説明

移動機構、顕微鏡、最適駆動パラメータ抽出方法、及びプログラム

【課題】安定して確実に動作する超音波モータの最適駆動パラメータを簡便に設定することができるようにする。
【解決手段】移動機構は、固定台1と移動体3とを相対移動させる超音波モータ6と、固定台1と移動体3との相対移動量を検出する変位センサ8と、変位センサ8により検出された相対移動量が入力され、超音波モータ6に駆動信号を出力する制御装置9とを備える。制御装置9は、超音波モータ6に出力する駆動信号の最適駆動パラメータを抽出する機能を有する。この機能に係る処理では、超音波モータ6に出力する駆動信号の駆動パラメータを設定し、当該駆動信号を超音波モータ6に出力し、当該駆動信号の出力による固定台1と可動体3との相対移動量を変位センサ8から取得する、という処理を駆動パラメータを変更させながら繰り返し、変位センサ8から取得した相対移動量に基づいて最適駆動パラメータを抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータを備えた移動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波モータは、小型で応答性が高く、停止時には通電を必要としない、等の利点を有することから、電磁型モータに代わるアクチュエータとして注目されている。
超音波モータの一例として、特許文献1には、2種類の電極を有する積層型圧電体で構成された直方体のリニア型超音波モータが提案されている。この超音波モータは、2種類の電極に位相の異なる交流波の信号(屈曲信号と縦信号)を印加することによって、超音波モータの構成部材である2つの駆動子が回転して相手部材を蹴るような動きをすることによって、超音波モータに対して相手部材を相対移動させるものである。
【0003】
ところで、超音波モータは、自己の共振周波数を利用して振動振幅を得ている。この共振周波数は、超音波モータ組立時の組立誤差等の影響により変動してしまうことがある。また、超音波モータ組立後においても、周囲温度の変化、被駆動体との接触状態の変化、負荷の程度、及び、長期間の使用による摺動部分の磨耗等の影響によって、共振周波数が変動してしまうことがある。従って、同一構成を有する複数の超音波モータを同一駆動パラメータ(例えば同一の駆動周波数及び駆動位相差等)を用いて駆動したとしても、組立誤差等の影響により共振周波数がずれてしまっている超音波モータの場合には、安定した駆動制御が困難となり、効率的な駆動をすることができない。また、組立後においても、使用環境によって周囲温度が変化した場合や、負荷の程度や長期間の駆動によって超音波モータ(摺動部分等)が磨耗した場合等には、共振周波数がずれてしまい、同様の問題が起こり得る。
【0004】
そこで、このような問題を解決すべく、各種の提案が為されている。例えば特許文献2には、超音波モータの振動検出信号を用いて、出力信号と検出信号の位相差を一定(最適な位相差)とするように出力信号を制御して、安定した高効率駆動を達成する方法が提案されている。また、別の方法として、例えば特許文献3には、共振周波数がずれる場合に備え、出力する駆動周波数を常にスイープし、さらに検出信号をフィードバックして高効率動作が認められる周波数付近のみを駆動周波数として使うことで、常時高効率な駆動を試みる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−136318号公報
【特許文献2】特開2008−160913号公報
【特許文献3】特開2007−336752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に提案されているような方法では、超音波モータへの出力信号と検出信号との間の最適な相関関係が既知でなければならず、この最適な相関関係が既知でない不明瞭な場合や、個体差が大きい場合には、使用が困難という問題が生じ得る。
【0007】
また、特許文献3に提案されているような方法では、超音波モータが安定環境下に置かれ、共振周波数が稀にしか変化しない場合に、駆動周波数のスイープが超音波モータの効率を多少なりとも変動させるので、定速での制御が困難となり、超音波モータ駆動の等速性や位置決め性能に悪影響を与える問題が生じ得る。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑み、安定して確実に動作する超音波モータの最適駆動パラメータを簡便に設定することができる、移動機構、顕微鏡、最適駆動パラメータ抽出方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る移動機構は、固定台と、前記固定台に対して移動可能に支持された可動体と、前記固定台と前記可動体とを相対移動させる超音波モータと、前記固定台と前記可動体との相対移動量を検出する変位検出手段と、前記変位検出手段により検出された相対移動量が入力され、前記超音波モータに駆動信号を出力する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記超音波モータに出力する駆動信号の最適駆動パラメータを抽出する最適駆動パラメータ抽出手段を含み、前記最適駆動パラメータ抽出手段は、前記超音波モータに出力する駆動信号の駆動パラメータを設定し、当該駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記固定台と前記可動体との相対移動量を前記変位検出手段から取得する、という処理を前記駆動パラメータを変更させながら繰り返し、前記変位検出手段から取得した相対移動量に基づいて前記最適駆動パラメータを抽出する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様に係る移動機構は、上記第1の態様において、前記最適駆動パラメータ抽出手段は、設定した駆動パラメータにおける駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記固定台と前記可動体との相対移動量を前記変位検出手段から取得する、という処理を一組の駆動パラメータに対して複数回繰り返し、当該一組の駆動パラメータに対して複数回取得した相対移動量の平均値を求め、当該平均値に基づいて前記最適駆動パラメータを抽出する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様に係る移動機構は、上記第1又は2の態様において、前記制御手段が前記超音波モータに出力する駆動信号は2つの駆動信号であり、前記駆動パラメータは前記2つの駆動信号の位相差を含み、前記最適駆動パラメータ抽出手段は、一組の駆動パラメータに対して、当該一組の駆動パラメータのままとする第1の駆動パラメータと、当該一組の駆動パラメータの中で位相差のみが180°異なる第2の駆動パラメータとを設け、設定した駆動パラメータにおける駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記固定台と前記可動体との相対移動量を前記変位検出手段から取得する、という処理を一組の駆動パラメータに係る第1の駆動パラメータに対して複数回繰り返すと共に当該一組の駆動パラメータに係る第2の駆動パラメータに対しても複数回繰り返し、前記第1の駆動パラメータに対して複数回取得した相対移動量の平均値を第1の平均値として求めると共に前記第2の駆動パラメータに対して複数回取得した相対移動量の平均値を第2の平均値として求め、前記第1の平均値と前記第2の平均値との差の絶対値を評価値として取得し、前記評価値が最大となるときの組の駆動パラメータを求める、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様に係る移動機構は、固定台と、前記固定台に対して移動可能に支持された可動体と、前記固定台と前記可動体とを相対移動させる超音波モータと、前記超音波モータから振動状態を示す振動検出信号が入力され、前記超音波モータに駆動信号を出力する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記振動検出信号を検出する信号検出手段と、前記超音波モータに出力する駆動信号の最適駆動パラメータを抽出する最適駆動パラメータ抽出手段と、を含み、前記最適駆動パラメータ抽出手段は、前記超音波モータに出力する駆動信号の駆動パラメータを設定し、当該駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記超音波モータからの振動検出信号を前記信号検出手段により検出する、という処理を前記駆動パラメータを変更させながら繰り返し、前記信号検出手段により検出した振動検出信号の信号振幅に基づいて前記最適駆動パラメータを抽出する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様に係る移動機構は、上記第4の態様において、前記最適駆動パラメータ抽出手段は、設定した駆動パラメータにおける駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記超音波モータからの振動検出信号を前記信号検出手段により検出する、という処理を一組の駆動パラメータに対して複数回繰り返し、当該一組の駆動パラメータに対して複数回検出した振動検出信号の信号振幅の平均値を求め、当該平均値に基づいて前記最適駆動パラメータを抽出する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の態様に係る移動機構は、上