説明

種子収納媒体

【課題】植物等の種子を基材に収納してなる種子収納媒体において、カバーフィルム等の材質や、培地の環境によらず、安定した発芽や成長が可能な種子収納媒体を提供することにある。
【解決手段】基材2に設けた種子収納部に種子5と高分子吸収体6とを共に収納し、該種子収納部をカバーフィルム7で封止したため、土中に埋めた際に高分子吸収体6が土中の水分を吸収して体積が増加することにより、確実にカバーフィルム7を破壊し、種子5の発芽率を高めることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物等全般の種子を収納した媒体に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来から、農作業において手作業にて種子を土中に散布する手間を省くため、若しくは、イベントの景品等として手軽に多数の人に植物等の種子を配布するため等に、基材表面や基材に設けた凹部に植物等の種子を配置し、種子の発芽の力で破壊可能な薄いカバーフィルム等で表面を覆う等して収納することが行われている。
特許文献としては例えば、土中において容易に腐食する紙、布、木版等の生地材に凹部を設け、種子を収納し、凹部を塗膜層あるいはカバーフィルムによって封止した種子収納シートが開示されている(特許文献1)。
また、紙等の生分解性を有する素材の表面に植物の種子と植物成長促進物質を配置し、その表面にカバーフィルムを被せたメッセージ伝達媒体が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−106714
【特許文献2】特開平11−277952
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、植物が発芽する力だけで覆っているカバーフィルム等を破るため、安定した発芽率を得られないこと、カバーフィルムの強度や種類によっては、土中に埋めた際に水分を吸収することにより膨潤や伸び強度が向上し、強度が低下せずに、植物の発芽や成長を妨げること、等の課題があった。
また、種子の発芽条件の一つである水分補給が培地の環境等に影響され、安定した発芽率を得られないという課題もあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、カバーフィルム等の材質や、培地の環境によらず、安定した発芽や成長が可能な種子収納媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、種子収納部を設けた基材と、該種子収納部に収納された種子及び高分子吸収体と、少なくとも該種子収納部を覆うカバーフィルムと、を具備することを特徴とする種子収納媒体としたものである。
【0007】
また本発明は、前記種子収納部が、凹部又は孔部であることを特徴とする前記種子収納媒体としたものである。
【0008】
また本発明は、前記カバーフィルムに前記種子が接着されていることを特徴とする前記種子収納媒体としたものである。
【0009】
また本発明は、前記カバーフィルムは、水溶性又は生分解性であることを特徴とする前記種子収納媒体としたものである。
【0010】
また本発明は、前記カバーフィルムと前記基材とは、生分解性の接着剤で貼り合わせられていることを特徴とする前記種子収納媒体としたものである。
【0011】
また本発明は、前記基材には、少なくとも前記種子収納部を含む形状に該基材を切り取り可能な切取部が設けられていることを特徴とする前記種子収納媒体としたものである。
【0012】
また本発明は、前記基材には、ICチップ若しくは磁気記録層からなる情報記録部が設けられており、前記切取部は、少なくとも前記種子収納部を含む部分と、少なくとも該情報記録部の一部を含む部分とに基材を分断可能であることを特徴とする前記種子収納媒体としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上説明したような構成であるから、以下に示す如き効果がある。
【0014】
