これまで加工用主軸台21に工作物を保持してから行っていた研削準備工程を先行して行うことができる。
【0083】
また、本実施形態において、従来との比較について図7を参照して説明する。図7は、研削加工におけるサイクルタイムを示すグラフである。(A)は、従来の研削盤であり、(B)は、本発明の研削盤システム1である。a1,b1は、研削加工を行う実加工時間である。a2は、加工用主軸台21に工作物を保持してから行っていた研削準備工程に要する合計時間である。また、b2は、プリセットステーション50で研削準備工程を終えて、加工用主軸台21に工作物を保持してから行う補助測定工程に要する合計時間である。ここで、プリセットステーション50で行う研削準備工程は、b1の研削加工と同時に行うため、当該研削準備工程に要する時間はサイクルタイムとしてはカウントされない。a3,b3は、砥石台36のX軸方向の早送りおよびトラバース送り、工作物着脱およびツルーイングなどに要する合計時間である。
【0084】
まず、(A)について、サイクルタイム(a1+a2+a3)は161秒であり、非加工時間(a2+a3)は77秒なので、トータルの加工時間のうち非加工時間の割合は、約48%になる。つまり、加工用主軸台21に工作物を保持してから研削準備工程を行うと、非加工時間が占める割合が大きくなってしまう。
【0085】
これに対し、(B)について、サイクルタイム(b1+b2+b3)は115秒であり、非加工時間(b2+b3)は31秒なので、トータルの加工時間のうち非加工時間の割合は、約27%になる。つまり、研削準備工程をプリセットステーション50で先行して行うことにより、新たに補助測定工程に要する時間(b2)が追加されるが、非加工時間が占める割合を大幅に小さくできる。つまり、従来の研削盤である(A)と比較して、トータルの加工時間の約29%を短縮することができる。
【0086】
<その他>
本実施形態においては、クランクシャフト70a、70bの偏心する工作部位であるクランクピン73を研削加工するものとした。これに対して、本発明は、偏心しないジャーナル72を研削加工する場合にも適用することができる。また、クランクピン73が偏心しないように加工用主軸台21に保持して研削加工する場合でもよい。さらに、円柱または円筒の軸状からなる円形の工作物を研削加工する場合にも適用することができる。このような研削加工においても同様に、プリセットステーション50において加工部での研削加工に先行して工作物の端面位置の測定を行う。これにより、加工用主軸台21での端面位置の測定に要する時間を省略できるので、トータルの加工時間を短縮することができる。よって、上述したような場合においても本発明により同様の効果を得られる。
【0087】
また、第一加工用保持部および第二加工用保持部をそれぞれ主軸センタ23および心押センタ26とした。同様に、第一プリセット用保持部および第二プリセット保持部をそれぞれ疑似主軸センタ52および疑似心押センタ54とした。これに対して、第一加工用保持部および第二加工用保持部の少なくとも一方は、工作物の端部を把持するチャックであり、第一プリセット用保持部と第二プリセット保持部の少なくとも一方は、工作物の端部を把持するチャックとしてもよい。このような構成とすることで、プリセットステーション50における工作物の端面位置の測定または位相の割出しの精度を向上できる。軸状からなる工作物の場合には、前加工または素材形状などに起因して、端部の形状や位置に個体差が生じていることがある。このような場合に、加工部でチャックにより工作物の端部を把持すると、工作物の個体間で回転軸方向にずれが生じる。そこで、プリセットステーション50において、加工部と同様に工作物の端部をチャックにより把持することで、加工部で生じる固体間のずれを把握することができる。よって、このずれの量を考慮した測定や割出しが可能となり、精度を向上できる。
【0088】