記第4又は5の態様において、前記制御手段が前記超音波モータに出力する駆動信号は2つの駆動信号であり、前記駆動パラメータは前記2つの駆動信号の位相差を含み、前記最適駆動パラメータ抽出手段は、一組の駆動パラメータに対して、当該一組の駆動パラメータのままとする第1の駆動パラメータと、当該一組の駆動パラメータの中で位相差のみが180°異なる第2の駆動パラメータとを設け、設定した駆動パラメータにおける駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記超音波モータからの振動検出信号を前記信号検出手段により検出する、という処理を一組の駆動パラメータに係る第1の駆動パラメータに対して複数回繰り返すと共に当該一組の駆動パラメータに係る第2の駆動パラメータに対しても複数回繰り返し、前記第1の駆動パラメータに対して複数回検出した振動検出信号の信号振幅の平均値を第1の平均値として求めると共に前記第2の駆動パラメータに対して複数回検出した振動検出信号の信号振幅の平均値を第2の平均値として求め、前記第1の平均値と前記第2の平均値との和を評価値として取得し、前記評価値が最大となるときの組の駆動パラメータを求める、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の態様に係る移動機構は、上記第1乃至6の何れか一つの態様において、前記最適駆動パラメータ抽出手段の動作中に前記超音波モータに出力される駆動信号は、所定数の波形数を有するバースト波形の信号である、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の態様に係る移動機構は、上記第3又は6の態様において、前記第1の駆動パラメータの駆動信号を前記超音波モータに出力することと、前記第2の駆動パラメータの駆動信号を前記超音波モータに出力することとが、交互に行われる、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第9の態様に係る移動機構は、上記第1乃至8の何れか一つの態様において、前記制御手段は、当該移動機構が起動された時に、前記最適駆動パラメータ抽出手段を動作させる、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第10の態様に係る移動機構は、上記第1乃至9の何れか一つの態様において、前記制御手段は、前記変位検出手段から取得した相対移動量又は前記信号検出手段により検出した振動検出信号の信号振幅に基づいて前記超音波モータに出力する駆動信号の駆動パラメータが適切でないと判断したときは、前記最適駆動パラメータ抽出手段を動作させる、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第11の態様に係る移動機構は、上記第1乃至10の何れか一つの態様において、前記制御手段は、当該移動機構の起動後において前記最適駆動パラメータ抽出手段を複数回目に動作させる場合に、駆動パラメータの変更範囲を、前回動作時に抽出された最適駆動パラメータを含む範囲であって通常動作時における駆動パラメータの変更範囲よりも狭い範囲として、前記最適駆動パラメータ抽出手段を動作させる、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の第12の態様に係る移動機構は、上記第1乃至11の何れか一つの態様において、前記最適駆動パラメータ抽出手段の動作は、前記固定台に対する前記可動体の移動可能範囲の中の限られた範囲の位置にて行われる、ことを特徴とする。
【0021】
本発明の第13の態様に係る移動機構は、上記第1乃至12の何れか一つの態様において、前記最適駆動パラメータ抽出手段の動作中において、前記変位検出手段から取得した相対移動量又は前記信号検出手段により検出した振動検出信号の信号振幅は、前記制御手段が備える記憶手段に記憶される、ことを特徴とする。
【0022】
本発明の第14の態様に係る移動機構は、上記第13の態様において、前記最適駆動パラメータ抽出手段の動作中において変更対象となる駆動パラメータは2種類以上であって、前記最適駆動パラメータ抽出手段の動作中に、第1の種類の変更対象駆動パラメータのみを変更し他の種類の変更対象駆動パラメータを固定としながら処理が繰り返されたときに、前記変位検出手段から取得される相対移動量又は前記信号検出手段により検出される振動検出信号の信号振幅が最も大きくなると判断されたときの前記第1の種類の変更対象駆動パラメータは、前記他の種類の変更対象駆動パラメータと共に、前記制御手段が備える前記記憶手段に記憶される、ことを特徴とする。
【0023】
本発明の第15の態様に係る移動機構は、上記第14の態様において、前記最適駆動パラメータ抽出手段は、変更対象となる駆動パラメータの全ての組み合わせに対して処理を繰り返した後、前記変位検出手段から取得される相対移動量又は前記信号検出手段により検出される振動検出信号の信号振幅が最も大きくなると判断したときの第2の種類の変更対象駆動パラメータに対してオフセットを加えたものを第1の最適駆動パラメータとすると共に、前記制御手段が備える前記記憶手段に記憶されている前記第1の種類の変更対象駆動パラメータの中から、前記第1の最適駆動パラメータに対応する第1の種類の変更対象駆動パラメータを選択し、当該第1の変更対象駆動パラメータに対してオフセットを加えたものを第2の最適駆動パラメータとする、ことを特徴とする。
【0024】
なお、本発明は、上記移動機構に限らず、上記移動機構を備えた顕微鏡、上記移動機構における最適駆動パラメータ抽出方法、及び、上記移動機構におけるプログラムとして構成することも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、安定して確実に動作する超音波モータの最適駆動パラメータを簡便に設定することができるので、移動機構は常に効率の良い動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1に係る移動機構の全体構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a) は移動機構の一部上面図、(b) は(a) の側面図である。
【図3】(a) は超音波モータの上面図、(b) は(a) のAA´断面図である。
【図4】駆動時において制御装置が超音波モータ(振動体)に出力する駆動信号の一例を模式的に示す図である。
【図5】最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る最上位の処理フローを示す図である。
【図6】S1の最大変位パラメータを取得する処理フローを示す図である。
【図7】実施例1に係る、S14の最大変位位相差phmax(f)を取得する処理フローを示す図である。
【図8】実施例1に係る、S24の駆動変位の評価値davを取得する処理フローを示す図である。
【図9】実施例2に係る、S14の最大変位位相差phmax(f)を取得する処理フローを示す図である。
【図10】実施例2に係る、S41の検出信号振幅の評価値davを取得する処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の実施例1に係る移動機構の全体構成を模式的に示す斜視図である。図2(a) は、その移動機構の一部上面図、同図(b) は、同図(a) の側面図である。なお、同図(a) は、その移動機構の一部透視図を含む。
【0029】
本実施例に係る移動機構は、例えば、顕微鏡が備える電動ステージ(顕微鏡用電動ステージ)として使用される移動機構である。
図1及び図2(a),(b) に示した本実施例に係る移動機構において、固定台1上には、ボール循環式のガイドレール2a及びガイドブロック2bからなるガイド(以下「ガイド2」という)が取付けられている。ガイド2は、図2(a) に示すように2個のガイドブロック2bと1個のガイドレール2aとからなり、固定台1にはガイドレール2aが固定され、ガイドブロック2bには可動体である移動体3が固定されている。移動体3の下方には、側面部材4がガイドレール2aに平行でガイドブロック2bと接し、且つ、ガイドレール2aを間に挟んで対称な位置に2個固定されている。
【0030】
移動体3は、ガイドブロック2b及び側面部材4と一体となって固定台1に対して1軸方向に移動可能に支持されている。
側面部材4の一方には、例えばセラミックなどの硬い材料で作られた摺動部材5が設けられている。また、摺動部材5に接触、押圧するようにして超音波モータ6が固定台1に固定されている。ここで、超音波モータ6は、移動体3と固定台1とを相対移動させる例えば定在波型超音波モータ等の超音波アクチュエータであって、屈曲振動と縦振動を利用して被駆動体との接触位置に楕円振動を生じさせる直方体形状の振動子である後述の超音波振動体(以下単に「振動体」という)12を有する。
【0031】
移動体3の摺動部材5が設けられた側面のもう一方の側面には、スケール7が設けられており、そのスケール7のパターンを検出できる位置にはエンコーダ8が配置され、固定台1に固定されている。ここで、エンコーダ8は、移動体3と固定台1との相対移動量を検出して、移動体3と固定台1との相対位置関係を検出する変位センサ(変位検出手段の一例)である。
【0032】
また、エンコーダ8から位置情報を取得し、この位置情報を基に超音波モータ6を駆動する制御装置(制御手段の一例)9が、信号線を介して、エンコーダ8及び超音波モータ6に接続されている。すなわち、制御装置9は、エンコーダ8により検出された相対移動量が入力され、超音波モータ6に駆動信号を出力する。
