説明

移植機

【課題】整備性及び組立性が良くかつ、仕様変更容易な植付部を備えた移植機を提供する。
【解決手段】植付部7の入力ケース21を、植付駆動軸11の機体左右方向に所定間隔をあけて取付けられた複数のプランタケース12のうち、機体右端のプランタケース12よりも機体外側に配置すると共に、機体内側に位置する入力ケース本体29と、入力ケース本体29の機体外側に着脱自在に取付けられた別体ケース30とに分割して構成している。別体ケース30には、株間変速機構26及び不等速変速機構27が内装され、この別体ケース30をアッシー交換することによって、これら株間変速機構26及び不等速変速機構27を備えた仕様から、株間変速機構26及び不等速変速機構27を備えない仕様に容易に変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、走行機体の後方で苗載せ台から苗を掻きとって圃場へと移植する植付部を有する移植機に係り、詳しくは植付部の伝動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体のエンジンからの動力が入力される植付部の入力ケースを植付フレームの機体左右方向中間部(左右中間部)に設けると共に、ミッションケース内に株間変速機構を設けた移植機が案出されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−180562号公報
【特許文献2】特開2004−187576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移植機の植付部は、昇降リンク(リフタ)によって昇降自在に支持されていると共に、苗載せ台を横送り及び縦送り駆動させながら圃場に苗を移植するため、その機体左右方向中間部には、昇降リンクの取付け部、苗載せ台の横送り及び縦送りの伝動軸など、多数の部材が配置されている。
【0005】
そのため、引用文献1記載の移植機のように、一定の大きさを持った植付部の入力ケースを機体左右方向中間部に配置するにはスペース的に狭く、多数の部材が密集し、配置構造も複雑となっていた。また、入力ケースが機体左右方向中央部にあると整備や組立などの作業性も良くなかった。
【0006】
更に、株間変速機構がミッションケースに内装されているため、株間変速機構のギヤ交換や、仕様変更などを行うに際して、機体側に設けられた大きなトランスミッションを分解しなければならず、大変であった。
【0007】
そこで本願発明は、入力ケースを植付部の機体左右方向外側に配置すると共に、株間変速機構を内装した別体ケースを入力ケース本体の機体左右方向外側に着脱自在に取付けたことによって、上記課題を解決した移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、エンジン(22)を搭載した走行機体(5)の後方に、昇降リンク(6)を介して植付部(7)を昇降自在に支持し、前記エンジン(22)からの動力を植付PTOドライブ軸(20)によって前記植付部(7)に伝達すると共に、該植付部(7)は、苗を載置する苗載せ台(10)と、該苗載せ台(10)から苗を掻き取り圃条に移植する植付機構(13)と、を有してなる移植機(1)において、
前記植付PTOドライブ軸(20)からの動力が伝達され、かつ該植付PTOドライブ軸(20)と交差する方向に延びる植付伝動軸(31)と、該植付伝動軸(31)の先端に設けられ、前記植付部(7)の機体左右方向外側に位置する入力ケース(21)とを備え、
前記入力ケース(21)を、機体左右方向内側に配置された入力ケース本体(29)と、該入力ケース本体(29)の機体左右方向外側に着脱自在に取付けられた別体ケース(30)とに分割して構成し、
該別体ケース(30)を、苗の植付間隔を変更する株間変速機構(26)を内装したものと、該株間変速機構を内装していないものとに交換可能にした、
ことを特徴とする移植機。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記入力ケース本体(29)に、前記苗載せ台(10)の横送り駆動を変速する横送り変速機構(25)を内装し、
前記別体ケース(30)に内装された前記株間変速機構(26)を、前記横送り変速機構(25)及び前記植付機構(13)へ動力を分配する分岐部(37,46,47,79)よりも伝動上流側に配置した、
請求項1記載の移植機にある。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記別体ケース(30)を、前記株間変速機構(26)及び、前記植付機構(13)の一周期中の植付動作速度に変化を生じさせる不等速変速機構(27)を内装したものと、これら株間変速機構(26)及び不等速変速機構(27)の少なくともどちらか一方を内装していないものとに交換可能に構成してなる、