また、プリセットステーション50は、研削盤10の機内に配置されるものとしたが、機外に配置する構成としてもよい。プリセットステーション50を配置するのに十分なスペースを確保できない、例えば、2つの砥石車を制御して研削加工するツインヘッドタイプの研削盤などに有用である。このような場合には、プリセットステーション50を生産ラインにおける周辺装置とするとよい。つまり、プリセットステーション50が保持する工作物の軸と、他の工作機械が保持する工作物の軸とが同一の鉛直平面上になるように配置する。これにより、工作物の搬送に簡易な構成からなるローダを用いることができる。ただし、搬送部の距離や搬送時間などの見地から、プリセットステーション50は研削盤10の機内に配置されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第一実施形態:研削盤システム1からプリセットステーション50とローダ60を省略した平面図である。
【図2】研削盤システム1からローダを省略した平面図である。
【図3】研削盤システム1の正面図である。
【図4】図3におけるA方向矢視図である。
【図5】クランクシャフト70bの端面位置の測定を示す図である。
【図6】クランクシャフト70bの位相の割出しを示す図である。
【図7】研削加工におけるサイクルタイムを示すグラフである。
【符号の説明】
【0090】
1:研削盤システム
10:研削盤、 11:ベッド、 12,13:砥石台用ガイドレール
14:工作物テーブル、 15:砥石台用ボールねじ、 16:砥石台用Z軸モータ
17:端面計測器、 18:位相計測器
20:主軸装置、 21:加工用主軸台、 22:主軸
23:主軸センタ(第一加工用保持部)、 24:主軸回転用モータ
25:加工用心押台、 26:心押センタ(第二加工用保持部)
30:砥石支持装置、 31:砥石台トラバースベース
32,33:X軸ガイドレール、 34:X軸ボールねじ、 35:X軸モータ
36:砥石台、 37:砥石車、 38:砥石回転用モータ
40:制御装置(制御手段)
50:プリセットステーション、 51:プリセット主軸台
52:疑似主軸センタ(第一プリセット用保持部)、 53:プリセット心押台
54:疑似心押センタ(第二プリセット用保持部)、 55:計測器
56:計測器送り装置(第二駆動手段)
57:位相割出しロッド(位相割出し手段)、 58:仮受台
60:ローダ、 61:ローダビーム、 62:ローディングユニット
63:ローダアーム、 64:ローダハンド
65a,65b,66a,66b:把持爪、 67:アクチュエータ
70a,70b:クランクシャフト(工作物)、 71a,71b:クランク軸
72:ジャーナル 73:クランクピン、 74:クランクウェブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状からなる工作物を研削加工する研削盤システムであって、
前記工作物を保持し前記工作物を回転駆動する加工用主軸台と、砥石車を回転駆動し前記加工用主軸台に対して相対的に移動可能な砥石台と、前記加工用主軸台と前記砥石台を相対的に移動させる第一駆動手段と、を有する加工部と、
前記加工用主軸台に前記工作物を所定の状態に保持するためであると共に、前記加工用主軸台に前記所定の状態に保持された前記工作物を前記砥石車により研削加工するために、前記加工用主軸台による前記工作物の保持に先行して、前記工作物の端面位置の測定を行うプリセットステーションと、
前記プリセットステーションから前記加工部へ前記工作物を搬送する搬送部と、
前記砥石車による前記工作物の研削加工の制御と、前記プリセットステーションにおける前記工作物の端面位置の測定とを同時に行う制御手段と、
を備えることを特徴とする研削盤システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記プリセットステーションは、前記工作物を保持するプリセット主軸台と、前記プリセット主軸台に保持された前記工作物の端面位置を測定する計測器と、前記計測器と前記工作物を相対的に移動させる第二駆動手段と、を有し、
前記制御手段は、前記計測器により測定された前記工作物の端面位置に基づいて前記砥石車による前記工作物の研削加工を制御することを特徴とする研削盤システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記工作物は、ジャーナルとクランクピンとクランクウェブとを有するクランクシャフトであって、
前記計測器は、前記ジャーナルまたは前記クランクピンの両端に位置する前記クランクウェブの端面位置を測定することを特徴とする研削盤システム。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記加工部は、前記プリセットステーションから搬送され前記加工用主軸台に保持された前記工作物について、前記プリセットステーションにおいて前記計測器が測定した端面位置のうち少なくとも一つの同一な端面の端面位置を測定する端面計測器を有し、
