説明

粉粒体吐出機

【課題】繰出伝動軸60の伝動系の負荷の増大と脈動を防ぎ、更にコストがアップせず、繰り出し精度の良い粉粒体吐出機11の提供である。また走行性能が良い粉粒体吐出機11の提供である
【解決手段】車体2の後部に粉粒体繰出部10を配置した粉粒体吐出機11において、前記車体2の後輪4,4の内側に後輪伝動ケース30,30と、該後輪伝動ケース30,30を介して後輪がローリングするためのローリング軸2baを設けており、前記後輪伝動ケース30,30と共に後輪4,4が前記ローリング軸2ba回りに左右にローリングし、前記後輪伝動ケース30からその上方の前記粉粒体繰出部10へ動力を伝動するべく、後輪伝動ケース30の上側へ突出する繰出伝動軸60を、後輪4,4が左右にローリングする接線方向に向くように、左右方向に傾けて配置した粉粒体吐出機11である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料、薬剤または種子等の粉粒体を吐き出して圃場へ供給する粉粒体吐出機などの農作業機などの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
農作業機の一種として、例えば田植機などにおいては苗の植え付けの他に肥料、薬剤または種子等の粉粒体を吐き出して圃場へ供給する装置を備えた粉粒体吐出機がある。この粉粒体吐出機は、前後輪を備えた車体の後部に粉粒体繰出部を配置し、車体前部に配置した原動機の動力を前後輪へ伝達すると共に、前記原動機の動力を粉粒体繰出部へ伝達する構成となっている。
【特許文献1】特開2003−134910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1記載の粉粒体吐出機は、車体前部に配置した原動機から車体後部に配置した後輪あるいは該後輪を支持する車体後部に配置した後輪伝動ケースへ伝動する後輪伝動機構と、前記原動機から車体後部に配置した粉粒体繰出部へ伝動する繰出伝動機構とが、車体前側から後側にかけて並列して各々設けられていたので、その分伝動構造が過大となって、機体の重量増やコストアップという問題を生じていた。
【0004】
そこで、前記後輪伝動機構の車体前側から後輪伝動ケースまでの伝動部分を、前記繰出伝動機構の車体前側から後側にかけて配置される部分と共用して、機体の重量増やコストアップを抑えることが考えられるが、地面に追従させるべく後輪を前記後輪伝動ケースと共に前後方向のローリング軸回りに左右にローリング可能な構成とすると、このローリングにより前記後輪伝動ケースと粉粒体繰出部との位置関係が変化することになるから、後輪伝動ケースから粉粒体繰出部へ伝動する動力伝達軸を屈曲可能及び伸縮可能な構成としなければならず、この屈曲角度が大きくなると伝動ロスが発生して前記動力伝達軸が脈動(いわゆるシャクリ)するおそれがある。
【0005】
以上のことから本発明の課題は、エンジンからの動力伝動系の負荷の増大と前記動力伝動軸の脈動を防ぎ、更にコストがアップせず、繰り出し精度の良い粉粒体吐出機の提供である。
更に本発明の課題は、走行性能が良い粉粒体吐出機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の手段を採用することにより解決できる。
請求項1記載の発明は、前後輪(3,3;4,4)を備えた車体(2)の後部に粉粒体繰出部(10)を配置した粉粒体吐出機において、該後輪(4,4)に動力を伝える後輪伝動ケース(30,30)を設け、該後輪伝動ケース(30,30)を介して後輪(4,4)がローリングするためのローリング軸(2ba)を設け、後輪(4,4)がローリング軸(2ba)を中心に左右にローリングする接線方向に向くように前記後輪伝動ケース(30)から上側へ突出した繰出伝動軸(60)を設けた粉粒体吐出機である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、本発明の粉粒体吐出機(1)では、前記後輪伝動ケース(30)から前記粉粒体繰出部(10)に動力を伝動する前記繰出伝動軸(60)を、後輪(4,4)が左右にローリングする接線方向に向くように、左右方向に傾けて配置したので、繰出伝動軸(60)からの動力伝動が安定することから、粉粒体吐出装置(11)の伝動系の負荷の増大及び動力伝動軸の脈動を防ぎ、コストダウンが図れ、粉粒体の繰り出し精度も良い。