即ち、本発明における種子収納媒体は、基材に設けた種子収納部に種子と高分子吸収体とを共に収納し、該種子収納部をカバーフィルムで封止したため、土中に埋めた際、又は水耕栽培用スポンジ上に載置された際に高分子吸収体が水分を吸収して体積が増加することにより、確実にカバーフィルムを破壊し、種子の発芽率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における種子収納媒体の一実施形態例における断面図である。
【図2】本発明における種子収納媒体における接着層の設け方を説明する断面図である。
【図3】本発明における種子収納媒体の使用例を説明する概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明における種子収納媒体について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明における種子収納媒体の一実施例における断面図である。本発明における種子収納媒体1は、基材2に種子収納部として凹部3若しくは孔部4を設け、そこに種子5及び高分子吸収体6を収納し、これをカバーフィルム7で封止してなる。図1(a)は種子収納部が凹部である場合の種子収納媒体の一実施例であり、図1(b)は種子収納部が孔部である場合の種子収納媒体の一実施例である。
【0018】
基材としては、プラスチック、生分解性樹脂、紙等が使用でき、特に限定しないが、特に生分解性樹脂や紙は土中に埋めた際に徐々に分解されるので好ましい。生分解性樹脂の材料としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等の生分解性を有する脂肪族ポリエステル系、及び樹脂等が挙げられる。紙としては、一般的な紙、バルカナイズドファイバー等が挙げられる。また、基材は、花の香り等を芳香させるものであっても良い。例えば、収納する種子から発芽する植物がつける花又は実等の香りを芳香させるものであると、よりユーザを楽しませることが可能である。
【0019】
基材の大きさ、形状については、特に限定しないが、JIS規格に規定されている、短辺が53.92〜54.03mm、長辺が85.47〜85.72mm、厚みが0.76±0.08mmのカード基材を用いても良い。しかし、本発明における基材の形状は特にこれに限定されるものではなく、長方形、正方形、台形、星型、ハート型、その他諸々の自由な形状に設計して良い。また、基材は単層構造であっても、複数層からなっても良い。
【0020】
種子収納部は、種子及び高分子吸収体を収納するための空間である。種子収納部の構造としては、例えば凹部及び孔部が挙げられる。凹部は、基材をザグリ加工することにより形成可能である。他にも、基材が複数層からなる場合には、貫通孔を有する基材と、貫通孔が無い基材とを重ねることにより凹部を形成することも可能である。また、孔部は基材を抜き打ち加工することにより形成可能である。ただし、種子収納部は凹部及び孔部以外の構造であっても、種子及び高分子吸収体が収納可能な構造であれば特に限定しない。また、種子収納部の大きさ、形状についても、収納する種子及び高分子吸収体の大きさや量により適宜設定してよく、特に限定しない。また、1つの種子収納媒体に対して、種子収納部を複数形成しても良い。
【0021】
本発明における種子とは、花、草、野菜、果物、木等の植物全般における種子またはその断片、若しくは、菌糸類の胞子、地衣類の芽子等を指しており、種子収納部に収納が可能な大きさ、形状、性質を有しているのであれば、特に限定されるものではない。
【0022】
高分子吸収体とは、水分を吸収して保持し、膨張する材料のことである。高分子吸収体の水分を保持するという働きにより、種子への安定的な水分補給が可能である。また、膨張するという働きにより、カバーフィルムと接することでカバーフィルムへも水分を供給し、カバーフィルムの膨潤、軟化を促進させる効果を有する。また、合わせてカバーフィルムに圧力をかけ、押し出すことにより、種子の発芽の力だけでは完全に破壊しきれないカバーフィルムの破壊・分解を助けるという効果も有する。高分子吸収体を収納する量は、種子の大きさ、量、割合、種子収納部の大きさ等に応じて適宜決定して良い。
【0023】
具体的な高分子吸収体の材料としては、ポリアクリル酸系高分子、でんぷん系高分子、カルボキシルメチルセルロース系高分子等が挙げられる。
【0024】
