説明

穀稈搬送装置用の従動回転体

【課題】全体を小型化しつつ、搬送チェーンが傾斜し難い穀稈搬送装置用の従動回転体を得る。
【解決手段】穀稈搬送装置において駆動スプロケットとともに搬送チェーン20aが巻回され、駆動スプロケットの回転力を受けて回転する従動回転体23であって、外周部23Aに搬送チェーン20aのピン20bが収納されるもので断面が円弧状の凹部24を複数形成し、当該凹部24内にピン20bが収納された状態において、従動回転体23中心を中心として、凹部24以外の外周部23Aの部分を通る外側円L上又は当該外側円Lの外方に、ピン20bの中心Xが位置するように凹部24を形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の収穫機の穀稈搬送装置に用いられ、駆動スプロケットとともに搬送チェーンが巻回される従動回転体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すように、コンバイン等の穀稈搬送装置において、駆動スプロケット及び従動回転体に搬送チェーンが巻回されたものが存在する。通常、穀稈搬送装置に用いられる駆動スプロケット及び従動回転体は、外周部に搬送チェーンのピン全体が凹入する深い凹部が複数形成されている。よって、駆動スプロケットの回転力が搬送チェーン及び従動回転体に確実に伝達され、穀稈が円滑にフィードチェーンに向けて搬送される。
【0003】
この場合、駆動スプロケットと同じものが従動回転体として使用されることが多く、搬送チェーンのピンが従動回転体の凹部に収納された状態で、従動回転体における凹部以外の外周部の部分が搬送チェーンのピンの最外側部と同じ位置に位置している(従動回転体中心を中心とする同一の円上に、従動回転体における凹部以外の外周部の部分と、搬送チェーンのピンの最外側部とが位置している)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−238518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、従動回転体の外周部に搬送チェーンのピン全体が凹入する深い凹部が形成されており、従動回転体の外径は大きくなる傾向にある。しかしながら、コンバインの刈取前処理部において穀稈搬送装置のスペースは限られており、従動回転体の外径が大きい場合には配置し難いこともある。この場合、従動回転体を外周部に凹部を備えないローラ状の回転体に変更して全体を小径にすることも考えられるが、従動回転体の搬送チェーンへの入り込み量が小さくなり、搬送チェーンが従動回転体に対して傾斜し易くなる。
【0006】
そこで、本発明は、全体を小型化しつつ、搬送チェーンが傾斜し難い穀稈搬送装置用の従動回転体を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る穀稈搬送装置用の従動回転体の第1特徴構成は、穀稈搬送装置において駆動スプロケットとともに搬送チェーンが巻回され、前記搬送チェーンの回転力を受けて回転する従動回転体であって、外周部に前記搬送チェーンのピンが収納されるもので断面が円弧状の凹部を複数形成し、当該凹部内に前記ピンが収納された状態において、従動回転体中心を中心として、前記凹部以外の外周部の部分を通る外側円上又は当該外側円の外方に、前記ピンの中心が位置するように前記凹部を形成してある点にある。
【0008】
[作用]
従動回転体の外周部に形成された凹部に搬送チェーンのピンが凹入し、従動回転体は搬送チェーンの回転力を搬送チェーンから受けて回転する。ここで、従動回転体の凹部内に搬送チェーンのピンが収納された状態において、従動回転体中心を中心として、従動回転体の凹部以外の外周部の部分を通る外側円上又は当該外側円の外方に、搬送チェーンのピンの中心が位置するように従動回転体の凹部を形成してあるので、従動回転体の外周部に対してピンの半分以上が突出することになる。すなわち、従動回転体は、外径が従動回転体の凹部に凹入された搬送チェーンのピンの中心が通るピッチ円と略同じか、又はピッチ円よりも小径となり、全体的に小型になる。
