粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法
【課題】粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、装置の異常を良好に検査することが可能な粒子状物質検出装置を提供する。
【解決手段】本発明の粒子状物質検出装置は、内燃機関30の排気系31に設けられた電極部21と、電極部21の電気的特性を検出する検出手段23と、を備え、電極部21に粒子状物質36が付着することによる電気的特性の変化に基づいて排ガス32に含まれる粒子状物質36を検出する粒子状物質検出装置100であり、電極部21に付着する粒子状物質36を除去する除去手段25と、装置の使用初期の状態における初期の電気的特性と、除去手段25によって電極部21の表面に付着した粒子状物質36を除去した状態で測定される電気的特性とを比較して、粒子状物質検出装置100の異常を判定する異常判定手段26と、を更に備えた粒子状物質検出装置100である。
【解決手段】本発明の粒子状物質検出装置は、内燃機関30の排気系31に設けられた電極部21と、電極部21の電気的特性を検出する検出手段23と、を備え、電極部21に粒子状物質36が付着することによる電気的特性の変化に基づいて排ガス32に含まれる粒子状物質36を検出する粒子状物質検出装置100であり、電極部21に付着する粒子状物質36を除去する除去手段25と、装置の使用初期の状態における初期の電気的特性と、除去手段25によって電極部21の表面に付着した粒子状物質36を除去した状態で測定される電気的特性とを比較して、粒子状物質検出装置100の異常を判定する異常判定手段26と、を更に備えた粒子状物質検出装置100である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法に関する。更に詳しくは、粒子状物質検出装置によって、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、装置の破損や不具合を良好に検査することが可能な粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスには煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)が含まれており、大気汚染の原因になっていた。これらを除去するために、セラミック等で作製されたフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)が広く用いられている。セラミック製のDPFは、長期間の使用が可能であるが、熱劣化等によりクラックや溶損等の欠陥が発生することがあり、微量ではあるが粒子状物質が漏れる可能性がある。このような欠陥が発生した場合には、その欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識することが、大気汚染防止の観点から極めて重要である。
【0003】
このような欠陥の発生を検知する方法として、DPFの下流側に粒子状物質検出装置を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の発明は、コロナ放電によって粒子状物質を帯電させ、そのイオン電流を測定することにより、粒子状物質の量を測定するものである。このように、粒子状物質を帯電させてそのイオン電流を測定する方法では、粒子状物質に帯電するイオン電流が微弱であるため、その微弱なイオン電流を検出するために大掛かりな検出回路が必要になり、高価なものとなってしまう。また、排ガスが高流量である場合には、粒子状物質を効果的に帯電させることが困難であるため、粒子状物質の測定値が、実際に排ガスに含有されている粒子状物質の量より小さい値となり、その誤差が大きくなってしまう。
【0005】
このようなことから、例えば、一方の端部に一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体と、貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の電極とを備え、排ガス中の粒子状物質を、貫通孔の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能な粒子状物質検出装置等が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、特許文献1に記載されたようなイオン電流の大きさを測定することにより排ガス中の粒子状物質を測定する検出装置において、この装置の正常動作を確認するための検査方法やシステムについても提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−123761号公報
【特許文献2】特開2009−186278号公報
【特許文献3】特表2006−503270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に記載の粒子状物質検出装置は、DPF等の排ガス処理装置の下流側に設置して、排ガス処理装置によって排ガスの浄化、即ち、粒子状物質の除去が正常に行われているか否かの判断を行うものであり、排ガス処理装置が正常に機能している場合には、粒子状物質は当然検出されず、粒子状物質を検出した場合に検知されるべき電気的な信号等は検知されないことが一般的である。
【0009】
しかしながら、このような「粒子状物質が検出されないこと」を測定するための粒子状物質検出装置は、装置の不具合等によって、粒子状物質が検出された際の信号を認識することができない場合であっても、排ガス処理装置が正常に機能している場合と同様の挙動を示すことがあり、粒子状物質検出装置を使用する前や使用中において、その粒子状物質検出装置が正常に機能しているか否かの検査を行うことの必要性が高まっている。
【0010】
例えば、特許文献2に記載の粒子状物質検出装置においては、計測電極の断線や破損、一対の計測電極の短絡、誘電体の破損等が生じた場合には、粒子状物質の検出を正常に行うことができず、粒子状物質が排出されていることを見逃したり、定量的な測定値に大きな誤差を生じたりするという問題があった。特に、この粒子状物質検出装置は、極めて微量な粒子状物質の検出を行うことができるため、粒子状物質が検出されていない水準(即ち、ゼロ点)の確認が特に重要となっている。なお、特許文献3に記載の検査方法及びシステムは、検査対象となる検出装置の機構が異なるため、例えば、上記した特許文献2に記載の粒子状物質検出装置等に対して行うことは不可能である。
【0011】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、排ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置において、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断(例えば、自己診断)し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することが可能な粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下の粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法を提供するものである。
【0013】
[1] 内燃機関の排気系に設けられた電極部と、前記電極部の電気的特性を検出する検出手段と、を備え、前記電極部に粒子状物質が付着することによる前記電気的特性の変化に基づいて、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、前記電極部に付着する粒子状物質を除去する除去手段と、前記電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて、前記電極部の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、且つ、前記除去手段によって前記電極部の表面に付着した粒子状物質を除去し、前記粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検出を開始する状態とした、前記電極部の電気的特性を測定し、当該測定した前記電気的特性と、前記初期電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定する異常判定手段と、を更に備えた粒子状物質検出装置。
【0014】
[2] 前記異常判定手段によって比較する前記電気的特性が、静電容量又は抵抗値である前記[1]に記載の粒子状物質検出装置。
【0015】
[3] 前記除去手段が、装置内部を加熱するヒータを有する前記[1]又は[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0016】
[4] 前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、前記誘電体を昇温させながら、前記電極部の前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の変化から、前記電極部の断線、接触不良及び前記誘電体の破損を、前記異常判定手段によって更に検査するように構成された前記[1]〜[3]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0017】
[5] 前記誘電体の温度変化に対して、測定される前記電気的特性が変化しない場合に、前記電極部の断線、又は接触不良と判断する前記[4]に記載の粒子状物質検出装置。
【0018】
[6] 前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、前記電極部の電気的特性を測定する際に、前記電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら前記電気的特性を測定可能に構成され、測定される前記電気的特性の推移によって、前記誘電体の破損を検査する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0019】
[7] 前記初期電気的特性が予め前記異常判定手段に設定されており、設定された前記初期電気的特性と、測定された前記電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定するように構成された前記[1]〜[6]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0020】
[8] 前記粒子状物質検出装置は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を備え、前記電極部が、前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、前記貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、前記一対の計測電極の埋設位置よりも前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有する前記[1]〜[7]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0021】
[9] 前記初期電気的特性と、測定した前記電気的特性との値を比較して、前記計測電極の断線、接触不良若しくは破損、前記一対の計測電極の短絡、及び前記誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常を検査するように構成された前記[8]に記載の粒子状物質検出装置。
【0022】
[10] 内燃機関の排気系に設けられた電極部と、前記電極部の電気的特性を検出する検出手段とを備え、前記電極部に粒子状物質が付着することによる前記電気的特性の変化に基づいて、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置の異常を検査するための粒子状物質検出装置の検査方法であって、前記電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて、前記電極部の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、排ガスが通過する流路の内部に設置された前記粒子状物質検出装置の前記電極部に付着した粒子状物質を除去し、前記粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検査を開始する状態とした、前記電極部の電気的特性を測定し、当該測定した前記電気的特性と、前記初期電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定する粒子状物質検出装置の検査方法。
【0023】
[11] 前記粒子状物質検出装置として、装置に付着した粒子状物質を除去する除去手段を更に備えたものを用いる前記[10]に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0024】
[12] 前記電気的特性として、静電容量又は抵抗値を測定する前記[10]又は[11]に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0025】
[13] 前記粒子状物質検出装置として、装置内部を加熱するヒータを更に備えたものを用いる前記[10]〜[12]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0026】
[14] 前記粒子状物質検出装置として、前記電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものを用い、前記誘電体を昇温させながら、前記電極部の前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の変化から、前記電極部の断線、接触不良及び前記誘電体の破損を更に検査する前記[10]〜[13]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0027】
[15] 前記誘電体の温度変化に対して、測定される前記電気的特性が変化しない場合に、前記電極部の断線、又は接触不良と判断する前記[14]に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0028】
[16] 前記粒子状物質検出装置として、前記電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものを用い、前記電極部の電気的特性を測定する際に、前記電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の推移によって、前記誘電体の破損を検査する前記[10]〜[15]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0029】
[17] 前記初期静電容量の測定に変えて、前記粒子状物質検出装置の構成に適した初期電気的特性を予め設定し、設定された前記初期電気的特性と、測定した電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を検査する前記[10]〜[16]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0030】
[18] 前記粒子状物質検出装置として、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備え、前記電極部が、前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、前記貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、前記一対の計測電極の埋設位置よりも前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有するものを用いる前記[10]〜[17]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0031】
[19] 前記初期電気的特性と、測定した前記電気的特性との値を比較して、前記計測電極の断線、接触不良若しくは破損、前記一対の計測電極の短絡、及び前記誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常を検査する前記[18]に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明の粒子状物質検出装置は、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することができる。また、本発明の粒子状物質検出装置の検査方法は、排ガス中の粒子状物質を検出する電極部を備えた粒子状物質検出装置において、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することができる。
【0033】
即ち、本発明の粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法によれば、使用初期の状態における初期電気的特性と、使用中の粒子状物質検出装置に付着した粒子状物質を除去した状態で測定される電気的特性とを比較して、粒子状物質検出装置の異常を判断(検査)することができる。例えば、電極部は元々静電容量(電気的特性)を有しており、それを初期静電容量とした場合、粒子状物質を除去手段によって電極部から除去することで、初期とほぼ同一になるはずの静電容量を検出することができる。このため、その両者(初期電気的特性と測定した電気的特性)を比較することで粒子状物質検出装置の異常判定を行うことができる。例えば、両者の値が異なる場合には、故障(異常)であると判定できる。
【0034】
本発明の粒子状物質検出装置は、例えば、排ガス処理装置が正常に機能している場合には、何ら検出に関する信号を受信しない検出装置、或いは、「検出せず」との信号を受信する場合であっても極めて小さく、検出された場合において、初めて検出されたことが認識されるような検出装置において、現時点で正常な測定が行われているか否かの確認を行うことができる。このため、粒子状物質検出装置のゼロ点の確認を簡便に行うことができるとともに、検出装置の破損等の不具合(異常)も確認することができる。
【0035】
また、本発明の粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法においては、得られた電気的特性の値によって、不具合が生じた箇所や不具合の内容を限定或いは特定することができるため、不具合が生じた場合に、故障部分の交換や修復等の作業を簡便且つ迅速に行うことができる。
【0036】
なお、例えば、粒子状物質検出装置が、貫通孔を形成する検出装置本体の壁の内部に少なくとも一対の集塵電極が埋設され、荷電した粒子状物質を貫通孔の壁面又はこの壁の内表面に配置された計測電極に電気的に吸着させることが可能な検出装置である場合には、対向配置された一対の計測電極によって、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定し、DPFの下流側を流れる排ガスのなかの貫通孔内に流入した排ガス中の粒子状物質の質量を良好に測定することが可能となる。
【0037】
なお、上述した粒子状物質検出装置は、DPFの下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔内に流入した粒子状物質を測定し、この測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質の量を概算することができる。これにより、微量の粒子状物質の測定を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図1B】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の粒子状物質検出装置における異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【図3A】本発明の粒子状物質検出装置の検査方法の一の実施形態における検査対象となる粒子状物質検出装置を模式的に示す正面図である。
【図3B】図3Aに示す粒子状物質検出装置の一方の側面を示す側面図である。
【図3C】図3Aに示す粒子状物質検出装置の他方の側面を示す側面図である。
【図3D】図3Aに示す粒子状物質検出装置の背面図である。
【図4】図3BのA−A’断面を示す模式図である。
【図5】図4のB−B’断面を示す模式図である。
【図6】図4のC−C’断面を示す模式図である。
【図7】図4のD−D’断面を示す模式図である。
【図8】図4のE−E’断面を示す模式図である。
【図9】図4のF−F’断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0040】
〔1〕本発明の粒子状物質検出装置の特徴:
図1A及び図1Bは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す説明図である。なお、図1Aは、粒子状物質検出装置の電極部に粒子状物質が付着した状態を示し、図1Bは、粒子状物質検出装置の電極部に粒子状物質が付着していない状態(粒子状物質を除去した状態)を示している。
【0041】
図1A及び図1Bに示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、内燃機関30の排気系31に設けられた電極部21と、この電極部21の電気的特性を検出する検出手段23と、を備え、電極部21に粒子状物質36が付着することによる電気的特性の変化に基づいて、排気系31を通過する排ガス32に含まれる粒子状物質36を検出する粒子状物質検出装置100であって、電極部21に付着する粒子状物質36を除去する除去手段25と、電極部21に粒子状物質36が付着していない使用初期の状態にて、電極部21の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、且つ、図1Bに示すように、除去手段25によって電極部21の表面に付着した粒子状物質36を除去し、粒子状物質検出装置100にて粒子状物質の検出を開始する状態とした、その電極部21の電気的特性を測定し、当該測定した電気的特性と、初期電気的特性との値を比較して、粒子状物質検出装置100の異常を判定する異常判定手段26と、を更に備えた粒子状物質検出装置100である。
【0042】
即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置は、粒子状物質を検出するための電極部の電気的特性を、粒子状物質検出装置に粒子状物質が付着していない使用初期の状態と、使用中の粒子状物質検出装置において、その表面に付着した粒子状物質を除去し、粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検査を開始する状態とで測定し、これらの電気的特性の値から、装置の異常を判定する異常判定機構を備えた粒子状物質検出装置である。
【0043】
このように構成することによって、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することができる。例えば、電極部は元々静電容量(電気的特性)を有しており、それを初期静電容量とした場合、粒子状物質を除去手段によって電極部から除去することで、初期とほぼ同一になるはずの静電容量を検出することができる。このため、その両者(初期電気的特性と測定した電気的特性)を比較することで粒子状物質検出装置の異常判定を行うことができる。例えば、両者の値が異なる場合には、故障(異常)であると判定できる。
【0044】
本実施形態の粒子状物質検出装置は、例えば、排ガス処理装置が正常に機能している場合には、何ら検出に関する信号を受信しない検出装置、或いは、「検出せず」との信号を受信する場合であっても極めて小さく、検出された場合において、初めて検出されたことが認識されるような検出装置において、現時点で正常な測定が行われているか否かの確認を行うことができる。このため、粒子状物質検出装置のゼロ点の確認を簡便に行うことができるとともに、検出装置の破損等の不具合(異常)も確認することができる。
【0045】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、得られた電気的特性の値によって、不具合が生じた箇所や不具合の内容を限定或いは特定することができるため、不具合が生じた場合に、故障部分の交換や修復等の作業を簡便且つ迅速に行うことができる。
【0046】
なお、本発明において、「異常」とは、粒子状物質検出装置に生じる種々の不具合のことであるが、特に、粒子状物質の検出に際し、電極部の電気的特性に本来あるべきでない変化を与え、正常な測定を阻害する状態となっていることをいう。上述したように、本発明の粒子状物質検出装置は、電極部によって検出(測定)される電気的特性に変化が現れないような装置の変化は、「異常」とは認識されないが、このような電気的特性に変化が現れない異常は、粒子状物質の検出に影響を与えることがなく、正常な粒子状物質の検出に支障をきたすことはない(例えば、電気的特性の変化を伴わない単なる変色等)。
【0047】
電極部は、粒子状物質を付着させて、この粒子状物質の付着に伴う電気的特性の変化を測定するものである。即ち、粒子状物質検出装置の検知部(センサー)として用いられる電極である。このような電極部の電極としては、例えば、装置の表面等に導体ペーストを塗布して形成した電極や、金属板などからなる電極等を挙げることができる。この電極部は、検出手段と電気的に接続されており、電極部における電気的特性を検出手段によって検出(測定)することができるように構成されている。
【0048】
また、電極部は、粒子状物質の測定を行うもの以外にも、例えば、排ガスに含まれる粒子状物質を装置に集塵するための電界を発生されるための電極を含んでいてもよい。即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置は、排ガス中の粒子状物質を粒子状物質検出装置(特に、電極部)に付着させ、電極部を構成する電極(以下、この電極を「測定電極」ということがある)の電気的特性の変化を読み取ることにより、その電気的特性の変化から排ガス中の粒子状物質を検出するものである。このため、例えば、粒子状物質検出装置周辺に電界を生じさせ、排ガス中を流れる粒子状物質を集塵するための電極(以下、このような電極を「集塵電極」ということがある)を更に備えていてもよい。
【0049】
検出手段は、電極部及びこの電極部の周辺に付着した粒子状物質によって、電極部にて測定される電気的特性の変化を読み取り、排ガスに含まれる粒子状物質を検出するものである。排ガスに含まれる粒子状物質は、その大半が煤からなるものであるため、導電性を有しており、電極部等に粒子状物質が付着した場合には、測定される電気的特性に変化を与える。このため、内燃機関の排気系に設けられた電極部の電気的特性の変化を測定することによって、排ガス中に粒子状物質が含まれているか否かを検出することができる。
【0050】
具体的な検出手段としては、電極部の電気的特性の変化から、排ガスに含まれる粒子状物質の検出を行う検出部(検出回路)を挙げることができる。例えば、測定する電極部の電気的特性が、静電容量である場合には、一方の電極に交流電圧を印加し、静電容量が変化した場合に、もう一方の電極に接続された変換器或いはチャージアンプによって静電容量に比例する電圧として検出を行い、その変化量によって異常を検査(判定)する方法を挙げることができる。なお、電気的特性の変化量を検出することが可能なものであれば、上記検査方法に限定されることはない。
