説明

籾摺機のロール間隙制御装置

【課題】 籾摺ロールの摩耗度は、ゴム材質や、製造等によって、各箇毎にばらつきがあるため、同じ時間間隔で閉調節したり、籾の供給量に応じて閉調節を変更しても、適正なロール間隙制御を維持し難いものである。
【解決手段】 設定時間毎にロール間隙を狭くするように制御するロール間隙の時間制御と、この籾摺ロールの負荷を検出する負荷センサによる検出値が設定値以下のときは、前記時間制御に拘らず、前記設定時間の間隔を短かくして、ロール間隙を閉調節する短時間制御を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、籾摺機のロール間隙調節を簡易に行わせるロール間隙制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
籾摺ロールの間隙を設定時間毎に閉調節制御する形態において、籾摺ロールへ供給する籾の供給量に応じてロール間隙を狭くするように閉調節の作動量を変更制御する技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007ー90285号公報(第1頁、図5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
籾摺ロールの摩耗度は、ゴム材質や、製造等によって、各箇毎にばらつきがあるため、同じ時間間隔で閉調節したり、籾の供給量に応じて閉調節を変更しても、適正なロール間隙制御を維持し難いものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、設定時間毎にロール間隙を狭くするように制御するロール間隙の時間制御と、この籾摺ロールの負荷を検出する負荷センサによる検出値が設定値以下のときは、前記時間制御に拘らず、前記設定時間の間隔を短かくして、ロール間隙を閉調節する短時間制御を行わせることを特徴とする籾摺機のロール間隙制御装置の構成とする。籾摺作業時のロール間隙の時間制御は、予め設定された設定時間毎に間歇的にロール間隙を目的間隙に沿うように狭くする方向に閉調節される。このロール間隙の閉調節制御に拘らず、何らかの原因によってロール間隙が目的の間隙に戻らず、負荷センサによる検出値が設定値以下の軽い負荷を検出するときは、この負荷センサによる検出によってロール間隙が閉調節される。しかも、このときの短時間制御によるロール間隙の閉調節は、前記の時間制御における設定時間よりも短かい間隔で間歇的に行われて、目的域のロールの間隙を維持するように制御する。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記ロール間隙制御において、ロール間隙の短時間制御を行わせるか、否かを選択操作可能に設けたことを特徴とする。籾摺作業時に、使用ロールの摩耗度等が安定している等によって、前記ロール間隙制御において、前記負荷センサの籾摺負荷検出による短時間制御を働かせるが不要であるときは、この短時間制御を行わせないように選択操作しておく。又、逆に使用ロールの摩耗度等が不明であったり、ばらつきがあるようなときは、この短時間制御を行わせるように選択操作する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明は、籾摺ロール間隙の時間制御において、この籾摺ロールの摩耗度等に大きい変化や、ばらつき等があり、又はあることが予測される時は、ロール間隙制御の時間を短かくした、負荷センサの検出による短時間制御を行わせて、速かに目的のロール間隙を維持させることができ、各種籾摺ロールの異なる特性に応じた適正なロール間隙制御を、簡単に、正確に行わせることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、籾摺作業時に、使用される籾摺ロールの摩耗度等の特性を予め知っているか、知っていないか等によって、前記籾摺ロール間隙制御における負荷センサの検出による短時間制御の実行を選択操作することができ、的確で無駄のないロール間隙制御を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ロール間隙制御の作動グラフと、制御ブロック図。
【図2】そのフローチャート。
【図3】そのタイムチャート。
【図4】籾摺ロール部の側面図。
