説明

積層プリント配線基板の製造方法

【課題】積層プリント配線基板の製造過程において、積み重ねられた複数枚のプリント配線基板の全体にわたって圧力がむらなく加わるようにする。
【解決手段】1枚の積層プリント配線基板46となる複数枚の単層プリント基板38を載置板40上に積み重ねる。載置板40と積み重ねられた単層プリント基板38を一体として袋体32内に挿入し、袋体を口金42により封止する。等方加圧装置の圧力容器内に、単層プリント基板38および載置板40を収容した複数個の袋体32を入れ、流体を介して加熱、加圧する。1枚の積層プリント配線基板となる複数枚の単層プリント基板を積み重ねた状態で1セットずつ袋体に収容されるため、単層プリント配線基板の上面に凹凸があるような場合であっても、むらなく圧力を加えることができる。また、複数個の袋体に収容されたそれぞれのプリント配線基板を同時に加圧することで量産性もある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の単層プリント配線基板が積層され、接着された積層プリント配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層プリント配線基板の需要が高まっている。その製造方法としては、積層プリント配線基板となる複数枚の単層プリント配線基板を積層し、真空プレス機などにより加圧して接着する方法が採られている。生産効率を高めるために、複数の積層プリント配線基板を同時に製造することも行われているが、これは、1枚の積層プリント配線基板となる複数枚の単層プリント配線基板を、表面に鏡面加工を施した金属板上に積層したものを1セットとし、金属板を介して複数セット積み重ね、これら全面をシートで覆い、加圧して行われるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−216524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積み重ねられる単層プリント配線基板は、電極部が印刷されていたり、部品が内蔵されていたりして平坦でないため、窪んだ部分に加圧による力が伝わりにくく、基板間の接着力が低下する場合がある。複数セットを積み重ねた場合、セット間の窪みに接着に必要な十分な力を均等に伝えることは、特に難しい。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、積み重ねられた単層プリント配線基板の全体にわたって均等に加熱及び加圧を行うことができる積層プリント配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層プリント配線基板の製造方法は、1枚の積層プリント配線基板となる複数枚のプリント配線基板を載置板上に重ねて置く載置ステップと、前記載置板上に重ねて置いた前記複数枚のプリント配線基板を袋体内に開口部より挿入し、その後前記開口部を封止する袋詰めステップと、前記プリント配線基板を収容した複数個の袋体を圧力容器に収める容器収容ステップと、圧力容器内に加熱された流体を供給し、この流体により前記複数個の袋体に収容されたそれぞれのプリント配線基板を同時に加熱、加圧して接着する加熱加圧ステップと、を有する。
【0007】
また、前記載置板はヒータを備えることが好ましく、加熱加圧ステップにおいて当該ヒータにより加熱を行うことができる。
【0008】
また、前記袋体はヒータを備えることが好ましく、加熱加圧ステップにおいて当該ヒータにより加熱を行うことができる。
【0009】
また、加熱加圧ステップ中に、袋体内の気体を吸引することが好ましい。
【0010】
本発明の他の態様である積層プリント配線の製造装置は、本体と蓋を有する圧力容器と、圧力容器の本体に対し、蓋体と共に昇降し、1枚の積層プリント配線基板となる複数枚のプリント配線基板を積み重ねた状態で密封して収容可能な袋体と、袋体内のプリント配線基板を加熱加圧してこれらを接着するために、蓋がされた圧力容器内に、加熱され、加圧された流体を供給するポンプと、圧力容器内の袋体内から圧力容器外へ気体を吸引する吸引装置と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
1枚の積層プリント配線基板となる複数枚のプリント配線基板を1セットずつ袋体に収容して流体を介して加圧することにより、等方加圧となって、加圧による圧力を窪みや凹部にも均等に作用させることができる。
【0012】
また、1枚の積層プリント配線基板となる複数枚のプリント配線基板を1セットずつ袋体に収容して加熱することにより、袋体内のプリント配線基板の全体にわたって均等に加熱を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る積層プリント配線基板の製造装置の概略構成図である。
【図2】袋体の詳細を示す図である。
【図3】積層プリント配線基板の製造工程図である。