【0033】
なお、上記構成において、ガイドブロック2bの配置間隔は、移動体3の最大移動量と同等以上であることが望ましい。このような配置間隔とすることで、移動体3が移動しても超音波モータ6の押圧位置はガイドブロック2bの配置間隔内におさめることができる。
【0034】
図3(a) は、超音波モータ6の上面図、同図(b) は、同図(a) のAA´断面図である。
同図(a),(b) に示した超音波モータ6において、保持部材11は、振動体12を固定台1に対して保持する保持機構であって、例えばアルミニウム等の金属材料で構成されている。また、保持部材11は、ワイヤ放電加工等により切り欠き穴部13を設けることによって形成された薄板ばね部14(同図(a) では斜線で示した部分)を有する。薄板ばね部14の中央にはばねとして作用しない厚肉部14aが形成されていて、厚肉部14aと振動体12とが例えばセラミック接着材等の硬度の高い接着剤で接着されている。このとき、薄板ばね部14と振動体12は平行に近接して設けられるように構成されている。また、振動体12の接着位置は、振動体12の接着面中央付近である。
【0035】
振動体12において、保持部材11の厚肉部14aが接着された面と反対の面には駆動子である2つの突起部15(15a、15b)が設けられている。突起部15は、例えば強化繊維を含むポリアセタール等の材料、摩擦係数の比較的小さな樹脂を母材とした材料やセラミック等の材料で形成されている。保持部材11は、突起部15が2個とも摺動部材5に接する状態で、固定用ビス穴16(16a,16b)を通してビスにより固定台1に固定される。このとき、薄板ばね部14のたわみは殆ど無い状態で、移動体3側への押圧力はゼロ近傍であることが望ましい。なお、図1においては、保持部材11を固定台1に固定するための固定用ビス穴16及びビスを省略して示している。
【0036】
また、保持部材11にはメネジが形成されていて、詳しくは図3(b) に示したように、外周にオネジが形成されたプランジャ17をねじ込むことによって厚肉部14aを押圧できるようになっている。不図示ではあるが、プランジャ17の内部にはコイルばねが内蔵されており、先端部材17aが押し込まれることにより押圧力が発生する。このため、プランジャ17の先端部材17aの移動量に応じた押圧力が厚肉部14aに負荷される。このとき、振動体12も突起部15と共に摺動部材5に押圧される。
【0037】
図4は、駆動時において制御装置9が超音波モータ6(振動体12)に出力する駆動信号の一例を模式的に示す図である。
同図に示したように、振動体12は、屈曲振動用電極21(21a、21b、21c、21d)と縦振動用電極22とを有する板状圧電体が複数積層された積層型圧電体からなる。制御装置9は、周波数が等しく位相が異なる縦振動信号及び屈曲振動信号を縦振動用電極22及び屈曲振動用電極21にそれぞれ印加することによって、移動体3を移動させることができる。例えば、縦振動用電極22に正弦波信号である縦振動信号を印加し、屈曲振動用電極21に縦振動信号とは位相が90°異なる正弦波信号である屈曲振動信号を印加することによって、移動体3を移動させることができる。このとき、突起部15には、同図の矢印に示す楕円(同図点線参照)の軌跡を描くような振動が生じ、突起部15が摺動部材6と接触する際に生じる力の垂直方向成分で摩擦力を減らし、水平方向成分の力で摺動部材6(移動体3)を移動させる。なお、同図において、屈曲振動用電極21と縦振動用電極22の「+」又は「−」の符号は、当該電極部分の圧電体の分極方向を示している。
【0038】
ところで、制御装置9から出力される縦振動信号及び屈曲振動信号は、その両信号の周波数、位相差、電圧(電流)、及び波形数といった駆動パラメータが設定されることによって決定される。従って、移動体3を効率良く安定して移動させるためには、その駆動パラメータとして、一定値以上の電圧及び波形数と最適な周波数及び位相差とを設定する必要がある。そのため、少なくとも最適な周波数及び位相差については既知でなければならない。仮に部品が均一で組立誤差も無いという条件の下では、最適な周波数及び位相差として、設計値や一度求めた値を用いるようにすることも考えられるが、現実には、そのような条件が成立しないのが大半である。また、最適な周波数及び位相差として、一度、値を設定した後においても、使用環境(周囲温度等)の変化や長期使用等に伴う摺動部分の磨耗等によって、最適な周波数及び位相差が変動してしまう場合もある。
【0039】
そこで、本実施例に係る移動機構は、最適な駆動パラメータ(少なくとも周波数及び位相差を含む)を自動的に抽出する機能(以下、最適駆動パラメータ自動抽出機能という)を備え、この機能により、移動機構として構成された状態で簡便に最適な駆動パラメータを取得することができるように構成されている。
【0040】
なお、この機能は、自動で実行させることができるし、ユーザからの指示に応じて実行させることもできる。自動で実行させる場合には、例えば、超音波モータ6に与えた信号に対する移動体3の実際の移動量をエンコーダ8からの検出信号に基づいて取得し、その移動量から、その時点に設定されている駆動パラメータが、その時点の超音波モータ6の共振周波数に対して適切でないと制御装置9により判断された場合に、その機能を自動的に実行させることができる。この場合、その判断は、例えば、取得された移動量と、対応する閾値との比較に基づいて行われる。あるいは、例えば、所定期間毎又は所定使用合計期間毎等というように時間に応じて、その機能を自動的に実行させることもできる。もしくは、当該移動機構が起動された時に、自動的に実行させることもできる。また、ユーザからの指示に応じて実行させる場合には、例えば、ユーザが制御装置9に備えられた操作部を操作したことに応じて、その機能を実行させることができる。
【0041】
以下、この最適駆動パラメータ自動抽出機能について、詳細に説明する。
図5は、その最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る最上位の処理フローを示す図である。なお、この処理フローは、制御装置9が備えるCPUが、同じく制御装置9が備えるメモリ(例えばROM等の記憶手段)に記憶されている制御プログラムを読み出し実行することによって行われるものである。従って、制御装置9は、そのCPUが上記制御プログラムを読み出し実行することによって実現される手段として、上記の最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理を行う最適駆動パラメータ自動抽出手段を備えているということもできる。
【0042】
同図に示したように、この処理フローにおいて、まず、ステップ(以下単に「S」という)1では、最大変位パラメータとして、最大評価値dmax_a(詳しくは後述)が得られたときの駆動周波数fmaxと、各駆動周波数fにおける最大評価値dmax(f)(詳しくは後述)が得られたときの駆動位相差phmax(f)を取得する。なお、このS1の詳細な処理内容については、図6を用いて後述する。
【0043】
S2では、S1で取得された駆動周波数fmaxにオフセット周波数foffsetを加え、これを最適駆動周波数fopとして設定する。ここで、S1で取得された駆動周波数fmaxにオフセット周波数foffsetを加えたものを最適駆動周波数fopとする理由は、本実施例に係る移動機構を顕微鏡用電動ステージ等の特に精密位置決めが必要とされる装置として用いる場合には、実験により、S1で取得された駆動周波数fmaxが最適駆動周波数fopであるとは言えず、その駆動周波数fmaxに例えば1kHz程度(或いは、例えば1kHz以下)のオフセット周波数foffsetを加えたものを最適駆動周波数fopとして設定することで、低電圧時や小波形数時に良好な駆動特性が得られるとの結果が得られたことに依るものである。このように、本処理フローは、精密位置決めが必要とされる装置として用いる場合を想定したものであるが、例えば、そのような精密位置決めが必要とされる装置として用いる場合を想定していないのであれば、S1で取得された駆動周波数fmaxをそのまま最適駆動周波数fopとして設定するように構成することも可能である。
【0044】
なお、このS2において、オフセット周波数foffsetを加えた結果、最適駆動周波数fopが後述の探索周波数範囲内から外れてしまう場合には、オフセット周波数foffsetの加算は行わない。従って、このような場合に限り、S1で取得された駆動周波数fmaxが、そのまま最適駆動周波数fopとなる。
【0045】
S3では、S2で設定された最適駆動周波数fopに対応する駆動位相差phmax(fop)を、S1で取得された駆動位相差phmax(f)の中から選択する。
S4では、S3で選択された駆動位相差phmax(fop)にオフセット位相差phoffsetを加え、これを最適駆動位相差phopとして設定する。ここで、S3で選択された駆動位相差phmax(fop)にオフセット位相差phoffsetを加えたものを最適駆動位相差phopとする理由は、上記のS2で説明した理由と同様の理由である。従って、ここでも、例えば、精密位置決めが必要とされる装置として用いる場合を想定していないのであれば、S3で選択された駆動位相差phmax(fop)をそのまま最適駆動位相差phopとして設定するように構成することも可能である。
【0046】
このような図5に示した処理フローの実行により、最適な駆動パラメータとして最適駆動周波数fop及び最適駆動位相差phopが自動的に抽出、設定されるようになる。