【図5】籾摺機の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面に基づいて、籾摺機は、箱形機体1の前上部に籾ホッパー2、還元籾ホッパー3を有し、この下部に一対の籾摺ロール4、5を軸装し、この籾摺ロール4、5によって籾摺された摺出米を受けて後側の風選室6へ揺動搬送する揺動棚7を設けて籾摺装置を構成する。この下部にモータ8を設けて、前記籾摺ロール4、5や、機体1後部の揺動選択選別装置9、各昇穀機10、11、オーガ12、揚穀機13、及びブロワー14等を駆動する。前記籾摺ロール4、5で摺出された摺出米を風選する風選室6や、この風選室6に吸引風を働かせるブロワー14、この風選室6で風選された摺出米を揚穀して揺動選別装置9上のホッパー15へ搬送する昇穀機10等を、これら籾摺装置と、揺動選別装置9との間の前後中央部に配置している。又、この揺動選別装置9で選別された玄米を揚穀して取出す昇穀機11は機体1の後端部に設けている。前記ブロワー14の吸引力によって、風選室6に選別風を流すと共に、この選別室6や、籾摺ロール4、5の籾摺室、各昇穀機10、11内等の吸引排塵を行うことができる。
【0011】
前記揺動選別装置9は、多段形態に選別板を重合させたもので、玄米と、籾と、混合米に選別して、玄米は昇穀機11へ供給し、混合米はオーガ12から昇穀機10へ供給して、ホッパー15へ還元搬送させる。又、籾は揚穀機13によって前記還元籾ホッパー3へ還元させて再度籾摺作用を受けさせる。
【0012】
前記籾摺装置は、相対向する一対の籾摺ロール4、5間のロール間隙部に籾を供給することによって、これら籾摺ロール4、5の回転差によって籾摺作用(脱ぷ作用)を行わせるものである。これら籾摺ロール4、5間は、ロール軸16、17のギヤ18、19間をギヤ20、21連動して、籾摺ロール4、5を相互に反対方向へ回転させる伝動構成としている。このロール軸16は、定位置に設定し、対向のロール軸17を定位置のギヤ21の軸22の周りに前後揺動するロールアーム23に軸支して、このロールアーム23を調節ロッド24の回動によって前後に回動揺動することによって、ロール間隙部を開、閉調節することができる。この調節ロッド24の駆動は、ロール間隙制御モータ25の正、逆回転によって行われる。この籾摺ロール4、5間の上側部には、籾ホッパー2からの籾を繰出供給する繰出ロール26や、籾供給シャッター27等を設ける。
【0013】
ここにおいて、前記籾摺ロール4、5のロール間隙制御を行うために、設定時間毎にロール間隙を狭くするように制御するロール間隙の時間制御と、この籾摺ロールの負荷を検出する負荷センサによる検出値が設定値以下のときは、前記時間制御に拘らず、前記設定時間の間隔を短かくして、ロール間隙を閉調節する短時間制御を行わせることを特徴とする籾摺機のロール間隙制御装置の構成とする。籾摺作業時のロール間隙の時間制御は、予め設定された設定時間毎に間歇的にロール間隙を目的間隙に沿うように狭くする方向に閉調節される。このロール間隙の閉調節制御に拘らず、何らかの原因によってロール間隙が目的の間隙に戻らず、負荷センサによる検出値が設定値以下の軽い負荷を検出するときは、この負荷センサによる検出によってロール間隙が閉調節される。しかも、このときの短時間制御によるロール間隙の閉調節は、前記の時間制御における設定時間よりも短かい間隔で間歇的に行われて、目的域のロールの間隙を維持するように制御する。
【0014】
又、前記ロール間隙制御において、ロール間隙の短時間制御を行わせるか、否かを選択操作可能に設けたことを特徴とする。籾摺作業時に、使用ロールの摩耗度等が安定している等によって、前記ロール間隙制御において、前記負荷センサの籾摺負荷検出による短時間制御を働かせることが不要であるときは、この短時間制御を行わせないように選択操作しておく。又、逆に使用ロールの摩耗度等にばらつきがある場合や、不明であるときは、この短時間制御を行わせるように選択操作する。
【0015】
前記ロール間隙制御のコントローラ28の入力側には、主として、籾摺ロール4、5による負荷電流値を検出する負荷センサ29や、籾摺作用時間を計測するタイマー30、籾摺作業対象物として籾、麦を選択供給して作業する籾、麦モード選択スイッチ31、籾摺機を作業運転するための運転スイッチ32、及び、ロール間隙を短時間制御モードとして行わせることができるように切替え操作する制御スイッチ33等を配置する。又、コントローラ28の出力側には、前記ロール間隙制御モータ25や、籾供給シャッタ27を開閉するためのモータ34等を配置する。
【0016】
運転スイッチ32、制御選択スイッチ33等をON操作して運転開始し籾摺作用を行わせると、籾供給シャッター27を閉鎖した状態で、前記調節ロッド24の基部に設けるロール間隙制御モータ25の駆動によって、調節ロッド24を押してロールアーム23を軸22周りに一定の時間間隔毎に2〜3回前後方向へ揺動させて、ロール間隙部を展開して(S1)、このロール間隙部に挟圧している籾や、ロール間隙部上面に残留する残留籾等を落下させる。このようにして、ロール間隙を初期設定する制御を開始すると共に、前記供給シャッタモータ34の駆動によって籾供給シャッター27が開かれて、繰出ロール24の回転駆動によって籾ホッパー2内の籾がロール間隙部上に供給される。