更に本発明の粉粒体吐出機(1)は、機体重量が軽減されて走行性能が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の一実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、粉粒体繰出装置の一例である粉粒体吐出装置11を備える粉粒体吐出機1の側面図と平面図を示すもので、この粉粒体吐出機1は、走行車体2の前後に走行車輪としての左右一対の前輪3,3及び後輪4,4が架設され、車体2上前部に操作ボックス5及びステアリングハンドル6等を有する操縦装置が設置され、車体後方部には昇降リンク機構7を介して5条植の苗植付部8が昇降可能に装備されている。さらに、座席12の後方となる走行車体2の後部上側には、粉粒体肥料を圃場に繰出散布するための肥料タンク9、肥料繰出部10等からなる粉粒体吐出装置11の本体部が設置されている。図3は走行車体の一部を省略した平面図である。
【0009】
操縦装置の後側に座席12が設置され、走行車体2のフロント側のミッションケース24の上部にエンジン13が搭載されている。平面視で座席12の前方及び左右両側方には車体カバー97で構成されるステップフロア38を備えている。尚、車体カバー97は、ステップフロア38部の後側の後輪4の外周に沿うように後部が立ち上がって上位に位置している。その車体カバー97の後部の上方に、粉粒体吐出装置11の肥料タンク9及び肥料繰出部10を配置している。
【0010】
操作ボックス5の右側にはクラッチ・ブレーキペダル95を設け、このクラッチ・ブレーキペダル95を前方に踏み込み操作もしくはクラッチ・ブレーキレバーを前方に回動操作すると、図示しないベルト伝動装置のテンションプーリが伝動ベルトから離れて主クラッチ「切」となるとともに、ミッションケース24内の四輪ブレーキ装置(図示せず)を作動して左右一対の前輪3,3及び後輪4,4を制動する構成となっている。
【0011】
また、操作ボックス5の右側となるステアリングハンドル6の右側には苗植付部8の昇降操作や駆動の入切が行える植付昇降レバー96を設け、操作ボックス5の左側となるステアリングハンドル6の左側には走行車体2の走行速度及び苗植付部8の駆動速度を変速操作できる変速レバー93を設けている。
【0012】
苗植付部8を昇降させる昇降リンク機構7は、走行車体2のメインフレ−ム2aのリヤフレ−ム2bから上方に突設する支持フレ−ム2cに枢着連結され、油圧昇降シリンダ36の伸縮作動によって昇降させるべく構成している。油圧昇降シリンダ36を伸縮制御する油圧バルブ37は、ステップフロア38の下側で座席12の右側に設けられている。
【0013】
苗植付部8は、左右に往復動する苗載タンク14、1株分の苗を切取って土中に植込む5条分の苗植付装置15、苗植付面を整地するサイドフロート16L,16R及びセンターフロート16C等からなる。
【0014】
粉粒体吐出装置11は、苗植付部8の前方に設けられていて、肥料タンク9内の粉粒体肥料を肥料繰出部10によって一定量づつ下方に繰り出し、その繰り出された肥料をブロワー17から供給されるエアによって施肥ホース18を通って施肥ガイド19まで移送し、該施肥ガイド19の前側に設けた作溝体20によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落し込むようになっている。なお、前記ブロワー17は、エンジン13(図1)の動力により駆動し、エンジンルーム内の暖気を取り入れてこれをエアチャンバー39内に送風し、更に、エアチャンバー39から各条の施肥ホース18内に吹き込むようになっている。
