説明

種子消毒設備

【課題】 従来の種籾の温湯消毒装置では、温湯タンクでは所定時間(例えば10分)にわたり温湯浸漬し、温湯消毒が終了すると次の種子に入れ替えるものであり、一度に消毒できる種子量が制限され能率的に種子の消毒ができないという不具合があった。
【解決手段】 温湯消毒槽(1)の後工程に種子冷却槽(11)を設け、種子を温湯消毒槽(1)内の温湯に浸漬しながら移送して温湯消毒を行った後、冷却水を貯留する種子冷却槽(11)で冷却始端側から冷却終端側へ移送して冷却する構成とし、種子冷却槽(11)で冷却を終えた種子を、該種子を収容するバケット(12)を反転させて排出する構成とした種子消毒設備とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子消毒設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種籾の温湯消毒装置において、温湯タンクに張った温湯を循環させながら所定の温湯消毒温度に保持するように温度制御手段を接続しておき、温湯タンクの温湯に種籾を浸漬すると共に、所定の温湯消毒温度あるいはそれよりやや高い温度の温湯を温度調整温湯として温湯タンクに注入を開始し、所定の温湯消毒温度に上昇したときに温度調整温湯の注入を停止して、所定の時間に限って種籾に温湯を浴びせるようにしたものは公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3448773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来装置では、温湯タンクでは所定時間(例えば10分)にわたり温湯浸漬し、温湯消毒が終了すると次の種子に入れ替えるものであり、一度に消毒できる種子量が制限され能率的に種子の消毒ができないという不具合があった。そこで、この発明はこのような不具合を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、温湯消毒槽(1)の後工程に種子冷却槽(11)を設け、種子を温湯消毒槽(1)内の温湯に浸漬しながら移送して温湯消毒を行った後、冷却水を貯留する種子冷却槽(11)で冷却始端側から冷却終端側へ移送して冷却する構成とし、種子冷却槽(11)で冷却を終えた種子を、該種子を収容するバケット(12)を反転させて排出する構成とした種子消毒設備とする
【0006】
請求項2の発明は、種子を温湯消毒槽(1)内で所定時間停止しながら間欠移送する構成とした請求項1に記載の種子消毒設備とする。
請求項3の発明は、温湯消毒槽(1)内での種子の間欠移送に連動して、種子を種子冷却槽(11)で所定時間停止しながら間欠移送する構成とした請求項2に記載の種子消毒設備とする
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明は、種子を温湯消毒槽(1)内の温湯に浸漬しながら移送して温湯消毒を行い、次に種子冷却槽(11)で冷却始端側から冷却終端側へ移送して冷却し、バケット(12)を反転させて冷却を終えた種子を排出するので、連続して能率的に種子の温湯消毒することができると共に、種子を冷却水に浸漬して冷却を行うことができる
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明の効果に加えて、種子の移送を停止している間、種子は温湯にさらされるため、種子を温湯に浸漬する時間を一定にすることができ、効率的に種子の温湯消毒をすることができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明の効果に加えて、種子の移送を停止している間、種子は冷却水にさらされるため、種子を冷却水に浸漬する時間を一定にすることができ、効率的に種子の冷却をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】温湯消毒装置、種子冷却装置の平面図
【図2】温湯消毒装置、種子冷却装置の側面図
【図3】温湯消毒工程、種子冷却工程の工程図
【図4】温湯及び冷却水の循環図
【図5】乾燥・出荷工程の工程図
【図6】乾燥装置の内部を説明する側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面に示す実施形態に基づき種子消毒設備について説明する。
種子消毒設備は、前工程から後工程の順に温湯消毒装置A、種子冷却装置B、乾燥装置Cを順次設けている。温湯消毒装置Aは、箱型の温湯消毒槽1を設け、温湯消毒槽1の上方には多数の種子バケット2を循環移送する循環移送装置3を設けている。
【0012】
循環移送装置3は移送始端側にあって多数の孔2bを形成する種子バケット2を下降させて温湯消毒槽1内の温湯に浸漬させる下降装置3dと、温湯消毒槽1内を浸漬した状態で種子バケット2を移送する移送装置3aと、移送終端側にあって温湯消毒槽1内を浸漬した種子バケット2を上昇させる上昇装置3bと、上昇装置3bで上昇させた種子バケット2を下降装置3dまで戻す戻し装置3cとを備えている。
【0013】
