説明

移植機

【課題】移植機の苗取爪によって搬送される苗の畝への落下を防止する。
【解決手段】苗取出位置にて苗トレイより苗Nを取り出し、苗放出位置にて該苗Nを放出する左右一対の苗取爪32を有する苗取出機構24を具備する移植機1において、苗取出位置から苗放出位置まで苗Nを搬送する左右一対の苗取爪32の移動軌跡Mの下方に、該左右一対の苗取爪32によって搬送中の苗Nを受ける苗受け手段28を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、玉葱、レタス、キャベツ、タバコ等のソイルブロック苗を、苗トレイのポットから1つずつ取り出して移植する移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移植機は、走行機体に、縦横に多数のポットを備えた苗トレイを載置する苗供給機構と、畝に苗を植え付ける植付機構と、苗供給機構の苗トレイから苗を1つずつ取り出して植付機構へと供給する苗取出機構とを備えて構成されているものが知られている。
例えば特許文献1や特許文献2の移植機において、該苗取出機構は、苗供給機構の前方側に配備されており、一対の苗取爪と、該一対の苗取爪の動作を制御する制御手段とを備えている。これにより、該一対の苗取爪は、苗取出位置となる苗トレイのポット内に移動し、該ポット内にて育苗された苗の根鉢を上方より突き刺して該苗をポットから取り出し、苗放出位置となる植付機構の植付カップの上方まで苗を搬送した後に、該苗を該植付カップに向けて放出する。
【特許文献1】特開2002−17123号公報
【特許文献2】特開2004−81162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記移植機において、苗トレイから植付カップまで搬送される苗は、一対の苗取爪に根鉢を突き刺された状態で搬送されるため、該一対の苗取爪の該突刺し深さが適正位置よりも浅い場合や走行機体からの振動によって一対の苗取爪による突き刺し状態が緩められる場合等、搬送中の苗が一対の苗取爪から外れて畝に落下してしまう問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、苗取爪によって搬送される苗の畝への落下を防止することができる移植機を提供するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、苗取出位置にて苗トレイより苗を取り出し、苗放出位置にて該苗を放出する苗取爪を有する苗取出機構を具備する移植機において、
前記苗取出位置から苗放出位置まで苗を搬送する苗取爪の移動軌跡の下方には、該苗取爪によって搬送中の苗を受ける苗受け手段が設けられていることを特徴としている。
【0006】
これによれば、苗取爪によって搬送中の苗が該苗取爪から外れて落下する場合にも、該苗は苗受け手段に受け止められる。これにより、該苗の畝への落下は防止される。
また、前記苗受け手段は、前記移動軌跡に沿う受け面を有する受け具を備えており、該受け面の幅は、少なくとも搬送される苗の根鉢の幅よりも大きいことが好ましい。
これによれば、苗取爪によって搬送される苗は、苗取出位置から苗放出位置まで間の何れの位置で落下しても受け具の受け面によって受け止められる。
【0007】
また、前記苗取出機構は、前記苗の根鉢の植付面から前記苗取爪を突き刺した状態で前記苗を搬送するものであり、前記受け具は、受け面を前記苗取爪によって搬送中の苗の根鉢の底部に摺接可能又は僅かに離間した状態で対向する位置に設定可能とされていることが好ましい。
これによれば、苗取爪から落下してしまう状態となった搬送中の苗は、根鉢から苗取爪が外れてしまう位置まで落下する前に、該根鉢の底部が受け面によって受け止められる。このため、根鉢は苗取爪に突き刺されている状態に保たれ、該苗取爪による苗の保持状態は維持される。これにより、該苗は、根鉢の底部を受け面によって支持された状態で苗取爪に搬送される。即ち、該苗は、苗取爪に引きずられつつ該受け面上を摺動して苗取出位置から苗放出位置まで搬送されることとなる。
【0008】
さらに、前記苗取爪の移動軌跡は、苗取出位置から苗放出位置に至る部分軌跡よりも下方に苗放出位置から苗取出位置に至る部分軌跡を有しており、該苗放出位置から苗取出位置に至る部分軌跡の下方に前記受け具の受け面が位置してることが好ましい。
