説明

空中投下播種用植生袋及び空中投下播種用植生包装体

【課題】低コストで砂漠などの悪条件下における植生が実施でき、高い発芽率が得られ、費用対効果の良い空中投下播種用植生袋及び該袋を使用した空中投下播種用植生包装体の提供。
【解決手段】フィルムによって筒状に形成された胴部2の一端側を閉鎖し、他端側を開口部とした植生材収容用の袋体1を有し、開口部に該開口部を開閉するレールファスナー10を備え、袋体1の胴部の閉鎖側端部外側に、袋体1を空中落下させた際に傘状に拡開するパラシュート部材4を一体に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、火山噴火による土砂崩れ等の自然災害、森林伐採等の人災等によって発生した荒廃地や砂漠化した土地を、航空機による空中投下播種によって緑化する際に使用する空中投下播種用植生袋及び該袋を使用した空中投下播種用植生包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、荒廃地を緑化する方法として、地表面に穴を掘り、その中に種を播き、あるいは苗や幼木を植え、土をかけ、水遣りする方法が一般的である。しかし、砂漠等の広大な地域においてこれらの作業を一本ずつ行うことは困難である。
【0003】
このため、従来、航空機を使用した空中投下による植栽方法が提案されている。この種の従来の方法としては、土壌や肥料からなる植生材に種子を混ぜたものや、苗を植えつけたブロックを空中投下し、落下時の地面衝突時の貫入力や、落下後のブロック重量によって地表面に定着させ、根の伸張を待つものが一般的である(例えば特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開平8−242615号公報
【特許文献2】特開平8−298809号公報
【特許文献3】特開平8−298810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の植生方法では、種子や苗を植えたブロックの製造に手数と時間を要し、コスト高となるため、特に砂漠のような悪条件下では、その地域における最も植生効果の高い品種の植物を使用した場合であっても、発芽率が0.1%或いはそれ以下であり、費用対効果が悪いという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、低コストで砂漠などの悪条件下における植生が実施でき、高い発芽率が得られ、費用対効果の良い空中投下播種用植生袋及び該袋を使用した空中投下播種用植生包装体の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、フィルムによって筒状に形成された胴部を有し、該胴部の一端側を閉鎖し、他端側を開口部とした植生材収容用の袋体を有し、該開口部に該開口部を開閉するレールファスナーを備え、前記袋体の胴部の閉鎖側端部外側に、該袋体を空中落下させた際に傘状に拡開するパラシュート部材を一体に備え、全体が生分解性樹脂をもって形成された空中投下播種用植生袋にある。
【0007】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記パラシュート部材は、フィルムによって形成された一端側が開放された袋状部材からなり、該袋状部材の開口部内に前記袋体の胴部の閉鎖側端部を挿入し、袋状部材の開口縁部の複数個所を前記袋体の外面に一体化させたことにある。
【0008】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れか1の請求項に記載の空中投下播種用植生袋内に、植生用土壌材、肥料構成材及び種子を混合した植生材を充填した空中投下播種用植生包装体にある。
【0009】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記植生材には、粉末、顆粒又は粒状の吸水性樹脂材を混合させたことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る空中投下播種用植生袋及び空中投下播種用植生包装体は、フィルムによって筒状に形成された胴部を有し、該胴部の一端側を閉鎖し、他端側を開口部とした植生材収容用の袋体を有し、該開口部に該開口部を開閉するレールファスナーを備え、前記袋体の胴部の閉鎖側端部外側に、該袋体を空中落下させた際に傘状に拡開するパラシュート部材を一体に備えたことにより、内部に種子を含む植生材に水を含ませた状態で、空中より投下することにより、開口部が下向きとなった状態で地面に到達し、着地時の衝撃によってレールファスナーが開き、内部の植生材が地表面に直接接触した状態となるため、発芽後における根の地盤に対する貫入がスムーズになされることとなり、植生効率が高まる。また、全体を生分解性樹脂をもって形成しているので、袋体は継時的に分解され土に戻るため、着地時にレールファスナーが開かない場合であっても、発芽がなされ、根は地盤内に貫入し植生がなされるとともに、袋体が塵として残存されることがないため自然環境を害さない。
【0011】