【0051】
なお、粒子状物質検出装置の粒子状物質の検出を行う部分の構成については、従来公知の粒子状物質検出装置の検出部分の構成を採用することもできる。このような粒子状物質検出装置としては、例えば、特開2009−186278号公報に記載された粒子状物質検出装置を挙げることができる。
【0052】
除去手段は、電極部に付着した粒子状物質を除去するものである。本実施形態の粒子状物質検出装置は、この除去手段によって、電極部に付着した粒子状物質を除去し、粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検出を開始する状態(以下、「検出開始状態」ということがある)とすることで、電極部の電気的特性を測定し、測定された電気的特性と、初期電気的特性とを比較することで、装置の異常を判定する。
【0053】
上述したように、排ガスに含まれる粒子状物質は導電性を有しており、電極部等に粒子状物質が付着した場合には、測定される電気的特性に変化を与える。このため、異常の判定を行う際に、粒子状物質が電極部に付着したままであると、粒子状物質の付着による電気的特性の変化であるのか、或いは、装置の異常に起因する電気的特性の変化であるのかの判断ができなくなり、正確な異常の判定が不可能となる。
【0054】
このため、粒子状物質検出装置が除去手段を有しておらず、装置を検出開始状態に回復することできなければ、初期値(初期電気的特性)との厳密な比較を行うことができず、装置の異常を正確に判定することはできない。即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、この除去手段と、異常判定手段との双方を備えることにより、初めて正確な異常判定が可能となっている。
【0055】
このように、本発明の粒子状物質検出装置においては、(1)その装置が、電極部に付着した粒子状物質を除去するための除去手段を有すること、(2)電極部に付着した粒子状物質を除去手段によって除去した後に、その電極部の電気的特性の測定を行うこと、(3)電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて測定される電気的特性を、初期電気的特性とすること、の各構成を備えることによって、極めて正確な異常の判定を行うことができる。例えば、上記のいずれかを1つでも有していない異常判定では、正確な異常の判定は不可能である。
【0056】
なお、上述した除去手段は、電極部に付着した粒子状物質のみを除去するだけでなく、装置の他の部位、例えば、電極部の周辺等に付着した粒子状物質についても除去することができるものであることが好ましい。
【0057】
例えば、粒子状物質検出装置には、電極部以外の部位にも粒子状物質が付着することがあり、且つ、その付着した粒子状物質によって、電極部にて測定される電気的特性に影響を与える場合がある。このため、上記除去手段は、測定される電気的特性に影響を与える部位に付着した粒子状物質全てを、粒子状物質検出装置から除去することができるように構成されたものであることが好ましい。
【0058】
除去手段としては、電極部、より好ましくは、粒子状物質検出装置に付着した粒子状物質を除去することが可能なものであれば、その構成については特に制限はないが、例えば、電極部によって測定される電気的特性の変化を与える部位に熱を加え、付着した粒子状物質を燃焼除去可能な、ヒータ等を挙げることができる。図1A及び図1Bにおいては、ヒータによって構成された除去手段を備えた場合の例を示している。なお、以下、このようにして電極部に付着した粒子状物質を、除去手段によって除去することを、粒子状物質検出装置の「再生」ということがある。
【0059】
異常判定手段は、初期電気的特性と、再生後に測定された電気的特性とを比較することにより、装置における種々の異常を検知するものである。例えば、初期電気的特性と、再生後に測定された電気的特性との差(変化量)を算出し、この変化量から、装置の異常を判定する集積回路等を挙げることができる。例えば、この集積回路には、電気的特性の変化量の大きさや、再生後に測定された電気的特性の絶対値に応じて、想定される異常の種類(類型)が設定されており、上述した変化量等に当てはまる類型が選択され、異常の判定が行われる。
【0060】
なお、初期電気的特性を測定するための、「粒子状物質検出装置に粒子状物質が付着していない使用初期の状態」とは、例えば、粒子状物質検出装置を製造した後の未使用の状態、或いは、粒子状物質の検出を行っていたとしても、粒子状物質検出装置に付着した粒子状物質を除去し、且つ、その粒子状物質検出装置が正常に機能していることが判明している状態のことを意味する。即ち、この初期電気的特性は、粒子状物質検出装置の異常を判定する場合における、基準となる電気的特性であり、未使用で且つ正常な状態(即ち、異常のない状態)の電気的特性、或いは、使用済みの装置であっても、未使用と同様の状態に再生し、且つ正常な状態の電気的特性である。
【0061】
例えば、初期電気的特性は、粒子状物質検出装置を最初に使用する状態にて電気的特性を測定し、その値を初期電気的特性として異常判定手段に記憶させておくこともできるし、例えば、同一の構成の粒子状物質検出装置が大量に製造され、このような粒子状物質検出装置が、種々の自動車等に設置されて使用される場合には、これら同一の構成の粒子状物質検出装置において、統一した初期電気的特性を予め設定しておくこともできる。即ち、特定の粒子状物質検出装置において、その初期電気的特性の値が予め分かっている場合には、初期電気的特性を測定する工程は省略され、設定された初期電気的特性と、再生後に測定された電気的特性とを比較することにより、装置の異常を検査するものであってもよい。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の粒子状物質検出装置は、装置に異常があった場合には、電極部によって測定される電気的特性に変化が生じるため、その異常を検知することができ、更に、初期電気的特性と、再生後の電気的特性との差(即ち、変化量)、また、再生後の電気的特性の値(即ち、絶対値)によって、異常の種類や場所を限定或いは特定することも可能である。
【0063】
具体的な異常の例として、例えば、電極部を構成する電極の断線や接触不良の場合には、再生後において、電極部にて測定されるべき値の電気的特性が測定されず、初期電気的特性と、再生後の電気的特性が異なるものとなる。例えば、電気的特性を測定する検出部分の直近で電極の断線等が発生していると、電気的特性が抵抗値である場合には、再生後の抵抗値は極めて大きく(例えば、100MΩ以上と)なり、また、電気的特性が静電容量(単位:pF)である場合には、0pFとなる。
【0064】
また、例えば、異常判定手段によって比較する電気的特性が静電容量であり、初期電気的特性としての初期静電容量と、測定した静電容量(再生後の電気的特性)との値を比較して、その差が0.5pF以上である場合には、例えば、粒子状物質検出装置の構成によっても異なるが、電極部の破損、電極部が一対の電極部である場合には、一対の電極部の短絡、及び電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されている場合には、誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常と判定することもできる。なお、このような異常の判定基準は、あくまでも一例であり、粒子状物質検出装置の各部の構成に応じて、最適な判断基準が設定されるものであり、本発明の粒子状物質検出装置は、除去手段により粒子状物質の除去を行った後に測定された電気的特性と、初期電気的特性とを比較して異常判定手段によって異常を判定可能なものであればよい。
【0065】
ここで、本実施形態の粒子状物質検出装置における異常判定方法の一例を、図2に示すフローチャートによって説明する。図2に示すフローチャートは、電気的特性として静電容量を用いた異常判定方法を示しおり、更に、このフローチャートは、初期静電容量を測定する工程(工程A)と、粒子状物質を除去した後に静電容量を測定し、実際に異常判定を行う工程(工程B)との二つの工程によって構成されている。
【0066】
まず、工程Aでは、出荷検査として初期静電容量を測定する。測定された初期静電容量は、異常判定手段に備えられた不揮発性メモリに記憶される。以降の異常判定においては、この不揮発性メモリに記憶された初期静電容量と、粒子状物質を除去した後に測定された静電容量とを比較して異常判定を行うこととなる。即ち、初期静電容量の測定は、この出荷検査としての1回となる。
【0067】
次に、工程Bでは、まず、粒子状物質検出装置が自動車等に設置され、実際の粒子状物質の検出に使用される(電源投入)。この段階で、粒子状物質検出装置は、粒子状物質を検出するために排ガス中の粒子状物質を捕集し、電極部の電気的特性の変化から粒子状物質の検出が行われる。
【0068】
次に、異常判定手段によって異常判定を行うに際し、除去手段によって粒子状物質の除去を行う。図2に示すフローチャートでは、装置の内部を加熱して、電極部に付着した粒子状物質を燃焼除去する。次に、電極部の静電容量を測定する。そして、測定された静電容量と、異常判定手段(不揮発性メモリ)に記憶された初期静電容量とを比較して異常判定を行う。
【0069】
まず、測定された静電容量が、初期値(初期静電容量)よりも1000pF大きい場合(>初期値+1000pF)には、電極部の短絡との異常判定が行われる。なお、1000pF未満の場合には、次の異常判定が行われる。次の異常判定としては、測定された静電容量が0pFであるかの判定が行われる。0pFである場合には、電極部の断線(検出部分の直近の断線)との異常判定が行われる。なお、測定された静電容量が0pFでない場合には、次の異常判定が行われる。
【0070】
次の異常判定としては、測定された静電容量の値と、初期静電容量の値とを比較して、測定された静電容量との差(即ち、「測定された静電容量」−「初期静電容量の値」、なお、フローチャートでは「測定値−初期値」)の値によって、誘電体破損の異常判定が行われる。上述した測定された静電容量との差が、0.5pF以上である場合には、誘電体の破損と判定される。なお、上述した3つの以上判定において、異常が判定されなかった場合(即ち、全ての判定で「いいえ」の場合)には、異常なしと判定される。なお、異常なしと判定された場合には、その時点で異常判定を終了してもよいし、電極部を構成する別の電極に対して、更に異常判定を行ってもよい。
【0071】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、特に限定されることはないが、異常判定手段によって比較する電気的特性が静電容量であり、初期電気的特性としての初期静電容量が、0〜100pFの範囲となるように構成された粒子状物質検出装置であることが好ましい。このような粒子状物質検出装置は、従来、その異常の判定を行うことが極めて困難であり、上記した異常判定を行う構成とすることによって、正確な異常判定を行うことが可能となる。
【0072】
なお、粒子状物質の検出を行うための電気的特性(即ち、検出手段によって測定される電気的特性)と、装置の異常を判定するための電気的特性(即ち、再生後に測定される電気的特性)とは、同じ種類の電気的特性であってもよいし、異なる種類の電気的特性であってもよい。例えば、粒子状物質の検出を静電容量によって行い、異常の判定を抵抗値によって行うこともできるし、また、粒子状物質の検出と異常の判定との両方を、例えば、静電容量によって行うこともできる。電気的特性が同じ場合には、粒子状物質検出装置の検出器を異常判定に流用することができるため、装置の構成を簡略化することができる。また、先に述べたように、異常の検知(判定)の内容等に応じて、電気的特性の種類を別途選択することもできる。
【0073】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、その誘電体を昇温させながら、電極部の電気的特性を測定し、測定される電気的特性の変化から、電極部の断線、接触不良及び誘電体の破損を、上述した異常判定手段によって更に検査するように構成されたものであってもよい。
【0074】
即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置は、上述したように、電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆され、その誘電体に粒子状物質が付着した場合に、電極部の電気的特性を測定することにより粒子状物質の検出を行う装置であってもよい。この場合には、誘電体を昇温させながら電極部の電気的特性を測定することにより、更に詳細な異常判定を行うことが可能となる。
【0075】
誘電体は、加熱されるとその抵抗値が低くなり、誘電体の温度変化に伴って、電極部にて測定される電気的特性が変化する。但し、粒子状物質検出装置に異常が生じていると、得られる電気的特性は、生じた不具合(異常)に応じて、特徴的な挙動を示すことがある。
【0076】
誘電体を昇温させる場合には、例えば、5〜50℃/秒の昇温速度であることが好ましく、10〜40℃/秒であることが更に好ましく、15〜35℃/秒であることが特に好ましい。例えば、昇温速度が5℃/秒未満であると、広い温度範囲にて検査を行う場合に、検査時間が長くなってしまうために好ましくない。一方、昇温速度が50℃/秒を超えると、昇温速度が速すぎて、不具合による特徴的な挙動を見逃してしまうことがある。また、昇温速度が速すぎると、熱衝撃によって粒子状物質検出装置が破損してしまうおそれもある。
【0077】
例えば、電極部が断線している場合には、誘電体を昇温しても、測定される電気的特性(例えば、静電容量や抵抗値)が変化せず、温度変化に関わらず一定の値を示すこととなる。また、例えば、誘電体にひび割れ(マイクロクラック等)が入っている場合には、誘電体が膨張して、上記マイクロクラックの間隔が広がり、測定される電気的特性が、温度の上昇に比して過剰に上昇する。これにより、より正確に異常判定を行うことができる。
【0078】
なお、このような異常判定を行う場合には、異常判定手段の検出回路の応答を10Hz以上にて行うことが好ましい。例えば、検出回路の応答が10Hz未満であると、異常が生じている場合に、各不具合(異常)に応じて生じる特徴的な挙動を見逃してしまうことがある。
【0079】
誘電体の温度を上げる場合には、例えば、粒子状物質検出装置が加熱部(例えば、ヒータ)を備えている場合には、その加熱部を用いて温度を上昇させてもよいし、粒子状物質検出装置の外部に熱源を設け、その熱源からの輻射熱によって誘電体を加熱してもよい。なお、粒子状物質検出装置の除去手段がヒータを有する場合には、そのヒータを用いて誘電体を加熱してもよい。
【0080】
また、このように誘電体を加熱する場合には、誘電体全体を均一に加熱するのではなく、例えば、部分的に誘電体を加熱してもよい。例えば、電極部を被覆する誘電体が、一方向に長い検出装置の本体(以下、「検出装置本体」ということがある)である場合には、検出装置本体の一方の端部側若しくは他方の端部側、或いは、長手方向を含む片側の面のみを加熱して、温度変化に伴う電気的特性の変化を測定してもよい。例えば、誘電体にひび割れが入っている場合には、上記したように誘電体の一部を加熱して熱膨張させることにより、マイクロクラック等のひび割れの間隔を一時的に広げることができ、測定される電気的特性の変化を顕著なものとすることで、より詳細な異常判定を行うことができる。
【0081】
更に、本実施形態の粒子状物質検出装置は、電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、この電極部の電気的特性を測定する際に、電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら電気的特性を測定可能に構成されたものであり、測定される電気的特性の推移によって、誘電体の破損を検査することができるように構成されたものであってもよい。
【0082】
例えば、誘電体にひび割れ(マイクロクラック等)が入っている場合には、特定の周波数において、電気的特性(例えば、静電容量や抵抗値)の値が大きく変化することがある。これは、誘電体が圧電効果を持つ場合に、電気機械変換によりマイクロクラックによる寸法で機械共振現象が発生し、見かけの電気的特性(例えば、静電容量)が大きく変化するためである。これにより、より正確に異常判定を行うことができる。
【0083】
なお、周波数を変化させる場合には、100〜100MHzの範囲にて周波数を変化させることが好ましく、100〜10MHzの範囲であることが更に好ましく、1k〜1MHzの範囲であることが特に好ましい。周波数を変化させる範囲が上記範囲よりも小さいと、誘電体のマイクロクラックの発見が困難になることがある。また、周波数は、実用的な観点から長くとも10秒/decとすることが好ましい。
【0084】
本実施形態の粒子状物質検出装置が、内燃機関の排気系に設置されて使用される場合には、上述した除去手段によって定期的な装置の再生を行うことが好ましく、この装置の再生に合わせて(即ち、装置の再生を行った後に)、異常判定手段による異常判定を併せて行うことが好ましい。これにより、定期的な装置の診断を行うことが可能となり、装置異常を早期に発見することができる。なお、この場合には、上述したように、初期電気的特性の測定は省略され、初期電気的特性は、予め設定された値を用いて異常判定が行われる。
【0085】
また、粒子状物質検出装置が、自動車の排気系に設置されて使用される場合には、自動車の始動開始時に、異常判定手段による異常判定が常時行われるように構成されていてもよい。このように、自動車のエンジンの始動と異常判定とを連携させることにより、粒子状物質検出装置に異常があった場合に、より早期に発見することができる。
【0086】
〔2〕本発明の粒子状物質検出装置の構成:
次に、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態について、図3A〜図3D、及び図4〜図9に示す粒子状物質検出装置を例に更に詳細に説明する。ここで、図3Aは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図であり、図3Bは、図3Aに示す粒子状物質検出装置の一方の側面を示す側面図であり、図3Cは、図3Aに示す粒子状物質検出装置の他方の側面を示す側面図であり、図3Dは、図3Aに示す粒子状物質検出装置の背面図である。また、図4は、図3BのA−A’断面を示す模式図である。また、図5は、図4のB−B’断面を示す模式図であり、図6は、図4のC−C’断面を示す模式図であり、図4は、図4のD−D’断面を示す模式図であり、図8は、図4のE−E’断面を示す模式図であり、図9は、図4のF−F’断面を示す模式図である。
【0087】
図3A〜図3D、及び図4〜図9に示す粒子状物質検出装置100aは、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔(空洞)2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極15,16と、貫通孔2を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極15,16の埋設位置よりも貫通孔2を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極11,12と、を備え、排ガス中に含まれる粒子状物質を検出するための粒子状物質検出装置100aである。上記一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12によって、粒子状物質検出装置100aの電極部21が構成され、この一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12は、配線15b,16b,11b,12bを介して取り出し端子15a,16a,11a,12aと接続されており、この取り出し端子15a,16a,11a,12aと、検出手段23(図1A参照)及び異常判定手段26(図1A参照)とが電気的に接続されている。また、この粒子状物質検出装置100aは、除去手段25として、加熱部13を有している。
【0088】
この粒子状物質検出装置は、計測電極15,16に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて、計測電極15,16の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、且つ、加熱部13によって計測電極15,16の表面に付着した粒子状物質を除去し、粒子状物質検出装置100aにて粒子状物質の検出を開始する状態とした、計測電極15,16の電気的特性を測定し、当該測定した電気的特性と、初期電気的特性との値を異常判定手段26(図1A参照)によって比較して、粒子状物質検出装置100aの異常を判定するものである。
【0089】
このようにして、例えば、計測電極の断線若しくは破損、一対の計測電極の短絡、誘電体の破損等の異常を検査することができる。このため、粒子状物質検出装置によって、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することができる。
【0090】
このような粒子状物質検出装置の検出手段及び異常判定手段によって測定される電気的特性としては、例えば、静電容量や抵抗値を挙げることができる。
【0091】
例えば、粒子状物質検出装置の異常の検査を行う場合、一対の計測電極間の電気的特性として静電容量を測定する際には、一方の計測電極に交流電圧、例えば、1Vrms,1kHzを印加し、他方の計測電極には低入力インピーダンスにて電流或いは電荷を検出する回路であるI/V変換器或いはチャージアンプを接続し、電極間の静電容量に比例する電圧として検出を行なう。更に、その検出部(異常判定手段)には、外来ノイズの影響を排除できる同期検波を用いることが好ましい。このような方法により、例えば、測定レンジ0〜100pF、分解能0.1pF程度の測定が可能である。一対の計測電極間の静電容量の測定に際しては、例えば、アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B(商品名)を用いることができる。
【0092】
上記した条件により検査を行うことによって、粒子状物質検出装置の極めて小さな異常(不具合)をも検査することができ、粒子状物質検出装置に異常が生じた場合に、早期に発見することができる。例えば、電極間の静電容量と回路抵抗による時定数を利用した時定数回路であると、誘電体の破損や、計測電極の一部欠損等の小さな不具合を発見することが困難になることがある。このような小さな不具合であっても、そのまま放置されて継続的に装置が使用されていると、重大な欠陥に発展するおそれがあり、不具合を早期に発見し、故障部分の交換や修復を速やかに行うことが好ましい。
【0093】
なお、初期電気的特性(例えば、初期静電容量)と、再生後の電気的特性(例えば、再生後の静電容量)との値を比較して、その値に差異が生じた場合には、その差異の大きさによって、粒子状物質検出装置に生じた異常の箇所を、ある程度限定、或いは特定することができる。例えば、上述した初期静電容量と再生後の静電容量との値を比較した場合の差異や、測定した静電容量の値(絶対値)に対して、異常判定を行う上での判定基準(検査基準)を設け、この判定基準に従って検査を行うことが好ましい。
【0094】
上述した判定基準は、粒子状物質検出装置の構成や性能(例えば、粒子状物質検出装置の検出範囲や検出限界等)によっても異なるが、例えば、ディーゼルエンジンの排気系に配設されたDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)の後段に設置され、このDPFから排出されたガスに粒子状物質が含まれていないかを検出するための装置(粒子状物質検出装置)の検査を行う場合には、例えば、以下のような判定基準を設けることができる。
【0095】
例えば、測定した静電容量の値が、0pFである場合には、図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aの計測電極15,16の断線或いは接触不良と判定(検査)することができる。
【0096】
即ち、この粒子状物質検出装置100aの検出装置本体1は、その少なくとも一部が誘電体によって構成されており、一対の計測電極計測電極は、検出装置本体1の貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に、所定の間隔を空けて配置されている。このため、一対の計測電極間15,16の静電容量を測定した場合には、ある一定の大きさの静電容量が測定される。仮に、一対の計測電極15,16間の静電容量を測定した場合に、測定した静電容量の値が、0pFである場合には、一対の計測電極15,16のうち、少なくとも一方の計測電極15,16が断線しているか、接触不良であるかのいずれかの異常が想定される。なお、上記した「計測電極が断線している」とは、計測電極自体が断線していることだけでなく、計測電極に対して接続されている配線、例えば、計測電極配線15b,16b(図5参照)が断線している場合も含まれる。また、「計測電極の接触不良」とは、計測電極とそれに接続された配線との接触不良のみを示すのではなく、異常判定手段から計測電極が電気的に接続される全ての区間における接触不良のことを意味する。例えば、計測電極に接続された配線と接続端子との接触不良も、上記計測電極の接触不良に含まれる。
【0097】
なお、計測電極に接続された配線が、その途中で断線した場合に、例えば、断線の位置によっては、微弱な静電容量が検出されることもある。例えば、上述したように測定した静電容量の値が0pFである場合には、電極が完全に断線していると判定を行うことができるが、例えば、初期静電容量よりも明らかに静電容量が低下しているが、極めて微弱な静電容量が検出された場合には、異常の判定(即ち、類型の選択)が難しくなることがある。このため、このような断線等の判定を行う場合には、閾値を0.5pF程度に設定し、外乱或いは再生のばらつき等の影響以上の変化として静電容量を検出することで、装置異常を良好に判定することができる。なお、例えば、上述したように静電容量の値が0pFである場合は、配線等による影響が検出されていないため、電気的特性を測定する検出器周辺での配線の断線や接触不良が疑われる。
【0098】
また、上記した「再生のばらつき」とは、除去手段によって粒子状物質を除去した場合に、完全に粒子状物質を除去することができず、極めて微量ではあるが電極部に粒子状物質が残留することがあり、残留した粒子状物質による測定値に与える僅かな影響のことをいう。但し、外乱や再生のばらつきによる測定値への影響は極めて僅かであり、上述のように閾値を設定することで、正確は異常判定を行うこともできるし、初期値(初期電気的特性)との変化が顕著な場合には、特別に閾値を設定しなくとも、異常の判定を行うことができる。
【0099】
また、例えば、粒子状物質検出装置の構成によっても異なるが、初期静電容量と、測定した静電容量との値を比較して、その差が0.5pF以上である場合には、計測電極の破損、一対の計測電極の短絡、及び誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常と判定(検査)することができる。
【0100】
上述したように、一対の計測電極間の静電容量を測定した場合には、ある一定の大きさの静電容量が測定されるが、この静電容量の値が、初期静電容量の値よりも大きくなった場合には、計測電極又は誘電体に何らかの異常が生じている可能性が極めて大きい。
【0101】
具体的には、計測電極の破損、例えば、計測電極の一部が欠損している場合には、欠損した距離に応じて静電容量の減少が測定される。等間隔に電極が配置された場合には、例えば、半分の距離で欠損が発生すると、初期値(初期静電容量)の約半分の静電容量が測定されることとなる。この関係から検出できる欠損の最小値は、外来ノイズや再生ばらつきによる静電容量の分布に制限されるものとなる。
