説明

穀粒収容設備

【課題】
本発明は、玄米を保管できると共に、半乾の籾を仕上げ水分まで乾燥できるラック式の穀物収容設備にすることを課題とする。
【解決手段】
ラック(21)は穀粒を収容するコンテナ(k)を載置する保管用ラックと、半乾の籾を収容するコンテナを載置する乾燥用ラックとからなり、保管用ラックを設けるラック室(D)には、穀粒を保管できる程度の温度と湿度に調節する空調制御を行う空調装置(23)を設け、乾燥用ラックを設けるラック室(D)には、コンテナの半乾の籾を仕上げ水分付近まで乾燥するための除湿装置(24)を設け、保管用ラックは、玄米を収容するコンテナを載置するか、乾燥用ラックで仕上げ水分付近まで乾燥した半乾の籾を収容するコンテナを載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穀粒をコンテナに収容して保管するラック式の穀粒収容設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献には、ラック式の穀粒収容設備について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−173754号公報
【特許文献2】特開2004−321064号公報
【特許文献3】特開平9−30605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、玄米を保管できると共に、半乾の籾を仕上げ水分まで乾燥できるラック式の穀物収容設備にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような技術的手段を講じた。
【0006】
請求項1の発明は、穀粒を荷受する荷受部と、穀粒を収容するコンテナを複数段にわたって多数載置可能なラックと、該ラックを備えるラック室と、コンテナを搬送するコンテナ搬送装置とを設け、ラックは穀粒を収容するコンテナを載置する保管用ラックと、半乾の籾を収容するコンテナを載置する乾燥用ラックとからなり、保管用ラックを設けるラック室には、穀粒を保管できる程度の温度と湿度に調節する空調制御を行う空調装置を設け、乾燥用ラックを設けるラック室には、コンテナの半乾の籾を仕上げ水分付近まで乾燥するための除湿装置を設け、保管用ラックは、玄米を収容するコンテナを載置するか、乾燥用ラックで仕上げ水分付近まで乾燥した半乾の籾を収容するコンテナを載置することを特徴とする穀物収容設備とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、乾燥用ラックから取り出して搬送装置で搬送したコンテナを、反転してコンテナに収容する籾をホッパに排出する反転装置と、ホッパに投入した籾を計量する計量器と、コンテナから排出した籾の水分を測定する水分計とを設け、水分計が仕上げ水分付近に到達したことを検出しないと、籾を計量器から再度コンテナに投入して搬送装置で再度乾燥用ラックに搬送し、水分計が仕上げ水分付近に到達したことを検出すると、籾を計量器から再度コンテナに投入して搬送装置で保管用ラックに搬送し、保管用ラックを設けるラック室内で仕上げ水分まで通気乾燥を行うことを特徴とする請求項1記載の穀物収容設備とする。
【0008】
コンテナk内の半乾籾は乾燥用ラックでまず乾燥を行い、次いで仕上げ水分付近に到達すると、保管用ラックに搬送して通気乾燥を行なうことで過乾燥を防止することができ、かつ仕上げ時の水分のバラツキを小さくすることができる。
【0009】
請求項3記載の発明は、保管用ラックを設けるラック室内で仕上げ水分まで通気乾燥を行うと、仕上げ水分に到達したときには穀温が常温になることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の穀物収容設備とする。
【0010】
そのため、仕上げ水分に到達したときに必要なときにすぐに籾摺り作業を行なうことができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、籾を収容したコンテナを乾燥用ラックに入庫するとき、表示される重量より若干多くコンテナに収容すると共に、同じ品種のコンテナが複数存在する場合には、仕上げ水分値に到達したコンテナを優先して出庫することを特徴とする請求項2記載の穀物収容設備とする。
