説明

立体画像形成方法

【課題】立体的な画像を形成可能な立体画像形成方法を提供すること。
【解決手段】不飽和結合を有する樹脂と光重合開始剤とを含有する第一のトナーを含む第一の未定着トナー画像を記録媒体の上に形成する第一の画像形成工程と、前記第一の未定着トナー画像を光照射及び加熱して前記第一の未定着トナー画像を前記記録媒体に定着する定着工程と、を有する立体画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像を作成するには、例えば、発泡剤を含むトナーを用い加熱により立体画像を作像する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、定着保護シート等で定着度を補助する必要がある。
また、インクを用いて印刷により立体画像を作成するためには、インク滴の体積が小さいため複数回の印字が必要となる場合がある。
【0003】
また、トナーの上に事後的に適用されるオーバーコートを必要としない、摩擦抵抗性や溶媒耐性に優れたトナー組成物を提供するため、スチレン及びアクリレートから生成したポリマーと、紫外線硬化型アクリレートオリゴマーと、必要に応じて着色剤と、を含むことを特徴とするトナー組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、光重合開始剤を配合しない紫外線硬化型インクと組み合わせて使用して、この紫外線硬化型インク層の特定箇所を硬化するために使用できる、光重合成分を含まない電子写真方式で用いられるトナーを提供するため、電子写真方式で用いられるトナーであって、光重合開始剤とバインダ樹脂成分を主成分とすることを特徴とする光重合開始剤含有トナーが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、離型性の高いシリコーンオイルのようなキャリアを用いた場合でも十分な定着性が得られ、従来制御の難しかった光沢を高いレベルで実現できるカラー画像形成方法を提供するため、着色粒子を含有する複数の液体現像剤を用いて画像支持体上にトナー画像を形成し、用紙に転写してカラープリントを得る電子写真画像形成法において、上記複数の液体現像剤とは別に無色透明のトナー粒子を含有する現像剤を、上記画像支持体上の少なくとも画像部に付着させて用紙に転写することを特徴とするカラー画像形成方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−134559号公報
【特許文献2】特開2005−182041号公報
【特許文献3】特開2004−151145号公報
【特許文献4】特開2002−202645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、不飽和結合を有する樹脂と光重合開始剤とを含有する第一のトナーを用いない場合に比較して、立体的な画像を形成可能な立体画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、請求項1に係る発明は、
不飽和結合を有する樹脂と光重合開始剤とを含有する第一のトナーを含む第一の未定着トナー画像を記録媒体の上に形成する第一の画像形成工程と、
前記第一の未定着トナー画像に光照射及び加熱して前記第一の未定着トナー画像を前記記録媒体に定着する定着工程と、
を有する立体画像形成方法である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
着色剤を含有し光重合開始剤を含有しない第二のトナーを含む第二の未定着トナー画像を前記記録媒体と前記第一の未定着トナー画像との間に形成する第二の画像形成工程を更に有し、
前記定着工程が、前記第一の未定着トナー画像と共に、前記第二の未定着トナー画像を前記記録媒体に定着するものである請求項1に記載の立体画像形成方法である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記定着工程における定着時の荷重が、0N以上1500N以下である請求項1又は請求項2に記載の立体画像形成方法である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
前記記録媒体における前記第一の未定着トナー画像が形成される面のJIS P8119に基づく平滑度が、70秒以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の立体画像形成方法である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
前記第二のトナーの体積平均粒子径が、5μm以下である請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の立体画像形成方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、第一のトナーを用いない場合に比較して、立体的な画像を形成可能な立体画像形成方法が提供される。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、第二の画像形成工程を有さない場合に比較して、着色されたトナー画像に立体感を付すことができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、定着工程における定着時の荷重が、0N以上1500N以下の範囲外である場合に比較して、画像の立体感の喪失が防止される。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、記録媒体における第一の未定着トナー画像が形成される面のJIS P8119に基づく平滑度が70秒未満である場合に比較して、画像の立体感をさらに向上させることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、第二のトナーの体積平均粒子径が5μmを超える場合に比較して、画像の立体感をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の立体画像形成方法を実施可能な画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の立体画像形成方法の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の立体画像形成方法は、不飽和結合を有する樹脂と光重合開始剤とを含有する第一のトナーを含む第一の未定着トナー画像を記録媒体の上に形成する第一の画像形成工程と、前記第一の未定着トナー画像に光照射及び加熱して前記第一の未定着トナー画像を前記記録媒体に定着する定着工程と、を有する。
【0020】
本実施形態の第一のトナーは、不飽和結合を有する樹脂と光重合開始剤とを含有するため、このトナーにより形成された未定着トナー画像に対して光照射及び加熱を行うことにより短時間に不飽和結合を有する樹脂の硬化反応(光重合反応)が起き、トナー画像の記録媒体への染み込みが抑制されるため、記録媒体上で立体的なトナー画像が形成される。本実施形態では、例えば、20μm以上40μm以下程度の凹凸を示すトナー画像が形成される。
【0021】
また、本実施形態の立体画像形成方法は、着色剤を含有し光重合開始剤を含有しない第二のトナーを含む第二の未定着トナー画像を前記記録媒体と前記第一の未定着トナー画像との間に形成する第二の画像形成工程を更に有し、前記定着工程が、前記第一の未定着トナー画像と共に、前記第二の未定着トナー画像を前記記録媒体に定着するものであってもよい。
【0022】
着色剤を含有し光重合開始剤を含有しない第二のトナーを含む第二の未定着トナー画像を記録媒体と第一の未定着トナー画像との間に形成した後にこれら未定着トナー画像を定着することで、第二の未定着トナー画像由来のトナー画像上に、第一の未定着トナー画像由来のトナー画像が形成される。そのため、第二の未定着トナー画像由来のトナー画像に立体感を付すことができる。
【0023】
(第一のトナー)
本実施形態の第一のトナーは、不飽和結合を有する樹脂と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて着色剤、離型剤その他の成分を含んで構成される。以下に、第一のトナーを構成する各成分について説明する。
【0024】
−不飽和結合を有する樹脂−
本実施形態の第一のトナーは、結着樹脂として不飽和結合を有する樹脂を含有する。不飽和結合を有する樹脂としては、樹脂中に不飽和結合を有するものであれば限定されるものではなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、不飽和結合当量が2000g/eq以下の樹脂であることが好ましく、1800g/eq以下の樹脂であることが更に好ましく、1500g/eq以下の樹脂であることが特に好ましい。樹脂の不飽和結合当量が2000g/eq以下であれば、光照射による樹脂の十分な硬化が達成でき、結果として良好な凹凸画像が形成される。
【0025】
本実施形態において、樹脂の不飽和結合当量は以下の方法により測定された値をいう。
樹脂のNMR分析(H分析)を実施し、モノマー種、組成比を同定し、そのうち、不飽和結合を有するモノマーの割合を求めることにより、不飽和結合1つあたりの分子量を算出する。
【0026】
結着樹脂としては、定着性、特に画像の可撓性の点で優れるポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。以下に、不飽和結合を有するポリエステル樹脂(以下、特定のポリエステル樹脂と称することがある。)について説明する。
【0027】
