説明

移植機

【課題】ステップへのアクセスが容易な移植機をローコストで提供することを課題としている。
【解決手段】移植作業機12の苗載台11に補給する補助苗を予め載置する補助苗載台18を、前方側及び後方側の縦杆17F,17Rが補助苗載台18の上方において連結された側面視で門形をなすステー17によって、走行機体1のステップ14の外側方に配置して取り付け、ステー17を、補助苗載台18より外側に立設し、補助苗載台18に対して前方に偏位するように配置し、補助苗載台18を外側において支持する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助苗を載置する補助苗載台を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来側部にステップを有する走行機体と、該走行機体に連結される移植作業機とを備え、移植作業機に、植付け用の苗を載置する苗載台を設け、走行機体に、苗載台に補給する補助苗を予め載置する補助苗載台を設け、補助苗載台の取り付け用のステーをステップの外側に設け、ステーによって補助苗載台をステップの外側方に配置した移植機が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−88217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
補助苗載台への補助苗の供給や、補助苗載台から苗載台への補助苗の補給等のために作業者がステップ上に立つことがある。例えばステップの前方側からステップにアクセスする場合、作業者の体が不安定とならないように、手摺り等を設けることが望ましいが、コストやスペースの関係で手摺りが設けられている機種はほとんどない。手摺りがないことによって作業者はステップへのアクセスが困難な場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の移植機は、側部にステップ14を有する走行機体1と、該走行機体1に連結される移植作業機12とを備え、移植作業機12に、植付け用の苗を載置する苗載台11を設け、走行機体1に、苗載台11に補給する補助苗を予め載置する補助苗載台18を設け、補助苗載台18の取り付け用のステー17をステップ14の外側に設け、該ステー17が、前方側及び後方側の縦杆17F,17Rが補助苗載台18の上方において連結された側面視で門形をなし、ステー17によって補助苗載台18をステップ14の外側方に配置して取り付けた移植機において、上記ステー17を、補助苗載台18より外側に立設し、補助苗載台18に対して前方に偏位するように配置し、補助苗載台18を外側において支持する構成としたことを第1の特徴としている。
【0005】
第2に、ステー17を走行機体1側に取り付けるために走行機体1側に向かって横方向に延出する横延出部19Faをステー17の前部に設け、該横延出部19Faを補助苗載台18の下方位置に配置して足掛けを兼用させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明の構造によると、ステーは、全体が補助苗載台に対して前方に偏位するようにステップの外側に配置される。このためステーの前方側の縦杆を手摺りとして兼用し、作業者が前方側の縦杆を手摺りとして掴み、ステップへのアクセスを容易に行うことができるという効果がある。
【0007】
ステーは、前方側及び後方側の縦杆によって走行機体側に安定して取り付けられる。このため補助苗載台より走行機体側に向かう補強部材等を設けることなく、補助苗載台は走行機体に安定して取り付けられる。ステーは補助苗載台より外側に配置され、ステップと補助苗載台との間に位置しないため、作業者はステップ上の移動、補助苗載台への補助苗の供給、補助苗載台からの補助苗の取出し等をステーによって妨げられることなく円滑に行うことができる。
【0008】
ステーを走行機体側に取り付けるために走行機体側に向かって横方向に延出する横延出部をステーの前部に設け、該横延出部を補助苗載台の下方位置に配置して足掛けを兼用させることによって、作業者は横延出部を足掛けとしてステップへのアクセスを容易に行うことができる他、専用の足掛けを設ける必要がないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1,図2は、本発明を採用した移植機である乗用田植機の平面図及び要部側面図である。本乗用田植機の走行機体1は前輪2及び後輪3を備えている。走行機体1の前方には、内部に図示しないエンジンを搭載するボンネット4が設けられている。ボンネット4の後方には操縦部である運転席6が構成されている。
【0010】