前記制御手段は、前記端面計測器により測定された前記工作物の端面位置に基づいて前記砥石車による前記工作物の研削加工を制御することを特徴とする研削盤システム。
【請求項5】
非真円または偏心の加工部位を有する軸状からなる工作物を研削加工する研削盤システムであって、
前記工作物を保持し前記工作物を回転駆動する加工用主軸台と、砥石車を回転駆動し前記加工用主軸台に対して相対的に移動可能な砥石台と、前記加工用主軸台と前記砥石台を相対的に移動させる第一駆動手段と、を有する加工部と、
前記加工用主軸台に前記工作物を所定の状態に保持するためであると共に、前記加工用主軸台に前記所定の状態に保持された前記工作物を前記砥石車により研削加工するために、前記加工用主軸台による前記工作物の保持に先行して、前記工作物の位相の割出しを行うプリセットステーションと、
前記プリセットステーションから前記加工部へ前記工作物を搬送する搬送部と、
前記砥石車による前記工作物の研削加工の制御と、前記プリセットステーションにおける前記工作物の位相の割出しとを同時に行う制御手段と、
を備えることを特徴とする研削盤システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記プリセットステーションは、前記工作物を保持するプリセット主軸台と、前記プリセット主軸台に保持された状態の前記工作物の位相の割出しを行う位相割出し手段と、を有し、
前記制御手段は、前記位相割出し手段により割出された前記工作物の位相に基づいて前記砥石車による前記工作物の研削加工を制御することを特徴とする研削盤システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記搬送部は、前記プリセットステーションと前記加工部との間において、前記工作物の位相を維持した状態で前記工作物を搬送可能であることを特徴とする研削盤システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記加工部は、前記プリセットステーションから搬送され前記加工用主軸台に保持された前記工作物について、前記プリセットステーションにおいて前記計測器が測定した位相を測定する位相計測器を有し、
前記制御手段は、前記位相計測器により割出された前記工作物の位相に基づいて前記砥石車による前記工作物の研削加工を制御することを特徴とする研削盤システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、
前記加工用主軸台は、前記工作物の一端を保持する第一加工用保持部を有し、
前記プリセット主軸台は、前記第一加工用保持部に擬似的に形成され、前記工作物の一端を保持する第一プリセット用保持部を有することを特徴とする研削盤システム。
【請求項10】
請求項9において、
前記加工部は、前記工作物の他端を保持する第二加工用保持部を有し、
前記プリセットステーションは、前記第二加工用保持部に擬似的に形成され、前記工作物の他端を保持する第二プリセット用保持部を有することを特徴とする研削盤システム。
【請求項11】
請求項10において、
前記第一加工用保持部および前記第一プリセット用保持部は、前記工作物の一端における前記工作物の回転軸を心押しするセンタであり、
前記第二加工用保持部および前記第二プリセット用保持部は、前記工作物の他端における前記工作物の回転軸を心押しするセンタであることを特徴とする研削盤システム。
【請求項12】
請求項10において、
前記第一加工用保持部と前記第二加工用保持部の少なくとも一方は、前記工作物の端部を把持するチャックであり、
前記第一プリセット用保持部と前記第二プリセット用保持部の少なくとも一方は、前記工作物の端部を把持するチャックであることを特徴とする研削盤システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項において、
前記加工部、前記プリセットステーションおよび前記搬送部は、研削盤の機内に配置されていることを特徴とする研削盤システム。
【請求項14】
請求項13において、