【0009】
従動回転体の凹部に搬送チェーンのピンが凹入されているので、外周部に凹部を備えないローラ状の回転体を従動回転体とした場合に比べて、従動回転体の搬送チェーンへの入り込み量は大きくなる。このように従動回転体の搬送チェーンへの入り込み量が大きくなると、従動回転体における搬送チェーンの支持領域が増加するため、搬送チェーンは従動回転体に対して傾斜し難くなる。
【0010】
また、従動回転体の凹部に対して搬送チェーンのピンが最大半分程度しか凹入していないが、ピンに大径のローラ等を外嵌した場合に比べれば従動回転体から搬送チェーンが適度に外れ難く、穀稈が詰まる等して搬送チェーンに過大な負荷が発生した場合等には従動回転体から搬送チェーンが適度に外れ易くなる。
【0011】
[効果]
従動回転体が全体的に小型になって、穀稈搬送装置における配置が容易となった。また搬送チェーンが従動回転体に対して傾斜し難くなることで、穀稈の搬送を安定的に行うことができる。また、搬送チェーンを適度に外れ難くして確実な伝動を確保できるようにしながら、穀稈の詰まり等の異常時には搬送チェーンを適度に外れ易くして穀稈搬送装置の故障を回避できる。
【0012】
本発明に係る穀稈搬送装置用の従動回転体の第2特徴構成は、前記凹部における従動回転体回転方向の上手側部分及び下手側部分の曲率を、前記凹部の底部の曲率よりも大きくした点にある。
【0013】
[作用]
凹部の底部における従動回転体回転方向の上手側部分及び下手側部分の曲率を、凹部の底部の曲率よりも大きくしたので、駆動スプロケットの回転を受けた搬送チェーンのピンは凹部の当該下手側部分から凹部内に円滑に収納され、その後、凹部の当該上手側部分から凹部外へ円滑に離脱する。また、凹部の当該上手側部分及び当該下手側部分の曲率が凹部の底部の曲率よりも大きくなると、従動回転体の凹部内に収納されている搬送チェーンのピンは凹部の当該上手部分及び当該下手部分と接触しないか、接触しても接触面積は小さいため、ピンと凹部との接触領域は小さくなる。
【0014】
[効果]
搬送チェーンのピンが従動回転体の凹部に対して円滑に収納・離脱を繰り返すことで、穀稈を安定的に搬送することができる。また、搬送チェーンのピンと凹部との接触領域が小さくなるので、従動回転体はピンによる磨耗損傷が抑制されて耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を装備したコンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】刈取前処理部の概略平面図である。
【図5】株元側搬送装置の平面図である。
【図6】図5のVI−VI矢視断面図である。
【図7】従動スプロケット(従動回転体)に搬送チェーンが巻回された状態を示す図である。
【図8】株元側搬送装置のチェーンガイド板の構成を示す図であって、(a)は図5のVIIIa−VIIIa矢視断面図であり、(b)は分解図である。
【図9】テンションローラの構成を示す図であって、図5のIX−IX矢視断面図である。
【図10】扱き深さ調節装置を示す図である。
【図11】扱き深さ調節装置の拡大図である。
【図12】図11のXII−XII矢視断面図である。
【図13】刈取装置の駆動機構の平面図である。
【図14】図13のXIV−XIV矢視断面図であって、クランク部の断面図である。
【図15】別実施形態における従動スプロケット(従動回転体)に搬送チェーンが巻回された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す左側面図である。図2は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す平面図である。
【0017】
このコンバインは、稲、麦などの収穫作業を行なう。