これによれば、苗放出位置にて苗を放出した苗取爪は、受け具の受け面に当接することなく苗取出位置に戻ることとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、苗取爪によって搬送される苗の畝への落下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図9に示す如く、本実施の形態の移植機1は、走行機体2の後部に移植装置3及び操縦ハンドル4を備えている。また、該移植機1は、畝Rを跨いだ状態で該畝Rの伸びている方向(図9の左右方向)に前進走行しながら、ソイルブロック苗(根鉢付きの苗。以下、苗Nという)を畝Rに所定間隔毎に植え付ける。
【0011】
走行機体2は、ミッションケース5の前部に架台6を前方突出状に固定し、該架台6にエンジン、燃料タンク、バッテリー等の車両機器(図示省略)を搭載している。また、該走行機体2は、操向輪としての左右一対の前輪9及び駆動輪としての左右一対の後輪10を縣架している。
左右一対の前輪9はそれぞれ、架台6の前部に枢支された前輪支軸11の左右端部に支持アーム12を介して支持されている。また、左右一対の後輪10は、ミッションケース5の左右両側から外方に突出している後輪支軸13の左右端部に伝動ケース14を介して支持されている。
【0012】
左右同側に位置する前輪支軸11の端部と後輪支軸13の端部とは、連動ロッド15及びアームを介して連動連結されている。また、架台6には、後輪支軸13に連結された連動部材17を動作させるアクチュエータ(油圧シリンダ)16が配備されている。該アクチュエータ16を作動させることにより、連動部材17及び連動ロッド15等を介して前輪支軸11と後輪支軸13とが連動して回動する。これによって左右一対の前後輪9、10が同時に昇降し、走行機体2の畝Rに対する高さ調整が可能となる。
【0013】
エンジンの動力はミッションケース5から左右の後輪支軸13内の伝動軸及び伝動ケース14内の伝動手段等を介して後輪10に伝動されている。また、ミッションケース5からは、後方に突出された第1PTO軸18と、左右両側に突出した第2PTO軸19とから動力を取り出せるようになっている。
移植装置3は、走行機体2の後部に装着された移植フレーム21に設けられており、苗Nを畝Rに植え付ける植付機構22と、苗トレイTを載置して該苗トレイTを縦横に送る苗供給機構23と、該苗供給機構23に載置された苗トレイTから苗Nを取り出して植付機構22へ供給する苗取出機構24と、苗供給機構23の苗取出位置から植付機構22の苗放出位置に至るまで苗取出機構24によって搬送される苗Nを受ける苗受け手段28とを備えている。
【0014】
移植フレーム21は、ミッションケース5に固定された固定フレーム21Aと、第2PTO軸19に軸心回りに回動自在に取り付けられた可動フレーム21Bとを有している。固定フレーム21Aに苗供給機構23と苗取出機構24とが配備されると共に、可動フレーム21Bに植付機構22が配備されている。また、固定フレーム21Aの後端にハンドル4が固定されている。
【0015】
なお、苗トレイTは、プラスチック製で、薄肉に形成されていて可撓性を有し、縦横に所定ピッチで碁盤目状に配列された多数のポットPを備えている。苗Nは、苗トレイTのポットPに床土を充填し、該床土に播種して育苗することにより形成される根鉢nを有している。
図8に示す如く、ポットPは、奥方に向かうにつれて次第に断面形状を小さなものとする略四角錐形状(又は円錐形状)を呈している。また、ポットPの隅部はR面取りが施されており、底壁には通気、排水用の底孔Paが形成されている。
【0016】
図9に示す如く、苗供給機構23は、苗トレイTの上面の高さ位置を後方に向かうにつれて高いものとする傾斜状に該苗トレイTを載置する苗載せ台25と、該苗載せ台25を左右方向に往復移動自在に支持する支持手段と、苗載せ台25に載置された苗トレイTを1つのポットPずつ間欠的に横配列方向に送る横送り手段と、該苗トレイTを1列ずつ縦配列方向に送る縦送り手段とを備えている。
【0017】
また、苗供給機構23は、横送り手段によって苗載せ台25を横送りして横一列の総てのポットPから苗Nを取り出した後、縦送り手段によってポットPの1ピッチ分だけ苗トレイTを縦送りし、次の横一列のポットPから苗Nを取り出し可能としている。
図1及び図2に示す如く、苗取出機構24は、苗載せ台25の前方側に配備されており、固定フレーム21Aに装着された支持台57に配備されたギヤボックス58と、該ギヤボックス58に支持されて第1PTO軸18からの動力を伝達される伝動軸59とを備えている。該伝動軸59の両端部は、ギヤボックス58の側方に突出している。
【0018】
