説明

磁化率精密測定方法及び超伝導量子干渉計用の測定セル

【課題】微粉末等の試料、大気中で不安定な試料、磁化率が小さい試料についても、SQUID装置を用いて精密な磁化率の測定が可能となる測定方法、及びそのような測定方法に使用する測定用セルを提供すること。
【解決手段】非磁性材料を用いて、中央部の隔壁により仕切られており、両端部が解放されている円筒状の測定セルを作製し、その一方の端部から試料を充填した後、該端部を密封したものを2回SQUID装置に挿入し、2回の測定結果を減算すれば、試料のみによる磁化率が得られる。非磁性材料からなり、一方の端部が解放され、他方の端部が密封されている中空円筒状の試料部と、非磁性材料からなり、該測定部分とほぼ同じ長さの円柱状の支持部とを有し、中心軸がほぼ一致するように前記試料部と前記支持部とが、前記試料部の密封されている端部で連結されている測定セルについても、試料を充填した後、解放されている端部を密封すれば、同様の結果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導量子干渉計を用いる磁化率精密測定方法、及び該磁化率精密測定方法で使用する超伝導量子干渉計用の測定セルに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導量子干渉計(Superconducting QUantum Interference Device: SQUID)は、超導電体に特有のジョセフソン効果を利用した高感度磁束計(磁気センサ)であり、微小試料、薄膜、有機磁性体等の磁気モーメントを測定するのに使用される。そして、磁気物理学、磁気化学、磁気光学、材料工学等の研究分野においては、有力な測定機器となっており、超伝導体の特性評価にも不可欠なものとなっている。
【0003】
SQUIDの試料測定部付近の模式図を、図7に示す。測定試料1は、試料ホルダ2内に固定した後、ロッド5を用いて、SQUIDの測定室3内に挿入される。測定室3の周囲にはヘリウムガスガスが流れる冷却空間4が存在し、その外部には真空部分6が存在する。測定室3下部にはガスヒータ8、Pt温度計9、Ge温度計10があり、液体ヘリウム導入管7から送られてくるヘリウムガスの温度を、設定温度に調整する。なお、液体ヘリウム導入管7は、液体ヘリウムタンク(図示せず)に接続している。
【0004】
設定温度に調整されたヘリウムガスは、冷却空間4を流れ、試料ホルダ2及びその内部にある測定試料1を、設定温度に冷却する。真空部分6のさらに外側には、コイル11が存在し、測定試料1の磁化率を測定する。
【0005】
ここで、磁性微粒子、磁気粒子、液体中懸濁物質等の磁化率を測定する技術としては、特許文献1〜5が存在する。また、磁気浮遊可能な反磁性材料の磁化率を容易に測定する方法としては、特許文献6が存在する。
【特許文献1】特開2002−71645号公報
【特許文献2】特開2004−138464号公報
【特許文献3】特開2002−357594号公報
【特許文献4】特開2000−221252号公報
【特許文献5】特表2005−527782号公報
【特許文献6】特開2007−47055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SQUID装置自体は市販されており、容易に購入可能となっている。しかし、試料の測定方法については、学術文献等に報告されている方法を参考にするしかない。また、測定用のセルについても、SQUID装置の専用品というものは存在せず、研究者が自前で工夫しているのが実情である。
【0007】
ここで、一般的に利用されている測定用セルの作製方法を、図8に示す。測定試料21は、色素添加(磁性不純物)のないストロー24を、適当な大きさに切断した断片22に挿入し、固定する。このとき、試料の大きさは、ストロー断片22の内径を考慮して決定する。
【0008】
測定試料21を固定した断片23は、切り口がストロー24の長手方向と平行になるように挿入し、固定する。そして、ストロー24の両端を密封部材25で密閉する。密封部材25の一方にはロッド26が取り付けられており、ロッド26を上側にして、ストロー24をSQUID装置の測定室内に挿入する。
【0009】
ところが、このような測定セルでは、微粉末等の測定試料では、ストロー24内に飛散する可能性が高く、精密な測定が極めて困難である。また、万が一、SQUID装置の測定室内で、ストロー24から密封部材25が脱落すれば、SQUID装置内部に測定試料が散乱する事態を引き起こしてしまう。このため、測定試料は塊状又はペレット状のものに限定されてしまう。
【0010】
さらに、測定セルと測定試料とが示す磁化率が合算された磁化率を測定することになるが、測定セルによる磁化率を補正することは困難であった。
【0011】
