説明

籾殻複合ウレタンフォームの製造方法及び断熱工法

【課題】水発泡させたポリウレタンフォームと籾殻とを複合化して、発泡体としての優れた性能を発揮させるとともに、その性能を長期間維持しつつ環境性能に優れる籾殻複合ウレタンフォーム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】籾殻複合ウレタンフォームの製造方法において、籾殻、水、及びポリオールが配合されているプレミックスと、ポリイソシアネートとを混合して化学反応させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォームと籾殻とを複合化した籾殻複合ウレタンフォームの製造方法及びこの籾殻複合ウレタンフォームを用いた断熱工法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、その発泡体構造を連続気泡としたり独立気泡としたり気泡の大きさや形態を調整したりして、硬さ、密度、熱伝達率等の一般物性を自在に制御することができる。
このため、ポリウレタンフォームは、種々の特徴的な性能を付与することができる発泡体として、輸送関係、土木建築、生活用品、産業機器、医療、IT分野など、さまざまな産業分野で使用されている。
【0003】
そして、ポリウレタンフォームの製造工程における発泡方法は、古くはフロン系のガスを用いていたが、環境保全の機運の高揚にともなうフロン全廃の取り組みの中で、水を用いた発泡(水発泡)によることが主流になっている(例えば非特許文献1)。
このような、水発泡によるポリウレタンフォームは、主原料である二液(ポリオールとポリイソシアネート)を混合して縮合重合反応させるとともにこのポリイソシアネートと水とが発泡反応して二酸化炭素の気泡を形成し製造される。
【0004】
一方、籾殻は、米生産に伴う廃棄物として毎年大量に排出されるとともに、一定品質のものを安価に大量に入手できるバイオマス材料として広く利用されている。また、籾殻の含有成分の優れた特性を工業的に有効活用する試みがなされている(例えば特許文献1)。しかし、現時点では、排出された籾殻のうち有効利用されず最終的に焼却処分されるものも多い。
【非特許文献1】特許庁ホームページ,資料室(その他参考情報),標準技術集,有機高分子多孔質体,1−1−7 有機高分子多孔質体の製造法/膜・フィルム/発泡法,1−1−7−2化学的発泡法(http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/organicpolymer/1-1-7.pdf#2)
【特許文献1】特開平8−48515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水発泡によるポリウレタンフォームは、前記した発泡原理に基づき次のような問題が指摘されている。
1.ポリウレタンフォームの気泡を形成している二酸化炭素が外部にぬけて、ポリウレタンフォームが大気圧によって潰されて減容する問題がある。このためポリウレタンフォームを断熱材として使用する場合、保温性及び保冷性の効果が低下する問題がある。
2.発泡により生成する二酸化炭素の気泡が局部的に肥大化しやすく、整泡剤を配合してこの気泡を微細化・均一化させる措置が必要となる。
3.ポリウレタンフォームを断熱材として建築物の内側に施工するために、原料の二液を壁面等に吹き付ける現場発泡(スプレー発泡法)を採用する場合、断熱材の品質が現場の条件に左右されやすい。つまり、冬場等で対象物の表面が低温であると、原料の二液を壁面等にスプレーしても水発泡の反応性が低下して、塗工面に対する接着力が弱く低分子量の脆い発泡体となる。また発泡反応が緩やかで、フォームを形成する前に流れてしまい断熱材を垂直面又は天井面に厚く形成することが困難である。
4.ポリウレタンフォームを現場発泡により形成するとなると、スプレー時に発生するミストの飛散を防護する対策が必要となり作業性が低下する。またスプレーした断熱材は、塗工面に接着しているために建築物の解体時にこの断熱材のみを分別回収することが困難である。
5.ウレタンフォームは、気泡等に湿気を溜め込んで塗工した木材の腐れを引き起こす場合があり、対策として防湿シートを貼付すると今度は室内の気密性が高まってカビ・ダニ発生によるアレルギーの原因にもなる。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決することを課題とし、水発泡させたポリウレタンフォームと籾殻とを複合化して、発泡体としての優れた性能を発揮させるとともに、その性能を長期間維持しつつ環境性能に優れる籾殻複合ウレタンフォーム及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明は、籾殻複合ウレタンフォームの製造方法において、籾殻、水、及びポリオールが配合されているプレミックスと、ポリイソシアネートとを混合して化学反応させることを特徴とする。