本実施形態で用いられる特定のポリエステル樹脂は、酸成分由来の繰り返し単位として、フマル酸由来の繰り返し単位とアルケニルコハク酸由来の繰り返し単位とを含んでもよい。
【0028】
特定のポリエステル樹脂のガラス転移温度は、45℃以上が好ましい。特定のポリエステル樹脂のガラス転移温度が45℃以上であれば、トナーの熱保管性の問題の発生が防止される。特定のポリエステル樹脂のガラス転移温度は50℃以上がさらに好ましい。また、定着性(最低定着温度)の理由から特定のポリエステル樹脂のガラス転移温度は65℃以下が好ましい。
【0029】
特定のポリエステル樹脂は、例えば、主として酸成分とアルコール成分との縮重合により得られる。酸成分とアルコール成分とが縮重合することで生ずる該酸成分の残基が酸成分由来の繰り返し単位に該当する。
【0030】
特定のポリエステル樹脂における酸成分由来の繰り返し単位に占める、フマル酸由来の繰り返し単位の割合及びアルケニルコハク酸由来の繰り返し単位の割合は、共に10モル%以上であってもよい。
【0031】
酸成分由来の繰り返し単位に占めるフマル酸由来の繰り返し単位の割合は、25モル%以上が好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。また、酸成分由来の繰り返し単位に占めるアルケニルコハク酸由来の繰り返し単位の割合は、25モル%以上が好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。
酸成分由来の繰り返し単位に占める、フマル酸由来の繰り返し単位の割合とアルケニルコハク酸由来の繰り返し単位の割合との比は特に限定されるものではないが、例えば、これらの比(フマル酸由来の繰り返し単位:アルケニルコハク酸由来の繰り返し単位)として5:1乃至1:5が好ましく4:1乃至1:4がさらに好ましい。
【0032】
本実施形態において、アルケニルコハク酸由来の繰り返し単位の元となるアルケニルコハク酸としては、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸等が挙げられる。
【0033】
本実施形態においては、アルケニルコハク酸由来の繰り返し単位として、ドデセニルコハク酸由来の繰り返し単位が好ましい。これは、酸成分であるドデセニルコハク酸の反応が好ましく進行すると共に入手容易であることによる。
【0034】
本実施形態においては、特定のポリエステル樹脂を合成する際に酸成分として少なくともフマル酸とアルケニルコハク酸とが用いられることが好ましいが、特定のポリエステル樹脂のガラス転移温度の調整のため、必要に応じてその他の酸成分を併用してもよい。その他の酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;マレイン酸、コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。また、良好なる定着性を確保することを目的として、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用してもよい。
【0035】
本実施形態において使用可能なアルコール成分の例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これらアルコール成分は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これらアルコール成分の中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また、より良好なる定着性を確保することを目的として、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)を併用してもよい。
【0036】
なお、酸成分とアルコール成分との重縮合によって得られた特定のポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、および/またはモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、および/またはカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整しても良い。モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられる。モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどが挙げられる。
【0037】
特定のポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上25mgKOH/g以下が好ましい。5mgKOH/g以上あれば、トナーの紙への親和性がよく、帯電性も良い。また、後述する乳化凝集法によりトナーを製造した場合に、乳化粒子を作製し易く、また乳化凝集法の凝集工程における凝集速度や融合工程における形状変化速度が著しく速くなることを抑えることができるため、粒度制御や形状制御を行い易い。また、ポリエステル樹脂の酸価が25mgKOH/g以内であれば、帯電の環境依存性に悪影響を及ぼさない。また乳化凝集法でのトナー製造における凝集工程での凝集速度や融合工程での形状変化速度が著しく遅くなることを抑えることができるため、生産性の低下を防止することができる。
ポリエステル樹脂の酸価は、6mgKOH/g以上23mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0038】
特定のポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフイー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が5000以上1000000以下であることが好ましく、更に好ましくは7000以上500000以下であり、数平均分子量(Mn)は2000以上100000以下であることが好ましく、分子量分布Mw/Mnが1.5以上100以下であることが好ましく、更に好ましくは2以上60以下である。
【0039】
本実施形態に用いられる特定のポリエステル樹脂は酸成分とアルコール成分とを常法に従って縮合反応させることによって製造してもよい。例えば、上記酸成分とアルコール成分、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150℃以上250℃以下で加熱し、副次的に生成する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、予め定められた酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物が取得される。
酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、高分子量化するためには通常1/1程度が好ましい。
【0040】
ポリエステル樹脂の合成に使用する触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属やテトラブチルチタネート等の金属アルコキシドなどのエステル化触媒が挙げられる。触媒の添加量は、原材料の総量に対して0.01質量%以上1.00質量%以下の範囲で使用される。
【0041】
本実施形態においては、特定のポリエステル樹脂と共に、その他の樹脂を結着樹脂として併用してもよい。本実施形態で用いられるその他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性結着樹脂などが挙げられ、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類の単独重合体又は共重合体(スチレン系樹脂);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の単独重合体又は共重合体(オレフィン系樹脂);エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、及びこれらの非ビニル縮合系樹脂とビニル系モノマーとのグラフト重合体などが挙げられる。
【0042】
これらその他の樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの樹脂の中でもビニル系樹脂を用いてもよい。
【0043】
ビニル系樹脂の場合、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合やシード重合により樹脂粒子分散液が容易に調製される点で有利である。前記ビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルフォン酸、エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミンなどのビニル系高分子酸やビニル系高分子塩基の原料となるモノマーが挙げられる。
【0044】
第一のトナー中における特定のポリエステル樹脂の含有量は、50質量%以上95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
−光重合開始剤−
本実施形態の第一のトナーは、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤の含有量としては、0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。光重合開始剤の含有量が0.5質量%以上であれば、トナー画像の硬化が十分で画像強度が確保できる。また、光重合開始剤の含有量が10質量%以下であれば、帯電性悪化および熱保管性悪化の問題の発生が防止される。
光重合開始剤の含有量は、2質量%以上8質量%以下が好ましい。
