説明

移植方法と移植機

【課題】従来の移植機で植付けられた苗の周囲はきれいに均されているので、苗の植付けと同時か植付けた後にした潅水は、苗の周囲から遠くに流れてしまって、有効な潅水が行なえない。また、施肥や施薬を苗の周囲に行なっても、同様に、苗の周囲から遠くに飛散し有効な施肥や施薬が行なえない。
本発明は、苗の周囲に水が適切に残り、良好な苗への潅水が行なえて、移植後の苗の栽培管理が容易で作業効率が良くなることを課題とする。
【解決手段】作穴装置142にて形成した凹み状の穴140内に植付具28にて苗を植付ける移植方法と、原動機11で駆動される走行推進体14と植付伝動ケース26内の駆動機構にて昇降駆動される植付具28を装備した移植機において、該植付具28が圃場に植付ける苗の周囲に昇降作動して凹み状の穴140を形成する作穴装置142を設けた移植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タバコ苗や野菜苗や花卉苗等の各種苗及びジャガイモの種芋やラッキョ等の球根類を圃場に移植する移植方法とその移植方法を実現する移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移植機は、その植付装置が植付具と該植付具を昇降させる昇降リンク機構で構成され、所定の軌跡で昇降する植付具の先端部は最下端に来た時に圃場に所定深さまで突入して左右方向又は前後方向に開いて苗を圃場に植え付け、鎮圧体で苗の周囲を覆土鎮圧して苗の植付け作業行なう。
【0003】
従って、移植機で植付けられた苗の周囲は、きれいに均され覆土された状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−67135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の移植機で植付けられた苗の周囲はきれいに均され覆土された状態となっているので、苗の植付けと同時か植付けた後で潅水するが、その潅水した水は、苗の周囲から遠くに流れてしまって、有効な潅水が行なえない。また、施肥や施薬を苗の周囲に行なっても、同様に、苗の周囲から遠くに飛散して有効な施肥や施薬が行なえない。
【0006】
そこで、本発明は、植付けた苗に潅水を行なった場合(雨が降って潅水された場合も含む)に、苗の周囲に水が適切に残り、良好な苗への潅水が行なえて、移植後の苗の栽培管理が容易で作業効率が良くなることを課題とする。また、苗に施肥や施薬を行なった場合も同様に、苗の周囲に肥料や薬剤が適切に残り、良好な施肥や施薬が行なえることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、作穴装置142にて形成した凹み状の穴140内に植付具28にて苗を植付ける移植方法とした。
【0008】
従って、請求項1記載の発明は、植付具28にて植付けた苗の周囲に凹み状の穴140を形成しているので、苗の植付け時や植付けた後に、苗の周囲に形成した凹み状の穴140内に潅水すると、苗の周囲に水が適切に残り、良好な苗への潅水が行なえて、移植後の苗の栽培管理が容易となり作業効率が良い。また、苗の周囲に形成した凹み状の穴140内に肥料を施肥したり薬剤を施薬したりすることができて、植付けた苗の栽培管理が容易に行なえる。
【0009】
請求項2に係る発明は、作穴装置142が下降して圃場に凹み状の穴140を形成し始めた後に、植付具28が作穴装置142の後方で圃場に突入して苗を植付け、その後、植付具28及び作穴装置142が上昇する請求項1記載の移植方法とした。
【0010】
従って、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の作用に加えて、作穴装置142が下降して圃場に凹み状の穴140を形成し始めた後に、植付具28が作穴装置142の後方で圃場に突入して苗を植付けるので、植付具28は作穴装置142で圃場表面の土が左右に排除された状態で且つ作穴装置142で防護された状態で苗を植付けることができるので、適正で苗の植付け姿勢が良く良好な苗の植付けが行なえる。
【0011】
請求項3に係る発明は、原動機11で駆動される走行推進体14と植付伝動ケース26内の駆動機構にて昇降駆動される植付具28を装備した移植機において、該植付具28が圃場に植付ける苗の周囲に昇降作動して凹み状の穴140を形成する作穴装置142を設けた移植機とした。
【0012】
従って、請求項3記載の発明は、原動機11で駆動される走行推進体14にて進行して、植付伝動ケース26内の駆動機構にて昇降駆動される植付具28にて圃場に苗が植付けられる。その植付具28が圃場に植付ける苗の周囲に作穴装置142が昇降作動して凹み状の穴140を形成する。従って、苗の植付け時や植付けた後に、苗の周囲に形成した凹み状の穴140内に潅水すると、苗の周囲に水が適切に残り、良好な苗への潅水が行なえて、移植後の苗の栽培管理が容易となり作業効率が良い。また、苗の周囲に形成した凹み状の穴140内に肥料を施肥したり薬剤を施薬したりすることができて、植付けた苗の栽培管理が容易に行なえる。
【0013】
請求項4に係る発明は、植付伝動ケース26に設けた駆動機構147aにて作穴装置142を作動させる構成とした請求項3に記載の移植機とした。
従って、請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の作用に加えて、植付具28及び作穴装置142は共に植付伝動ケース26にて駆動される構成となり、植付具28及び作穴装置142の作動誤差が少なく、良好な苗の植付けと苗の周囲に浅い凹み状の穴140の形成が適正に行なえて、移植後の苗の活着や栽培管理が容易になる。
【0014】
請求項5に係る発明は、植付伝動ケース26の左右に突出した駆動軸61の左右一側に植付具28を昇降作動させる昇降リンク機構29を駆動する駆動部材55を設け、左右他側に作穴装置142を作動させる駆動機構147aを設けた請求項4に記載の移植機とした。
【0015】
従って、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明の作用に加えて、植付具28と作穴装置142が同じ駆動軸61で駆動されるので、更に、両者に駆動タイミングの誤差が生じることが少なく、また、植付具28と作穴装置142が左右にバランス良く配置される構成となり、良好な苗の植付けと苗の周囲に浅い凹み状の穴140の形成が適正に行なえて、移植後の苗の活着や栽培管理が容易になる。
【0016】
請求項6に係る発明は、作穴装置142に平面視で内部空間145bを形勢した作穴体145を設けると共に、該作穴体145が圃場に突入した後に植付具28が作穴体145の内部空間145b内で圃場に突入して苗を植付ける構成とした請求項3から請求項5の何れか1項に記載の移植機とした。
【0017】
従って、請求項6に記載の発明は、請求項3から請求項5の何れか1項に記載の発明の作用に加えて、植付具28が圃場に突入する前に圃場に突入して圃場に凹み状の穴140を形成している作穴体145の内部空間145b内で植付具28が圃場に突入して苗を植付けるので、植付具28は作穴体145で圃場表面の土が左右に排除された状態で且つ作穴体145で防護された状態で苗を植付けることができるので、適正に且つ苗の植付け姿勢が良い良好な苗の植付けが行なえる。
【発明の効果】
【0018】
よって、この発明の移植方法及び移植機は、苗の植付け時や植付けた後に、苗の周囲に形成した凹み状の穴140内に潅水すると、苗の周囲に水が適切に残り、良好な苗への潅水が行なえて、移植後の苗の栽培管理が容易となり作業効率が良く、発明の課題を適切に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】移植機を示す側面図である。
【図2】移植機を示す平面図である。
【図3】供給部を示す底面図である。
【図4】植付伝動ケースを示す側面図である。
【図5】植付装置駆動ケースを示す側面図である。
【図6】植付伝動ケースを示す断面展開平面図である。
【図7】植付クラッチの拡大平面図である。
【図8】植付クラッチの作用説明用拡大側面図である。
【図9】植付クラッチの作用説明用拡大側面図である。
【図10】植付装置を示す斜視図である。
【図11】植付具が軌跡の上死点付近に位置するときの植付装置を示す側面図である。
【図12】植付具が下降する行程の途中に位置するときの植付装置を示す側面図である。
【図13】植付具が下死点に位置するときの植付装置を示す側面図である。
【図14】植付具が上昇する行程の途中に位置するときの植付装置を示す側面図である。
【図15】植付装置を示す平面図である。
【図16】植付装置を示す背面図である。
【図17】植付具の上下動速度、前後動速度および絶対速度を示すグラフである。
【図18】植付株間ごとの植付具の静軌跡および動軌跡を示すグラフである。
【図19】植付具と作穴機構の作用を説明する要部拡大側面図である。
【図20】畝に植付けた苗の状態を示す作用説明用断面図である。
【図21】作穴機構の第2実施例を示す作用説明用の要部拡大側面図である。