【0102】
また、一対の計測電極の短絡している場合には、短絡したインピーダンスに応じて計測電極に通常の粒子状物質の付着ではありえないような、極めて大きな電流或いは電荷が測定されることとなる。
【0103】
更に、誘電体が破損、例えば、誘電体にひび割れが入っていたり、誘電体の一部が欠損している場合には、誘電率の減少に伴い、静電容量が減少することとなる。例えば、誘電体としてアルミナを利用した場合、アルミナの誘電率は8.5であるため、全ての誘電体が欠損した場合には、初期値の8.5分の1に減少する。
【0104】
以上説明したような異常の特性に併せて、異常判定手段による判定基準を設け、その判定基準に従って異常判定を行うことによって、より正確な異常判定を行うことができる。
【0105】
また、このような粒子状物質検出装置においても、粒子状物質検出装置を構成する誘電体(具体的には、検出装置本体)を昇温させながら、一対の計測電極間の静電容量を測定し、測定される静電容量の変化から、計測電極の断線や誘電体の破損等を検査するものであってもよいし、一対の計測電極間の静電容量を測定する際に、一対の計測電極間に印加する電圧の周波数を変化させながら静電容量を測定し、測定される静電容量の推移によって、誘電体の破損を検査するものであってもよい。
【0106】
また、初期静電容量は、粒子状物質検出装置に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて測定される静電容量であるが、同一の構成の粒子状物質検出装置が大量に生産される場合には、統一した初期静電容量を予め設定することもできる。即ち、例えば、初期静電容量の値が予め分かっている場合には、初期静電容量を測定する工程を省略し、異常判定手段に設定させておき、予め設定された初期静電容量と、再生後の静電容量とを比較して異常判定を行うものであってもよい。なお、これまでの説明においては、電気的特性として静電容量を採用した場合の例について説明したが、装置の異常判定を行うことが可能な電気的特性であれば、電気的特性の種類については特に制限はなく、例えば、抵抗値、誘電体損失等であってもよい。
【0107】
〔2−1〕粒子状物質検出装置の各構成要素について:
次に、図3A〜図3D、及び図4〜図9に示す粒子状物質検出装置の各構成要素について更に詳細に説明する。
【0108】
図3A〜図3D、及び図4〜図9に示す粒子状物質検出装置100aは、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔(空洞)2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極15,16と、貫通孔2を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極15,16の埋設位置よりも貫通孔2を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極11,12と、を備えるものである。一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12が電極部として構成される。
【0109】
この粒子状物質検出装置100aは、一対の計測電極15,16からそれぞれ検出装置本体1の他方の端部1bに向かって延びる一対の計測電極配線15b,16bを更に備えており、また、一対の計測電極15,16は、一対をなすそれぞれが複数に分岐(例えば、図7に示すように、櫛歯状に分岐)をして、複数の対向部分を有している。
【0110】
そして、粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、一対の集塵電極11,12に電圧を印加することにより荷電された、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能なものである。更に、貫通孔2を形成する壁の電気的特性の変化を、上記一対の計測電極15,16によって測定することにより、貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能である。これにより、本実施形態の粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に排ガス等を通過させて、排ガス中に含有される粒子状物質を検出することができる。
【0111】
この粒子状物質検出装置100aは、DPF等の下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔2内に流入した粒子状物質を測定し、この測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質の量を概算することができる。これにより、微量の粒子状物質の測定を行うことが可能となる。
【0112】
また、粒子状物質検出装置100aは、上述したように排ガスの全量を測定するものではないため、粒子状物質検出装置100aを小型化することができ、狭いスペースに設置することが可能となる。
【0113】
また、DPF等の下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(即ち、排ガスに含まれる粒子状物質)の一部だけを貫通孔2内に導入するため、貫通孔2内の粒子状物質を効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることができる。
【0114】
また、検出装置本体1が一方向に長く形成され、その一方の端部1aに、貫通孔2が形成されるとともに、一対の集塵電極11,12及び一対の計測電極15,16が配設(埋設)されるため、貫通孔2及び各電極(例えば、集塵電極11や一対の計測電極15,16)を高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部1b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、各電極の取り出し端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度が高く、且つ安定した測定を行うことができる。
【0115】
なお、粒子状物質検出装置に用いられる検出装置本体1には、上記貫通孔2が少なくとも一つ形成されている必要があり、二つ以上であってもよい。また、検出装置本体1が誘電体から形成されることにより、一対の集塵電極11,12や、各種の配線11b,13b,15b,16bがそれぞれ誘電体で覆われた状態となっている。
【0116】
また、上記一対の計測電極15,16は、少なくとも一対備えることが必要であり、二対以上であってもよい。なお、図4においては、一対の計測電極15,16が、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面に配設された場合の例を示しているが、貫通孔2を形成する一方の壁の内部に埋設されていてもよい。
【0117】
また、一対の計測電極の形状については特に制限はなく、粒子状物質を貫通孔の壁に吸着させた際に、その壁の電気的な特性の変化を測定することができるように配置された一対の電極であればよい。なお、図7に示すように、一対の計測電極15,16は、線状を呈し、貫通孔2の壁の内側面又はその内部に長く対向しているものであることが好ましく、更に、線状を呈する一対の計測電極15,16は、一対をなすそれぞれが複数に分岐(例えば、図7に示すように、櫛歯状に分岐)をして、複数の対向部分を有するものであることが好ましい(例えば、上記櫛歯状の部分を所定の間隔を空けて噛み合わせるように対向配置されたものであることが好ましい)。このように構成することによって、一対の計測電極15,16の対向配置された部分を長く(広く)とることができ、より正確な測定値を得ることができる。
【0118】
なお、粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内を通過する粒子状物質が、ディーゼルエンジンより排出される煤であるときに、特にその効果を発揮させることができる。
【0119】
〔2−1a〕検出装置本体:
検出装置本体は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長く構成された、粒子状物質検出装置の基体となる部位である。検出装置本体は誘電体から構成されており、この貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部には少なくとも一対の集塵電極が配置されており、この一対の集塵電極に電圧を印加することにより貫通孔内に電界を発生させることができる。
【0120】
検出装置本体を構成する誘電体は、例えば、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。中でも、アルミナを好適に用いることができる。このような誘電体からなる検出装置本体の内部に集塵電極を埋設することにより、誘電体に覆われた集塵電極を形成することが可能となる。そして、粒子状物質検出装置が、優れた耐熱性、耐絶縁破壊特性等を有するものとなる。ここで、「誘電体」とは、導電性よりも誘電性が優位である物質で、直流電圧に対して絶縁体として振舞う物質のことをいう。
【0121】
なお、「検出装置本体の一方の端部」というときは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の50%の長さに相当する位置までの範囲をいう。また、「検出装置本体の他方の端部」というときは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の50%の長さに相当する位置までの範囲をいう。なお、検出装置本体の一方の端部は、好ましくは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の40%の長さに相当する位置までの範囲であり、更に好ましくは、30%の長さに相当する範囲である。また、検出装置本体の他方の端部は、好ましくは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の40%の長さに相当する位置までの範囲であり、更に好ましくは、30%の長さに相当する範囲である。検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置とは、検出装置本体1から、上記一方の端部1aと他方の端部1bの範囲を除いた部分ということになる(図3A〜図3C参照)。
【0122】
図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aにおいて、検出装置本体1は、一方向に長く形成され、その長手方向の長さは、特に限定されないが、排ガス配管に挿入したときに排ガス中の粒子状物質を効率よくサンプリングできる長さであることが好ましい。
【0123】
また、検出装置本体1の厚さ(「検出装置本体の長手方向」及び「ガスの流通方向」の両方に垂直な方向(厚さ方向)における長さ)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜3mm程度が好ましい。ここで、「検出装置本体1の厚さ」というときは、上記厚さ方向において最も厚い部分の厚さをいう。また、検出装置本体1の、貫通孔2にガスが流通するときの流通方向における長さ(ガス流通方向の長さ)は、特に限定されないが、例えば、2〜20mm程度が好ましい。そして、検出装置本体1の長手方向長さは、検出装置本体1の厚さの10〜100倍であることが好ましく、検出装置本体1のガス流通方向の長さの3〜100倍であることが好ましい。
【0124】
検出装置本体1の形状は、図3A〜図3Dに示すように、長手方向に直行する断面形状が長方形の板状であってもよいし、図示は省略するが、当該断面形状が円形、楕円形等の棒状であってもよい。また、一方向に長い形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0125】
粒子状物質検出装置100aにおいて、貫通孔2の形状、及び大きさは特に限定されず、排ガスを通過させ、粒子状物質の量を測定できるものであればよい。例えば、貫通孔2の、検出装置本体の長手方向における長さは、2〜20mm程度が好ましく、貫通孔2の、集塵電極11,12で挟まれる部分の幅(検出装置本体の長手方向、及びガスの流通方向の両方に垂直な方向における長さ)は、3〜30mm程度が好ましい。
【0126】
貫通孔2の大きさを上記範囲とすることにより、粒子状物質を含む排ガスを貫通孔2内に十分に流通させることができ、更に、集塵電極11,12で発生する電界が貫通孔2内に粒子状物質を効果的に吸着させることが可能となる。
【0127】
また、貫通孔2の形状としては、貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることが好ましい。貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることにより、より効率的に配管内を流通する排ガス等を粒子状物質検出装置の貫通孔内に流入(入口部分が拡開された場合)させることや、流出(出口部分が拡開された場合)させることが可能となる。
【0128】
また、このような粒子状物質検出装置は、検出装置本体1が、複数のテープ状セラミック(セラミックシート)が積層されてなるものであることが好ましい。これにより、複数のテープ状セラミックを、それぞれの間に各電極、配線等を挟みながら積層して粒子状物質検出装置を作製することができるため、粒子状物質検出装置を効率的に製造することが可能となる。
【0129】
〔2−1b〕計測電極(電極部):
計測電極は、貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に少なくとも一対配置されたものであり、集塵電極によって貫通孔の壁面に粒子状物質を電気的に吸着させることにより生じる、貫通孔を形成する壁の電気的特性の変化に基づいて、排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を検出するための電極である。そして、図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aにおいては、この一対の計測電極15,16に付着した粒子状物質を除去した後に電気的特性を測定し、測定された電気的特性と、装置の初期に測定された初期電気的特性とを比較することによって、装置の異常判定を行うことができる。
【0130】
計測電極の形状については、上述したように貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することが可能なものであれば特に制限はないが、図7に示すような櫛歯状に分岐した形状を好適例として挙げることができる。このように構成することによって、より正確な測定を行うことができる。
【0131】
計測電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、計測電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0132】
この計測電極には、それぞれ検出装置本体の他方の端部に向かって延びる一対の計測電極配線が電気的に接続されている。それぞれの計測電極配線の幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、計測電極配線の厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、計測電極配線の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0133】
また、図3A〜図3Dに示すように、粒子状物質検出装置100aの一対の計測電極15,16は、検出装置本体1の他方の端部1bに、それぞれの電極の取り出し端子15a,16aを有している。異常判定を行う場合の電気的特性の測定についても、この取り出し端子15a,16aによって行うことができる。即ち、この取り出し端子15a,16aが、粒子状物質の検出を行うための検出手段23(図1A参照)と、異常判定を行うための異常判定手段26(図1A参照)とにそれぞれ電気的に接続されている。
【0134】
一対の計測電極15,16の取り出し端子15a,16aを、検出装置本体1の他方の端部1bに配設することにより、貫通孔2が配設される部分(即ち、一方の端部1a)と取り出し端子15a,16aとの間隔を大きくとることができるため、貫通孔2等が配設される一方の端部1aだけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、取り出し端子15a,16aが配設されている他方の端部1b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。取り出し端子15a,16aを高温にすると、粒子状物質の検出精度が低下し、安定した検出が行い難くなることがあったり、長期にわたって使用した場合に電気端子と外部に接続するためのハーネスとの接点不良が発生し測定不能になったりすることがあるため、取り出し端子15a,16aを配管の外に出し、高温に曝されない状態とすることにより、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0135】
検出装置本体1の他方の端部1bに配設された取り出し端子15a,16aは、図3Bに示すように、検出装置本体1の他方の端部1bの側面に、長手方向に延びるように配置されていることが好ましい。なお、図3Bにおいては、検出装置本体1の他方の端部1bは、幅が狭くなっているが、他方の端部1bの幅は、このように狭くなっていてもよいし、狭くなっていなくてもよい。取り出し端子15a,16aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.1〜2.0mm、長さ0.5〜20mmの帯状であることが好ましい。取り出し端子15a,16aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)等を挙げることができる。
【0136】
〔2−1c〕集塵電極(電極部):
集塵電極は、貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、上記一対の計測電極の埋設位置よりも貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、検出装置本体を構成する誘電体で覆われた電極である。このような集塵電極11,12間に所定の電圧を印加することにより、貫通孔2内に電界を発生させることができる。
【0137】
集塵電極は、貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、貫通孔2内に電界を発生させることができるものであれば、その形状については特に制限はない。本実施形態の粒子状物質検出装置においては、集塵電極の一方の電極が、図5に示すように、上記計測電極15,16が配置された壁と貫通孔2を隔てて反対側の壁の内部に配置された(図4参照)、高電圧が印加される高電圧集塵電極11であり、また、集塵電極の他方の電極が、図8に示すように、上記計測電極15,16が配置された壁と同一側の壁の内部に配置された(図4参照)、接地された接地集塵電極12である。それぞれの集塵電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、集塵電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0138】
集塵電極11,12の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、貫通孔2内に電界を発生させることが可能であればよい。例えば、形状としては、長方形、円形、長円形等を挙げることができる。また、集塵電極11,12の大きさは、例えば、貫通孔2の、側面から見たときの面積の70%以上であることが好ましい。
【0139】
例えば、図5においては、高電圧集塵電極11が、貫通孔と略同じ大きさに形成された場合の例を示している。この高電圧集塵電極11には、検出装置本体1の長手方向に延びる配線11bが接続されており、配線11bが、その先端(電極11に接続されていない側の先端)部分で、図3Bに示す取り出し端子11aに層間接続(ビア接続)されている。配線11bの幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、配線11bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、配線11bの材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0140】
なお、一対の集塵電極の両方の取り出し端子を、検出装置本体の他方の端部に配設してもよいが、図3A〜図3Dに示すように、接地された集塵電極(接地集塵電極12)の取り出し端子12aを検出装置本体1の他方の端部1bに配設し、高電圧集塵電極11の取り出し端子11aを、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設することが好ましい。これにより、接地集塵電極12の取り出し端子12aと、高電圧集塵電極11の取り出し端子11aとを、間隔を開けて配設することができる。このため、一対の集塵電極11,12間に電圧を印加するために、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間に電圧を印加したときに、検出装置本体1の表面に沿面放電が生じることを有効に防止することができる。
【0141】
粒子状物質検出装置100aにおいては、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間の距離が、5〜100mmであることが好ましく、10〜70mmであることが更に好ましい。5mmより短いと沿面放電による短絡がし易くなることがある。一方、100mmより長いと、取り出し端子11aが配管の外に位置するように、粒子状物質検出装置100aの検出装置本体1を配管等に装着したときに、検出装置本体1の配管の外側に突き出る部分が長くなりすぎ、検出装置本体1を狭い空間に取り付けることが難しくなることがある。
【0142】
また、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設した取り出し端子11aと、貫通孔2との間の距離は、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。10mmより短いと、粒子状物質検出装置100aを、貫通孔2の部分が配管内に挿入されるように、配管に装着したときに、配管内を流通する高温の排ガスの熱が取り出し端子11aに影響を及ぼし易くなることがある。
【0143】
高電圧集塵電極11の取り出し端子11aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.5〜3mm、長さ0.5〜3mmの四角形等の多角形状であることが好ましいが、円形、楕円形、レーストラック形状、その他の形状等であってもよい。取り出し端子11aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0144】
高電圧集塵電極11と貫通孔2との間の距離、及び接地集塵電極12と貫通孔2との間の距離は、50〜500μmであることが好ましく、100〜300μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に貫通孔内に電界を生じさせることができる。各集塵電極11,12と、貫通孔2との間の距離は、各集塵電極11,12を覆う誘電体の、貫通孔2に面する部分の厚さということになる。
【0145】
集塵電極により発生する電界の条件としては、ギャップ(一対の集塵電極相互間の距離)、ガス温度によって変わるが50〜200kV/cmが好ましい。
【0146】
粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に流入する流体(即ち、排ガス)に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させ、粒子状物質を吸着させたことによる電気的特性の変化を読み取り、排ガス中に含まれる粒子状物質を検出するものである。排ガス中の粒子状物質が、貫通孔2内に流入する前から既に荷電されている場合には、貫通孔2内に発生させた電界によって粒子状物質を吸着させる。一方、粒子状物質が荷電されていない場合には、貫通孔2内に発生させた電界によって粒子状物質を荷電し、貫通孔2の壁面に荷電した粒子状物質を電気的に吸着させる。
【0147】
〔2−1d〕検出手段:
検出手段は、電極部の電気的特性を検出するためのものである。具体的には、例えば、測定する電気的特性が静電容量である場合には、アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B等を用いることができる。
【0148】
図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aにおいては、計測電極15,16の取り出し端子15a,16aと、検出手段23(図1A参照)とが電気的に接続されており、計測電極15,16の電気的特性を検出することができるように構成されている。
【0149】
〔2−1e〕加熱部(除去手段):
図4及び図9に示す粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2の壁面(検出装置本体1の側面に並行する壁面)に沿うようにして検出装置本体1の内部に配設(埋設)された加熱部13を備えている。加熱部13は、本発明における除去手段25であり、加熱部13によって装置を加熱することにより、貫通孔2を形成する壁に吸着された粒子状物質を加熱酸化させることができる(即ち、装置を再生することができる)。また、粒子状物質の質量測定時等において、貫通孔2の内部空間を所望の温度に調節し、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調を行うことができる。また、この加熱部13を利用して、検出装置本体1、即ち、誘電体の温度を変化させることができ、誘電体の温度と、一対の計測電極間の静電容量との関係を検査することもできる。
【0150】
加熱部13は、幅広のフィルム状であってもよいが、図9に示すように、線状の金属材料を、波状に配置し、先端部分でU−ターンするように配置したものであることが好ましい。このような形状にすることにより、貫通孔内部を均一に過熱し、電極部21(測定電極15,16)に付着した粒子状物質を除去することができる。加熱部13の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。加熱部13は、貫通孔2の壁面に沿うようにして検出装置本体1の内部に埋設されることが好ましいが、図9に示すように、貫通孔2が配置されている位置だけでなく、更に検出装置本体1の他方の端部1b側に延びるように形成されていてもよい。これにより、貫通孔内部と貫通孔付近との温度差を小さくでき、急加熱しても素子(検出装置本体)の破損が起きにくいという利点がある。加熱部により、貫通孔の内部空間の温度を650℃まで上昇できることが好ましい。
【0151】
また、図9においては、二本の配線によって二つの加熱部13が形成された場合の例を示しているが、加熱部は一つであってもよいし、三つ以上の複数であってもよい。また、図示は省略するが、貫通孔が形成される両側の壁に、それぞれ加熱部が配置されていてもよい。即ち、加熱部の配置及び数は、捕集した粒子状物質の酸化除去や、温度調節等の目的を達成するために必要な配置及び数とすることができる。
【0152】
