説明

筐体の防水機構、筐体組立方法および携帯端末装置

【課題】パッキングを作製するための金型にかかる費用およびパッキング作製費用を低減でき、パッキングの反発力を低くして筐体の剛性確保を容易にし、さらに、パッキングの交換の頻度を長くし、かつ、パッキングの組み付けを容易にする。
【解決手段】第2筐体部において、第1筐体部に対向する側にパッキング2を収納する周囲溝30が形成されている。第1筐体部において、周囲溝30に対向する部分に周囲リブ10が形成されている。パッキング2は、自己粘着性を有し、縦断面が略矩形の枠状に形成されている。パッキング2において、周囲溝30の側壁3c,3dに対向する側面2c,2dに、密着防止機能が付与されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に防水性を付与するための筐体の防水機構、防水機構を備えた筐体を組み立てる筐体組立方法、および防水機構を備えた携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯端末装置の普及に伴って、携帯端末装置は、様々な環境で使用されるようになっている。そして、水辺での使用を考慮して、防水機構を備えた携帯端末装置も提供されている。
【0003】
防水機構を実現するために、一般に、ゴム材や合成樹脂材によるパッキングを使用した防水構造が用いられる(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−218057号公報(段落0003,0011)
【特許文献2】特開2003−75918号公報(段落0005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下、一般的な防水構造の一例を説明する。図11は、防水構造が適用される携帯電話機を示す斜視図である。図12は、筐体組立方法を説明するための組立図である。図13および図14は、図11に示す携帯電話機のA−A断面を示す断面図である。ただし、図13には、携帯電話機における筐体が組み立てられる前の状態が示されている。図15は、組み立てられる前の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。図16は、組み立てられた後の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【0006】
図11に示す携帯電話機は、折り畳み型の携帯電話機である。以下、折り畳み型の携帯電話機を構成する2つの筐体(上部筐体および下部筐体とする。)のうちの一方の筐体(上部筐体)における防水構造を説明する。図11に示すように、上部筐体は、筐体ケース3と、筐体ケース3を覆う筐体カバー1とを含む。図12に示すように、筐体ケース3の周囲部(底部以外の部分)における筐体カバー1に対向する側には、パッキング5が嵌め込まれる溝状の嵌合部(以下、周囲溝という。)30が設けられている。図12に示すように、パッキング5は枠状に形成されている。
【0007】
図13および図15に示す例では、パッキング5の断面形状は、矩形ではなく、筐体カバー1に対向する先端が窄まったような特殊形状である。具体的には、パッキング5における上部は凸部5aを形成し、底部は凹部5bを形成し、側部5c,5dの形状は、上部から底部に向かって広がるような形状である。
【0008】
筐体を組み立てる作業を行う作業者は、筐体ケース3に形成されている周囲溝30にパッキング5を嵌め込んだ後、筐体ケース3に筐体カバー1を嵌め込む。筐体カバー1において、筐体ケース3における周囲溝30に対向する位置に突部(以下、周囲リブという)10が設けられている。作業者は、筐体カバー1における周囲リブ10を周囲溝30に嵌め合わせる。周囲リブ10が周囲溝30に嵌め込まれた状態では、パッキング5における上部の凸部5aは周囲リブ10に押されて接触面5eを形成し、パッキング5の底部が周囲溝30の底面3bに接触して接触面5fを形成し、パッキング5の側部5c,5dが周囲溝30の側壁3c,3dに接触する。
【0009】
周囲リブ10は、周囲溝30の内部においてパッキング5に上部から力を加え、パッキング5を潰す。潰れて形状が変化したパッキング5は、周囲溝30の内部空間を満たし、筐体内部への水の進入を防ぐ防水作用を果たす。
【0010】
具体的には、図16に示すように、パッキング5における上部の凸部5aが周囲リブ10に押されることによって、パッキング5の底部の接触面5fが周囲溝30の底面3bに接触するとともに、パッキング5の側部5c,5dが膨らんで周囲溝30の側壁3c,3dに押しつけられる。膨らんだ側部5c,5dと側壁3c,3dとが接触している面を接触面5g,5hとする。