また、苗取出機構24は、左右一対の苗取爪32と、該左右一対の苗取爪32に嵌合する苗取り補助具34と、左右一対の苗取爪32及び苗取り補助具34を支持する苗爪台33と、該苗爪台33に苗トレイTのポットPに近接離間させる往復運動をさせる遊星歯車機構36と、左右一対の苗取爪32の先端32aをポットPに向けた横向き姿勢と下向き姿勢との間で該左右一対の苗取爪32の姿勢を変更させる姿勢変更手段37と、苗取り補助具34を動作させる補助具作動手段39とを備えている。
【0019】
各苗取爪32は、基端部に配備された縦軸32Bを介して互いの先端間隔を拡縮自在として苗爪台33に枢支されている。また、左右一対の苗取爪32の基端部の間には、苗取爪32の先端32aを互いに近接させる収縮方向に付勢するバネ製の収縮部材60が設けられている。
また、各苗取爪32は、断面L字状に形成されている。
【0020】
左右一対の苗取爪32は、図1に示す如く、ポットP内に進入して、苗Nの根鉢nの植付面から底面に向け、中心線より下側となる位置で突き刺し、左右から強制的に挟み込んで抱きかかえるように挟持する。
図5に示す如く、苗爪台33は、爪支軸61に回動自在に支持されたベース板33Aにブロック33Bを取り付けて構成されている。ベース板33Aは、回動アーム48を介して遊星歯車機構36に連結されている。また、該ブロック33Bの上面に左右一対の苗取爪32の縦軸32Bが枢支されている。
【0021】
また、図6(a)及び図6(b)に示す如く、苗爪台33のブロック33Bには貫通孔が形成されている。該貫通孔には、苗取り補助具34の押動杆34Aが摺動自在に挿通支持されている。また、該押動杆34Aの先端には、左右一対の苗取爪32に嵌合する嵌合部材34Bが設けられている。該嵌合部材34Bの先端面は、図8に示す如く、左右一対の苗取爪32に突き刺した苗Nの根鉢nの植付面を押す押面34aとなっている。
【0022】
図6(a)に示す如く、苗爪台33のベース板33Aには、揺動アーム40が支軸65を介して揺動自在に支持されている。また、該揺動アーム40の先端は、リンク部材66を介して苗取り補助具34の押動杆34Aの後端に連結されている。
また、揺動アーム40の中途部には、カムフォロア67が設けられている。該カムフォロア67は、爪支軸61に取り付けられたカム体41の外周面となるカム面41aに当接している。該カム面41aは、揺動アーム40の先端を爪支軸61から離間させて苗取り補助具34の嵌合部材34Bを左右一対の苗取爪32の基端側に位置させる大径部41bと、揺動アーム40の先端を爪支軸61に近接させて嵌合部材34Bを左右一対の苗取爪32の先端側に位置させる小径部41cとから構成されている。
【0023】
苗爪台33のベース板33Aと揺動アーム40との間には、該揺動アーム40を爪支軸61に向かう方向に付勢するコイルスプリング製の付勢手段62が設けられている。
揺動アーム40、リンク部材66、カム体41及び付勢手段62等により、補助具作動手段39が構成されている。苗爪台33とカム体41との相対回動により、揺動アーム40は基端の支軸65を中心に往復揺動することとなり、これによって、苗取り補助具34の押動杆34Aが直線移動する。
【0024】
図2に示す如く、複数の歯車からなる遊星歯車機構36は、爪支軸61とギヤボックス58との間に設けられている。該遊星歯車機構36の動作により、爪支軸61は、図7に示される往路と復路とが上下に乖離する略楕円軌跡Dを描いて運動する。
爪支軸61は、図2に示すギアボックス58の前記伝動軸59の一端に外嵌している歯車36aを反時計方向に回転させることにより、図7に示す略楕円軌跡Dの下側軌跡Ddを通って中心線Daのポット側端部に至り、中心線Da上から上側軌跡Duを通って中心線DaのポットPから最遠となる最遠端部に至る。
【0025】
図4及び図5に示す如く、姿勢変更手段37は、ベース板33Aの姿勢を制御することにより左右一対の苗取爪32の姿勢を制御するものであり、苗爪台33のベース板33Aの先端部に配備されたコロ49と、該コロ49に係合してその移動を案内するカム部材50とを備えている。
図2〜図4に示す如く、該カム部材50は、溝を形成することにより略円弧形状のカム面50Aを形成しており、取付け具を介してギヤボックス58に固定の取付け板70に固定されている。図7に示す如く、コロ49は、カム面50Aに案内されることにより、略円弧軌跡Eを描いて運動する。これにより、左右一対の苗取爪32の姿勢は、前記横向き姿勢と下向き姿勢との間で変更されることとなる。
【0026】