請求項1又は2記載の移植機にある。
【0011】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によると、入力ケースを機体外側に配置したことによって、入力ケースの組立性及び整備性が向上すると共に、株間変速機構を内装しているため、作業者は機体側のトランスミッションをあけることなく、植付部側で株間変速機構のギヤ交換などの作業を行うことができる。また、別体ケースをアッシー交換するだけで、株間変速機構を備えていない仕様から、株間変速機構を備えている仕様へと顧客の要望に合わせて容易に変更することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によると、株間変速機構を分岐部よりも伝動上流側に配置することによって、苗載せ台を植付機構に同期して横送り駆動させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によると、別体ケースに不等速変速機構を内装することによって、株間変速機構を備えていない仕様の移植機に別体ケースをアッシー交換するだけで、疎植する際に苗を圃場に引き摺らないように、植付機構の一周期中の植付動作速度に変化を生じさせる不等速変速機構を、株間変速機構と共に装着することができる。また、株間変速機構のみや、不等速変更機構のみを内装した別体ケースと交換して様々な仕様に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本願発明の実施形態に係る移植機としての乗用田植え機1について図面に基づいて説明をする。
【0016】
<第1の実施形態>
図1に示すように、乗用田植え機1は、前輪2,2及び後輪3,3に支持された走行機体5を有し、該走行機体5の後方にアッパーリンク6a及びロアリンク6bからなる昇降リンク6を介して植付部7を支持しており、この植付部7は昇降リンク6に取付けられている油圧シリンダ9が伸縮することによって、昇降自在に構成されている。
【0017】
上記植付部7には、前高後低に構成されマット苗を載置する苗載せ台10が設けられており、この苗載せ台10は作業の進行に合わせて機体幅方向に移動する横送り駆動と、この横送り駆動の周期に合わせて載置されたマット苗を縦方向に送り出す縦送り駆動とをする。
【0018】
苗載せ台10に載置されている苗は、機体左右方向に延設された植付駆動軸11と、植付条数に応じた複数のプランタケース12とを介して動力伝達される植付機構13によって圃場に移植され、植付機構13はプランタケース12の先端両側に回転自在に取付けられたロータリケース15と、ロータリケース15の両端に設けられたプランタアーム16と、プランタアーム16に設けられ回転しながら苗載せ台10から苗を掻き取るフォーク(植付杆)17とから構成されている。
【0019】
上記植付部7は、これら苗載せ台10及び植付機構13の他にプランタケース12の下方に設けられたフロート19など多数の部材によって構成されており、植付PTO軸24(図5参照)と連結した植付PTOドライブ軸20を介して入力ケース21にエンジン22からの動力が入力され、この入力ケース21から植付部7の各装置へと動力が分岐されている。
【0020】
図2乃至3に示すように、植付部7の入力ケース21は、上下方向に長く構成され、その上部は苗載せ台10の裏面に位置し、その下部の機体内側からはプランタケース12が機体後方へと延設しており、図4に示すように、プランタケース12・・・は植付条数に応じて複数個設けられ、植付フレーム23の機体左右方向に所定間隔をあけて固定されている。
【0021】
上記入力ケース21は、機体幅方向右端部に設けられたプランタケース12よりも機体外側に位置していると共に、機体内側に配置された入力ケース本体29と、該入力ケース本体29の機体外側に着脱自在にボルト30a・・・によって取付けられた別体ケース30とに分割して構成されている。
【0022】
この入力ケース本体29は、第1本体ケース29aに第2本体ケース29bをボルト29c・・・によって締結して形成されており、苗載せ台10の横送り速度を変速する横送り変速機構25を内装している。また、別体ケース30には、植付機構13の苗の植付間隔を変更する株間変速機構26と、フォーク17の1周期中の回転速度を場所によって変速させる不等速変速機構27とが内装されている。
【0023】
上述した入力ケース21は、走行機体5から植付部7の中央部に延設された植付PTOドライブ軸20と交差する方向に延設された植付伝動軸31の先端に配置されており、植付伝動軸31には、ベベルギヤ20a、31aの噛合によって植付PTOドライブ軸20からの動力が伝達されている。
【0024】
