説明

積層スクリーン

【課題】スクリーンの全面にわたり細孔の開口率を均一とし、安定な固液分離効率を達成することができる積層スクリーンを提供する。
【解決手段】薄肉のスクリーン10の裏面にこれよりも厚肉の開口補強材11を積層した積層スクリーンである。開口補強材11の各孔13に対応する位置に、同一パターンの細孔群をそれぞれ独立させて配置したスクリーン10を用いることにより、スクリーンの全面にわたり細孔12の開口率を均一とすることができる。開口率を高めながらスクリーンの強度アップを図ることができる。積層スクリーンの形状は平面状または曲面状とすることができ、スクリーン10の各細孔12を二次側に向けて拡がったテーパー孔とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュープレス式脱水機やロータリープレス式脱水機などに組み込まれ、汚泥スラリーなどの固液分離を行う積層スクリーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚泥スラリーなどの脱水機には、直径が0.2〜0.5mm程度の細孔を備えたスクリーンがろ材として組み込まれている。脱水性能は細孔径、開口率、板厚などに影響されるため、単独でろ過圧力に耐えることができるほどスクリーンの板厚を厚くすることはできない。そのため従来から、スクリーンの背面に開口補強材を積層してバックアップした積層スクリーンが用いられている(特許文献1)。
【0003】
図1は一般的な積層スクリーンの構成を示す説明図であり、細孔1が全面に均一に形成されたスクリーン2を、細孔1よりも10倍程度大径の孔3が均一に形成されたパンチングメタルよりなる開口補強材4とろう溶接などにより積層一体化してある。このような構造とすれば、開口補強材4により強度を持たせることができるので、スクリーン2の板厚を薄くすることができる。
【0004】
ところがこのような従来型の積層スクリーンは、スクリーン2と開口補強材4とをランダムに重ねているため、開口補強材4の個々の孔3に着目すると、孔3一つ当たりの細孔1の開口面積がばらつき、ろ過抵抗の大きい部分と小さい部分とが発生することがあった。すなわち、図3(A)に示すようにスクリーン2と開口補強材4との相対位置によって孔3内の細孔1の位置がずれるため、開口率が変化してしまう。その結果、開口率が大きくろ過抵抗の小さい部分からスラリーが集中的に抜けてしまい、固液分離効率が落ちるという問題があった。
【特許文献1】特開2005-144292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、スクリーンの全面にわたり細孔の開口率を均一とし、安定な固液分離効率を達成することができる積層スクリーンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、スクリーンの裏面に開口補強材を積層した積層スクリーンであって、前記スクリーンとして、開口補強材の各孔に対応する位置に、同一パターンの細孔群をそれぞれ独立させて配置したものを用いたことを特徴とするものである。なお、スクリーンの細孔群または開口補強材の孔が、正三角形の頂点に並べた60°千鳥型、内角がそれぞれ90°45°45°である直角三角形の頂点に並べた角千鳥型、またはその他の角度を備えた二等辺三角形上の頂点に並べた千鳥型、長方形の頂点に並べた並列型、のいずれかのパターンで配列されたものであることが好ましい。
また、積層スクリーンの形状は平面状または曲面状とすることができ、スクリーンの各細孔を二次側に向けて拡がったテーパー孔とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層スクリーンは、開口補強材の各孔に対応させて、同一パターンの細孔群を独立させて配置したスクリーンを使用しているため、開口補強材の各孔毎の開口率を均一とすることができる。また実施形態に示すように、細孔群のパターンを工夫することにより、全体の開口率を高めることができ、固液分離性能を従来よりも高めることができる。また、スクリーンの各細孔を二次側に向けて拡がったテーパー孔とすることにより、目詰まりを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図2は本発明の積層スクリーンの構成を示す説明図であり、10はスクリーン、11は開口補強材である。スクリーン10は厚さが0.3〜0.5mm程度のものであり、開口補強材11は厚さが3〜5mm程度のものである。この実施形態では、スクリーン10は直径が0.2〜0.5mm程度の細孔12を備えた金属スクリーンであり、開口補強材11は直径が2〜5mm程度の孔13を均一に備えたパンチングメタルであることは従来と同様である。
【0009】
しかし本発明では、スクリーン10の細孔12が図1のように全面に均一に形成されたものではなく、図2に示すように開口補強材11の各孔13に対応する位置に、それぞれ独立させて配置されている。しかもスクリーン10の細孔12はどの孔13についても同一パターンの細孔群を形成している。
【0010】
この実施形態では、スクリーン10の細孔群は、隣接する細孔12を正三角形の頂点に並べた60°千鳥配列となっている。また細孔群の外径は、開口補強材11の孔13に内接する正六角形となっている。この実施形態では、各細孔群は3+4+5+4+3の5列19個の細孔12により構成されているが、細孔群を構成する細孔12の孔径、数、配列は適宜変化させることができる。
【0011】
例えば、スクリーン10の細孔群または開口補強材の孔は、図7に示すように、正三角形の頂点に並べた60°千鳥型、内角がそれぞれ90°45°45°である直角三角形の頂点に並べた角千鳥型、またはその他の角度を備えた二等辺三角形上の頂点に並べた千鳥型、長方形の頂点に並べた並列型、のいずれかのパターンで配列されたものとすることができる。細孔群の中心に位置する細孔12は開口補強材11の孔13の中心と一致させてあるが、細孔群の配列が異なり偶数列の場合には細孔群の中心には細孔12が存在しないこととなる。
【0012】
なお、スクリーン10の細孔は、丸孔、角孔、六角形孔、多角形孔、長丸孔、菱孔、長角孔、十文字孔などの各種の形状とすることができ、開口補強材11の孔13も丸孔、角孔、六角形孔、多角形孔、長丸孔、菱孔、長角孔、十文字孔などの各種の形状とすることができる。さらにスクリーン10及び開口補強材11の材質は金属に限定されるものではなく、合成樹脂、セラミクス、アモルファス、繊維等の材質とすることもできる。
