説明

移動体通信装置、移動体管理装置、および移動体監視システムの保全エリア管理方法

【課題】移動体の稼動によって財産に損害が生じるのを確実に防止する。
【解決手段】保全対象の財産が存在する保全エリアの情報を記憶する移動体管理装置が、移動体の位置情報と保全エリアの情報との照合を行い、移動体から所定の範囲内に位置する保全エリアがある場合、該当する保全エリアの情報を有する接近エリア情報を生成し、送信する一方、移動体に搭載された移動体通信装置が、受信した接近エリア情報に含まれる保全エリアに移動体が侵入しているか否かを判定し、侵入している場合には移動体の稼動を停止する稼動停止指令を生成して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載され、物体の位置を測位する測位手段から送信されてくる移動体の位置情報を取得して送信する移動体通信装置、この移動体通信装置と通信接続され、移動体の状態を管理する移動体管理装置、および移動体通信装置と移動体管理装置とを備えた移動体監視システムが、保全対象の財産が存在する保全エリアを管理する移動体監視システムの保全エリア管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、遠隔地に分散して配置された建設機械などの移動体に通信装置を搭載し、この通信装置が、GPS衛星を含む測位手段から定期的に取得する移動体の位置情報等を、管理者側の管理装置へ送信する移動体監視システムが実現されている(例えば、特許文献1を参照)。この従来技術では、通信装置が移動体の位置情報を一定の時間間隔で管理装置へ送信するのに加えて、移動体が所定の距離だけ移動するごとに移動体の位置情報を管理装置へ送信している。また、通信装置は、移動体の位置情報とともに、移動体の稼動状態も送信している。このような移動体監視システムによれば、移動体の現在の位置や稼動状態を適確に把握することができる。
【0003】
【特許文献1】国際公開第00/55827号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、建設機械によって現金自動預け払い機(ATM)を破壊し、現金を奪う強盗犯罪が発生しており、社会問題となりつつある。この例を出すまでもなく、建設機械等の移動体は、強盗犯罪、自然破壊、テロ等の実行手段として悪用され、様々な財産に損害を加える可能性を少なからず有している。しかしながら、上述した従来の移動体監視システムは、移動体の現在の位置や稼動状態を把握することはできても、移動体が悪用されているか否かまでを把握することはできないため、移動体の稼動によって財産に損害が生じるのを防止することが困難な場合があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、移動体の稼動によって財産に損害が生じるのを確実に防止することができる移動体通信装置、移動体管理装置、および移動体監視システムの保全エリア管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る移動体通信装置は、移動体に搭載され、物体の位置を測位する測位手段から送信されてくる前記移動体の位置情報を取得し、この取得した位置情報を、前記移動体の状態を管理する移動体管理装置へ送信する一方、前記移動体管理装置から送信されてくる情報を受信する移動体通信装置であって、保全対象の財産が存在する保全エリアのうち、前記移動体から所定の範囲内に位置する保全エリアの情報を有する接近エリア情報を前記移動体管理装置から受信する受信手段と、前記受信手段で受信した接近エリア情報に含まれる保全エリアに前記移動体が侵入しているか否かを判定するエリア侵入判定手段と、前記エリア侵入判定手段で判定した結果、前記移動体が前記接近エリア情報に含まれる保全エリアに侵入している場合、前記移動体の稼動を停止する稼動停止指令を生成して出力する稼動停止指令生成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る移動体通信装置は、上記発明において、前記稼動停止指令生成手段は、前記移動体が侵入している保全エリア内の滞在時間が当該保全エリアの滞在許容時間を超えたとき、前記稼動停止指令を生成することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る移動体管理装置は、移動体に搭載された移動体通信装置と通信接続され、前記移動体の状態を管理する移動体管理装置であって、保全対象の財産が存在する保全エリアの情報を記憶する記憶手段と、前記移動体通