運転席6内にはシート7が設けられている。運転席6内のシート7の前方には操作パネル8がフロア10から立ち上がって設けられている。フロア10は、シート7の前方から操作パネル8の側方に至り設けられている。操作パネル8はボンネット4の後方に位置する。操作パネル8からはステアリングハンドル9が突出している。
【0011】
走行機体1の後部には、苗載台11を備えた植付作業機12が昇降可能に連結されている。圃場内で走行機体1を走行させ、植付作業機12を接地下降させて作動させることにより、走行機体1の走行に伴い植付作業機12が植付爪13によって苗載台11から苗を描き取り、該苗を圃場に植え付ける。
【0012】
走行機体1のボンネット4の外側方にはステップ14が設けられている。ステップ14は、機体カバー15上に構成された足踏み部であり、本実施形態においては機体カバー15の上面に敷設されたマットからなる。ステップ14の左右両外側方には、各々ステー17を介してステップ14より上方位置に補助苗載台18が設けられている。
【0013】
補助苗載台18には、苗載台11に補給する予備のマット苗(補助苗)が予め載置される。補助苗載台18又は補助苗載台18上に載置される苗箱からマット苗を取り出すスクレーパによって補助苗載台18や苗箱からマット苗(補助苗)を取り出し、苗載台11に補給することができる。
【0014】
図2に示されるように、上記ステー17は、側面視において門形をなす。図3,4に示されるように、ステー17の前後両縦杆17F,17Rの下端部分が、走行機体1の機体フレーム1a側に取り付けられた支持部材19に取り付けられ、ステー17が走行機体1側に取り付けられている。
【0015】
両支持部材19は、ステー17の前後両縦杆17F,17Rの下端部分を受け止める支持杆19F,19Rを前後に備えている。両支持杆19F,19Rは補強杆19aによって連結補強されている。両支持杆19F,19Rの下端部分が走行機体1の内側に向かって屈曲し、左右方向の横延出部19Fa,19Raを形成している。
【0016】
上記両横延出部19Fa,19Raの端部が機体フレーム1aに一体的に固定されている。前方側の横延出部19Faは、ステップ14の下方位置において機体フレーム1aに取り付けられている。
【0017】
前方側の横延出部19Faは、上記前方側の縦杆17Fから連続して補助苗載台18より前方に位置し、走行機体1(ボンネット4)の前端位置近傍に位置している。ただし上記横延出部19Faは、走行機体1の前端より前方に突出することはない。
【0018】
補助苗載台18はステー17の後方側の縦杆17Rに上下複数段取り付けられている。各補助苗載台18は、走行機体1の中央側に向かって高くなる傾斜姿勢で取り付けられている。
【0019】
ステー17の後方側の縦杆17Rは、側面視において補助苗載台18の前後幅内の範囲に位置している。本実施形態において後方側の縦杆17Rは、補助苗載台18の概ね前後中央位置に配置されている。
【0020】
前方側の縦杆17Fは、各補助苗載台18の前端位置より前方に配置されている。前方側の縦杆17Fと後方側の縦杆17Rとは最上段の補助苗載台18の上方位置においてループ状に連結されている。
【0021】
ステー17は、ステー17の両縦杆17F,17Rが上記位置に配置されるように、各補助苗載台18に対して前方に偏位(オフセット)して配置されている。各補助苗載台18は、各々の外側端部がステー17に取り付けられている。補助苗載台18はステー17と走行機体1との間に位置する。補助苗載台18とステップ14とは平面視において重複することはない。
【0022】
ステー17は門形の両端部分が機体フレーム1a側に固定されることによって、補助苗載台18より内側に向かう補強部材等を設けることなく、機体フレーム1aに取り付けられた状態で高い剛性を維持することができ、各補助苗載台18はステー17によって安定して走行機体1に取り付けられる。
【0023】
ステー17がステップ14の外側方に位置する補助苗載台18の外側(反走行機体1側)に配置されているため、ステップ14に立つ作業者は、ステップ14上をステー17に妨げられることなく自由に且つ容易に移動することができる。さらにステー17に妨げられることなく容易に補助苗載台18から補助苗を取り出したり、補助苗載台18に補助苗をセットしたりすることができる。
【0024】
ステー17における前方側の縦杆17Fが補助苗載台18より前方に位置し、走行機体1(ボンネット4)の前端位置近傍に位置しているため、作業者は前方側の縦杆17Fを手摺りとして兼用使用し、ステップ14に対するアクセス(乗降等)を容易に行うことができる。
【0025】
前方側の縦杆17Fが上記前後位置に配置されているため、手摺りとして使用する場合、作業者は手摺り(縦杆17F)を容易に掴むことができる。支持部材19における前方側の支持杆19Fの横延出部19Faは、ステップ14の下方に位置しており、ステップ14に対する乗り降り用の足掛け(補助ステップ)として機能する。これにより専用の補助ステップを設けることなく、ローコストで補助ステップを設けることができ、ステップ14に対する乗降を更に容易に行うことができる。