また、図9に示す加熱部13は、配線13bに接続され、それぞれの配線13bは、図3Dに示すように、各取り出し端子13aに層間接続されている。加熱部13の取り出し端子13aも、計測電極15,16の取り出し端子15a,16aの場合と同様に、検出装置本体1の一方の端部1a側が加熱されたときの熱の影響を回避するために、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されることが好ましい。図3Dにおいては、四つの取り出し端子13aが、検出装置本体1の他方の側面側に、四本が並ぶように配置されているが、取り出し端子13aの配置は、このような配置に限定されるものではない。
【0153】
〔2−1f〕異常判定手段:
異常判定手段は、初期電気的特性と、再生後に測定される電気的特性とを比較して、粒子状物質検出装置の異常を判定するものである。具体的には、再生後に電気的特性を測定する測定部と、異常を判定するための判定部とから構成されたものを挙げることができる。
【0154】
再生後の電気的特性を測定する測定部は、上述した検出手段の検出部と同様に構成されたものを用いることができる。即ち、検出手段の検出部を流用して電気的特性の測定を行うことができる。例えば、測定する電気的特性が静電容量である場合には、アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B等を用いることができる。
【0155】
また、異常を判定するための判定部としては、初期電気的特性の値と、再生後に測定される電気的特性の値との差異(変化量)を算出し、この変化量に応じて、予め設定された異常の類型から、適合する異常を選択する演算処理を行う集積回路、及び、選択された異常を表示するディスプレイ等の表示部を有するものを挙げることができる。
【0156】
〔3〕粒子状物質検出装置の検査方法:
次に、本発明の粒子状物質検出装置の検査方法の一の実施形態について説明する。本実施形態の粒子状物質検出装置の検査方法は、これまでに説明した、本実施形態の粒子状物質検出装置において行われた、装置の異常判定を行うことによって、粒子状物質検出装置の異常を検査する検査方法である。
【0157】
即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置の検査方法は、図1A及び図1Bに示すような、内燃機関30の排気系31に設けられた電極部21と、この電極部21の電気的特性を検出する検出手段23とを備え、電極部21に粒子状物質36が付着することによる電気的特性の変化に基づいて、排気系31を通過する排ガス32に含まれる粒子状物質36を検出する粒子状物質検出装置100の異常を検査するための粒子状物質検出装置の検査方法である。
【0158】
本実施形態の粒子状物質検出装置の検査方法は、電極部21に粒子状物質36が付着していない使用初期の状態にて、電極部21の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、且つ、図1Bに示すように、排ガス32が通過する流路(排気系31)の内部に設置された粒子状物質検出装置100の電極部21に付着した粒子状物質36を除去し、粒子状物質検出装置100にて粒子状物質の検査を開始する状態とした、電極部21の電気的特性を測定し、当該測定した電気的特性と、上記初期電気的特性との値を比較して、粒子状物質検出装置100の異常を判定する粒子状物質検出装置の検査方法である。
【0159】
なお、粒子状物質の検出は、検出手段23によって行われ、粒子状物質の除去(再生)は、除去手段25によって行われ、異常の判定は、異常判定手段26によって行われる。
【0160】
このように構成することによって、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することができる。例えば、排ガス処理装置が正常に機能している場合には、何ら検出に関する信号を受信しない検出装置、或いは、「検出せず」との信号を受信する場合であっても極めて小さく、検出された場合において、初めて検出されたことが認識されるような検出装置において、現時点で正常な測定が行われているか否かの確認を行うことができる。このため、粒子状物質検出装置のゼロ点の確認を簡便に行うことができるとともに、検出装置の破損等の不具合(異常)も確認することができる。
【0161】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置の検査方法は、得られた電気的特性の値によって、不具合が生じた箇所や不具合の内容を限定或いは特定することができるため、不具合が生じた場合に、故障部分の交換や修復等の作業を簡便且つ迅速に行うことができる。
【0162】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置の検査方法(以下、単に「検査方法」ということがある)は、上述したように、粒子状物質検出装置として、装置に付着した粒子状物質を除去する除去手段を更に備えたものを用いることが好ましい。なお、このような除去手段として、例えば、装置内部を加熱するヒータを用いることができる。なお、本実施形態の検査方法においては、粒子状物質検出装置に除去手段を設けるのではなく、別途、粒子状物質を除去する除去手段を用いて異常判定を行うことも勿論可能である。
【0163】
また、本実施形態の検査方法は、電気的特性として、静電容量又は抵抗値を測定することが好ましい。このように構成することによって、粒子状物質の検出と、異常判定とを同じ種類の電気的特性(即ち、静電容量又は抵抗値)によって実施することができ、異常判定をより簡便に行うことができる。
【0164】
また、本実施形態の検査方法においては、検査対象となる粒子状物質検出装置が、初期電気的特性としての初期静電容量が、0〜100pFの範囲となるように構成された粒子状物質検出装置であることが好ましい。上述したような構成の粒子状物質検出装置は、従来、その異常の判定を行うことが極めて困難であったが、本実施形態の検査方法を用いることによって、正確且つ簡便に異常判定を行うことができる。
【0165】
また、本実施形態の検査方法は、上述した本実施形態の粒子状物質検出装置と同様の判定基準を設け、種々の異常を検査することができる。例えば、異常判定を行う粒子状物質検出装置の構成によっても異なるが、異常を判断する際に比較する電気的特性が静電容量であり、測定した静電容量の値が、0pFである場合には、電極部の断線或いは接触不良と判定することができ、また、同様に、異常を判断する際に比較する電気的特性が静電容量であり、初期電気的特性としての初期静電容量と、測定した静電容量(再生後の電気的特性)との値を比較して、その差が0.5pF以上である場合に、電極部の破損、電極部が一対の電極部である場合には、一対の電極部の短絡、及び電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されている場合には、誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常と判定することができる。このように、本実施形態の検査方法は、得られた電気的特性の値から、異常の種類や、粒子状物質検出装置に生じた異常の箇所を、ある程度限定、或いは特定することができる。
【0166】
また、本実施形態の検査方法においては、粒子状物質検出装置として、電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものを用い、その誘電体を昇温させながら、電極部の電気的特性を測定し、測定される電気的特性の変化から、電極部の断線、接触不良及び誘電体の破損を更に検査するものであってもよい。即ち、電気的特性の測定時において、誘電体を昇温させながら測定を行うことによって、更に詳細な異常判定を行うことができる。例えば、誘電体の温度変化に対して、測定される電気的特性が変化しない場合には、電極部の断線、又は接触不良と判断することができる。
【0167】
また、本実施形態の検査方法においては、電極部の電気的特性を測定する際に、電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら電気的特性を測定し、測定される電気的特性の推移によって、誘電体の破損を検査するものであってもよい。
【0168】
上述した、誘電体を昇温することや、電圧の周波数を変化させることは、例えば、通常の電気的特性の測定では出現しないような、特定の異常に起因する電気的特性の変化や、極めて小さな異常であって、通常の電気的特性の測定では、その差異の判断が難しい場合において、特定の異常に起因する電気的特性の変化を意図的に大きくすることができ、より詳細且つ広域の異常判定を行うことが可能となる。
【0169】
本実施形態の検査方法においても、初期静電容量の測定に変えて、粒子状物質検出装置の構成に適した初期電気的特性を予め設定し、設定された初期電気的特性と、測定した電気的特性との値を比較して、粒子状物質検出装置の異常を検査してもよい。即ち、初期電気的特性は、異常判定を行う判定基準であるため、装置の構成により特有の値を有している。このため、同一の構成の粒子状物質検出装置が複数製造される場合等は、予め初期電気的特性が判明しているため、各装置において初期電気的特性の測定を行わず、予め判明している初期電気的特性の値を用いて異常判定を行ってもよい。
【0170】
また、本実施形態の検査方法は、例えば、粒子状物質検出装置として、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備え、電極部が、貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極の埋設位置よりも貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有するものを用いることが好ましい。このような粒子状物質検出装置としては、例えば、図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aを挙げることができる。
【0171】
図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aが検査対象である場合には、初期電気的特性と、測定した電気的特性との値を比較して、計測電極15,16の断線、接触不良若しくは破損、一対の計測電極15,16の短絡、及び誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常を検査することができる。
【0172】
なお、本実施形態の検査方法は、電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて測定される電気的特性を、基準となる初期電気的特性とするとともに、検査対象の粒子状物質検出装置の電極部に付着した粒子状物質を除去した後(装置を再生した後)に、その電極部の電気的特性を測定して、測定された電気的特性と、上記初期電気的特性とを比較して、装置の異常を判定する工程を備えた検査方法であれば、電気的特性の種類やその測定方法等については、これまでに説明したものに限定されることはない。また、異常判定の方法については、本実施形態の粒子状物質検出装置にて説明した異常判定方法を用いて異常の判定を行うことができる。
【実施例】
【0173】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0174】
(粒子状物質検出装置の作製)
本発明の粒子状物質検出装置の検査方法を行うための検査対象として、図3A〜図3D、及び図4〜図9に示すような粒子状物質検出装置100aを作製した。
【0175】
具体的には、まず、アルミナを誘電体原料として使用し、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエートを使用し、分散媒として有機溶剤(キシレン、ブタノール=6:4(質量比))を使用し、これらをアルミナ製ポットに入れて混合し、グリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、アルミナ100質量部に対して、バインダー7質量部、可塑剤3.5質量部、分散剤1.5質量部、有機溶剤100質量部とした。
【0176】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度4Pa・sとなるように調製した。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した。
【0177】
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をドクターブレード法を用いてシート状に成形加工した。このとき、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、切断部形成グリーンシートも作製した。グリーンシートの厚さは、計測電極が配置されるグリーンシートを50μmとし、それ以外のグリーンシートを250μmとした。
【0178】
得られたグリーンシートの表面に、図4〜図9に示されるような、各電極(計測電極、及び集塵電極)、加熱部(除去手段)、各配線、及び各取り出し端子を形成した。配設する各電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0179】
また、加熱部を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0180】
このようにして形成した導体ペーストを、グリーンシートの表面にスクリーン印刷を用いて印刷して、所定の形状の電極等を形成した。具体的には、複数のグリーンシートのなかの二つのグリーンシートについて、それぞれの一方の面に集塵電極を配設し、高電圧集塵電極については他方の端部に向かって延びる配線を配設して、集塵電極配設グリーンシートを二つ形成した。
【0181】
更に、厚さ50μmのグリーンシートについて、貫通孔を形成する部位に、櫛歯状の一対の計測電極を形成した。櫛歯状の一対の計測電極は、櫛歯部分の線間ピッチが0.35mm(櫛歯部分のクリアランスが0.15mm、各櫛歯部分の幅が0.20mm)となるように間隔を空けて噛み合うように対向配置した。
【0182】
更に、他の一つのグリーンシートについて、計測電極配設グリーンシートと重ねたときに計測電極と重なる位置に貫通孔となる切断部を形成して切断部形成グリーンシートを形成した。更に、別の他の一つのグリーンシートについて、切断部形成グリーンシートと重ねたときに貫通孔となる切断部と重なる位置に加熱部を形成し、加熱部から他方の端部に向かって延びる配線を配設して加熱部形成グリーンシートを形成した。
【0183】
そして、二つの集塵電極配設グリーンシートのそれぞれに、他の電極等が配設されていないグリーンシートを重ねて集塵電極及び配線をグリーンシートで覆った状態として、集塵電極埋設グリーンシートとするとともに、二つの集塵電極埋設グリーンシートで計測電極配設グリーンシート及び切断部形成グリーンシートを挟むように積層し、更に、加熱部形成グリーンシートを集塵電極埋設グリーンシートの外側に位置するように積層し、二つの集塵電極で切断部を挟み且つ二つの配線で計測電極を挟んだ状態のグリーンシート積層体を形成した。各配線と、各配線に対応する取り出し端子とは、導体ペーストの埋め込み方法により、層間接続(ビア接続)した。
【0184】
グリーンシートの積層は、グリーンシートを加熱可能な一軸プレス機を用いて加圧積層し、グリーンシート積層体からなる粒子状物質検出装置の未焼成体を得た。
【0185】
得られた、グリーンシート積層体(粒子状物質検出装置の未焼成体)を120℃で乾燥し、1500℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製した。粒子状物質検出装置の取り出し端子には、検出手段及び異常判定手段としてのLCRメータ(アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B)に配線を用いて電気的に接続した。このように作製された粒子状物質検出装置を、検出装置(1)とした。
【0186】
なお、検出装置(1)における異常判定手段の判定基準として、以下の(a)〜(c)の判定基準を設定し、異常判定手段によって、適合する異常を選択し、異常の判定を行った。
(a):初期電気的特性としての初期静電容量と、測定した静電容量との値を比較して、その差が0.5pF未満である場合には、異常なしと判定する。
(b):測定した静電容量の値が、0pFである場合には、電極部の断線或いは接触不良と判定する。
(c):初期電気的特性としての初期静電容量と、測定した静電容量との値を比較して、その差が0.5pF以上である場合には、電極部の破損、一対の電極部の短絡、及び誘電体の破損のうちの少なくとも一種の異常と判定する(但し、差が1000pF以上の場合には、一対の電極部の短絡とする)。
【0187】
また、粒子状物質検出装置として、上記の粒子状物質検出装置の他に、測定電極を断線させた検出装置(2)、一対の測定電極を短絡させた検出装置(3)、誘電体に衝撃を加えて割れを生じさせた検出装置(4)、検出装置(電極部、具体的には計測電極)と検出手段(具体的には、検出手段を構成する回路)間の配線を断線させた検出装置(5)を作製した。
【0188】
(実施例1)
上記した検出装置(1)に対して、異常判定手段によって異常の判定を行った。具体的には、まず、検出装置(1)の初期静電容量を、1Vrms,1kHzの条件にて測定した。測定された初期静電容量は、6.5pFであった。
【0189】
次に、ディーゼルエンジンの排気系にディーゼルパティキュレートフィルタを配設し、更にその下流側に、上記検出装置(1)を設置して粒子状物質の検出を行った。検出装置(1)を1時間使用した後、検出装置(1)に付着した粒子状物質を除去し、検出装置(1)にて粒子状物質の検査を開始する状態に再生した後、一対の計測電極間の静電容量を再度測定した。測定された静電容量は、6.5pFであった。
【0190】
初期静電容量と測定された静電容量とが同じ値であるため、異常判定手段の判定基準において、上記(a)に適合し、検出装置(1)には異常が生じていないと判定された。また、検出装置(1)を排気系から取り出し、装置の状態を詳細に確認したところ、取り出した装置は、正常の機能を有しており、異常は確認されなかった。
【0191】
(実施例2)
上記検出装置(2)を、実施例1と同様の方法にて、ディーゼルエンジンの排気系に設置し、粒子状物質の検出を行い、更に、装置を再生した後に、一対の計測電極間の静電容量を再度測定した。測定された静電容量は、3pFであった。なお、検出装置(2)は、意図的に異常を生じさせたこと以外は、検出装置(1)と同様に構成されているため、初期静電容量は、実施例1と同様に6.5pFとした。
【0192】
初期静電容量と測定された静電容量との値を比較すると、2.5pFの減少がみられ0.5pF以上の変化があるため異常(判定基準(b))と判定された。0.5pF以上の変化の場合は、電極部の破損、短絡、誘電体の破損のうちのいずれかの異常が想定されるが、短絡の場合は、測定された静電容量が極めて大きく(例えば、1000pF以上)となるため、電極部の破損として、測定電極を断線が異常して挙げられる。
【0193】
(実施例3〜5)
上記検出装置(3)〜(5)についても、実施例1と同様の方法にて、ディーゼルエンジンの排気系に設置し、粒子状物質の検出を行い、更に、装置を再生した後に、一対の計測電極間の静電容量を再度測定した。検出装置(3)では、測定された静電容量を1000pF以上であり、検出装置(4)では、測定された静電容量を5.5pFであり、検出装置(5)では、測定された静電容量を0pFであった。
【0194】
検出装置(3)は、初期静電容量の6.5pFに対して、測定された静電容量を1000pF以上であり、測定電極を短絡の異常(判定基準(c)の但し書)が発生していると判定された。
【0195】
また、検出装置(4)は、初期静電容量の6.5pFに対して、1.0pFの減少がみられ0.5pF以上の変化があるため異常(判定基準(c))と判定された。
【0196】
また、検出装置(5)は、測定された静電容量を0pFであり、再生後の静電容量が測定されなかったため、判定基準(b)の異常、即ち、電極部の断線或いは接触不良と判定された。検出装置(5)においては、静電容量が全く測定されなったため、計測電極から検出手段及び異常判定手段までの間の配線の断線が予想される。
【0197】
(結果)
本発明の粒子状物質検出装置は、初期静電容量の値と、測定された静電容量の値とから、装置の異常を判定することができた。特に、装置に応じた判定基準を設けることによって、実施例2〜5に示すように、異常が生じた箇所や異常の内容を限定或いは特定することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明の粒子状物質検出装置は、内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を検出する検出装置として用いることができる。そして、本発明の粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法は、粒子状物質検出装置によって粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、装置の異常を良好に検査することができる。
【符号の説明】
【0199】
1:検出装置本体、1a:一方の端部、1b:他方の端部、1c:一方の先端部分、1d:他方の先端部分、2:貫通孔、11:集塵電極(高電圧集塵電極)、12:集塵電極(接地集塵電極)、11a,12a,13a:取り出し端子、11b,12b,13b:配線、13:加熱部、15,16:計測電極、15a,16a:計測電極取り出し端子(取り出し端子)、15b,16b:計測電極配線(配線)、21:電極部、23:検出手段、25:除去手段、26:異常判定手段、30:内燃機関、31:排気系、36:粒子状物質、100:粒子状物質検出装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法に関する。更に詳しくは、粒子状物質検出装置によって、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、装置の破損や不具合を良好に検査することが可能な粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスには煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)が含まれており、大気汚染の原因になっていた。これらを除去するために、セラミック等で作製されたフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)が広く用いられている。セラミック製のDPFは、長期間の使用が可能であるが、熱劣化等によりクラックや溶損等の欠陥が発生することがあり、微量ではあるが粒子状物質が漏れる可能性がある。このような欠陥が発生した場合には、その欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識することが、大気汚染防止の観点から極めて重要である。
【0003】
このような欠陥の発生を検知する方法として、DPFの下流側に粒子状物質検出装置を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の発明は、コロナ放電によって粒子状物質を帯電させ、そのイオン電流を測定することにより、粒子状物質の量を測定するものである。このように、粒子状物質を帯電させてそのイオン電流を測定する方法では、粒子状物質に帯電するイオン電流が微弱であるため、その微弱なイオン電流を検出するために大掛かりな検出回路が必要になり、高価なものとなってしまう。また、排ガスが高流量である場合には、粒子状物質を効果的に帯電させることが困難であるため、粒子状物質の測定値が、実際に排ガスに含有されている粒子状物質の量より小さい値となり、その誤差が大きくなってしまう。
【0005】
このようなことから、例えば、一方の端部に一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体と、貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の電極とを備え、排ガス中の粒子状物質を、貫通孔の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能な粒子状物質検出装置等が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、特許文献1に記載されたようなイオン電流の大きさを測定することにより排ガス中の粒子状物質を測定する検出装置において、この装置の正常動作を確認するための検査方法やシステムについても提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−123761号公報
【特許文献2】特開2009−186278号公報
【特許文献3】特表2006−503270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に記載の粒子状物質検出装置は、DPF等の排ガス処理装置の下流側に設置して、排ガス処理装置によって排ガスの浄化、即ち、粒子状物質の除去が正常に行われているか否かの判断を行うものであり、排ガス処理装置が正常に機能している場合には、粒子状物質は当然検出されず、粒子状物質を検出した場合に検知されるべき電気的な信号等は検知されないことが一般的である。
【0009】
しかしながら、このような「粒子状物質が検出されないこと」を測定するための粒子状物質検出装置は、装置の不具合等によって、粒子状物質が検出された際の信号を認識することができない場合であっても、排ガス処理装置が正常に機能している場合と同様の挙動を示すことがあり、粒子状物質検出装置を使用する前や使用中において、その粒子状物質検出装置が正常に機能しているか否かの検査を行うことの必要性が高まっている。
【0010】
例えば、特許文献2に記載の粒子状物質検出装置においては、計測電極の断線や破損、一対の計測電極の短絡、誘電体の破損等が生じた場合には、粒子状物質の検出を正常に行うことができず、粒子状物質が排出されていることを見逃したり、定量的な測定値に大きな誤差を生じたりするという問題があった。特に、この粒子状物質検出装置は、極めて微量な粒子状物質の検出を行うことができるため、粒子状物質が検出されていない水準(即ち、ゼロ点)の確認が特に重要となっている。なお、特許文献3に記載の検査方法及びシステムは、検査対象となる検出装置の機構が異なるため、例えば、上記した特許文献2に記載の粒子状物質検出装置等に対して行うことは不可能である。
【0011】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、排ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置において、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断(例えば、自己診断)し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することが可能な粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下の粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法を提供するものである。
【0013】