【図22】作穴機構の第3実施例を示す作用説明用の要部拡大側面図である。
【図23】作穴機構の第4実施例を示す作用説明用の要部拡大背面図である。
【図24】作穴機構の第5実施例を示す作用説明用の要部拡大背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲を拘束するものではない。
移植機の一例としてタバコの苗を移植する移植機について説明する。この移植機10は、前部にエンジンである原動機11及び主伝動ケース12と、走行車輪としての左右一対の前輪13及び走行推進体としての左右一対の後輪14と、後部に植付装置19、供給部31、鎮圧輪15および操縦ハンドル16を備えて構成されている。
【0021】
移植機10は、走行機体が圃場内の畝Uをまたぐように、左右前輪13及び左右後輪14が畝間を走行し、畝Uの上面の左右幅方向における中央位置に植付装置19により苗を植付けていく構成となっている。
【0022】
また、主伝動ケース12の左右端には該主伝動ケース12に対して上下に回動可能な延長ケース40を左右それぞれ設け、左右の延長ケース40のそれぞれの端部に走行伝動ケース20を取り付けている。したがって、原動機11から入力される主伝動ケース12内の動力を走行伝動ケース20内に伝動する構成となっている。
【0023】
左右走行伝動ケース20の回動先端部には、各々左右後輪14をそれぞれ取り付け、この左右後輪14の駆動により機体が走行するようになっている。したがって、主伝動ケース12、左右延長ケース40及び左右走行伝動ケース20は、駆動走行車輪としての左右後輪14に駆動力を伝動する伝動装置となっている。
【0024】
一方、エンジン載置台91の下部には左右方向に延びる前輪支持フレーム41を前後方向のローリング軸18回りに回動可能に設け、この前輪支持フレーム41の左右両端部に左右前輪13を取り付けた構成としている。
【0025】
また、主伝動ケース12の後端には左右方向に延びる後フレーム21を固着して設け、該後フレーム21の後端面の右端部には、機体の右寄りの位置で前後方向に延びる主フレーム22を設けている。該主フレーム22の後端部には操縦ハンドル16を設け、該操縦ハンドル16が主フレーム22及び後フレーム21を介して主伝動ケース12に支持された構成となっている。後フレーム21の左右一方寄り(右寄り)の位置の上面には、植付伝動ケース26の前下端部を載せて該植付伝動ケース26を固着して設けている。
【0026】
また、主伝動ケース12の後側で且つ左右方向の中央には、油圧昇降シリンダ23を設けている。この油圧昇降シリンダ23は、主伝動ケース12に取り付けられた油圧切替バルブ部24に固着して設けられ、主伝動ケース12に取り付けられた油圧ポンプ92からの油路を油圧切替バルブ部24で切り替えることにより作動する。
【0027】
また、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッドの後端には左右に延びる横杆43を設け、この横杆43の左右端部にそれぞれロッドとなる左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45を連結し、左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45の他端をそれぞれの延長ケース40に取り付けられた上側ア−ム40aに枢着して、横杆43と延長ケース40とが連結された構成となっている。したがって、油圧昇降シリンダ23の伸縮により横杆43、左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45を介して主伝動ケース12の左右の出力軸回りに走行伝動ケース20を回動し、該走行伝動ケース20の回動により後輪14が上下して走行機体が昇降する構成となっている。なお、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッド、横杆43、左側の後輪昇降ロッド44及び右側の後輪昇降ロッド45は、シリンダロッドの進出位置によっては、機体側面視で後述する昇降リンク機構29の下方に位置する構成となっており、スペースを有効利用して機体のコンパクト化を図っている。
【0028】
また、機体中央部の下方位置で植付装置19の植付具28が苗を畝Uに植付ける位置の直前の位置には、周知の畝U上面に接当して畝U上面の高さを検出する植付け深さ制御用センサーSが設けられており、該植付け深さ制御用センサーSの畝U検出により油圧切替バルブ部24に備えられた昇降制御用切替バルブを介して油圧昇降シリンダ23を作動させて左右後輪14を昇降制御して、走行機体を畝Uに対する所定の高さに制御して植付具28が苗を畝Uに植付ける深さが一定になるようにしている。
【0029】
また、左側の後輪昇降ロッド44が伸縮するように該左側の後輪昇降ロッド44の中途部に油圧ポンプ92からの油圧により作動する左右傾斜用油圧シリンダ25を設けており、該左右傾斜用油圧シリンダ25の伸縮により右側の後輪14の上下位置に対して左側の後輪14を上下させて、畝Uの谷部の凹凸に関係なく走行機体を所望の左右傾斜姿勢に制御する構成となっている。なお、主伝動ケース12の右側には振り子式の左右傾斜センサ42が設けられて、この左右傾斜センサ42の検出により油圧切替バルブ部24に備えられた左右傾斜用切替バルブを介して左右傾斜用油圧シリンダ25を作動させ、走行機体を所望の左右傾斜姿勢に制御する構成となっている。
【0030】
植付装置19は、移植対象物である苗を1個ずつ圃場の畝に植付けるべく、主伝動ケース12内からの動力が主伝動ケース12の後側に設けた植付伝動ケース26と、その植付伝動ケース26に取り付けられた植付装置駆動ケース27を介して伝達され、作動するようになっている。
【0031】
植付装置19は、先端が尖ったカップ状の植付具28と、該植付具28を昇降させるべく作動する昇降リンク機構29で構成される。植付具28の先端(下端)は、植付具28の昇降動作によって、前側で下降し後側で上昇するとともに、前後方向の幅が上部よりも下部の方が大きいループ状の軌跡17を描いて繰り返し作動する。
【0032】
供給部31には、植付伝動ケース26からの動力により作動し、作業者が手で苗を一個ずつ供給するための供給カップ33が、供給回転台32上に円形のループ状で所定間隔毎に配置されている。そして、各々の供給カップ33の底部には、上下方向に可動する開閉蓋34を設けている。また、供給カップ33の下方には、供給回転台32の矢印A方向への回転により、供給カップ33が植付具28の上方の位置である所定位置Pに来たときにのみ開閉蓋34が開くべく、環状の一部を切り欠いた略C字型の供給カップ開閉ガイド35が、走行機体側に固定されている。尚、供給カップ開閉ガイド35は、前記所定位置P以外の位置で、開閉蓋34を下側から接触して支えて開閉蓋34が開くのを規制する。
【0033】
機体の走行と共に歩行する作業者は、載置台30にある苗を取って機体の走行にあわせて矢印A方向に回転している供給カップ33にそれぞれ入れていく。
供給カップ33の開閉蓋34が前記所定位置Pで開くと、供給カップ33内の苗が下方の植付具28に供給される。植付具28は、作動の軌跡17の下死点に来たときに土中に所定深さまで突入するとともに嘴の如く左右に開いて、内部に保持されていた苗を落下して植え付ける。
【0034】
主伝動ケース12の後面から後側へ突出する動力取出軸を突出し、該動力取出軸を介して植付伝動ケース26内に動力が入力される。植付伝動ケース26内の伝動について説明すると、前記動力取出軸と同軸上で一体回転する前後方向の入力軸93を設け、該入力軸93から一対のベベルギヤ94a・94bを介して左右方向の第一軸95へ伝動される。尚、植付伝動ケース26の直前で入力軸93上には、所定以上の負荷トルクで動力を断つ安全クラッチ96を設けており、メカロック等により植付装置19に過大な作動負荷が生じたときに安全クラッチ96により動力を断って植付装置19及び植付伝動ケース26を含む植付伝動機構の破損を防止する。第一軸95に該第一軸95と一体回転する第一駆動スプロケット97を設け、第一駆動スプロケット97から伝動チェーンである第一無端体98を介して第一従動スプロケット99へ伝動し、該第一従動スプロケット99と一体回転する左右方向の第二軸100へ伝動する。第二軸100上で且つ第一従動スプロケット99の左右一方側(左側)には、3個の駆動側ギヤ101a・101b・101cを左右に配列し、該3個の駆動側ギヤ101a・101b・101cが第二軸100と一体回転する。なお、前記複数の駆動側ギヤ101a・101b・101cは、互いのピッチ円直径を異ならせており、互いに異なる歯数に設定されている。
【0035】
複数の駆動側ギヤ101a・101b・101cのうちの何れかと噛み合う単一の従動側ギヤ102を左右方向の第三軸103上に設けており、該従動側ギヤ102を第三軸103上で左右にスライドさせることにより、従動側ギヤ102が3個の駆動側ギヤ101a・101b・101cのうちの何れかと噛み合うように切り替えられる構成となっている。尚、第三軸103は、その軸表面に形成したスプライン104を介して従動側ギヤ102と一体回転する構成となっている。