高分子吸収体は、一般的に吸収した水分量の体積まで膨張する。また水分の吸収量は、材料により異なるが、自重の数十倍から数百倍である。今回、高分子吸収体として、マジッククリスタル(松野工業(株)製)を用いて実験したところ、土中に埋めた場合に1g当たり50g(約50cm)以上の水分が吸収され、膨張することが確認できた。
【0025】
高分子吸収体の分量としては、材料や、埋められる土中の環境によっても異なるが、種子収納部に収納され、土中に埋められて水分を吸収することで、基材の厚さ以上に膨張する分量であることが望ましい。これにより、カバーフィルムの破壊を確実に助けることが可能となる。
【0026】
カバーフィルムは、当然であるが、種子収納部が凹部の場合には、凹部を封止するために基材の片面に設ける必要が有り、種子収納部が孔部の場合には、基材の両面に設ける必要がある。
【0027】
また、カバーフィルムは通常時には確実に種子を封止するため、一定の破裂強さを有する必要が有る。ただし、土中に埋めた際、又は水耕栽培用スポンジ状に置かれた際等には、種子の発芽率を向上させるために、破壊されやすい材料である必要がある。よって、水や微生物で分解、溶解可能な紙、でんぷん質、生分解性樹脂等が挙げられる。カバーフィルムの材料として、特に限定しないが、環境問題的視点から特に生分解性樹脂や紙は土中に埋めた際に徐々に分解されるので好ましい。また、カバーフィルムの厚みは、その材料によっても異なるが、数μm〜200μmとすることが望ましい。

【0028】
カバーフィルムの材料として紙を用いる場合には、破裂強さ(kgf/cm{kPa}(10枚))が0.8{78}以上(参考:JIS P8112 紙及び板紙のミューレン低圧形試験機による破裂強さ試験方法)であることが望ましい。
【0029】
上記破裂強さを有する紙として、例えば、トイレットペーパー等が使用可能である。ただし、すきむら、破れ、穴等の使用状の欠点がないものを用いる。また、トイレットペーパーは、吸水度が20(mm)程度(試験時間:1分間、水温:20±5℃、参考:JIS P8141 紙のクレム法による吸水度試験方法)であり、水を吸収し、ほぐれやすい性質を有するため、カバーフィルムとして適している。
【0030】
また、カバーフィルムの材料として生分解性樹脂を用いる場合には、基材と同様、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等の生分解性を有する脂肪族ポリエステル系、及び樹脂等が挙げられる。
【0031】
カバーフィルムの形状としては、少なくとも基材に設けられた種子収納部の開口部を覆うに足りるだけの面積を有していれば良いが、特にその形状は限定されるものではない。例えば、種子収納部が凹部である場合には、図1(a)−1に示すように、凹部の開口部の面積よりも少し大きな面積を有するカバーフィルムを用いても良いし、図1(a)−2に示すように、基材の全面を覆うカバーフィルムを用いても良い。
【0032】
また、種子収納部が孔部の場合には、図1(b)−1に示すように、孔部の開口部の面積よりも少し大きな面積を有するカバーフィルムを2枚用いても良いし、図1(b)−2及び(b)−3に示すように、いずれか片方は孔部の面積よりも少し広い面積を有するカバーフィルムを、もう片方は基材の全面を覆う面積のカバーフィルムを用いても良い。さらにまた、図1(b)−4に示すように、両面とも、基材の全面を追う面積のカバーフィルムを用いても良い。本発明におけるカバーフィルムの形状は上述した形状に限定されるものではなく、適宜設計可能である。
【0033】
カバーフィルムには、基材の種子収納部を封止するため、少なくとも種子収納部の周辺部と重なる部分に接着層8を設けておく必要が有る。接着層は、種子及び高分子吸収体を収納するため、土中に埋められる前の通常時には、基材からはがれないだけの接着力を有していることが求められる。接着層の材料としては、でんぷん系、ゴム系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系等が挙げられる。接着剤の材料として、特に限定しないが、環境問題的視点から特に生分解性樹脂や紙は土中に埋めた際に徐々に分解されるので好ましい。
【0034】
接着層の設け方について、図2を用いて説明する。なお、図2にはカバーフィルムが、種子収納部の開口部の面積より少し広い面積を有している場合についてのみ示しているが、これはカバーフィルムが基材の全面に設けられている場合であっても、その他いずれの形状で設けられている場合であっても同様である。