【0046】
本実施形態で用いられる光重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。ラジカル重合開始剤を用いることで、特定のポリエステル樹脂に含まれる不飽和結合間の重合反応が効果的に促進される。
【0047】
光重合開始剤の25℃の水への溶解度は0.1質量%未満が好ましい。25℃の水への溶解度が0.1質量%未満であれば、後述する乳化凝集法によりトナーを製造した場合に、光重合開始剤が水相に移動しにくくなり、トナー中に光重合開始剤を含有させることが可能となり、画像強度を増加させることが出来るようになる。
【0048】
光重合開始剤の種類は特に限定されるものではなく、アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ジアゾニウム系化合物、スルホニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物等の通常の光重合開始剤が使用できる。
これらの中でも、融解温度が60℃以上のアルキルフェノン系化合物及び融解温度が60℃以上のアシルフォスフィンオキサイド系化合物の少なくとも一方を用いることが好ましい。光重合開始剤の融解温度が60℃以上であれば、後述する乳化凝集法によりトナーを製造した場合に、凝集粒子を作成する段階における樹脂粒子等の凝集制御が容易になる。また、光重合開始剤としてアルキルフェノン系化合物及びアシルフォスフィンオキサイド系化合物の少なくとも一方を用いることで、トナーの画像強度を向上させることができる。
【0049】
アルキルフェノン系化合物の具体例としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等が挙げられ、これらの中でも、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物の具体例としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ベンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられ、これらの中でも、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0050】
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンは365nm付近から短波長側に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドは435nm付近から短波長側に、吸収をもつ。ここで、光照射手段により照射される光は波長が短いほど散乱しやすいため、照射光のうち、短波長の光はトナー画像内部に進入しにくく、長波長の光はトナー画像内部に進入しやすい。そのため、より長波長側に吸収を持つビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドはトナー画像内部を硬化しやすく、より短波長側に吸収を持つ2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンはトナー画像の表面を硬化しやすい。そこで、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンとビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドとを併用することで、トナー画像の内部及び表面を硬化することが可能となる。
【0051】
−着色剤−
本実施形態の第一のトナーは必要に応じて着色剤を含有してもよい。
着色剤は、染料であっても顔料であっても構わないが、耐光性や耐水性の観点から顔料であることが好ましい。
例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアンブルー、マラカイトグリーンオキサート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジシンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料が使用される。
【0052】
本実施形態の第一のトナーにおける、着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下が好ましい。
必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用することも有効である。着色剤の種類を選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等が得られる。
なお、本実施形態においては、第一のトナーを、着色剤を含有しない透明トナーとしてもよい。
【0053】
−離型剤−
本実施形態の第一のトナーは、必要に応じて離型剤を含有してもよい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン等のパラフィンワックス;シリコーン樹脂;ロジン類;ライスワックス;カルナバワックス;等が挙げられる。これらの離型剤の融解温度は、50℃以上100℃以下が望ましく、60℃以上95℃以下がより望ましい。
トナー中の離型剤の含有量は、0.5質量%以上15質量%以下が望ましく、1.0質量%以上12質量%以下がより望ましい。離型剤の含有量が0.5質量%以上あれば、特にオイルレス定着の場合における剥離不良が防止される。離型剤の含有量が15質量%以下であれば、トナーの流動性の悪化が防止されるので、画質および画像形成の信頼性が保たれる。
【0054】
−その他の添加剤−
本実施形態の第一のトナーには、上記した成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤、赤外線吸収剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を添加してもよい。
【0055】
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、またはこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
【0056】
帯電制御剤としては、例えば4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
【0057】
無機粒子としては、種々の目的のために添加されるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。この粘弾性調整により、画像光沢度や紙への染み込みが調整される。無機粒子は、例えば、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用してもよいが、発色性やOHP透過性等の透明性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ粒子が好ましく用いられる。また、シリカ粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
【0058】
赤外線吸収剤としては、アミニウム塩系化合物やジイモニウム塩系化合物等のオニウム塩系化合物、酸化インジウム系金属酸化物、酸化スズ系金属酸化物、酸化亜鉛系金属酸化物、スズ酸カドミウム、特定のアミド化合物等が挙げられる。第一のトナーに赤外線吸収剤を添加することで、第一のトナーを光定着方式のトナーとすることができる。
【0059】
−外添剤−
トナーには無機粒子や有機粒子で構成される外添剤を添加してもよい。
【0060】
無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン(チタニア)、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。中でも、シリカ粒子や酸化チタン粒子であってもよく、疎水化処理された粒子であってもよい。
【0061】
無機粒子は、一般に流動性を向上させる目的で使用される。前記無機粒子の1次粒径としては、1nm以上200nm未満が好ましく、その添加量としては、トナー100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であってもよい。
【0062】
また、有機粒子は、一般にクリーニング性や転写性を向上させる目的で使用される。有機粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0063】
−トナーの諸物性−
トナーの融解温度は、特に限定されるものではないが、45℃以上110℃以下の範囲内であってもよく、60℃以上90℃以下の範囲内であってもよい。
【0064】
融解温度が、トナーの保存時や画像とした後に曝される一般的な高温環境下の下限温度に相当する45℃未満であると、ブロッキングを起こしやすくなる場合がある。トナーは、融解温度を境にして粘度が低下するために、融解温度以上の温度環境下で保存されるとブロッキングを起こしてしまうためである。一方、融解温度が110℃を超える場合には、低温定着が困難となる場合がある。
【0065】
この融解温度はJIS K−7121に基いて入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求められる。
【0066】
本実施形態の第一のトナーの体積平均粒子径としては、1μm以上20μm以下であってもよく、3μm以上10μm以下であってもよく、また、個数平均粒子径としては、1μm以上20μm以下であってもよく、2μm以上9μm以下であってもよい。
【0067】