【0017】
このようなモータによるロール間隙の自動展開作動は、籾摺作業の終了直後においても行わせることも可能である。
前記ロール間隙部の展開作動(S1)に続いて、一定時間出力停止されて負荷が安定すると、タイマー30による時間制御が開始される。そして、ロール間隙の初期調節制御が行われて(S2)、ロール間隙が初期設定される。前記タイマー30による時間制御では、ロール間隙の初期設定が維持されるように行われるため、負荷によってはロール間隙が閉まることはない。
【0018】
又、このとき、負荷電流を一定に保つ制御(S3)の前行程において、一定時間ロール間隙制御を行わない行程を設けることによって、負荷電流を一定制御するきの誤作動を防止することができる。
【0019】
又、タイマー30による時間制御t1に入りロール間隙閉出力直前の負荷電流を不揮発メモリに複数回記憶し、後で記憶値をデジタル表示器に表示可能に構成することも可能である。この記憶値を表示することによって、そのときの状況を的確に把握し易い。例えば、1時間の籾摺運転で、1A(アンペア)電流が低下する場合は、タイマー30による時間制御のタイマーを15分から13分に短かくする。又、1時間の運転で0、5A電流が低下する場合は、タイマ間隔を15分から14分に短かくするように設定することができる。
【0020】
このようにして、ロール間隙初期調節設定に続いて、籾摺作業が開始され、負荷電流制御が行われると、一定の設定時間t1毎の時間制御が開始されて(S4)、ロール間隙の閉調節作動が繰返し行われる(S5)。従ってこの時間制御においては、各ロール間隙閉調節制御毎に負荷センサ29の検出による負荷電流値が上昇して初期設定の目標値Pに達しないで、順次低くなることがある。このような時間制御において、前記負荷センサ29による検出値が下限電流値P1を検出すると(S6)、この時点で短時間制御に切替えられて、前記時間制御における設定時間t1よりも短かい時間t2、又はt3の時間間隔毎にロール間隙の閉調節作動が行われる。これによって、負荷センサ29によるロール間隙閉位置の検出を速かに行わせることができる。
【0021】
前記時間制御においては、負荷センサ29による過負荷の検出によって、短時間制御に自動的に切替えられて、長時間にわたる籾摺作業におけるロール間隙が適正に維持制御されるものであるが、このような短時間制御に代えて、この時間制御において、籾摺作業開始後一定時間(例えば、30分間)を経過すると、この時間制御に拘らずロール間隙が順次大きく開いて、制御負荷が初期設定の目標域の電流値Pよりも大きくずれるが、このとき、タイマ時間を前記のようにt1=15分、t2=14分、t3=13分として、順次段階的に短かく設定して、前記短時間制御を連続段階的に閉調節して、目標値Pを検出するように閉調節制御する形態とすることも可能であり、迅速な間隙制御を行わせることができる。
【0022】
又、前記時間制御において、シャッター27開から例えば3分経過後の負荷電流値からα(例えばα=0、5A)値を下限電流値として、タイマ制御中に負荷電流値がこの下限電流値以下になると、所定時間ロール間隙を閉出力するように構成すること可能であり、これによって脱ぷ率を上げるための切替操作、即ち、短時間制御を選択する制御選択スイッチ33を押すのと同様の効果を有する。
【符号の説明】
【0023】
4 籾摺ロール
5 籾摺ロール
25 ロール間隙制御モータ
29 負荷センサ
30 タイマー
33 制御選択スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定時間毎にロール間隙を狭くするように制御するロール間隙の時間制御と、この籾摺ロールの負荷を検出する負荷センサによる検出値が設定値以下のときは、前記時間制御に拘らず、前記設定時間の間隔を短かくして、ロール間隙を閉調節する短時間制御を行わせることを特徴とする籾摺機のロール間隙制御装置。
【請求項2】
前記ロール間隙制御において、ロール間隙の短時間制御を行わせるか、否かを選択操作可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の籾摺機のロール間隙制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−194432(P2010−194432A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40722(P2009−40722)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】