更に本発明に係る空中投下播種用植生袋及び空中投下播種用植生包装体におけるパラシュート部材は、フィルムによって形成された一端側が開放された袋状部材からなり、該袋状部材の開口部内に前記袋体の胴部の閉鎖側端部を挿入し、袋状部材の開口縁部の複数個所を前記袋体の外面に一体化させたことにより、袋体の製造工程において簡単にこれと一体化させることができ、効果的な空中落下姿勢が得られるとともに、落下速度を適度に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明における空中投下播種用植生袋及び該袋を使用した空中投下播種用植生包装体の実施の形態を図面に示した実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る植生袋を示しており、この植生袋は、全体が生分解性樹脂材によって形成されている。図において符号1は植生袋を構成する袋体である。この袋体1は、フィルムによって筒状に形成された胴部2を有し、その胴部2の一端側を開閉可能な開口部とし、開口部内面にはレールファスナー10が一体に備えられ、これによって開口部が開閉されるようになっている。また、胴部2の他端側は底シール部3によって閉鎖されており、これによって全体が有底筒状の袋体1が構成されている。
【0014】
このレールファスナー10は袋体1外側からの開き力に対する耐開き抵抗より該袋体1内側からの開き抵抗が小さい構造のものが使用されている。
【0015】
更に具体的には、このレールファスナー10は、図1、図2に示すように胴部2の開口部を構成している筒状のフィルムの各半周部分を互いに重ね合わせるように畳み、図3〜図5に示すように、互いに重ね合わせるように畳まれた各半周部分を基台部11,12とし、その両基台部11,12にそれらの間を開閉するチャック部13が備えることによって構成されている。
【0016】
両チャック部13は、一方の基台部11の表面に一体に突設された雌封止レール部14内に、他方の基台部12に一体に突設された雄封止レール部15が挿入されることによって封止されるようになっている。
【0017】
雌封止レール部14は、基台部11に突設され、先端部内側面に断面が鈎状の鈎爪部16を有する一対の雌鈎レール部17a,17bを備えている。雄封止レール部15は、他方の基台部12の表面に一体に突設され、先端部外側面に断面が鈎状の鈎爪部18,18を有し雌鈎レール部17a,17b間に挿入される一対の雄鈎レール部19,19を備えている。
【0018】
また、一方の基台部11の両雌鈎レール部17a,17bの中間位置に、他方の基台部12の両雄鈎レール部19,19間に圧入される密封用レール部20が一体に突設され、雄封止レール部15を雌封止レール部14内に挿入することによって両者間の両鈎爪部16と18とが互いに系合されるとともに前記密封用レール部20が前記雄鈎レール部19,19の背面19a,19a間に圧入されるようになっている。
【0019】
密封用レール部20はその先端部分に両面側を膨出させた形状の頭部20aを備え、該頭部20aの両側面が両雄鈎レール部19,19の背面19a,19aを押圧することによって互いに線接触状態となり、気液密性が維持されるようになっている。
【0020】
また、雌封止レール部14の一方の雌鈎レール部17aの根元部の断面形状は、基台部11側に至るに従って厚くしたテーパ状に成型されており、これによって該雌鈎レール部17aが突設されている基台部11に対する曲げ力がこの雌鈎レール部17aに伝わり易く、従って図5に示すように、基台部11を外側に曲げることによって、雌鈎レール部17aが容易に雄鈎レール部27から離れる方向に曲げられて、互いに係合状態にある鈎爪部16と18とを容易に外すことが可能な易開放側係合部を構成している。
【0021】
これに対し、他方の雌鈎レール部17bの根元部は、その外側面が基台部11に至るに従って内側面と同様に一方の雌鈎レール部17a側に湾曲させた形状となっており、該根元部は、その厚さa(図3に示す)が基台部11の厚さbより厚く成型され、断面形状が円弧状に成型された円弧状部21を有している。このため、基台部11に開き方向の曲げ力が作用した場合、図5に示すように、基台部11が雌鈎レール部17bの根元部外側位置で曲がり、前記曲げ力が雌鈎レール部17bに容易には伝わらず、互いに係合状態にある鈎爪部16,18の係合が容易には外れない難開放側係合部を構成している。
【0022】
胴部2の下端側は、筒状の各半周部分が互いに重なり合うように平らにたたみ、その重なり合った半周部分間を互いに熱溶着させて底シール部3を形成している。
【0023】
袋体1の底シール部3側の端部側には、その外側にパラシュート部材4が被せられた配置に固定されている。このパラシュート部材4は、図1、図2に示すように、内部に袋体1の端部がその外周に間隙を隔てて収容される有底袋状に形成され、その有底袋状の開口部内に袋体1の底シール部側端部が挿入され、該パラシュート部材4の開口部内面と袋体1の外面が複数個所にて互いに熱融着によって一体化されるように固定されている。図中符号7パラシュート部材4と袋体1との融着点を示している。

次に、上述した植生袋を使用した植生包装体について説明する。
【0024】