遊星歯車機構36による爪支軸61の略楕円軌跡D上の往復運動と、姿勢変更手段37によるベース板33Aの略円弧軌跡E上の往復運動とは、ギアボックス58から伝達される動力によって同時に展開されている。これらの運動が合成されることにより、左右一対の苗取爪32の先端32aは、図1及び図7に示す移動軌跡Mを描く運動をする。
該移動軌跡M上を移動する左右一対の苗取爪32は、先端32aをポットP内に位置させる苗取出位置に移動することにより、苗Nの根鉢nを突き刺し、これによって、苗NはポットPから取り出される。
【0027】
また、左右一対の苗取爪32を植付機構22の植付カップ26に対向させる苗放出位置に該左右一対の苗取爪32を移動させることにより、苗Nは該左右一対の苗取爪32から植付カップ26に向けて放出される。
また、該移動軌跡Mにおいては、苗取爪32が苗取出位置から苗放出位置に至る部分軌跡m1の下方に苗取爪32が苗放出位置から苗取出位置に至る部分軌跡m2を有している。
【0028】
図9に示す如く、植付機構22は、畝Rに植え穴を形成すると共に該植え穴に苗Nを放出する植付カップ26と、該植付カップ26を上下移動させる植付駆動機構と、植え穴に放出された苗Nの左右両側から株際に土を押圧して苗Nの根鉢nを埋める覆土手段27とを備えている。植付カップ26は、植付駆動機構によって走行機体2の前後方向に短軸を有する上下に長い楕円軌跡を描く。
【0029】
また、図1及び図7に示す如く、苗受け手段28は、前記左右一対の苗取爪32の先端の移動軌跡Mよりも下方となる位置に配備されている。また、苗受け手段28は、移動軌跡Mに沿う受け面74を有する受け具75と、該受け具75を支持する支持部材76とを備えている。
受け具75の受け面74は、図1に示す如く、苗取出位置から苗放出位置に向けて下り方向に傾斜状に形成されている。また、該受け具75の苗放出位置側となる端部には、植付機構22の植付カップ26に向けて屈曲形成された屈曲部75aが設けられている。また、該受け具75の受け面74は、図2に示す如く、苗取出機構24のブロック33Bの幅と同等若しくは該幅よりも大きい幅を有して形成されており、少なくとも苗取出機構24によって搬送される苗Nの根鉢nよりも大きい幅を有するものとして構成されている。
【0030】
図1に示す如く、支持部材76は、受け具75の受け面74となる面の反対側の面に突設されている。また、該支持部材76の先端にはボルト孔77が開設されている。該ボルト孔77に挿通された状態でボルト等の締結具78が支持台57又は固定フレーム21Aに螺合しており、これによって受け具75は、支持部材76を介して支持台57又は固定フレーム21Aに連結支持されている。
【0031】
また、ボルト孔77は長孔状に形成されている。これにより、支持台57又は固定フレーム21Aに対して受け具75を支持部材76と共に上下動させることができ、これにより、受け面74を苗取り出し軌跡Mに対して近接離間させることが可能となる。
該支持部材76を介して高さ調整をすることにより、受け具75は、受け面74を左右一対の苗取爪32によって搬送される苗Nの根鉢nの底部に摺接可能又は僅かに離間した状態で対向する位置に設定されている。
【0032】
また、受け具75の受け面74は前記左右一対の苗取爪32の移動軌跡Mの苗放出位置から苗取出位置に至る部分軌跡m2よりも下方に位置しており、これによって、左右一対の苗取爪32は受け面74に当接することはなく移動軌跡M上をスムーズに移動することとなる。
本実施の形態は以上の構成からなるものであって、次に、図7、図8等を用いて本実施の形態による苗取出し方法を説明する。
【0033】
先ず、ギアボックス58を介して遊星歯車機構36を動作させる。これにより、苗爪台33の爪支軸61を略楕円軌跡Dの下側軌跡Dd上に位置させる。
このとき、姿勢変更手段37も同時に作動しており、コロ49が略円弧軌跡E上を移動することにより、左右一対の苗取爪32の姿勢が下向き姿勢から先端32aをポットPに向けた横向き姿勢に移行する。そして、左右一対の苗取爪32は、この様な姿勢で取り出し位置のポットPに近接していき、苗Nの茎葉をすくい込む姿勢で該茎葉の下側に近づく。
【0034】
このような状態からさらに遊星歯車機構36の前記歯車36aを回転させることにより、爪支軸61は略楕円軌跡Dの下側軌跡Ddをポット側端部に向けて移動すると共に、姿勢変更手段37のコロ49は略円弧軌跡Eの後端側に向けて移動する。これにより、左右一対の苗取爪32の姿勢は略楕円軌跡Dの中心線Daと略平行の横向き姿勢となり、ポットP内の苗Nの根鉢nに突き刺さり始める。