【0012】
そのため、乾燥の進んだものを優先して出庫することで、出庫時に表示量よりも少ない量になっているトラブルを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
生産者が持ち込んだ玄米を保管することができ、かつ、半乾状態の水分になるまで他で乾燥した籾を一時的に保管し、仕上げ水分になるまで仕上げ乾燥する穀粒収容設備にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】穀粒収容施設の平面図
【図2】穀粒収容施設の工程図
【図3】除湿装置を備えたラックを示す図
【図4】コンテナ移送コンベアを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明を実施するための最良の形態として、生産者毎に穀粒を収容するコンテナを多数載置するラック設備を備えた穀粒収容設備について説明する。
【0016】
建屋T内のAは生産者が持ち込んだ玄米を荷受する荷受部で、玄米を荷受する荷受けホッパ1と、荷受けホッパ1で荷受した玄米を搬送する荷受けコンベア2と、荷受け昇降機3と、一時的に玄米を待機させる待機タンク4と、そして調製作業を行なうまで玄米を貯留する荷受けタンク5とを備えている。
【0017】
Bは玄米を調製する調製部で、荷受けタンク5内の玄米から石を除去する石抜機6と、未熟米を選別する粒選別機7と、着色米を選別する色彩選別機8、玄米を混ぜ合わせて均質化する均質化装置9、藁屑等を選別する異物除去装置12等を備えている。
【0018】
Cは出荷部で、フレキシブルコンテナfに収容して出荷するための計量装置10と、紙袋に収容して出荷するための計量装置11等を備えている。
【0019】
Dは調製部Bの調製工程を経た玄米を長期間保管するためのラック室で、玄米を収容するコンテナkを複数段に亘って多数載置するラック21を複数並列して備え、ラック21毎に備えるコンテナ搬送装置22でコンテナk出し入れする構成である。
【0020】
本実施の形態のラック21a〜21dは二列毎に仕切板Sを備え、ラック室D1〜D4をそれぞれ形成している。ラック室D1〜D4それぞれに二つずつ備えるラック21a〜21d間にはラック21にコンテナkを出し入れするためのコンテナ搬送装置22a〜22dを備えている。コンテナ搬送装置22a〜22dは対向するラック21間を横方向及び上下方向にコンテナkを積んで移動自在に構成すると共に、ラック21にコンテナkを載置したり、取り出したりする構成である。
【0021】
ラック室D1〜D4にはそれぞれラック室内の温度と湿度を制御する空調装置23a〜23dをそれぞれ備えており、一つのラック室D4には除湿装置24を備えている。
【0022】
ラック室D4の除湿装置24は吸引ファン24aと吸引管24bとを備え、吸引管24bは図3に示すようにラック21dの最下段に載置する各コンテナkと切換弁24cを介して接続する構成としている。
【0023】
コンテナ搬送装置22a〜22dの搬送始端側はコンテナ搬送装置22a〜22d間をコンテナkを相互に移送するためのコンテナ移送コンベア25と接続する構成としている。コンテナ移送コンベア25はコンテナkの向きを変更してコンテナ搬送装置22a〜22dと中継するためのコンテナ中継部25aと、コンテナ中継部25aからコンテナkを別のラック搬送装置22a〜22dに移送する移送部25bとを備えている。26はコンテナkを出入庫するための出入庫用コンベアである。27はコンテナ移送コンベア25と出入庫用コンベア26を覆う覆い部材で、28は覆い部材27内に常温を送風してラック室D内から取り出すコンテナk内の穀粒を常温に戻すための送風ファンである。
【0024】
ラック室D1〜D4における空調制御について説明すると、ラック室D1〜D4は玄米を長期間保管するための温度(例えば15℃)及び湿度(50〜60%)になるよう空調装置23a〜23dを調節している。
【0025】
本実施の形態の穀粒収容設備は主として生産者が持ち込んだ玄米を調製処理して保管する設備であるが、半乾状態(例えば18%程度)の水分になるまで乾燥した籾を一時的に保管し、または仕上げ水分(例えば14.5%)になるまで仕上げ乾燥するときに本設備を用いる場合について説明する。