信装置から送信されてくる前記移動体の位置情報と前記記憶手段で記憶する保全エリアの情報との照合を行う照合手段と、前記照合手段で照合した結果、前記移動体から所定の範囲内に位置する保全エリアがある場合、該当する保全エリアの情報を有する接近エリア情報を生成する接近エリア情報生成手段と、前記接近エリア情報生成手段で生成した接近エリア情報を前記移動体通信装置へ送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る移動体管理装置は、上記発明において、前記保全エリアの範囲および前記保全エリア内に侵入した前記移動体の滞在許容時間は、前記保全エリアに存在する財産の種類に応じて定められることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る移動体監視システムの保全エリア管理方法は、物体の位置を測位する測位手段から送信されてくる前記移動体の位置情報を取得し、この取得した位置情報を送信する移動体通信装置と、前記移動体通信装置に通信接続され、前記移動体の状態を管理する移動体管理装置と、を備えた移動体監視システムが、保全対象の財産が存在する保全エリアを管理する移動体監視システムの保全エリア管理方法であって、前記保全エリアの情報を記憶する前記移動体管理装置が、前記移動体通信装置から送信されてくる前記移動体の位置情報と前記保全エリアの情報との照合を行う照合ステップと、前記照合ステップで照合した結果、前記移動体から所定の範囲内に位置する保全エリアがある場合、該当する保全エリアの情報を有する接近エリア情報を生成する接近エリア情報生成ステップと、前記接近エリア情報生成ステップで生成した接近エリア情報を前記移動体通信装置へ送信する送信ステップと、を有し、前記移動体に搭載された前記移動体通信装置が、前記接近エリア情報を前記移動体管理装置から受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信した前記接近エリア情報に含まれる保全エリアに前記移動体が侵入しているか否かを判定するエリア侵入判定ステップと、前記エリア侵入判定ステップで判定した結果、前記移動体が前記接近エリア情報に含まれる保全エリアに侵入している場合、前記移動体の稼動を停止する稼動停止指令を生成して出力する稼動停止指令生成ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保全対象の財産が存在する保全エリアの情報を記憶する移動体管理装置が、移動体の位置情報と保全エリアの情報との照合を行い、移動体から所定の範囲内に位置する保全エリアがある場合、該当する保全エリアの情報を有する接近エリア情報を生成して送信する一方、移動体に搭載された移動体通信装置が、受信した接近エリア情報に含まれる保全エリアに移動体が侵入しているか否かを判定し、侵入している場合には移動体の稼動を停止する稼動停止指令を生成して出力するので、移動体が悪用されそうな状況を適確に検知して移動体の稼動を停止させることができる。したがって、移動体の稼動によって財産に損害が生じるのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る移動体監視システムの概略構成を示す図である。同図に示す移動体監視システム100は、監視対象である複数の移動体1と、移動体1に通信接続され、移動体1の状態を管理する移動体管理装置2とを有する。移動体監視システム100は、保全対象の財産(個人または団体が所有する土地、建物、物品、金銭、有価証券などの総称)が存在する領域として予め登録された保全エリアに移動体1が侵入したか否かを判定し、侵入したと判定した場合には、移動体1の稼動を停止させる機能を有する。
【0014】
移動体1は、地上の物体の位置を測位する測位手段であるGPS(Global Positioning System)を構成する複数のGPS衛星3から送信されてくる移動体1の位置情報を受信可能であり、通信衛星4を介して地上局サーバ5と通信可能である。
【0015】
移動体管理装置2は、ネットワークNを介して、地上局サーバ5と通信接続されている。また、移動体管理装置2は、ネットワークNを介して利用者端末6と通信接続されている。利用者端末6としては、パーソナルコンピュータ、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)などを適用することができる。なお、ここでいう「ネットワーク」とは、インターネット、イントラネット、固定電話網、携帯電話網、専用回線網等の適当な組み合わせによって構成される通信網である。