【0011】
以上のように、筐体ケース3に形成されている周囲溝30と筐体カバー1に形成されている周囲リブ10とによって、複雑な断面形状を有するパッキング5をある程度圧縮しつつ筐体を閉じることによって、すなわち筐体カバー1を筐体ケース3に嵌め込むことによって、パッキング5の充填率と反発力とを利用して筐体内部を密閉し防水構造を成立させている。
【0012】
なお、パッキング5は、水の進入を防ぐだけでなく、水以外の液体の進入も防ぐ。また、パッキング5は、防塵作用も果たす。
【0013】
防水機能を確実に果たさせるには、筐体の全周囲に亘ってパッキング5を筐体カバー1と筐体ケース3とで均一に圧縮することによって、周囲リブ10の天面1aと周囲溝30の底面3bとの間の空間におけるパッキング5の充填率を所定値以上にすることが求められる。また、筐体の変形に追従して止水効果を発揮させるための所定値以上の反発力が求められるので、パッキング5の材質をある程度のゴム硬度の材質にする。
【0014】
筐体の全周囲に亘って所定値以上のの反発力を維持するとともに周囲リブ10の天面1aと周囲溝30の底面3bとの間の空間におけるパッキング5の充填率を所定値以上にするために、パッキング5の断面形状を、図13および図15に示されたような潰れやすい特殊形状にする。パッキング5の断面形状は図13および図15に示されたような特殊形状になっているので、パッキング5を作製するための金型を作成するコストが増大してパッキング5の作製費用が増大する。その結果、筐体の作製に要する費用が増加する。よって、携帯端末装置のコストが増加する。
【0015】
一般的に40(JIS A)程度のゴム硬度を有するパッキング5の周囲リブ10の天面1aと周囲溝30の底面3bとの間の空間における充填率を所定値以上にするとともにパッキング5の所定値以上の反発力を確保するには、パッキング5を20%から30%の圧縮率(圧縮前の体積に対する体積減少分の割合)で圧縮する。しかし、パッキング5の反発力によって筐体カバー1と筐体ケース3との嵌合部において開きや反りが発生しないように、筐体の剛性を高くすることが要求される。
【0016】
また、パッキング5を20%から30%の圧縮率で圧縮すると、永久圧縮歪みが生じてしまう可能性がある。よって、2年程度が経過するとパッキング5を交換する必要性が生ずる。
【0017】
また、パッキング5を組み付けるときに、一般に、作業者がパッキング5を筐体ケース3に組み込む作業を行う。しかし、パッキング5の形状(特に、上面の形状)が複雑であるから、パッキング5を離型紙に貼り付けて形状を維持したまま一時に筐体ケース3に組み込む方法を採用することは困難である。よって、パッキング5の一端から周囲溝30に順次組み込んでいく方法を採らざるを得ず、パッキング5を筐体ケース3に組み込む作業の作業時間が長くなる。
【0018】
そこで、本発明は、パッキングを作製するための金型にかかる費用およびパッキング作製費用を低減でき、パッキングの反発力を低くして筐体の剛性確保を容易にし、さらに、パッキングの交換の頻度を長くし、かつ、パッキングの組み付けを容易にする筐体の防水機構、筐体組立方法および携帯端末装置を提供することを目的とする。
【0019】
なお、特許文献1には、ゴム硬度が10〜30(JIS A)であって金属板に対する粘着力が1.0kg/25mm以上の材料を用いたパッキングが記載されている。しかし、特許文献1に記載されたパッキングは溝に嵌め込まれることが想定されていないので、その形状は単純化されていない。また、パッキングに粘着力を付与する目的は筐体との接着性を図ることであり、以下に示す本発明による防水機構において自己粘着性を有するパッキングを使用する理由とは異なる。特許文献2には、ゴム硬度が5(JIS A)以下であって自己粘着性を有するパッキングが記載されている。しかし、特許文献2に記載されたパッキングは周囲溝に嵌め込まれることが想定されていないので、その形状は単純化されていない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明による筐体の防水機構は、第2筐体部における第1筐体部に対向する側にパッキングを収納する溝が形成され、第1筐体部における部位であって溝に対向する部位にリブが形成され、パッキングは、自己粘着性を有し、縦断面が略矩形の枠状に形成され、パッキングにおける面であって溝の側壁に対向する面に、密着防止機能が付与されていることを特徴とする。
