説明

管埋設工法

【課題】 地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設しても、地盤変位に伴う想定領域管部分の損傷を効果的に防止できるようにする。
【解決手段】 地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域Eに亘って管Cを埋設する管埋設工法であって、想定領域に埋設する管部分(想定領域管部分)1の全周又は略全周を、管径方向のバネ定数がその想定領域における地盤バネ定数よりも小さい緩衝材2で覆って埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設する管埋設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質の自然地盤と軟質の埋め立て地盤との境界領域や、建築構造物とその周りの地盤との間や平地と傾斜地とに跨る境界領域、複数並設してある護岸壁に沿って隣接する地盤間、護岸などの躯体とその躯体周りの地盤との境界領域などの、地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設するときは、図4に例示するように、その想定領域Eに埋設する管部分(以下、想定領域管部分という)1の破損を防止するために、その想定領域管部分1をいわゆる鞘管Gに挿通して埋設してあり、この鞘管Gは鋼や鋳鉄などの硬質金属で地盤変位に耐えうる高強度に形成してある(一般的な技術水準であり、先行技術文献情報を開示できない)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、図4(イ)に例示するように、地盤Aと地盤Bとが隣り合っていて、地盤A,Bどうしの相対変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定されるような想定領域Eに亘って管Cを埋設するために、想定領域管部分1を鞘管Gに挿通してある場合、図4(ロ)に例示するように、地盤Aと地盤Bとが大きく相対変位すると、想定領域管部分1の変位が鞘管Gとの接当によって制限されている状態で、鞘管Gに挿通されていない地盤A側の埋設管Caと地盤B側の埋設管Cbとが相対変位しようとするので、想定領域管部分1が鞘管Gとの接当部位において損傷を受け易い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設しても、地盤変位に伴う想定領域管部分の損傷を効果的に防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1特徴構成は、地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設する管埋設工法であって、前記想定領域に埋設する管部分の全周又は略全周を、管径方向のバネ定数がその想定領域における地盤バネ定数よりも小さい緩衝材で覆って埋設する点にある。
【0005】
〔作用及び効果〕
想定領域に埋設する管部分(想定領域管部分)の拘束が地盤に直に埋設してある場合に比べて緩くなるように、想定領域管部分の全周又は略全周を、管径方向のバネ定数がその想定領域における地盤バネ定数よりも小さい緩衝材で覆って埋設するので、地盤変位に伴って、緩衝材がその地盤変位に追従するように変位しても、想定領域管部分が、剪断力が特定部位に集中しないように撓み易いとともに、鋼や鋳鉄などの硬質金属で形成してある高強度の鞘管を使用しないので、従来のような鞘管との接触による想定領域管部分の損傷も回避できる。
従って、地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設しても、地盤変位に伴う想定領域管部分の損傷を効果的に防止できる。
【0006】
本発明の第2特徴構成は、前記想定領域が、地盤どうしの相対変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される領域であり、前記緩衝材を、その管径方向のバネ定数が前記管部分における管長手方向中央ほど小さくなるように設ける点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
例えば、硬質地盤と軟質地盤との境界領域のような、地盤どうしの相対変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設するにあたって、緩衝材を、その管径方向のバネ定数が想定領域管部分における管長手方向中央ほど小さくなるように設けるので、想定領域管部分の拘束が管長手方向中央ほど緩くなり、地盤どうしが相対変位したときに、想定領域管部分の歪みを管長手方向に沿ってその管部分全体に分散させて、剪断力の集中を一層効果的に防止できる。
【0008】
本発明の第3特徴構成は、前記想定領域が、躯体に対する地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される領域であり、前記緩衝材を、その管径方向のバネ定数が前記躯体側ほど小さくなるように設ける点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