移送装置3a及び戻し装置3cはコンベアで形成されており、該コンベアには所定間隔毎に多数の種子バケット2を左右方向の軸2aで載置する構成としている。
上昇装置3bの途中には反転カム4を設け、反転カム4により種子バケット2の下部が持ち上げられて反転し、種子バケット2から種子袋Pが排出する構成としている。
【0014】
温湯消毒槽1内の底部には所定間隔毎に温水噴出口6を配設し、間欠移送されながら停止している種子バケット2の停止位置下方に温水噴出口6を位置させ、種子バケット2に向けて温水を噴出し、温水が種子バケット2の孔2bを通過し網状の種子袋Pに収容する種子(種籾)に作用する構成としている。なお、温湯消毒槽1の底部を前後方向中間部に向けて下り傾斜に構成し、中間部に排水溝1cを構成している。
【0015】
温湯消毒槽1の後工程には供給シュート5を介して種子冷却装置Bを設けている。この種子冷却装置Bには、供給シュート5の後側に前後方向に長い種子冷却槽11を設け、この種子冷却槽11には前側から後側に向けて複数の冷却バケット12を設けている。冷却バケット12は多数の孔12bを形成し、左右方向の軸12aにより横軸心回動自在に支持している。そして、冷却バケット12が軸12aを軸心に回動反転すると冷却バケット12内に収容する種子袋Pが次の冷却バケット12に収容される構成である。
【0016】
また、種子冷却槽11の冷却バケット12の下方には、空気噴出管15をそれぞれ設け、ブロワ16により空気噴出口15に空気を供給し、浸漬中の冷却バケット12に向けて空気を噴出する構成としている。
【0017】
次に種子消毒の工程について主として図3に基づいて説明する。
下降装置3dの途中部の種子袋供給位置rに停止している種子バケット2に種子を収容した網状の種子袋Pを供給する(図3(イ)参照)。そして種子袋供給位置rから温湯消毒槽1内まで下降装置3dで種子バケット2を下降して温湯に浸漬する(図3(ロ)参照)。
【0018】
温湯消毒槽1内では種子バケット2は移送装置3aで移送され、移送装置3aは間欠駆動する。そして、種子バケット2は温水噴出口6に対向する位置に停止し、停止した状態で噴出する温水に晒され、種子袋P内の種子の消毒作用を促進するものである。
【0019】
各温水噴出口6毎に設定時間(本実施の形態では1分)停止しながら移送された種子バケット2は移送終端側で上昇装置3bによって引き上げられる。そして上昇装置3bの途中にある反転装置4で種子バケット2の下部が持ち上げられ反転し、種子バケット2内の種子袋Pは排出され、供給シュート5を通過して種子冷却槽11の始端側の冷却バケット12内に供給される(図3(ハ)参照)。
【0020】
空になった種子バケット2は上昇装置3bで引き続いて上方に移送され、次いで、戻し装置3cで移送始端側に向けて温湯消毒槽1の上方を間欠移送され、下降装置3dで再度種子袋供給位置rに循環移送される。
【0021】
なお、循環移送装置3は間欠駆動の代わりに低速で連続的に駆動するように構成してもよい。
種子冷却槽11の冷却バケット12に供給された種子袋Pは冷却水により冷却される。冷却バケット12は循環移送装置3の間欠駆動と連動する構成とし、温湯消毒槽1から種子冷却槽11へ次の種子袋Pが供給される前に回動反転して次の冷却バケット12へ種子袋Pを供給し、温湯消毒槽1からの種子袋Pを受け入れる。すなわち、冷却終端側の冷却バケット12から順次回動反転することで種子袋Pを順に次の冷却バケット12に移送すると共に、冷却始端側の冷却バケット12に温湯消毒槽1からの種子袋Pを受け入れるようにしている。
【0022】
そして本実施の形態では5つの冷却バケット12を順次通過した種子袋Pは排出シュート14から排出され、次工程の乾燥装置Cで乾燥される。
この実施の形態の種子消毒装置によると、前後に長い温湯消毒槽1により複数の種子バケット2を移送しながら連続的に能率的に温湯消毒することができ、また、温湯消毒装置Aから種子冷却装置Bに種子袋Pを簡単に供給することができる。
【0023】
また、循環移送装置3が設定時間毎に間欠駆動するため、一つの種子バケット2が温湯に浸漬する時間を一定(本実施の形態では約10分)にすることができ、かつ停止毎に温水にさらされるため、多数の種子袋Pに均一な消毒を効率よく行なうことができる。そして、冷却バケット12と循環移送装置3は連動して駆動するため、種子袋Pを冷却水に浸漬する時間をも一定(本実施の形態では約5分)にすることができ多数の種子袋Pに均一な冷却を行なうことができる。
【0024】
また、温水噴出口6を温湯消毒槽1内全体にわたって設定間隔毎に配置することで、温湯消毒槽1内の温度むらを防止し、種子バケット2,内の種子袋Pの種子に温湯の浸透が均等化し、温湯殺菌効果を高めることができる。また、搬送コンベア3aを間欠移送することにより、種子の浸漬、離水が迅速になり、浸漬殺菌時間が正確となり、殺菌効果を高めることができる。すなわち、本実施の形態では1つの種子バケット2は10箇所の温水噴出口6毎に停止するため、温湯消毒槽1内に約10分浸漬される。そして種子冷却槽11には5箇所の冷却バケット12を通過するため約5分浸漬される。
【0025】