【0036】
従動側ギヤ102のスライドは、従動側ギヤ102に連繋するスライドシフタである選択機構105の左右スライドにより行われる。選択機構105は、従動側ギヤ102に連係する連係部106と、該連係部106と一体で左右方向に延びるスライド軸107を備え、スライド軸107の端部が植付伝動ケース26の左右他方側(右側)の側面から突出しており、スライド軸107の端部に切替操作グリップ108を固着している。従って、作業者が切替操作グリップ108を左右に操作することにより、選択機構105が左右に移動して連係部106の左右位置が切り替えられ、第三軸103への伝動比が切り替えられる。この選択機構105による伝動比の切替構成は、走行速度に対する植付装置19の作動速度を変更して植付株間を変更する株間変速装置となる。スライド軸107は、第三軸103の上方で第三軸103の前端よりも後側に配置され、連係部106を含めた選択機構105は、第三軸103の上側で第三軸103よりも後側に配置されている。
【0037】
第三軸103の左右一方側(左側)の端部には、第三軸103と一体回転する第二駆動スプロケット109を設け、第二の駆動スプロケット109から伝動チェーンである第二無端体110を介して第二従動スプロケット111へ伝動する。該第二の従動スプロケット111は、左右方向の第四軸となる揺動カム駆動軸62上で遊転する構成であり、揺動カム駆動軸62上に設けた植付クラッチ112の駆動体としての駆動側爪体113と一体で回転する。植付クラッチ112は、伝動を断つときには所定の回転位相(定位置)で停止する定位置停止クラッチであり、植付装置19の植付具28を作動する軌跡17上の上死点を越えて若干下降した位置で停止させる。植付クラッチ112は、第二従動スプロケット111の左右他方側(右側)に配置され、駆動側爪体113と噛み合う従動体としての従動側爪体114が揺動カム駆動軸62と一体回転し且つ軸方向に左右移動する構成となっており、揺動カム駆動軸62への伝動の入切をする。なお、駆動側爪体113と従動側爪体114には、互いに噛み合う4つの係合爪113aと4つの114aが各々に設けられている。
【0038】
即ち、従動側爪体114は、揺動カム駆動軸62に軸方向に左右移動自在に装着されている。そして、従動側爪体114の中央部に設けた軸孔114’には、軸方向に貫通したキー溝114bを設け、該キー溝114bが揺動カム駆動軸62に設けたキー62aに嵌合する構成となっている。従って、従動側爪体114は、揺動カム駆動軸62と一体回転すると共に、揺動カム駆動軸62上を軸方向に左右移動自在に装着された構成となっている。
【0039】
そして、植付クラッチ112の従動側爪体114の外周面には、従動側爪体114を駆動側爪体113から離して植付クラッチ112を切り、植付装置19の植付具28を上記の定位置で停止させるための操作カム115を形成している。該操作カム115は、後記の接当体としての操作ピン116aが接当して揺動カム駆動軸62が矢印イ方向に回転することにより、従動側爪体114が駆動側爪体113から離れる方向に移動し、両者の係合を断ち植付クラッチ112を切る傾斜面115aと、従動側爪体114が駆動側爪体113から離れて植付クラッチ112が切れた後に操作ピン116aが接当して植付装置19の植付具28を上記の定位置で停止させる接当面115bとによって構成されている。
【0040】
そして、上記の従動側爪体114が駆動側爪体113から離れて植付クラッチ112が切れるタイミングは、昇降リンク機構29によって植付具28がその軌跡17の最上昇位置を少し過ぎた位置に来た時にしている。従って、植付クラッチ112は、最上昇位置を少し過ぎた植付具28の下動しようとする慣性力により確実に切れる。そして、植付クラッチ112が確実に切れた後、植付具28の下動しようとする慣性力は、操作ピン116aが接当している傾斜面115aと従動側爪体114を付勢している下記の圧縮バネである植付クラッチスプリング117の付勢力により徐々に小さくなって、操作ピン116aが接当面115bに接当して植付具28を定位置で適正に停止させる。
【0041】
また、上記の操作カム115に対向する操作ピン116aを先端に設けた植付クラッチ操作機構116が、操作カム115側(前側)に突出して操作ピン116aが操作カム115に接触することにより上記のように植付クラッチ112の伝動を断つ構成となっている。逆に、植付クラッチ操作機構116が操作カム115とは反対側(後側)に戻って操作カム115から離れると、従動側爪体114を駆動側爪体113側(左側)へ押し付ける植付クラッチスプリング117により、駆動側爪体113と従動側爪体114が噛み合って植付クラッチ112が伝動状態となる。
【0042】
この時、従動側爪体114には、操作カム115終端部の接当面115bを設けた部位に操作カム115部位よりも外周方向に突出した円弧状の凸部115cを設けている。そして、円弧状の凸部115cは、その接当面115bの従動側爪体114が植付クラッチスプリング117により付勢されて移動する方向(植付クラッチ112が入りになる方向)の後側角部を斜めに削って接当体案内斜面115dを形成している。
【0043】
従って、植付クラッチ112の伝動を入りにする場合に、操作ピン116aを操作カム115から離れる方向に移動させて、操作ピン116aが接当面115bの円弧状の凸部115cの接当体案内斜面115dに移動した時に、操作ピン116aが接当体案内斜面115dを滑るように移動して従動側爪体114が植付クラッチスプリング117により付勢されて従動側爪体114が駆動側爪体113に強制的に噛み合うように作用し、植付クラッチ112は適確に且つ迅速に伝動入りの状態となる。よって、操作ピン116aが接当面115bから離れて昇降リンク機構29による植付具28の下降するタイミングと植付クラッチ112の伝動入りによる駆動タイミングとが殆ど同じになり、適正に植付具28は昇降リンク機構29にて駆動作動される。
【0044】
また、従動側爪体114が駆動側爪体113に噛み合って植付クラッチ112が伝動入りになった状態では、操作ピン116aは凸部115cの従動側爪体114と反対の側面115eに対向する位置にあり、操作ピン116aが従動側爪体114の回転を阻害することはない。
【0045】
然も、円弧状の凸部115cは、昇降リンク機構29によって植付具28が下降し始めて、植付具28が畝U上面に突入して畝Uに苗を植付け終えるまでの間、操作ピン116aと対向する位置にある。従って、植付具28が畝U上面に突入して畝Uに苗を植付ける時の植付け負荷によって揺動カム駆動軸62に駆動負荷が掛かっても、操作ピン116aが円弧状の凸部115cの側面115eに対向する位置にある為に、操作ピン116aが円弧状の凸部115cの側面115eに接当して、従動側爪体114が駆動側爪体113から離れることを阻止し、植付クラッチ112の伝動が切れることが防止でき、適切な苗の移植作業が行える。
【0046】
尚、植付クラッチ操作機構116は、揺動カム駆動軸62の後方で揺動カム駆動軸62よりも後側に配置されている。そして、操縦ハンドル16の左右中間位置に機体後方に向けて設けられた植付けクラッチレバー135を作業者が植付けクラッチ切り方向に操作すると、植付クラッチ操作機構116の操作ピン116aが操作カム115側(前側)に突出して操作ピン116aが操作カム115に接触することにより上記のように植付クラッチ112の伝動を断つ。逆に、植付けクラッチレバー135を作業者が植付けクラッチ入り方向に操作すると、植付クラッチ操作機構116の操作ピン116aが操作カム115とは反対側(後側)に戻って操作カム115から離れ、植付クラッチスプリング117により駆動側爪体113と従動側爪体114が噛み合って植付クラッチ112が伝動状態となる。
【0047】
揺動カム駆動軸62の左右一方側(左側)の端部は、植付伝動ケース26から突出しており、植付伝動ケース26の左右一方側(左側)の側面に固着された植付装置駆動ケース27内を貫通し、更に植付装置駆動ケース27の左右一方側(左側)の側面から突出している。植付装置駆動ケース27内において、揺動カム駆動軸62と一体回転する第三駆動スプロケット118を設け、第三駆動スプロケット118からチェーンである第三無端体119を介して第三従動スプロケット120へ伝動し、第三従動スプロケット120と後述するクランクアーム駆動軸61が一体回転する。なお、クランクアーム駆動軸61は、揺動カム駆動軸62と同じ高さで揺動カム駆動軸62の後方に配置されている。また、第三無端体119の上方には、第三無端体119に接触して第三無端体119に張力を与える板ばね120を設けている。
【0048】
一方、揺動カム駆動軸62の左右他方側(右側)の端部には、供給部伝動用の一対のベベルギヤ121a・121bを設けており、供給部伝動用の一対のベベルギヤ121a・121bを介して植付伝動ケース26の後側に突出する供給部用動力取出軸122へ伝動する構成となっている。供給部用動力取出軸122からの伝動により、供給部31が駆動回転する構成である。