[1] 内燃機関の排気系に設けられた電極部と、前記電極部の電気的特性を検出する検出手段と、を備え、前記電極部に粒子状物質が付着することによる前記電気的特性の変化に基づいて、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、前記電極部に付着する粒子状物質を除去する除去手段と、前記電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて、前記電極部の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、且つ、前記除去手段によって前記電極部の表面に付着した粒子状物質を除去し、前記粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検出を開始する状態とした、前記電極部の電気的特性を測定し、当該測定した前記電気的特性と、前記初期電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定する異常判定手段と、を更に備えた粒子状物質検出装置。
【0014】
[2] 前記異常判定手段によって比較する前記電気的特性が、静電容量又は抵抗値である前記[1]に記載の粒子状物質検出装置。
【0015】
[3] 前記除去手段が、装置内部を加熱するヒータを有する前記[1]又は[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0016】
[4] 前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、前記誘電体を昇温させながら、前記電極部の前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の変化から、前記電極部の断線、接触不良及び前記誘電体の破損を、前記異常判定手段によって更に検査するように構成された前記[1]〜[3]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0017】
[5] 前記誘電体の温度変化に対して、測定される前記電気的特性が変化しない場合に、前記電極部の断線、又は接触不良と判断する前記[4]に記載の粒子状物質検出装置。
【0018】
[6] 前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、前記電極部の電気的特性を測定する際に、前記電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら前記電気的特性を測定可能に構成され、測定される前記電気的特性の推移によって、前記誘電体の破損を検査する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0019】
[7] 前記初期電気的特性が予め前記異常判定手段に設定されており、設定された前記初期電気的特性と、測定された前記電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定するように構成された前記[1]〜[6]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0020】
[8] 前記粒子状物質検出装置は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を備え、前記電極部が、前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、前記貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、前記一対の計測電極の埋設位置よりも前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有する前記[1]〜[7]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0021】
[9] 前記初期電気的特性と、測定した前記電気的特性との値を比較して、前記計測電極の断線、接触不良若しくは破損、前記一対の計測電極の短絡、及び前記誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常を検査するように構成された前記[8]に記載の粒子状物質検出装置。
【0022】
[10] 内燃機関の排気系に設けられた電極部と、前記電極部の電気的特性を検出する検出手段とを備え、前記電極部に粒子状物質が付着することによる前記電気的特性の変化に基づいて、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置の異常を検査するための粒子状物質検出装置の検査方法であって、前記電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて、前記電極部の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、排ガスが通過する流路の内部に設置された前記粒子状物質検出装置の前記電極部に付着した粒子状物質を除去し、前記粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検査を開始する状態とした、前記電極部の電気的特性を測定し、当該測定した前記電気的特性と、前記初期電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定する粒子状物質検出装置の検査方法。
【0023】
[11] 前記粒子状物質検出装置として、装置に付着した粒子状物質を除去する除去手段を更に備えたものを用いる前記[10]に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0024】
[12] 前記電気的特性として、静電容量又は抵抗値を測定する前記[10]又は[11]に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0025】
[13] 前記粒子状物質検出装置として、装置内部を加熱するヒータを更に備えたものを用いる前記[10]〜[12]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0026】
[14] 前記粒子状物質検出装置として、前記電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものを用い、前記誘電体を昇温させながら、前記電極部の前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の変化から、前記電極部の断線、接触不良及び前記誘電体の破損を更に検査する前記[10]〜[13]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0027】
[15] 前記誘電体の温度変化に対して、測定される前記電気的特性が変化しない場合に、前記電極部の断線、又は接触不良と判断する前記[14]に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0028】
[16] 前記粒子状物質検出装置として、前記電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものを用い、前記電極部の電気的特性を測定する際に、前記電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の推移によって、前記誘電体の破損を検査する前記[10]〜[15]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0029】
[17] 前記初期静電容量の測定に変えて、前記粒子状物質検出装置の構成に適した初期電気的特性を予め設定し、設定された前記初期電気的特性と、測定した電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を検査する前記[10]〜[16]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0030】
[18] 前記粒子状物質検出装置として、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備え、前記電極部が、前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、前記貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、前記一対の計測電極の埋設位置よりも前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有するものを用いる前記[10]〜[17]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【0031】
[19] 前記初期電気的特性と、測定した前記電気的特性との値を比較して、前記計測電極の断線、接触不良若しくは破損、前記一対の計測電極の短絡、及び前記誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常を検査する前記[18]に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明の粒子状物質検出装置は、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することができる。また、本発明の粒子状物質検出装置の検査方法は、排ガス中の粒子状物質を検出する電極部を備えた粒子状物質検出装置において、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することができる。
【0033】
即ち、本発明の粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法によれば、使用初期の状態における初期電気的特性と、使用中の粒子状物質検出装置に付着した粒子状物質を除去した状態で測定される電気的特性とを比較して、粒子状物質検出装置の異常を判断(検査)することができる。例えば、電極部は元々静電容量(電気的特性)を有しており、それを初期静電容量とした場合、粒子状物質を除去手段によって電極部から除去することで、初期とほぼ同一になるはずの静電容量を検出することができる。このため、その両者(初期電気的特性と測定した電気的特性)を比較することで粒子状物質検出装置の異常判定を行うことができる。例えば、両者の値が異なる場合には、故障(異常)であると判定できる。
【0034】
本発明の粒子状物質検出装置は、例えば、排ガス処理装置が正常に機能している場合には、何ら検出に関する信号を受信しない検出装置、或いは、「検出せず」との信号を受信する場合であっても極めて小さく、検出された場合において、初めて検出されたことが認識されるような検出装置において、現時点で正常な測定が行われているか否かの確認を行うことができる。このため、粒子状物質検出装置のゼロ点の確認を簡便に行うことができるとともに、検出装置の破損等の不具合(異常)も確認することができる。
【0035】
また、本発明の粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法においては、得られた電気的特性の値によって、不具合が生じた箇所や不具合の内容を限定或いは特定することができるため、不具合が生じた場合に、故障部分の交換や修復等の作業を簡便且つ迅速に行うことができる。
【0036】
なお、例えば、粒子状物質検出装置が、貫通孔を形成する検出装置本体の壁の内部に少なくとも一対の集塵電極が埋設され、荷電した粒子状物質を貫通孔の壁面又はこの壁の内表面に配置された計測電極に電気的に吸着させることが可能な検出装置である場合には、対向配置された一対の計測電極によって、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定し、DPFの下流側を流れる排ガスのなかの貫通孔内に流入した排ガス中の粒子状物質の質量を良好に測定することが可能となる。
【0037】
なお、上述した粒子状物質検出装置は、DPFの下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔内に流入した粒子状物質を測定し、この測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質の量を概算することができる。これにより、微量の粒子状物質の測定を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図1B】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の粒子状物質検出装置における異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【図3A】本発明の粒子状物質検出装置の検査方法の一の実施形態における検査対象となる粒子状物質検出装置を模式的に示す正面図である。
【図3B】図3Aに示す粒子状物質検出装置の一方の側面を示す側面図である。
【図3C】図3Aに示す粒子状物質検出装置の他方の側面を示す側面図である。
【図3D】図3Aに示す粒子状物質検出装置の背面図である。
【図4】図3BのA−A’断面を示す模式図である。
【図5】図4のB−B’断面を示す模式図である。
【図6】図4のC−C’断面を示す模式図である。
【図7】図4のD−D’断面を示す模式図である。
【図8】図4のE−E’断面を示す模式図である。
【図9】図4のF−F’断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0040】
〔1〕本発明の粒子状物質検出装置の特徴:
図1A及び図1Bは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す説明図である。なお、図1Aは、粒子状物質検出装置の電極部に粒子状物質が付着した状態を示し、図1Bは、粒子状物質検出装置の電極部に粒子状物質が付着していない状態(粒子状物質を除去した状態)を示している。
【0041】
図1A及び図1Bに示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、内燃機関30の排気系31に設けられた電極部21と、この電極部21の電気的特性を検出する検出手段23と、を備え、電極部21に粒子状物質36が付着することによる電気的特性の変化に基づいて、排気系31を通過する排ガス32に含まれる粒子状物質36を検出する粒子状物質検出装置100であって、電極部21に付着する粒子状物質36を除去する除去手段25と、電極部21に粒子状物質36が付着していない使用初期の状態にて、電極部21の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、且つ、図1Bに示すように、除去手段25によって電極部21の表面に付着した粒子状物質36を除去し、粒子状物質検出装置100にて粒子状物質の検出を開始する状態とした、その電極部21の電気的特性を測定し、当該測定した電気的特性と、初期電気的特性との値を比較して、粒子状物質検出装置100の異常を判定する異常判定手段26と、を更に備えた粒子状物質検出装置100である。
【0042】
即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置は、粒子状物質を検出するための電極部の電気的特性を、粒子状物質検出装置に粒子状物質が付着していない使用初期の状態と、使用中の粒子状物質検出装置において、その表面に付着した粒子状物質を除去し、粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検査を開始する状態とで測定し、これらの電気的特性の値から、装置の異常を判定する異常判定機構を備えた粒子状物質検出装置である。
【0043】
このように構成することによって、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することができる。例えば、電極部は元々静電容量(電気的特性)を有しており、それを初期静電容量とした場合、粒子状物質を除去手段によって電極部から除去することで、初期とほぼ同一になるはずの静電容量を検出することができる。このため、その両者(初期電気的特性と測定した電気的特性)を比較することで粒子状物質検出装置の異常判定を行うことができる。例えば、両者の値が異なる場合には、故障(異常)であると判定できる。
【0044】
本実施形態の粒子状物質検出装置は、例えば、排ガス処理装置が正常に機能している場合には、何ら検出に関する信号を受信しない検出装置、或いは、「検出せず」との信号を受信する場合であっても極めて小さく、検出された場合において、初めて検出されたことが認識されるような検出装置において、現時点で正常な測定が行われているか否かの確認を行うことができる。このため、粒子状物質検出装置のゼロ点の確認を簡便に行うことができるとともに、検出装置の破損等の不具合(異常)も確認することができる。
【0045】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、得られた電気的特性の値によって、不具合が生じた箇所や不具合の内容を限定或いは特定することができるため、不具合が生じた場合に、故障部分の交換や修復等の作業を簡便且つ迅速に行うことができる。
【0046】
なお、本発明において、「異常」とは、粒子状物質検出装置に生じる種々の不具合のことであるが、特に、粒子状物質の検出に際し、電極部の電気的特性に本来あるべきでない変化を与え、正常な測定を阻害する状態となっていることをいう。上述したように、本発明の粒子状物質検出装置は、電極部によって検出(測定)される電気的特性に変化が現れないような装置の変化は、「異常」とは認識されないが、このような電気的特性に変化が現れない異常は、粒子状物質の検出に影響を与えることがなく、正常な粒子状物質の検出に支障をきたすことはない(例えば、電気的特性の変化を伴わない単なる変色等)。
【0047】
電極部は、粒子状物質を付着させて、この粒子状物質の付着に伴う電気的特性の変化を測定するものである。即ち、粒子状物質検出装置の検知部(センサー)として用いられる電極である。このような電極部の電極としては、例えば、装置の表面等に導体ペーストを塗布して形成した電極や、金属板などからなる電極等を挙げることができる。この電極部は、検出手段と電気的に接続されており、電極部における電気的特性を検出手段によって検出(測定)することができるように構成されている。
【0048】
また、電極部は、粒子状物質の測定を行うもの以外にも、例えば、排ガスに含まれる粒子状物質を装置に集塵するための電界を発生されるための電極を含んでいてもよい。即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置は、排ガス中の粒子状物質を粒子状物質検出装置(特に、電極部)に付着させ、電極部を構成する電極(以下、この電極を「測定電極」ということがある)の電気的特性の変化を読み取ることにより、その電気的特性の変化から排ガス中の粒子状物質を検出するものである。このため、例えば、粒子状物質検出装置周辺に電界を生じさせ、排ガス中を流れる粒子状物質を集塵するための電極(以下、このような電極を「集塵電極」ということがある)を更に備えていてもよい。
【0049】
検出手段は、電極部及びこの電極部の周辺に付着した粒子状物質によって、電極部にて測定される電気的特性の変化を読み取り、排ガスに含まれる粒子状物質を検出するものである。排ガスに含まれる粒子状物質は、その大半が煤からなるものであるため、導電性を有しており、電極部等に粒子状物質が付着した場合には、測定される電気的特性に変化を与える。このため、内燃機関の排気系に設けられた電極部の電気的特性の変化を測定することによって、排ガス中に粒子状物質が含まれているか否かを検出することができる。
【0050】
具体的な検出手段としては、電極部の電気的特性の変化から、排ガスに含まれる粒子状物質の検出を行う検出部(検出回路)を挙げることができる。例えば、測定する電極部の電気的特性が、静電容量である場合には、一方の電極に交流電圧を印加し、静電容量が変化した場合に、もう一方の電極に接続された変換器或いはチャージアンプによって静電容量に比例する電圧として検出を行い、その変化量によって異常を検査(判定)する方法を挙げることができる。なお、電気的特性の変化量を検出することが可能なものであれば、上記検査方法に限定されることはない。
【0051】
なお、粒子状物質検出装置の粒子状物質の検出を行う部分の構成については、従来公知の粒子状物質検出装置の検出部分の構成を採用することもできる。このような粒子状物質検出装置としては、例えば、特開2009−186278号公報に記載された粒子状物質検出装置を挙げることができる。
【0052】
除去手段は、電極部に付着した粒子状物質を除去するものである。本実施形態の粒子状物質検出装置は、この除去手段によって、電極部に付着した粒子状物質を除去し、粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検出を開始する状態(以下、「検出開始状態」ということがある)とすることで、電極部の電気的特性を測定し、測定された電気的特性と、初期電気的特性とを比較することで、装置の異常を判定する。
【0053】
上述したように、排ガスに含まれる粒子状物質は導電性を有しており、電極部等に粒子状物質が付着した場合には、測定される電気的特性に変化を与える。このため、異常の判定を行う際に、粒子状物質が電極部に付着したままであると、粒子状物質の付着による電気的特性の変化であるのか、或いは、装置の異常に起因する電気的特性の変化であるのかの判断ができなくなり、正確な異常の判定が不可能となる。
【0054】
このため、粒子状物質検出装置が除去手段を有しておらず、装置を検出開始状態に回復することできなければ、初期値(初期電気的特性)との厳密な比較を行うことができず、装置の異常を正確に判定することはできない。即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、この除去手段と、異常判定手段との双方を備えることにより、初めて正確な異常判定が可能となっている。
【0055】
このように、本発明の粒子状物質検出装置においては、(1)その装置が、電極部に付着した粒子状物質を除去するための除去手段を有すること、(2)電極部に付着した粒子状物質を除去手段によって除去した後に、その電極部の電気的特性の測定を行うこと、(3)電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて測定される電気的特性を、初期電気的特性とすること、の各構成を備えることによって、極めて正確な異常の判定を行うことができる。例えば、上記のいずれかを1つでも有していない異常判定では、正確な異常の判定は不可能である。
【0056】
なお、上述した除去手段は、電極部に付着した粒子状物質のみを除去するだけでなく、装置の他の部位、例えば、電極部の周辺等に付着した粒子状物質についても除去することができるものであることが好ましい。
【0057】
例えば、粒子状物質検出装置には、電極部以外の部位にも粒子状物質が付着することがあり、且つ、その付着した粒子状物質によって、電極部にて測定される電気的特性に影響を与える場合がある。このため、上記除去手段は、測定される電気的特性に影響を与える部位に付着した粒子状物質全てを、粒子状物質検出装置から除去することができるように構成されたものであることが好ましい。
【0058】
除去手段としては、電極部、より好ましくは、粒子状物質検出装置に付着した粒子状物質を除去することが可能なものであれば、その構成については特に制限はないが、例えば、電極部によって測定される電気的特性の変化を与える部位に熱を加え、付着した粒子状物質を燃焼除去可能な、ヒータ等を挙げることができる。図1A及び図1Bにおいては、ヒータによって構成された除去手段を備えた場合の例を示している。なお、以下、このようにして電極部に付着した粒子状物質を、除去手段によって除去することを、粒子状物質検出装置の「再生」ということがある。
【0059】
異常判定手段は、初期電気的特性と、再生後に測定された電気的特性とを比較することにより、装置における種々の異常を検知するものである。例えば、初期電気的特性と、再生後に測定された電気的特性との差(変化量)を算出し、この変化量から、装置の異常を判定する集積回路等を挙げることができる。例えば、この集積回路には、電気的特性の変化量の大きさや、再生後に測定された電気的特性の絶対値に応じて、想定される異常の種類(類型)が設定されており、上述した変化量等に当てはまる類型が選択され、異常の判定が行われる。
【0060】
なお、初期電気的特性を測定するための、「粒子状物質検出装置に粒子状物質が付着していない使用初期の状態」とは、例えば、粒子状物質検出装置を製造した後の未使用の状態、或いは、粒子状物質の検出を行っていたとしても、粒子状物質検出装置に付着した粒子状物質を除去し、且つ、その粒子状物質検出装置が正常に機能していることが判明している状態のことを意味する。即ち、この初期電気的特性は、粒子状物質検出装置の異常を判定する場合における、基準となる電気的特性であり、未使用で且つ正常な状態(即ち、異常のない状態)の電気的特性、或いは、使用済みの装置であっても、未使用と同様の状態に再生し、且つ正常な状態の電気的特性である。
【0061】
例えば、初期電気的特性は、粒子状物質検出装置を最初に使用する状態にて電気的特性を測定し、その値を初期電気的特性として異常判定手段に記憶させておくこともできるし、例えば、同一の構成の粒子状物質検出装置が大量に製造され、このような粒子状物質検出装置が、種々の自動車等に設置されて使用される場合には、これら同一の構成の粒子状物質検出装置において、統一した初期電気的特性を予め設定しておくこともできる。即ち、特定の粒子状物質検出装置において、その初期電気的特性の値が予め分かっている場合には、初期電気的特性を測定する工程は省略され、設定された初期電気的特性と、再生後に測定された電気的特性とを比較することにより、装置の異常を検査するものであってもよい。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の粒子状物質検出装置は、装置に異常があった場合には、電極部によって測定される電気的特性に変化が生じるため、その異常を検知することができ、更に、初期電気的特性と、再生後の電気的特性との差(即ち、変化量)、また、再生後の電気的特性の値(即ち、絶対値)によって、異常の種類や場所を限定或いは特定することも可能である。
【0063】
具体的な異常の例として、例えば、電極部を構成する電極の断線や接触不良の場合には、再生後において、電極部にて測定されるべき値の電気的特性が測定されず、初期電気的特性と、再生後の電気的特性が異なるものとなる。例えば、電気的特性を測定する検出部分の直近で電極の断線等が発生していると、電気的特性が抵抗値である場合には、再生後の抵抗値は極めて大きく(例えば、100MΩ以上と)なり、また、電気的特性が静電容量(単位:pF)である場合には、0pFとなる。
【0064】
また、例えば、異常判定手段によって比較する電気的特性が静電容量であり、初期電気的特性としての初期静電容量と、測定した静電容量(再生後の電気的特性)との値を比較して、その差が0.5pF以上である場合には、例えば、粒子状物質検出装置の構成によっても異なるが、電極部の破損、電極部が一対の電極部である場合には、一対の電極部の短絡、及び電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されている場合には、誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常と判定することもできる。なお、このような異常の判定基準は、あくまでも一例であり、粒子状物質検出装置の各部の構成に応じて、最適な判断基準が設定されるものであり、本発明の粒子状物質検出装置は、除去手段により粒子状物質の除去を行った後に測定された電気的特性と、初期電気的特性とを比較して異常判定手段によって異常を判定可能なものであればよい。
【0065】