【0016】
以下、移動体1のより詳細な構成を説明する。移動体1は、GPS衛星3から送信されてくる移動体1の位置情報を受信するGPSセンサ10(測位手段の一部)と、GPSセンサ10が受信した移動体1の位置情報を取得し、この位置情報のうち所定の条件を満たすものを移動体管理装置2へ送信する移動体通信装置11と、通信衛星4を介して地上局サーバ5と通信接続され、移動体通信装置11から出力される移動体1の位置情報を送信する通信端末12と、移動体1に関する各種情報を表示する表示装置13と、を備える。GPSセンサ10は、アンテナ10aを介して複数のGPS衛星3から送られてくる情報をもとに移動体1の位置情報を検出する。通信端末12は、アンテナ12a、通信衛星4、アンテナ5aを介して、地上局サーバ5との間で情報の送受信を行う。
【0017】
移動体1は建設機械であり、バケットやアームなどの作業機14と、駆動源であるエンジン15と、エンジン15に接続された発電機(オルタネータ)16と、発電機16が駆動することによって充電されるバッテリー17と、を備える。また、移動体1は、作業機14やエンジン15を電子的に制御する電子制御装置18を備える。電子制御装置18は、移動体1の燃料計19や水温計20にも接続されており、エンジン回転数、バッテリー電圧、燃料残量、冷却水温、通算稼働時間、運転時間などの情報に基づいて、作業機14やエンジン15の電子的な制御を行う。
【0018】
移動体通信装置11は、GPSセンサ10からの位置情報を受信する一方、通信端末12等を介して移動体管理装置2との間で情報の送受信を行う送受信部110と、移動体通信装置11の動作制御を行う制御部120と、移動体1に関する情報を含む各種情報を記憶する記憶部130と、を備える。
【0019】
制御部120は、GPSセンサ10から取得した移動体1の位置情報を用いて移動体1の移動の有無を判定する移動判定部121と、移動体1が保全エリアに侵入しているか否かを判定するエリア侵入判定部122と、エリア侵入判定部122の判定結果に応じてエンジン停止指令(稼動停止指令)を生成して出力するエンジン停止指令生成部123(稼動停止指令生成手段)と、エリア侵入判定部122の判定結果に応じてエンジン15が停止された場合、侵入した保全エリアの情報を含むエリア侵入情報を生成するエリア侵入情報生成部124と、タイマー機能を具備した時計125とを有する。
【0020】
制御部120は、作業機14の稼動情報、エンジン回転数、発電機16の動作情報、バッテリー電圧、燃料残量、冷却水温、通算稼働時間、運転時間を含む移動体1の駆動に関する各種情報を電子制御装置18から取得する。これらの情報は、移動体1の位置情報、識別情報等とともに移動体情報131として記憶部130に格納され、記憶される。記憶部130は、移動体1から所定の範囲内に位置する保全エリアの情報を有する接近エリア情報132も記憶している。この接近エリア情報132は、移動体管理装置2から受信するたびに更新される。
【0021】
次に、移動体管理装置2の構成を説明する。移動体管理装置2は、一または複数のコンピュータを用いて実現され、移動体1から送信されてくる情報を受信する一方、移動体1に対して情報を送信する送受信部30と、移動体1から送信されてくる情報を含む各種情報を記憶する記憶部31と、移動体管理装置2の動作制御を行う制御部32と、を備える。
【0022】
記憶部31は、複数のデータベース(DB)を有する。具体的には、記憶部31は、予め登録された保全エリアのエリアマスタ情報を記憶するエリアマスタ情報データベース311と、移動体1の位置情報を含む移動体情報を記憶する移動体情報データベース312と、移動体1の保全エリアへのエリア侵入情報を記憶するエリア侵入情報データベース313と、を有する。
【0023】
図2は、エリアマスタ情報データベース311が記憶するエリアマスタ情報の構成例を示す図である。同図に示すエリアマスタ情報テーブルT1には、保全エリアのエリアID、エリア設定範囲、エリア名称、移動体1の保全エリアにおける滞在許容時間、および当該エリアマスタ情報の登録年月日が記録されている。エリアマスタ情報データベース311には、図2に示すようなエリアマスタ情報テーブルが複数記憶されている。
【0024】
制御部32は、移動体1から送信されてきた位置情報と、エリアマスタ情報データベース311で記憶する保全エリアのエリアマスタ情報との照合を行う照合部321、および照合部321が照合した結果、移動体1から所定の範囲内に位置する保全エリアがある場合、該当する保全エリアの情報を有する接近エリア情報を生成する接近エリア情報生成部322を有する。