ここで、体積平均粒子径および個数平均粒子径は、コールターマルチサイザーII(コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(コールター社製)を使用して測定される。
【0068】
測定に際しては、分散剤として界面活性剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下の範囲で加える。これを電解液100mlないし150mlの中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーII型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2μm以上50μm以下の範囲にある粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
【0069】
このようにして測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を累積体積平均粒子径D16v、累積数平均粒子径D16p、累積50%となる粒径を累積体積平均粒子径D50v、累積数平均粒子径D50p、累積84%となる粒径を累積体積平均粒子径D84v、累積数平均粒子径D84pと定義する。
【0070】
ここで、体積平均粒子径は累積体積平均粒子径D50vとして求められ、個数平均粒子径は累積数平均粒子径D50pとして求められる。
【0071】
本実施形態の第一のトナーは、形状係数SF1が115以上140以下の範囲の球状であることが好ましい。
トナーの形状は、球状トナーが現像性、転写性の点では有利であるが、クリーニング性の面では不定形に比べ劣ることがある。トナーが上記範囲の形状であることにより、転写効率、画像の緻密性が向上し、高画質な画像形成が行われ、また、感光体表面のクリーニング性が高まる。
上記形状係数SF1は、120以上138以下の範囲であることがより好ましい。
【0072】
ここで上記形状係数SF1は、下記式(1)により求められる。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
上記式(1)中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0073】
SF1は、主に顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出することができる。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0074】
(第二のトナー)
本実施形態の第二のトナーは、着色剤を含有し光重合開始剤を含有しないものであり、必要に応じて離型剤その他の成分を含んで構成される。
第二のトナーは、着色剤を必須成分として含有し、光重合開始剤を含有しない以外は、第一のトナーと同様の成分を含んで構成される。成分の望ましい含有量は第一のトナーと同様とされるが、結着樹脂としては、不飽和結合を有しない樹脂であってもよい。
【0075】
本実施形態の第二のトナーの体積平均粒子径は、5μm以下が好ましく、4.5μm以下が更に好ましく、4.0μm以下が特に好ましい。なお、第二のトナーの体積平均粒子径は、第一のトナーの場合と同様の方法で求められる。
第二のトナーの体積平均粒子径を5μm以下とすることで、第二のトナーを含む第二の未定着トナー画像由来の定着後のトナー画像の平滑性を向上させることができる。その結果として、第一の未定着トナー画像由来のトナー画像の立体感をさらに向上させることができる。
【0076】
(トナーの製造方法)
本実施形態の第一及び第二のトナー(以下、単に本実施形態のトナーと称することがある)の製造方法は特に限定されず、公知である混練・粉砕製法等の乾式法や、乳化凝集法や懸濁重合法等の湿式法等によって作製される。これらの方法の中でも、コアシェル構造のトナーを作成容易な乳化凝集法が好ましい。以下、乳化凝集法による本実施形態のトナーの製造方法について詳しく説明する。
【0077】
乳化凝集法においては、トナーを構成する各材料を水系分散液に分散させた分散液(樹脂粒子分散液等)を準備する(乳化工程)。続いて、樹脂粒子分散液や、その他必要に応じて用いられる各種の分散液(着色剤分散液や離型剤分散液等)を混合して原料分散液を準備する。
次に、原料分散液中で、凝集粒子を形成する凝集粒子形成工程と、凝集粒子を融合する融合工程とを経て、トナー粒子を得る。なお、コア粒子と、このコア粒子を被覆するシェル層とを有するいわゆるコアシェル構造型のトナーを作製する場合には、凝集粒子形成工程を終えた後の原料分散液に、樹脂粒子分散液を添加して(トナー化した際にコア粒子となる)凝集粒子表面に樹脂粒子を付着させて(トナー化した際にシェル層となる)被覆層を形成する被覆層形成工程を実施し、その後に融合工程を実施する。なお、被覆層形成工程に用いる樹脂成分は、コア粒子を構成する樹脂成分と同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
以下、各工程について詳細に説明する。
−乳化工程−
凝集粒子形成工程に用いる原料分散液を準備するために、乳化工程では、トナーを構成する主要な材料を、水系媒体中に分散させた乳化分散液を調整する。以下、樹脂粒子分散液や、着色剤分散液、離型剤分散液等について説明する。
【0079】
−樹脂粒子分散液−
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒子径は、0.01μm以上1μm以下であってもよく、0.03μm以上0.8μm以下であってもよく、0.03μm以上0.6μmであってもよい。
樹脂粒子の体積平均粒子径が1μmを越えると、最終的に得られるトナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易くなる場合がある。一方、体積平均粒子径が上記範囲内であれば前記欠点がない上、トナー間の組成偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。
【0080】
なお、樹脂粒子等、原料分散液中に含まれる粒子の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定される。
【0081】
樹脂粒子分散液やその他の分散液に用いられる分散媒としては、水系媒体であってもよい。
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、前記水系媒体に界面活性剤を添加混合しておいてもよい。
【0082】
界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用されてもよい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
なお、前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。また、前記カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等のイオン性界面活性剤が挙げられる。
【0084】
ポリエステル樹脂は、中和によりアニオン型となり得る官能基を含有しているため自己水分散性をもっており、親水性となり得る官能基の一部又は全部が塩基で中和された、水性媒体の作用下で安定した水分散体を形成する。
【0085】
ポリエステル樹脂において中和により親水性基と成り得る官能基はカルボキシル基やスルホン酸基等の酸性基である為、中和剤としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−nプロピルアミン、ジメチルn−プロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン等のアミン類等が挙げられ、これらから選ばれるところの1種または2種以上を使用してもよい。これらの中和剤を添加することによって、乳化の際のpHを中性に調節し、得られるポリエステル樹脂分散液の加水分解が防止される。
【0086】
ポリエステル樹脂を用いて樹脂粒子分散液を調整する場合は、転相乳化法を利用してもよい。なお、ポリエステル樹脂以外の結着樹脂を用いて樹脂粒子分散液を調整する場合にも転相乳化法を利用してもよい。転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散安定化する方法である。O相に光重合開始剤を添加して樹脂粒子中に光重合開始剤を含有させてもよい。
【0087】
この転相乳化に用いられる有機溶剤としては例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が例示される。これらの溶剤は単一でも、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0088】
転相乳化に用いる有機溶媒の溶媒量に関しては、樹脂の物性により所望の分散粒径を得るための溶媒量が異なるため、一概に決定することは困難である。しかし、本実施形態において、錫化合物触媒の樹脂中の含有量が通常のポリエステル樹脂に対して多量である場合には、樹脂重量に対する溶媒量は比較的多くてもよい。溶媒量が少ない場合には乳化性が不十分となり、樹脂粒子の粒径の大径化や粒度分布のブロード化等が発生する場合がある。
【0089】
また、この転相乳化の際に分散粒子の安定化や水系媒体の増粘防止を目的として、分散剤を添加してもよい。該分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムの等の水溶性高分子、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤、リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機化合物等が挙げられる。これらの分散剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。分散剤は、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下添加してもよい。