【0049】
植付伝動ケース26内の伝動軸の配置構成について説明すると、第一軸95よりも第二軸100を後側且つ上側に配置し、第二軸100の後方(第二軸100と略同じ高さの位置)に第三軸103を配置し、第三軸103の上方(第三軸103と略同じ前後位置)に第四軸(揺動カム駆動軸)62を配置している。そして、植付伝動ケース26は、第二軸100と第四軸62の間で第三軸103の斜め前上側で且つ植付伝動ケース26の前側上面に凹部123を形成している。
【0050】
そして、原動機11及び主伝動ケース12の上方を覆う機体カバー124を設けており、該機体カバー124の後部124aを植付伝動ケース26の凹部123に突入させて配置している。機体カバー124には、植付伝動ケース26の左右一方側(左側)で植付伝動ケース26の凹部123よりも後側に延ばした延長部124bを形成し、該延長部124bを昇降リンク機構29の前部(後述する前揺動アーム50及び後揺動アーム51)の上方に配置している。
【0051】
植付装置19は、上部に形成した開口から苗を受けるとともに左右に開閉可能な先端が尖ったカップ状の植付具28と、該植付具28を昇降駆動する昇降リンク機構29で構成される。尚、昇降リンク機構29は、植付装置駆動ケース27に取り付けられている。
【0052】
リンク機構である昇降リンク機構29は、植付装置駆動ケース27に上端が揺動カム駆動軸62と上後軸60にそれぞれ回動自在に連結され、下端がそれぞれ下前軸63と下後軸65にて回動自在に連結支持板68にて連結されて前後に平行に設けられた前揺動アーム50と後揺動アーム51を備える。また、連結支持板68の上軸64と下後軸65に前端がそれぞれ回動自在に連結され、後端がそれぞれ植付具28の支持板72に設けた回動上軸73と回動下軸74に回動自在に連結された平行な上アーム52および下アーム53を備える。
【0053】
植付装置駆動ケース27の左右一方側(左側)の側面から突出するクランクアーム駆動軸61に基部が固着されて回転する第2揺動用部材55と、第2揺動用部材55の先端に設けた第一の連結軸66に回動自在に一端が枢支され、他端が下アーム53の前後途中部分に設けた第二の連結軸67に回動自在に連結された連結アーム56を備える。
【0054】
また、揺動カム駆動軸62に固定されて回転する揺動駆動カム54を備え、揺動駆動カム54の周縁部に当接するように、後揺動アーム51の上後軸60寄りの途中部分に回動自在に回動ローラ57が設けられている。
【0055】
また、植付装置駆動ケース27に設けられた支持ピンと後揺動アーム51の下端部の間に設けられて、前揺動アーム50および後揺動アーム51を前側へ向けて付勢し、揺動駆動カム54と回動ローラ57を当接させる引張バネを備えている。
【0056】
なお、植付具28の下部は、嘴状の左側部材70Lと右側部材70Rから構成されており、左側部材70Lと右側部材70Rは閉じた状態で内部に苗を保持して、植付けの軌跡17の最下端で左右に開いて畝内で苗を植付ける一般的な構成である。
【0057】
次に、上記昇降リンク機構29の作動によって、植付具28の下端が植付けの軌跡17(静軌跡:機体を停止した状態の軌跡)を描いて植付具28が苗を畝Uに移植する作用を説明する。
【0058】
揺動カム駆動軸62がB方向に回転することにより、揺動カム駆動軸62に固定されている揺動駆動カム54はB方向に回転し、揺動駆動カム54に当接する回動ローラ57を介して前揺動アーム50および後揺動アーム51が前後に揺動する。
【0059】
一方、クランクアーム駆動軸61が回転することにより、クランクアーム駆動軸61に固定されている第2揺動用部材55がC方向に回動し、連結アーム56を介して下アーム53および上アーム52が上下に揺動する。
【0060】
したがって、前揺動アーム50および後揺動アーム51と、上アーム52および下アーム53は、いずれも平行リンク機構であるから、植付具28は垂直方向を向いた姿勢を維持してその下端が植付け軌跡17を描いて作動し、植付具28内に受け入れられた苗を適正な姿勢で畝に植付けることができる。
【0061】
苗が植付具28に供給される位置、すなわち植付具28が作動する軌跡17の上死点付近にある場合の、揺動駆動カム54が回動ローラ57と当接している位置における揺動駆動カム54の径の変化は小さくなるように、また、苗を植え付ける位置、すなわち植付具28が下死点付近にある場合の、揺動駆動カム54が回動ローラ57と当接している位置における揺動駆動カム54の径の変化は大きくなるように、揺動駆動カム54の形状および揺動駆動カム54が揺動カム駆動軸62に固定される向きが設定されている。
【0062】
揺動駆動カム54の形状および揺動カム駆動軸62に固定される向きをこのように構成することにより、植付具28の先端の移動速度を、苗を植え付けるときよりも、苗を供給するときを極めて遅くすることができる。
【0063】
また、上死点および下死点では、第2揺動用部材55と連結アーム56が、鉛直方向で直線状に重なる位置となり、かつ、前揺動アーム50および後揺動アーム51と平行になる構成としている。従って、苗が植付具28に供給されるとき、すなわち植付具28が上死点付近にあるときと、苗を植え付ける位置、すなわち植付具28が下死点付近にあるときの、第2揺動用部材55の回転による連結アーム56の上下方向の位置の変化は小さくなるように、第2揺動用部材55の向きが設定されている。この構成により、植え付け動作時に、植付具28の先端によって、ループ状の軌跡17を描かせるように動作させ、上死点付近(苗が供給される位置)における植付具28の移動速度が、下死点(苗が植え付けられる位置)における移動速度よりも遅くなるようにしている。
【0064】
さらに、植付具28の先端によって描かれる軌跡17が、植え付けるときの前後の幅が最大となるように、すなわち植付具28の上下動する幅の中心よりも下部で前後の幅が最大となるようにしている。
【0065】
また、植付装置19の上アーム52及び下アーム53からなる平行状のリンク機構を、1つの第2揺動用部材55により動作させている。一軸の第2揺動用部材55で駆動するため、伝動系のガタによる植付不具合を抑制することができる。
【0066】
また、上記昇降リンク機構29を、揺動駆動カム54によって前後移動させている。揺動駆動カム54を用いる構成なので、植付具28の先端が描く軌跡17の前後幅を自由に設定することができる。
【0067】
また、揺動駆動カム54を、前揺動アーム50の支点である揺動カム駆動軸62を中心に回転させる構成としているので、簡単な構成となり、植付装置19の小型化を図ることができる。
【0068】
また、揺動駆動カム54に当接する回動ローラ57を、後揺動アーム51の長手方向の中央位置よりも上後軸60に近い位置、すなわち前揺動アーム50の支点である揺動カム駆動軸62に近い位置に配置しているので、揺動駆動カム54の支点との距離を短くでき、揺動駆動カム54を小さくできる。揺動駆動カム54を小さくできるので、植付装置19の小型化を図ることができる。
【0069】
また、植付具28の先端が描く静軌跡となる軌跡17は、下死点付近で円形状となっているので、移植機10の走行を加味した動軌跡は、下死点付近では直線的に上下する軌跡となり、苗等の移植対象物をきれいに植え付けることができる。さらに、植付具28の先端が描く軌跡17を、植え付け深さの範囲で円形状となるように調整するのが望ましい。植付具28が土中に突入する範囲で円形状の静軌跡とすることにより、植穴を小さくすることができる。
【0070】
また、植付具28の先端が描く軌跡17を、植え付け深さよりも上方では前後幅が小さくなる形状としたことにより、植付具28が上昇するときの前側への移動量を大きくでき、植付具28の先端が、植え付けた苗等を引っ掛けないようにできる。
【0071】
また、引張バネにより後揺動アーム51へ斜め前上方への引き上げ力を与えているため、植付具28が植付位置へ向けて下降するときに、植付具28の自重により植付具28が急激に降下して軌跡17上での植付具28の作動速度が不適正となるのを防止できる。また、引張バネによる前記引き上げ力は、植付具28の自重に抗して下死点から植付具28が上昇するのをアシストするので、植付具28を安定して動作させることができる。
【0072】
また、第2揺動用部材55を、前側で上側へ移動し後側で下側へ移動するC方向へ回動させることにより、植付具28が作動するループ状の軌跡17に対して第2揺動用部材55が逆方向に回転することになるので、軌跡17の上死点付近における植付具28の移動速度を遅くさせ易く構成できる。上死点付近における植付具28の移動速度を遅くすることで、より確実に苗を植付具28へ供給させることができる。
【0073】
下死点付近では、前揺動アーム50および後揺動アーム51が、前方から後方へ向けて動作するのに対し、第2揺動用部材55の先端の第一の連結軸66は、後方から前方へ向けて回動する。前揺動アーム50および後揺動アーム51と、第2揺動用部材55が対向して動作するため、植付具28の上下動の速度が速くなる構成にでき、植え付けの株間が変化しても機体の走行を加味した土中における植付具28先端の動軌跡の変化は小さい。