すなわち、走行機体は、機体フレーム2の前端側の右側部に設けたエンジン(図示せず)を備え、このエンジンの出力によって左右一対の走行装置1L,1Rを駆動して自走する。走行機体は、エンジンの上方に設けた運転座席6aが装備された搭乗型の運転部6を備えており、この運転部6に搭乗して操縦するよう搭乗型になっている。
【0018】
刈取前処理部10の前処理部フレーム11は、走行機体の機体フレーム2に運転部6の左横側方箇所で走行機体横向きの軸芯Pまわりに上下揺動自在に連結されている。
【0019】
刈取前処理部10は、前処理部フレーム11が昇降シリンダ6によって揺動操作されることにより、刈取前処理部10の前端部に走行機体横方向に並んで位置する三つの分草具12L,12C,12Rが地面の近くまで下降した下降作業位置と、各分草具12L,12C,12Rが地面から高く上昇した上昇非作業位置とに昇降する。
【0020】
刈取前処理部10を下降作業位置に下降させて走行機体を走行させると、刈取前処理部10は、植立穀稈を引き起こすとともに刈り取り、刈取穀稈を脱穀装置3の脱穀フィードチェーン3aの始端部に供給する。脱穀装置3は、脱穀フィードチェーン3aによって刈取穀稈の株元側を挟持して走行機体後方側に搬送し、これによって刈取穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。脱穀装置3の後部には、脱穀処理後の穀稈である排ワラを処理する排ワラ処理装置4が連結してある。脱穀粒袋詰め部5は、脱穀装置3の選別部(図示せず)によって単粒化状態になったものとして選別処理された脱穀粒を穀粒タンクに回収して貯留した後、籾袋に投入する。
【0021】
刈取前処理部10について詳述する。
図1及び図2に示すように、刈取前処理部10の前処理部フレーム11は、機体フレーム2に上下揺動自在に支持された伝動ケースに兼用のメインフレーム11aを備え、このメインフレーム11aの先端部から走行機体前方向きに延出した三本の分草具支持杆11bを備えて構成してある。三本の分草具支持杆11bは、走行機体横方向に所定間隔を隔てて並んでおり、隣り合う一対の分草具支持杆11b、11bによって一つの引起し経路13を形成し、全体として二つの引起し経路13,13を形成している。
【0022】
図3はコンバインの正面図であり、図4は刈取前処理部10を示す平面図である。図1〜4に示すように、刈取前処理部10は、三つの分草具12L,12C,12Rを備える他、分草具12L,12C,12Rの後方で各引起し経路13に設けた引起し装置14を備え、引起し装置14の下端側の後方に設けたバリカン形の刈取装置15を備え、刈取装置15の上方に設けた左右一対の掻き込み輪体16a,16bおよび左右一対の掻き寄せ無端ベルト17a,17bを備え、左右一対の掻き込み輪体16a,16bの上方に搬送始端部が位置した穀稈搬送装置18を備えており、4条までの植立穀稈を引起して刈取る処理及び刈取った穀稈の脱穀装置3への供給を行なう。
【0023】
三つの分草具12L,12C,12Rのうちの中央に位置する中分草具12Cと運転部6側に位置する外分草具12Rの先端どうしの間隔、および、三つの分草具12L,12C,12Rのうちの運転部6側とは反対側に位置する外分草具12Lと中分草具12Cの先端どうしの間隔を、2条の植立穀稈の導入が可能な間隔にそれぞれ設定してある。
【0024】
各引起し装置14は、上端側ほどやや後方側に位置した傾斜姿勢の引起しケース14a、およびこの引起しケース14aから横側に突出して引起しケース14aに沿って上昇移送される複数の引起し爪14bを備えており、対応する引起し経路13に導入された植立穀稈を引起し爪14bによってすき上げて引起し処理する。
【0025】
左側の掻き寄せ無端ベルト17aおよび左側の掻き込み輪体16aは、左側の引起し装置14によって引起し処理されている植立穀稈の株元側に掻き寄せアーム17cあるいは掻き込み爪16cを作用させて、左側の引起し装置14が作用している植立穀稈の株元側を、左右一対の掻き込み輪体16a,16bの噛み合い箇所Zに向けて横送りしながら掻き寄せる。右側の掻き寄せ無端ベルト17bおよび右側の掻き込み輪体16bは、右側の引起し装置14によって引起し処理されている植立穀稈の株元側に掻き寄せアーム17cあるいは掻き込み爪16cを作用させて、右側の引起し装置14が作用している植立穀稈の株元側を、左右一対の掻き込み輪体16a,16bの噛み合い箇所Zに向けて横送りしながら掻き寄せる。