躯体に対する地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設するにあたって、緩衝材を、その管径方向のバネ定数が躯体側ほど小さくなるように設けるので、想定領域管部分の拘束が躯体側ほど緩くなり、躯体に対して地盤が変位したときに、想定領域管部分の歪みを管長手方向に沿ってその管部分全体に分散させて、剪断力の集中を一層効果的に防止できる。
【0010】
本発明の第4特徴構成は、前記緩衝材として、可撓性を備えた密封容器に流体を充填してある緩衝材を使用する点にある。
【0011】
〔作用及び効果〕
緩衝材として、可撓性を備えた密封容器に流体を充填してある緩衝材を使用するので、管の形状に応じて、その管の形状に沿わせるように覆い易く、管の形状に応じて予め製作しておくことを要しないので、施工コストを安くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明による管埋設工法を使用して、互いに隣り合う自然地盤などの地盤バネ定数が大きい硬質地盤Aと、自然地盤に比べて地盤バネ定数が小さい埋め立て地盤などの軟質地盤Bとが隣り合っていて、地盤A,Bどうしの相対変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域Eに亘って埋設してあるガス供給用のダクタイル鋳鉄製の導管Cを示す。
【0013】
尚、図1(イ)は、硬質地盤Aと軟質地盤Bとが相対変位する前の状態を示し、図1(ロ)は、軟質地盤Bが地盤沈下して、硬質地盤Aと軟質地盤Bとが相対変位した後の状態を示している。
【0014】
前記導管Cは、図2にも示すように、想定領域Eに埋設される管部分(想定領域管部分)1のうちの、硬質地盤側管部分1aの全周を、管径方向のバネ定数が硬質地盤Aの地盤バネ定数よりも小さい円筒状の硬質地盤側弾性緩衝材2a(2)で密着するように覆って埋設するとともに、想定領域管部分1のうちの、軟質地盤側管部分1bの全周を、管径方向のバネ定数が軟質地盤Bの地盤バネ定数よりも小さい円筒状の軟質地盤側弾性緩衝材2b(2)で密着するように覆って埋設してある。
【0015】
前記弾性緩衝材2a,2bの各々は、管長手方向で複数の分割緩衝材3a,3bで構成してあり、各分割緩衝材3a,3bを発泡スチロール樹脂などの弾性材料で内外径が一定で、且つ、一定厚さのリング状に形成して、これらのリング状分割緩衝材3a,3bを想定領域管部分1に外嵌して設けてある。
【0016】
前記硬質地盤側弾性緩衝材2aを構成する分割緩衝材3aは、想定領域管部分1における管長手方向中央である地盤境界D側に外嵌してある分割緩衝材3aほど管径方向のバネ定数が硬質地盤Aの地盤バネ定数よりも小さくなるように形成し、軟質地盤側弾性緩衝材2bを構成する分割緩衝材3bは、想定領域管部分1における管長手方向中央である地盤境界D側に外嵌してある分割緩衝材3bほど管径方向のバネ定数が軟質地盤Bの地盤バネ定数よりも小さくなるように形成してある。
【0017】
そして、硬質地盤Aと軟質地盤Bとの相対変位に起因して、硬質地盤Aに埋設してある硬質地盤側埋設管Caと、軟質地盤Bに埋設してある軟質地盤側埋設管Cbとが相対変位したときに、図1(ロ)に示すように、弾性緩衝材2a,2bが部分的に圧縮変形して、硬質地盤側管部分1aも軟質地盤側管部分1bも撓み易いので、剪断力が特定部位に集中しないように想定領域管部分1が略全長に亘ってゆるく撓んで、その想定領域管部分1に作用する剪断力がその長手方向に沿って分散するように埋設でき、想定領域管部分1の損傷を防止できる。
【0018】
また、弾性緩衝材2a,2bを地盤境界D側ほど管径方向のバネ定数が小さい分割緩衝材3a,3bを外嵌して構成してあるので、硬質地盤側管部分1aの硬質地盤Aによる拘束も、軟質地盤側管部分1bの軟質地盤Bによる拘束も、地盤境界D側ほど緩くなり、地盤A,Bどうしが相対変位したときに、想定領域管部分1の歪みを管長手方向に沿ってその管部分全体に分散させて、剪断力の集中を一層効果的に防止できる。
【0019】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明による管埋設工法を使用して、建物躯体Fに対する地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域Eに亘って埋設してある導管Cを示し、埋め立て地盤などの軟質地盤Bにその下方の硬質地盤に亘る基礎杭4を打ち込んで、その基礎杭4に建物躯体Fを支持し、軟質地盤Bに埋設してある導管Cを建物躯体Fに引き込んである。
【0020】
尚、図3(イ)は、軟質地盤Bが建物躯体Fに対して地盤変位する前の状態を示し、図3(ロ)は、軟質地盤Bが建物躯体Fに対して地盤沈下した後の状態を示している。
【0021】
そして、想定領域管部分1の全周を、管径方向のバネ定数が軟質地盤Bの地盤バネ定数よりも小さい円筒状の弾性緩衝材2で覆って埋設するとともに、その弾性緩衝材2を、管長手方向で複数の分割緩衝材3bで構成し、各分割緩衝材3bは、建物躯体F側ほど管径方向のバネ定数が軟質地盤Bの地盤バネ定数よりも小さくなるように形成してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0022】
〔第3実施形態〕
図示しないが、第1,第2実施形態において、緩衝材2を構成している各分割緩衝材3a,3bとして、繊維補強してあるゴムや樹脂製の可撓性を備えた袋状の密封容器に流体を充填してある分割緩衝材3a,3bを使用しても良い。
この場合、充填する流体の物性を変えることによって、管径方向のバネ定数を変更することができる。