【0008】
このように発明が構成されることにより、籾殻に含まれる水分又はポリオールに混合している水分とポリイソシアネートとが化学反応して二酸化炭素の気泡を形成し、残余のポリイソシアネートとポリオールとが縮合反応してポリウレタンの連続相が形成される。
さらに、ポリイソシアネートは、籾殻の表面の水酸基にも結合するのでこの籾殻とポリウレタンとは親和性に優れるとともに界面接着性に優れている。
これにより、ポリウレタンフォームの連続相に籾殻の分散相を任意の比率で均一に配合することができるとともに、籾殻の堅牢な骨格により発泡体の強度が担われるために、気泡率が高く経時変化により潰れにくい強靭な籾殻複合ウレタンフォームが得られる。
【0009】
また、籾殻表面において優先的に発泡反応が生じることになり、整泡剤、触媒を用いなくても微細化・均一化した気泡が籾殻複合ウレタンフォームに形成されることになる。
さらに配合される籾殻の比率を高めると、プレミックスに内包される空気相が増えて混合されるポリイソシアネートとの混合が容易になるとともに塑性流動挙動を示すようになる。すると、液ダレが生じにくいために、現場発泡させる場合において、従来のようなスプレー発泡法を採用せずに、プレミックスとポリイソシアネートとの二液を混合してからコテ塗りするような塗工方法を実現できる。
【0010】
このようにコテ塗りによる塗工方法によれば、反応熱の塗工面へのリークも少なくすむために、現場条件に左右されずに品質の一定した籾殻複合ウレタンフォームを垂直面又は天井面に厚く形成することが可能になる。さらに、コテ塗りによる塗工方法によれば、スプレー発泡法による塗工方法のようにミストが発生することもなく作業性が向上する。
また、コテ塗りによる塗工方法を断熱工法に採用すれば、籾殻複合ウレタンフォームのボード材を工場で製造してから施工現場まで運搬し、複数のボード材を壁面に敷き詰めてから目地をコテ塗りすることにより建築物の内空間を隙間無く断熱材で囲うことができる。
【0011】
これにより、建築物の内部の断熱性が維持されるとともに、天然素材である籾殻を成分に含みこの断熱空間を形成する断熱材自身が、呼吸して水分を吸収・放出する機能を果たすためにアレルギーの原因となるカビ・ダニ発生を防止する。
また目地をコテ塗りされたボード材は、建築物の解体時に断熱材のみを分別回収することが容易である。さらに回収された断熱材(籾殻複合ウレタンフォーム)は、バクテリア等の微生物により土壌還元され易い性質を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、水発泡させたポリウレタンフォームと籾殻とを複合化して、発泡体としての性能が長期間維持されるとともに環境性能に優れる複合材料及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明に係る籾殻複合ウレタンフォームの製造方法に使用される原料として、籾殻と、水と、ポリオールと、ポリイソシアネートとが挙げられる。その他、必要に応じて整泡剤、触媒、難燃剤、着色剤等を配合することができる。
これら原料のうちポリイソシアネートを除くものを配合させてプレミックスとする。そして、このプレミックスとポリイソシアネートとを混合して化学反応させて籾殻複合ウレタンフォームを製造する。この籾殻複合ウレタンフォームは、前記した原料の配合組成を適宜変更することにより、そのフォーム性状を軟質、半硬質、硬質と幅広く容易に調製し得る。
【0014】
ポリイソシアネートは、反応性が高い反応物質であり、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素の水素を2個以上のイソシアネート基(-NCO)で置換した液状物質であって、後記する反応式(1)(2)に示されるようにポリオールや水と反応するだけでなく、籾殻や施工対象物の表面の水酸基(-OH)と結合してこれらに強く付着する。
【0015】
ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート等(TDI)や、4,4'−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート等(MDI)や、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート等(PDI)や、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジフェニルジイソシアネート等や、1,5−ナフタレンジイソシアネート等(NDI)が挙げられ、これらのポリイソシアネートを単独又は二種以上併用できる。