【0090】
転相乳化の際の乳化温度は、有機溶剤の沸点以下でかつ、結着樹脂の融解温度あるいはガラス転移温度以上であればよい。乳化温度が結着樹脂の融解温度あるいはガラス転移温度未満の場合、樹脂粒子分散液を調整することが困難となる。なお、有機溶剤の沸点以上で乳化する場合は、加圧密閉された装置で乳化を行えば良い。
【0091】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量は通常、5質量%以上50質量%以下であってもよく、10質量%以上40質量%以下であってもよい。含有量が前記範囲外にあると、樹脂粒子の粒度分布が広がり、特性が悪化する場合がある。
【0092】
−着色剤分散液−
着色剤分散液を調整する際の分散方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用してもよく、なんら制限されるものではない。必要に応じて、界面活性剤を使用して着色剤の水分散液を調製したり、分散剤を使用して着色剤の有機溶剤分散液を調製したりしてもよい。分散に用いる界面活性剤や分散剤としては、結着樹脂を分散させる際に用い得る分散剤と同様のものを用いてもよい。
【0093】
また、原料分散液を調整する際に、着色剤分散液は、その他の粒子を分散させた分散液と共に一度に混合してもよいし、分割して多段回で添加混合してもよい。
【0094】
着色剤分散液に含まれる着色剤の含有量は通常、5質量%以上50質量%以下であってもよく10質量%以上40質量%以下であってもよい。含有量が前記範囲外にあると、着色剤粒子の粒度分布が広がり、特性が悪化する場合がある。
【0095】
−離型剤分散液−
離型剤分散液は、離型剤を水中にイオン性界面活性剤等と共に分散し、離型剤の融解温度以上に加熱し、ホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて強い剪断力を印加することにより調製される。これにより、体積平均粒子径が1μm以下の離型剤粒子を分散させる。また、離型剤分散液における分散媒としては、結着樹脂に用いる分散媒と同様のものを用いてもよい。
【0096】
なお、結着樹脂や着色剤等を分散媒と混合して、乳化・分散させる装置としては、公知のものが利用でき、例えばホモミキサー(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホミジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタティックミキサー(ノリタケカンパニー)などの連続式乳化分散機等が利用される。
【0097】
なお、目的に応じて、結着樹脂分散液に、既述した離型剤、内添剤、帯電制御剤、無機粉体等の成分を分散させておいても良い。
【0098】
また、結着樹脂、着色剤、離型剤以外のその他の成分の分散液を調整する場合、この分散液中に分散する粒子の体積平均粒子径としては、通常1μm以下であればよく、0.01μm以上0.5μm以下であってもよい。体積平均粒子径が1μmを超えると、最終的に得られるトナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招きやすくなる場合がある。一方、体積平均粒子径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり性能や信頼性のばらつきが小さくなる点で有利である。
【0099】
−凝集粒子形成工程−
凝集粒子形成工程においては、樹脂粒子分散液の他に、通常は着色剤分散液及び離型剤分散液を加え、必要に応じて添加されるその他の分散液を少なくとも混合して得られた原料分散液に対して、凝集剤を更に添加して加熱し、これらの粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。なお、樹脂粒子が結晶性ポリエステル等の結晶性樹脂である場合には、結晶性樹脂の融解温度付近(±20℃)の温度で、且つ、融解温度以下の温度にて加熱し、これらの粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。また、第一のトナーを製造する場合には、凝集粒子を形成する際に原料分散液中に光重合開始剤が添加されてもよい。
【0100】
凝集粒子の形成は、回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温で凝集剤を添加し、原料分散液のpHを酸性にすることによってなされる。また、加熱による急凝集を抑える為に、室温で攪拌混合している段階でpH調整を行ない、必要に応じて分散安定剤を添加してもよい。
なお、本実施形態において「室温」とは25℃をいう。
【0101】
凝集粒子形成工程に用いられる凝集剤は、原料分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、すなわち無機金属塩の他、2価以上の金属錯体が好適に用いられる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上する。
また、凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0102】
ここで、無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0103】
また、キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。非水溶性のキレート剤では、原料分散液中への分散性に乏しく、トナー中において凝集剤に起因する金属イオンの捕捉が充分になされなくなる場合がある。
【0104】
キレート剤としては、公知の水溶性キレート剤であれば特に限定されないが、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などを好適に用いてもよい。
【0105】
キレート剤の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下の範囲内であってもよく、0.1質量部以上3.0質量部未満であってもよい。キレート剤の添加量が0.01質量部未満であるとキレート剤添加の効果が発現しなくなる場合がある。一方、5.0質量部を超えると、帯電性に悪影響を及ぼす他、トナーの粘弾性も劇的に変化するため、低温定着性や画像光沢性に悪影響を与える場合がある。
【0106】
なお、キレート剤は、凝集粒子形成工程や被覆層形成工程の実施中や実施前後において添加されるものであるが、添加に際して原料分散液の温度調整は必要なく、室温のまま加えてもよいし、凝集粒子形成工程や被覆層形成工程での槽内温度に調節した上で加えてもよい。
【0107】
−被覆層形成工程−
凝集粒子形成工程を経た後には、必要であれば被覆層形成工程を実施してもよい。被覆層形成工程では、上記した凝集粒子形成工程を経て形成された凝集粒子の表面に、被覆層形成用の樹脂粒子を付着させることにより被覆層を形成する。これにより、いわゆるコアシェル構造を有するトナーが得られる。
【0108】
被覆層の形成は、凝集粒子形成工程において凝集粒子(コア粒子)を形成した原料分散液中に、通常、樹脂粒子分散液を追添加することにより行われる。
【0109】
なお、被覆層形成工程を終えた後は、融合工程が実施されるが、被覆層形成工程と融合工程とを交互に繰り返し実施することにより、被覆層を多段階に分けて形成してもよい。
【0110】
−融合工程−
凝集粒子形成工程、あるいは、凝集粒子形成工程および被覆層形成工程を経た後に実施される融合工程では、これらの工程を経て形成された凝集粒子を含む懸濁液のpHを6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
【0111】
そして、凝集の進行を停止させた後、加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。結着樹脂の融解温度以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させてもよい。
【0112】
−洗浄、乾燥工程等−
凝集粒子の融合工程を終了した後、洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナー粒子を得るが、洗浄工程は塩酸、硫酸、硝酸等の強酸の水溶液でトナー粒子に付着した分散剤を除去後、ろ液が中性になるまでイオン交換水などで洗浄することが望ましい。また、固液分離工程には特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好適である。さらに、乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が用いられる。
【0113】
乾燥工程では、トナー粒子の乾燥後の含水分率が1.0質量%以下に調整してもよく、0.5質量%以下に調整してもよい。
【0114】
また、乾燥後のトナー粒子には、既述した種々の外添剤を必要に応じて添加してもよい。
【0115】
(静電荷像現像剤)
本実施形態で用いられる現像剤は、本実施形態のトナーを含むものであれば特に限定されず一成分現像剤あるいは二成分現像剤のいずれであってもよい。二成分現像剤として用いる場合にはトナーと、キャリアとを混合して使用される。