【0015】
図示しないエンジン出力軸の回転動力が、ベルト式変速装置と主クラッチ機能付のベルト伝動装置を介して、ミッションケース24のミッション入力軸25に伝達されるようになっている。
【0016】
ミッションケース24に入力された回転動力は、ギヤミッションで変速された後、走行動力と作業動力とに分けられる。走行動力の一部は前輪アクスルケース27内の前輪アクスルを介して前輪伝動ケース28に伝達されて前輪3を回転駆動し、走行動力の残りは、後輪伝動軸29を介して後輪伝動ケース30に伝達されて後輪4を回転駆動する。また、作業動力は、PTO出力軸31とPTO伝動軸32とを介して走行車体2の上部に設置された植付クラッチケース33へ伝達される。
【0017】
植付クラッチケース33へ伝達された作業動力は、施肥動力と植付動力とに分岐し、施肥動力は施肥クラッチ94(図6)を経由して植付クラッチケース33から取り出される。植付クラッチケース33内の植付動力は、該ケース33の出力側に設けた植付安全クラッチ34を経てから植付伝動軸35を介して苗植付部8へ伝達される。
【0018】
また、粉粒体吐出装置11の肥料繰出部10への動力伝達用の伝動機構として植付クラッチケース33の上面から上方に向けて突出する施肥動力取出軸40が設けられている。
【0019】
粉粒体吐出装置11は粉粒体肥料を下記伝動機構により肥料繰出部10から一定量づつ下方に繰り出す。その伝動機構について説明する。図4には粉粒体吐出装置11への伝動機構を示す図を示し、図5には粉粒体吐出装置11の要部の背面図を示し、肥料繰出部10と後輪伝動ケース30との接続状態を示している。
【0020】
図4に示すように車体の後輪4,4の後輪軸65には該後輪4,4に動力を伝える後輪伝動ケース30,30を接続し、該後輪伝動ケース30,30を介して後輪4,4がローリングするための前後方向のローリング軸2ba(図5)を設け、前記後輪伝動ケース30,30と共に後輪4,4が前記ローリング軸2ba回りに左右にローリングし、前記後輪伝動ケース30からその上方の前記肥料繰出部10へ動力を伝動するべく、後輪伝動ケース30の上側へ突出する繰出伝動軸60を、後輪4,4が左右にローリングする接線方向に向くように、左右方向に傾けて配置している。すなわち後輪4,4が上下にローリングしても出力回転数に影響が少ないように、後輪4,4がローリングする方向の接線方向に繰出伝動軸60を設けた構成としている。施肥出力軸61と繰出伝動軸60をユニバーサルジョイント66を介して接続しているため、繰出伝動軸60の折れ曲がる角度を小さくできる。また、繰出伝動軸60は、肥料タンク9側に動力を伝達する繰出駆動アーム50との間にユニバーサルジョイント62を介して接続している。
【0021】
図5には肥料繰出部10と後輪伝動ケース30との接続状態を示す。肥料繰出部10と後輪伝動ケース30は繰出伝動軸60を介してベベルギアを内蔵したベベルギアケース51aを経由して連結している。そして、ベベルギアケース51aからの出力軸51と一体回転する各条の繰出駆動ギヤ171と噛み合う繰出ギヤ172を介して各条の繰出軸173を駆動し、該繰出軸173と一体回転する各条の肥料繰出部10の繰出ロール(図示せず)を連続的に回転させる構成としている。なお、繰出ロール(図示せず)は、外周面の所定ピッチ毎に繰出溝(図示せず)を備え、繰出溝に肥料を溜めて該ロールの回転により下方へ繰り出す構成となっている。そして繰出量調節ハンドル54の操作部54a(図1)で繰出量を調節している。
【0022】
一方、リヤフレーム2bはローリング軸2baを中心に矢印G方向にローリング(横揺れ)し、繰出伝動軸60はユニバーサルジョイント66を介して後輪伝動ケース30と接続している。そして後輪4,4が左右にローリングする接線方向に向くように、繰出伝動軸60を左右方向に傾けて配置している。