ここで、本実施形態の粒子状物質検出装置における異常判定方法の一例を、図2に示すフローチャートによって説明する。図2に示すフローチャートは、電気的特性として静電容量を用いた異常判定方法を示しおり、更に、このフローチャートは、初期静電容量を測定する工程(工程A)と、粒子状物質を除去した後に静電容量を測定し、実際に異常判定を行う工程(工程B)との二つの工程によって構成されている。
【0066】
まず、工程Aでは、出荷検査として初期静電容量を測定する。測定された初期静電容量は、異常判定手段に備えられた不揮発性メモリに記憶される。以降の異常判定においては、この不揮発性メモリに記憶された初期静電容量と、粒子状物質を除去した後に測定された静電容量とを比較して異常判定を行うこととなる。即ち、初期静電容量の測定は、この出荷検査としての1回となる。
【0067】
次に、工程Bでは、まず、粒子状物質検出装置が自動車等に設置され、実際の粒子状物質の検出に使用される(電源投入)。この段階で、粒子状物質検出装置は、粒子状物質を検出するために排ガス中の粒子状物質を捕集し、電極部の電気的特性の変化から粒子状物質の検出が行われる。
【0068】
次に、異常判定手段によって異常判定を行うに際し、除去手段によって粒子状物質の除去を行う。図2に示すフローチャートでは、装置の内部を加熱して、電極部に付着した粒子状物質を燃焼除去する。次に、電極部の静電容量を測定する。そして、測定された静電容量と、異常判定手段(不揮発性メモリ)に記憶された初期静電容量とを比較して異常判定を行う。
【0069】
まず、測定された静電容量が、初期値(初期静電容量)よりも1000pF大きい場合(>初期値+1000pF)には、電極部の短絡との異常判定が行われる。なお、1000pF未満の場合には、次の異常判定が行われる。次の異常判定としては、測定された静電容量が0pFであるかの判定が行われる。0pFである場合には、電極部の断線(検出部分の直近の断線)との異常判定が行われる。なお、測定された静電容量が0pFでない場合には、次の異常判定が行われる。
【0070】
次の異常判定としては、測定された静電容量の値と、初期静電容量の値とを比較して、測定された静電容量との差(即ち、「測定された静電容量」−「初期静電容量の値」、なお、フローチャートでは「測定値−初期値」)の値によって、誘電体破損の異常判定が行われる。上述した測定された静電容量との差が、0.5pF以上である場合には、誘電体の破損と判定される。なお、上述した3つの以上判定において、異常が判定されなかった場合(即ち、全ての判定で「いいえ」の場合)には、異常なしと判定される。なお、異常なしと判定された場合には、その時点で異常判定を終了してもよいし、電極部を構成する別の電極に対して、更に異常判定を行ってもよい。
【0071】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、特に限定されることはないが、異常判定手段によって比較する電気的特性が静電容量であり、初期電気的特性としての初期静電容量が、0〜100pFの範囲となるように構成された粒子状物質検出装置であることが好ましい。このような粒子状物質検出装置は、従来、その異常の判定を行うことが極めて困難であり、上記した異常判定を行う構成とすることによって、正確な異常判定を行うことが可能となる。
【0072】
なお、粒子状物質の検出を行うための電気的特性(即ち、検出手段によって測定される電気的特性)と、装置の異常を判定するための電気的特性(即ち、再生後に測定される電気的特性)とは、同じ種類の電気的特性であってもよいし、異なる種類の電気的特性であってもよい。例えば、粒子状物質の検出を静電容量によって行い、異常の判定を抵抗値によって行うこともできるし、また、粒子状物質の検出と異常の判定との両方を、例えば、静電容量によって行うこともできる。電気的特性が同じ場合には、粒子状物質検出装置の検出器を異常判定に流用することができるため、装置の構成を簡略化することができる。また、先に述べたように、異常の検知(判定)の内容等に応じて、電気的特性の種類を別途選択することもできる。
【0073】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、その誘電体を昇温させながら、電極部の電気的特性を測定し、測定される電気的特性の変化から、電極部の断線、接触不良及び誘電体の破損を、上述した異常判定手段によって更に検査するように構成されたものであってもよい。
【0074】
即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置は、上述したように、電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆され、その誘電体に粒子状物質が付着した場合に、電極部の電気的特性を測定することにより粒子状物質の検出を行う装置であってもよい。この場合には、誘電体を昇温させながら電極部の電気的特性を測定することにより、更に詳細な異常判定を行うことが可能となる。
【0075】
誘電体は、加熱されるとその抵抗値が低くなり、誘電体の温度変化に伴って、電極部にて測定される電気的特性が変化する。但し、粒子状物質検出装置に異常が生じていると、得られる電気的特性は、生じた不具合(異常)に応じて、特徴的な挙動を示すことがある。
【0076】
誘電体を昇温させる場合には、例えば、5〜50℃/秒の昇温速度であることが好ましく、10〜40℃/秒であることが更に好ましく、15〜35℃/秒であることが特に好ましい。例えば、昇温速度が5℃/秒未満であると、広い温度範囲にて検査を行う場合に、検査時間が長くなってしまうために好ましくない。一方、昇温速度が50℃/秒を超えると、昇温速度が速すぎて、不具合による特徴的な挙動を見逃してしまうことがある。また、昇温速度が速すぎると、熱衝撃によって粒子状物質検出装置が破損してしまうおそれもある。
【0077】
例えば、電極部が断線している場合には、誘電体を昇温しても、測定される電気的特性(例えば、静電容量や抵抗値)が変化せず、温度変化に関わらず一定の値を示すこととなる。また、例えば、誘電体にひび割れ(マイクロクラック等)が入っている場合には、誘電体が膨張して、上記マイクロクラックの間隔が広がり、測定される電気的特性が、温度の上昇に比して過剰に上昇する。これにより、より正確に異常判定を行うことができる。
【0078】
なお、このような異常判定を行う場合には、異常判定手段の検出回路の応答を10Hz以上にて行うことが好ましい。例えば、検出回路の応答が10Hz未満であると、異常が生じている場合に、各不具合(異常)に応じて生じる特徴的な挙動を見逃してしまうことがある。
【0079】
誘電体の温度を上げる場合には、例えば、粒子状物質検出装置が加熱部(例えば、ヒータ)を備えている場合には、その加熱部を用いて温度を上昇させてもよいし、粒子状物質検出装置の外部に熱源を設け、その熱源からの輻射熱によって誘電体を加熱してもよい。なお、粒子状物質検出装置の除去手段がヒータを有する場合には、そのヒータを用いて誘電体を加熱してもよい。
【0080】
また、このように誘電体を加熱する場合には、誘電体全体を均一に加熱するのではなく、例えば、部分的に誘電体を加熱してもよい。例えば、電極部を被覆する誘電体が、一方向に長い検出装置の本体(以下、「検出装置本体」ということがある)である場合には、検出装置本体の一方の端部側若しくは他方の端部側、或いは、長手方向を含む片側の面のみを加熱して、温度変化に伴う電気的特性の変化を測定してもよい。例えば、誘電体にひび割れが入っている場合には、上記したように誘電体の一部を加熱して熱膨張させることにより、マイクロクラック等のひび割れの間隔を一時的に広げることができ、測定される電気的特性の変化を顕著なものとすることで、より詳細な異常判定を行うことができる。
【0081】
更に、本実施形態の粒子状物質検出装置は、電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、この電極部の電気的特性を測定する際に、電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら電気的特性を測定可能に構成されたものであり、測定される電気的特性の推移によって、誘電体の破損を検査することができるように構成されたものであってもよい。
【0082】
例えば、誘電体にひび割れ(マイクロクラック等)が入っている場合には、特定の周波数において、電気的特性(例えば、静電容量や抵抗値)の値が大きく変化することがある。これは、誘電体が圧電効果を持つ場合に、電気機械変換によりマイクロクラックによる寸法で機械共振現象が発生し、見かけの電気的特性(例えば、静電容量)が大きく変化するためである。これにより、より正確に異常判定を行うことができる。
【0083】
なお、周波数を変化させる場合には、100〜100MHzの範囲にて周波数を変化させることが好ましく、100〜10MHzの範囲であることが更に好ましく、1k〜1MHzの範囲であることが特に好ましい。周波数を変化させる範囲が上記範囲よりも小さいと、誘電体のマイクロクラックの発見が困難になることがある。また、周波数は、実用的な観点から長くとも10秒/decとすることが好ましい。
【0084】
本実施形態の粒子状物質検出装置が、内燃機関の排気系に設置されて使用される場合には、上述した除去手段によって定期的な装置の再生を行うことが好ましく、この装置の再生に合わせて(即ち、装置の再生を行った後に)、異常判定手段による異常判定を併せて行うことが好ましい。これにより、定期的な装置の診断を行うことが可能となり、装置異常を早期に発見することができる。なお、この場合には、上述したように、初期電気的特性の測定は省略され、初期電気的特性は、予め設定された値を用いて異常判定が行われる。
【0085】
また、粒子状物質検出装置が、自動車の排気系に設置されて使用される場合には、自動車の始動開始時に、異常判定手段による異常判定が常時行われるように構成されていてもよい。このように、自動車のエンジンの始動と異常判定とを連携させることにより、粒子状物質検出装置に異常があった場合に、より早期に発見することができる。
【0086】
〔2〕本発明の粒子状物質検出装置の構成:
次に、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態について、図3A〜図3D、及び図4〜図9に示す粒子状物質検出装置を例に更に詳細に説明する。ここで、図3Aは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図であり、図3Bは、図3Aに示す粒子状物質検出装置の一方の側面を示す側面図であり、図3Cは、図3Aに示す粒子状物質検出装置の他方の側面を示す側面図であり、図3Dは、図3Aに示す粒子状物質検出装置の背面図である。また、図4は、図3BのA−A’断面を示す模式図である。また、図5は、図4のB−B’断面を示す模式図であり、図6は、図4のC−C’断面を示す模式図であり、図4は、図4のD−D’断面を示す模式図であり、図8は、図4のE−E’断面を示す模式図であり、図9は、図4のF−F’断面を示す模式図である。
【0087】
図3A〜図3D、及び図4〜図9に示す粒子状物質検出装置100aは、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔(空洞)2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極15,16と、貫通孔2を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極15,16の埋設位置よりも貫通孔2を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極11,12と、を備え、排ガス中に含まれる粒子状物質を検出するための粒子状物質検出装置100aである。上記一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12によって、粒子状物質検出装置100aの電極部21が構成され、この一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12は、配線15b,16b,11b,12bを介して取り出し端子15a,16a,11a,12aと接続されており、この取り出し端子15a,16a,11a,12aと、検出手段23(図1A参照)及び異常判定手段26(図1A参照)とが電気的に接続されている。また、この粒子状物質検出装置100aは、除去手段25として、加熱部13を有している。
【0088】
この粒子状物質検出装置は、計測電極15,16に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて、計測電極15,16の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、且つ、加熱部13によって計測電極15,16の表面に付着した粒子状物質を除去し、粒子状物質検出装置100aにて粒子状物質の検出を開始する状態とした、計測電極15,16の電気的特性を測定し、当該測定した電気的特性と、初期電気的特性との値を異常判定手段26(図1A参照)によって比較して、粒子状物質検出装置100aの異常を判定するものである。
【0089】
このようにして、例えば、計測電極の断線若しくは破損、一対の計測電極の短絡、誘電体の破損等の異常を検査することができる。このため、粒子状物質検出装置によって、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することができる。
【0090】
このような粒子状物質検出装置の検出手段及び異常判定手段によって測定される電気的特性としては、例えば、静電容量や抵抗値を挙げることができる。
【0091】
例えば、粒子状物質検出装置の異常の検査を行う場合、一対の計測電極間の電気的特性として静電容量を測定する際には、一方の計測電極に交流電圧、例えば、1Vrms,1kHzを印加し、他方の計測電極には低入力インピーダンスにて電流或いは電荷を検出する回路であるI/V変換器或いはチャージアンプを接続し、電極間の静電容量に比例する電圧として検出を行なう。更に、その検出部(異常判定手段)には、外来ノイズの影響を排除できる同期検波を用いることが好ましい。このような方法により、例えば、測定レンジ0〜100pF、分解能0.1pF程度の測定が可能である。一対の計測電極間の静電容量の測定に際しては、例えば、アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B(商品名)を用いることができる。
【0092】
上記した条件により検査を行うことによって、粒子状物質検出装置の極めて小さな異常(不具合)をも検査することができ、粒子状物質検出装置に異常が生じた場合に、早期に発見することができる。例えば、電極間の静電容量と回路抵抗による時定数を利用した時定数回路であると、誘電体の破損や、計測電極の一部欠損等の小さな不具合を発見することが困難になることがある。このような小さな不具合であっても、そのまま放置されて継続的に装置が使用されていると、重大な欠陥に発展するおそれがあり、不具合を早期に発見し、故障部分の交換や修復を速やかに行うことが好ましい。
【0093】
なお、初期電気的特性(例えば、初期静電容量)と、再生後の電気的特性(例えば、再生後の静電容量)との値を比較して、その値に差異が生じた場合には、その差異の大きさによって、粒子状物質検出装置に生じた異常の箇所を、ある程度限定、或いは特定することができる。例えば、上述した初期静電容量と再生後の静電容量との値を比較した場合の差異や、測定した静電容量の値(絶対値)に対して、異常判定を行う上での判定基準(検査基準)を設け、この判定基準に従って検査を行うことが好ましい。
【0094】
上述した判定基準は、粒子状物質検出装置の構成や性能(例えば、粒子状物質検出装置の検出範囲や検出限界等)によっても異なるが、例えば、ディーゼルエンジンの排気系に配設されたDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)の後段に設置され、このDPFから排出されたガスに粒子状物質が含まれていないかを検出するための装置(粒子状物質検出装置)の検査を行う場合には、例えば、以下のような判定基準を設けることができる。
【0095】
例えば、測定した静電容量の値が、0pFである場合には、図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aの計測電極15,16の断線或いは接触不良と判定(検査)することができる。
【0096】
即ち、この粒子状物質検出装置100aの検出装置本体1は、その少なくとも一部が誘電体によって構成されており、一対の計測電極計測電極は、検出装置本体1の貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に、所定の間隔を空けて配置されている。このため、一対の計測電極間15,16の静電容量を測定した場合には、ある一定の大きさの静電容量が測定される。仮に、一対の計測電極15,16間の静電容量を測定した場合に、測定した静電容量の値が、0pFである場合には、一対の計測電極15,16のうち、少なくとも一方の計測電極15,16が断線しているか、接触不良であるかのいずれかの異常が想定される。なお、上記した「計測電極が断線している」とは、計測電極自体が断線していることだけでなく、計測電極に対して接続されている配線、例えば、計測電極配線15b,16b(図5参照)が断線している場合も含まれる。また、「計測電極の接触不良」とは、計測電極とそれに接続された配線との接触不良のみを示すのではなく、異常判定手段から計測電極が電気的に接続される全ての区間における接触不良のことを意味する。例えば、計測電極に接続された配線と接続端子との接触不良も、上記計測電極の接触不良に含まれる。
【0097】
なお、計測電極に接続された配線が、その途中で断線した場合に、例えば、断線の位置によっては、微弱な静電容量が検出されることもある。例えば、上述したように測定した静電容量の値が0pFである場合には、電極が完全に断線していると判定を行うことができるが、例えば、初期静電容量よりも明らかに静電容量が低下しているが、極めて微弱な静電容量が検出された場合には、異常の判定(即ち、類型の選択)が難しくなることがある。このため、このような断線等の判定を行う場合には、閾値を0.5pF程度に設定し、外乱或いは再生のばらつき等の影響以上の変化として静電容量を検出することで、装置異常を良好に判定することができる。なお、例えば、上述したように静電容量の値が0pFである場合は、配線等による影響が検出されていないため、電気的特性を測定する検出器周辺での配線の断線や接触不良が疑われる。
【0098】
また、上記した「再生のばらつき」とは、除去手段によって粒子状物質を除去した場合に、完全に粒子状物質を除去することができず、極めて微量ではあるが電極部に粒子状物質が残留することがあり、残留した粒子状物質による測定値に与える僅かな影響のことをいう。但し、外乱や再生のばらつきによる測定値への影響は極めて僅かであり、上述のように閾値を設定することで、正確は異常判定を行うこともできるし、初期値(初期電気的特性)との変化が顕著な場合には、特別に閾値を設定しなくとも、異常の判定を行うことができる。
【0099】
また、例えば、粒子状物質検出装置の構成によっても異なるが、初期静電容量と、測定した静電容量との値を比較して、その差が0.5pF以上である場合には、計測電極の破損、一対の計測電極の短絡、及び誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常と判定(検査)することができる。
【0100】
上述したように、一対の計測電極間の静電容量を測定した場合には、ある一定の大きさの静電容量が測定されるが、この静電容量の値が、初期静電容量の値よりも大きくなった場合には、計測電極又は誘電体に何らかの異常が生じている可能性が極めて大きい。
【0101】
具体的には、計測電極の破損、例えば、計測電極の一部が欠損している場合には、欠損した距離に応じて静電容量の減少が測定される。等間隔に電極が配置された場合には、例えば、半分の距離で欠損が発生すると、初期値(初期静電容量)の約半分の静電容量が測定されることとなる。この関係から検出できる欠損の最小値は、外来ノイズや再生ばらつきによる静電容量の分布に制限されるものとなる。
【0102】
また、一対の計測電極の短絡している場合には、短絡したインピーダンスに応じて計測電極に通常の粒子状物質の付着ではありえないような、極めて大きな電流或いは電荷が測定されることとなる。
【0103】
更に、誘電体が破損、例えば、誘電体にひび割れが入っていたり、誘電体の一部が欠損している場合には、誘電率の減少に伴い、静電容量が減少することとなる。例えば、誘電体としてアルミナを利用した場合、アルミナの誘電率は8.5であるため、全ての誘電体が欠損した場合には、初期値の8.5分の1に減少する。
【0104】
以上説明したような異常の特性に併せて、異常判定手段による判定基準を設け、その判定基準に従って異常判定を行うことによって、より正確な異常判定を行うことができる。
【0105】
また、このような粒子状物質検出装置においても、粒子状物質検出装置を構成する誘電体(具体的には、検出装置本体)を昇温させながら、一対の計測電極間の静電容量を測定し、測定される静電容量の変化から、計測電極の断線や誘電体の破損等を検査するものであってもよいし、一対の計測電極間の静電容量を測定する際に、一対の計測電極間に印加する電圧の周波数を変化させながら静電容量を測定し、測定される静電容量の推移によって、誘電体の破損を検査するものであってもよい。
【0106】
また、初期静電容量は、粒子状物質検出装置に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて測定される静電容量であるが、同一の構成の粒子状物質検出装置が大量に生産される場合には、統一した初期静電容量を予め設定することもできる。即ち、例えば、初期静電容量の値が予め分かっている場合には、初期静電容量を測定する工程を省略し、異常判定手段に設定させておき、予め設定された初期静電容量と、再生後の静電容量とを比較して異常判定を行うものであってもよい。なお、これまでの説明においては、電気的特性として静電容量を採用した場合の例について説明したが、装置の異常判定を行うことが可能な電気的特性であれば、電気的特性の種類については特に制限はなく、例えば、抵抗値、誘電体損失等であってもよい。
【0107】
〔2−1〕粒子状物質検出装置の各構成要素について:
次に、図3A〜図3D、及び図4〜図9に示す粒子状物質検出装置の各構成要素について更に詳細に説明する。
【0108】
図3A〜図3D、及び図4〜図9に示す粒子状物質検出装置100aは、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔(空洞)2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極15,16と、貫通孔2を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極15,16の埋設位置よりも貫通孔2を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極11,12と、を備えるものである。一対の計測電極15,16及び一対の集塵電極11,12が電極部として構成される。
【0109】
この粒子状物質検出装置100aは、一対の計測電極15,16からそれぞれ検出装置本体1の他方の端部1bに向かって延びる一対の計測電極配線15b,16bを更に備えており、また、一対の計測電極15,16は、一対をなすそれぞれが複数に分岐(例えば、図7に示すように、櫛歯状に分岐)をして、複数の対向部分を有している。
【0110】
そして、粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、一対の集塵電極11,12に電圧を印加することにより荷電された、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能なものである。更に、貫通孔2を形成する壁の電気的特性の変化を、上記一対の計測電極15,16によって測定することにより、貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能である。これにより、本実施形態の粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に排ガス等を通過させて、排ガス中に含有される粒子状物質を検出することができる。
【0111】
この粒子状物質検出装置100aは、DPF等の下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔2内に流入した粒子状物質を測定し、この測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質の量を概算することができる。これにより、微量の粒子状物質の測定を行うことが可能となる。
【0112】
また、粒子状物質検出装置100aは、上述したように排ガスの全量を測定するものではないため、粒子状物質検出装置100aを小型化することができ、狭いスペースに設置することが可能となる。
【0113】
また、DPF等の下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(即ち、排ガスに含まれる粒子状物質)の一部だけを貫通孔2内に導入するため、貫通孔2内の粒子状物質を効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることができる。
【0114】
また、検出装置本体1が一方向に長く形成され、その一方の端部1aに、貫通孔2が形成されるとともに、一対の集塵電極11,12及び一対の計測電極15,16が配設(埋設)されるため、貫通孔2及び各電極(例えば、集塵電極11や一対の計測電極15,16)を高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部1b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、各電極の取り出し端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度が高く、且つ安定した測定を行うことができる。
【0115】
なお、粒子状物質検出装置に用いられる検出装置本体1には、上記貫通孔2が少なくとも一つ形成されている必要があり、二つ以上であってもよい。また、検出装置本体1が誘電体から形成されることにより、一対の集塵電極11,12や、各種の配線11b,13b,15b,16bがそれぞれ誘電体で覆われた状態となっている。
【0116】
また、上記一対の計測電極15,16は、少なくとも一対備えることが必要であり、二対以上であってもよい。なお、図4においては、一対の計測電極15,16が、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面に配設された場合の例を示しているが、貫通孔2を形成する一方の壁の内部に埋設されていてもよい。
【0117】
また、一対の計測電極の形状については特に制限はなく、粒子状物質を貫通孔の壁に吸着させた際に、その壁の電気的な特性の変化を測定することができるように配置された一対の電極であればよい。なお、図7に示すように、一対の計測電極15,16は、線状を呈し、貫通孔2の壁の内側面又はその内部に長く対向しているものであることが好ましく、更に、線状を呈する一対の計測電極15,16は、一対をなすそれぞれが複数に分岐(例えば、図7に示すように、櫛歯状に分岐)をして、複数の対向部分を有するものであることが好ましい(例えば、上記櫛歯状の部分を所定の間隔を空けて噛み合わせるように対向配置されたものであることが好ましい)。このように構成することによって、一対の計測電極15,16の対向配置された部分を長く(広く)とることができ、より正確な測定値を得ることができる。
【0118】
なお、粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内を通過する粒子状物質が、ディーゼルエンジンより排出される煤であるときに、特にその効果を発揮させることができる。