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが用いられる。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等が挙げられる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0116】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
導電材料としては、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、カーボンブラック等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であってもよい。
キャリアの芯材の体積平均粒子径としては、一般的には10μm以上500μm以下であり、30μm以上100μm以下であってもよい。
【0119】
またキャリアの芯材の表面を樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
【0120】
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
【0121】
前記二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(重量比)としては、トナー:キャリア=1:100乃至30:100程度の範囲であってもよく、3:100乃至20:100程度の範囲であってもよい。
【0122】
(画像形成工程、及び、定着工程)
本実施形態の立体画像形成方法は、第一のトナーを含む第一の未定着トナー画像を記録媒体の上に形成する第一の画像形成工程と、第一の未定着トナー画像に光照射及び加熱して第一の未定着トナー画像を記録媒体に定着する定着工程と、を有し、必要に応じて第二のトナーを含む第二の未定着トナー画像を記録媒体と第一の未定着トナー画像との間に形成する第二の画像形成工程を更に有してもよい。
なお、以下において、便宜上、記録媒体上に形成された未定着のトナー像を未定着トナー画像と、記録媒体上に定着されたトナー像をトナー画像と、潜像保持体(感光体)や中間転写体上に形成されたトナー像を単にトナー像と称する場合がある。
【0123】
本実施形態の第一又は第二の画像形成工程(以下、単に本実施形態の画像形成工程と称することがある。)としては、記録媒体の上に第一又は第二の未定着トナー画像を形成可能な工程であれば如何なるものであってもよいが、例えば、潜像保持体を帯電させる帯電工程と、帯電した前記潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像保持体の表面に形成された静電潜像を本実施形態の現像剤によりトナー像として現像する現像工程と、前記潜像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体に一次転写する一次転写工程と、前記中間転写体に一次転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写工程と、を含むものであってもよい。静電潜像保持体表面に形成されたトナー像を中間転写体を経て記録媒体に転写することで、記録媒体表面に第一又は第二の未定着トナー画像が形成される。
【0124】
本実施形態の立体画像形成方法を実施可能な画像形成装置としては、例えば、潜像保持体と、前記潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記潜像保持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像保持体の表面に形成された静電潜像を本実施形態の現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、前記潜像保持体の表面に形成されたトナー像が一次転写される中間転写体と、前記潜像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写体に一次転写する一次転写手段と、前記中間転写体に一次転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着する定着手段とを有し、必要に応じて前記潜像保持体の転写残留成分をクリーニングするクリーニング手段等のその他の手段を有するものが挙げられる。
【0125】
以下に、図面を参照しながら本実施形態の立体画像形成方法を実施可能な画像形成装置について説明する。なお、以下の説明においては、第一の画像形成工程と第二の画像形成工程とが実施され、定着工程において第一の未定着トナー画像と共に第二の未定着トナー画像が記録媒体に定着される態様について説明する。
【0126】
図1は、本実施形態の立体画像形成方法を実施可能な画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本画像形成装置は、図1に示すように、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックの各色の画像を形成する4つの画像形成ユニット50Y、50M、50C、50Kと、透明画像を形成する画像形成ユニット50Tが、間隔をおいて並列的に(タンデム状に)配置されている。
【0127】
ここで、各画像形成ユニット50Y、50M、50C、50K、50Tは、収容されている現像剤中のトナーの種類を除き同様の構成を有しているため、ここでは透明画像を形成する画像形成ユニット50Tについて代表して説明する。尚、画像形成ユニット50Tと同様の部分に、透明(T)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、イエロー(Y)を付した参照符号を付すことにより、各画像形成ユニット50M、50C、50K、50Yの説明を省略する。本実施形態においては、画像形成ユニット50Tに収容されている現像剤中のトナー(透明トナー)として本実施形態の第一のトナーが用いられ、画像形成ユニット50Y、50M、50C及び50Kに収容されている現像剤中のトナーとして本実施形態の第二のトナーが用いられる。
【0128】
透明の画像形成ユニット50Tは、潜像保持体としての感光体11Tを備えており、この感光体11Tは、図示の矢印A方向に沿って図示しない駆動手段によって予め定められたプロセススピードで回転駆動されるようになっている。感光体11Tとしては、例えば、赤外領域に感度を持つ有機感光体が用いられる。
【0129】
感光体11Tの上部には、帯電ロール(帯電手段)18Tが設けられており、帯電ロール18Tには、不図示の電源により予め定められた電圧が印加され、感光体11Tの表面が予め定められた電位に帯電される。
【0130】
感光体11Tの周囲には、帯電ロール18Tよりも感光体11Tの回転方向下流側に、感光体11Tの表面を露光して静電潜像を形成する露光装置(潜像形成手段)19Tが配置されている。なお、ここでは露光装置19Tとして、スペースの関係上、小型化が可能なLEDアレイを用いているが、これに限定されるものではなく、他のレーザービーム等による潜像形成手段を用いても勿論問題無い。
【0131】
また、感光体11Tの周囲には、露光装置19Tよりも感光体11Tの回転方向下流側に、透明の現像剤を保持する現像剤保持体を備える現像装置(現像手段)20Tが配置されており、感光体11T表面に形成された静電潜像を、透明トナーによって顕像化し、感光体11T表面にトナー像を形成する構成になっている。
【0132】
感光体11Tの下方には、感光体11T表面に形成されたトナー像を一次転写する中間転写ベルト(中間転写体)33が、5つの感光体11T,11Y,11M,11C,11Kの下方に渡るように配置されている。この中間転写ベルト33は、一次転写ロール17Tによって感光体11Tの表面に押し付けられている。また、中間転写ベルト33は、駆動ロール12、支持ロール13およびバイアスロール14の3つのロールによって張架され、感光体11Tのプロセススピードと等しい移動速度で、矢印B方向に周動されるようになっている。中間転写ベルト33表面には、上記のようにして透明トナー像が一次転写され、次にイエローのトナー像が一次転写され、更にマゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー像が順次一次転写され、積層される。
【0133】
また、感光体11Tの周囲には、一次転写ロール17Tよりも感光体11Tの回転方向(矢印A方向)下流側に、感光体11Tの表面に残留したトナーやリトランスファーしたトナーを清掃するためのクリーニング装置15Tが配置されている。クリーニング装置15Tにおけるクリーニングブレードは、感光体11Tの表面にカウンター方向に圧接するように取り付けられている。
【0134】
中間転写ベルト33を張架するバイアスロール14には、中間転写ベルト33を介して二次転写ロール(二次転写手段)34が圧接されている。中間転写ベルト33表面に一次転写され積層されたトナー像は、バイアスロール14と二次転写ロール34との圧接部において、図示しない用紙カセットから給紙される記録紙(記録媒体)P表面に、静電的に転写される。この際、中間転写ベルト33上に転写、積層されたトナー像は透明トナー像が一番下(中間転写ベルト33に接する位置)になっているため、記録紙P表面に転写された未定着トナー画像では、未定着透明トナー画像(第一の未定着トナー画像)が一番上になる。その結果として、イエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックの各色の未定着トナー画像(第二の未定着トナー画像)は、記録媒体と未定着透明トナー画像(第一の未定着トナー画像)との間に形成されることとなる。
【0135】