【0013】
上記のように本発明では、開口補強材11の各孔13に対応する位置に、それぞれ同一パターンの細孔群を形成したスクリーン10を使用し、孔13と細孔群とが正確に一致するように位置合わせした状態でろう接溶接により両者を積層させる。このため図3(B)に示すようにどの孔13についても細孔12の配置は同一となり、開口率も同一となるので、スクリーン全面にわたりろ過抵抗のばらつきを完全にゼロとすることができる。図4に本発明の積層スクリーンの全体図を示し、図5に従来型の積層スクリーンの全体図を示す。
【0014】
なお、本発明の積層スクリーンの開口率は様々な要因により変化するが、一例として、細孔12の半径を0.19mm、細孔12のピッチを0.78ミリの一定とし、さらに開口補強材11の各孔13のエッジ間距離を1.02mmの一定値とした状態で、孔13の半径を0.2mmから2.0mmまで変化させた場合の開口率の変化を図6のグラフに示した。このグラフに示されるように、孔13の半径を変化させると開口率の最大値は複数のピークを持つ曲線を描く。
【0015】
開口補強材11の孔13の半径が大きくなるほど当然ながら積層スクリーンの開口率は増加するが、孔13のエッジ間距離を一定に保ったままで孔13の半径を拡大して行くと、開口補強材11の強度が低下して行く。このためなるべく強度を落とさずに開口率を高めることが好ましく、図6のグラフにおいて開口率が極大値となる付近の値を採用することが最も好ましいこととなる。
【0016】
なお、計算の前提となる設定値を変化させれば、開口率のピークは変化するので、ろ過条件に応じて細孔12や孔13の最適のサイズや配置を求めることが好ましい。
【0017】
本発明の積層スクリーンは、従来のスクリーンと同様に平面状または曲面状とすることができる。図8(a)に示す平面状の積層スクリーンは、例えばロータリープレス脱水機に使用される。図8(b)(c) に示す筒状やテーパー状の積層スクリーンは、例えばスクリュープレス脱水機に使用される。
【0018】
また本発明の積層スクリーンは、図9に示すようにスクリーン10の各細孔12を、二次側に向けて拡がったテーパー孔とすることもできる。このようなテーパー孔としておけば、細孔12の内部に進入したSSは容易にその内部を通過するので、細孔12の内部における目詰まりを抑制することができる。なお図示のテーパー角αは、例えば3〜10°程度、最も好ましくは5°前後としておくことが好ましい。
【実施例】
【0019】
特許文献1に示されるロータリープレス脱水機に使用されている従来の積層スクリーンは、図1に示す構造であって、スクリーンの細孔半径が0.19mm、細孔ピッチが0.788mm、開口補強材であるパンチングメタルの孔半径が1.6mm、孔ピッチが4.22mm、孔のエッジ間距離が1.02mmのものであり、その平均開口率は10.87%であった。
【0020】
この積層スクリーンを、スクリーンの細孔半径0.19mm、細孔ピッチ0.788mm、パンチングメタルの孔エッジ間距離1.02mmの3条件を従来と同一としたままで図2に示す本発明の構造に変更した。その結果、孔半径を1.59mm、孔ピッチを4.2mmとし、平均開口率を12.03%とすることができた。即ち、開口補強材の孔半径及び孔ピッチを小さくしながら、開口率を従来品よりも9.2%増加させることが可能となった。
【0021】
このように、本発明によれば、スクリーンの全面にわたり細孔の開口率を均一とし、安定な固液分離効率を達成することができる。また開口率を落とすことなく開口補強材の孔半径を小さくし、スクリーンの強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来型の積層スクリーンの構成を示す説明図である。
【図2】本発明の積層スクリーンの構成を示す説明図である。
【図3】(A)は従来型の積層スクリーンの部分拡大図、(B)は本発明の積層スクリーンの部分拡大図である。
【図4】本発明の積層スクリーンの全体図である。
【図5】従来型の積層スクリーンの全体図である。
【図6】開口補強材の孔の半径と開口率との関係を示すグラフである。
【図7】スクリーンの細孔群の各種の配列パターン図である。
【図8】本発明の積層スクリーンの全体形状を示す斜視図である。
【図9】開口補強材の孔の断面形状を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0023】
1 細孔
2 スクリーン
3 孔
4 開口補強材
10 スクリーン
11 開口補強材
12 細孔
13 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンの裏面に開口補強材を積層した積層スクリーンであって、前記スクリーンとして、開口補強材の各孔に対応する位置に、同一パターンの細孔群をそれぞれ独立させて配置したものを用いたことを特徴とする積層スクリーン。
【請求項2】
スクリーンの細孔群または開口補強材の孔が、正三角形の頂点に並べた60°千鳥型、内角がそれぞれ90°45°45°である直角三角形の頂点に並べた角千鳥型、またはその他の角度を備えた二等辺三角形上の頂点に並べた千鳥型、長方形の頂点に並べた並列型、のいずれかのパターンで配列されたものであることを特徴とする請求項1記載の積層スクリーン。
【請求項3】
積層スクリーンの形状が平面状または曲面状であることを特徴とする請求項1または2記載の積層スクリーン。
【請求項4】
スクリーンの各細孔が、二次側に向けて拡がったテーパー孔であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の積層スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−275875(P2007−275875A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64901(P2007−64901)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000152343)株式会社NGK−Eソリューション (3)
【Fターム(参考)】