説明

研削装置

【課題】ワークが横滑りすることを抑制すること。
【解決手段】支持部材120のワークWが載置される領域内には、吸入口121を点対称位置として円形状の複数の穴部124が形成されている。このような支持部材120の構成によれば、支持部材120に形成された複数の穴部124が、支持部材120上面とワークWの下面との間に挟まれる空気を支持部材120の下面側に逃すので、支持部材120上面にワークWを載置するために支持部材120上面の数ミリ上からワークWを落とした際、支持部材120上面でワークが大きく横滑りし、ワークWを適切に支持できなくなることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等のワークを研削加工するための研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程では、IC,LSI等の回路が複数個形成された半導体ウエーハは、個々の回路に分割される前に、その裏面を研削装置によって研削することにより、所定厚さに研削される。半導体ウエーハの裏面を研削する研削装置は、半導体ウエーハ着脱域及び研削域に沿って回転可能に配設されたターンテーブルと、ターンテーブルに配設され、研削域に順次移動される複数個のチャックテーブルと、研削域に配設され、研削域に移動されたチャックテーブル上に保持された半導体ウエーハの裏面を研削する研削ホイールを有する研削手段と、チャックテーブル上に半導体ウエーハを搬入する前にワークの位置合わせを行う位置合わせ手段と、を備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の研削装置における位置合わせ手段では、半導体ウエーハの外周にピン等を突き当てることによって半導体ウエーハの位置を物理的に合わせる手法が用いられていたが、最近では、より精度が高い位置合わせ等を目的として、他の手法も用いられている。この他の手法では、支持部材上面に支持した半導体ウエーハの位置や向きを検出し、検出結果に基づいて半導体ウエーハの位置を補正した後に半導体ウエーハをチャックテーブル上に搬送する。また、この手法では、支持部材上面に半導体ウエーハを載置する際には、研削装置内の可動部との干渉を抑制するために、搬入手段が支持部材上面の数ミリ上から半導体ウエーハを落とすという方法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−86048公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、研削前の半導体ウエーハの厚さが薄い場合(例えばテープの厚さを含めて厚さが500〜300μm程度である場合)、半導体ウエーハが撓まないように半導体ウエーハを広範囲で支持するために、半導体ウエーハを支持する支持部材の面積を大きくする必要がある。しかしながら、支持部材の面積を大きくすると、支持部材上面に半導体ウエーハを載置するために支持部材上面の数ミリ上から半導体ウエーハを落とした際、支持部材上面で半導体ウエーハが大きく横滑りし、半導体ウエーハを適切に支持できなくなることがあった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ワークを支持部材上に載置する際にワークが横滑りすることを抑制可能な研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る研削装置は、ワークを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたワークを研削加工する加工手段と、該保持手段にワークが搬入される前に、少なくともワークの中心位置を検出する検出手段と、該検出手段にワークを搬入する搬入手段と、を有する研削装置であって、該検出手段は、該搬入手段によって搬入されたワークをワークの下面から全面において支持する支持部材と、該支持部材に支持されたワークの位置を検出する検出部材と、を有し、該支持部材は、該搬入手段によってワークを該支持部材上に載置する際に、該支持部材上面とワークの下面との間に挟まれる気体を該支持部材上面とワーク下面との間から逃す気体逃がし部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る研削装置によれば、ワークを支持部材上に載置する際にワークが横滑りすることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である研削装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態である支持部材の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す支持部材の作用を説明するための一部断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態である支持部材の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態である支持部材の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である研削装置の構成について説明する。