入力ケース21の別体ケース30内において、上記植付伝動軸31には、株間変速機構26及び不等速変速機構27を構成する歯数の異なったスライドギヤ32及び偏芯ギヤ33が設けられており、上記スライドギヤ32は、植付伝動軸31にスプライン嵌合していると共に、偏芯ギヤ33は植付伝動軸31に遊嵌して設けられている。
【0025】
これらスライドギヤ32及び偏芯ギヤ33の対向する側面にはそれぞれ爪が設けられ、これらの爪によって爪クラッチ35が形成されており、別体ケース30の右側面から突出する株間変速ノブ(等速・不等速切替えノブ)36を操作してシフターによりスライドギヤ32を左右に移動させて断接するように構成されている。
【0026】
上記スライドギヤ32及び偏芯ギヤ33は、動力分配軸37に遊嵌された円形ギヤ39及び偏芯ギヤ40と噛合しており、これらのギヤ32,33,39,40及び爪クラッチ35によって上述した株間変速機構26及び不等速変速機構27が構成されている。
【0027】
また、動力分配軸37には植付クラッチ41が設けられており、該植付クラッチ41は、側面にクラッチ爪が設けられた円形ギヤ39と、動力分配軸37にスプライン嵌合し、該円形ギヤ39に向けてスプリング42によって付勢されているクラッチ体43と、クラッチ体43をスプリング42の付勢力に抗して移動させる植付クラッチワイヤ45とによって構成されている。
【0028】
動力分配軸37の植付クラッチ41の伝動後流には、スプロケット46と、ギヤ47とが固設されており、上記スプロケット46は、植付駆動軸11の右端部に設けられたスプロケット49との間にチェーン50を巻着して植付機構駆動系に動力を分岐していると共に、上記ギヤ47は、横送り変速軸51のギヤ51aと噛合して横送り変速駆動系に動力を分岐している。このため、動力分配軸37、スプロケット46及びギヤ47は、横送り変速機構25へ動力を伝達する横送り変速駆動系と、植付機構13へ動力を伝達する植付機構駆動系とに動力を分配する分岐部となっている。
【0029】
上記横送り変速駆動系の横送り変速軸51には、複数のスプロケット25aが設けられており、このスプロケット25aとスクリューシャフト52の端部に設けられた複数のスプロケット25bとの間にそれぞれチェーン25cを巻着することによって、上述した横送り変速機構25が構成されている。
【0030】
この横送り変速機構25は、上記横送り変速軸51の第2本体ケース29bの右側面から突出した突出部に設けられた変速レバー53によって変速操作され、横送り変速軸51からの動力をスクリューシャフト52に変速して伝達している。
【0031】
スクリューシャフト52には、ガイドピース55が回転に合わせて左右に移動自在に取付けられており、このガイドピース55の左右の移動に合わせてスライドバー(不図示)及び苗載せ台10が機体幅方向に移動(横送り駆動)するように構成されている。
【0032】
更に、スクリューシャフト52の機体内側端部には、縦送り駆動カム56が設けられており、苗載せ台10の横送りに合わせて縦送りレバー57を間欠的に叩き上げ、縦送り駆動機構59を駆動させて適性量の苗を送り出している。
【0033】
一方、植付機構駆動系の植付駆動軸11には複数のプランタケース12が取付けられており、プランタケース間を一本の伝動軸によって連結している。プランタケース12は、植付駆動軸11に設けられたスプロケット60と、ロータリ駆動軸61に設けられたスプロケット62との間に巻着されたチェーン63を内装しており、これによって植付機構13へと動力が伝達されている。
【0034】
なお、別体ケース30は、それぞれ株間変速装置26、不等速変速機構27のみを内装した構成や、横送り変速機構25を内装した構成にしてもよく、入力ケース本体29に必ずしもボルト30a・・・によって取付けられる必要はなく、嵌合いなど他の方法によって取付けられても良い。
【0035】
また、株間変速機構は、トランスミッションケース内に第1の株間変速機構を有し、別体ケース30に疎植、密植用の第2の株間変速機構26を内装する構成としても良い。
【0036】
更に、偏芯ギヤ33,40は、非円形ギヤによって構成してもよく、植付伝動軸31を、機体左右方向に延設された軸と、機体前後方向に延設された軸との組合せによって構成してもよい。
【0037】
次に本実施形態の作用について説明する。図5に示すように、エンジン22によって発生した動力は、出力軸63に設けたプーリ63aを介してベルト65によってHST66の入力軸66aに伝達され、トランスミッション67へと出力される。トランスミッション67へ動力が入力されると、メインクラッチ69を介してギヤ70,71によって植付伝動系と走行伝動系とに分岐され、走行伝動系に分岐された動力はそれぞれ前輪2,2及び後輪3,3へと変速されて出力される。
【0038】