また、試料を市販のゼラチンカプセルに封入する方法もあるが、密封が不完全であり、試料が微粉末の場合には、やはりSQUID装置内部に試料が散乱する事態を引き起こしてしかねない。また、カプセル内に大気が侵入し、酸素又は水分によって測定前の試料が酸化又は分解されるおそれもあった。
【0012】
本発明は、微粉末等の取扱が困難な試料や、磁化率が小さい試料についても、SQUID装置を用いて磁化率の精密な測定が可能となる測定方法、及びそのような測定方法に使用する測定用セルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、石英硝子等の非磁性材料を用いて、中央部の隔壁により2室対称となっており、両端部が解放されている円筒状の測定セルを作製し、その一方の端部から試料を充填した後、該端部を密封したものを2回SQUID装置に挿入するようにすれば、微粉末又は磁化率が小さい試料についても磁化率の精密測定が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
また、一方の端部が解放され、他方の端部が密封されている中空円筒状の試料部と、非磁性材料からなり、該測定部分と同じ長さの円柱状の支持部とを有し、中心軸が一致するように前記試料部と前記支持部とが、前記試料部の密封されている端部で連結されている測定セルを作製し、端部から試料を充填した後で端部を密封することによっても、上記と同様の精密測定が可能となることも見出した。
【0015】
具体的に、本発明は、
超伝導量子干渉計を用いる磁化率精密測定方法であって、
非磁性材料からなり、中央部付近に隔壁が存在し、少なくとも一方の端部が解放されている円筒状の測定セルに、解放されている端部から試料を充填した後、該端部を密封する第一密封工程と、
前記第一密封工程後の測定セルを、試料が密封されている部分を上側にして超伝導量子干渉計に挿入し、磁化率を測定する第一測定工程と、
前記第一密封工程後の測定セルを、試料が密封されている部分を下側にして超伝導量子干渉計に挿入し、磁化率を測定する第二測定工程と、
前記第一測定工程において得られた信号から、前記第二測定工程において得られた信号を減算し、試料のみによる信号を算出する減算工程と、
を有する磁化率精密測定方法に関する。
【0016】
また、本発明は、
超伝導量子干渉計を用いる磁化率精密測定方法であって、
非磁性材料からなり、一方の端部が解放され、他方の端部が密封されている中空円筒状の試料部と、非磁性材料からなり、該試料部とほぼ同じ長さの円柱状の支持部とを有し、中心軸がほぼ一致するように前記試料部と前記支持部とが、前記試料部の密封されている端部で連結されている測定セルに試料を充填した後、解放されている端部を密封する第二密封工程と、
前記第二密封工程後の測定セルを、試料が密封されている部分を上側にして超伝導量子干渉計に挿入し、磁化率を測定する第一測定工程と、
前記第二密封工程後の測定セルを、試料が密封されている部分を下側にして超伝導量子干渉計に挿入し、磁化率を測定する第二測定工程と、
前記第一測定工程において得られた信号から、前記第二測定工程において得られた信号を減算し、試料のみによる信号を算出する減算工程と、
を有する磁化率精密測定方法に関する。
【0017】
特定構造の測定セルを用い、その内部に測定試料を密封することにより、微粉末等の試料についても、SQUID装置を用いた磁化率測定が可能となる。また、この特定構造の測定セルは、上下を反転させて2回SQUID装置に挿入して測定することにより、測定セルによる信号を除去し、試料のみによる信号から精密な磁化率を算出することが可能である。
【0018】
非磁性材料としては、石英硝子、硬質硝子、ポリカーボネート、無酸素銅又はマコールが好ましい。
【0019】
本発明の精密磁化率測定方法は、図8に示すような従来の測定用セルでも測定可能であった試料にも適するが、特に、大気中で不安定な物質を試料とする場合に適している。
【0020】
なお、本発明でいう「大気中で不安定な物質」とは、大気中の酸素によって酸化又は分解されやすい物質、吸湿性が高い物質、揮発性物質、微粉末等の飛散しやすい物質等を意味している。
【0021】
第一密封工程又は第二密封工程においては、試料と共にヘリウムガスを密封することが好ましい。試料が酸化されやすい物質であるか、吸湿性が高い物質である場合には、空気をヘリウムガスで置換することにより、試料の酸化又は吸湿を防ぐことができる。また、ヘリウムガスは低温でも蒸気圧が高く、熱伝導性も良好であることから、試料の温度制御が容易になり、より精密な磁化率測定が可能となるためである。
【0022】
また、本発明は、
石英硝子からなり、中央部付近に隔壁が存在し、少なくとも一方の端部が解放されている円筒状の超伝導量子干渉計用の測定セルに関する。
【0023】
また、本発明は、
石英硝子からなり、一方の端部が解放され、他方の端部が密封されている中空円筒状の試料部と、