【図4】積層プリント配線基板の製造装置の運転パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、液体を介して加熱及び加圧を行う等方加圧装置10の概略構成を示す図である。等方加圧装置10は、内部に被加圧物を収容する略円筒形状の圧力容器12と、圧力容器の開口に嵌り圧力容器内を封止する蓋14を含む。蓋14は略円柱形状を有し、その軸方向に直交する方向にピン孔16が形成されている。圧力容器12の側面には、蓋14が圧力容器に嵌った際にピン孔16と整列する位置に、貫通孔18が設けられている。貫通孔18は、圧力容器の円筒の一つの直径上の2箇所に設けられる。ピン20は、圧力容器12に蓋14で蓋をしたとき整列したピン孔16と貫通孔18に挿入され、これにより蓋14がロックされる。
【0015】
圧力容器12内に油等の流体をリザーバ22より送る、また容器内より流体をリザーバ22に戻す給排ポンプ24が備えられている。また、圧力容器12に蓋がされた状態で、リザーバより流体を加圧して圧力容器12内に供給する昇圧ポンプ26が配置される。昇圧ポンプ26により容器内部の圧力が高まり、この圧力は容器内の被加圧物34に作用する。リザーバ22には、ヒータが備えられ、流体を加熱することができ、被加圧物34の加圧と共に、加熱を行うことを可能としている。蓋14は、油圧シリンダ等の駆動機構により昇降する昇降ビーム28に吊り下げ支持されている。この昇降ビーム28の昇降によって蓋14が昇降して圧力容器12の開閉が行われる。
【0016】
蓋14は、その下方に被加圧物34を保持する保持装置30を備えている。蓋14を圧力容器12の開口に向けて降下させるとき、保持装置30が容器内に投入され、その後蓋14がロックされる。この状態で、前述のように圧力容器12内に流体を送ることにより、保持装置30に保持される被加圧物34が加圧される。保持装置30は、複数段の棚(不図示)と、棚の1段ごとに置かれた袋体32を含む。袋体32に、被加圧物34が収容される。袋体32の各々には、袋体32内の気体を吸い出す吸引管36が接続され、吸引管36は1本に合流して蓋14を貫き、吸引ポンプ37に接続されている。
【0017】
保持装置30を吊り下げた状態で、蓋14を降下させると、圧力容器12内に袋詰めされた被加圧物34が順次投入され、最後に蓋14が容器の開口を封止する。そして、ピン20を貫通孔18、ピン孔16に挿入し、蓋14をロックして、昇圧ポンプ26による加圧が行われる。加圧時において、吸引ポンプ37で袋体32内の気体を吸引する。
【0018】
図2は、袋体32と被加圧物34の詳細を示す図である。被加圧物34は、積み重ねられた単層プリント配線基板38であり、複数枚の単層プリント配線基板38は積み重ねられた状態で載置板40上に置かれる。載置板40は、金属製とすることができ、角部には面取り等の加工を施すことにより、袋体32が破袋することを防止している。また、載置板40における、単層プリント配線基板38が置かれる面は、表面が粗いと、これが単層プリント配線基板38に転写されるため、鏡面、またはそれに近い加工が施されている。単層プリント配線基板38は、一定の形状を保ったリジット基板であっても、また可撓性のあるフレキシブル基板であってもよい。また、これらが組み合わせられて積み重ねられてもよい。また、すでに積層されたプリント配線基板を更に積層するようにしてもよい。積み重ねられたプリント配線基板の間には、樹脂シートを配置することができ、このシートは加熱時に溶けて上下の基板を接着する。
【0019】
載置板40には、ヒータを内蔵するようにしてよい。ヒータは、吸引管36と同様、蓋14を貫通して配置される電力線により供給される電力により発熱する発熱体とすることができる。単層プリント配線基板38等の載置板40上に積み重ねられた各層は、流体による加熱に加え、袋体32内の載置板40からの熱によっても効率よく加熱される。
【0020】
袋体32は、流体による加熱、また載置板40に内蔵されたヒータによる加熱に耐える耐熱性を有する弾性材料により形成される。具体的な材質としては、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム、また柔軟性を有するふっ素樹脂を用いることができる。これらの材料では、230℃程度までの使用が可能である。また、袋体32は、繰り返し使用が可能である。袋体32の寸法は、単層プリント配線基板の寸法に応じて定められるが、通常は、300〜600mm四方であり、また、肉厚は0.5〜3mmである。袋体32は、一端(図2では右端)が全幅にわたって開放しており、ここから、被加圧物34が袋体32内に挿入される。袋体32の他端は、絞られてその先端に開口部が設けられており、この開口部に吸引管36が接合されている。被加圧物34を挿入した後、一端の開口部を口金42で封止する。口金42は、水枕等に用いられる周知の締め金と同様の構成を有し、2本の棒状体の一端同士が互いに回動可能に連結しており、袋体32の開口部近傍を挟み、他端同士を結合することで、開口部を閉じるものである。吸引管36から、加熱中に被加圧物34から発生するガスや蒸気を連続的に吸引することで、複数枚の単層プリント配線基板38の層間のボイドによる圧着不良を抑制することができる。
【0021】
袋体32は、ヒータを備えたものにすることができる。前述の載置板に内蔵したヒータと同様の手法により外部から電力を供給する電気ヒータとすることができる。発熱体を埋め込むこともできるし、表面に発熱回路が印刷されたラバーヒータを袋体32として使用することもできる。
【0022】