【0011】
〔研削装置の全体構成〕
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態である研削装置の全体構成について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態である研削装置の構成を示す斜視図である。図1に示すように、本発明の一実施形態である研削装置1は、装置ハウジング2を備える。装置ハウジング2は、細長く延在する直方体状の主部21と、主部21の後端部(図1における右端部)に設けられ、鉛直上方に延びる直立壁22と、主部21の前端部(図1における左端部)に設けられ、水平方向に延びる一対の支持部23,24とを有する。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221,221が設けられている。一対の案内レール221,221には、加工手段3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0013】
加工手段3は、移動基台31と、移動基台31に装着されたスピンドルユニット4と、を備える。移動基台31の後面側は、一対の案内レール221,221に摺動可能に係合している。移動基台31の前面側には、前方に突出する支持部311が設けられ、支持部311には、スピンドルユニット4が取り付けられている。スピンドルユニット4の下面には研削工具5が締結されている。スピンドルユニット4及び研削工具5は、本発明に係る加工手段として機能する。
【0014】
研削装置1は、スピンドルユニット4を一対の案内レール221,221に沿って上下方向に移動させる研削ユニット送り機構6を備える。研削ユニット送り機構6は、直立壁22の前側に配設され、鉛直上方に延びる雄ネジロッド61を備える。雄ネジロット61は、その上端部及び下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材62によって回転自在に支持されている。
【0015】
軸受部材62には、雄ネジロッド61を回転駆動するパルスモータ63が配設されている。移動基台31の後面には、その軸方向中央部から後方に延びる図示しない貫通雌ネジ孔が形成されている。雄ネジロッド61は、図示しない貫通雌ネジ孔に螺合している。これにより、パルスモータ63が正転した場合、移動基台31、すなわち加工手段3は下降(前進)し、パルスモータ63が逆転した場合には、移動基台31、すなわち加工手段3は上昇(後進)する。
【0016】
ハウジング2の主部21には、チャックテーブル機構7が配設されている。チャックテーブル機構7は、チャックテーブル71と、チャックテーブル71の周囲を覆うカバー部材72と、カバー部材72の前後に配設された蛇腹手段73,74とを備える。チャックテーブル71は、図示しない回転手段によって回転されるものであり、図示しない吸引手段を作動することによりその上面にワークWを吸引保持するように構成されている。チャックテーブル71は、本発明に係る保持手段として機能する。
【0017】
ワークWは、特に限定されないが、例えばシリコンウエーハ,GaAsウエーハ,SiCウエーハ等の半導体ウエーハ、セラミックス,ガラス,サファイア(Al)等の無機材料基板、板状金属や樹脂の延性材料、ミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの平坦度(TTV:Total Thickness Variation:ワーク被研削面を基準面として厚み方向に測定した高さのワーク被研削面全面における最大値と最小値の差)が要求される各種加工材料等を例示することができる。
【0018】
チャックテーブル71は、図示しないチャックテーブル移動手段によってワーク載置域75と研削工具5と対向する研削域76との間で移動される。蛇腹手段73,74は、キャンパス布等の適宜材料によって形成されている。蛇腹手段73の前端は主部21の前面壁に固定され、後端はハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。チャックテーブル71が矢印77aで示す方向に移動する場合、蛇腹手段73及び蛇腹手段74はそれぞれ伸長及び収縮し、チャックテーブル71が矢印77bで示す方向に移動する場合には、蛇腹手段73及び蛇腹手段74はそれぞれ収縮及び伸長する。
【0019】
支持部23,24の上面にはそれぞれカセット8,9が配設されている。カセット8,9は、複数のスロットを有するワークW用の収容器である。一方のカセット8は、研削加工前のワークWを収容し、他方のカセット9は、研削加工後のワークWを収容する。ワーク載置域75の近傍には位置合わせ手段10,搬入手段11,搬出手段12,及び洗浄手段13が設けられている。位置合わせ手段10は、カセット8から取り出されたワークWを仮置きし、その中心位置の位置決めを行うためのテーブルである。
【0020】