【0026】
これにより、刈取装置15は、左右の引起し装置14によって引き起こし処理されている植立穀稈を株元側で刈り取る。
【0027】
左右一対の掻き寄せ無端ベルト17a,17bおよび左右一対の掻き込み輪体16a,16bは、刈取装置15によって刈り取り処理された刈り取り穀稈の株元側に掻き寄せアーム17cあるいは掻き込み爪16cを引き続き作用させ、刈取穀稈の株元側を刈取装置15の後方に送り込んで穀稈搬送装置18の搬送始端部に供給する。左右一対の掻き寄せ無端ベルト17a,17bは、左右の分草具12L,12Rの後部における最上端箇所の配置高さよりも低い配置高さの位置で植立穀稈および刈取穀稈に作用する。
【0028】
穀稈搬送装置18は、刈取穀稈の穂先側を係止搬送する穂先側搬送装置19と刈取穀稈の株元側を挟持搬送する株元側搬送装置20とを備え、刈取装置15からの刈取穀稈を刈取前処理部10の横外側向きにかつ後方向きに搬送して脱穀装置3の脱穀フィードチェーン3aの搬送始端部に供給する。穂先側搬送装置19では、刈取穀稈の穂先側を係止アーム19aによって係止搬送し、株元側搬送装置20は刈取穀稈の株元側を無端回動チェーン20aによって挟持搬送する。
【0029】
以下、株元側搬送装置20について詳述する。
図5に示すように、株元側搬送装置20は、機体後方寄りの駆動スプロケット21と、機体前方寄りの従動スプロケット22と、駆動スプロケット21の後方外側寄りの従動スプロケット23(従動回転体に相当)とに亘って、無端回動チェーン20aを巻き掛けて構成されており、駆動スプロケット21の駆動により図5の矢印方向に回転し、横外側の搬送部で穀稈を搬送するようになっている。従動スプロケット23は、図5及び図6に示すように、支持部材23bに固定された支持軸23aに回転自在に支持されて、縦断面形状がZ字状の支持部材23bとともに支持フレーム25にボルトAで着脱自在に固定されており、交換が可能に構成されている。よって、従動スプロケット23が長期の使用等により磨耗損傷したとしても、容易に交換することができる。
支持部材23bの先端部には、斜め下方に傾斜し平面視で三角形状の外れ防止部23bAが形成されており、搬送チェーン20aの外れを防止している。
【0030】
穀稈搬送装置18の機体前後方向中間部に逆U字杆26が配設されている。逆U字杆26の一端は搬送チェーン20aに対向したガイド杆27を弾性支持する支持枠26bを固定し、他端は支持フレーム25に固定されている。ガイド杆27の前後2箇所にはスライド杆29が取付けられており、ガイド杆27及びスライド杆29は支持枠26bにスプリング29aを介して搬送チェーン20aに押し付けられるように付勢されている。
【0031】
図7に示すように、従動スプロケット23には、外周部23Aに搬送チェーン20aのピン20bが凹入する断面が円弧状の凹部24が複数形成されている。凹部24内にピン20bが収納された状態において、従動スプロケット23の中心(支持軸23aの中心)を中心として、凹部24以外の外周部の部分を通る外側円L上に、搬送チェーン20aのピン20bの中心Xが位置するように従動スプロケット23の凹部24が形成されている。
【0032】
従動スプロケット23の外周部23Aに形成された凹部24に搬送チェーン20aのピン20bが凹入し、従動スプロケット23は駆動スプロケット21の回転力を搬送チェーン20aから受けて回転する。このとき、従動スプロケット23の凹部24以外の外周部23Aの部分を通る外側円L上に、ピン20bの中心Xが位置するように凹部24が形成されているので、従動スプロケット23の外周部23Aに対してピン20bの略半分が外方に突出することになる。すなわち、従動スプロケット23は、外径が凹部24に凹入した搬送チェーン20aのピン20bの中心が通るピッチ円Mの径と略同じになり、全体的に小型となる。