一方、植付伝動系へと分岐された動力は、第1中間軸72及び第2中間軸73を介して植付PTO軸24へと伝達され、該植付PTO軸24と連結し、複数の軸部材がユニバーサルジョイントによって接合された植付PTOドライブ軸20によって植付部7へと出力される。前記植付PTOドライブ軸20の植付部側の先端にはベベルギヤ20aが設けられており、このベベルギヤ20aと植付伝動軸31のベベルギヤ31aとが噛合して植付部7の入力ケース21に動力が入力される。
【0039】
入力ケース21に入力された動力は、スライドギヤ32及び円形ギヤ39の噛合によって植付クラッチ41を介し動力分配軸37へと出力され、スプロケット46によって植付機構駆動系に動力を分配すると共に、ギヤ47によって横送り変速駆動系に動力を分配する。
【0040】
なお、作業者は、植付クラッチ操作レバー(不図示)を操作してクラッチ体43及び円形ギヤ39との係合を切断することができると共に、株間変速ノブ(等速・不等速切替えノブ)36を操作して爪クラッチ35を係合させ、偏芯ギヤ33,40の噛合により植付伝動軸31からの動力を不等速に変速して、動力分配軸37へと出力すると共に、苗の植付株間を疎植にすることができる。
【0041】
植付機構駆動系に出力された動力は、植付駆動軸11へと伝達され、植付駆動軸11に複数配置されたプランタケース12・・・に内装されたチェーン63・・・を介して植付機構13へと伝達される。また、横送り変速駆動系に出力された動力は、横送り変速機構25によって変速されてスクリューシャフト52へと出力され、苗載せ台10を横送り駆動させる。
【0042】
ところで、上述した株間変速機構26及び不等速変速機構27を有している仕様から、これら株間変速機構26及び不等速変速機構27を有していない仕様(例えば単に一組の円形ギヤによって植付伝動軸31からの動力を動力分配軸37に出力させるなど)に変更する場合、作業者はボルト30aを外して、別体ケース30を入力ケース本体29から取外す。
【0043】
この時、別体ケース30に内装されている植付伝動軸31及び動力分配軸37は、それぞれ多角形の軸の嵌合いなどによって分割可能に構成されているため、これら植付伝動軸31及び動力分配軸37の別体ケース30に内装されている部分は、分割部75から別体ケース30と一緒に取外される。
【0044】
作業者は、別対ケース30が取外されると、株間変速機構26及び不等速変速機構27を内装していない別体ケース(不図示)を入力ケース本体29にボルト30aによって取付け、作業を完了する。
【0045】
また、作業者は、別体ケース30を、それぞれこれら株間変速機構26、不等速変速機構27のみを内装した別体ケース30に交換して仕様変更することもできる。
【0046】
上記のように乗用田植え機1を構成したことによって、入力ケース21を多数の部材が配置される植付部7の機体左右方向中央部に配置する必要がなく、組立性が向上すると共に、入力ケース21が機体左右方向右側に配置されているため、整備性も向上する。
【0047】
また、入力ケース本体29に横送り変速機構25を内装し、横送り変速ケースと入力ケース21を一体化したことにより、部品点数を少なくすることが出来ると共に、植付部7の伝動構造をコンパクトにすることが出来る。
【0048】
更に、従来仕様の変更などにより、株間変速機構26及び不等速変速機構27のギヤ32,33,39,40を変更する場合、機体側に設けられた大きなトランスミッション67を開けなければならなかったが、入力ケース21を入力ケース本体29と、別体ケース30とに分割して構成し、この別体ケース30に上記株間変速機構26及び不等速変速機構27を内装したことによって、別体ケース30をアッシー交換することによって、顧客の要望に応じて容易に仕様の変更ができる。また、別体ケース30以外の構成は、仕様が違ったとしても共通した構成であるため、コストを低く抑えることが出来る。
【0049】
更に、植付駆動軸11の右端部から動力伝達することができるため、植付駆動軸11を長い略々一本の軸によって構成することができ、軸の折損防止のために介在させていたオルダムジョイントを介在させる必要がなくなり、部品の共通化とも相俟って更にコストを削減することができる。
【0050】
また、植付クラッチ41を入力ケース21に内装したため、定位置停止クラッチである植付クラッチ41の調整を植付クラッチ41の伝動後流側だけで行えばよく、組立性や整備性が向上した。特に、乗用田植え機1は、組立時に植付部7とトランスミッション67との組み立ては別のため、トランスミッション67側に植付クラッチ41が配設されると、フォーク17が土中で止まらないように、その伝動後流側全てを調節しなければならなかったが、その調整作業が大幅に軽減された。
【0051】
更に、株間変速機構26及び不等速変速機構27を動力分岐部37,46,47よりも伝動上流側に設けたことによって、植付機構に同期して苗載せ台10を横送り駆動させることができ、疎植時にフォーク17の回転が苗載せ台10の横送りに比して遅くなって、マット苗を引き摺ることもない。