【0021】
本発明による筐体組立方法は、自己粘着性を有し、縦断面が略矩形の枠状であり、第2筐体部に形成されている溝の側壁に対向する面に密着防止機能を付与したパッキングを作製し、パッキングの形状を第2筐体部に形成されている溝に設置する際の形状にして、平面であるパッキングの上面を離型紙に貼り付け、離型紙に貼り付けられているパッキングを第2筐体部に形成されている溝の内部に配置し、離型紙をパッキングから剥がし、溝に対向する部分にリブが形成されている第1筐体部を第2筐体部に嵌め合わせることを特徴とする。
【0022】
本発明による携帯端末装置は、第2筐体部における第1筐体部に対向する側にパッキングを収納する溝が形成され、第1筐体部における部位であって溝に対向する部位にリブが形成され、パッキングが、自己粘着性を有し、縦断面が略矩形の枠状に形成され、パッキングにおける面であって溝の側壁に対向する面に密着防止機能が付与され、パッキングが、第2筐体部における溝に収納され、かつ、第1筐体部におけるリブおよび溝の底面に密着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、パッキングを作製するための金型にかかる費用およびパッキング作製費用を低減でき、パッキングの反発力を低くして筐体の剛性確保を容易にし、さらに、パッキングの交換の頻度を長くし、かつ、パッキングの組み付けを容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0025】
実施形態1.
本発明による筐体の防水機構が適用される携帯電話機として、図11に示された折り畳み型携帯電話機を例にする。また、防水構造として、図11に示された折り畳み型携帯電話機を構成する2つの筐体(上部筐体および下部筐体とする。)のうちの一方の筐体(上部筐体)における防水構造を例にする。また、本実施形態でも、図12に示された構造と同様に、筐体ケース3(第2筐体部)の周囲部(底部以外の部分)における筐体カバー1(第1筐体部)に対向する側には、パッキング5が嵌め込まれる溝(周囲溝)30が設けられている。
【0026】
図1および図2は、図11に示す携帯電話機のA−A断面を示す断面図である。ただし、図1には、携帯電話機における筐体が組み立てられる前の状態が示されている。また、図3は、組み立てられる前の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。図4は、組み立てられた後の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【0027】
本実施形態でも、図12に示されたパッキング5と同様に、パッキング2は枠状に形成されている。しかし、図12に示されたパッキング5の断面形状(縦断面形状)とは異なり、パッキング2の断面形状は略矩形(完全な矩形でもよい。)である(図3参照)。パッキング2の高さは、パッキング2が存在しない状態で筐体カバー1と筐体ケース3とが嵌め合わされたときに周囲溝30の内部に形成される空間の高さと同等であるか、または、空間の高さよりもやや大きい。
【0028】
筐体を組み立てる作業を行う作業者は、筐体ケース3に形成されている周囲溝30にパッキング2を嵌め込んだ後、筐体ケース3に筐体カバー1を嵌め込む。筐体カバー1において、筐体ケース3における周囲溝30に対向する位置にリブ(周囲リブ)10が設けられている。作業者は、筐体カバー1における周囲リブ10を周囲溝30に嵌め合わせる。
【0029】
図2および図4に示すように、周囲リブ10が周囲溝30に嵌め込まれた状態では、パッキング2における上面2aは周囲リブ10の天面1aに密着し、パッキング2の底面2bが周囲溝30の底面3bに密着する。すなわち、パッキング2における上面2aと周囲リブ10の天面1aとは密着面2eを形成し、パッキング2の底面2bと周囲溝30の底面3bとは密着面2fを形成する。従って、パッキング2は、周囲リブ10の天面1aと周囲溝30の底面3bとの間の内部空間をある程度の充填率で満たし、筐体内部への水の進入を防ぐ防水作用を果たす。
【0030】
本実施形態では、パッキング2の材質として、自己粘着性を有するものを用いる。従って、パッキング2の側面2c,2dは自己粘着性を有する。自己粘着性を有するので、パッキング2のゴム硬度は低くてよい。自己粘着性が、パッキング2の筐体の変形への追従性を補完するので、高い反発力を得るために高いゴム硬度が必要であるということは求められなくなるからである。よって、本実施形態では、ゴム硬度が低い(例えば、30±3(10%)(JIS A))パッキング2を使用する。なお、パッキング2の材質を、ゴム硬度が30±3(JIS A)よりも低い材質にしてもよい。