図6は、上記S1の最大変位パラメータを取得する処理フローを示す図である。
【0047】
同図に示したように、この処理フローにおいて、まず、S11では、予め原点として定められている位置へ移動体3を移動させると共に、探索周波数範囲を規定する開始周波数fstartと終了周波数fendを設定する。
【0048】
なお、このS11において、予め原点として定められている位置へ移動体3を移動させるとは、最適な駆動パラメータを取得する位置へ移動体3を移動させることと同意である。このような位置へ移動体3を移動させる理由は、突起部15と摺動部材5との接触位置によって共振周波数が異なる場合があり、そのような場合には実際の超音波モータ6の挙動が異なってくるからである。従って、このような原点への移動体3の移動は、最適な駆動パラメータの自動抽出を正確に行うために基準位置を定める動作でもある。また、最もよく使用する位置を原点とし、その原点の位置にて最適な駆動パラメータを決定するようにすることで、常に良好な動作を期待することができる。
【0049】
また、S11において、探索周波数範囲を規定する開始周波数fstartと終了周波数fendは、経験的に決めた値でもよいし、或いは、開始周波数fstartのみを決めておいて、終了周波数fendについては、当該最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理の一部における処理結果のフィードバックに基づいて決めるようにしてもよい。例えば、後述の駆動変位の評価値davを取得する処理(図7のS24)にて、大きな評価値davが得られた場合には、その評価値davが得られたときの周波数を含む周辺の周波数範囲を探索周波数範囲とすることも可能である。或いは、得られた評価値davに応じて終了周波数fendを決定するようにすることも可能である。若しくは、一定値以上の評価値davが得られた場合に、その時点で探索周波数範囲を設定するようにすることも可能である。
【0050】
S12では、S11で設定された開始周波数fstartを、駆動周波数fとして設定する。
S13では、駆動周波数fが、S11で設定された終了周波数fend以上であるか否かを判定する。ここで、その判定結果がNoの場合には、S14へ進む。
【0051】
S14では、駆動周波数fにおける最大変位位相差(駆動周波数fにおいて最大評価値dmax(f)が得られるときの駆動位相差)phmax(f)を取得する。なお、このS14の詳細な処理内容については、図7を用いて後述する。
【0052】
S15では、S14で取得された最大変位位相差phmax(f)を、制御装置9が備えるメモリ(例えばRAM等の記憶手段)に保持する。
S16では、駆動周波数fに探索ステップとなる周波数(以下「探索ステップ周波数」という)fstepを加えたものを新たな駆動周波数fとして設定する。これにより、駆動周波数fが変更される。S16の後は、S13へ戻る。
【0053】
その後は、S13の判定結果がYesになるまで、すなわち、駆動周波数fが終了周波数fend以上になるまで、上述のS14乃至16の処理が繰り返し行われる。そして、そのS13の判定結果がYesになると、図6に示した当該処理フローをリターンし、最大変位パラメータとして、上記のS15により保持されている各駆動周波数fにおける最大変位位相差phmax(f)と、後述の図7のS25により保持されている最大評価値dmax_aが得られたときの駆動周波数fmaxとが返される。
【0054】
なお、上記のS16において、探索ステップ周波数fstepは、任意の固定値とすることも可能であるし、或いは、理論的に共振周波数に近い範囲内においては探索ステップ周波数fstepを小さくするというように、探索ステップ周波数fstepを非線形な関数とすることも可能である。また、図6に示した処理フローにおいて、はじめは探索ステップ周波数fstepを大きくして粗い探索を行い、次に、その粗い探索により最大評価値dmax_aが得られたときの駆動周波数fmaxを含む周辺の周波数範囲を、再度、探索ステップ周波数fstepを小さくして探索する、というように構成することも可能である。或いは、評価値davのフィードバックに基づいて、最大評価値dmax_aが得られるときの駆動周波数fmaxが存在すると予測される方向に向かう場合には探索ステップ周波数fstepを小さくする、というように構成することも可能である。
【0055】
図7は、上記S14の最大変位位相差phmax(f)を取得する処理フローを示す図である。
同図に示したように、この処理フローにおいて、まず、S21では、探索位相差範囲を規定する開始位相差phstartと終了位相差phendを設定する。
【0056】
なお、このS21において、上記S11における探索周波数範囲を規定する開始周波数fstartと終了周波数fendと同様に、探索位相差範囲を規定する開始位相差phstartと終了位相差phendは、経験的に決めた値でもよいし、或いは、開始位相差phstartのみを決めておいて、終了位相差phendについては、当該最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理の一部における処理結果のフィードバックに基づいて決めるようにしてもよい。例えば、後述の駆動変位の評価値davを取得する処理(S24)にて、大きな評価値davが得られた場合には、その評価値davが得られたときの位相差を含む周辺の位相差範囲を探索位相差範囲とすることも可能である。或いは、得られた評価値davに応じて終了位相差phendを決定するようにすることも可能である。若しくは、一定値以上の評価値davが得られた場合に、その時点で探索位相差範囲を設定するようにすることも可能である。
【0057】
S22では、S21で設定された開始位相差phstartを、駆動位相差phとして設定する。
S23では、駆動位相差phが、S21で設定された終了位相差phend以上であるか否かを判定する。ここで、その判定結果がNoの場合には、S24へ進む。
【0058】
S24では、駆動周波数f及び駆動位相差phにおける駆動変位の評価値davを取得する。なお、このS24の詳細な処理内容については、図8を用いて後述する。
S25では、S24で取得された評価値davが、この時点までに得られている駆動周波数fにおける最大評価値dmax(f)より大きければ、そのS24で取得された評価値davを新たな駆動周波数fにおける最大評価値dmax(f)とすると共に、この時点の駆動位相差phを、この時点までにおける駆動周波数fにおける最大変位位相差phmax(f)とし、これらを制御装置9が備えるメモリ(例えばRAM等の記憶手段)に保持する。また、S24で取得された評価値davが、この時点までに得られている最大評価値dmax_aより大きければ、そのS24で取得された評価値davを新たな最大評価値dmax_aとすると共に、この時点の駆動周波数fを、この時点までにおける最大の評価値davが得られたときの駆動周波数fmaxとし、これらも制御装置9が備えるメモリ(例えばRAM等の記憶手段)に保持する。
【0059】
S26では、駆動位相差phに探索ステップとなる位相差(以下「探索ステップ位相差」という)phstepを加えたものを新たな駆動位相差phとして設定する。これにより、駆動位相差phが変更される。S26の後は、S23へ戻る。
【0060】
その後は、S23の判定結果がYesになるまで、すなわち、駆動位相差phが終了位相差phend以上になるまで、上述のS24乃至26の処理が繰り返し行われる。そして、そのS23の判定結果がYesになると、図7に示した当該処理フローをリターンし、上記のS25によって保持されている最大変位位相差phmax(f)が返される。
【0061】
なお、上記のS26において、探索ステップ位相差phstepは、上記のS16における探索ステップ周波数fstepと同様に、任意の固定値とすることも可能であるし、或いは、理論的に共振周波数に近い範囲内においては探索ステップ位相差phstepを小さくするというように、探索ステップ位相差phstepを非線形な関数とすることも可能である。また、図7に示した処理フローにおいて、はじめは探索ステップ位相差phstepを大きくして粗い探索を行い、次に、その粗い探索により最大評価値dmax_aが得られたときの駆動位相差phmax(f)を含む周辺の位相差範囲を、再度、探索ステップ位相差phstepを小さくして探索する、というように構成することも可能である。或いは、評価値davのフィードバックに基づいて、最大評価値dmax_aが得られるときの駆動位相差が存在すると予測される方向に向かう場合には探索ステップ位相差phstepを小さくする、というように構成することも可能である。
【0062】
図8は、上記のS24の駆動変位の評価値davを取得する処理フローを示す図である。
この処理フローでは、全ての駆動パラメータが同一であっても超音波モータ6の駆動により得られる移動体3の駆動変位が駆動毎に変動する場合が生じ得ることを想定し、そのような場合における駆動変位のばらつきを軽減するための処置として、詳しくは後述するように、第1の駆動パラメータによる駆動と第2の駆動パラメータによる駆動を交互にそれぞれ複数回行い、第1の駆動パラメータによる駆動により得られた複数の駆動変位の平均値と、第2の駆動パラメータによる駆動により得られた複数の駆動変位の平均値とに基づいて、駆動変位の評価値davを求めるようにしている。
【0063】
同図に示したように、この処理フローにおいて、まず、S31では、駆動変位の取得数navを設定する。なお、この取得数は、後述の第1の駆動パラメータによる駆動と第2の駆動パラメータによる駆動を交互にそれぞれ何回行うかを規定するものである。