【0035】
まず、種子収納部が凹部である場合について、図2(a)に実施形態例をいくつか示した。凹部に収納した種子及び高分子吸収体を基材の片面からカバーフィルムで封止する場合、例えば図2(a)−1に示したように、凹部の周辺に対応する部分に接着層を設けたカバーフィルムを用いる事が出来る。この場合、凹部に種子及び高分子吸収体を収納した後に、位置を合わせて基材にカバーフィルムを貼り合わせると良い。
【0036】
また、図2(a)−2に示したように、接着層はカバーフィルムの全面に設けても良い。この場合、図に示したように、カバーフィルムを基材に貼り合わせる際に、事前に凹部に対応する部分の接着層に種子及び高分子吸収体若しくはそのいずれか一方を仮固定しておき、これを基材に貼り付けるようにしても良い。このようにすることで、凹部にそれぞれ種子を充填する手間を省くことができ、生産効率を向上させることが可能であり、また貼り合わせの際に種子、高分子吸収体を散布させないという効果も有する。さらにまた、種子の間隔を固定し、種子収納媒体が斜めに設置された場合であっても、種子収納部の角に種子が偏ることを防ぐことが可能となる。
【0037】
次に種子収納部が孔部である場合について、図2(b)に実施形態例をいくつか示した。孔部に収納した種子及び高分子吸収体を基材の両面からカバーフィルムで封止する場合、例えば、図2(b)−1に示したように、両面とも孔部の周辺に対応する部分に接着層を設けたカバーフィルムを用いる事が出来る。この場合、基材の片面に先にカバーフィルムを貼り合わせて孔部の片側を封止し、孔部に種子及び高分子吸収体を収納した後に基材のもう一方の面にカバーフィルムを貼り合わせることにより封止可能である。
【0038】
また、図2(b)−2に示したように、片側のカバーフィルムには、孔部の周辺に対応する部分に接着層を設け、もう一方のカバーフィルムには全面に接着層を設けておくことも出来る。この場合にも、図2(a)−2と同様、全面に接着層を設けたカバーフィルムの孔部に対応する部分に、事前に種子又は高分子吸収体若しくはそのいずれか一方を仮固定しておき、これを基材に貼り合わせるようにしても良い。
【0039】
若しくは、先に全面に接着層を設けたカバーフィルムを基材に貼り合わせ、基材の反対側から接着層上に種子若しくは高分子吸収体を仮固定した後に、基材のもう一方の面にカバーフィルムを貼り合せても良い。こうすることで、製造工程中に種子、高分子吸収体が飛散することを防止することが可能となる。また、この際、図2(b)−3に示したように、高分子吸収体を接着層上に敷き詰めて仮固定することで高分子吸収体の層を形成し、この層上に種子を配置しても良い。
【0040】
さらにまた、図2(b)−4に示したように、両面のカバーフィルムの全面に接着層を設けておくことも出来る。この場合、両面のカバーフィルムの孔部に対応する部分に、事前に種子又は高分子吸収体若しくはそのいずれか一方を仮固定しておき、これを基材に貼り合わせるようにしても良い。また、片方のカバーフィルムには種子を、もう一方のカバーフィルムには高分子吸収体を仮固定するようにすれば、製造工程が整理されて良い。
【0041】
図3には、本発明における種子収納媒体の使用形態例を示す。本発明における種子収納媒体は、図3に示すように、カード形状で形成された媒体から特定の部分を切り取って使用するSIMカード、ミニICカード、ミニ磁気カード等に有効に使用できる。
【0042】
基材を切り取るためには、基材に切取可能な切取部を設けておく必要が有る。切取部は、片面若しくは両面からのハーフカット加工する、破線状等に一部を抜き打ち加工する等して得られる。
【0043】
図3(a)は種子収納媒体をSIMカードに使用した例である。SIMカードは、接触式のICモジュール10を有し、全体としては通常の接触式ICカードと同じ形状をしている。この接触式のICモジュールの周囲に切取部を設けておくことで、携帯電話、パソコンのUSBアダプタ等に差し込み可能な形状のSIMカードを得ることが可能となる。そして、このSIMカードとして切り取られる部分以外の部分に、種子収納部を設け、種子を収納し、種子収納媒体となる。
【0044】