また、二次転写ロール34の下流には、記録紙P上に多重転写された未定着トナー画像を、熱及び圧力、並びに、光照射によって記録紙P表面に定着して、永久像とするための定着器(定着手段)35及び光照射手段36が配置されている。
【0136】
尚、本実施形態に用いられる定着器としては、例えば、表面にフッ素樹脂成分やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を用い、ベルト形状を有する定着ベルト、及び、表面にフッ素樹脂成分やシリコーン系樹脂に代表される低表面エネルギー材料を用い、円筒状の定着ロールが挙げられる。
【0137】
次に、透明、イエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックの各色の画像を形成する各画像形成ユニット50T、50Y,50M,50C,50Kの動作について説明する。各画像形成ユニット50T、50Y,50M,50C,50Kの動作は、それぞれ同様であるため、透明の画像形成ユニット50Tの動作を、その代表として説明する。
【0138】
透明の現像ユニット50Tにおいて、感光体11Tは、矢印A方向に予め定められたプロセススピードで回転する。帯電ロール18Tにより、感光体11Tの表面は予め定められた電位にマイナス帯電される。その後、感光体11Tの表面は、露光装置19Tによって露光され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。続いて、現像装置20Tによりマイナス帯電されたトナーが反転現像され、感光体11Tの表面に形成された静電潜像は感光体11T表面に可視像化され、トナー像が形成される。その後、感光体11T表面のトナー像は、一次転写ロール17Tにより中間転写ベルト33表面に一次転写される。一次転写後、感光体11Tは、その表面に残留したトナー等の転写残留成分がクリーニング装置15Tのクリーニングブレードにより掻き取られ、清掃され、次の画像形成工程に備える。
【0139】
以上の動作が各画像形成ユニット50T,50Y,50M,50C,50Kで行われ、各感光体11T,11Y,11M,11C,11K表面に可視像化されたトナー像が、次々と中間転写ベルト33表面に多重転写されていく。カラーモード時は、透明、イエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックの順に各色のトナー像が多重転写されるが、二色、三色モード時のときもこの順番で、必要な色のトナー像のみが単独または多重転写されることになる。その後、中間転写ベルト33表面に単独または多重転写されたトナー像は、二次転写ロール34により、図示しない用紙カセットから搬送されてきた記録紙P表面に二次転写され、続いて、定着器35において未定着トナー画像が加熱・加圧され、その後、光照射手段36から未定着トナー画像へ光が照射されることにより定着される。二次転写後に中間転写ベルト33表面に残留したトナーは、中間転写ベルト33用のクリーニングブレードで構成さえたベルトクリーナ16により清掃される。
【0140】
定着器35としては、加熱ロールと加圧ロールとを用いる2ロール方式の他、加熱側又は加圧側がベルト状で他方がロール状のベルト−ロールニップ方式、加熱側及び加圧側の双方ともベルト状の2ベルト方式等の定着装置を用いてもよい。ベルトについては、複数のロールでベルトを張架する方式の他、ベルトを張架せずに用いるフリーベルト方式も挙げられる。
トナーが赤外線吸収剤を含有するものである場合、光定着器(フラッシュ定着器)を用いてもよい。光定着器に用いられる光源としては、通常のハロゲンランプ、水銀ランプ、フラッシュランプ、赤外線レーザ等があるが、フラッシュランプによって瞬時に定着させることでエネルギーが節約され最適である。
光定着器を用いることで、未定着トナー画像に対して加熱及び光照射を一括して行うことができる。この場合、光照射手段36を用いなくともよい。
【0141】
本実施形態においては、定着工程における定着時の荷重が、0N以上1500N以下であることが好ましく、0N以上1400N以下であることが更に好ましく、0N以上1250N以下であることが特に好ましい。定着圧力を上述の範囲とすることで、トナー画像の立体感の喪失が防止される。上述した光定着器を用いた場合、定着圧力は0Nである。
【0142】
本実施形態において、定着圧力は、以下のようにして測定された値をいう。
圧力平均値はニッタ株式会社製の「ローラー間圧力測定システム」を用いて静止状態で測定を行った。圧力値の算出方法は、圧接ニップ部内の被加熱材搬送方向の測定点が奇数個の場合には中心点を除く上流側の圧力値の平均および下流側の圧力の平均を採用する。また、測定点が偶数個の場合には上流側の平均値と下流側の平均値を取り、10回の測定の平均値を算出することで圧力平均値とする。また、圧力分布については有限要素法等を用いた静的応力解析によっても予測・算出が可能である。
【0143】
光照射手段36から未定着トナー画像へ光が照射されることで、未定着トナー画像を構成する第一のトナーに含有される特定のポリエステル樹脂の有する不飽和結合が光重合開始剤の作用により重合反応を生じ、特定のポリエステル樹脂が硬化する。重合反応を促進するためにはトナー画像に光が照射される際のトナー画像の粘度は低いことが好ましい。そのため、定着器35による定着後速やかに光照射手段36からトナー画像に光が照射されることが望ましい。これにより、溶融状態のトナー画像に光を照射することができ、効率よく第一のトナーを光硬化することができる。
【0144】
光照射手段36により照射される光の波長としては、トナー中に含まれる光重合開始剤が重合反応を生じさせることのできる波長が選択され、例えば、280nm以上440nm以下とされる。
また、光照射手段36としては、光重合開始剤による重合反応を生じさせることのできる波長の光を照射可能であれば特に限定されず、例えば、メタルハライドランプ(波長範囲:200nm以上600nm以下)、もしくは、LED−UVであれば選択波長は365/375/385nmのいずれかが挙げられる。
【0145】
図1において、透明の画像形成ユニット50Tは、透明の現像剤を保持する現像剤保持体を含む現像装置20Tと感光体11Tと帯電ロール18Tとクリーニング装置15Tとが一体となって画像形成装置本体から着脱可能なプロセスカートリッジとして構成されている。また、画像形成ユニット50Y、50K、50C及び50Mも画像形成ユニット50Tと同様にプロセスカートリッジとして構成されている。
【0146】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。本実施形態のトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収納する。なお、本実施形態のトナーカートリッジには少なくともトナーが収容されていればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収容されてもよい。
【0147】
従って、トナーカートリッジの着脱が可能な構成を有する画像形成装置においては、本実施形態の第一又は第二のトナーを収納したトナーカートリッジを利用することにより、本実施形態の第一又は第二のトナーを容易に現像装置に供給することができる。
【0148】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ40Y、40M、40C、40K及び40Tの着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置20Y、20M、20C、20K及び20Tは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換することができる。
【0149】
(記録媒体)
トナー像を転写されて最終的な記録画像が形成される記録媒体(記録用紙)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。立体画像の凹凸を際だたせるためには、記録媒体における第一の未定着トナー画像の形成される側の面が平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用される。
本実施形態においては、記録媒体における第一の未定着トナー画像が形成される面のJIS P8119に基づく平滑度は、70秒以上が好ましく、75秒以上が更に好ましく、80秒以上が特に好ましい。記録媒体の平滑度を上記範囲とすることで、トナー画像の立体感をさらに向上させることができる。
【0150】
なお、上述の画像形成装置は潜像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体を介して記録媒体に転写する態様であるが、本実施形態の立体画像形成方法では、潜像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体を介さず直接記録媒体に転写する態様の画像形成装置を用いてもよい。
【実施例】
【0151】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、単に「部」「%」とあるのは全て質量基準である。
【0152】
(硬化型樹脂分散液Aの調製)
・硬化型樹脂 ポリエステル系樹脂(ダイセル・サイテック社製 溶融粘度3200mPa・s(@175℃)、不飽和結合当量1400g/eq): 100部
・光重合開始剤(Irgacure 819): 10部
・メチルエチルケトン(MEK): 40部
・NaOH: 1部
上記成分を50℃に加熱し溶解混合した。次いで、イオン交換水(DIW)を序々に添加し転相乳化した。次いで、50℃に加熱し溶剤であるMEKを分離回収して硬化型樹脂分散液Aを得た。