【0026】
別の乾燥施設(図示せず)から半乾状態(例えば18%程度)の水分に乾燥した後、低温の貯留室(図示せず)で貯留していた籾を移送し、コンテナkに収容し、コンテナ搬送装置22dでラック室D4のラック21dの最下段の乾燥用ラック位置r1に載置する。そして、除湿装置24の吸引ファン24aを駆動して切換弁24cを開状態にすると吸引管24bと半乾籾を収容したコンテナkの吸引管連結部(図示せず)とが連通し、半乾籾は吸引作用を受け仕上げ水分まで乾燥される。
【0027】
この構成により、ラック21を玄米を保管するための保管用ラックだけでなく、籾摺工程前に半乾籾を籾摺りできる仕上げ水分まで乾燥する乾燥用ラックとして使用できる。
【0028】
また、除湿装置24は全てのラック室Dに備える必要がなく、さらに、ラック室D内の一部のコンテナkに使用できる構成にすることで、コンパクトな除湿機でよく、安価な設備で仕上げ乾燥処理を行なうことができる。
【0029】
また、穀温の低い籾はすぐに籾摺り作業を行なうことができず、低温度の貯留室(図示せず)から取り出した籾は常温になるまで時間を要していたが、除湿装置24で仕上げ乾燥をしながらかつ穀温を常温に戻すことができるため、低温度の貯留室(図示せず)から取り出した半乾籾を短時間で籾摺り作業を行なえる籾にすることができる。
【0030】
本実施の形態の除湿装置24はラック21dの最下段に載置するコンテナkと連通可能に構成しているが、ラック21dの最上段のコンテナあるいはその他特定の段のコンテナと連通する構成としても良い。
【0031】
次に本実施の形態の設備を使用して、半乾籾を数日かけて仕上げ水分まで徐々に乾燥する工程について説明する。
【0032】
半乾籾を収容したコンテナkをラック室D4に搬送し、コンテナ搬送装置22dで除湿装置24で除湿乾燥を行なう乾燥用ラック位置r1に載置する。そして、吸引管24bとコンテナk内とを連通するようセットすると共に切換弁24cを開状態とする。
【0033】
除湿装置24を起動し、吸引ファン24aによる吸引風がコンテナk内の半乾籾に作用して仕上げ水分付近(例えば15.2%)になるまで除湿乾燥作業を行なう。仕上げ水分付近か否かの検出は、除湿乾燥作業を設定時間毎にコンテナkをラック21dからラック搬送装置22dで取り出してコンテナ移送コンベア25で搬送し、反転装置30でコンテナkを反転させて籾を仮入れホッパ31に投入し、仮入れ計量器32で計量されて再度コンテナkに投入して基の乾燥用ラック位置r1まで搬送する。
【0034】
コンテナkを反転して籾を排出してから再度コンテナkに籾を投入するまでの間に、水分計(図示せず)で水分を測定する。そして、測定水分が設定された仕上げ水分付近(例えば15.2%)に到達すると当該コンテナkは乾燥用ラック位置r1からコンテナ搬送装置22dで保管用ラック位置r2に搬送される。
【0035】
このとき除湿乾燥初期の高水分時は重量計の値を検出し、前回測定値との差により半乾籾の水分値を決定すると共に、仕上げ水分付近になると水分計により水分値を決定する構成としてもよい。そして、測定水分が設定水分に到達するとコンテナkがコンテナ搬送装置22dで乾燥用ラック位置r1から保管用ラック位置r2、もしくは別のラック室Dのラック21に搬送されるようする。
【0036】
すなわち、高水分時は水分のバラツキが大きいため水分計での水分算出が困難なので重量で検出し、仕上げ水分が低くなると水分のバラツキが小さくなるため、水分計での測定精度が高くなる性質を利用したものである。
【0037】
そして、除湿乾燥作業を終えると、当該コンテナkは保管用ラック位置r2にコンテナ搬送装置22dで搬送して保管用ラック位置r2に載置されて空調装置23dの空調制御により自然に仕上げ水分(例えば14.5%)まで徐々に通気乾燥される。
【0038】
空いた乾燥用ラック位置r1には次の半乾籾を収容したコンテナkを載置して除湿乾燥する。コンテナk内の半乾籾はこのように半乾籾をまず除湿乾燥を行い、次いで自然通気乾燥を行なうことで過乾燥を防止することができ、かつ仕上げ時の水分のバラツキを小さくすることができる。また、仕上げ水分に到達したときに穀温が常温に近い状態にすることが可能になり、必要なときにすぐに籾摺り作業を行なうことができる。