図3(b)は種子収納媒体をミニICカードに使用した例である。図に示したミニICカードは、非接触式のICチップ11と通信用のアンテナ12を備え、全体としては通常の非接触式ICカードと同じ形状をしているが、非接触式のICチップの代わりに接触式のICモジュールを備えていても構わない。このICチップ及びアンテナを含む部分の周囲に切取部を設けておくことで、様々な形状を有するミニICカードを得ることが可能である。図においては、ミニICカードの形状は、長方形であるが、特にこれに限定されるものではない。そして、このミニICカードとして切り取られる部分以外の部分に、種子収納部を設け、種子を収納し、種子収納媒体となる。
【0045】
図3(c)は種子収納媒体をミニ磁気カードに使用した例である。ミニ磁気カードは、磁気記録部13を有し、全体としては通常の磁気カードと同じ形状をしている。この磁気記録部を、外部の磁気読取装置との通信が可能な面積を少なくとも有するように、少なくとも一部含む形状に切取部を設けておくことで、ミニ磁気カードを得ることが可能である。また、ミニ磁気カードについても、その形状は図示したものに限定されない。そして、このミニ磁気カードとして切り取られる部分以外の部分に、種子収納部を設け、種子を収納し、種子収納媒体となる。
【0046】
つまり、SIMカード、ミニICカード、ミニ磁気カード等は、従来の生産ラインを使用する為に、製造時には通常のカードの一部を切り取って使用し、残りの部分は廃棄されるため、エコロジーの観点から問題になっていた。この従来は廃棄される部分に、種子収納部を設けて種子を収納することにより、有効活用が可能となるのである。
【実施例1】
【0047】
基材として、厚さ0.75〜0.81mmのバルカナイズドファイバー(東洋ファイバー(株)製)を用い、基材の一部に接触型ICモジュールと、SIMカード形状に切取可能な切取部を設けた。そして、SIMカードに切取られる以外の部分に、直系5mm、深さ0.7mmの凹部を設け、その中へ種子と、粒径が約0.2〜0.8mm程度のマジッククリスタル(松野工業(株)製)(高分子吸収体を収納した量は種子と大体同量)とを収納し、該孔部の両面を接着層としてでんぷん糊を設けた厚さ0.065mmの水溶紙30MDP(日本製紙パピリア(株)製)で封止し、図3(a)に示した形状の種子収納媒体を得た。高分子吸収体の収納量は、種子と大体同量とした。この種子収納媒体に収納する種子の種類を、スウィートバジル、ローズカスミソウ、忘れな草、ペパーミントと変えることで、サンプル1−1,1−2,1−3,1−4とした。
【0048】
サンプル1−1乃至1−4を1日直射日光の当たらない場所で乾燥させた後、SIMカード部分を切り取り、室温約23℃湿度約40%の室内にて、残りの部分を土中に埋めて水をやり、その後も土が完全に乾燥しないよう、定期的に水を与えた。発芽に要する日数は、種子の種類によって異なるので一概に何日後とは明記できないが、各々の種子が発芽に要する日数を十分に経過した後、各サンプルの発芽率を測定したところ、表1の結果が得られた。なお、この発芽率は、各サンプルについて種子を約10粒程度収納したものを5つ作成して求めたものである。
【表1】

【実施例2】
【0049】
基材として、厚さ0.75〜0.81mmのバルカナイズドファイバー(東洋ファイバー(株)製)を用い、その一部に磁気記録層と、ミニ磁気カード形状に切り取り可能な切取部を設けた。また、ミニ磁気カード形状に切取る以外の部分に、直系5mmの孔部を設け、その中へ種子と、粒径が約0.2〜0.8mm程度のマジッククリスタル(松野工業(株)製)とを収納し、該孔部を接着層としてでんぷん糊を設けた厚さ0.065mmの水溶紙30MDP(日本製紙パピリア(株)製)で両面を封止し、図3(c)に示した形状の種子収納媒体を得た。高分子吸収体の収納量は、種子と大体同量とした。この種子収納媒体に収納する種子の種類を、スウィートバジル、ローズカスミソウ、忘れな草、ペパーミントと変えることで、サンプル2−1,2−2,2−3,2−4とした。
【0050】
サンプル2−1乃至2−4を1日直射日光の当たらない場所で乾燥させた後、ミニ磁気カード部分を切り取り、室温約23℃、湿度約40%の室内にて、残りの部分を水耕栽培用スポンジ上へ静置して水をやり、その後もスポンジが完全に乾燥しないよう、定期的に水を与えた。そして、各々の種子が発芽に要する日数を十分に経過した後、各サンプルの発芽率を測定したところ、表2の結果が得られた。なお、この発芽率は、各サンプルについて種子を約10粒程度収納したものを5つ作成して求めたものである。