【0025】
図3は、本実施の形態に係る移動体監視システム100の保全エリア管理方法の処理の概要を示すシーケンス図である。図3において、まず移動体通信装置11は、GPSセンサ10が受信する移動体1の位置情報を取得する(ステップS101)。
【0026】
続いて、移動判定部121は、ステップS101で取得した位置情報と記憶部130内の移動体情報131として記憶している中で最新の位置情報とを比較することにより、移動体1が所定の距離以上移動したか否かを判定する(ステップS102)。
【0027】
移動判定部121が判定した結果、移動体1が所定の距離以上移動していた場合(ステップS103,Yes)、移動体通信装置11は、ステップS101で取得した位置情報を送受信部110から通信端末12に出力し、通信衛星4,地上局サーバ5,ネットワークNを介して移動体管理装置2へ送信する(ステップS104)。なお、移動体通信装置11は、移動体1の位置情報とともに、移動体1の稼動状態に関する情報を送信してもよい。
【0028】
一方、移動判定部121が判定した結果、移動体1が所定の距離以上移動していなかった場合(ステップS103,No)、後述するステップS106に進む。
【0029】
移動体管理装置2は、送受信部30を介して移動体1から送られてくる位置情報を受信し、この受信した位置情報を移動体情報データベース312に書き込んで記憶する(ステップS201)。
【0030】
この後、移動体管理装置2では、照合部321が、移動体1の位置と保全エリアとの照合を行う(ステップS202)。具体的には、照合部321が、エリアマスタ情報データベース311から保全エリアのエリアマスタ情報を取得し、この取得したエリアマスタ情報と移動体通信装置11から受信した移動体1の位置情報とを用いることにより、移動体1から所定の範囲内に位置する保全エリアが存在するか否かを判定する。なお、ここでいう所定の範囲は、移動体1の近傍であることが好ましく、その具体的な範囲は、移動体1の種類等に応じて定められる。
【0031】
照合部321が照合した結果、移動体1から所定の範囲内に位置する保全エリアが存在する場合(ステップS203,Yes)、接近エリア情報生成部322は、該当する保全エリアのエリアマスタ情報を抽出することによって接近エリア情報を生成し、送受信部30からネットワークN,地上局サーバ5,通信衛星4を介して移動体1に送信する(ステップS204)。図4は、接近エリア情報の構成例を示す図である。同図に示す接近エリア情報テーブルT2には、移動体1から所定の範囲内に位置する保全エリアのエリアID、エリア設定範囲、エリア名称、および滞在許容時間が記録されている。
【0032】
なお、照合部321が照合した結果、移動体1から所定の範囲内に位置する保全エリアが存在しない場合(ステップS203,No)、移動体管理装置2は一連の処理を終了し、次の位置情報が送信されてくるまで待機する。
【0033】
移動体管理装置2によって送信された接近エリア情報を受信した移動体通信装置11は、記憶部130が記憶する接近エリア情報132を更新する(ステップS105)。
【0034】
次に、エリア侵入判定部122は、記憶部130で記憶する接近エリア情報132を読み出し、この読み出した接近エリア情報132に含まれる保全エリアに対して移動体1が侵入しているか否かの判定を行う(ステップS106)。移動体1が、接近エリア情報132に含まれる保全エリアに侵入していた場合(ステップS107,Yes)、エリア侵入判定部122は、移動体1が該当する保全エリアの滞在許容時間よりも長く滞在しているか否かを判定する(ステップS108)。
【0035】
エリア侵入判定部122が判定した結果、移動体1が該当する保全エリアに滞在許容時間よりも長く滞在している場合(ステップS108,Yes)、制御部120はエンジン15が作動中であるか否かを検知する。検知した結果、エンジン15が作動中であれば(ステップS109,Yes)、エンジン停止指令生成部123がエンジン停止指令を生成して電子制御装置18へ出力する(ステップS110)。
【0036】
電子制御装置18は、受信したエンジン停止指令信号に応じてエンジン15を停止する制御を行う。移動体1のエンジン15が停止した時には、表示装置13が、「保全エリアに侵入したため、エンジンを停止しました」という趣旨のメッセージを表示するようにすればよい。なお、移動体1では、エンジン15が停止してから所定時間経過した時点で、エンジン始動可能な状態へ自動的に復旧するようにしておけばより好ましい。この所定時間は、例えば管理者等が保全エリア侵入によるエンジン停止情報(エリア侵入情報)を受信してから現場へ到着するまでの所要時間よりも長い時間として設定することができる。