【0064】
S32では、回数nを1に設定する。なお、この処理は、回数nを初期化する処理である。
S33では、回数nが、S31で決定された取得数navよりも大きいか否かを判定する。ここで、その判定結果がNoの場合には、S34へ進む。
【0065】
S34では、第1の駆動パラメータとして、この時点での駆動周波数f及び駆動位相差phと、出力可能な最大電圧と、一定の波形数(ここでは、一例として500とする)を設定し、この設定に基づく縦振動信号及び屈曲振動信号をバースト波形として制御装置9から超音波モータ6に出力する。すなわち、周波数及び位相差を、この時点での駆動周波数f及び駆動位相差phとし、電圧を出力可能な最大電圧とし、波形数を500とする縦振動信号及び屈曲振動信号を、バースト波形として出力する。これにより、移動体3を+方向(正方向,順方向)に移動させる+方向バースト出力が行われる。なお、ここでは、電圧及び波形数を出力可能な最大電圧及び500としたが、この電圧及び波形数は、探索周波数範囲内の周波数と探索位相差範囲内の位相差との一つ以上の組み合わせにおいて、移動体3を移動可能な値であれば、何れの値を用いることも可能である。但し、この電圧及び波形数は、当該最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理の実行を開始してから終了するまでの間においては一定である。
【0066】
S35では、エンコーダ8からの位置情報に基づいて、S34で行われた+方向バースト出力による移動体3の駆動変位dp(n)を求め、これを制御装置9が備えるメモリ(例えばRAM等の記憶手段)に保持する。なお、この駆動変位は、駆動にバースト出力を用いているため、バースト出力前のエンコーダ8からの位置情報に対する、バースト出力後であって超音波モータ6の駆動が停止し且つ移動体3の移動が停止しているときのエンコーダ8からの位置情報を制御装置9が処理することによって、求められるものである。また、ここで求められる駆動変位dp(n)は、S34で行われた+方向バースト出力による移動体3の移動方向が+方向であった場合には+の値となり、それが−方向であった場合には−の値となる。
【0067】
S36では、第2の駆動パラメータとして、位相差を、この時点の駆動位相差phに対して180°ずらした位相差に設定し、位相差以外を、S34で設定された第1の駆動パラメータと同一の駆動パラメータに設定し、この設定に基づく縦振動信号及び屈曲振動信号をバースト波形として制御装置9から超音波モータ6に出力する。これにより、移動体3を−方向(負方向,逆方向)に移動させる−方向バースト出力が行われる。なお、第2の駆動パラメータとして設定される位相差は、例えば、この時点の駆動位相差phが90°であった場合には、−90°(=90°−180°)となる。
【0068】
S37では、上記のS35と同様に、エンコーダ8からの位置情報に基づいて、S36で行われた−方向バースト出力による移動体3の駆動変位dm(n)を求め、これを制御装置9が備えるメモリ(例えばRAM等の記憶手段)に保持する。なお、ここで求められる駆動変位dm(n)は、S35と同様に、S36で行われた−方向バースト出力による移動体3の移動方向が+方向であった場合には+の値となり、それが−方向であった場合には−の値となる。
【0069】
S38では、回数nに1を加えたものを新たな回数nとして設定する。
S39では、移動体3の位置が、予め原点として定められている位置に対して所定量以上(例えば、±1mm以上)ずれていた場合には、移動体3を原点に移動させる。このように、S39では、移動体3の位置による移動量の変動を抑制するために閾値を設け、移動体3の移動が原点付近のおおよそ同じ場所で行われるようにしている。
【0070】
S39の後は、S33へ戻る。その後は、S33の判定結果がYesになるまで、すなわち、回数nが取得数navよりも大きくなるまで、上述のS34乃至39の処理が繰り返し行われる。
【0071】
なお、上記のS34での+方向バースト出力による移動体3の移動方向と上記のS36での−方向バースト出力による移動体3の移動方向が逆方向になるとは限らないが、設定される第1の駆動パラメータの値が、大きな駆動変位が得られる最適駆動パラメータの値付近になると、それがおおよそ逆方向となる。このようなS34及びS36のバースト出力を交互に繰り返す理由は、実験により、超音波モータ6の駆動による移動体3の移動量を確認したところ、S34又はS36のバースト出力によるような一方向のみへの連続移動をさせた際には、突起部15と摺動部材5との摩擦状態が偏った変化をし、移動量が偏った変動をしてしまう虞があるからである。また、一方方向のみへの連続移動に対して、S34及びS36のバースト出力によるような移動を交互に繰り返した際には、移動体3の移動範囲が少なくて済むからでもある。従って、本処理フローでは、S34及びS36のバースト出力による移動を交互に繰り返すことによって、移動体3の位置による移動量の変動を抑制することができると共に、S39にて移動体3が原点に移動させられる回数を減らすことができるので処理時間の短縮を図ることもできる。
【0072】
S33の判定において、その判定結果がYesになると、S40へ進む。
S40では、駆動変位の評価値davを算出する。具体的には、S35で保持された駆動変位dp(n)の中で駆動変位dp(1)を除く残りの駆動変位dp(n)の平均値(dp(2)〜dp(nav)の平均値)と、S37で保持された駆動変位dm(n)の中で駆動変位dm(1)を除く残りの駆動変位dm(n)の平均値(dm(2)〜dm(nav)の平均値)との差分を求め、この差分の絶対値を駆動変位の評価値davとして算出し、これを制御装置9が備えるメモリ(例えばRAM等の記憶手段)に保持する。なお、1回目に取得された駆動変位dp(1)及びdm(1)を除く理由は、第1の駆動パラメータが変更された後やバースト出力の連続動作後においては1回目に取得される駆動変位が不安定になることがあるからである。
【0073】
S40が終了すると、図8に示した当該処理フローをリターンし、上記のS40により保持された駆動変位の評価値davが返される。
このように、本処理フローでは、S36のように、+方向バースト出力時の位相差に対し、−方向バースト出力時の位相差を、理論どおり、180°ずらすこととしている。このため、駆動パラメータによる駆動変位を評価する際には、その駆動パラメータ(第1の駆動パラメータ)の下で得られる駆動変位と、その駆動パラメータに対して位相差のみを180°ずらした駆動パラメータ(第2の駆動パラメータ)の下で得られる駆動変位とが、逆方向に大きくなる値(+方向及び−方向に大きくなる値)を、S40で算出される駆動変位の評価値davを用いて、評価することができるようにしている。なお、このような評価において、S40で算出される駆動変位の評価値davを、+方向バースト出力による駆動変位の評価値dav_pと−方向バースト出力による駆動変位の評価値dav_m等として切り分け、上位の処理フローにおいて、方向毎に駆動変位が最大となる位相差を個別に探索するように構成することも可能である。
【0074】
以上のような最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理の実行によって得られた最適駆動周波数fop及び最適駆動位相差phopを、駆動パラメータの周波数及び位相差として設定し、この最適駆動周波数fop及び最適駆動位相差phopを有する縦振動信号及び屈曲振動信号を超音波モータ6に出力することにより、移動体3を確実に移動させることができる。なお、得られた最適駆動周波数fop及び最適駆動位相差phopは、移動体3の移動量が略最大となる駆動パラメータであり、これらと、一定値以上の電圧と、一定数の波形数を有する、縦振動信号及び屈曲振動信号を出力することにより、移動体3を移動させることができる。ここで、移動体3の移動量や移動速度を制御する場合には、縦振動信号及び屈曲振動信号において、移動量に略比例する電圧、電流、及び波形数の一つ以上を変化させてもよいし、或いは、駆動周波数及び駆動位相差を最適駆動周波数fop及び最適駆動位相差phopから多少ずれた周波数及び位相差へ変化させるようにしてもよい。若しくは、駆動パラメータの各々を組み合わせて変化させるようにしてもよい。
【0075】
以上、本実施例に係る移動機構によれば、上述の最適駆動パラメータ自動抽出機能の実行により、駆動パラメータとして最適な駆動周波数及び駆動位相差を簡便に取得、設定することができる。また、この最適駆動パラメータ自動抽出機能の実行は、組立後の移動機構において行われるものであるので、超音波モータ組立時の組立誤差等の影響により共振周波数が変動してしまった場合や、超音波モータ組立後における周囲温度の変化、被駆動体との接触状態の変化、負荷の程度、及び、長期間の使用による摺動部分の磨耗等の影響によって共振周波数が変動してしまった場合等であっても、その機能の実行により、変動後の共振周波数に対応する最適な駆動周波数及び駆動位相差を簡便に取得、設定することができる。また、設定された駆動周波数及び駆動位相差に応じた縦振動信号及び屈曲振動信号を超音波モータに出力することにより、安定した駆動制御及び効率的な駆動を行うことができるので、移動機構を効率良く動作させることができる。
【実施例2】
【0076】
本発明の実施例2に係る移動機構は、一部の構成及び動作が、上述の実施例1に係る移動機構と異なっている。そこで、本実施例に係る移動機構の説明では、その異なる点を中心に説明する。