【表2】

【0051】
[比較例1]
基材の凹部に高分子吸収体を収納せず、種子のみを収納した以外は、実施例1と同様にして種子収納媒体を得た。この種子収納媒体に収納する種子の種類を、スウィートバジル、ローズカスミソウ、忘れな草、ペパーミントと変えることで、サンプル3−1,3−2,3−3,3−4とした。
【0052】
サンプル3−1乃至3−4を1日直射日光の当たらない場所で乾燥させた後、SIMカード部分を切り取り、室温約23℃、湿度約40%の室内にて、残りの部分を土中に埋めて水をやり、その後も土が完全に乾燥しないよう、定期的に水を与えた。発芽に要する日数は、種子の種類によって異なるので一概に何日後とは明記できないが、各々の種子が発芽に要する日数を十分に経過した後、各サンプルの発芽率を測定したところ、表3の結果が得られた。なお、この発芽率は、各サンプルについて種子を約10粒程度収納したものを5つ作成して求めたものである。
【表3】

【0053】
実施例1、2及び比較例1を比較すると、本発明における種子収納媒体の構成を満たす実施例1、2では、種子収納部に収納した高分子吸収体が水分を吸収して膨張し、確実にカバーフィルムを破壊しており、いずれの種類の種子においても、比較例1と比べて発芽率が向上していることが分かる。また、実施例1及び2においては、種子の種類によりばらつきはあるが、安定した発芽率が得られ、生育も順調であったが、比較例1においては、唯一発芽したスウィートバジルにおいても、カバーフィルムの端部から土中に抜けて発芽したものであり、土中の茎部はもやしのように白く、葉は実施例のものより黄緑がかっており、生育不良が見られた。
【0054】
さらにまた、実施例1及び2は、いずれも基材及びカバーフィルムが生分解性若しくは水溶性を有しているため、土中に埋めた若しくは水耕栽培用スポンジ上に静置した後、徐々に分解若しくは溶解し、エコロジー適性も高いことが分かった。
【符号の説明】
【0055】
1・・・種子収納媒体
2・・・基材
3・・・凹部
4・・・孔部
5・・・種子
6・・・高分子吸収体
7・・・カバーフィルム
8・・・接着層
9・・・切取部
10・・・接触ICモジュール
11・・・ICチップ
12・・・アンテナ
13・・・磁気記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子収納部を設けた基材と、
該種子収納部に収納された種子及び高分子吸収体と、
少なくとも該種子収納部を覆うカバーフィルムと、を具備することを特徴とする種子収納媒体。
【請求項2】
前記種子収納部が、凹部又は孔部であることを特徴とする請求項1に記載の種子収納媒体。
【請求項3】
前記カバーフィルムに前記種子が接着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の種子収納媒体。
【請求項4】
前記カバーフィルムは、水溶性又は生分解性であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の種子収納媒体。
【請求項5】
前記カバーフィルムと前記基材とは、生分解性の接着剤で貼り合わせられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の種子収納媒体。
【請求項6】
前記基材には、少なくとも前記種子収納部を含む形状に該基材を切り取り可能な切取部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の種子収納媒体。
【請求項7】
前記基材には、ICチップ若しくは磁気記録層からなる情報記録部が設けられており、
前記切取部は、少なくとも前記種子収納部を含む部分と、少なくとも該情報記録部の一部を含む部分とに基材を分断可能であることを特徴とする請求項6に記載の種子収納媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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