【0016】
ポリオールは、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素の水素を2個以上の水酸基(-OH)で置換した化合物であって、ポリイソシアネートに混合するだけで次反応式(1)に示す発熱を伴うウレタン反応を起す。
【0017】
n OCN-R-NCO + n HO-R’-OH → (-CO-NH-R-NH-CO-OR’-O-) n (1)
(R,R’:脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素)
【0018】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトールを含むものを使用することができる。またこれらのポリオールのうち任意の組み合わせとすることもできる。
【0019】
籾殻は、稲の果実に相当する籾の外側の殻の部分であって、収穫した稲の茎から籾をはずす脱穀工程を経た後、この籾を、乾燥工程、籾摺り工程を経て玄米にする際に大量に発生する産業廃棄物である。
一般に、収穫直後の籾の水分量は、20〜25重量%(以下、%表示は重量%を意味する)であり、乾燥工程を経て15%程度になる。そして、籾摺り後に回収され籾殻庫に貯蔵される籾殻の水分量は、10〜13%である。
そして、水分を除く籾殻には約80%のセルロース系有機物が含まれ、残りの約20%の無機成分のうち殆どはシリカ(SiO)で少量のアルカリ金属が含まれる。
【0020】
ところで、本発明に使用される籾殻は、一般的な籾摺り工程を経た後の形態を変更することなく、そのまま使用することが好ましい。籾殻複合ウレタンフォームの全体に分散する籾殻の堅牢な骨格により発泡体の強度が担保されるからである。
このように軽量でかつ強度の高い籾殻複合ウレタンフォームは、内抱する気泡により空気の対流を阻止して優れた保温性(保冷性)を発揮するとともに、壁面に塗工されることによりこの壁面の強度を向上させる。よって、籾殻複合ウレタンフォームを内壁に塗工した建築物は断熱性が向上するだけでなく耐震性も向上する。
【0021】
また、籾殻は、主成分であるセルロース系有機物が水分子を通過させたり貯蔵したりする機能を有するために、籾殻複合ウレタンフォームは、断熱機能を有しつつ外気の湿度に応じて水分を吸ったり吐いたりすることができる。
そして、籾殻は、シリカのセラミック微粒子を大量に含み炎に晒されても燃焼熱が上昇せずに大部分が炭になるだけなので、籾殻複合ウレタンフォームは、難燃性を有する。このため籾殻複合ウレタンフォームを用いた建築物は耐火性が向上し延焼を防止する。
また、籾殻複合ウレタンフォームの製品寿命が尽きたときは、埋立処分することによりバクテリアで速やかに分解されて土に還元するので環境保全に配慮した廃棄処分が可能になる。
【0022】
水は、反応に影響をあたえる成分を含むものでなければ、特に制限なく中性水を使用することができ、蒸留水を使用するのが好適である。
水は、ポリイソシアネートと発泡反応し、次反応式(2)のように、ポリ尿素を生成すると同時に炭酸ガスを脱離して発泡剤として機能する。
水の配合量は、ポリオール100重量部に対し3〜20重量部、好ましくは4〜10重量部、特に好ましくは6〜8重量部である。水の配合量は少ないと、気泡率の小さなウレタンフォームが形成され、水の配合量が多いと発泡反応が急速に進行して隣接するもの同士が一体化して気泡が肥大化し又は崩壊し実用に適さなくなる。
【0023】
2 OCN-R-NCO + H2O → OCN-R-NH-CO-NH-R-NCO + CO2 (2)
(R:脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素)
【0024】
プレミックスは、少なくとも籾殻と、水と、ポリオールとを含み、さらにポリイソシアネートを除く他の成分が配合されている。
このプレミックスは、一般的に用いられるミキサーにより混合されるものであるが、混合させる方法としては、三者を同時にミキサーに投入する第1の方法と、予め含水処理した籾殻とポリオールとをミキサーに投入する第2の方法と、予め含水処理した籾殻と水とポリオールとをミキサーに投入する第3の方法と、がある。
【0025】
第1の混合方法によれば、ポリオールが内部に浸透した籾殻が配合されているプレミックスが得られる。このプレミックスをポリイソシアネートと混合してウレタン反応(反応式(1))させると、ポリウレタンフォームと籾殻とが強固に接着し界面剥離が生じにくい籾殻複合ウレタンフォームが製造される。