【0074】
また、下死点付近において、第2揺動用部材55と連結アーム56が鉛直方向又は鉛直方向に近い方向で一直線上になるので、第2揺動用部材55による上下動と連結アーム56の傾きによる上下動が一致するため、植付具28の上昇速度を速くできる。
【0075】
さらに、下死点付近において、前揺動アーム50および後揺動アーム51が、第2揺動用部材55および連結アーム56と平行になるようにすることで、前揺動アーム50および後揺動アーム51の上下動が少なくなり、第2揺動用部材55および連結アーム56による上下動により、植付具28をより速く上昇させることができる。
【0076】
次に、植付具28を開閉するための開閉機構とその動作について説明する。
植付具28の開閉動作のためのカウンターアーム79を、上アーム52の一端(後端)に設けた回動上軸73に、回動自在に設けている。また、上アーム52の他端(前端)に設けた上軸64に、開閉アーム76を回動自在に設けており、開閉アーム76とカウンターアーム79を連結ロッド78により連結している。また、カウンターアーム79には、ピン80を設けている。尚、ターンバックル等の調節ねじにより、連結ロッド78のロッド長を調節できる構成としてもよい。また、揺動駆動カム54とともに揺動カム駆動軸62に固定されて回転する開閉駆動カム75を設けており、開閉駆動カム75の周縁部に接触する開閉用ローラ77を、開閉アーム76に回動自在に設けている。揺動カム駆動軸62の回転に伴って開閉駆動カム75が回転することにより、開閉用ローラ77を介して開閉アーム76を作動させる。
【0077】
植付具28の開閉動作については、カウンターアーム79が連結ロッド78を介して開閉アーム76と並行して動作し、開閉アーム76は、開閉用ローラ77を介して開閉駆動カム75によって動作する。よって、簡易な形状の開閉駆動カム75によって開閉タイミングと開閉量を高精度で設定できる。
【0078】
植付具28に備えるホルダ71を、左ホルダ71Lおよび右ホルダ71Rで構成し、左ホルダ71Lを左側部材70Lに一体で固着し、右ホルダ71Rを右側部材70Rに一体で固着している。左ホルダ71Lは前後方向の左支点軸125回りに回動し、右ホルダ71Rは前後方向の右支点軸126回りに回動する構成であり、植付具28の左右方向中央位置に設けた連動用軸127により、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rを連結している。また、左ホルダ71Lと一体で設けた回動操作アーム128に、上下方向に延びる開閉ロッド131を連結し、カウンターアーム79のピン80を開閉ロッド131に連結している。尚、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rの間には開閉用スプリング130を設けており、該開閉用スプリング130のスプリング力により、左側部材70Lと右側部材70Rが互いに左右方向内側に押圧され、植付具28の下部が閉じる構成となっている。また、開閉用スプリング130のスプリング力により、開閉用ローラ77ひいては開閉アーム76が開閉駆動カム75側(上側)に押し付けられる。
【0079】
揺動カム駆動軸62の回転と共に開閉駆動カム75が回転すると、開閉用ローラ77が開閉駆動カム75の周縁形状にしたがって移動し、開閉アーム76が揺動する。開閉アーム76の揺動に伴って、連結ロッド78が前後方向に作動し、カウンターアーム79が回動し、開閉ロッド131が上下方向に作動し、回動操作アーム128を介して左ホルダ71Lを回動するとともに連動用軸127を介して右ホルダ71Rを回動し、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rを背反的に互いに左右対称位置へ回動させて植付具28の下部を開閉する。具体的には、連結ロッド78の前側への作動に伴って、開閉ロッド131を上側へ作動し、植付具28の下部を開く。なお、植付具28の上昇時、開閉駆動カム75の外周の局所的な突起部により、植付具28の下部を一時的に大きく開いて、別途設けた清掃用のスクレーパが植付具28内を上下方向に通過できる構成としている。
【0080】
これにより、軌跡17の上死点付近から下降する行程では、植付具28の下部が閉じた状態となり、下死点で植付具28の下部が開き、下死点から上昇する行程では植付具28の下部が開いた状態となる。
【0081】
なお、開閉駆動カム75を、第2揺動用部材55を駆動するクランクアーム駆動軸69に固定し、第2揺動用部材55と一体に回転する構成としてもよい。
また、本実施の形態では、上アーム52の連結支点軸である上軸64に開閉アーム76を取り付けているので、簡単な構成となっている。なお、連結ロッド78が、昇降リンク機構29の昇降位置に拘らず、上アーム52および下アーム53と平行であるので、開閉駆動カム75により植付具28の開き量を高精度で設定できる。また、開閉アーム76およびカウンターアーム79を何れも上アーム52の回動支点軸に連結した構成としているので、連結ロッド78が上アーム52に沿って配置され、コンパクトな構成となっている。また、開閉駆動カム75を、揺動駆動カム54とともに前揺動アーム50の回動支点軸である揺動カム駆動軸62に取り付けているので、簡単な構造となっている。
【0082】
植付具28の上下方向の上下動速度と前後方向の前後動速度を合成した絶対速度は、下死点では速いのに対し、上死点では非常に遅くなる。つまり、植付具28は、下死点付近では、比較的早く移動しているのに対し、上死点では、ゆっくりと移動しており停止に近い状態になっている。つまり、供給カップ33から苗が供給される上死点付近では、植付具28の速度が非常に遅くなっているので、供給カップ33から確実に苗を供給させることができる。なお、上死点付近では、前後方向の前後動速度が10mm/s以下になる時間が0.21秒あり、供給カップ33から確実に苗を供給できる時間であることを確認できた。これにより、従来のような間欠植付機構が不要にできる。
【0083】
また、機体の走行を加味した動軌跡は、株間50cmで、土壌面を想定した下死点から75mm上方での前後幅は4.9mmであり、また、株間40cmおよび60cmでは、19.1mmおよび20.2mmであり、実際の植付けにおいて植付穴があまり大きくならずに問題なく植え付け可能であることを確認できた。
【0084】
よって、植付具28の上死点での移動速度を小さく(停止時間を大きく)できるので、従来のような上死点で植付具28への伝動を停止して該植付具28を間欠的に作動させる間欠植付機構を設けなくても、植付具28への伝動比を変更するだけで種々の株間で適正な動軌跡により植え付けることができる。
【0085】
次に、図20に示すように植付具28にて畝Uに植付けた苗の周囲に浅い凹み状の穴140を形成すると、苗を植付けた後や植付けと同時に、苗の周囲に形成した浅い凹み状の穴140内に水を潅水したり肥料を施肥したり薬剤を施薬したりすることができて、植付けた苗の活着や育成管理が容易に行なえる。従って、穴140の深さD1は、植付具28にて畝Uに植付けた苗の植付け深さD2よりも浅い。
【0086】
そこで、上記の植付具28にて圃場に植付けた苗の周囲に浅い凹み状の穴140を形成する作穴機構141について説明する。
前記クランクアーム駆動軸61は、植付伝動ケース26の植付装置駆動ケース27から左右に突出して設けられている。そして、該クランクアーム駆動軸61の左側突出部には、前記のように第1揺動リンクおよび前記第2揺動リンクを作動させることによって植付具28の先端にループ状の軌跡17を描かせる第2揺動用部材55が装着されている。また、クランクアーム駆動軸61の右側突出部には、作穴装置142を強制的に下動させる作穴装置駆動カム147aが装着されている。
【0087】
そして、作穴装置142は、植付装置駆動ケース27に基部が回動自在に軸支された平行リンク機構143と該平行リンク機構143の先端部に設けた筒部144に上下位置調節自在に支持された作穴体145と該作穴体145を上方に向けて付勢する引張バネ146と平行リンク機構143に回動自在に軸支され前記作穴装置駆動カム147aに接当する従動カムローラ147bによって構成されている。
【0088】
そして、作穴体145は、側面視で前端が下方程後方位置となる傾斜先端部145aを備え、平面視でコ字状の内部空間145bが構成された形状で、下部が圃場に突入することにより、圃場面に浅い凹み状の穴140を形成する構成となっている。また、作穴体145の前部には上方に向けて設けた支持軸148の基部が固着されている。該支持軸148には、高さ調節用の貫通穴148aが上下方向に等間隔で複数設けられており、該支持軸148の上部を前記平行リンク機構143先端部の筒部144に下方から挿入し、固定ピン149をその何れかの貫通穴148aに差し込むことによって、作穴体145の上下高さ位置を調節して平行リンク機構143先端部に固定できる構成となっている。従って、作穴体145の上下高さ位置を調節することによって、圃場面に形成する浅い凹み状の穴140の深さD1を調節することができる。