位置合わせ手段10は、検出ステージ110と、支持部材120と、吸引手段130と、撮像手段140とを備え、位置合わせ手段10は、本発明に係る検出手段として機能する。検出ステージ110は、カセット8から取り出されて仮置きされるワークWの中心位置及びオリエンテーションフラットの位置を検出するために用いられ、その中心位置合わせ及び方向位置合わせを行うためのテーブルである。
【0021】
支持部材120は、カセット8から取り出されたワークWの下面全面を支持する部材である。なお、支持部材120は、必ずしもワークWの下面全面を支持する必要はなく、位置情報の取得に影響を与えるほど撓まないようにワークWの下面を支持できていればよい。
【0022】
吸引手段130は、支持部材120に形成された図示しない吸引口を介して支持部材120上面に仮置きされたワークWを吸着保持するためのものである。撮像手段140は、支持部材120上面に吸着保持されたワークWの外周端部の一部を撮像してその位置情報を取得するためのものである。撮像手段140は、本発明に係る検出部材として機能する。
【0023】
搬入手段11は、鉛直方向への昇降及び自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う搬送アーム11aを備え、この搬送アーム11aにワークWを吸着保持する吸着パッド11bが取り付けられて構成されている。搬入手段11は、位置合わせ手段10で位置決めされた研削加工前のワークWの被吸着面(裏面)を吸着保持してワーク載置域75に位置するチャックテーブル71の保持面にワークWを搬入する。
【0024】
搬出手段12は、鉛直方向への昇降及び自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う搬送アーム12aを備え、この搬送アーム12aにワークを吸着保持する吸着パッド12bが取り付けられて構成されている。搬出手段12は、ワーク載置域75に位置するチャックテーブル71上の研削加工後のワークWを吸着保持し洗浄手段13に搬出する。洗浄手段13は、研削加工後のワークWを洗浄し、研削された被研削面に付着している研削屑等のコンタミネーションを除去する。
【0025】
カセット8,9の近傍には搬出入手段14が設けられている。搬出入手段14は、例えばU字型ハンドを備えるロボットアーム14aであり、ロボットアーム14aによってワークWの被研削面を吸着保持して搬送する。具体的には、搬出入手段14は、研削加工前のワークWをカセット8から位置合わせ手段10へ搬出すると共に、研削加工後のワークWを洗浄手段13からカセット9へ搬入する。搬出入手段14は、本発明に係る搬入手段として機能する。
【0026】
〔支持部材の構成〕
次に、図2乃至図5を参照して、本発明の第1乃至第3の実施形態である支持部材の構成について説明する。
【0027】
〔第1の実施形態〕
始めに、図2を参照して、本発明の第1の実施形態である支持部材の構成について説明する。
【0028】
図2は、本発明の第1の実施形態である支持部材の構成を示す斜視図である。図2に示すように、本発明の第1の実施形態である支持部材120は、ワークWの平面面積より大きい平面面積を有する円板によって構成され、その中心位置には吸引口121が形成されている。吸引口121は、支持部材120の下面に配設される吸引手段130(図1参照)に連通している。支持部材120の上面には、吸引口121から支持部材120の外周方向に延びる複数の径方向吸気溝122と、吸気口121を中心位置とする同心円状の複数の周方向吸気溝123とが形成されている。周方向吸気溝123は、径方向吸気溝122と交差する。支持部材120のワークWが載置される領域内には、吸入口121を点対称位置として円形状の複数の穴部124が形成されている。
【0029】
次に、図3を参照して、本発明の第1の実施形態である支持部材の作用について説明する。
【0030】
図3は、図2に示す支持部材の作用を説明するための一部断面図である。図3に示すように、本発明の第1の実施形態である支持部材120では、支持部材120上面にワークWを載置するためにロボットアーム14aが支持部材120上面の数ミリ上からワークWを落とすと、支持部材120上面とワークWの下面との間に挟まれる空気は、矢印Aに示すように支持部材120に形成された穴部124を通って支持部材120の下面側に排出される。また、吸引手段130が、吸引口121,径方向吸気溝122,及び周方向吸気溝123を介してワークWを吸引することによって、支持部材120の上面においてワークWを吸引保持する。
【0031】
このような支持部材120の構成によれば、支持部材120に形成された複数の穴部124が、支持部材120上面とワークWの下面との間に挟まれる空気を支持部材120の下面側に逃すので、支持部材120上面にワークWを載置するために支持部材120上面の数ミリ上からワークWを落とした際、支持部材120上面でワークが大きく横滑りし、ワークWを適切に支持できなくなることを抑制できる。また、支持部材120の上面にはワークWを吸着保持する吸引口121,径方向吸気溝122,及び周方向吸気溝123が形成されているので、ワークWの横滑りをより確実に抑制できる。また、複数の穴部124は、支持部材120の中心位置を点対称位置として対称に形成されているので、支持部材120の面内方向で均一に空気を排出することができる。