また、種子冷却槽11内に空気を噴出させることで、種子冷却槽11内の冷却水の温度上昇を低減する防止することができ、冷却効果を大きくすることができる。
また、冷却バケット12を所定時間毎に駆動反転させ、冷却水内で種子袋Pを所定時間停止冷却しながら移送するので、冷却効果を高めることができる。
【0026】
次に図4に基づいて温湯消毒槽1及び種子冷却槽11に使用する温湯及び冷却水の循環について説明する。
温湯消毒槽1内にはオーバーフロー樋21を設け、オーバーフロー樋21にオーバーフローした温湯は還流パイプ22を経由してバランスタンク23に還流する。
【0027】
そして、温湯循環路1aにはポンプ10、インラインヒータ9を、また、蒸気供給路1bにはボイラ7及び各種バルブをそれぞれ配設し、温湯循環路1aのインラインヒータ9に蒸気供給路1bから水蒸気を給水し、間欠移送中の停止している種子バケット2の種子袋Pに向けて所定温度の温湯を噴出し、種子を温湯消毒するように構成している。また、温湯消毒槽1内の温湯の温度は温度計(図示せず)により約60℃になるよう制御する。
【0028】
また、種子冷却槽11からオーバーフローした冷却水を、オーバーフロー樋24、還流パイプ25を経由してバランスタンク26に還流するように構成している。
なお、バランスタンク26内の冷却水はポンプ27で冷却水循環路28を通過し、冷却水循環路28に適宜設けるバルブで種子冷却槽11か温湯消毒槽1に選択して供給できる構成としている。この構成によると、熱効率の向上をはかり、使用水量の削減を図ることができる。特に、バランスタンク26に貯留する冷却水は、次回の種子消毒作業開始時に、温湯消毒槽1に水を張り込むために使用し、種子消毒作業開始後は種子冷却槽11とを循環するよう使用する。
【0029】
なお、M及びNは温湯消毒槽1又は種子消毒槽11に新たな水を供給する水源である。
次に、図5に基づき乾燥及び保管工程について説明する。冷却装置Bの排出シュート14から取り出した種子袋Pを、脱水機51で脱水し、次いで、網コンテナ46に段積みし、網コンテナ46を水切り図6の乾燥装置Cまたは乾燥室52に送り込んで乾燥する。次いで、放冷室53に網コンテナ46を送り込んで放冷し、低温貯蔵庫53に送り込み貯蔵する。
【0030】
前記構成によると、網コンテナ46に種子袋Pを段積みしたままで連続して乾燥、放冷、貯蔵をすることができ、作業時間を短縮し作業能率を高めることができる。
次に、図6に基づき乾燥装置Cについて説明する。
【0031】
乾燥室31の一側には乾燥受け台41を設け、他側には送風ファン42、出芽用暖房機43を設けている。乾燥室31の底部には温風通路44を設け、温風通路44を経由して暖房機43で温めた空気を送風ファン42で送り、乾燥受け台41に送り込むように構成している。
【0032】
また網コンテナ46にコンテナシート48を敷き込んで多数の種子袋P27,を段積みし、この網コンテナ46を乾燥受け台41に載置する。そして、網コンテナ46の上部にはダクトフード47を載置し、ダクトフード47の下部とコンテナシート48の上部とを、例えばファスナ49により密閉状に接続して簡易乾燥室を構成し、ダクトフード47の上部と送風ファン42とを循環通路45により接続し、乾燥風を循環するように構成している。
【0033】
また、乾燥受け台41には、下側が狭く上側の網コンテナ46下部全面に向かって順次拡がる乾燥風路41a,を仕切り板41b,により仕切り構成し、温風通路44から網コンテナ46に向けて乾燥風を均等に送り込み、段積み種子袋Pを均等に乾燥するように構成している。前記構成によると、網コンテナ46には下側から上側へ向けて均等な乾燥風が流れ、種子袋Pを均等に能率的に乾燥することができる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温湯消毒槽(1)の後工程に種子冷却槽(11)を設け、種子を温湯消毒槽(1)内の温湯に浸漬しながら移送して温湯消毒を行った後、冷却水を貯留する種子冷却槽(11)で冷却始端側から冷却終端側へ移送して冷却する構成とし、種子冷却槽(11)で冷却を終えた種子を、該種子を収容するバケット(12)を反転させて排出する構成とした種子消毒設備
【請求項2】
種子を温湯消毒槽(1)内で所定時間停止しながら間欠移送する構成とした請求項1に記載の種子消毒設備。
【請求項3】
温湯消毒槽(1)内での種子の間欠移送に連動して、種子を種子冷却槽(11)で所定時間停止しながら間欠移送する構成とした請求項2に記載の種子消毒設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−135324(P2012−135324A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97796(P2012−97796)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【分割の表示】特願2011−209464(P2011−209464)の分割
【原出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】