石英硝子からなり、前記試料部とほぼ同じ長さの円柱状の支持部とを有し、
中心軸が一致するように前記試料部と前記支持部とが、前記試料部の密封されている端部で連結されている超伝導量子干渉計用の測定セルに関する。
【0024】
なお、本発明の測定セルにおいては、単位長さ当たりの質量が、長さ方向について等しいことが好ましい。また、本発明で使用する測定セルの中央部付近に存在する隔壁は、できるだけ薄いことが好ましい。隔壁部分の厚みが大きいと、隔壁部分からの信号が大きくなり、測定セルによる信号が非対称形になりやすいためである。
【0025】
また、本発明の測定方法及び測定セルにおいては、中央部付近の隔壁によって、測定セルが2室対称となるように仕切られていることが、測定誤差が少ない点でより好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の測定方法及び測定セルによれば、大気中で不安定な物質が試料であっても、精密な磁化率の測定が可能となる。また、SQUID装置の汚染する心配もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下に限定されない。
【0028】
本発明の測定セル(本発明の測定方法で使用する測定セル)の一例を、図1(a)及び図1(b)に示す。測定セルは石英硝子、硬質硝子、ポリカーボネート、無酸素銅、マコール等の非磁性材料製である。試料の磁化率が大きく、測定セルによる測定誤差が小さい場合には、石英硝子よりも磁化率が大きいが、熔封しやすい硬質硝子を用いてもよい。磁化率が小さく、充填後の試料の状態を確認できる点では、石英硝子が最も好ましい。
【0029】
測定セルは中空の円柱状であり、外径は5mm、内径は3.5±0.5mmとすることが好ましい。長さは200〜250mmが好ましく、ここでは両端部が解放されている。中央部には隔壁が存在し、隔壁によって2室に分離されている部分は、完全に遮断されている。この隔壁の厚みyは、できる限り薄いことが好ましい。
【0030】
磁化率を測定する試料は、いずれかの一方の端部から充填する。その後、該端部を熔封等の手段によって密封する。このとき、試料が酸化されやすい物質、吸湿性が高い物質である場合には、ヘリウムガスによってセル内の空気を置換した後、試料を充填した端部を密封することが好ましい。試料をヘリウムガスと共に密封すると、熱交換性が向上し、平衡温度に短時間で達するので温度制御が容易になり、より精密な磁化率の測定に適している。
【0031】
試料を充填しない他方の端部は、解放したままであってもよいが、熔封等により密封してもよい(図1(a)及び図1(b)では密封されている)。また、当初から片方の端部が密封された測定セルに、解放されている他方の端部から試料を充填した後、他方の端部を密封してもよい。
【0032】
なお、本発明の測定セル(本発明の測定方法で使用する測定セル)は、上述したように単位長さ当たりの質量が、長さ方向について等しいことが好ましい。このため、図2(a)及び図2(b)に示すような形態であることがより好ましい。図2(a),(b)の測定セルでは、中心付近に隔壁が形成されており、その部分で径が小さくなっている。それ以外は図1(a),(b)の測定セルと同様であり、試料の密封方法についても同様である。
【0033】
また、本発明の測定セル(本発明の測定方法で使用する測定セル)は、図3(a)及び図3(b)に示すような、隔壁部を中心として非対称の構造であってもよい。この測定セルは、中空円筒状の試料部と、円柱状の支持部とから構成されており、どちらも同じ石英硝子等の非磁性材料である。試料部の一方の端部は解放しており、他の端部は密封されている点では、図1(a),(b)の測定セルと同様である。
【0034】
試料部は、外径は5mm、内径は3.5±0.5mmとすることが好ましく、長さは100〜125mmとすることが好ましい。支持部は、測定部と同じ長さであり、その径は3.5 mm以下であることが好ましい。支持部は中空であってもよく、中空でなくてもよい。ただし、試料以外からの発生信号を小さくするために、試料部と単位長さ当たりの質量が同じであることが好ましい。
【0035】
本発明の測定方法の概略フローチャートを、図4に示す。図1(a),(b)及び図2(a),(b)に示す構造の測定セルを用いる場合には、まず、ステップS1として、非磁性材料からなり、2室対称となるように中央部に隔壁が存在し、少なくとも一方の端部が解放されている円筒状の測定セルに、解放されている端部から試料を充填した後、該端部を密封する(第一密封工程)。試料を充填した側の端部を密封し、石英硝子等の非磁性材料製の円柱内に密封するため、試料が微粉末等であっても、SQUID装置内を汚染する心配はない。
【0036】