【0023】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による管埋設工法は、想定領域管部分の全周又は略全周を、ゴムや軟質樹脂製の緩衝材で覆って埋設しても良い。
2.本発明による管埋設工法は、想定領域管部分の全周又は略全周を、ゴムや樹脂などからなる複合材料で形成してある緩衝材で覆って埋設しても良い。
3.本発明による管埋設工法は、想定領域管部分の全周又は略全周を、管長手方向に間隔を隔てて外嵌した複数の分割緩衝材で覆って埋設しても良い。
4.本発明による管埋設工法は、想定領域管部分の全周又は略全周を、角筒状の緩衝材で覆って埋設しても良い。
5.本発明による管埋設工法は、想定領域管部分の全周又は略全周を、長尺の緩衝部材を巻き付けることにより構成した緩衝材で覆って埋設しても良い。
6.本発明による管埋設工法は、想定領域管部分の全周又は略全周を、管径方向のバネ定数が想定領域における地盤バネ定数よりも小さくなるように砂などの緩衝資材で包み込むように埋設することにより構成した緩衝材で覆って埋設しても良い。
7.本発明による管埋設工法は、想定領域管部分の全周又は略全周を、外径が異なる複数の分割緩衝材で覆って埋設しても良い。
8.本発明による管埋設工法は、想定領域管部分の全周又は略全周を、それらの管部分の全長に亘って、管径方向のバネ定数が一定の緩衝材で覆って埋設しても良い。
9.本発明による管埋設工法は、想定領域管部分の全周又は略全周を、略全長に亘って一連の緩衝材で覆って埋設しても良い。
10.本発明による管埋設工法は、硬質地盤側の想定領域管部分に、軟質地盤の硬質地盤に対する予測される変位方向の下手側における管径方向のバネ定数が、変位方向上手側における管径方向のバネ定数よりも小さくなるように緩衝材で覆って埋設しても良い。
つまり、例えば、軟質地盤が硬質地盤に対して沈下すると予測される場合は、硬質地盤側の想定領域管部分に、その下面側における管径方向のバネ定数が、上面側における管径方向のバネ定数よりも小さくなるように緩衝材で覆って埋設する。
11.本発明による管埋設工法は、軟質地盤側の想定領域管部分に、軟質地盤の硬質地盤に対する予測される変位方向の上手側における管径方向のバネ定数が、変位方向下手側における管径方向のバネ定数よりも小さくなるように緩衝材で覆って埋設しても良い。
つまり、例えば、軟質地盤が硬質地盤に対して沈下すると予測される場合は、軟質地盤側の想定領域管部分に、その上面側における管径方向のバネ定数が、下面側における管径方向のバネ定数よりも小さくなるように緩衝材で覆って埋設する。
12.本発明による管埋設工法は、水平方向に沿う地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設するために使用しても良い。
13.本発明による管埋設工法は、護岸や橋梁などの躯体に対する地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設するために使用しても良い。
14.本発明による管埋設工法は、鋼管,樹脂管などの管を地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って埋設するために使用しても良い。
15.本発明による管埋設工法は、ガス管以外に、水道管や下水道管などの管を対象にして、地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って埋設するために使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】管埋設工法を説明する縦断面図
【図2】管埋設工法を説明する斜視図
【図3】第2実施形態の管埋設工法を説明する縦断面図
【図4】管埋設工法の比較例を説明する縦断面図
【符号の説明】
【0025】
1 管部分(想定領域管部分)
2 緩衝材
A 地盤(硬質地盤)
B 地盤(軟質地盤)
C 管
E 想定領域
F 躯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される想定領域に亘って管を埋設する管埋設工法であって、
前記想定領域に埋設する管部分の全周又は略全周を、管径方向のバネ定数がその想定領域における地盤バネ定数よりも小さい緩衝材で覆って埋設する管埋設工法。
【請求項2】
前記想定領域が、地盤どうしの相対変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される領域であり、
前記緩衝材を、その管径方向のバネ定数が前記管部分における管長手方向中央ほど小さくなるように設ける請求項1記載の管埋設工法。
【請求項3】
前記想定領域が、躯体に対する地盤変位に伴って管径方向の剪断力が作用する可能性があると想定される領域であり、
前記緩衝材を、その管径方向のバネ定数が前記躯体側ほど小さくなるように設ける請求項1記載の管埋設工法。
【請求項4】
前記緩衝材として、可撓性を備えた密封容器に流体を充填してある緩衝材を使用する請求項1〜3のいずれか1項記載の管埋設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−207611(P2006−207611A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16722(P2005−16722)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】