【0037】
この後、エリア侵入情報生成部124は、侵入した保全エリアの情報を含むエリア侵入情報を生成し、移動体管理装置2に送信する(ステップS111)。図5は、エリア侵入情報の構成例を示す図である。同図に示すエリア侵入情報テーブルT3には、侵入した保全エリアのエリアID,エンジン停止位置,エンジン停止時間が記録されている。
【0038】
移動体管理装置2は、移動体1から送信されてきたエリア侵入情報を受信し、エリア侵入情報データベース313に書き込んで記憶する(ステップS205)。
【0039】
その後、移動体管理装置2は、エリア侵入情報を所定の利用者端末6に送信する(ステップS206)。このステップS206で送信対象となる利用者端末6は、エリア侵入情報を送信した移動体1に対応付けられているものであり、例えば、エリア侵入情報を送信した移動体1の所有者または管理者、移動体1が侵入した保全エリアの所有者または管理者、警察、警備会社等の端末である。このステップS206では、エリア侵入情報を電子メールによって送信してもよい。このように、エリア侵入情報を利用者端末6へ送信することにより、移動体1の保全エリア侵入を関係者に対して迅速に伝達することができる。
【0040】
ここまで、移動体通信装置11側のステップS106におけるエリア侵入判定部122の判定の結果、移動体1が接近エリア情報に含まれる保全エリアに侵入した場合(ステップS107,Yes)について説明してきたが、移動体1が接近エリア情報に含まれる保全エリアに侵入していない場合(ステップS107,No)、移動体1はステップS101に戻る。また、ステップS108において移動体1の該当保全エリアにおける滞在している時間が滞在許容時間よりも短い場合(ステップS108,No)や、ステップS109においてエンジン15が停止している場合(ステップS109,No)にも、移動体1はステップS101に戻る。
【0041】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、保全対象の財産が存在する保全エリアの情報を記憶する移動体管理装置が、移動体の位置情報と保全エリアの情報との照合を行い、移動体から所定の範囲内に位置する保全エリアがある場合、該当する保全エリアの情報を有する接近エリア情報を生成して送信する一方、移動体に搭載された移動体通信装置が、受信した接近エリア情報に含まれる保全エリアに移動体が侵入しているか否かを判定し、侵入している場合には移動体の稼動を停止する稼動停止指令を生成して出力するので、移動体が悪用されそうな状況を適確に検知して移動体の稼動を停止させることができる。したがって、移動体の稼動によって財産に損害が生じるのを確実に防止することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、移動体通信装置は、全ての保全エリアの情報を記憶しておく必要がなく、移動体の現在位置の周辺の保全エリアの情報のみを移動体管理装置から受信して参照すればよいため、エリア侵入判定処理を行う際の負荷を低減することができる。したがって、エリア侵入判定処理を効率よく行うことができ、移動体が悪用されていそうな状況を速やかに検知することが可能となる。
【0043】
さらに、本実施の形態によれば、移動体管理装置側で保全エリアのエリアマスタ情報の登録、管理を行うため、世界的な規模で保全エリアの情報を記憶、管理することもでき、移動体が稼動する地域によらず同じサービスを提供することが可能となる。加えて、エリアマスタ情報の登録や管理を有料化すれば、多大な経済的効果を得ることができる。
【0044】
(変形例)
図6は、本実施の形態の変形例に係る移動体監視システムの構成を示す図である。同図に示す移動体監視システム200は、監視対象である複数の移動体7と、移動体7に通信接続され、移動体7から送信されてくる位置情報を用いて移動体7の状態を管理する移動体管理装置8とを有する。移動体監視システム200は、予め登録された保全エリアに移動体7が侵入したか否かを判定し、侵入したと判定した場合には移動体7の稼動を停止させる機能を有する。
【0045】
移動体7は、移動体1の構成に加えて、音声を出力する音声出力装置70と、移動体7およびその周辺を撮像可能な撮像装置71と、外部からの情報の入力を受ける入力装置72と、を備える。また、移動体管理装置8は、移動体管理装置2の構成に加えて、各種情報を表示する表示部80を備える。なお、ここで説明した以外の移動体監視システム200の構成は、移動体監視システム100の構成と同じであり、対応する部位には移動体監視システム100で付与したのと同じ符号を付してある。