この包装体5は、前述した植生袋の袋体1内に、図6に示すように開口部のレールファスナー10を開き、植生材6を収容し、レールファスナー10を閉じて開口部を密閉することにより構成される。
【0025】
植生材6は、種子、種子が発芽して成長した苗が根を張るための土壌材、苗が生長するための肥料構成材をもって構成される。この他、粉末、顆粒状又は粒状の吸水性樹脂を混合させても良い。
【0026】
土壌材には、天然の土砂の他、人口の土壌材を使用する。肥料構成材としては、腐葉土、堆肥等の自然肥料の他、化学肥料を各種必要に応じて混合したものを使用する。
【0027】
種子には、草木類の種子を使用し、植生地の植物成育環境に適したものを適宜選択して使用する。
【0028】
この包装体5は、植生までに期間がある場合は、乾燥状態の植生材6を袋体1内に収容して密閉しておく。これによって生分解性樹脂の生分解を進行させることなく保管することができる。そして植生直前に、袋体1の開口部のレールファスナー10を開いて必要量の水を注入し、再度レールファスナーを閉じて航空機に搭載し、植生現場上空より投下することにより空中投下播種する。
【0029】
このとき、包装体5は、図7に示すように空気抵抗によってパラシュート部材4が開き、開口部側が下向きになって落下する。また、パラシュート部材4内に空気が入ってこれが傘状に開くことにより、空気抵抗が大きくなり、落下速度が減速される。
【0030】
この状態で地上に到達して地表面に衝突することにより、図8に示すようにレールファスナー10が衝突時の植生材6の圧力によって開かれ、植生材6が種子含んだ状態で地表面に漏れ出し、播種と培土とが同時になされた状態となる。
【0031】
尚、レールファスナー10の袋体1内側からの圧力に対する開き抵抗、パラシュート部材4による落下速度減速率は、包空中投下播種時の高度や装体6の内容物の重量を考慮し、包装体5が地表面に衝突する際の衝撃力によって、図8に示す状態、即ち、包装体5内の植生材6が飛散することなくレールファスナー10が開かれる程度となるように予め実験によって決定し、各種の播種条件に応じて設計し製造したものを使用するものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る植生袋の一例の全体を示す平面図である。
【図2】同上の縦断面図である。
【図3】図1に示す実施例における密封構造式のレールファスナーを示す断面図である。
【図4】同上のチャック部の易開放側の開き状態を示す拡大断面図である。
【図5】同上のチャック部の難開放側の開き状態を示す拡大断面図である。
【図6】本発明に係る植生袋に植生材を収容する状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る植生袋に植生材を収容した空中投下播種用植生包装体の空中落下状態を示す縦断面図である。
【図8】同上の地表面に落下した後の状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 袋体
2 胴部
3 底シール部
4 パラシュート部材
5 包装体
6 植生材
7 融着点
10 レールファスナー
11 基台部
11a 縁部背面
12 基台部
12a 縁部背面
12b 縁部背面
13 チャック部
14 雌封止レール部
15 雄封止レール部
16 鈎爪部
17a 雌鈎レール部
17b 雌鈎レール部
18 鈎爪部
19 雄鈎レール部
19a 背面
20 密封用レール部
20a 頭部
21 円弧状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムによって筒状に形成された胴部を有し、該胴部の一端側を閉鎖し、他端側を開口部とした植生材収容用の袋体を有し、
該開口部に該開口部を開閉するレールファスナーを備え、
前記袋体の胴部の閉鎖側端部外側に、該袋体を空中落下させた際に傘状に拡開するパラシュート部材を一体に備え、
全体が生分解性樹脂をもって形成された空中投下播種用植生袋。
【請求項2】
前記パラシュート部材は、フィルムによって形成された一端側が開放された袋状部材からなり、該袋状部材の開口部内に前記袋体の胴部の閉鎖側端部を挿入し、袋状部材の開口縁部の複数個所を前記袋体の外面に一体化させてなる請求項1に記載の空中投下播種用植生袋。
【請求項3】
前記請求項1〜3の何れかに記載の空中投下播種用植生袋内に、植生用土壌材、肥料構成材及び種子を混合した植生材を充填した空中投下播種用植生包装体。
【請求項4】
前記植生材には、粉末、顆粒又は粒状の吸水性樹脂材を混合させてなる請求項3に記載の空中投下播種用植生包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−77711(P2010−77711A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248340(P2008−248340)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(507131159)ハイパック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】