【0031】
周囲溝30にパッキング2が嵌め込まれている状態において、パッキング2が圧縮されるとパッキング2の側面2c,2dが外側に膨らむ。その場合、パッキング2の側面2c,2dと周囲溝30の側壁3c,3dとの接触面(非密着面)2g,2hにおいて隙間がなくなる程に膨らむと、パッキング2の自己粘着性によって、パッキング2の側面2c,2dと周囲溝30の側壁3c,3dとが密着してしまうおそれがある。なお、設計上では、パッキング2は、周囲リブ10からほとんど押圧されないようなサイズになっているが、例えば、パッキング2、筐体ケース3および筐体カバー1のサイズの製造時のばらつき等に起因して、パッキング2が押圧されて膨らみが生ずることがあり得る。
【0032】
パッキング2の側面2c,2dと周囲溝30の側壁3c,3dとが密着した場合に、パッキング2の復帰力よりも密着力の方が強いと、パッキング2は復帰(膨張が弱まること)せずに止水できなくなるおそれがある。例えば、筐体ケース3と筐体カバー1とからなる筐体が水圧によって変形した場合に、パッキング2が復帰しないと、パッキング2の上面2aと周囲リブ10の天面1aとの間に隙間が生じて水が筐体内部に浸入するおそれがある。
【0033】
そこで、本実施形態では、パッキング2の側面2c,2dに密着防止機能を付与するために、パッキング2の側面2c,2dに密着防止処理を施す。密着防止処理は、例えば、表面に微小な凹凸を付けるためのシボ加工やフッ素コーティングなどの滑り助長性を付与する処理で実現される。
【0034】
以上に説明したように、本実施形態では、パッキング2の自己粘着性によってパッキング2の硬度を低くしても止水が可能になる。よって、パッキング2に、反発力を得るための潰れ易さや反発し易さは要求されない。その結果、パッキング2の断面形状を、例えば、図3に示されたように矩形の単純断面形状にしても、十分止水可能になる。従って、パッキング2を成形するための費用を低減できる。また、パッキング2の硬度が低いので、筐体変形に対する追従性を向上させることができるとともに、筐体の嵌合部における反りや開きの発生を防止することができる。さらに、パッキング2に求められる圧縮量は寸法ばらつきを吸収するため分だけでよいので、図13および図14等に例示されたパッキング5の圧縮量に比べてパッキング2の圧縮量は少なく、パッキング2の寿命を長くすることができる。
【0035】
実施形態2.
次に、本発明による筐体の防水機構の第2の実施形態(実施の形態2)を説明する。第2の実施形態でも、図11に示された折り畳み型携帯電話機を例にする。また、防水構造として、図11に示された折り畳み型携帯電話機を構成する2つの筐体(上部筐体および下部筐体とする。)のうちの一方の筐体(上部筐体)における防水構造を例にする。また、本実施形態でも、図12に示された構造と同様に、筐体ケース3(第2筐体部)の周囲部(底部以外の部分)における筐体カバー1(第1筐体部)に対向する側には、パッキング5が嵌め込まれる周囲溝30が設けられている。
【0036】
図5および図6は、図11に示す携帯電話機のA−A断面を示す断面図である。ただし、図5には、携帯電話機における筐体が組み立てられる前の状態が示されている。また、図7は、組み立てられる前の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。図8は、組み立てられた後の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【0037】
本実施形態でも、図12に示されたパッキング5と同様に、パッキング4は枠状に形成されている。しかし、図12に示されたパッキング5の断面形状とは異なり、パッキング4の断面形状は単純な形状である。すなわち、図5および図7に示すように、上面4aおよび底面4bは平面であり、側面4c,4dの形状は、内側に湾曲しているような形状である。パッキング4の高さは、パッキング4が存在しない状態で筐体カバー1と筐体ケース3とが嵌め合わされたときに周囲溝30の内部に形成される空間の高さと同等であるか、または、空間の高さよりもやや大きい。
【0038】
筐体を組み立てる作業を行う作業者は、筐体ケース3に形成されている周囲溝30にパッキング4を嵌め込んだ後、筐体ケース3に筐体カバー1を嵌め込む。筐体カバー1において、筐体ケース3における周囲溝30に対向する位置にリブ(周囲リブ)10が設けられている。作業者は、筐体カバー1における周囲リブ10を周囲溝30に嵌め合わせる。