【0119】
〔2−1a〕検出装置本体:
検出装置本体は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長く構成された、粒子状物質検出装置の基体となる部位である。検出装置本体は誘電体から構成されており、この貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部には少なくとも一対の集塵電極が配置されており、この一対の集塵電極に電圧を印加することにより貫通孔内に電界を発生させることができる。
【0120】
検出装置本体を構成する誘電体は、例えば、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。中でも、アルミナを好適に用いることができる。このような誘電体からなる検出装置本体の内部に集塵電極を埋設することにより、誘電体に覆われた集塵電極を形成することが可能となる。そして、粒子状物質検出装置が、優れた耐熱性、耐絶縁破壊特性等を有するものとなる。ここで、「誘電体」とは、導電性よりも誘電性が優位である物質で、直流電圧に対して絶縁体として振舞う物質のことをいう。
【0121】
なお、「検出装置本体の一方の端部」というときは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の50%の長さに相当する位置までの範囲をいう。また、「検出装置本体の他方の端部」というときは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の50%の長さに相当する位置までの範囲をいう。なお、検出装置本体の一方の端部は、好ましくは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の40%の長さに相当する位置までの範囲であり、更に好ましくは、30%の長さに相当する範囲である。また、検出装置本体の他方の端部は、好ましくは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の40%の長さに相当する位置までの範囲であり、更に好ましくは、30%の長さに相当する範囲である。検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置とは、検出装置本体1から、上記一方の端部1aと他方の端部1bの範囲を除いた部分ということになる(図3A〜図3C参照)。
【0122】
図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aにおいて、検出装置本体1は、一方向に長く形成され、その長手方向の長さは、特に限定されないが、排ガス配管に挿入したときに排ガス中の粒子状物質を効率よくサンプリングできる長さであることが好ましい。
【0123】
また、検出装置本体1の厚さ(「検出装置本体の長手方向」及び「ガスの流通方向」の両方に垂直な方向(厚さ方向)における長さ)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜3mm程度が好ましい。ここで、「検出装置本体1の厚さ」というときは、上記厚さ方向において最も厚い部分の厚さをいう。また、検出装置本体1の、貫通孔2にガスが流通するときの流通方向における長さ(ガス流通方向の長さ)は、特に限定されないが、例えば、2〜20mm程度が好ましい。そして、検出装置本体1の長手方向長さは、検出装置本体1の厚さの10〜100倍であることが好ましく、検出装置本体1のガス流通方向の長さの3〜100倍であることが好ましい。
【0124】
検出装置本体1の形状は、図3A〜図3Dに示すように、長手方向に直行する断面形状が長方形の板状であってもよいし、図示は省略するが、当該断面形状が円形、楕円形等の棒状であってもよい。また、一方向に長い形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0125】
粒子状物質検出装置100aにおいて、貫通孔2の形状、及び大きさは特に限定されず、排ガスを通過させ、粒子状物質の量を測定できるものであればよい。例えば、貫通孔2の、検出装置本体の長手方向における長さは、2〜20mm程度が好ましく、貫通孔2の、集塵電極11,12で挟まれる部分の幅(検出装置本体の長手方向、及びガスの流通方向の両方に垂直な方向における長さ)は、3〜30mm程度が好ましい。
【0126】
貫通孔2の大きさを上記範囲とすることにより、粒子状物質を含む排ガスを貫通孔2内に十分に流通させることができ、更に、集塵電極11,12で発生する電界が貫通孔2内に粒子状物質を効果的に吸着させることが可能となる。
【0127】
また、貫通孔2の形状としては、貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることが好ましい。貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることにより、より効率的に配管内を流通する排ガス等を粒子状物質検出装置の貫通孔内に流入(入口部分が拡開された場合)させることや、流出(出口部分が拡開された場合)させることが可能となる。
【0128】
また、このような粒子状物質検出装置は、検出装置本体1が、複数のテープ状セラミック(セラミックシート)が積層されてなるものであることが好ましい。これにより、複数のテープ状セラミックを、それぞれの間に各電極、配線等を挟みながら積層して粒子状物質検出装置を作製することができるため、粒子状物質検出装置を効率的に製造することが可能となる。
【0129】
〔2−1b〕計測電極(電極部):
計測電極は、貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に少なくとも一対配置されたものであり、集塵電極によって貫通孔の壁面に粒子状物質を電気的に吸着させることにより生じる、貫通孔を形成する壁の電気的特性の変化に基づいて、排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を検出するための電極である。そして、図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aにおいては、この一対の計測電極15,16に付着した粒子状物質を除去した後に電気的特性を測定し、測定された電気的特性と、装置の初期に測定された初期電気的特性とを比較することによって、装置の異常判定を行うことができる。
【0130】
計測電極の形状については、上述したように貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することが可能なものであれば特に制限はないが、図7に示すような櫛歯状に分岐した形状を好適例として挙げることができる。このように構成することによって、より正確な測定を行うことができる。
【0131】
計測電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、計測電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0132】
この計測電極には、それぞれ検出装置本体の他方の端部に向かって延びる一対の計測電極配線が電気的に接続されている。それぞれの計測電極配線の幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、計測電極配線の厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、計測電極配線の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0133】
また、図3A〜図3Dに示すように、粒子状物質検出装置100aの一対の計測電極15,16は、検出装置本体1の他方の端部1bに、それぞれの電極の取り出し端子15a,16aを有している。異常判定を行う場合の電気的特性の測定についても、この取り出し端子15a,16aによって行うことができる。即ち、この取り出し端子15a,16aが、粒子状物質の検出を行うための検出手段23(図1A参照)と、異常判定を行うための異常判定手段26(図1A参照)とにそれぞれ電気的に接続されている。
【0134】
一対の計測電極15,16の取り出し端子15a,16aを、検出装置本体1の他方の端部1bに配設することにより、貫通孔2が配設される部分(即ち、一方の端部1a)と取り出し端子15a,16aとの間隔を大きくとることができるため、貫通孔2等が配設される一方の端部1aだけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、取り出し端子15a,16aが配設されている他方の端部1b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。取り出し端子15a,16aを高温にすると、粒子状物質の検出精度が低下し、安定した検出が行い難くなることがあったり、長期にわたって使用した場合に電気端子と外部に接続するためのハーネスとの接点不良が発生し測定不能になったりすることがあるため、取り出し端子15a,16aを配管の外に出し、高温に曝されない状態とすることにより、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0135】
検出装置本体1の他方の端部1bに配設された取り出し端子15a,16aは、図3Bに示すように、検出装置本体1の他方の端部1bの側面に、長手方向に延びるように配置されていることが好ましい。なお、図3Bにおいては、検出装置本体1の他方の端部1bは、幅が狭くなっているが、他方の端部1bの幅は、このように狭くなっていてもよいし、狭くなっていなくてもよい。取り出し端子15a,16aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.1〜2.0mm、長さ0.5〜20mmの帯状であることが好ましい。取り出し端子15a,16aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)等を挙げることができる。
【0136】
〔2−1c〕集塵電極(電極部):
集塵電極は、貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、上記一対の計測電極の埋設位置よりも貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、検出装置本体を構成する誘電体で覆われた電極である。このような集塵電極11,12間に所定の電圧を印加することにより、貫通孔2内に電界を発生させることができる。
【0137】
集塵電極は、貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、貫通孔2内に電界を発生させることができるものであれば、その形状については特に制限はない。本実施形態の粒子状物質検出装置においては、集塵電極の一方の電極が、図5に示すように、上記計測電極15,16が配置された壁と貫通孔2を隔てて反対側の壁の内部に配置された(図4参照)、高電圧が印加される高電圧集塵電極11であり、また、集塵電極の他方の電極が、図8に示すように、上記計測電極15,16が配置された壁と同一側の壁の内部に配置された(図4参照)、接地された接地集塵電極12である。それぞれの集塵電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、集塵電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0138】
集塵電極11,12の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、貫通孔2内に電界を発生させることが可能であればよい。例えば、形状としては、長方形、円形、長円形等を挙げることができる。また、集塵電極11,12の大きさは、例えば、貫通孔2の、側面から見たときの面積の70%以上であることが好ましい。
【0139】
例えば、図5においては、高電圧集塵電極11が、貫通孔と略同じ大きさに形成された場合の例を示している。この高電圧集塵電極11には、検出装置本体1の長手方向に延びる配線11bが接続されており、配線11bが、その先端(電極11に接続されていない側の先端)部分で、図3Bに示す取り出し端子11aに層間接続(ビア接続)されている。配線11bの幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、配線11bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、配線11bの材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0140】
なお、一対の集塵電極の両方の取り出し端子を、検出装置本体の他方の端部に配設してもよいが、図3A〜図3Dに示すように、接地された集塵電極(接地集塵電極12)の取り出し端子12aを検出装置本体1の他方の端部1bに配設し、高電圧集塵電極11の取り出し端子11aを、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設することが好ましい。これにより、接地集塵電極12の取り出し端子12aと、高電圧集塵電極11の取り出し端子11aとを、間隔を開けて配設することができる。このため、一対の集塵電極11,12間に電圧を印加するために、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間に電圧を印加したときに、検出装置本体1の表面に沿面放電が生じることを有効に防止することができる。
【0141】
粒子状物質検出装置100aにおいては、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間の距離が、5〜100mmであることが好ましく、10〜70mmであることが更に好ましい。5mmより短いと沿面放電による短絡がし易くなることがある。一方、100mmより長いと、取り出し端子11aが配管の外に位置するように、粒子状物質検出装置100aの検出装置本体1を配管等に装着したときに、検出装置本体1の配管の外側に突き出る部分が長くなりすぎ、検出装置本体1を狭い空間に取り付けることが難しくなることがある。
【0142】
また、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設した取り出し端子11aと、貫通孔2との間の距離は、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。10mmより短いと、粒子状物質検出装置100aを、貫通孔2の部分が配管内に挿入されるように、配管に装着したときに、配管内を流通する高温の排ガスの熱が取り出し端子11aに影響を及ぼし易くなることがある。
【0143】
高電圧集塵電極11の取り出し端子11aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.5〜3mm、長さ0.5〜3mmの四角形等の多角形状であることが好ましいが、円形、楕円形、レーストラック形状、その他の形状等であってもよい。取り出し端子11aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0144】
高電圧集塵電極11と貫通孔2との間の距離、及び接地集塵電極12と貫通孔2との間の距離は、50〜500μmであることが好ましく、100〜300μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に貫通孔内に電界を生じさせることができる。各集塵電極11,12と、貫通孔2との間の距離は、各集塵電極11,12を覆う誘電体の、貫通孔2に面する部分の厚さということになる。
【0145】
集塵電極により発生する電界の条件としては、ギャップ(一対の集塵電極相互間の距離)、ガス温度によって変わるが50〜200kV/cmが好ましい。
【0146】
粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2内に流入する流体(即ち、排ガス)に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させ、粒子状物質を吸着させたことによる電気的特性の変化を読み取り、排ガス中に含まれる粒子状物質を検出するものである。排ガス中の粒子状物質が、貫通孔2内に流入する前から既に荷電されている場合には、貫通孔2内に発生させた電界によって粒子状物質を吸着させる。一方、粒子状物質が荷電されていない場合には、貫通孔2内に発生させた電界によって粒子状物質を荷電し、貫通孔2の壁面に荷電した粒子状物質を電気的に吸着させる。
【0147】
〔2−1d〕検出手段:
検出手段は、電極部の電気的特性を検出するためのものである。具体的には、例えば、測定する電気的特性が静電容量である場合には、アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B等を用いることができる。
【0148】
図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aにおいては、計測電極15,16の取り出し端子15a,16aと、検出手段23(図1A参照)とが電気的に接続されており、計測電極15,16の電気的特性を検出することができるように構成されている。
【0149】
〔2−1e〕加熱部(除去手段):
図4及び図9に示す粒子状物質検出装置100aは、貫通孔2の壁面(検出装置本体1の側面に並行する壁面)に沿うようにして検出装置本体1の内部に配設(埋設)された加熱部13を備えている。加熱部13は、本発明における除去手段25であり、加熱部13によって装置を加熱することにより、貫通孔2を形成する壁に吸着された粒子状物質を加熱酸化させることができる(即ち、装置を再生することができる)。また、粒子状物質の質量測定時等において、貫通孔2の内部空間を所望の温度に調節し、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調を行うことができる。また、この加熱部13を利用して、検出装置本体1、即ち、誘電体の温度を変化させることができ、誘電体の温度と、一対の計測電極間の静電容量との関係を検査することもできる。
【0150】
加熱部13は、幅広のフィルム状であってもよいが、図9に示すように、線状の金属材料を、波状に配置し、先端部分でU−ターンするように配置したものであることが好ましい。このような形状にすることにより、貫通孔内部を均一に過熱し、電極部21(測定電極15,16)に付着した粒子状物質を除去することができる。加熱部13の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。加熱部13は、貫通孔2の壁面に沿うようにして検出装置本体1の内部に埋設されることが好ましいが、図9に示すように、貫通孔2が配置されている位置だけでなく、更に検出装置本体1の他方の端部1b側に延びるように形成されていてもよい。これにより、貫通孔内部と貫通孔付近との温度差を小さくでき、急加熱しても素子(検出装置本体)の破損が起きにくいという利点がある。加熱部により、貫通孔の内部空間の温度を650℃まで上昇できることが好ましい。
【0151】
また、図9においては、二本の配線によって二つの加熱部13が形成された場合の例を示しているが、加熱部は一つであってもよいし、三つ以上の複数であってもよい。また、図示は省略するが、貫通孔が形成される両側の壁に、それぞれ加熱部が配置されていてもよい。即ち、加熱部の配置及び数は、捕集した粒子状物質の酸化除去や、温度調節等の目的を達成するために必要な配置及び数とすることができる。
【0152】
また、図9に示す加熱部13は、配線13bに接続され、それぞれの配線13bは、図3Dに示すように、各取り出し端子13aに層間接続されている。加熱部13の取り出し端子13aも、計測電極15,16の取り出し端子15a,16aの場合と同様に、検出装置本体1の一方の端部1a側が加熱されたときの熱の影響を回避するために、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されることが好ましい。図3Dにおいては、四つの取り出し端子13aが、検出装置本体1の他方の側面側に、四本が並ぶように配置されているが、取り出し端子13aの配置は、このような配置に限定されるものではない。
【0153】
〔2−1f〕異常判定手段:
異常判定手段は、初期電気的特性と、再生後に測定される電気的特性とを比較して、粒子状物質検出装置の異常を判定するものである。具体的には、再生後に電気的特性を測定する測定部と、異常を判定するための判定部とから構成されたものを挙げることができる。
【0154】
再生後の電気的特性を測定する測定部は、上述した検出手段の検出部と同様に構成されたものを用いることができる。即ち、検出手段の検出部を流用して電気的特性の測定を行うことができる。例えば、測定する電気的特性が静電容量である場合には、アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B等を用いることができる。
【0155】
また、異常を判定するための判定部としては、初期電気的特性の値と、再生後に測定される電気的特性の値との差異(変化量)を算出し、この変化量に応じて、予め設定された異常の類型から、適合する異常を選択する演算処理を行う集積回路、及び、選択された異常を表示するディスプレイ等の表示部を有するものを挙げることができる。
【0156】
〔3〕粒子状物質検出装置の検査方法:
次に、本発明の粒子状物質検出装置の検査方法の一の実施形態について説明する。本実施形態の粒子状物質検出装置の検査方法は、これまでに説明した、本実施形態の粒子状物質検出装置において行われた、装置の異常判定を行うことによって、粒子状物質検出装置の異常を検査する検査方法である。
【0157】
即ち、本実施形態の粒子状物質検出装置の検査方法は、図1A及び図1Bに示すような、内燃機関30の排気系31に設けられた電極部21と、この電極部21の電気的特性を検出する検出手段23とを備え、電極部21に粒子状物質36が付着することによる電気的特性の変化に基づいて、排気系31を通過する排ガス32に含まれる粒子状物質36を検出する粒子状物質検出装置100の異常を検査するための粒子状物質検出装置の検査方法である。
【0158】
本実施形態の粒子状物質検出装置の検査方法は、電極部21に粒子状物質36が付着していない使用初期の状態にて、電極部21の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、且つ、図1Bに示すように、排ガス32が通過する流路(排気系31)の内部に設置された粒子状物質検出装置100の電極部21に付着した粒子状物質36を除去し、粒子状物質検出装置100にて粒子状物質の検査を開始する状態とした、電極部21の電気的特性を測定し、当該測定した電気的特性と、上記初期電気的特性との値を比較して、粒子状物質検出装置100の異常を判定する粒子状物質検出装置の検査方法である。
【0159】
なお、粒子状物質の検出は、検出手段23によって行われ、粒子状物質の除去(再生)は、除去手段25によって行われ、異常の判定は、異常判定手段26によって行われる。
【0160】
このように構成することによって、粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、その装置の破損や不具合を良好に検査することができる。例えば、排ガス処理装置が正常に機能している場合には、何ら検出に関する信号を受信しない検出装置、或いは、「検出せず」との信号を受信する場合であっても極めて小さく、検出された場合において、初めて検出されたことが認識されるような検出装置において、現時点で正常な測定が行われているか否かの確認を行うことができる。このため、粒子状物質検出装置のゼロ点の確認を簡便に行うことができるとともに、検出装置の破損等の不具合(異常)も確認することができる。
【0161】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置の検査方法は、得られた電気的特性の値によって、不具合が生じた箇所や不具合の内容を限定或いは特定することができるため、不具合が生じた場合に、故障部分の交換や修復等の作業を簡便且つ迅速に行うことができる。
【0162】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置の検査方法(以下、単に「検査方法」ということがある)は、上述したように、粒子状物質検出装置として、装置に付着した粒子状物質を除去する除去手段を更に備えたものを用いることが好ましい。なお、このような除去手段として、例えば、装置内部を加熱するヒータを用いることができる。なお、本実施形態の検査方法においては、粒子状物質検出装置に除去手段を設けるのではなく、別途、粒子状物質を除去する除去手段を用いて異常判定を行うことも勿論可能である。
【0163】
また、本実施形態の検査方法は、電気的特性として、静電容量又は抵抗値を測定することが好ましい。このように構成することによって、粒子状物質の検出と、異常判定とを同じ種類の電気的特性(即ち、静電容量又は抵抗値)によって実施することができ、異常判定をより簡便に行うことができる。
【0164】
また、本実施形態の検査方法においては、検査対象となる粒子状物質検出装置が、初期電気的特性としての初期静電容量が、0〜100pFの範囲となるように構成された粒子状物質検出装置であることが好ましい。上述したような構成の粒子状物質検出装置は、従来、その異常の判定を行うことが極めて困難であったが、本実施形態の検査方法を用いることによって、正確且つ簡便に異常判定を行うことができる。
【0165】
また、本実施形態の検査方法は、上述した本実施形態の粒子状物質検出装置と同様の判定基準を設け、種々の異常を検査することができる。例えば、異常判定を行う粒子状物質検出装置の構成によっても異なるが、異常を判断する際に比較する電気的特性が静電容量であり、測定した静電容量の値が、0pFである場合には、電極部の断線或いは接触不良と判定することができ、また、同様に、異常を判断する際に比較する電気的特性が静電容量であり、初期電気的特性としての初期静電容量と、測定した静電容量(再生後の電気的特性)との値を比較して、その差が0.5pF以上である場合に、電極部の破損、電極部が一対の電極部である場合には、一対の電極部の短絡、及び電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されている場合には、誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常と判定することができる。このように、本実施形態の検査方法は、得られた電気的特性の値から、異常の種類や、粒子状物質検出装置に生じた異常の箇所を、ある程度限定、或いは特定することができる。
【0166】
また、本実施形態の検査方法においては、粒子状物質検出装置として、電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものを用い、その誘電体を昇温させながら、電極部の電気的特性を測定し、測定される電気的特性の変化から、電極部の断線、接触不良及び誘電体の破損を更に検査するものであってもよい。即ち、電気的特性の測定時において、誘電体を昇温させながら測定を行うことによって、更に詳細な異常判定を行うことができる。例えば、誘電体の温度変化に対して、測定される電気的特性が変化しない場合には、電極部の断線、又は接触不良と判断することができる。
【0167】
また、本実施形態の検査方法においては、電極部の電気的特性を測定する際に、電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら電気的特性を測定し、測定される電気的特性の推移によって、誘電体の破損を検査するものであってもよい。