【0077】
本実施例に係る移動機構では、振動体12を構成する複数の板状圧電体のうちの一部の板状圧電体において、縦振動用電極22を縦振動検出用電極として使用する。従って、縦振動検出用電極として使用される縦振動用電極22には、縦振動信号を印加するための信号線が接続されず、その代わりに、縦振動を検出するための信号線が制御装置9との間で接続される。また、制御装置9においては、その縦振動を検出するための信号線を介して、縦振動検出用電極として使用される縦振動用電極22からの縦振動検出信号を検出するための縦振動検出回路を更に備える。その他の構成については、実施例1に係る移動機構と同じである。
【0078】
このような構成の本実施例に係る移動機構においては、最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理中に取得される評価値davとして、駆動変位の評価値を取得するのではなく、縦振動検出回路により検出された縦振動検出信号の信号振幅(以下単に「検出信号振幅」という)の評価値を取得するようにしている。
【0079】
すなわち、本実施例に係る最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理では、図7に示した最大変位位相差phmax(f)を取得する処理フローにおけるS24の駆動変位の評価値davを取得する処理が、図9に示したように、S41の検出信号振幅の評価値davを取得する処理に置き換えられる。このS41では、駆動周波数f及び駆動位相差phにおける検出信号振幅の評価値davが取得される。
【0080】
図10は、このS41の検出信号振幅の評価値davを取得する処理フローを示す図である。なお、同図は、図8に示した駆動変位の評価値davを取得する処理フローに対応する図である。
【0081】
図10に示したように、この処理フローにおいて、まず、S51では、検出信号振幅の取得数navを設定する。なお、この取得数は、後述の第1の駆動パラメータによる駆動と第2の駆動パラメータによる駆動を交互にそれぞれ何回行うかを規定するものである。
【0082】
S52では、回数nを1に設定する。なお、この処理は、回数nを初期化する処理である。
S53では、回数nが、S51で決定された取得数navよりも大きいか否かを判定する。ここで、その判定結果がNoの場合には、S54へ進む。
【0083】
S54では、第1の駆動パラメータとして、この時点での駆動周波数f及び駆動位相差phと、移動体3が移動しない程度の電圧及び波形数とを設定し、この設定に基づく縦振動信号及び屈曲振動信号をバースト波形として制御装置9から超音波モータ6に出力する。すなわち、周波数及び位相差を、この時点での駆動周波数f及び駆動位相差phとし、電圧及び波形数を、移動体3が移動しない程度の電圧及び波形数とする縦振動信号及び屈曲振動信号を、バースト波形として出力する。これにより、移動体3を+方向に移動させようとする+方向バースト出力が行われる。なお、本実施例にいても、設定される電圧及び波形数が、当該最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理の実行を開始してから終了するまでの間においては一定である。
【0084】
S55では、制御装置9が備える縦振動検出回路により、S54で行われた+方向バースト出力による縦振動検出信号を検出して、その検出信号振幅ap(n)を取得し、これを制御装置9が備えるメモリ(例えばRAM等の記憶手段)に保持する。
【0085】
S56では、第2の駆動パラメータとして、位相差を、この時点の駆動位相差phに対して180°ずらした位相差に設定し、位相差以外を、S54で設定された第1の駆動パラメータと同一の駆動パラメータに設定し、この設定に基づく縦振動信号及び屈曲振動信号をバースト波形として制御装置9から超音波モータ6に出力する。これにより、移動体3を−方向に移動させようとする−方向バースト出力が行われる。
【0086】
S57では、上記のS55と同様に、制御装置9が備える縦振動検出回路により、−方向バースト出力による縦振動検出信号を検出して、その検出信号振幅am(n)を取得し、これを制御装置9が備えるメモリ(例えばRAM等の記憶手段)に保持する。
【0087】
S58では、回数nに1を加えたものを新たな回数nとして設定し、S53へ戻る。
その後は、S53の判定結果がYesになるまで、すなわち、回数nが取得数navよりも大きくなるまで、上述のS54乃至58の処理が繰り返し行われる。そして、S53の判定結果がYesになると、S59へ進む。
【0088】
S59では、検出信号振幅の評価値davを算出する。具体的には、S55で保持された検出信号振幅ap(n)の中で検出信号振幅ap(1)を除く残りの検出信号振幅ap(n)の平均値(ap(2)〜ap(nav)の平均値)と、S57で保持された検出信号振幅am(n)の中で検出信号振幅am(1)を除く残りの検出信号振幅am(n)の平均値(am(2)〜am(nav)の平均値)との和を検出信号振幅の評価値davとして算出し、これを制御装置9が備えるメモリ(例えばRAM等の記憶手段)に保持する。なお、1回目に取得された検出信号振幅ap(1)及びam(1)を除く理由は、図8のS40と同様に、第1の駆動パラメータが変更された後やバースト出力の連続動作後においては1回目に取得される検出信号振幅が不安定になることがあるからである。
【0089】
S59が終了すると、図10に示した当該処理フローをリターンし、上記のS59により保持された検出信号振幅の評価値davが返される。
その他の最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理については、実施例1に係る最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理と同じである。
【0090】
なお、本実施例に係る最適駆動パラメータ自動抽出機能においては、上述のように、駆動変位の代わりに検出信号振幅を取得するようにしているので、図6に示した最大変位パラメータを取得する処理におけるS11において、移動体3を原点へ移動させる動作を省くように構成することも可能である。
【0091】
また、本実施例に係る最適駆動パラメータ自動抽出機能も、実施例1に係る最適駆動パラメータ自動抽出機能と同様に、自動で実行させることができるし、ユーザからの指示に応じて実行させることもできる。但し、自動で実行させる場合には、例えば、更に、制御装置9が備える縦振動検出回路により検出された縦振動検出信号の信号振幅から、その時点に設定されている駆動パラメータが、その時点の超音波モータ6の共振周波数に対して適切でないと制御装置9により判断された場合に、その機能を自動的に実行させることもできる。この場合、その判断は、例えば、検出された縦振動検出信号の信号振幅と、対応する閾値との比較に基づいて行われる。
【0092】
以上、本実施例に係る移動機構によれば、実施例1に係る移動機構と同様の効果が得られることに加え、駆動変位を取得する代わりに検出信号振幅を取得するようにしたので、最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理の実行中に、移動体3が往復移動することなく、また、原点への移動体3の移動も省くことができるので、処理時間の短縮を図ることができる。
【0093】
なお、本実施例に係る移動機構では、振動体12における一部の板状圧電体の縦振動用電極22を縦振動検出用電極として使用し、縦振動検出信号の信号振幅を取得して処理を行うものであったが、これの代わりに、振動体12における一部の板状圧電体の屈曲振動用電極21を屈曲振動検出用電極として使用し、屈曲振動検出信号の信号振幅を取得して同様にして処理を行うように構成することも可能である。或いは、その両方を組み合わせて、縦振動検出信号と屈曲振動検出信号の両方の信号振幅を取得して同様にして処理を行うように構成することも可能である。
【0094】
また、本実施形態に係る移動機構において、最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理では、バースト出力による駆動を行って検出信号振幅を取得するという動作を繰り返して処理を行っていたが、単に連続駆動を行って、その連続駆動中に駆動パラメータを順次変化させて、その都度、検出信号振幅を取得して同様にして処理を行うように構成することも可能である。
【0095】
また、本実施形態に係る移動機構において、最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理では、+方向バースト出力による駆動を行って検出信号振幅を取得し、−方向バースト出力による駆動を行って検出信号振幅を取得するという動作を繰り返して処理を行っていたが、+方向バースト出力又は−方向バースト出力の何れか一方のバースト出力のみによる駆動を行って検出信号振幅を取得するという動作を繰り返して同様にして処理を行うように構成することも可能である。
【0096】