【0052】
また、別体ケース30は、株間変速機構26、不等速変速機構27などを個別でも、組合わせても内装することが出来るため、別体ケース30に内装する機構の組合わせによって、様々な仕様にすることができる。
【0053】
<第2の実施形態>
図6乃至9は、本願発明の第2の実施形態の移植機としての乗用田植機1の植付部7を示すものであり、植付部7の入力ケース21に内装された株間変速機構26と、不等速変速機構27とを個別に構成したものである。以下に第1の実施形態と相違する部分について、図面に基づいて説明をする。なお、第1の実施形態と対応する部材については同一符号を使用する。
【0054】
図8に示すように、植付PTOドライブ軸20からの動力は、ベベルギヤ20a,31aの噛合によって植付伝動軸31へと出力されており、この植付伝動軸31によって入力ケース21に動力が入力されている。入力ケース21の別体ケース内部において、植付伝動軸31には株間変速機構26を構成する歯数の異なったスライドギヤ32及び円形ギヤ76が設けられており、上記スライドギヤ32は、植付伝動軸31にスプライン嵌合していると共に、円形ギヤ76は植付伝動軸31に遊嵌して設けられている。
【0055】
これらスライドギヤ32及び円形ギヤ76は、動力分配軸37に遊嵌された円形ギヤ39,77と噛合していると共に、その対向する側面にはそれぞれ爪が設けられ、この爪によって爪クラッチ35が形成されている。これらギヤ32,39,76,77及び爪クラッチ35によって株間変速機構26が構成されている。
【0056】
また、動力分配軸37には植付クラッチ41が設けられており、該植付クラッチ41は、側面にクラッチ爪が設けられた円形ギヤ39と、動力分配軸37にスプライン嵌合し、該円形ギヤ39に向けてスプリング42によって付勢されているクラッチ体43と、クラッチ体43をスプリング42の付勢力に抗して移動させる植付クラッチワイヤ45によって構成されている。
【0057】
動力分配軸37の植付クラッチ41の伝動後流には、不等速変速機構27を構成する円形ギヤ79及び偏芯ギヤ80が設けられており、横送り変速軸51に遊嵌している円形ギヤ81及び偏芯ギヤ82と噛合して等速ギヤ列79,81と、不等速ギヤ列80,82とを形成している。
【0058】
また、円形ギヤ79及び偏芯ギヤ80の対向した面にはそれぞれ爪が設けられ、この爪によって爪クラッチ83が形成されており、これら等速ギヤ列79,81、不等速ギヤ列80,82及び爪クラッチ83によって不等速変速機構27が構成されている。
【0059】
上記爪クラッチ83は、株間変速ノブ(等速・不等速切替えノブ)36によって、株間変速機構26の爪クラッチ35と連動して断接されるように構成されており、動力分配軸37にスプライン嵌合された円形ギヤ79及び株間変速機構26のスライドギヤ32は、株間変速ノブ(等速・不等速切替えノブ)36のシフターによって軸上を左右に移動自在に構成されている。
【0060】
一方、動力分配軸37には、円形ギヤ80及び偏芯ギヤ83の他に、横送り変速軸51にスプライン嵌合したギヤ51aと噛合するギヤ47が固設されており、このギヤ47によって横送り変速駆動系に動力が分岐されている。
【0061】
また、不等速変速機構27を構成する円形ギヤ81及び不等速ギヤ82にはスプロケット46が一体に設けられ、植付駆動軸11のスプロケット49との間にチェーン50を巻着して植付機構駆動系に動力を分岐しており、上記動力分配軸37及びギヤ47,79が横送り変速機構25へ動力を伝達する横送り変速駆動系と、植付機構13へ動力を伝達する植付機構駆動系とに動力を分配する分岐部となっている。
【0062】
更に、不等速伝動機構27と横送り変速機構25とは、それぞれ横送り変速駆動系、植付機構駆動系とに分かれて設けられており、苗載せ台10に不等速に動力が伝達されないように構成されている。
【0063】
図9に示すように、走行機体に搭載されたエンジン22からの動力はトランスミッション67を介して、植付PTO軸24へ分岐され、植付PTOドライブ軸20、植付伝動軸31を経て植付部7の入力ケース21に入力される。入力ケース21に入力された動力は、スライドギヤ32及び円形ギヤ39の噛合によって植付クラッチ41介して動力分配軸37に出力され、等速ギヤ列79,81で変速されてスプロケット46により植付機構駆動系に動力が分配されると共に、ギヤ47によって横送り変速駆動系に動力が分配される。
【0064】