第2の混合方法によれば、水が内部に浸透した籾殻が配合されているプレミックスが得られる。このプレミックスをポリイソシアネートと混合して発泡反応(反応式(2))させると、発泡剤である水が籾殻から順次供給されることになるので気泡がきめ細かな籾殻複合ウレタンフォームが製造される。
第3の混合方法によれば、後で水分を添加することにより気泡率の制御の自由度が高い籾殻複合ウレタンフォームが製造される。
【0026】
また籾殻に水を含浸させる含水処理としては、籾殻の表面が一般的な木質系の材料に比較して撥水性を有するために、撹拌しながら籾殻を水中に浸漬させるとともに、遠心脱水装置を用いて水分量を調節する方法が挙げられる。
【0027】
整泡剤としては、一般のポリウレタンフォームの製造で使用されている代表的にはシリコン系界面活性剤が挙げられる。
難燃剤としては、一般に使用されるトリス(β−クロロエチル)フォスフェート等があるがこれに限定されるものではない。
触媒としては、ポリオールの活性水素とイソシネート基との反応を促進する作用を有するアミン化合物、有機金属化合物等が挙げられる。例えば、アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミンが挙げられ、有機金属化合物としては、塩化第一スズ、ジブチルチンラウレート、を挙げることができる。
【0028】
<製造方法>
プレミックスは、水、籾殻(又は予め含水処理した籾殻)、及びポリオールを必須の成分要素として、その他必要に応じて加える、整泡剤、触媒、難燃剤、着色剤等を、電動ミキサー、又はスタテイックミキサーのような周知の方法によって、混合することにより得る。
そして、このプレミックスとポリイソシアネートとを混合して以下に例示する製造方法により籾殻複合ウレタンフォームを製造する。
具体的な製造方法としては、一般的なウレタンフォームの製造方法であるスラブ発泡法、モールド発泡法、ラミネート法、及び、スプレー発泡法に加え、さらにコテ塗り法が挙げられる。
【0029】
スラブ発泡法とは、工場内でのミキサーで原料を混合・撹拌した混合物を連続コンベアー上に吐出させ、連続的に発泡させ、断面が角型又はかまぼこ型の発泡ブロックを成形する方法である。そして、この発泡ブロックを所望の形状に切断・加工する工程を経る製造方法である。
モールド発泡法とは、プラスチック又は金属製の成形型(モールド)に原料の混合物を注入して発泡させた後、型から取り出す製造方法であって、複雑な形状の籾殻複合ウレタンフォームでも寸法精度良く大量に成形できる。また成形型は少なくとも2以上に分割されるものであって、これら分割型の少なくとも一方を変位させる加圧プレスを行いながら発泡させる場合もある。
ラミネート法とは、紙、アスファルトルーフィング(アスファルトをシート状にして防水機能をもたせたもの)、石膏ボード、ベニヤ板、金属板、樹脂シートなどの表面材の間に原料の混合物を流し込み発泡させて、表面材と籾殻複合ウレタンフォームが一体に接着した板状体にする製造方法である。
スプレー発泡法とは、プレミックスとポリイソシアネートを吹付装置に送り込みその内部で二液を混合するとともに圧縮エア等により混合物を対象物に吹き付ける製造方法である。
【0030】
コテ塗り法とは、プレミックスとポリイソシアネートとをバケツのような容器の中で混合してからシャベル(コテ)で、容器内の混合物を掬って対象物の表面に塗りつける方法である。さらに、この対象物に塗りつけた原料混合物が発泡して盛り上がるのをシャベルの背の部分で押さえ蓋のようにして形状を整える。発泡過程にある原料の混合物は、シャベルで押さえられている以外の方向に膨張していき、側方や奥行きの隙間を充填する。
【0031】
このコテ塗り法は、プレミックスとポリイソシアネートとの混合物が、籾殻を含む懸濁液であって塑性流動挙動を示すことから実現可能な方法であって、一般的な二液混合によるウレタンフォームの成形には採用することができない方法である。
ここで、シャベルとは、作業者が片手で把持する柄を有し、この柄に混合物を掬う掬い部が連結しているものである。また対象物に塗りつける方法としては、容器から混合物をシャベルで掬い取って直接塗る方法以外に、混合物を容器から一度パレットに移してから塗る方法がある。
【0032】
また、これら容器、シャベル、パレットは、ウレタン反応が終了したフォーム体がその表面に付着しないように、ポリイソシアネートに対する親和性の低い材料(例えば、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂等)で形成されているか表面コーティングされていることが望ましい。
【0033】
<断熱工法>