以上、実施例1及び2に係る移動機構について説明したが、各実施例に係る移動機構では、当該移動機構の起動後において最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理を複数回目に行う場合に、前回に最適駆動パラメータとして取得された最適駆動周波数及び最適駆動位相差、すなわち、この時点で最適駆動パラメータとして設定されている最適駆動周波数及び最適駆動位相差を用いて、探索周波数範囲及び探索位相差範囲を決定するようにすることも可能である。この場合には、探索周波数範囲を、この時点で設定されている最適駆動周波数を含む範囲であって通常時の探索周波数範囲よりも狭い範囲とすることができ、同様に、探索位相差範囲を、この時点で設定されている最適駆動位相差を含む範囲であって通常時の探索位相差範囲よりも狭い範囲とすることができる。これにより、2回目以降の最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理では、探索範囲が狭くなるので、処理時間の短縮を図ることができる。なお、このような処理が可能になる理由は、前回の最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理の実行により最適駆動パラメータとして取得された最適駆動周波数及び最適駆動位相差は、その後、大きく変化することがないからである。
【0097】
また、各実施例に係る移動機構においては、他の実施例に係る移動機構の構成及び動作を組み合わせて構成することも可能である。例えば、移動機構の起動直後に最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理を行う場合には、実施例1に係る最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理を実行し、ユーザが移動機構を使用中であって、一時的に、超音波モータ6の駆動を停止している時であって且つ移動体3が停止している時に、最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理を実行する場合には、実施例2に係る最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理を実行するように構成することも可能である。これにより、ユーザが移動機構を使用中に実行される最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理では、移動機構の起動直後に実行される最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理よりも、処理時間を短くすることができるので、ユーザの作業が中断される時間をより短くすることができる。
【0098】
また、各実施例に係る移動機構において、最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理では、最適駆動パラメータとして、最適駆動周波数及び最適駆動位相差を取得するものであったが、更に、電圧や電流、波形数の最適な値を取得するように構成することも可能である。
【0099】
また、各実施例に係る移動機構において、制御装置9は、制御プログラムの実行によって移動機構全体の動作制御を司るCPU、このCPUが必要に応じてワークメモリとして使用するメインメモリ、マウスやキーボード等といったユーザからの各種の指示を取得するための入力部、超音波モータ6やエンコーダ8との間で信号の送受を管理するインタフェースユニット、及び各種のプログラムやデータを記憶しておく例えばハードディスク装置などの補助記憶装置を有する、ごく標準的な構成のコンピュータによって構成することもできる。この場合、最適駆動パラメータ自動抽出機能に係る処理をコンピュータのCPUに行わせるための制御プログラムを作成してコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録させておき、そのプログラムを記録媒体からコンピュータに読み込ませてCPUで実行させるようにすることも可能である。記録させた制御プログラムをコンピュータで読み取ることの可能な記録媒体としては、例えば、コンピュータに内蔵若しくは外付けの付属装置として備えられるROMやハードディスク装置などの記憶装置、コンピュータに備えられる媒体駆動装置へ挿入することによって記録された制御プログラムを読み出すことのできるフレキシブルディスク、MO(光磁気ディスク)、CD−ROM、DVD−ROMなどといった携帯可能記録媒体等が利用できる。また、記録媒体は通信回線を介してコンピュータと接続される、プログラムサーバとして機能するコンピュータシステムが備えている記憶装置であってもよい。この場合には、制御プログラムを表現するデータ信号で搬送波を変調して得られる伝送信号を、プログラムサーバから伝送媒体である通信回線を通じてコンピュータへ伝送するようにし、コンピュータでは受信した伝送信号を復調して制御プログラムを再生することでこの制御プログラムをコンピュータのCPUで実行できるようになる。
【0100】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良及び変更を行っても良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0101】
1 固定台
2 ガイド
3 移動体
4 側面部材
5 摺動部材
6 超音波モータ
7 スケール
8 エンコーダ
9 制御装置
11 保持部材
12 振動体
13 切り欠き穴部
14 薄板ばね部
15 突起部
16 固定用ビス穴
17 プランジャ
21 屈曲振動用電極
22 縦振動用電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定台と、
前記固定台に対して移動可能に支持された可動体と、
前記固定台と前記可動体とを相対移動させる超音波モータと、
前記固定台と前記可動体との相対移動量を検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段により検出された相対移動量が入力され、前記超音波モータに駆動信号を出力する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記超音波モータに出力する駆動信号の最適駆動パラメータを抽出する最適駆動パラメータ抽出手段を含み、
前記最適駆動パラメータ抽出手段は、前記超音波モータに出力する駆動信号の駆動パラメータを設定し、当該駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記固定台と前記可動体との相対移動量を前記変位検出手段から取得する、という処理を前記駆動パラメータを変更させながら繰り返し、前記変位検出手段から取得した相対移動量に基づいて前記最適駆動パラメータを抽出する、
ことを特徴とする移動機構。
【請求項2】
前記最適駆動パラメータ抽出手段は、設定した駆動パラメータにおける駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記固定台と前記可動体との相対移動量を前記変位検出手段から取得する、という処理を一組の駆動パラメータに対して複数回繰り返し、当該一組の駆動パラメータに対して複数回取得した相対移動量の平均値を求め、当該平均値に基づいて前記最適駆動パラメータを抽出する、
ことを特徴とする請求項1記載の移動機構。
【請求項3】
前記制御手段が前記超音波モータに出力する駆動信号は2つの駆動信号であり、
前記駆動パラメータは前記2つの駆動信号の位相差を含み、
前記最適駆動パラメータ抽出手段は、
一組の駆動パラメータに対して、当該一組の駆動パラメータのままとする第1の駆動パラメータと、当該一組の駆動パラメータの中で位相差のみが180°異なる第2の駆動パラメータとを設け、
設定した駆動パラメータにおける駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記固定台と前記可動体との相対移動量を前記変位検出手段から取得する、という処理を一組の駆動パラメータに係る第1の駆動パラメータに対して複数回繰り返すと共に当該一組の駆動パラメータに係る第2の駆動パラメータに対しても複数回繰り返し、前記第1の駆動パラメータに対して複数回取得した相対移動量の平均値を第1の平均値として求めると共に前記第2の駆動パラメータに対して複数回取得した相対移動量の平均値を第2の平均値として求め、前記第1の平均値と前記第2の平均値との差の絶対値を評価値として取得し、
前記評価値が最大となるときの組の駆動パラメータを求める、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の移動機構。
【請求項4】
固定台と、
前記固定台に対して移動可能に支持された可動体と、
前記固定台と前記可動体とを相対移動させる超音波モータと、
前記超音波モータから振動状態を示す振動検出信号が入力され、前記超音波モータに駆動信号を出力する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記振動検出信号を検出する信号検出手段と、
前記超音波モータに出力する駆動信号の最適駆動パラメータを抽出する最適駆動パラメータ抽出手段と、
を含み、
前記最適駆動パラメータ抽出手段は、前記超音波モータに出力する駆動信号の駆動パラメータを設定し、当該駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記超音波モータからの振動検出信号を前記信号検出手段により検出する、という処理を前記駆動パラメータを変更させながら繰り返し、前記信号検出手段により検出した振動検出信号の信号振幅に基づいて前記最適駆動パラメータを抽出する、
ことを特徴とする移動機構。
【請求項5】