【0035】
この状態からさらに前記歯車36aを回転させると、爪支軸61は略楕円軌跡Dの下側軌跡Ddをポット側端部まで移動すると共に、コロ49は略円弧軌跡Eの後端に達する。これにより、左右一対の苗取爪32は横向き姿勢で略直線的にポットP内へ進入して苗取出位置に達し、苗Nに突き刺さる。
ここで、左右一対の苗取爪32はポットPの下側の側縁と略平行に進入し、その先端32aはポットPの底孔Paから突出する位置まで突入する。
【0036】
また、このとき、補助具作動手段39のカム体41が爪支軸61と共に回転することにより、揺動アーム40のカムフォロア67はカム面41aの小径部41cから大径部41bに当接する。これによって、揺動アーム40が揺動して嵌合部材34BはポットPから離れる方向に移動する。これにより、左右一対の苗取爪32が苗Nの根鉢nに完全に突き刺さるとき又はその直前から、該左右一対の苗取爪32の先端32aは収縮する。これによって、図2に示す左右一対の苗取爪32の先端間距離Lは収縮し、該収縮に伴って苗Nの根鉢nは左右一対の苗取爪32によって挟持されることとなるのである。
【0037】
図7に示す如く、左右一対の苗取爪32が苗Nの根鉢nに完全に突き刺さった後、苗爪台33の爪支軸61は、遊星歯車機構36の動作によって略楕円軌跡Dのポット側端部に位置した状態から上側軌跡Du上を移動することとなる。該爪支軸61が略楕円軌跡Dの下側軌跡Ddから上側軌跡Duへ側面視略V字状に移動することにより、左右一対の苗取爪32はポットPに略向いた姿勢のまま、若干持ち上がりながらポットPから抜け出ることになる。これによって、苗NがポットPから抜け出るときの抵抗が小さくなり、苗Nの根鉢nの崩壊を招くことなく該苗NはポットPから取り出される。
【0038】
また、爪支軸61が略楕円軌跡Dの上側軌跡Duを最遠端部まで移動する間に、姿勢変更手段37のコロ49がカム面50Aに案内されて略円弧軌跡E上を移動する。これにより、左右一対の苗取爪32の姿勢はその先端32AをポットPに向けた横向き姿勢から下向き姿勢に移行する。そして、左右一対の苗取爪32が植付機構22の植付カップ26の上方となる苗放出位置に位置して下向き姿勢となったとき、又はその前後に補助具作動手段39のカムフォロア67がカム面41aの大径部41bから小径部41cに当接する。これにより、付勢手段62の弾性復帰力によって揺動アーム40の先端は爪支軸61に近接する方向に揺動する。これに伴って、嵌合部材34Bが左右一対の苗取爪32の基端側から先端側に向けて突出する。これによって、嵌合部材34Bの押面34aによって左右一対の苗取爪32に突き刺している苗Nは押し出され、下方に待機している植付カップ26へ放出されることとなる。
【0039】
ここで、左右一対の苗取爪32に突き刺された状態で搬送される苗Nの下方に苗受け手段28の受け具75が位置している。これにより、図8に示す如く、苗供給機構23から苗Nを取り出す苗取出位置から植付機構22の植付カップ26の上方となる苗放出位置に至るまでに左右一対の苗取爪32から苗が外れてしまう場合にも、該苗Nは受け具75の受け面74によって受け止められ、該苗Nが畝Rに向けて落下してしまう虞は殆どない。
【0040】
また、受け具75の受け面74は、左右一対の苗取爪32によって搬送される苗Nの根鉢nの底部と接触若しくは僅かに離間した位置に配備されている。このため、搬送中に左右一対の苗取爪32の移動に伴って生じる遠心力の作用や根鉢nの崩壊等によって該左右一対の苗取爪32に狭持された状態を解かれた苗Nは、落下直後に受け面74に受け止められることとなり、これによって、左右一対の苗取爪32は苗Nから外れることはなく、根鉢nに突き刺された状態に維持される。
【0041】
そして、この状態においても左右一対の苗取爪32は苗放出位置に向けて移動してる。このため、苗Nは、該左右一対の苗取爪32に引きずられた状態で受け面74上を摺動して受け具75の屈曲部75aまで左右一対の苗取爪32によって搬送され、該屈曲部75aから植付カップ26に向けて落下することとなる。即ち、苗Nは、左右一対の苗取爪32による狭持状態を解かれた状態にあっても該左右一対の苗取爪32によって受け面74上を苗取り出し位置から苗放出位置に向けて摺動することにより、植付カップ26に送り込まれることとなるのである。
【0042】
苗Nの供給を受けた植付カップ26は、苗受領待機位置から畝Rまで下降して、該畝Rに植え穴を穿設しながら苗Nを該畝Rに植え付ける。