なお、作業者が苗を疎植する場合、株間変速ノブ(等速・不等速切替えノブ)36を操作して株間変速機構26の爪クラッチ35及び不等速変速機構27の爪クラッチ83を連動して係合させる。これらの爪クラッチ35、83が係合すると、植付伝動軸31に入力された動力は、疎植用のギヤ列76,77を通って動力分配軸37に出力され、偏芯ギヤからなる不等速ギヤ列80,82によって不等速に変速されて植付伝動系に伝達されると共に、疎植用のギヤ列76,77によって変速された動力がギヤ47によって横送り変速駆動系にも伝達される。
【0065】
植付機構駆動系に出力された動力は、スプロケット46,49間に巻着されたチェーン50によって植付駆動軸11へと伝達され、植付駆動軸11に複数配置されたプランタケース12・・・に内装されたチェーン53・・・を介して植付機構13へと伝達される。また、横送り変速駆動系に出力された動力は、横送り変速機構25によって変速されてスクリューシャフト52へと出力され、苗載せ台10を横送り駆動させる。
【0066】
一方、作業者は上述した株間変速機構26及び不等速変速機構27を備えた仕様から、これら株間変速機構26及び不等速変速機構27を備えていない仕様に変更する場合、ボルト30aを外して入力ケース本体29から、株間変速機構26及び不等速変速機構27を内装している別体ケース30を取外し、これら株間変速機構26及び不等速変速機構27を内装していない別体ケース(不図示)にアッシー交換する。
【0067】
上記のように、乗用田植え機1を構成したことによって、第1の実施形態の効果の他に、不等速変速機構27を植付機構駆動系に配置し、横送り変速駆動系に不等速に変速された動力が伝達されることを防止することができ、苗載せ台10を円滑に横送り駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本願発明に係る移植機の側面図。
【図2】本願発明の第1の実施形態に係る移植機の植付部の要部側面図。
【図3】本願発明の第1の実施形態に係る移植機の入力ケースの側面図。
【図4】本願発明の第1の実施形態に係る移植機の植付部の伝動展開図。
【図5】本願発明の第1の実施形態に係る移植機の動力伝達図。
【図6】本願発明の第2の実施形態に係る移植機の植付部の要部側面図。
【図7】本願発明の第2の実施形態に係る移植機の入力ケースの側面図。
【図8】本願発明の第2の実施形態に係る移植機の植付部の伝動展開図。
【図9】本願発明の第2の実施形態に係る移植機の動力伝達図。
【符号の説明】
【0069】
1 乗用田植え機(移植機)
5 走行機体
6 昇降リンク
7 植付部
10 苗載せ台
13 植付機構
20 植付PTOドライブ軸
21 入力ケース
22 エンジン
25 横送り変速機構
26 株間変速機構
27 不等速変速機構
29 入力ケース本体
30 別体ケース
31 植付伝動軸
37,46,47,79 分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した走行機体の後方に、昇降リンクを介して植付部を昇降自在に支持し、前記エンジンからの動力を植付PTOドライブ軸によって前記植付部に伝達すると共に、該植付部は、苗を載置する苗載せ台と、該苗載せ台から苗を掻き取り圃条に移植する植付機構と、を有してなる移植機において、
前記植付PTOドライブ軸からの動力が伝達され、かつ該植付PTOドライブ軸と交差する方向に延びる植付伝動軸と、該植付伝動軸の先端に設けられ、前記植付部の機体左右方向外側に位置する入力ケースとを備え、
前記入力ケースを、機体左右方向内側に配置された入力ケース本体と、該入力ケース本体の機体左右方向外側に着脱自在に取付けられた別体ケースとに分割して構成し、
該別体ケースを、苗の植付間隔を変更する株間変速機構を内装したものと、該株間変速機構を内装していないものとに交換可能にした、
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記入力ケース本体に、前記苗載せ台の横送り駆動を変速する横送り変速機構を内装し、
前記別体ケースに内装された前記株間変速機構を、前記横送り変速機構及び前記植付機構へ動力を分配する分岐部よりも伝動上流側に配置した、
請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記別体ケースを、前記株間変速機構及び、前記植付機構の一周期中の植付動作速度に変化を生じさせる不等速変速機構を内装したものと、これら株間変速機構及び不等速変速機構の少なくともどちらか一方を内装していないものとに交換可能に構成してなる、
請求項1又は2記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−22232(P2010−22232A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184943(P2008−184943)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】