【0023】
本構成を採用することにより、繰出伝動軸60から肥料繰出部10への動力伝動が安定し、伝動系の負荷の増大と動力伝達の脈動を防ぐ。したがって肥料の繰出精度の向上が図れる。また無段変速装置での車速連動を廃止でき、ミッションケース24での株間変速を行えるため格別な株間変速ギヤケースが不要であるのでコストダウンが図れ、また機体重量バランスが前バランスになり、全体の軽量化が可能である。
【0024】
図6には粉粒体吐出装置11への伝動機構を示す。
図6に示すように後輪4,4がローリングしても出力回転数に影響が少ないように、後輪伝動ケース30内に施肥クラッチ94を備え、ローリング方向の接線方向に繰出伝動軸60を設けた構成とすることもできる。
【0025】
従来の粉粒体吐出機1では、粉粒体吐出装置11の車速連動を行うにはメインミッション内に株間主変速を設けずに、無段変速装置内に株間主変速を設けて変速を行う構成であった。したがって伝動系の負荷が増大して脈動(シャクリ)の現象が発生したことから、粉粒体吐出機1の各部を強度アップする必要があり、重量増や、コストアップという問題も生じていた。又、無段変速装置内に株間変速を設けているために、粉粒体吐出装置11全体が大きく重くなってしまい、車体前後のバランスが悪くなることがある。また株間変速をする際に、どこに変速レバーがあるのか分からないことも多くあり、操作性の低下をも招いている。これは、無段変速装置が車体の中ほどから後部の位置に配置されるために、変速レバー位置も自ずと座席側部か座席後部側位置に配置されるためである。
【0026】
しかし本実施例の構成を採用することにより無段変速装置での車速連動を廃止でき、ミッションケース24での株間変速を行えるためコストダウンが図れ、操作性も良くなり粉粒体吐出装置11の性能も向上し、走行車体2の前後のバランスも良くなる。また、座席前側のハンドル6の近くに操作レバーがある方が操作しやすい。
【0027】
図7には粉粒体吐出装置11の施肥タンク9の部分の斜視図を示す。本図では粉粒体吐出装置11の施肥タンク9の上部の各条施肥タンク9のしきり部分に赤外線発信機68を(2条に1個)設け、各条の施肥タンク9の底部に赤外線受光部69(各条に1個)を設けた構成としている。赤外線発信機68と赤外線受光部69を設ける位置は、赤外線発信機68からの赤外線が赤外線受光部69にて受光できる位置であれば各条施肥タンク9のしきり部分に限定されない。
【0028】
従来の残量センサーは施肥タンク9の2条分に対し、1個しか付いていなかったため、1条分だけ肥料が減少した場合に、あるいは1条分のみ肥料の有無を検出した場合にセンサーが感知できないことがあった。
しかし、図7に示す構成によれば赤外線受光部69を各条に1個設けていることから、赤外線センサーの精度が向上し、2条で赤外線発信機68を共用しているのでコストダウンが図れる。更に赤外線センサーは一般的に量産されていることから、安価である。
【0029】
図8には粉粒体吐出装置11の施肥タンク9の部分の斜視図を示す。雨天時の作業では施肥タンク9内の肥料が湿って固まり、施肥作業を行う際に肥料繰出部10が詰まってしまうことがある。
図8に示す構成によれば施肥タンク9の各条に加振器70を取り付けている。加振器70は肥料繰出部10に限らず肥料がつまりそうなところに取り付ければよい。また各条でなくても例えば施肥タンク2条分に対し、1個取り付けてもよい。
図8に示す構成を採用することにより施肥作業を行う際の肥料の詰まりを防止することができる。
【0030】
図9には粉粒体吐出装置11の制御部71の接続状態を示したブロック図を示す。また図10には植付け作業と施肥作業のフローを示す。図11には後輪回転速度と累積後輪回転数の関係を表した図を示す。