【0046】
本変形例では、移動体7が保全エリアへ侵入してエンジン15が停止された場合、表示装置13がメッセージを表示するとともに、音声出力装置70が警告音を出力する。このため、移動体7の周囲に異常の発生を報知することができる上、移動体7の悪用を試みている犯人を移動体7から遠ざけることができる。
【0047】
また、本変形例では、エリア侵入情報生成部124が生成するエリア侵入情報に、撮像装置71で撮像した画像情報が含まれる。この画像情報は、移動体管理装置8の表示部80や利用者端末が有する表示部(図示せず)で表示可能である。したがって、エンジン停止時の移動体7の状況を視覚的に把握できるようになるだけでなく、移動体1の悪用を試みた犯人の顔などを特定し、犯人を検挙する上での手かがりや証拠を得ることもできるようになる。
【0048】
さらに、本変形例は、移動体7が保全エリアに侵入してエンジン15が停止された後、入力装置72から所定の情報(パスワード等のセキュリティ情報を含む)を入力することによってエンジン停止状態を解除し、エンジン15を始動可能な状態に戻す機能を有する。このような機能を有することにより、移動体7が保全エリア内で作業目的で稼動している最中に、誤ってエンジン停止状態になってしまった場合などにおいても、移動体7を稼動可能な状態へと速やかに復旧させることができる。
【0049】
また、移動体管理装置8または利用者端末6から所定のエンジン始動許可情報を移動体通信装置11に送信するようにしてもよい。この場合には、移動体通信装置11がエンジン始動許可情報を受信した後、入力装置72から所定の情報を入力することにより、エンジン停止状態が解除されるようにする。この意味で、エンジン始動許可情報は、移動体7が悪用される可能性がなくなったことを確認できた段階で送信するのが望ましい。なお、入力装置72から入力する情報は、パスワードのみでもよい。また、移動体通信装置11がエンジン始動許可情報を受信した後、入力装置72からの情報の入力を経ることなく、エンジン停止状態を自動的に解除するようにしてもよい。
【0050】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を詳述してきたが、本発明は、上記一実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、移動体通信装置が稼動停止指令としてエンジン停止指令を生成する代わりに、移動体の移動(作業機の稼動を含む)をロックするような指令を生成してもよい。
【0051】
また、本発明に適用する測位手段はGPSに限られるわけではなく、他の測位手段を用いて移動体の位置を測位してもよい。
【0052】
さらに、移動体に地上波通信を行う機能を具備させてもよい。具体的には、移動体に地上波通信用の通信端末を設け、この通信端末と地上波通信の基地局サーバ(ネットワークを介して移動体管理装置に接続される)との間で地上波通信を行うようにしてもよい。なお、移動体に衛星通信用と地上波通信用の二つの通信端末を設けてもよいし、衛星通信用と地上波通信用の二つの通信端末うちのいずれか一方のみを設けてもよい。
【0053】
本発明は、建設機械以外の移動体、例えば四輪自動車に対しても適用することが可能である。
【0054】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態に係る移動体監視システムの概略構成を示す図である。
【図2】エリアマスタ情報の構成例を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る移動体監視システムの保全エリア管理方法の処理の概要を示すシーケンス図である。
【図4】接近エリア情報の構成例を示す図である。
【図5】エリア侵入情報の構成例を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態の変形例に係る移動体監視システムの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1,7 移動体
2,8 移動体管理装置
3 GPS衛星
4 通信衛星
5 地上局サーバ
6 利用者端末
10 GPSセンサ
11 移動体通信装置
12 通信端末
13 表示装置
15 エンジン
18 電子制御装置
30,110 送受信部
31,130 記憶部
32,120 制御部
70 音声出力装置
71 撮像装置
72 入力装置
80 表示部