【0026】
補助ステップとなる上記横延出部19Faは、走行機体1の前端より前方に突出することなく、補助苗載台18より前方に位置して、走行機体1(ボンネット4)の前端位置近傍に配置されている。さらに上記横延出部19Faは、ステー17とステップ14との間に位置しているため、走行機体1の全幅より外側に突出することはない。横延出部19Faによる走行機体1の全長の延長や横幅の拡大等の不都合が防止されるとともに、作業者等の横延出部19Faへの当接等も防止される。
【0027】
本実施形態においては、補助ステップとなる上記横延出部19Faに足を載せる足載せ部21が設けられている。足載せ部21を介して補助ステップ(横延出部19Fa)に容易に足を載せることができる。足載せ部21はおおむね水平に設けることが望ましい。
【0028】
なお補助苗載台18が上下方向に複数段に設けられているため、複数の補助苗を上下に載置することができ、省スペースで多くの補助苗をセットすることが可能である。各補助苗載台18は走行機体1の中央側に向かって高くなる傾斜姿勢で設けられているため、載置された補助苗の取り出しを容易に行うことができる。
【0029】
本実施形態の乗用田植機は、最下段の補助苗載台18の下方位置に施肥機用の肥料タンク22が配置されている。肥料タンク22は最下段の補助苗載台18の下方の空きスペースに省スペースで配置される。肥料タンク22はステップ14側に突出することはなく、肥料タンク22がステップ14の通行を妨げることはない。最下段の補助苗載台18と肥料タンク22との間には、肥料タンク22の肥料供給用の蓋22aを上下方向に開閉することができる程度のスペースが設けられている。
【0030】
前述の補助ステップとなる横延出部19Faは、肥料タンク22の前端より前方に配置されており、肥料タンク22が補助ステップ(横延出部19Fa)の使用を妨げることはない。
【0031】
なお本実施形態の乗用田植機には、前述のスクレーパを収納するスクレーパ収納具23が右側のステー17の後方側の縦杆17Rに取り付けられている。スクレーパ収納具23はステー17の外側(反補助苗載台側)に設けられている。スクレーパ収納具23がステー17の後方側に配置されるため、作業者はスクレーパの取り出しや格納を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】乗用田植機の平面図である。
【図2】乗用田植機の要部側面図である。
【図3】乗用田植機の要部正面図である。
【図4】乗用田植機の要部平面図である。
【図5】スクレーパ収納具を示すステー部分の右側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 走行機体
11 苗載台
12 植付作業機(移植作業機)
14 ステップ
17 ステー
17F 縦杆
17R 縦杆
18 補助苗載台
19Fa 横延出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側部にステップ(14)を有する走行機体(1)と、該走行機体(1)に連結される移植作業機(12)とを備え、移植作業機(12)に、植付け用の苗を載置する苗載台(11)を設け、走行機体(1)に、苗載台(11)に補給する補助苗を予め載置する補助苗載台(18)を設け、補助苗載台(18)の取り付け用のステー(17)をステップ(14)の外側に設け、該ステー(17)が、前方側及び後方側の縦杆(17F),(17R)が補助苗載台(18)の上方において連結された側面視で門形をなし、ステー(17)によって補助苗載台(18)をステップ(14)の外側方に配置して取り付けた移植機において、上記ステー(17)を、補助苗載台(18)より外側に立設し、補助苗載台(18)に対して前方に偏位するように配置し、補助苗載台(18)を外側において支持する構成とした移植機。
【請求項2】
ステー(17)を走行機体(1)側に取り付けるために走行機体(1)側に向かって横方向に延出する横延出部(19Fa)をステー(17)の前部に設け、該横延出部(19Fa)を補助苗載台(18)の下方位置に配置して足掛けを兼用させた請求項1の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−244314(P2007−244314A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73645(P2006−73645)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】