図9では制御部71の入力側に植付レバーセンサ72と後輪回転数センサ73を設け、出力側には植付クラッチ用ソレノイド74と施肥クラッチ用ソレノイド75を設けている。
【0031】
次に図10のフローについて説明する。まず植付レバーを「入り」にすると(ステップa)、後輪4,4の回転数のカウントが始まり、施肥クラッチ用ソレノイド75を「入り」にすることで肥料粉粒体の送り出しがスタートする(ステップb)。そして後輪4,4の回転数をカウントすることで後輪4,4の回転速度を算出し、当該後輪4,4の回転速度に基づいて植付クラッチ用ソレノイド74を「切り」から「入り」にする累積後輪回転数を決定する(ステップc)。そして後輪4,4の回転数が前記所定の累積後輪回転数に達した場合に植付クラッチ用ソレノイド74を「入り」にすると苗の植え付けが開始する。
【0032】
またステップaで、植付レバーを「入り」から「切り」にすること(ステップd)でも後輪4,4の回転数のカウントが始まり、続いて施肥クラッチ用ソレノイド75を「切り」にすることで施肥タンク9からの肥料粉粒体の送り出しが終了する(ステップe)。次いで後輪4,4の回転数をカウントすることで後輪4,4の回転速度を算出し、当該後輪4,4の回転速度に基づいて植付クラッチ用ソレノイド74が植付けを「切り」にする所定の累積後輪回転数を決定する(ステップf)。そして後輪4,4の回転数が苗の植え付けを終了すべき累積後輪回転数に達した場合に植付クラッチ用ソレノイド74を「切り」にすると苗の植え付けが終了する。
【0033】
図11に示すように走行車体2の車速が速いと累積後輪回転数が大きくなるので、後輪回転速度と累積後輪回転数の関係を利用して、車速に関係なく施肥作業と苗植付け作業を常に同じ時間差で行うことができる。
【0034】
このように走行車体2の車速制御によって施肥クラッチ94(これを入れてのちに苗植付を行う)と植付クラッチ34のタイミングを一定化させている。すなわち施肥タンク9からの肥料粉粒体の搬送を開始してから圃場に実際の施肥が行われる迄にはタイムラグがあるので施肥クラッチ94が作動開始してからしばらくして圃場に実際の施肥が行われる段階で苗の植え付けを開始することができる。
【0035】
また、施肥作業が終了してから一定時間後に植付けを終える構成となっており、施肥クラッチ94と植付けクラッチ34を同時に入れた場合はタイムラグが生じて施肥が行われているのに、そこに苗が植え付けられていないということを防げる。しかもこの施肥タイミングと苗植付けタイミングのタイムラグは車速に依存して変化するので、車速を後輪回転数で測定して、その結果を用いて前記制御を行う。
このような構成を採用することにより無肥料区が防止できると共に走行車体2の車速による施肥クラッチ94と植付クラッチ34の動作タイミングを調整する。
【0036】
図12には粉粒体繰出装置の一例である粉粒体吐出装置11を備える粉粒体吐出機1の側面図を示す。走行車体2のフロントにエンジン13を設け、座席12の後方に肥料繰出部10を設けた粉粒体吐出装置11を備える粉粒体吐出機1において、座席12の下部に肥料を収納可能なスペース80を設けた構成とする。このように座席12の下のカバー内にスペース80を設けることで、肥料の予備収納が確保でき、施肥作業中に肥料切れを防止することができ、作業効率が良くなり、また、降雨等で肥料が濡れにくくなり、作業性の向上が図れる。
【0037】
図13には粉粒体繰出装置の一例である粉粒体吐出装置11を備える粉粒体吐出機1の側面図を示す。図13に吸入ダクト77を設け、エンジン13部分より吸入ダクト77にて座席12の下部に設けたスペース80に収納した肥料へ向けて熱風を導く構成としている。このような構成を採用することにより肥料の湿気防止が可能となる。
【0038】
図14には粉粒体繰出装置の一例である粉粒体吐出装置11を備える粉粒体吐出機1の側面図を示す。本図はフロントにエンジン13、座席12の後方に肥料繰出部10を設けた粉粒体吐出装置11を備える粉粒体吐出機1において、座席12の下部に肥料を収納可能なスペース80を設けている。更に、座席下部のシートカバー78は回動支点79を中心に前部に(矢印K方向に)回動可能な構成としている。