100,200 移動体監視システム
121 移動判定部
122 エリア侵入判定部
123 エンジン停止指令生成部
124 エリア侵入情報生成部
125 時計
131 移動体情報
132 接近エリア情報
311 エリアマスタ情報データベース
312 移動体情報データベース
313 エリア侵入情報データベース
321 照合部
322 接近エリア情報生成部
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、物体の位置を測位する測位手段から送信されてくる前記移動体の位置情報を取得し、この取得した位置情報を、前記移動体の状態を管理する移動体管理装置へ送信する一方、前記移動体管理装置から送信されてくる情報を受信する移動体通信装置であって、
保全対象の財産が存在する保全エリアのうち、前記移動体から所定の範囲内に位置する保全エリアの情報を有する接近エリア情報を前記移動体管理装置から受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した接近エリア情報に含まれる保全エリアに前記移動体が侵入しているか否かを判定するエリア侵入判定手段と、
前記エリア侵入判定手段で判定した結果、前記移動体が前記接近エリア情報に含まれる保全エリアに侵入している場合、前記移動体の稼動を停止する稼動停止指令を生成して出力する稼動停止指令生成手段と、
を備えたことを特徴とする移動体通信装置。
【請求項2】
前記稼動停止指令生成手段は、
前記移動体が侵入している保全エリア内の滞在時間が当該保全エリアの滞在許容時間を超えたとき、前記稼動停止指令を生成することを特徴とする請求項1記載の移動体通信装置。
【請求項3】
移動体に搭載された移動体通信装置と通信接続され、前記移動体の状態を管理する移動体管理装置であって、
保全対象の財産が存在する保全エリアの情報を記憶する記憶手段と、
前記移動体通信装置から送信されてくる前記移動体の位置情報と前記記憶手段で記憶する保全エリアの情報との照合を行う照合手段と、
前記照合手段で照合した結果、前記移動体から所定の範囲内に位置する保全エリアがある場合、該当する保全エリアの情報を有する接近エリア情報を生成する接近エリア情報生成手段と、
前記接近エリア情報生成手段で生成した接近エリア情報を前記移動体通信装置へ送信する送信手段と、
を備えたことを特徴とする移動体管理装置。
【請求項4】
前記保全エリアの範囲および前記保全エリア内に侵入した前記移動体の滞在許容時間は、前記保全エリアに存在する財産の種類に応じて定められることを特徴とする請求項3記載の移動体管理装置。
【請求項5】
物体の位置を測位する測位手段から送信されてくる前記移動体の位置情報を取得し、この取得した位置情報を送信する移動体通信装置と、前記移動体通信装置に通信接続され、前記移動体の状態を管理する移動体管理装置と、を備えた移動体監視システムが、保全対象の財産が存在する保全エリアを管理する移動体監視システムの保全エリア管理方法であって、
前記保全エリアの情報を記憶する前記移動体管理装置が、
前記移動体通信装置から送信されてくる前記移動体の位置情報と前記保全エリアの情報との照合を行う照合ステップと、
前記照合ステップで照合した結果、前記移動体から所定の範囲内に位置する保全エリアがある場合、該当する保全エリアの情報を有する接近エリア情報を生成する接近エリア情報生成ステップと、
前記接近エリア情報生成ステップで生成した接近エリア情報を前記移動体通信装置へ送信する送信ステップと、
を有し、
前記移動体に搭載された前記移動体通信装置が、
前記接近エリア情報を前記移動体管理装置から受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信した前記接近エリア情報に含まれる保全エリアに前記移動体が侵入しているか否かを判定するエリア侵入判定ステップと、
前記エリア侵入判定ステップで判定した結果、前記移動体が前記接近エリア情報に含まれる保全エリアに侵入している場合、前記移動体の稼動を停止する稼動停止指令を生成して出力する稼動停止指令生成ステップと、
を有することを特徴とする移動体監視システムの保全エリア管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−181338(P2008−181338A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14236(P2007−14236)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】