【0039】
図6および図8に示すように、周囲リブ10が周囲溝30に嵌め込まれた状態では、パッキング4における上面4aは周囲リブ10の天面1aに密着し、パッキング4の底面4bが周囲溝30の底面3bに密着する。すなわち、パッキング4における上面4aと周囲リブ10の天面1aとは密着面4eを形成し、パッキング4の底部4bと周囲溝30の底面3bとは密着面4fを形成する。従って、パッキング4は、周囲リブ10の天面1aと周囲溝30の底面3bとの間の内部空間をある程度の充填率で満たし、筐体内部への水の進入を防ぐ防水作用を果たす。
【0040】
本実施形態では、パッキング4の材質として、自己粘着性を有するものを用いる。従って、パッキング4の側面4c,4dは自己粘着性を有する。自己粘着性を有するので、パッキング4のゴム硬度は低くてよい。自己粘着性が、パッキング4の筐体の変形への追従性を補完するので、高い反発力を得るために高いゴム硬度が必要であるということは求められなくなるからである。よって、本実施形態では、ゴム硬度が低い(例えば、30±3(10%)(JIS A))パッキング4を使用する。なお、パッキング4の材質を、ゴム硬度が30±3(JIS A)よりも低い材質にしてもよい。
【0041】
周囲溝30にパッキング4が嵌め込まれている状態において、パッキング4が圧縮されるとパッキング4の側面4c,4dが外側に膨らむ。その場合、パッキング4の側面4c,4dと周囲溝30の側壁3c,3dとの接触面4g,4hにおいて隙間がなくなる程に膨らむと、パッキング4の自己粘着性によって、パッキング4の側面4c,4dと周囲溝30の側壁3c,3dとが密着してしまうおそれがある。なお、設計上では、パッキング4は、周囲リブ10からほとんど押圧されないようなサイズになっているが、例えば、パッキング4、筐体ケース3および筐体カバー1のサイズの製造時のばらつき等に起因して、パッキング4が押圧されて膨らみが生ずることがあり得る。
【0042】
パッキング4の側面4c,4dと周囲溝30の側壁3c,3dとが密着した場合に、パッキング4の復帰力よりも密着力の方が強いと、パッキング4は復帰せずに止水できなくなる。
【0043】
しかし、本実施形態では、パッキング4の側面4c,4dの形状は、内側に湾曲しているような形状である。よって、パッキング4が圧縮されてパッキング4の側面4c,4dが外側に膨らんだ場合に、パッキング4の側面4c,4dと周囲溝30の側壁3c,3dとの接触面4g,4hにおいて隙間がなくなる状況になる可能性を低減することができる。
【0044】
すなわち、内側に湾曲するように形成されている側面4c,4dは、第1の実施形態におけるパッキング2の側面2c,2dに施された密着防止処理による機能と同様の密着防止機能を果たす。
【0045】
従って、本実施形態でも、パッキング4の自己粘着性によってパッキング4の硬度を低くしても止水が可能になる。パッキング4に反発力を得るための潰れ易さや反発し易さは要求されないので、パッキング4の断面形状を、例えば、図5および図7に示されたように単純断面形状にしても、十分止水可能になる。よって、パッキング4を成形するための費用を低減できる。また、パッキング4の硬度が低いので、筐体変形に対する追従性を向上させたり、筐体における嵌合部において反りや開きが発生することを防止することができる。さらに、パッキング4に求められる圧縮量は寸法ばらつきを吸収するため分だけでよいので、図13および図14等に例示されたパッキング5の圧縮量に比べてパッキング4の圧縮量は少なく、パッキング4の寿命を長くすることができる。
【0046】
図9は、本発明による筐体組立方法を説明するための組立図である。ここでは、第1の実施形態におけるパッキング2を使用する場合を例にする。
【0047】
図13および図15に示されたような形状のパッキング5を組み付ける場合には、パッキング5の形状(特に、パッキング5における上部の形状)が複雑であるから、パッキング5を離型紙に貼り付けて形状を維持したまま一時に筐体ケース3に組み込む方法を採用することは困難である。よって、パッキング5の一端から周囲溝30に順次組み込んでいく方法を採らざるを得ず、パッキング5を筐体ケース3に組み込む作業の作業時間が長くなる。
【0048】
しかし、図1および図3に示された形状のパッキング2を組み付ける場合には、パッキング2の上面2aの形状は平面形状であるから、パッキング2を容易に離型紙6に貼り付けることができる。すなわち、パッキング2を筐体ケース3に設置する際の形状にして離型紙6に貼り付けた状態で、パッキング2を一時に筐体ケース3(具体的には、周囲溝30)に組み込むことが可能になる。従って、組立時の作業時間が短縮される。