建築物の内空間の断熱性を向上させるには、この内空間と外気とを隔てる側壁、天井、床等の熱伝達率を小さく構成するとともに、この外気が侵入しないように内空間を気密にすることが重要である。
一般的な建築物の内空間を形成する側壁面、天井面、床裏面は、平面材並びにこの平面材を支持又は補強する柱、間柱、梁、桁、筋交、垂木、及び火打ち等で構成され、その表面は凹凸を含む複雑な構造になっている。このために、ボード状に成形された断熱材のみで建築物の内空間を隙間無く覆うことは困難である。
【0034】
そこで、本発明の断熱工法は、まず、スラブ発泡法により所定厚みに製造された籾殻複合ウレタンフォームの発泡ブロックをボード材に加工して、適当に切り分けて凹凸状の表面に敷き詰める。このとき、ボード材の接触面は、プレミックスとポリイソシアネートとの混合物を接着剤としてコテ塗りして接着させる。
さらに、このコテ塗り法によりボード材の目地部分を混合物で埋めて、敷き詰めた複数のボード材の隙間を解消する。
なお、ボード材の厚みや、コテ塗りされた籾殻複合ウレタンフォームの厚みは、「JIS A 9501 保温保冷工事施工標準」等に基づいて設定することが望ましい。
【0035】
このようにして建築物の内空間を、籾殻複合ウレタンフォームを断熱材として隙間無く覆うことは、熱伝達率の小さな静止空気層で建築物の内側表面を被覆することになる。このため、建築物の内空間と外気との間で熱移動が抑制され、冷暖房時のエネルギー消費の低減が図れる。
また、籾殻複合ウレタンフォームは、前記したように呼吸する材質であるために、建築物の内空間を気密にしても内部結露が防止されカビ等の繁殖が抑制される。
【0036】
そして、籾殻複合ウレタンフォームは、軽量、高強度でかつ発泡中に面材等と自己接着するものであることにより、建築物の内側が一体化した籾殻複合ウレタンフォームで補強されることになる。この籾殻複合ウレタンフォームは、籾殻の堅牢な骨格により優れた機械強度を有するために、塗工された建築物の耐震性、免振性を向上させる。
さらに、このような断熱工法によれば、スプレー発泡法におけるミスト対策のような施工準備工程が不要となり、さらに建築物の断熱工事を他の工事と並行して行えるので工期短縮を図ることができる。また床裏などの狭い空間でも断熱工事することができる
【0037】
以上説明した断熱工法において、一般的な建築物の断熱工事について例示したが、これに限定されるものではなく、例えばクーラボックスのような保冷・保温容器(断熱容器)の製造にも適用することができる。
すなわち、断熱容器を構成する内容器と外容器とを重ねて形成される空気層の部分を、ボード材を敷き詰めて隙間をプレミックスとポリイソシアネートとの混合物で充填した断熱材に置き換える製造方法である。
また、例示した断熱工法は、前記した籾殻複合ウレタンフォームの製造方法のうちスラブ発泡法とコテ塗り法とを組み合わせたものであるが、他の方法とコテ塗り法とを組み合わせたものを採用することができし、コテ塗り法のみを単独で採用することもできる。
【0038】
また、本発明の製造方法により製造された籾殻複合ウレタンフォームは、実施形態に示された建築物の断熱材としての用途に限定されるものでなく、硬質又は軟質のポリウレタンフォームが採用される各種技術分野に応用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾殻、水、及びポリオールが配合されているプレミックスと、ポリイソシアネートとを混合して化学反応させることを特徴とする籾殻複合ウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
前記籾殻は含水処理を行ったものであることを特徴とする請求項1に記載の籾殻複合ウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
前記混合してから対象物にコテ塗りすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の籾殻複合ウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の籾殻複合ウレタンフォームの製造方法により製造したボード材を請求項3に記載の籾殻複合ウレタンフォームの製造方法における前記コテ塗りをして敷き詰めることを特徴とする断熱工法。

【公開番号】特開2009−161697(P2009−161697A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2407(P2008−2407)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(504004647)アグリフューチャー・じょうえつ株式会社 (24)
【Fターム(参考)】