【0089】
また、作穴装置142の作穴体145を強制的に下動させる作穴装置駆動カム147aの形状及び平行リンク機構143に設けた従動カムローラ147bに接当して作穴体145を上下作動させるタイミングは、次のとおりである。尚、作穴体145の上動は、引張バネ146の引き上げ力で行なわれ、即ち、引張バネ146の引き上げ力で作穴装置駆動カム147aと従動カムローラ147bが常に接当するように引張バネ146の引き上げ力で作穴体145が上動する方向に付勢されている。
【0090】
即ち、クランクアーム駆動軸61の左側突出部に基部を固着した第2揺動用部材55にて作動する第1揺動リンクおよび前記第2揺動リンクによりループ状の軌跡17を描いて作動する植付具28が、最上昇位置から下降し始めるのに同期して作穴装置142を強制的に下動させ、植付具28が圃場に突入する前に先に作穴装置142が圃場に突入して圃場表面に浅い凹み状の穴140を形成し始め、その後、植付具28が作穴装置142の作穴体145後部の平面視でコ字状の内部空間145b内で圃場に突入して苗を植付ける。その後、植付具28が圃場から抜け出るのに同期して作穴体145は圃場から離れる。
【0091】
従って、植付具28が圃場に突入する前に圃場に突入して圃場表面に浅い凹み状の穴140を形成している作穴装置142の作穴体145後部の平面視でコ字状の内部空間145b内で植付具28が圃場に突入して苗を植付けるので、植付具28は作穴体145で圃場表面の土が左右に排除された状態で且つ作穴体145で防護された状態で苗を植付けることができるので、適正で苗の植付け姿勢が良い良好な苗の植付けが行なえる。また、植付具28にて畝Uに植付けた苗の周囲に適切に作穴装置142が浅い凹み状の穴140を形成するので、苗を植付けた後や植付けと同時に、苗の周囲に形成した浅い凹み状の穴140内に水を潅水したり肥料を施肥したり薬剤を施薬したりすることができて、植付けた苗の活着や育成管理が容易に行なえる。更に、植付具28を上下作動させる駆動軸であるクランクアーム駆動軸61にて、作穴装置142を作動させる構成としたので、植付具28と作穴装置142が同じ駆動軸で駆動されて両者に駆動タイミングの誤差が生じることが少なくなり、良好な苗の植付けと苗の周囲に浅い凹み状の穴140の形成とが行なえて、移植後の苗の活着や管理が容易になる。
【0092】
以上により、この移植機10は、原動機11から主伝動ケース12を介して走行推進体へ伝動するとともに、該主伝動ケース12から植付伝動ケース26を介して植付装置19へ伝動する構成とし、該植付伝動ケース26を、該主伝動ケース12の後側に配置すると共に、前側上面に凹部123を形成して構成し、該原動機11及び該主伝動ケース12の上方を覆う機体カバー124の後部124aを、該凹部123に突入させている。
【0093】
よって、機体カバー124の後部124aを植付伝動ケース26の凹部123に突入させて後寄りに位置させることができるため、機体の前後長を短縮して機体をコンパクトに構成できると共に、機体カバー124により植付伝動ケース26の前下部を含めて機体の構造物を有効に覆うことができ、降雨等から機体の構造物を的確に遮ることができて、機体の耐久性が向上する。
【0094】
また、植付装置19を、植付具28と、該植付具28を昇降させる昇降リンク機構29で構成し、昇降リンク機構29を植付伝動ケース26の左右一方側に配置し、機体カバー124には、植付伝動ケース26の前記左右一方側で植付伝動ケース26の凹部123よりも後側に延ばした延長部124bを形成し、該延長部124bを昇降リンク機構29の上方に配置している。
【0095】
よって、機体カバー124の延長部により、昇降リンク機構29を含めて機体の構造物を有効に覆うことができ、降雨等から昇降リンク機構29を含む機体の構造物を的確に遮ることができて、機体の耐久性が向上する。また、作動する昇降リンク機構29に作業者が触れることを防止でき、安全性が向上する。
【0096】
また、植付伝動ケース26内には、左右方向の第一軸95と、該第一軸95から伝動される左右方向の第二軸100と、該第二軸100から伝動される左右方向の第三軸103と、該第三軸103から伝動される左右方向の第四軸62を設け、第一軸95よりも第二軸100を後側且つ上側に配置し、第二軸100の後方に第三軸103を配置し、第三軸103の上方に第四軸62を配置し、第二軸100と第四軸62の間で第三軸103の斜め前上側に、凹部123を形成している。
【0097】
よって、植付装置19への伝動に適させるべく高位に第四軸62を配置しながら、植付伝動ケース26の前下部を機体カバー124の直下に位置させることができて、植付伝動ケース26の凹部123を機体カバー124の位置に合わせて合理的に形成でき、機体カバー124により植付伝動ケース26の前下部を含めて機体の構造物を有効に覆うことができる。
【0098】
また、第一軸95から第一の無端体98を介して第二軸100へ伝動し、第二軸100から互いに噛み合う駆動側ギヤ101及び従動側ギヤ102を介して第三軸103へ伝動し、第三軸103から第二の無端体110を介して第四軸62へ伝動する構成とし、歯数を異ならせて駆動側ギヤ101を複数設け、複数の駆動側ギヤ101のうち伝動する駆動側ギヤ101を選択する選択機構を、第三軸103から後側に配置し、植付装置19への伝動を入切する植付クラッチ112を第四軸62上に設け、植付クラッチ112を操作する植付クラッチ操作機構116を、第四軸62から後側に配置している。
【0099】
よって、選択機構105を、第三軸103から後側に配置するとともに、植付クラッチ操作機構116を第四軸62から後側に配置したので、選択機構105及び植付クラッチ操作機構116が機体カバー124よりも後側に離れて配置され、選択機構105及び植付クラッチ操作機構116を機体カバー124が邪魔にならずに配置でき、選択機構105及び植付クラッチ操作機構116のメンテナンスも容易になる。
【0100】
また、植付装置19へ移植対象物を一個ずつ供給する供給部31を設け、第四軸62の植付クラッチ112及び第二の無端体110よりも左右一方側から植付装置19へ伝動し、第四軸62の植付クラッチ112及び第二の無端体110よりも左右他方側から供給部31へ伝動する構成としている。
【0101】
よって、植付装置19と供給部31への伝動機構を、第四軸62上で植付クラッチ112及び第二の無端体110の左右に振り分けて配置でき、伝動機構を合理的且つコンパクトに配置することができ、伝動機構の簡素化及び機体のコンパクト化を図ることができる。
【0102】
また、移植対象物を植え付ける植付具28と、所定方向に揺動する第1揺動リンクと、一端が前記第1揺動リンクに連結され、他端が前記植付具に連結し、別の所定方向に揺動する第2揺動リンクとを有するリンク機構29と、前記第1揺動リンクを作動させる第1揺動用部材54と、前記第2揺動リンクを作動させる第2揺動用部材55を備え、前記第1揺動用部材54および前記第2揺動用部材55が、前記第1揺動リンクおよび前記第2揺動リンクを作動させることによって、前記植付具28の先端にループ状の軌跡17を描かせるとともに、前記植付具28の先端の速度を、前記移植対象物を植え付ける位置におけるよりも前記移植対象物が供給される位置における方が遅くなる構成としている。
【0103】
よって、植付具28の先端にループ状の軌跡17を描かせるとともに、植付具28の先端の速度が、移植対象物を植え付ける位置におけるよりも移植対象物が供給される位置における方が遅くなるので、上下動を繰り返す植付具28へ確実に移植対象物を供給させることができる。
【0104】
また、植付具28の先端の上下動する幅の中心位置よりも下方の位置で、軌跡17の前後幅が最大となる構成としている。
よって、植付具28の先端の上下動する幅の中心位置よりも下方の位置で、静軌跡17の前後幅が最大となるので、移植機走行時の動軌跡は、直線的に上下する軌跡となり、移植対象物をきれいに植え付けることができる。
【0105】
また、前記第1揺動リンクおよび前記第2揺動リンクは、それぞれ2本あり、前記第1揺動用部材54は、一方の前記第1揺動リンクに作用し、前記第2揺動用部材55は、一方の前記第2揺動リンクに作用する。
【0106】
これにより、第1揺動用部材54は、一方の第1揺動リンク50に作用するので、複数の第1揺動リンクに作用する場合に比べて、伝動系のガタによる植付不具合を抑制することができる。また、伝動構成が簡単になる。同様に、第2揺動用部材55は、一方の第2揺動リンクに作用するので、複数の第2揺動リンクに作用する場合に比べて、伝動系のガタによる植付不具合を抑制することができる。また、伝動構成が簡単になる。
【0107】
また、前記第1揺動用部材54は、前記2本の第1揺動リンクのうちの他方の前記第1揺動リンクの回動支点軸を兼用する駆動軸62によって駆動される。
これにより、第1揺動用部材54は、2本の第1揺動リンクのうちの他方の第1揺動リンク51の回動支点軸を兼用する駆動軸62によって駆動されるので、植付装置の小型化を図ることができる。