【0033】
従動スプロケット23の凹部24に搬送チェーン20aのピン20bが凹入されていると、外周部23Aに凹部24を備えないローラ状の回転体を従動回転体として用いた場合に比べて、従動スプロケット23の搬送チェーン20aへの入り込み量Eが大きくなる。このように入り込み量Eが大きくなると、従動スプロケット23における搬送チェーン20aの支持領域が増加するため、搬送チェーン20aは傾斜し難くなる。
【0034】
また、従動スプロケット23の凹部24に対して搬送チェーン20aのピン20bが最大半分程度しか凹入していないが、ピン20bに大径のローラ等を外嵌した場合に比べれば従動スプロケット23から搬送チェーン20aが適度に外れ難く、穀稈が詰まる等して搬送チェーン20aに過大な負荷が発生した場合等には従動スプロケット23から搬送チェーン20aが適度に外れ易くなる。
【0035】
従動スプロケット23の凹部24における従動スプロケット23の回転方向の上手側部分24B及び下手側部分24Cの曲率が、凹部24の底部24Aの曲率よりも大きくなるよう構成されている。よって、搬送チェーン20aのピン20bは、駆動スプロケット21の回転力を受けて凹部24の下手側部分24Cから凹部24内に円滑に収納され、その後、凹部24の上手側部分24Bから凹部24外へ円滑に離脱する。また、凹部24内にピン20bが収納された状態では、ピン20bは底部24Aとのみ接触し、上手部分24B及び下手部分24Cとは接触しないか、接触しても接触面積は小さい。よって、ピン20bと凹部24との接触領域が小さくなり、従動スプロケット23はピン20bによる磨耗損傷が抑制される。
【0036】
図5,図8(a),図8(b)に示すように、株元側搬送装置20には、搬送チェーン20aが巻回される従動スプロケット22の後側から従動スプロケット23の前側にかけて、搬送チェーン20aのガイド板28が配置されている。ガイド板28は、前端部が内側に屈曲した形状に形成され、後端部が内側に湾曲した形状に形成されており、支持フレーム25に固定されたガイド板支持部材25bに対して横外側から皿ビスBで着脱自在に固定されている。よって、長期の使用によりガイド板28に搬送チェーン20aが擦れ続けてガイド板28が磨耗した場合に、ガイド板28等を容易に交換することができる。
【0037】
図5及び図9に示すように、株元側搬送装置20の搬送チェーン20aはテンションローラ30bによってテンションが調整される。テンション調整機構を構成するテンションアーム30は、一端に設けられた軸30aにテンションローラ30bを支承し、他端に設けられた軸30cを介して逆U字杆26に付設された部材26aに揺動自在に支承されている。テンション調整機構は、さらに、テンションアーム30の中間部と支持フレーム25の支持アーム25aとに亘って設けられた引っ張りスプリング31とテンションアーム30の位置変更部32とを備えて構成されている。
【0038】
位置変更部32は、引っ張りスプリング31の端部とテンションアーム30に架設されるネジ部32aと、テンションアーム32に固設されてネジ部32aの位置を保持するネジ位置保持部32bとを有する。ネジ位置保持部32bに対するネジ部32aの位置を変更することでテンションローラ30bの位置を搬送チェーン20aに対して近接する方向または離間する方向に移動させて、搬送チェーン20aに付与されるテンションを調整する。こうして、テンションローラ30bによって搬送チェーン20aに対して傾きなくテンションが付与されるので、搬送チェーン20aをスプロケット21,22,23から外れ難くすることができる。
【0039】
次に、扱き深さ調節装置40について説明する。
図10に示すように、穂先側搬送装置19及び株元側搬送装置20を備える穀稈搬送装置18は、軸芯Pまわりに上下揺動自在に連結されており、扱き深さ調節装置40を用いて上下に揺動させる。
【0040】