【0039】
また、仕上げ水分まで到達した籾のコンテナkを別の保管用の温度湿度に調節しているラック室Dに移動して保管するようにしても良い。すなわち、この場合にはラック室D4は乾燥できる温度及び湿度(例えば20℃〜25℃で湿度60%程度)に空調装置23dを調節し、保管するラック室D1〜D3の空調装置を穀粒を保管できる温度及び湿度(15℃で湿度70%程度)に調節する。
【0040】
次にコンテナkをラック21に入庫する方法及び出庫する方法について説明する。
【0041】
本実施の形態の穀粒収容設備においては、入庫時のコンテナ毎の収容穀粒のデータ(品種・ランク・水分)を入力しておき、出庫時には、同じ品種の場合には水分から低い順に自動出庫する構成とする。通常コンテナk内には表示された重量(例えば1000kg)よりも若干多く(例えば1080kg)を収容することで水分が低下して表示重量よりも少ない量になることを防止しているが、乾燥の進んだものを優先して出庫することで、出庫時に表示量よりも少ない量になっているトラブルを防止することができる。
【0042】
なお、本実施例では籾を乾燥する装置として除湿装置24を備えているが、加温装置にしても良い。
【符号の説明】
【0043】
A 荷受部
D ラック室
k コンテナ
21 ラック
22 コンテナ搬送装置
23 空調装置
24 除湿装置
25 コンテナ移送コンベア
30 反転装置
31 ホッパ(仮入れホッパ)
32 計量器(仮入れ計量器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒を荷受する荷受部と、穀粒を収容するコンテナを複数段にわたって多数載置可能なラックと、該ラックを備えるラック室と、コンテナを搬送するコンテナ搬送装置とを設け、
ラックは穀粒を収容するコンテナを載置する保管用ラックと、半乾の籾を収容するコンテナを載置する乾燥用ラックとからなり、
保管用ラックを設けるラック室には、穀粒を保管できる程度の温度と湿度に調節する空調制御を行う空調装置を設け、
乾燥用ラックを設けるラック室には、コンテナの半乾の籾を仕上げ水分付近まで乾燥するための除湿装置を設け、
保管用ラックは、玄米を収容するコンテナを載置するか、乾燥用ラックで仕上げ水分付近まで乾燥した半乾の籾を収容するコンテナを載置することを特徴とする穀物収容設備。
【請求項2】
乾燥用ラックから取り出して搬送装置で搬送したコンテナを、反転してコンテナに収容する籾をホッパに排出する反転装置と、ホッパに投入した籾を計量する計量器と、コンテナから排出した籾の水分を測定する水分計とを設け、
水分計が仕上げ水分付近に到達したことを検出しないと、籾を計量器から再度コンテナに投入して搬送装置で再度乾燥用ラックに搬送し、
水分計が仕上げ水分付近に到達したことを検出すると、籾を計量器から再度コンテナに投入して搬送装置で保管用ラックに搬送し、保管用ラックを設けるラック室内で仕上げ水分まで通気乾燥を行うことを特徴とする請求項1記載の穀物収容設備。
【請求項3】
保管用ラックを設けるラック室内で仕上げ水分まで通気乾燥を行うと、仕上げ水分に到達したときには穀温が常温になることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の穀物収容設備。
【請求項4】
籾を収容したコンテナを乾燥用ラックに入庫するとき、表示される重量より若干多くコンテナに収容すると共に、同じ品種のコンテナが複数存在する場合には、仕上げ水分値に到達したコンテナを優先して出庫することを特徴とする請求項2記載の穀物収容設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−200259(P2011−200259A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156555(P2011−156555)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2006−295862(P2006−295862)の分割
【原出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】