苗Nを放出した後の左右一対の苗取爪32は、略楕円軌跡Dの下側軌跡Ddを通ってポットPに近づく戻り動作をし、姿勢変更手段37によって略下向き姿勢から横向き姿勢に向けてその姿勢を変更して苗取り出し前の姿勢に戻り、これによって、左右一対の苗取爪32の先端32aは移動軌跡M上を1周することとなる。
【0043】
本実施の形態によれば、苗受け手段28の受け具75によって、左右一対の苗取爪32により搬送される苗Nの畝Rへの落下が防止され、これによって、ポットRからの搬送に失敗した苗Nに起因する畝Rの植付け面の荒れが抑制されることとなる。また、搬送中に左右一対の苗取爪32による狭持状態を解かれた苗Nは、受け具75又は該受け具75と左右一対の苗取爪32とによって植付機構22の植付カップ26に搬送され、これによって畝Rに所定間隔毎に植え付けられるべき苗Nの抜けが抑制されることとなる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、受け具75の受け面74を左右一対の苗取爪32の総合軌跡Mに沿う曲面上に形成する場合にも、本実施の形態と同様の効果を奏する。また、受け面74の前後長さは苗供給機構23と植付機構22の間隔や苗取出機構24の左右一対の苗取爪32の移動長さに応じて適宜変更可能である。また、左右一対の苗取爪32の本数は、左右一対のものに限らず、1本、3本以上のものとしても構わない。
【0045】
また、移植機1を2条植えのものとする場合にも、本実施の形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】植付装置を示す側面図である。
【図2】苗取出機構を示す平面図である。
【図3】ギアボックスとカム部材とを示す側面図である。
【図4】回動アームを示す側面図である。
【図5】連動部材を示す側面図である。
【図6】(a)は左右一対の苗取爪や揺動アーム等を示す側面図であり、(b)は苗取り補助具を示す断面図である。
【図7】爪支軸、コロ、左右一対の苗取爪の軌跡を示す側面図である。
【図8】左右一対の苗取爪によって苗を搬送している状態を示す側面図である。
【図9】移植機の側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 移植機
3 移植装置
22 植付機構
23 苗供給機構
24 苗取出機構
26 植付カップ
28 苗受け手段
30 苗取出機構
32 苗取爪
74 受け面
75 受け具
76 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗取出位置にて苗トレイ(T)より苗(N)を取り出し、苗放出位置にて該苗(N)を放出する苗取爪(32)を有する苗取出機構(24)を具備する移植機において、
前記苗取出位置から苗放出位置まで苗(N)を搬送する苗取爪(32)の移動軌跡(M)の下方には、該苗取爪(32)によって搬送中の苗(N)を受ける苗受け手段(28)が設けられていることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記苗受け手段(28)は、前記移動軌跡(M)に沿う受け面(74)を有する受け具(75)を備えており、該受け面(74)の幅は、少なくとも搬送される苗(N)の根鉢(n)の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記苗取出機構(24)は、前記苗(N)の根鉢(n)の植付面から前記苗取爪(32)を突き刺した状態で前記苗(N)を搬送するものであり、前記受け具(32)は、受け面(74)を前記苗取爪(32)によって搬送中の苗(N)の根鉢(n)の底部に摺接可能又は僅かに離間した状態で対向する位置に設定可能とされていることを特徴とする請求項2に記載の移植機。
【請求項4】
前記苗取爪(32)の移動軌跡(M)は、苗取出位置から苗放出位置に至る部分軌跡(m1)よりも下方に苗放出位置から苗取出位置に至る部分軌跡(m2)を有しており、該苗放出位置から苗取出位置に至る部分軌跡(m2)の下方に前記受け具(75)の受け面(74)が位置してることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−189917(P2007−189917A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9006(P2006−9006)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】