【0108】
また、前記駆動軸60によって駆動される前記第1揺動用部材54は、前記一方の第1揺動リンク50の中央位置よりも、前記一方の第1揺動リンク51の回動支点軸60に近い位置に作用する。
【0109】
これにより、駆動軸62によって駆動される第1揺動用部材54は、一方の第1揺動リンク51の中央位置よりも、一方の第1揺動リンク51の回動支点軸60に近い位置に作用するので、第1揺動用部材54を小さくすることができ、植付装置の小型化を図ることができる。
【0110】
また、前記第1揺動用部材54は、周縁部によって前記第1揺動リンク51に作用する板状のカム54であり、前記第2揺動用部材55は、連結アーム56を介して前記第2揺動リンク53に連結される第2揺動用部材55であり、植付具28の先端が前記移植対象物が供給される位置に存在する場合の前記カム54の径の変化は、前記植付具28の先端が前記移植対象物を植え付ける位置に存在する場合の前記カム54の径の変化よりも小さく、前記植付具28の先端が、前記移植対象物が供給される位置に存在する場合および前記移植対象物を植え付ける位置に存在する場合では、前記第2揺動用部材55が鉛直または鉛直に近い向きとなる。
【0111】
これにより、第1揺動用部材54を、周縁部によって第1揺動リンク51に作用する板状のカム54とし、植付具28の先端が移植対象物が供給される位置に存在する場合のカム54の径の変化を、植付具28の先端が移植対象物を植え付ける位置に存在する場合のカム54の径の変化よりも小さくしたので、移植対象物を植え付ける位置におけるよりも、移植対象物が供給される位置における速度を遅くすることができる。したがって、移植対象物を、より確実に植付具28に供給させることができる。
【0112】
また、植付具28の先端が前記移植対象物を植え付ける植付位置またはその近傍に存在する場合で、前記第2揺動用部材55および前記連結アーム56は、直線状に重なり、前記第2揺動用部材55および前記第1揺動リンク51は、互いに平行となる。
【0113】
これにより、植付具28の先端が移植対象物を植え付ける位置に存在する場合では、第2揺動用部材55および連結アーム56は、直線状に重なるので、第2揺動用部材55による上下動と、連結アーム56の傾きによる上下動が一致し、植付具28の動きを速くできる。また、植付具28の先端が移植対象物を植え付ける位置に存在する場合では、第2揺動用部材55および第1揺動リンク51が、互いに平行となるので、第1揺動リンク51の上下動が少なくなり、第2揺動用部材55および連結アーム56による上下動で、植付具28をより速く移動させることができる。
【0114】
また、前記第1揺動リンク51および前記第2揺動リンク53と共に移動し、前記植付具28を開閉する開閉用部材76と、前記第1揺動用部材54または前記第2揺動用部材55と一体で駆動され、前記開閉用部材76を作動させる開閉用カム75とを備えている。
【0115】
これにより、第1揺動用部材54または第2揺動用部材55と一体で駆動され、開閉用部材76を作動させる開閉用カム75を備える構成としたので、植付具28を簡単な構成で実現できる。
【0116】
なお、本実施の形態では、前揺動アーム50および後揺動アーム51をカム(揺動駆動カム54)によって作動させ、上アーム52および下アーム53をクランク(第2揺動用部材55)によって作動させることとしたが、主に上下に揺動する上アームおよび下アームをカムによって作動させ、主に前後に揺動する前揺動アームおよび後揺動アームをクランクによって作動させる構成としてもよい。
【0117】
尚、機体前部に畝案内機構136が装着されており、左右前輪13及び左右後輪14が跨いで走行する畝Uに前記植付具28にて苗を植付けて苗移植作業を行う際に、該畝Uの左右面に畝案内機構136の左右ガイドローラ137が接当して、機体が畝Uに沿って走行するように案内する。
【0118】
次に、図21に基づいて、作穴機構141の第2実施例を説明する。
この例は、作穴機構141の駆動構成が上記の第1実施例と異なっている。
即ち、前記クランクアーム駆動軸61の右側突出部に作穴装置142を強制的に上下動させる作穴装置作動クランク150が装着されている。また、作穴装置作動クランク150は、基部がクランクアーム駆動軸61に固着されて回転する第1アーム150aと該第1アーム150aに基部が回動自在に軸支された第2アーム150bとで構成されている。そして、該第2アーム150bの先端部には上下動軸151の基部が回動自在に軸支され、該上下動軸151の先端部に回転ローラ152が回転自在に軸支されている。
【0119】
また、植付装置駆動ケース27にガイド体153を固定し、該ガイド体153に上下方向に延びる長孔154を形成し、該長孔154に前記回転ローラ152を嵌入して、作穴装置作動クランク150の回転作動にて回転ローラ152が長孔154内を上下往復移動する構成としている。
【0120】
そして、作穴装置142の作穴体145は、前記第1実施例と同様に側面視で前端が下方程後方位置となる傾斜先端部145aを備え、平面視でコ字状の内部空間145bが構成された形状で、下部が圃場に突入することにより、圃場面に浅い凹み状の穴140を形成する構成となっている。また、作穴体145の前部には上方に向けて設けた支持軸148の基部が固着されている。そして、該支持軸148上端部を回転ローラ152に固定している。
【0121】
従って、クランクアーム駆動軸61の回転により作穴装置作動クランク150が回転作動して、回転ローラ152が長孔154内を上下往復移動し、作穴装置142は第1実施例と同様に平行上下動作動する。尚、作穴装置142の作動タイミングと植付具28の植付け作動タイミングとは、前記第1実施例と全く同じで、植付具28が、最上昇位置から下降し始めるのに同期して作穴装置142を強制的に下動させ、植付具28が圃場に突入する前に先に作穴装置142が圃場に突入して圃場表面に浅い凹み状の穴140を形成し始め、その後、植付具28が作穴装置142の作穴体145後部の平面視でコ字状の内部空間145b内で圃場に突入して苗を植付ける。その後、植付具28が圃場から抜け出るのに同期して作穴体145は圃場から離れる方向に上動する。
【0122】
従って、植付具28が圃場に突入する前に圃場に突入して圃場表面に浅い凹み状の穴140を形成している作穴装置142の作穴体145後部の平面視でコ字状の内部空間145b内で植付具28が圃場に突入して苗を植付けるので、植付具28は作穴体145で圃場表面の土が左右に排除された状態で且つ作穴体145で防護された状態で苗を植付けることができるので、適正で苗の植付け姿勢が良い良好な苗の植付けが行なえる。また、植付具28にて畝Uに植付けた苗の周囲に適切に作穴装置142が浅い凹み状の穴140を形成するので、苗を植付けた後や植付けと同時に、苗の周囲に形成した浅い凹み状の穴140内に水を潅水したり肥料を施肥したり薬剤を施薬したりすることができて、植付けた苗の活着や育成管理が容易に行なえる。更に、植付具28を上下作動させる駆動軸であるクランクアーム駆動軸61にて、作穴装置142を作動させる構成としたので、植付具28と作穴装置142が同じ駆動軸で駆動されて両者に駆動タイミングの誤差が生じることが少なくなり、良好な苗の植付けと苗の周囲に浅い凹み状の穴140の形成とが行なえて、移植後の苗の活着や管理が容易になる。
【0123】
次に、図22に基づいて、作穴機構141の第3実施例を説明する。
この例は、作穴機構141の上下駆動構成が上記の第1及び第2実施例と異なっている。
【0124】
即ち、作穴装置142は、その板金製の作穴フレーム160後部が植付具28の近くで主フレーム22に固着した作穴装置支持アーム161に回動支軸162にて回動自在に軸支されている。そして、作穴フレーム160の前側上部には、ウエイトを兼用した鋳物よりなる前端部に従動カム163を設けた前部フレーム164が固定されている。また、該前部フレーム164に前実施例と同じ作穴体145の支持軸148上端部が上下位置調節自在に固定されている。
【0125】
一方、クランクアーム駆動軸61の右側突出部には、上記作穴装置142の従動カム163に下方から接当して作穴装置142を強制的に上動させる作動カム164が装着されている。
【0126】
従って、作穴装置142は、自重によって回動支軸162回りに回動して圃場に突入して圃場表面に浅い凹み状の穴140を形成する構成となっている。尚、165は作穴フレーム160後部に固定された回動ストッパであって、該回動ストッパ165が主フレーム22に接当することにより、作穴装置142の最下動位置が規制される構成となっている。
【0127】
そして、クランクアーム駆動軸61にて回動する作動カム164は、作穴装置142の従動カム163に下方から接当して作穴装置142を強制的に上動させて上動位置で所定期間のみ保持する働きをする。また、該作動カム164による作穴装置142の上下動作動のタイミングは、前例と全く同じで、植付具28が、最上昇位置から下降し始めるのに同期して作穴装置142の下動規制を解除して下動させ、植付具28が圃場に突入する前に先に作穴装置142が圃場に突入して圃場表面に浅い凹み状の穴140を形成し始め、その後、植付具28が作穴装置142の作穴体145後部の平面視でコ字状の内部空間145b内で圃場に突入して苗を植付ける。その後、植付具28が圃場から抜け出るのに同期して作穴体145は圃場から離れる方向に上動作動させられる。