得られた硬化型樹脂分散液Aは、レーザー式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分析計)で体積平均粒子径(D50)を測定したところ165nmであった。
【0153】
(非硬化型樹脂分散液Bの調製)
光重合開始剤を加えない以外は硬化型樹脂分散液Aと同様の方法で非硬化型樹脂分散液Bを得た。
得られた非硬化型樹脂分散液Bは、レーザー式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分析計)で体積平均粒子径(D50)を測定したところ165nmであった。
【0154】
(離型剤分散液の調整)
ポリワックス725(ベーカーペトロライト社製): 30部
界面活性剤(第一工業製薬社製 ネオゲンSC): 1.5部
DIW: 100部
上記成分を120℃で30分加熱後、加圧分散機(ゴーリンホモジナイザー)にて4パス相当の時間分散を実施した。その後、30℃まで冷却し離型剤分散液を作成した。得られた離型剤分散液は、レーザー式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分析計)で体積平均粒子径(D50)を測定したところ250nmであった。
【0155】
(顔料分散液の調整)
C.I.ピグメントブルー15:3: 30部
界面活性剤(第一工業製薬社製 ネオゲンSC): 5部
DIW: 100部
上記成分を0.3μmのジルコニアビーズを入れたメディア式分散機にて4時間相当の時間分散を実施し顔料分散液を作成した。得られた顔料分散液は、レーザー式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分析計)で体積平均粒子径(D50)を測定したところ140nmであった。
【0156】
(硬化型トナー(a)の調製)
硬化型樹脂分散液A: 80部(硬化型樹脂の固形分として)
離型剤分散液: 10部(離型剤の固形分として)
上記成分を混合し、硝酸にてpH=3とした後、凝集剤(ポリ塩化アルミ 15000ppm)を添加し、その後40℃まで加熱混合した。粒子径が5.0μmに到達した時点で硬化型樹脂分散液A10部(硬化型樹脂の固形分として)を添加し粒子径が6.0μmになるまで凝集反応を継続した。6.0μmに到達後、80℃まで加熱して3時間保持し、凝集粒子を合一させた。次いで、30℃にまで冷却しトナースラリーを得た。フィルタープレスによる処理において洗浄脱水処理を実施した。次いで40℃の雰囲気にて1日真空乾燥し体積平均粒子経5.8μmのトナー母粒子を得た。
上記母粒子にシリコーンオイル処理したシリカ(処理量10%、処理前比表面積50m/g、ジメチルシリコーンオイル、100cs):0.8部、及び、チタニア(イソブチルシラン処理):0.5部をヘンシェルミキサーで混合して硬化型トナー(a)を得た。
【0157】
(キャリアおよび現像剤の調製)
フェライト粒子(Cu−Znフェライト:平均粒子径35μm): 100部
トルエン: 20部
ポリメチルメタアクリレート樹脂(Mn=15000、Mw=45000): 3.2部
カーボンブラック(平均粒子径30nm:商品名VXC72:キャボット社製): 0.44部
フェライト粒子を除く上記成分を遊星型ボールミルにて分散し、被覆層形成液を作製した。この被覆層形成液とフェライト粒子とを真空脱法型ニーダにいれ60℃で30分間攪拌後、脱溶媒してキャリアを得た。
このキャリアに対して上記トナーが8%になるようにして現像剤を調整した。
【0158】
(非硬化型トナー(b)の調製)
非硬化型樹脂分散液B: 65部(非硬化型樹脂の固形分として)
離型剤分散液: 10部(離型剤の固形分として)
顔料分散液: 10部(顔料の固形分として)
上記成分を混合し、硝酸にてpH=3とした後、凝集剤(ポリ塩化アルミ 15000ppm)を添加し、その後35℃まで加熱混合した。粒子径が3.0μmに到達した時点で非硬化型樹脂分散液B15部(非硬化型樹脂の固形分として)を添加し粒子径が4.0μmになるまで凝集反応を継続した。4.0μmに到達後、80℃まで加熱して3時間保持し、凝集粒子を合一させた。次いで30℃にまで冷却しトナースラリーを得た。フィルタープレスによる処理において洗浄脱水処理を実施した。次いで40℃の雰囲気にて1日真空乾燥し体積平均粒子経3.8μmのトナー母粒子を得た。
上記母粒子に対して硬化型トナー(a)の調製方法および現像剤調製方法と同様の手段にて非硬化型トナー(b)およびその現像剤を調製した。
【0159】
(硬化型トナー(c)の調製)
トナー母粒子の体積平均粒子径を7.5μmになるように調整した以外は硬化型トナー(a)と同様にして硬化型トナー(c)およびその現像剤を調製した。
【0160】
(非硬化型トナー(d)の調製)
硬化型樹脂分散液Aに替えて非硬化型樹脂分散液Bを用いた以外は硬化型トナー(a)の調製と同様にして非硬化型トナー(d)およびその現像剤を調製した。
【0161】
(非硬化型トナー(e)の調製)
トナー母粒子の体積平均粒子径を5.8μmになるように調製した以外は非硬化型トナー(b)と同様にして非硬化型トナー(e)およびその現像剤を調製した。
【0162】
[実施例1]
(画像の作成)
ApeosPoatII(富士ゼロックス社製)改造機を用い、硬化型トナー(a)、および非硬化型トナー(b)の組合せにて、未定着の非硬化型トナー(b)画像の上に未定着の硬化型トナー(a)画像を所望の位置に重ねた未定着プリント画像を作成した。被定着紙としてJIS P8119に基づく表面平滑度が70秒の紙を用いた。
ついで、180℃に加熱したホットプレート上に該画像を載せ、その間にUV光を1000WのUV照射装置(CT/MN−W1000−I型、マリオネットワーク社製)を用い30cmの距離から10秒間照射した。実施例1における定着圧力は0kgf/m(0N)である。これにより、実施例1の定着画像を得た。
【0163】
[実施例2]
硬化型トナー(a)に替えて硬化型トナー(c)を用いた事以外は実施例1と同様にして実施例2の定着画像を得た。
【0164】
[実施例3]
JIS P8119に基づく表面平滑度が100秒の被定着紙を用いた事以外は実施例1と同様にして実施例3の定着画像を得た。
【0165】
[実施例4]
非硬化型トナー(b)に替えて非硬化型トナー(e)を用いた事以外は実施例1と同様にして実施例4の定着画像を得た。
【0166】
[実施例5]
JIS P8119に基づく表面平滑度が50secの被定着紙を用いた事以外は実施例1と同様にして実施例5の定着画像を得た。
【0167】
[実施例6]
未定着の非硬化型トナー(b)画像を設けず、未定着の硬化型トナー(a)画像を直接被定着紙上に設けた事以外は実施例1と同様にして実施例6の定着画像を得た。
【0168】
[実施例7]
定着時に、定着荷重が1200Nとなる熱ロール型定着機を用いた以外は、実施例1と同様にして定着画像6を得た。
【0169】
[比較例1]
硬化型トナー(a)に替えて非硬化型トナー(d)を用いた事以外は実施例1と同様にして比較例1の定着画像を得た。
【0170】
[評価]
得られた定着画像について立体感の評価を行った。
立体感は定着画像を触った感じで、下記4段階の基準に沿って評価した。
G1: 触感だけではなく、見た目でも凹凸を確認できる
G1.5: 触って普通に凹凸を確認できる
G2: 注意深く触ることにより、凹凸を確認できる
G3: 凹凸を感じない
得られた結果を表1に示す。
【0171】
以下の表1に示すように、本実施形態の方法により立体感のある画像が形成されている事が分かる。
【0172】
【表1】

【符号の説明】
【0173】
11 感光体
12 駆動ロール
13 支持ロール
14 バイアスロール
15 クリーニング装置
16 ベルトクリーナ
17 一次転写ロール
18 帯電ロール
19 露光装置
20 現像装置
34 二次転写ロール
35 定着器
36 光照射手段
40 トナーカートリッジ
50 画像形成ユニット
P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和結合を有する樹脂と光重合開始剤とを含有する第一のトナーを含む第一の未定着トナー画像を記録媒体の上に形成する第一の画像形成工程と、
前記第一の未定着トナー画像に光照射及び加熱して前記第一の未定着トナー画像を前記記録媒体に定着する定着工程と、
を有する立体画像形成方法。
【請求項2】
着色剤を含有し光重合開始剤を含有しない第二のトナーを含む第二の未定着トナー画像を前記記録媒体と前記第一の未定着トナー画像との間に形成する第二の画像形成工程を更に有し、
前記定着工程が、前記第一の未定着トナー画像と共に、前記第二の未定着トナー画像を前記記録媒体に定着するものである請求項1に記載の立体画像形成方法。
【請求項3】
前記定着工程における定着時の荷重が、0N以上1500N以下である請求項1又は請求項2に記載の立体画像形成方法。
【請求項4】
前記記録媒体における前記第一の未定着トナー画像が形成される面のJIS P8119に基づく平滑度が、70秒以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の立体画像形成方法。
【請求項5】
前記第二のトナーの体積平均粒子径が、5μm以下である請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の立体画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−54325(P2013−54325A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194425(P2011−194425)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】