図11に示すように、扱き深さ調節装置40は、引起し装置14を支持する支持アーム11cにベース部材41を介してウォーム減速機付モータ42、円弧状ギア43が取付けられており、モータ出力軸ピニオン44に円弧状ギア43が咬合されて横向き軸心Y周りで円弧状ギア43が上下揺動する。扱き深さ調節装置40には、加えて、横向き軸心Y周りに円弧状ギア43と一体揺動する駆動アーム45が配置されており、この駆動アーム45が連結ロッド46を介して穀稈搬送装置18に連結されている。なお、駆動アーム45と支持アーム11cとに亘って引っ張りスプリング47が配設されており、穀稈搬送装置18を上方側に付勢している。
【0041】
また、図11及び図12に示すように、ギア押え板48が円弧状ギア43に対して略垂直方向(縦向き)に配置されている。ギア押え板48は両端がベース部材41と支持アーム11cに固着され、円弧状ギア43に対向する部分は凹状に形成されている。このギア押え板48によって、機体の振動等を受けても円弧状ギア43とモータ出力軸ピニオン44との咬合状態が維持されるようになる。また、ベース部材41に対してギア押え板48が縦向きに配置されることで、ギア押え板48によってベース部材41の変形が抑制されて、ベース部材41の強度が向上する。
【0042】
図1に示すように、脱穀装置3から搬出された脱穀処理後の穀稈である排ワラが、その上部に備えた排ワラ搬送装置4aにより後方に搬送される。図示は省略するが、排ワラ処理装置4は、その排ワラを、長尺のまま車外に放出する長ワラ放出状態と、内部に備えたディスクカッタにより細断してから車外に放出する細断放出状態とに切換え可能に構成してある。
【0043】
バリカン形の刈取装置15は、図13に示すように、クランク機構50により左右往復駆動する。クランク機構50は、左右の分草具支持杆11b,11bに亘って横架された横フレーム11dに支持された駆動軸51と、駆動軸51に取り付けられて駆動軸51の回転により回転するフライホイール52と、フライホイール52に装着されたクランクヨーク53と、クランクヨーク53に接続されたクランクロッド54と、クランクロッド54に接続されたクランクアーム55によって構成されている。クランクロッド54とクランクアーム55とはクランク軸56を介して接続されており、クランク軸56はクランクアーム55の後部に設けられている。クランクアーム55は、前部が棒状で後部が扇状に広がる形状であって、前後方向の中間部が回動軸57により横フレーム11dに支持されており、前端に刈取装置15の刈刃ヘッド15aが接続されている。このように構成したクランク機構50を用いて、駆動軸51の回転運動をフライホイール53、クランクヨークを介してクランクロッド54に伝達し、クランクロッド54の動作をクランク軸56及び回動軸57によってクランクアーム55の往復運動に変換して刈取装置15の刈刃15bを左右往復駆動する。
【0044】
図14に示すように、クランク軸56の上部にはボールベアリング56aを介してクランクロッド54のボス部が外嵌されており、下部はクランクアーム55のボス部に連結されており、上面がカバー56bで覆われている。クランク軸56を外嵌するクランクロッド54のボス部の下部には、ボールベアリング56aの下方までリング部54aが延設されており、リング部54aの内側に例えばゴム製のシール部材56cが配設されている。また、クランク軸56は、下部が連結されるクランクアーム55のボス部の位置より下方に突出する状態で軸支されている。クランクアーム55のボス部の上部には、その外周部に段差部55aが形成されており、クランクロッド54のボス部のリング部54aの下側部がクランクアーム55のボス部の段差部55aに入り込む状態で、クランクアーム55のボス部とクランクロッド54のボス部とをクランク軸56の上下方向において近接させてある。これにより、クランク軸56に浸入する水量が減少し、リング部54aとシール部材56cとの相乗効果もあって、クランク軸56への水の浸入を防止できる。
【0045】
[別実施形態]