【0128】
従って、植付具28が圃場に突入する前に圃場に突入して圃場表面に浅い凹み状の穴140を形成している作穴装置142の作穴体145後部の平面視でコ字状の内部空間145b内で植付具28が圃場に突入して苗を植付けるので、植付具28は作穴体145で圃場表面の土が左右に排除された状態で且つ作穴体145で防護された状態で苗を植付けることができるので、適正で苗の植付け姿勢が良い良好な苗の植付けが行なえる。また、植付具28にて畝Uに植付けた苗の周囲に適切に作穴装置142が浅い凹み状の穴140を形成するので、苗を植付けた後や植付けと同時に、苗の周囲に形成した浅い凹み状の穴140内に水を潅水したり肥料を施肥したり薬剤を施薬したりすることができて、植付けた苗の活着や育成管理が容易に行なえる。更に、植付具28を上下作動させる駆動軸であるクランクアーム駆動軸61にて、作穴装置142を作動させる構成としたので、植付具28と作穴装置142が同じ駆動軸で駆動されて両者に駆動タイミングの誤差が生じることが少なくなり、良好な苗の植付けと苗の周囲に浅い凹み状の穴140の形成とが行なえて、移植後の苗の活着や管理が容易になる。
【0129】
次に、図23に基づいて、作穴機構141の第4実施例を説明する。
この例は、作穴機構141が前例までと全く異なっている。
即ち、作穴装置142は、主フレーム22に基部を固着した左右支持アーム170に設けた左右支持軸171に基部を回動自在に軸支した左右作穴体172L・172Rにて構成され、植付具28が苗を圃場に植付ける際に下動する位置に対応して配置されている。そして、巻きバネ173が左右支持軸171に各々設けられてその両端部が左右支持アーム170と左右作穴体172L・172Rに係合し、該左右作穴体172L・172Rは、図23の実線で示す上動した状態になるように付勢されている。また、左右作穴体172L・172Rの先端部はL字状に曲げた構成としており、図23の実線で示す上動した状態ではその先端部172La・172Raは接当した垂直状になっている。尚、左右作穴体172L・172Rは、巻きバネ173に抗して機体左右方向に開いた時には、圃場面に浅い凹み状の穴140を形成する位置に装着されている。
【0130】
一方、植付具28が圃場に突入して苗を植付ける為に左右に開く部位の左右外側面に各々左右作穴体作動ローラ174が設けられている。
従って、植付具28が圃場に苗を植付ける為に下動してくると、植付具28の先端が左右作穴体172L・172Rの上面に接当し、植付具28の下動に伴って左右作穴体172L・172Rは巻きバネ173の付勢力に抗して機体左右方向に開く。すると、先ず、左右作穴体172L・172Rの先端部172La・172Raが略垂直状に圃場に突入し、その後機体左右方向に開き、圃場面に浅い凹み状の穴140を形成し始める。そして、植付具28が下動して圃場に突入して苗を植付ける際に左右に植付具28が左右に開くと、左右作穴体作動ローラ174が各々左右作穴体172L・172Rを機体左右方向に更に開かせて、植付具28の苗の植付けと同時に圃場面に浅い凹み状の穴140を形成する。
【0131】
従って、植付具28が圃場に突入する時に圃場に突入して圃場表面に浅い凹み状の穴140を形成している作穴装置142の左右作穴体172L・172R間で植付具28が圃場に突入して苗を植付けるので、植付具28は左右作穴体172L・172Rで圃場表面の土が左右に排除された状態で且つ左右作穴体172L・172Rで防護された状態で苗を植付けることができるので、適正で苗の植付け姿勢が良い良好な苗の植付けが行なえる。また、植付具28にて畝Uに植付けた苗の周囲に適切に作穴装置142が浅い凹み状の穴140を形成するので、苗を植付けた後や植付けと同時に、苗の周囲に形成した浅い凹み状の穴140内に水を潅水したり肥料を施肥したり薬剤を施薬したりすることができて、植付けた苗の活着や育成管理が容易に行なえる。更に、植付具28の上下作動にて、作穴装置142を作動させる構成としたので、簡潔な構成で良好な苗の植付けと苗の周囲に浅い凹み状の穴140の形成とが行なえる。
【0132】
次に、図24に基づいて、作穴機構141の第5実施例を説明する。
この例は、作穴機構141を植付具28自体に設けた構成である。
即ち、植付具28の上部に左右作穴体180L・180Rを各々左右支持アーム181L・181Rを介して左右支点軸125・126に各々回動自在に支持し、左右支持アーム181L・181Rを植付具28の左右方向中央位置に設けた作穴体連動用軸182により連結している。そして、左作穴体180Lに基部を固定した開閉操作アーム183の上端を前記回動操作アーム128に連結している。よって、左右作穴体180L・180Rは、植付具28の左側部材70Lと右側部材70Rと同様の機構で開閉動作する。
【0133】
従って、植付具28が圃場に突入して設定した植付深さ位置で回動操作アーム128が引かれると、植付具28の左側部材70Lと右側部材70Rが左右方向に開いて苗を植付けるが、同時に左右作穴体180L・180Rも左右方向に開いて植付具28にて畝Uに植付けた苗の周囲に適切に作穴装置142が浅い凹み状の穴140を形成する。よって、苗を植付けた後や植付けと同時に、苗の周囲に形成した浅い凹み状の穴140内に水を潅水したり肥料を施肥したり薬剤を施薬したりすることができて、植付けた苗の活着や育成管理が容易に行なえる。更に、作穴機構141を植付具28自体に設けた構成としたので、簡潔な構成で良好な苗の植付けと苗の周囲に浅い凹み状の穴140の形成とが行なえる。
【0134】
また、特別に作穴機構を設けずに、植付具28が圃場に突入して植付具28の左側部材70Lと右側部材70Rが左右方向に開いて苗を所定の植付け深さで植付けた後に、植付具28が所定量だけ上昇した位置で更に左側部材70Lと右側部材70Rが左右方向に大きく開いて、苗の周囲に浅い凹み状の穴140を形成する構成としても良い。この構成とすれば、植付具28の左側部材70Lと右側部材70Rを開閉させるカム形状を変更するのみで、苗の植付けと苗周囲の浅い凹み状の穴140の形成が行なえるので、構造が簡潔となる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明にかかる移植機は、タバコの苗の他に野菜苗や花卉苗等の各種苗及びジャガイモ等の種芋やラッキョウ等の球根類等の色々な移植対象物を植え付ける移植機に適用でき、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0136】
11 原動機
14 走行推進体(後輪)
26 植付伝動ケース
28 植付具
29 昇降リンク機構
55 駆動部材(第2揺動用部材)
61 駆動軸(クランクアーム駆動軸)
140 凹み状の穴
142 作穴装置
147a 駆動機構(作穴装置駆動カム)
145 作穴体
145b 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作穴装置(142)にて形成した凹み状の穴(140)内に植付具(28)にて苗を植付けることを特徴とする移植方法。
【請求項2】
作穴装置(142)が下降して圃場に凹み状の穴(140)を形成し始めた後に、植付具(28)が作穴装置(142)の後方で圃場に突入して苗を植付け、その後、植付具(28)及び作穴装置(142)が上昇することを特徴とする請求項1記載の移植方法。
【請求項3】
原動機(11)で駆動される走行推進体(14)と植付伝動ケース(26)内の駆動機構にて昇降駆動される植付具(28)を装備した移植機において、該植付具(28)が圃場に植付ける苗の周囲に昇降作動して凹み状の穴(140)を形成する作穴装置(142)を設けたことを特徴とする移植機。
【請求項4】
植付伝動ケース(26)に設けた駆動機構(147a)にて作穴装置(142)を作動させる構成としたことを特徴とする請求項3に記載の移植機。
【請求項5】
植付伝動ケース(26)の左右に突出した駆動軸(61)の左右一側に植付具(28)を昇降作動させる昇降リンク機構(29)を駆動する駆動部材(55)を設け、左右他側に作穴装置(142)を作動させる駆動機構(147a)を設けたことを特徴とする請求項4に記載の移植機。
【請求項6】
作穴装置(142)に平面視で内部空間(145b)を形勢した作穴体(145)を設けると共に、該作穴体(145)が圃場に突入した後に植付具(28)が作穴体(145)の内部空間(145b)内で圃場に突入して苗を植付ける構成としたことを特徴とする請求項3から請求項5の何れか1項に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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