前記プリセットステーションは、前記加工用主軸台に保持された前記工作物の軸と、前記プリセット主軸台に保持された前記工作物の軸とが同一の鉛直平面上に位置するように配置され、
前記搬送部は、前記工作物を把持可能なローダハンドを有し、前記加工用主軸台に対して鉛直方向および前記加工用主軸台に保持された前記工作物の軸方向の2方向のみに移動可能なローダであることを特徴とする研削盤システム。
【請求項15】
非真円または偏心の加工部位を有する軸状からなる工作物を研削加工する研削盤システムであって、
前記工作物を保持し前記工作物を回転駆動する加工用主軸台と、砥石車を回転駆動し前記加工用主軸台に対して相対的に移動可能な砥石台と、前記加工用主軸台と前記砥石台を相対的に移動させる第一駆動手段と、を有する加工部と、
前記加工用主軸台に前記工作物を所定の状態に保持するためであると共に、前記加工用主軸台に前記所定の状態に保持された前記工作物を前記砥石車により研削加工するために、前記加工用主軸台による前記工作物の保持に先行して、前記工作物の端面位置の測定および前記工作物の位相の割出しを行うプリセットステーションと、
前記プリセットステーションから前記加工部へ前記工作物を搬送する搬送部と、
前記砥石車による前記工作物の研削加工の制御と、前記プリセットステーションにおける前記工作物の端面位置の測定および前記工作物の位相の割出しとを同時に行う制御手段と、
を備えることを特徴とする研削盤システム。
【請求項16】
軸状からなる工作物を研削加工する研削方法であって、
加工用主軸台に回転可能に保持された前記工作物に対して、砥石車を回転駆動する砥石台を相対的に移動させることで、前記工作物を研削加工する研削工程と、
前記加工用主軸台に前記工作物を所定の状態に保持するためであると共に、前記加工用主軸台に前記所定の状態に保持された前記工作物を研削加工するために、前記加工用主軸台による前記工作物の保持に先行して、プリセットステーションにおいて前記工作物の端面位置の測定を行う研削準備工程と、
前記プリセットステーションから前記加工用主軸台へ前記工作物を搬送する搬送工程と、
を備え、
前記研削工程と前記研削準備工程とを同時に行うことを特徴とする研削方法。
【請求項17】
請求項16において、
さらに、前記プリセットステーションから搬送され前記加工用主軸台に保持された前記工作物について、前記研削準備工程において測定した前記工作物の端面位置のうち少なくとも一つの同一な端面の端面位置を測定する補助測定工程を備え、
前記研削工程は、前記研削準備工程において測定された前記工作物の端面位置および前記補助測定工程において測定された前記工作物の端面位置に基づいて、前記砥石車による前記工作物を研削加工することを特徴とする研削方法。
【請求項18】
非真円または偏心の加工部位を有する軸状からなる工作物を研削加工する研削方法であって、
加工用主軸台に回転可能に保持された前記工作物に対して、砥石車を回転駆動する砥石台を相対的に移動させることで、前記工作物を研削加工する研削工程と、
前記加工用主軸台に前記工作物を所定の状態に保持するためであると共に、前記加工用主軸台に前記所定の状態に保持された前記工作物を研削加工するために、前記加工用主軸台による前記工作物の保持に先行して、プリセットステーションにおいて前記工作物の位相の割出しを行う研削準備工程と、
前記プリセットステーションから前記加工用主軸台へ前記工作物を搬送する搬送工程と、
を備え、
前記研削工程と前記研削準備工程とを同時に行うことを特徴とする研削方法。
【請求項19】
請求項18において、
さらに、前記プリセットステーションから搬送され前記加工用主軸台に保持された前記工作物について、前記研削準備工程において割出された前記工作物の位相を割出す補助割出工程を備え、
前記研削工程は、前記研削準備工程において割出した前記工作物の位相および前記補助割出工程において割出した前記工作物の位相に基づいて、前記砥石車による前記工作物を研削加工することを特徴とする研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−105078(P2010−105078A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277256(P2008−277256)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】