前記最適駆動パラメータ抽出手段は、設定した駆動パラメータにおける駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記超音波モータからの振動検出信号を前記信号検出手段により検出する、という処理を一組の駆動パラメータに対して複数回繰り返し、当該一組の駆動パラメータに対して複数回検出した振動検出信号の信号振幅の平均値を求め、当該平均値に基づいて前記最適駆動パラメータを抽出する、
ことを特徴とする請求項4記載の移動機構。
【請求項6】
前記制御手段が前記超音波モータに出力する駆動信号は2つの駆動信号であり、
前記駆動パラメータは前記2つの駆動信号の位相差を含み、
前記最適駆動パラメータ抽出手段は、
一組の駆動パラメータに対して、当該一組の駆動パラメータのままとする第1の駆動パラメータと、当該一組の駆動パラメータの中で位相差のみが180°異なる第2の駆動パラメータとを設け、
設定した駆動パラメータにおける駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記超音波モータからの振動検出信号を前記信号検出手段により検出する、という処理を一組の駆動パラメータに係る第1の駆動パラメータに対して複数回繰り返すと共に当該一組の駆動パラメータに係る第2の駆動パラメータに対しても複数回繰り返し、前記第1の駆動パラメータに対して複数回検出した振動検出信号の信号振幅の平均値を第1の平均値として求めると共に前記第2の駆動パラメータに対して複数回検出した振動検出信号の信号振幅の平均値を第2の平均値として求め、前記第1の平均値と前記第2の平均値との和を評価値として取得し、
前記評価値が最大となるときの組の駆動パラメータを求める、
ことを特徴とする請求項4又は5記載の移動機構。
【請求項7】
前記最適駆動パラメータ抽出手段の動作中に前記超音波モータに出力される駆動信号は、所定数の波形数を有するバースト波形の信号である、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の移動機構。
【請求項8】
前記第1の駆動パラメータの駆動信号を前記超音波モータに出力することと、前記第2の駆動パラメータの駆動信号を前記超音波モータに出力することとが、交互に行われる、
ことを特徴とする請求項3又は6記載の移動機構。
【請求項9】
前記制御手段は、当該移動機構が起動された時に、前記最適駆動パラメータ抽出手段を動作させる、
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の移動機構。
【請求項10】
前記制御手段は、前記変位検出手段から取得した相対移動量又は前記信号検出手段により検出した振動検出信号の信号振幅に基づいて前記超音波モータに出力する駆動信号の駆動パラメータが適切でないと判断したときは、前記最適駆動パラメータ抽出手段を動作させる、
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の移動機構。
【請求項11】
前記制御手段は、当該移動機構の起動後において前記最適駆動パラメータ抽出手段を複数回目に動作させる場合に、駆動パラメータの変更範囲を、前回動作時に抽出された最適駆動パラメータを含む範囲であって通常動作時における駆動パラメータの変更範囲よりも狭い範囲として、前記最適駆動パラメータ抽出手段を動作させる、
ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の移動機構。
【請求項12】
前記最適駆動パラメータ抽出手段の動作は、前記固定台に対する前記可動体の移動可能範囲の中の限られた範囲の位置にて行われる、
ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の移動機構。
【請求項13】
前記最適駆動パラメータ抽出手段の動作中において、前記変位検出手段から取得した相対移動量又は前記信号検出手段により検出した振動検出信号の信号振幅は、前記制御手段が備える記憶手段に記憶される、
ことを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の移動機構。
【請求項14】
前記最適駆動パラメータ抽出手段の動作中において変更対象となる駆動パラメータは2種類以上であって、
前記最適駆動パラメータ抽出手段の動作中に、第1の種類の変更対象駆動パラメータのみを変更し他の種類の変更対象駆動パラメータを固定としながら処理が繰り返されたときに、前記変位検出手段から取得される相対移動量又は前記信号検出手段により検出される振動検出信号の信号振幅が最も大きくなると判断されたときの前記第1の種類の変更対象駆動パラメータは、前記他の種類の変更対象駆動パラメータと共に、前記制御手段が備える前記記憶手段に記憶される、
ことを特徴とする請求項13記載の移動機構。
【請求項15】
前記最適駆動パラメータ抽出手段は、変更対象となる駆動パラメータの全ての組み合わせに対して処理を繰り返した後、前記変位検出手段から取得される相対移動量又は前記信号検出手段により検出される振動検出信号の信号振幅が最も大きくなると判断したときの第2の種類の変更対象駆動パラメータに対してオフセットを加えたものを第1の最適駆動パラメータとすると共に、前記制御手段が備える前記記憶手段に記憶されている前記第1の種類の変更対象駆動パラメータの中から、前記第1の最適駆動パラメータに対応する第1の種類の変更対象駆動パラメータを選択し、当該第1の変更対象駆動パラメータに対してオフセットを加えたものを第2の最適駆動パラメータとする、
ことを特徴とする請求項14記載の移動機構。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか一項に記載の移動機構を備えたことを特徴とする顕微鏡。
【請求項17】
固定台と、前記固定台に対して移動可能に支持された可動体と、前記固定台と前記可動体とを相対移動させる超音波モータと、前記固定台と前記可動体との相対移動量を検出する変位検出手段と、前記変位検出手段により検出された相対移動量が入力され、前記超音波モータに駆動信号を出力する制御手段とを備えた移動機構における、前記駆動信号の最適駆動パラメータを抽出する方法であって、
前記制御手段が、前記超音波モータに出力する駆動信号の駆動パラメータを設定し、当該駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記固定台と前記可動体との相対移動量を前記変位検出手段から取得する、という処理を前記駆動パラメータを変更させながら繰り返し、前記変位検出手段から取得した相対移動量に基づいて最適駆動パラメータを抽出する、
ことを特徴とする最適駆動パラメータ抽出方法。
【請求項18】
固定台と、前記固定台に対して移動可能に支持された可動体と、前記固定台と前記可動体とを相対移動させる超音波モータと、前記超音波モータから振動状態を示す振動検出信号が入力され、前記超音波モータに駆動信号を出力する制御手段とを備えた移動機構における、前記駆動信号の最適駆動パラメータを抽出する方法であって、
前記制御手段は、前記超音波モータに出力する駆動信号の駆動パラメータを設定し、当該駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記超音波モータからの振動検出信号を検出する、という処理を前記駆動パラメータを変更させながら繰り返し、前記検出した振動検出信号の信号振幅に基づいて最適駆動パラメータを抽出する、
ことを特徴とする最適駆動パラメータ抽出方法。
【請求項19】
固定台と、前記固定台に対して移動可能に支持された可動体と、前記固定台と前記可動体とを相対移動させる超音波モータと、前記固定台と前記可動体との相対移動量を検出する変位検出手段と、前記変位検出手段により検出された相対移動量が入力され、前記超音波モータに駆動信号を出力する制御手段とを備えた移動機構における、前記制御手段のコンピュータに実行されるプログラムであって、
前記超音波モータに出力する駆動信号の駆動パラメータを設定し、当該駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記固定台と前記可動体との相対移動量を前記変位検出手段から取得する、という処理を前記駆動パラメータを変更させながら繰り返し、前記変位検出手段から取得した相対移動量に基づいて最適駆動パラメータを抽出する、という機能を前記コンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項20】
固定台と、前記固定台に対して移動可能に支持された可動体と、前記固定台と前記可動体とを相対移動させる超音波モータと、前記超音波モータから振動状態を示す振動検出信号が入力され、前記超音波モータに駆動信号を出力する制御手段とを備えた移動機構における、前記制御手段のコンピュータに実行されるプログラムであって、
前記超音波モータに出力する駆動信号の駆動パラメータを設定し、当該駆動信号を前記超音波モータに出力し、当該駆動信号の出力による前記超音波モータからの振動検出信号を検出する、という処理を前記駆動パラメータを変更させながら繰り返し、前記検出した振動検出信号の信号振幅に基づいて最適駆動パラメータを抽出する、という機能を前記コンピュータに実現させるためのプログラム。


【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−41346(P2011−41346A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183747(P2009−183747)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】