本構成を採用することにより肥料の予備収納ができ、又シートカバー78を前部に回動可能な構成としていることからスムーズに肥料袋76の取り出しができ、座席12の後側に位置する肥料タンク9への肥料補給が容易に行える。
【0039】
図15にはサイドクラッチ強制入ペダル87(図1)を設けた場合の、旋回時の駆動力制御用の構成を示す。
図16にはサイドクラッチ強制入ペダル87の周辺部分の図を示し、図16(a)は平面図を示し、図16(b)は側面図を示す。また図17にはサイドクラッチ強制入ペダル87を踏み込んだ場合の作動機構を説明する側面概略図を示し、図17(a)〜図17(c)はそれぞれサイドクラッチ強制入ペダル87の接続部分のバリエーションを表している。
【0040】
ステアリングハンドル6を切ると、その動きに連動して図15に示すようにピットマンアーム82が回り、左右どちらかのサイドクラッチブレーキシフタアーム84が作動して、図示しないギア伝動機構内に設けられた、その側のサイドクラッチが切れ、その側のサイドブレーキが作動する機構になっている。例えば、図15の中立状態からハンドル6の右旋回操作でピットマンアーム82がR方向に回るので右前輪ファイナルケース28Rが作動し、走行車体2は右旋回し、反対に図15の中立状態からハンドル6の左旋回操作でピットマンアーム82がL方向に回るので左前輪ファイナルケース28Lが作動し、走行車体2は左旋回する。
【0041】
このとき、左右の旋回方向に応じて、それぞれの後輪4のサイドクラッチブレーキシフタアーム84L,84Rのいずれかが作動して、まず旋回内側の後輪4のサイドクラッチが切れ、さらにハンドルを操作するとスプリング84Ls,84Rsが圧縮され、旋回内側のサイドブレーキが入り、それぞれの方向に旋回する。
【0042】
このような構成によりステアリングハンドル6の旋回動作に連動して、旋回内側の後輪4のサイドクラッチが切れ、粉粒体吐出機1の駆動力が落ちる。そこで、ステアリングハンドル6の旋回動作に連動してピットマンアーム82が回るときに、サイドクラッチ強制入ペダル87が図17のC位置まで踏み込まれると、ステアリング連結ケーブル83が作動して旋回内側の前輪3の切れ角が少し中立側に戻る。この動作により、前輪3の操向角度が左右中立側(直進状態側)に戻るので、少し直進性ひいては走行推進力が増し、圃場から比較的脱出し易くなる。また、サイドクラッチ強制入ペダル87が状態Bの位置にある場合はさほど小回りをしないので圃場が荒れない。
【0043】
図16にはサイドクラッチ強制入ペダル87の周辺部分の構成図を示しており、図16(a)は平面図を示し、図16(b)は該ペダル87を図17のD位置まで踏み込んでペダルを固定した状態に於ける側面図を示す。図16(a)の点線で囲まれた部分は接続部90を示しており、また一点鎖線はステップフロア38の外縁を示す。本図に示すようにサイドクラッチ強制入ペダル87はステアリング連係アーム89、サイドクラッチブレーキ連係アーム88及びデフロック連係アーム92とつながっている。またステアリング連係アーム89はステアリング連係ケーブル83に、サイドクラッチブレーキ連係アーム88はサイドクラッチブレーキ連係ケーブル85に、更にデフロック連係アーム92はデフロック連係ケーブル86にそれぞれつながっている。
【0044】
また図17にはサイドクラッチ強制入ペダル87を踏み込んだ場合の作動機構を示した側面図を示し、図17(a)〜図17(c)はそれぞれサイドクラッチ強制入ペダル87の踏み込み度合いの違いを示しており、乗用型田植機1の旋回時におけるサイドクラッチ強制入ペダル87の踏み込み度合いの違いを踏み込み状態A〜Dで示しており、矢印N方向に踏み込む。状態Aはサイドクラッチ強制入ペダル87を踏み込んでいない状態を示し、反対にDは一番踏み込んだときの状態を示している。