【0049】
具体的には、作業者は、図10のフローチャートに示すように、自己粘着性を有し、縦断面が略矩形の枠状であり、組立後に筐体ケース3(第2筐体部)に設けられている周囲溝30の側壁3c,3dに対向する側面2c,2dに密着防止機能を付与したパッキング2を作製する(ステップS1)。
【0050】
そして、パッキング2の形状を第2筐体部における周囲溝30に設置する際の形状にして(ステップS2)、平面であるパッキング2の上面2aを離型紙6に貼り付け(ステップS3)、離型紙6に貼り付けられているパッキング2を第2筐体部における周囲溝30の内部に配置する(ステップS4)。その後、作業者は、離型紙6をパッキング2から剥がし(ステップS5)、筐体カバー1(第1筐体部)を第2筐体部に嵌め合わせる(ステップS6)。
【0051】
なお、図5および図7に示されたようなパッキング4を組み付ける場合にも、パッキング4の上面4aの形状は平面形状であるから、パッキング4を筐体ケース3に設置する際の形状にして離型紙6に貼り付けた状態で、パッキング4を一時に筐体ケース3に組み込むことが可能である。
【0052】
以上のように、本発明による筐体の防水機構において使用されるパッキングは、ゴム硬度が低いので小さな力で圧縮可能であるとともに、わずかな圧縮でも材料自体の自己粘着性によって筐体への追従性が補完されるので、パッキングの反発力に対抗する筐体剛性の確保が容易になる。また、圧縮率を低く抑えることによって永久圧縮歪みが小さくなり、パッキングの交換周期が長くなることを期待できる。また、粘着性を最大限活かすためにパッキングにおける筐体ケースの凹部および筐体カバーの凸部に接触する面は単純な平面形状であるから、パッキングを作製するための金型に要する費用を低減でき、その結果、パッキングの作製費用を抑制することができる。さらに、パッキングの上面の形状は平面形状であるから、筐体ケースに設置する形状にしたパッキングを離型紙に貼り付けた状態で筐体ケースに組み付けることが可能になり、組立時の作業時間を短縮することができる。
【0053】
なお、上記の各実施形態では、筐体を構成する第1筐体部として筐体カバー1を例にし、筐体を構成する第2筐体部として筐体ケース3を例にしたが、本発明を適用することができる筐体は、ケースとカバーとで構成されるものに限られない。一例として、2つのケースが嵌め合わされることによって形成される筐体に対しても、本発明を適用することができる。
【0054】
また、上記の各実施形態では、折り畳み型の携帯電話機を構成する2つの筐体(上部筐体および下部筐体とする。)のうちの一方の筐体(上部筐体)に防水構造が適用されたが、他方の筐体(下部筐体)に本発明による防水構造を適用することもできる。
【0055】
また、本発明は、折り畳み型の携帯電話機に適用可能であるだけでなく、一体型の携帯電話機における筐体や一方の筐体が他方の筐体に対してスライドするスライ型の携帯電話機における双方の筐体にも適用可能である。さらに、携帯電話機以外の携帯可能な携帯端末装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形態における携帯電話機の筐体が組み立てられる前の状態の断面を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態における筐体の断面を示す断面図である。
【図3】組み立てられる前の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】組み立てられた後の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図5】第2の実施形態における帯電話機の筐体が組み立てられる前の状態の断面を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態における筐体の断面を示す断面図である。
【図7】組み立てられる前の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図8】組み立てられた後の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図9】本発明による筐体組立方法を説明するための組立図である。
【図10】筐体組立方法を示すフローチャートである。
【図11】防水構造が適用される携帯電話機を示す斜視図である。
【図12】筐体組立方法を説明するための組立図である。