【0032】
〔第2の実施形態〕
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施形態である支持部材の構成について説明する。
【0033】
図4は、本発明の第2の実施形態である支持部材の構成を示す斜視図である。図4に示すように、本発明の第2の実施形態である支持部材120は、第1の実施形態における円形状の穴部124の代わりに、その外周側から吸入口121方向に延びる複数の切り欠き部125を備える。複数の切り欠き部125の長さは、少なくともワークWが載置される領域内に進入する長さ以上、且つ、径方向吸気溝122及び周方向吸気溝123と干渉しない長さ以下に調整されている。また、複数の切り欠き部125は、穴部124と同様、支持部材120の中心位置を点対称位置として対称に形成されている。
【0034】
このような支持部材120では、支持部材120上面にワークWを載置するためにロボットアーム14aが支持部材120上面の数ミリ上からワークWを落とすと、第1の実施形態と同様に、支持部材120上面とワークWの下面との間に挟まれる空気は、切り欠き部125を通って支持部材120の下面側に排出される。すなわち、複数の切り欠き部125が、支持部材120上面とワークWの下面との間に挟まれる空気を支持部材120の下面側に逃す。これにより、支持部材120上面にワークWを載置するために支持部材120上面の数ミリ上からワークWを落とした際、支持部材120上面でワークが大きく横滑りし、ワークWを適切に支持できなくなることを抑制できる。
【0035】
〔第3の実施形態〕
最後に、図5を参照して、本発明の第3の実施形態である支持部材の構成について説明する。
【0036】
図5は、本発明の第3の実施形態である支持部材の構成を示す斜視図である。図5に示すように、本発明の第3の実施形態である支持部材120は、第1の実施形態における円形形状の穴部124の代わりに、ワークWが載置される領域内に形成された扇形形状の複数の穴部126を備える。複数の穴部126は、ワークWが載置される領域内であって、最外周にある周方向吸気溝123よりも外周側の領域に形成されている。
【0037】
このような支持部材120では、支持部材120上面にワークWを載置するためにロボットアーム14aが支持部材120上面の数ミリ上からワークWを落とすと、第1及び第2の実施形態と同様に、支持部材120上面とワークWの下面との間に挟まれる空気の一部は、複数の穴部126を通って支持部材120の下面側に排出される。すなわち、複数の穴部126が、支持部材120上面とワークWの下面との間に挟まれる空気の一部を支持部材120の下面側に逃す。これにより、支持部材120上面にワークWを載置するために支持部材120上面の数ミリ上からワークWを落とした際、支持部材120上面でワークが大きく横滑りし、ワークWを適切に支持できなくなることを抑制できる。
【0038】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、上記実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例、及び運用技術等は、全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 研削装置
110 検出ステージ
120 支持部材
121 吸引口
122 径方向吸気溝
123 周方向吸気溝
124,126 穴部
125 切り欠き部
130 吸引手段
140 撮像手段
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、
該保持手段に保持されたワークを研削加工する加工手段と、
該保持手段にワークが搬入される前に、少なくともワークの中心位置を検出する検出手段と、
該検出手段にワークを搬入する搬入手段と、
を有する研削装置であって、
該検出手段は、
該搬入手段によって搬入されたワークをワークの下面から全面において支持する支持部材と、
該支持部材に支持されたワークの位置を検出する検出部材と、
を有し、
該支持部材は、
該搬入手段によってワークを該支持部材上に載置する際に、該支持部材上面とワークの下面との間に挟まれる気体を該支持部材上面とワーク下面との間から逃す気体逃がし部を有することを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該支持部材は、ワークを吸引保持する吸引部を有することを特徴とする請求項1に記載の研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−16758(P2012−16758A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153996(P2010−153996)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】