【0045】
図17(a)の実線位置に示すサイドクラッチ強制入ペダル87を踏み込んでいない状態Aは通常の旋回時の状態であり、ピットマンアーム82が左又は右に回動し、ステアリング連係ケーブル83は牽引されず、旋回内側の後輪4のサイドクラッチ・サイドブレーキケーブル85が牽引されて、旋回内側の後輪4のサイドクラッチをオフとして、サイドブレーキをオンとする旋回時の状態である。
【0046】
踏み込み状態Bは非制動状態といい、サイドクラッチ強制入りペダル87が前記状態Aよりさらに踏み込まれてサイドクラッチ・サイドブレーキケーブル85が牽引されて、旋回内側のサイドクラッチだけでなくサイドブレーキもオフとする状態である。
【0047】
そして踏み込み状態Cは、デフロック状態といい、前輪駆動系のデフ機構(図示せず)を作動させないようにロックして、デフ機構が作動するときに発生し易い前輪3のスリップによるデフ機構の空回りを防ぐ。このとき、前述の通り、ステアリング連結ケーブル83が作動して前輪3,3の切れ角が少し中立側に戻る。
【0048】
また、踏み込み状態Dはピットマンアーム82の回動に拘わらず後輪4のサイドクラッチが常に伝動状態となる非遮断状態である。この非遮断状態とは左右の後輪4が常に駆動状態となることで走行駆動力を向上させる機能がある。
【0049】
図17(b)ではサイドクラッチ強制入ペダル87が状態Cまで踏み込まれて、デフロック連係アーム92が作動してデフロック連係ケーブル86が引っ張られることでデフロックがオン(デフロック状態)になる。
【0050】
図17(c)では手動のブレーキ牽制用レバー91を図のように動かして、手動レバー91に固定されたカム91aにより意図的にサイドクラッチ強制入ペダル87が非制動状態位置に固定され、通常位置に戻らないようにするブレーキ牽制用レバー91を設けており、ブレーキがかからない状態を保つことができる。
【0051】
表1は粉粒体吐出機1の旋回通常時におけるサイドクラッチとサイドブレーキの設定状態を示したものである。
【表1】

【0052】
図17の状態Aのサイドクラッチ強制入ペダル87を踏み込まない場合はサイドクラッチはオフの状態、サイドブレーキはオンの状態にあり、同様に状態Bの位置に踏み込んだ場合はサイドクラッチとサイドブレーキが共にオフの状態にあり、状態Cの位置に踏み込んだ場合もサイドクラッチとサイドブレーキが共にオフの状態にあり、状態Dの位置に踏み込んだ場合はサイドクラッチはオンの状態、サイドブレーキはオフの状態にある。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は伝動系の負荷の増大を防いで肥料、薬剤または種子等の粉粒体の繰り出し精度の良い粉粒体吐出機であることから、粉粒体用の吐出機に限らず液体の吐出機など他の農作業機にも利用できる。また農作業機だけでなく、例えば工業用の作業機にも利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】粉粒体繰出装置の一例である粉粒体吐出装置を備える粉粒体吐出機の側面図である。
【図2】粉粒体繰出装置の一例である粉粒体吐出装置を備える粉粒体吐出機の平面図である。
【図3】粉粒体繰出装置の一例である粉粒体吐出装置を備える粉粒体吐出機の走行車体の一部を省略した平面図である。
【図4】粉粒体吐出装置への伝動機構を示す図である。
【図5】粉粒体吐出装置の要部の背面図である。
【図6】粉粒体吐出装置への伝動機構を示す図である。
【図7】粉粒体吐出装置の施肥タンク部分の斜視図である
【図8】粉粒体吐出装置の施肥タンク部分の斜視図である。
【図9】粉粒体吐出装置の制御部の接続状態を示したブロック図である。
【図10】植付け作業と施肥作業のフローである。
【図11】後輪回転速度と累積後輪回転数の関係を表した図である。