【図13】携帯電話機の筐体が組み立てられる前の状態の断面を示す断面図である。
【図14】図11に示す携帯電話機のA−A断面を示す断面図である。
【図15】組み立てられる前の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図16】組み立てられた後の筐体の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 筐体カバー(第1筐体部)
2 パッキング
2a 上面
2b 底面
2c,2d 側面
2e,2f 密着面
2g,2h 接触面(非密着面)
3 筐体ケース(第2筐体部)
3b 底面
3c,3d 側壁
4 パッキング
4a 上面
4b 底面
4c,4d 側面
4e,4f 密着面
4g,4h 接触面
5 パッキング
5a 凸部
5b 凹部
5c,5d 側部
5e,5f,5g,5h 接触面
6 離型紙
10 リブ(周囲リブ)
30 溝(周囲溝)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体部と第2筐体部とで構成される筐体の防水機構であって、
前記第2筐体部における前記第1筐体部に対向する側にパッキングを収納する溝が形成され、
前記第1筐体部における部位であって前記溝に対向する部位にリブが形成され、
前記パッキングは、自己粘着性を有し、縦断面が略矩形の枠状に形成され、
前記パッキングにおける面であって前記溝の側壁に対向する面に、密着防止機能が付与されている
ことを特徴とする筐体の防水機構。
【請求項2】
パッキングのゴム硬度は、30±3(JIS A)である
請求項1記載の筐体の防水機構。
【請求項3】
パッキングにおける溝の側壁に対向する面に密着防止処理が施されている
請求項1または請求項2記載の筐体の防水機構。
【請求項4】
パッキングにおける溝の側壁に対向する面は内側に湾曲している
請求項1または請求項2記載の筐体の防水機構。
【請求項5】
パッキングの上面および底面は平面である
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の筐体の防水機構。
【請求項6】
第1筐体部と第2筐体部とで構成される筐体を組み立てる筐体組立方法であって、
自己粘着性を有し、縦断面が略矩形の枠状であり、第2筐体部に形成されている溝の側壁に対向する面に密着防止機能を付与したパッキングを作製し、
前記パッキングの形状を前記第2筐体部に形成されている前記溝に設置する際の形状にして、平面である前記パッキングの上面を離型紙に貼り付け、
離型紙に貼り付けられている前記パッキングを前記第2筐体部に形成されている前記溝の内部に配置し、
前記離型紙を前記パッキングから剥がし、
前記溝に対向する部分にリブが形成されている前記第1筐体部を前記第2筐体部に嵌め合わせる
ことを特徴とする筐体組立方法。
【請求項7】
ゴム硬度が30±3(JIS A)であるパッキングを作製する
請求項6記載の筐体組立方法。
【請求項8】
第1筐体部と第2筐体部とが嵌め合わされた筐体を有する携帯端末装置であって、
前記第2筐体部における前記第1筐体部に対向する側にパッキングを収納する溝が形成され、
前記第1筐体部における部位であって前記溝に対向する部位にリブが形成され、
前記パッキングは、自己粘着性を有し、縦断面が略矩形の枠状に形成され、
前記パッキングにおける面であって前記溝の側壁に対向する面に、密着防止機能が付与され、
前記パッキングは、前記第2筐体部における前記溝に収納され、かつ、前記第1筐体部における前記リブおよび前記溝の底面に密着している
ことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項9】
パッキングのゴム硬度は、30±3(JIS A)である
請求項8記載の携帯端末装置。
【請求項10】
パッキングにおける溝の側壁に対向する面に密着防止処理が施されている
請求項8または請求項9記載の携帯端末装置。
【請求項11】
パッキングにおける溝の側壁に対向する面は内側に湾曲している
請求項8または請求項9記載の携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−124072(P2010−124072A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293786(P2008−293786)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】