図3は、積層プリント配線基板の製造工程を示す概略図である。載置板40上に、2枚またはそれ以上の単層プリント配線基板38を樹脂板44を挟んで積み重ねる(図3(a))。1枚の載置板40の上に置かれた複数枚の単層プリント配線基板38の1セットが、後の工程で接着されて1枚の積層プリント配線基板となる。載置板40の上に置かれた複数枚の単層プリント配線基板38等からなる被加圧物34を袋体32に挿入する(図3(b))。袋体32の開口を口金42で挟持し、封止する。この状態で、圧力容器12に投入し、蓋14を閉めて、ピン20を挿入しロックする。吸引管36を介して、吸引ポンプ37により袋体32内の圧力を減じ真空圧とする。これにより、袋体32と被加圧物34を密着させる。給排ポンプ24により、リザーバ22内で加熱された流体を圧力容器12内に送り、容器内が流体で満たされると、給排ポンプ24を停止して、昇圧ポンプ26を駆動する。昇圧ポンプ26により、圧力容器12内の圧力を高めつつ、流体を循環させ、被加圧物34に圧力を加える(図3(c))。循環路内のリザーバ22にて流体を加熱することにより、圧力容器12内の流体の温度を所定の温度に維持する。熱と圧力により樹脂板44が軟化して単層プリント配線基板38同士を接着する。流体により圧力を加えることにより、基板の側面(端面)にも圧力が作用し、軟化した樹脂板44等が端面よりはみ出すことを抑制する。また、基板の上面が平坦でなく凹凸があっても窪み部分に圧力が作用する。上層の単層プリント配線基板38が下層のものより小さい場合などにおいても、上層の基板の側面と下層の基板の上面で形成される凹んだ隅の部分にも圧力が作用し、ここから軟化した樹脂板44が漏れ出すことを抑制する。加熱、加圧状態を一定時間保持した後、圧力を開放し、給排ポンプ24により流体をリザーバ22に回収し、ピン20を抜いて、蓋14を上昇させて、被加圧物34を取り出し、冷却して、1枚の積層プリント配線基板46を得る(図3(d))。なお、被加圧物に圧力を伝える媒体となる流体は、油の他、窒素等のガスでもよい。
【0023】
図4は、等方加圧装置10の運転パターンを示す図である。圧力容器12内の圧力がPで示す線で、温度がTで示す線で、吸引ポンプ37による真空度がVで示す線で表されている。圧力Pは、3000kPaで2時間から2.5時間維持され、温度Tは徐々に上昇され、200〜230℃に達した後は、これが維持される。袋体32内部での気体の発生は、温度Tの上昇中にほぼ終了するので、温度が一定となった頃に吸引ポンプ37による吸引を終了する。
【符号の説明】
【0024】
1 等方加圧装置(積層プリント配線基板の製造装置)、12 圧力容器、14 蓋、20 ピン、22 リザーバ、24 給排ポンプ、26 昇圧ポンプ、30 保持装置、32 袋体、34 被加圧物、36 吸引管(吸引装置)、37 吸引ポンプ(吸引装置)、38 単層プリント配線基板、40 載置板、42 口金、46 積層プリント配線基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の積層プリント配線基板となる複数枚のプリント配線基板を載置板上に重ねて置く載置ステップと、
前記載置板上に重ねて置いた複数枚のプリント配線基板を袋体内に開口部より挿入し、その後前記開口部を封止する袋詰めステップと、
前記プリント配線基板を収容した複数個の袋体を圧力容器に収める容器収容ステップと、
圧力容器内に加熱された流体を供給し、この流体により前記複数個の袋体に収容されたプリント配線基板を同時に加熱、加圧して接着する加熱加圧ステップと、
を有する、積層プリント配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層プリント配線基板の製造方法であって、
前記載置板はヒータを備え、加熱加圧ステップにおいて当該ヒータによる加熱を行う、
積層プリント基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の積層プリント配線基板の製造方法であって、
前記袋体はヒータを備え、加熱加圧ステップにおいて当該ヒータによる加熱を行う、
積層プリント基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層プリント配線基板の製造方法であって、加熱加圧ステップ中に、袋体内の気体を吸引する、積層プリント基板の製造方法。
【請求項5】
積層プリント配線基板の製造装置であって、
本体と蓋を有する圧力容器と、
圧力容器の本体に対し、蓋体と共に昇降し、1枚の積層プリント配線基板となる複数枚のプリント配線基板を積み重ねた状態で密封して収容可能な袋体と、
前記袋体内のプリント配線基板を加熱加圧してこれらを接着するために、蓋がされた圧力容器内に、加熱され、加圧された流体を供給するポンプと、
圧力容器内の袋体内から圧力容器外へ気体を吸引する吸引装置と、
を有する積層プリント配線基板の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−267874(P2010−267874A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118995(P2009−118995)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】