【図12】粉粒体繰出装置の一例である粉粒体吐出装置を備える粉粒体吐出機の側面図である
【図13】粉粒体繰出装置の一例である粉粒体吐出装置を備える粉粒体吐出機の側面図である。
【図14】粉粒体繰出装置の一例である粉粒体吐出装置を備える粉粒体吐出機の側面図である。
【図15】サイドクラッチ強制入ペダルを設けた場合の作動機構を示した平面図である。。
【図16】サイドクラッチ強制入ペダルの周辺部分の図(図16(a)は平面図、図16(b)は側面図)である。
【図17】サイドクラッチ強制入ペダルを踏み込んだ場合の作動機構を示した側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 粉粒体吐出機 2 走行車体
2a メインフレーム 2b リヤフレーム
2ba ローリング軸 2c 支持フレーム
3,3 前輪 4,4 後輪
5 操作ボックス 6 ステアリングハンドル
7 昇降リンク機構 8 苗植付部
9 肥料タンク 10 肥料繰出部
11 粉粒体吐出機 12 座席
13 エンジン 14 苗載タンク
15 苗植付装置 16L,16R サイドフロート
16C センターフロート 17 ブロワー
18 施肥ホース 19 施肥ガイド
20 作溝体 24 ミッションケース
25 ミッション入力軸 27 前輪アクスルケース
28 前輪伝動ケース 29 後輪伝動軸
30 後輪伝動ケース 31 PTO出力軸
32 PTO伝動軸 33 植付クラッチケース
34 植付安全クラッチ 35 植付伝動軸
36 油圧昇降シリンダ 37 油圧バルブ
38 ステップフロア 39 エアチャンバー
40 施肥動力取出軸 50 繰出駆動アーム
51 出力軸 51a ベベルギアケース
54 繰出量調節ハンドル 54a 操作部
60 繰出伝動軸 61 施肥出力軸
62 ユニバーサルジョイント 65 後輪軸
66 ユニバーサルジョイント 68 赤外線発信機
69 赤外線受光部 70 加振器
71 制御部 72 植付レバーセンサ
73 後輪回転数センサ 74 植付クラッチ用ソレノイド
75 施肥クラッチ用ソレノイド 76 肥料袋
77 吸入ダクト 78 シートカバー
79 回動支点 80 スペース
82 ピットマンアーム 83 ステアリング連係ケーブル
84 サイドクラッチブレーキシフタアーム
85 サイドクラッチとサイドブレーキの連係ケーブル
86 デフロック連係ケーブル 87 サイドクラッチ強制入りペダル
88 サイドクラッチブレーキ連係アーム 89 ステアリング連係アーム
90 接続部 91 ブレーキ牽制用レバー
91a カム 92 デフロック連係アーム
93 変速レバー 94 施肥クラッチ
95 クラッチ・ブレーキペダル 96 植付昇降レバー
97 車体カバー 171 繰出駆動ギヤ
172 繰出ギヤ 173 繰出軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後輪(3,3;4,4)を備えた車体(2)の後部に粉粒体繰出部(10)を配置した粉粒体吐出機において、
該後輪(4,4)に動力を伝える後輪伝動ケース(30,30)を設け、
該後輪伝動ケース(30,30)を介して後輪(4,4)がローリングするためのローリング軸(2ba)を設け、
後輪(4,4)がローリング軸(2ba)を中心に左右にローリングする接線方向に向くように前記後輪伝動ケース(30)から上側へ突出した繰出伝動軸(60)を設けた
ことを特徴とする粉粒体吐出機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2006−296292(P2006−296292A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122681(P2005−122681)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】