なお、図3に示す構造の測定セルを用いる場合には、ステップS1の替わりにステップS1’として、非磁性材料からなり、一方の端部が解放され、他方の端部が密封されている中空円筒状の試料部と、非磁性材料からなり、該試料部と同じ長さの円柱状の支持部とを有し、中心軸が一致するように前記試料部と前記支持部とが、前記試料部の密封されている端部で連結されている測定セルに試料を充填した後、解放されている端部を密封する工程(第二密封工程)を行う。
【0037】
次に、ステップS2として、密封工程後の測定セルを、試料が密封されている部分(室)を上側にして超伝導量子干渉計(SQUID装置)に挿入し、磁化率を測定する(第一測定工程)。このとき、測定セルの上部にはロッドが取り付けられており、SQUID装置の測定室内に垂直に挿入される。このステップS2における測定セルの状態と、SQUID装置の信号状態とは、図5の(a)に示す関係となる。
【0038】
試料の位置は、測定開始前の測定セル取り付け時に測定し、記録する。SQUID装置固有には固有の測定中心が存在するため、その測定中心に測定セル内の試料位置をあわせるためでもある。
【0039】
次に、ステップS3として、密封工程後の測定セルを、試料が密封されている部分(室)を下側にしてSQUID装置に挿入し、磁化率を測定する(第二測定工程)。第一工程とはセルを上下反転させることにより、試料は測定セルの底部に移動する。このステップS3における測定セルの状態と、SQUID装置の信号状態とは、図5の(b)に示す関係となる。
【0040】
次に、ステップS4として、第一測定工程において得られた信号から、第二測定工程において得られた信号を減算し、試料のみによる信号を算出する(減算工程)。第一測定工程の信号aは、試料及び測定セルを合計した信号であり、第二測定工程の信号bは、測定セルの信号である。従って、第一測定工程の信号aから第二測定工程の信号bを減算すれば、図5の(c)に示すように、試料のみの信号cを得ることができる。
【0041】
図5の(a)に示す状態(第一測定工程の状態)と、図5の(b)に示す状態(第二測定工程の状態)とでは、測定セルに関してスキャン中心が異なる。そこで、ソフトウェア上で信号の上下反転及び位置調整を行うことにより、信号aから信号bを減算し、信号cを得ることが可能となる。
【0042】
なお、図4では、ステップS1→S2→S3→S4の順で操作を行っているが、ステップS1→S3→S2→S4の順としてもよい。すなわち、第一測定工程と第二測定工程とは、どちらから先に行ってもよい。図5に示す信号aから信号bを減算すれば、信号cを得ることができるため、信号aと信号bとの測定順序は信号cの計算には、関係しないためである。
【0043】
ただし、試料が微粉末等で測定セルの内壁に非常に付着しやすい場合には、ステップS3→S2の順とする方が、試料の内壁への付着による影響を受けにくい点では好ましい。
【0044】
[実施例]
(試料の調製)
Mg(Nilaco Corp製、純度99.98%)は、表面研磨によって酸化膜を取り除いた。また、フラーレン(MTR Ltd.製C60、純度99.95%)は、300℃、12時間電気炉内で加熱し、脱気処理した。グローブボックス内でMgとフラーレンとをステンレス管に入れ、両端を押しつぶして密閉し、さらに硬質ガラス管内に真空封入した。そして、460℃、120時間電気炉内で加熱し、ステンレス管内に形成されたフラーレン/Mg化合物を測定試料とした。
【0045】
(第一密封工程)
図1に示す形態の石英ガラス製測定セル(全長200mm、外径5.0mm、内径3.0mm)の一方の端部から測定試料7.4mgを入れた後、端部をガスバーナーによって熔封した。このとき、測定試料を入れた室には、ヘリウムガスを50Torrの圧力で封入した。なお、他方の端部は開放したままとした。
【0046】
(第一測定工程)
測定セルは、測定試料を密封した側にロッドを取り付け、測定試料を密封した側が上側となるようにして、SQUID装置(Quantum design製MPMS-5SH)の測定室内に挿入した。印加磁場5T、温度2K〜800Kという条件で磁化率の測定を行った。
【0047】
(第二測定工程)
次に、測定セルを測定室から取り出し、測定試料を密封した側が下側となるようにして、ロッドを付け替え、再びSQUID装置の測定室内に挿入した。そして、第一測定工程と同じ条件で磁化率の測定を行った。
【0048】
(減算工程)
本実施例における減算工程を、図6に基づいて説明する。信号aが第一測定工程で得られたデータであり、信号bが第二測定工程で得られたデータである。横軸はSQUID装置の測定位置を表しており、「0」が測定中心(スキャン中心)である。また、縦軸は信号強度を表している。
【0049】