(1)図15に示すように、従動スプロケット23(従動回転体に相当)は、凹部24内に搬送チェーン20aのピン20bが収納された状態において、従動スプロケット23の中心を中心として、凹部24以外の外周部23Aの部分を通る外側円Lの外方に、ピン20bの中心Xが位置するように凹部24を形成してもよい。
【0046】
凹部24以外の外周部23Aの部分を通る外側円Lの外方に、ピン20bの中心Xが位置するように凹部24が形成してあるので、従動スプロケット23の外周部23Aに対してピン20bの半分を超えて外方に突出することになる。すなわち、従動スプロケット23は、外径が凹部24に凹入した搬送チェーン20aのピン20bの中心が通るピッチ円Mよりも小径となり、上記の実施形態(図7に示す従動スプロケット23)よりもさらに小型となる。
【0047】
また、上記の実施形態に比べて凹部24が浅めに形成されているので、従動スプロケット23の搬送チェーン20aへの入り込み量Eは小さくなるが、穀稈が詰まる等して搬送チェーン20aに過大な負荷が発生した場合等には、搬送チェーン20aが従動スプロケット23から外れ易くなる。
【0048】
(2)上記の実施形態では、穀稈搬送装置18の株元側搬送装置20における従動スプロケット22,23のうち、駆動スプロケット21の斜め後ろに位置する従動スプロケット23についてのみ本発明に係る構成を採用したが、従動スプロケット23に代えて駆動スプロケット21の前方に位置する従動スプロケット22に本発明に係る構成を採用してもよいし、従動スプロケット22,23の両方について本発明に係る構成を採用してもよい。
【0049】
(3)上記の実施形態では、コンバインの脱穀装置3に搬送するための穀稈搬送装置18の株元側搬送装置20における従動スプロケット22,23について説明したが、本発明に係る穀稈搬送装置用の従動回転体は、穀稈搬送装置18の搬送終端部と脱穀フィードチェーン3aの搬送始端部との間に設けられる横回し式又は縦回し式の補助搬送装置や、コンバインの脱穀後の排ワラ搬送装置4aにおいても同様に適用できる。
【0050】
(4)また、本発明に係る穀稈搬送装置用の従動回転体は、コンバインに限られず、刈取機の穀稈搬送装置用の従動スプロケットに用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る穀稈搬送装置用の従動回転体は、コンバインの他、穀稈搬送装置を備えた収穫機等にも広く利用できる。
【符号の説明】
【0052】
10 刈取前処理部
18 穀稈搬送装置
19 穂先側搬送装置
20 株元側搬送装置
20a 搬送チェーン
20b ピン
21 駆動スプロケット
23 従動スプロケット(従動回転体)
23A 外周部
24 凹部
24A 底部
24B 上手側部分
24C 下手側部分
L 外側円
M ピッチ円
X ピンの中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈搬送装置において駆動スプロケットとともに搬送チェーンが巻回され、前記駆動スプロケットの回転力を受けて回転する穀稈搬送装置用の従動回転体であって、
外周部に前記搬送チェーンのピンが収納されるもので断面が円弧状の凹部を複数形成し、当該凹部内に前記ピンが収納された状態において、従動回転体中心を中心として、前記凹部以外の外周部の部分を通る外側円上又は当該外側円の外方に、前記ピンの中心が位置するように前記凹部を形成してある穀稈搬送装置用の従動回転体。
【請求項2】
前記凹部における従動回転体回転方向の上手側部分及び下手側部分の曲率を、前記凹部の底部の曲率よりも大きくした請求項1記載の穀稈搬送装置用の従動回転体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−206023(P2011−206023A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79635(P2010−79635)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】