信号aは「試料+測定セル」のデータであり、信号bは「測定セル」のデータであり、信号aから信号bを減算し、「試料」のデータである信号cが得られた。この減算においては、信号aと信号bの向きを合わせるため、信号bを左右に反転させた。また、その上で信号aと信号bの位置を調整した。この反転及び位置調整は、ソフトウェア上で実行した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の測定方法及び測定セルは、磁気物理学、磁気化学、磁気光学、材料工学等の技術分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の測定セルの一例を示す図であり、(a)が外観図、(b)は断面図である。
【図2】本発明の測定セルの別の一例を示す図であり、(a)が外観図、(b)は断面図である。
【図3】本発明の測定セルのさらに別の一例を示す図であり、(a)が外観図、(b)は断面図である。
【図4】本発明の測定方法の概略フローチャートである。
【図5】測定セルの状態と、SQUID装置の信号状態とを表す図である。
【図6】実施例の減算工程を説明する図である。
【図7】SQUIDの試料測定部付近の模式図である。
【図8】一般的に利用されている測定用セルの作製方法を表す図である。
【符号の説明】
【0052】
1:測定試料
2:試料ホルダ
3:測定室
4:冷却空間
5:ロッド
6:真空部分
7:液体ヘリウム導入管
8:ガスヒータ
9:Pt温度計
10:Ge温度計
11:コイル
21:測定試料
22:ストロー断片
23:測定試料を固定したストロー断片
24:ストロー
25:密封部材
26:ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導量子干渉計を用いる磁化率精密測定方法であって、
非磁性材料からなり、中央部付近に隔壁が存在し、少なくとも一方の端部が解放されている中空円筒状の測定セルに、解放されている端部から試料を充填した後、該端部を密封する第一密封工程と、
前記第一密封工程後の測定セルを、試料が密封されている部分を上側にして超伝導量子干渉計に挿入し、磁化率を測定する第一測定工程と、
前記第一密封工程後の測定セルを、試料が密封されている部分を下側にして超伝導量子干渉計に挿入し、磁化率を測定する第二測定工程と、
前記第一測定工程において得られた信号から、前記第二測定工程において得られた信号を減算し、試料のみによる信号を算出する減算工程と、
を有する磁化率精密測定方法。
【請求項2】
超伝導量子干渉計を用いる磁化率精密測定方法であって、
非磁性材料からなり、一方の端部が解放され、他方の端部が密封されている中空円筒状の試料部と、非磁性材料からなり、該試料部とほぼ同じ長さの円柱状の支持部とを有し、中心軸がほぼ一致するように前記試料部と前記支持部とが、前記試料部の密封されている端部で連結されている測定セルに試料を充填した後、解放されている端部を密封する第二密封工程と、
前記第二密封工程後の測定セルを、試料が密封されている部分を上側にして超伝導量子干渉計に挿入し、磁化率を測定する第一測定工程と、
前記第二密封工程後の測定セルを、試料が密封されている部分を下側にして超伝導量子干渉計に挿入し、磁化率を測定する第二測定工程と、
前記第一測定工程において得られた信号から、前記第二測定工程において得られた信号を減算し、試料のみによる信号を算出する減算工程と、
を有する磁化率精密測定方法。
【請求項3】
前記非磁性材料が、石英硝子、硬質硝子、ポリカーボネート、無酸素銅又はマコールである請求項1又は2に記載の磁化率精密測定方法。
【請求項4】
試料が、大気中で不安定な物質である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁化率精密測定方法。
【請求項5】
前記第一密封工程又は前記第二密封工程において、試料と共にヘリウムガスを密封する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁化率精密測定方法。
【請求項6】
石英硝子からなり、中央部付近に隔壁が存在し、少なくとも一方の端部が解放されている円筒状の超伝導量子干渉計用の測定セル。
【請求項7】
石英硝子からなり、一方の端部が解放され、他方の端部が密封されている中空円筒状の試料部と、
石英硝子からなり、前記測定部分とほぼ同じ長さの円柱状の支持部とを有し、
中心軸がほぼ一致するように前記試料部と前記支持部とが、前記試料部の密封されている端部で連結されている超伝導量子干渉計用の測定セル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−281935(P2009−281935A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135875(P2008−135875)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(800000057)財団法人新産業創造研究機構 (99)
【Fターム(参考)】