【0168】
上述した、誘電体を昇温することや、電圧の周波数を変化させることは、例えば、通常の電気的特性の測定では出現しないような、特定の異常に起因する電気的特性の変化や、極めて小さな異常であって、通常の電気的特性の測定では、その差異の判断が難しい場合において、特定の異常に起因する電気的特性の変化を意図的に大きくすることができ、より詳細且つ広域の異常判定を行うことが可能となる。
【0169】
本実施形態の検査方法においても、初期静電容量の測定に変えて、粒子状物質検出装置の構成に適した初期電気的特性を予め設定し、設定された初期電気的特性と、測定した電気的特性との値を比較して、粒子状物質検出装置の異常を検査してもよい。即ち、初期電気的特性は、異常判定を行う判定基準であるため、装置の構成により特有の値を有している。このため、同一の構成の粒子状物質検出装置が複数製造される場合等は、予め初期電気的特性が判明しているため、各装置において初期電気的特性の測定を行わず、予め判明している初期電気的特性の値を用いて異常判定を行ってもよい。
【0170】
また、本実施形態の検査方法は、例えば、粒子状物質検出装置として、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備え、電極部が、貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極の埋設位置よりも貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有するものを用いることが好ましい。このような粒子状物質検出装置としては、例えば、図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aを挙げることができる。
【0171】
図3A〜図3Dに示す粒子状物質検出装置100aが検査対象である場合には、初期電気的特性と、測定した電気的特性との値を比較して、計測電極15,16の断線、接触不良若しくは破損、一対の計測電極15,16の短絡、及び誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常を検査することができる。
【0172】
なお、本実施形態の検査方法は、電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて測定される電気的特性を、基準となる初期電気的特性とするとともに、検査対象の粒子状物質検出装置の電極部に付着した粒子状物質を除去した後(装置を再生した後)に、その電極部の電気的特性を測定して、測定された電気的特性と、上記初期電気的特性とを比較して、装置の異常を判定する工程を備えた検査方法であれば、電気的特性の種類やその測定方法等については、これまでに説明したものに限定されることはない。また、異常判定の方法については、本実施形態の粒子状物質検出装置にて説明した異常判定方法を用いて異常の判定を行うことができる。
【実施例】
【0173】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0174】
(粒子状物質検出装置の作製)
本発明の粒子状物質検出装置の検査方法を行うための検査対象として、図3A〜図3D、及び図4〜図9に示すような粒子状物質検出装置100aを作製した。
【0175】
具体的には、まず、アルミナを誘電体原料として使用し、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエートを使用し、分散媒として有機溶剤(キシレン、ブタノール=6:4(質量比))を使用し、これらをアルミナ製ポットに入れて混合し、グリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、アルミナ100質量部に対して、バインダー7質量部、可塑剤3.5質量部、分散剤1.5質量部、有機溶剤100質量部とした。
【0176】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度4Pa・sとなるように調製した。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した。
【0177】
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をドクターブレード法を用いてシート状に成形加工した。このとき、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、切断部形成グリーンシートも作製した。グリーンシートの厚さは、計測電極が配置されるグリーンシートを50μmとし、それ以外のグリーンシートを250μmとした。
【0178】
得られたグリーンシートの表面に、図4〜図9に示されるような、各電極(計測電極、及び集塵電極)、加熱部(除去手段)、各配線、及び各取り出し端子を形成した。配設する各電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0179】
また、加熱部を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0180】
このようにして形成した導体ペーストを、グリーンシートの表面にスクリーン印刷を用いて印刷して、所定の形状の電極等を形成した。具体的には、複数のグリーンシートのなかの二つのグリーンシートについて、それぞれの一方の面に集塵電極を配設し、高電圧集塵電極については他方の端部に向かって延びる配線を配設して、集塵電極配設グリーンシートを二つ形成した。
【0181】
更に、厚さ50μmのグリーンシートについて、貫通孔を形成する部位に、櫛歯状の一対の計測電極を形成した。櫛歯状の一対の計測電極は、櫛歯部分の線間ピッチが0.35mm(櫛歯部分のクリアランスが0.15mm、各櫛歯部分の幅が0.20mm)となるように間隔を空けて噛み合うように対向配置した。
【0182】
更に、他の一つのグリーンシートについて、計測電極配設グリーンシートと重ねたときに計測電極と重なる位置に貫通孔となる切断部を形成して切断部形成グリーンシートを形成した。更に、別の他の一つのグリーンシートについて、切断部形成グリーンシートと重ねたときに貫通孔となる切断部と重なる位置に加熱部を形成し、加熱部から他方の端部に向かって延びる配線を配設して加熱部形成グリーンシートを形成した。
【0183】
そして、二つの集塵電極配設グリーンシートのそれぞれに、他の電極等が配設されていないグリーンシートを重ねて集塵電極及び配線をグリーンシートで覆った状態として、集塵電極埋設グリーンシートとするとともに、二つの集塵電極埋設グリーンシートで計測電極配設グリーンシート及び切断部形成グリーンシートを挟むように積層し、更に、加熱部形成グリーンシートを集塵電極埋設グリーンシートの外側に位置するように積層し、二つの集塵電極で切断部を挟み且つ二つの配線で計測電極を挟んだ状態のグリーンシート積層体を形成した。各配線と、各配線に対応する取り出し端子とは、導体ペーストの埋め込み方法により、層間接続(ビア接続)した。
【0184】
グリーンシートの積層は、グリーンシートを加熱可能な一軸プレス機を用いて加圧積層し、グリーンシート積層体からなる粒子状物質検出装置の未焼成体を得た。
【0185】
得られた、グリーンシート積層体(粒子状物質検出装置の未焼成体)を120℃で乾燥し、1500℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製した。粒子状物質検出装置の取り出し端子には、検出手段及び異常判定手段としてのLCRメータ(アジレント・テクノロジー社製のLCRメータ4263B)に配線を用いて電気的に接続した。このように作製された粒子状物質検出装置を、検出装置(1)とした。
【0186】
なお、検出装置(1)における異常判定手段の判定基準として、以下の(a)〜(c)の判定基準を設定し、異常判定手段によって、適合する異常を選択し、異常の判定を行った。
(a):初期電気的特性としての初期静電容量と、測定した静電容量との値を比較して、その差が0.5pF未満である場合には、異常なしと判定する。
(b):測定した静電容量の値が、0pFである場合には、電極部の断線或いは接触不良と判定する。
(c):初期電気的特性としての初期静電容量と、測定した静電容量との値を比較して、その差が0.5pF以上である場合には、電極部の破損、一対の電極部の短絡、及び誘電体の破損のうちの少なくとも一種の異常と判定する(但し、差が1000pF以上の場合には、一対の電極部の短絡とする)。
【0187】
また、粒子状物質検出装置として、上記の粒子状物質検出装置の他に、測定電極を断線させた検出装置(2)、一対の測定電極を短絡させた検出装置(3)、誘電体に衝撃を加えて割れを生じさせた検出装置(4)、検出装置(電極部、具体的には計測電極)と検出手段(具体的には、検出手段を構成する回路)間の配線を断線させた検出装置(5)を作製した。
【0188】
(実施例1)
上記した検出装置(1)に対して、異常判定手段によって異常の判定を行った。具体的には、まず、検出装置(1)の初期静電容量を、1Vrms,1kHzの条件にて測定した。測定された初期静電容量は、6.5pFであった。
【0189】
次に、ディーゼルエンジンの排気系にディーゼルパティキュレートフィルタを配設し、更にその下流側に、上記検出装置(1)を設置して粒子状物質の検出を行った。検出装置(1)を1時間使用した後、検出装置(1)に付着した粒子状物質を除去し、検出装置(1)にて粒子状物質の検査を開始する状態に再生した後、一対の計測電極間の静電容量を再度測定した。測定された静電容量は、6.5pFであった。
【0190】
初期静電容量と測定された静電容量とが同じ値であるため、異常判定手段の判定基準において、上記(a)に適合し、検出装置(1)には異常が生じていないと判定された。また、検出装置(1)を排気系から取り出し、装置の状態を詳細に確認したところ、取り出した装置は、正常の機能を有しており、異常は確認されなかった。
【0191】
(実施例2)
上記検出装置(2)を、実施例1と同様の方法にて、ディーゼルエンジンの排気系に設置し、粒子状物質の検出を行い、更に、装置を再生した後に、一対の計測電極間の静電容量を再度測定した。測定された静電容量は、3pFであった。なお、検出装置(2)は、意図的に異常を生じさせたこと以外は、検出装置(1)と同様に構成されているため、初期静電容量は、実施例1と同様に6.5pFとした。
【0192】
初期静電容量と測定された静電容量との値を比較すると、2.5pFの減少がみられ0.5pF以上の変化があるため異常(判定基準(b))と判定された。0.5pF以上の変化の場合は、電極部の破損、短絡、誘電体の破損のうちのいずれかの異常が想定されるが、短絡の場合は、測定された静電容量が極めて大きく(例えば、1000pF以上)となるため、電極部の破損として、測定電極を断線が異常して挙げられる。
【0193】
(実施例3〜5)
上記検出装置(3)〜(5)についても、実施例1と同様の方法にて、ディーゼルエンジンの排気系に設置し、粒子状物質の検出を行い、更に、装置を再生した後に、一対の計測電極間の静電容量を再度測定した。検出装置(3)では、測定された静電容量を1000pF以上であり、検出装置(4)では、測定された静電容量を5.5pFであり、検出装置(5)では、測定された静電容量を0pFであった。
【0194】
検出装置(3)は、初期静電容量の6.5pFに対して、測定された静電容量を1000pF以上であり、測定電極を短絡の異常(判定基準(c)の但し書)が発生していると判定された。
【0195】
また、検出装置(4)は、初期静電容量の6.5pFに対して、1.0pFの減少がみられ0.5pF以上の変化があるため異常(判定基準(c))と判定された。
【0196】
また、検出装置(5)は、測定された静電容量を0pFであり、再生後の静電容量が測定されなかったため、判定基準(b)の異常、即ち、電極部の断線或いは接触不良と判定された。検出装置(5)においては、静電容量が全く測定されなったため、計測電極から検出手段及び異常判定手段までの間の配線の断線が予想される。
【0197】
(結果)
本発明の粒子状物質検出装置は、初期静電容量の値と、測定された静電容量の値とから、装置の異常を判定することができた。特に、装置に応じた判定基準を設けることによって、実施例2〜5に示すように、異常が生じた箇所や異常の内容を限定或いは特定することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明の粒子状物質検出装置は、内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を検出する検出装置として用いることができる。そして、本発明の粒子状物質検出装置、及び粒子状物質検出装置の検査方法は、粒子状物質検出装置によって粒子状物質の検出が正常に行われているか否かを判断し、且つ、装置の異常を良好に検査することができる。
【符号の説明】
【0199】
1:検出装置本体、1a:一方の端部、1b:他方の端部、1c:一方の先端部分、1d:他方の先端部分、2:貫通孔、11:集塵電極(高電圧集塵電極)、12:集塵電極(接地集塵電極)、11a,12a,13a:取り出し端子、11b,12b,13b:配線、13:加熱部、15,16:計測電極、15a,16a:計測電極取り出し端子(取り出し端子)、15b,16b:計測電極配線(配線)、21:電極部、23:検出手段、25:除去手段、26:異常判定手段、30:内燃機関、31:排気系、36:粒子状物質、100:粒子状物質検出装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系に設けられた電極部と、
前記電極部の電気的特性を検出する検出手段と、を備え、
前記電極部に粒子状物質が付着することによる前記電気的特性の変化に基づいて、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、
前記電極部に付着する粒子状物質を除去する除去手段と、
前記電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて、前記電極部の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、且つ、
前記除去手段によって前記電極部の表面に付着した粒子状物質を除去し、前記粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検出を開始する状態とした、前記電極部の電気的特性を測定し、当該測定した前記電気的特性と、前記初期電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定する異常判定手段と、を更に備えた粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記異常判定手段によって比較する前記電気的特性が、静電容量又は抵抗値である請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記除去手段が、装置内部を加熱するヒータを有する請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、前記誘電体を昇温させながら、前記電極部の前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の変化から、前記電極部の断線、接触不良及び前記誘電体の破損を、前記異常判定手段によって更に検査するように構成された請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記誘電体の温度変化に対して、測定される前記電気的特性が変化しない場合に、前記電極部の断線、又は接触不良と判断する請求項4に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、前記電極部の電気的特性を測定する際に、前記電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら前記電気的特性を測定可能に構成され、測定される前記電気的特性の推移によって、前記誘電体の破損を検査する請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項7】
前記初期電気的特性が予め前記異常判定手段に設定されており、設定された前記初期電気的特性と、測定された前記電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定するように構成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項8】
前記粒子状物質検出装置は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を備え、
前記電極部が、前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、前記貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、前記一対の計測電極の埋設位置よりも前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項9】
前記初期電気的特性と、測定した前記電気的特性との値を比較して、前記計測電極の断線、接触不良若しくは破損、前記一対の計測電極の短絡、及び前記誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常を検査するように構成された請求項8に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項10】
内燃機関の排気系に設けられた電極部と、前記電極部の電気的特性を検出する検出手段とを備え、前記電極部に粒子状物質が付着することによる前記電気的特性の変化に基づいて、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置の異常を検査するための粒子状物質検出装置の検査方法であって、
前記電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて、前記電極部の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、
排ガスが通過する流路の内部に設置された前記粒子状物質検出装置の前記電極部に付着した粒子状物質を除去し、前記粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検査を開始する状態とした、前記電極部の電気的特性を測定し、当該測定した前記電気的特性と、前記初期電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定する粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項11】
前記粒子状物質検出装置として、装置に付着した粒子状物質を除去する除去手段を更に備えたものを用いる請求項10に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項12】
前記電気的特性として、静電容量又は抵抗値を測定する請求項10又は11に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項13】
前記粒子状物質検出装置として、装置内部を加熱するヒータを更に備えたものを用いる請求項10〜12のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項14】
前記粒子状物質検出装置として、前記電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものを用い、前記誘電体を昇温させながら、前記電極部の前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の変化から、前記電極部の断線、接触不良及び前記誘電体の破損を更に検査する請求項10〜13のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項15】
前記誘電体の温度変化に対して、測定される前記電気的特性が変化しない場合に、前記電極部の断線、又は接触不良と判断する請求項14に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項16】
前記粒子状物質検出装置として、前記電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものを用い、前記電極部の電気的特性を測定する際に、前記電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の推移によって、前記誘電体の破損を検査する請求項10〜15のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項17】
前記初期静電容量の測定に変えて、前記粒子状物質検出装置の構成に適した初期電気的特性を予め設定し、設定された前記初期電気的特性と、測定した電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を検査する請求項10〜16のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項18】
前記粒子状物質検出装置として、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備え、
前記電極部が、前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、前記貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、前記一対の計測電極の埋設位置よりも前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有するものを用いる請求項10〜17のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項19】
前記初期電気的特性と、測定した前記電気的特性との値を比較して、前記計測電極の断線、接触不良若しくは破損、前記一対の計測電極の短絡、及び前記誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常を検査する請求項18に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項1】
内燃機関の排気系に設けられた電極部と、
前記電極部の電気的特性を検出する検出手段と、を備え、
前記電極部に粒子状物質が付着することによる前記電気的特性の変化に基づいて、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、
前記電極部に付着する粒子状物質を除去する除去手段と、
前記電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて、前記電極部の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、且つ、
前記除去手段によって前記電極部の表面に付着した粒子状物質を除去し、前記粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検出を開始する状態とした、前記電極部の電気的特性を測定し、当該測定した前記電気的特性と、前記初期電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定する異常判定手段と、を更に備えた粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記異常判定手段によって比較する前記電気的特性が、静電容量又は抵抗値である請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記除去手段が、装置内部を加熱するヒータを有する請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、前記誘電体を昇温させながら、前記電極部の前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の変化から、前記電極部の断線、接触不良及び前記誘電体の破損を、前記異常判定手段によって更に検査するように構成された請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記誘電体の温度変化に対して、測定される前記電気的特性が変化しない場合に、前記電極部の断線、又は接触不良と判断する請求項4に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
前記電極部は、その少なくとも一部が誘電体によって被覆されており、前記電極部の電気的特性を測定する際に、前記電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら前記電気的特性を測定可能に構成され、測定される前記電気的特性の推移によって、前記誘電体の破損を検査する請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項7】
前記初期電気的特性が予め前記異常判定手段に設定されており、設定された前記初期電気的特性と、測定された前記電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定するように構成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項8】
前記粒子状物質検出装置は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を備え、
前記電極部が、前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、前記貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、前記一対の計測電極の埋設位置よりも前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項9】
前記初期電気的特性と、測定した前記電気的特性との値を比較して、前記計測電極の断線、接触不良若しくは破損、前記一対の計測電極の短絡、及び前記誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常を検査するように構成された請求項8に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項10】
内燃機関の排気系に設けられた電極部と、前記電極部の電気的特性を検出する検出手段とを備え、前記電極部に粒子状物質が付着することによる前記電気的特性の変化に基づいて、前記排気系を通過する排ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置の異常を検査するための粒子状物質検出装置の検査方法であって、
前記電極部に粒子状物質が付着していない使用初期の状態にて、前記電極部の電気的特性を測定し、当該電気的特性を初期電気的特性とし、
排ガスが通過する流路の内部に設置された前記粒子状物質検出装置の前記電極部に付着した粒子状物質を除去し、前記粒子状物質検出装置にて粒子状物質の検査を開始する状態とした、前記電極部の電気的特性を測定し、当該測定した前記電気的特性と、前記初期電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を判定する粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項11】
前記粒子状物質検出装置として、装置に付着した粒子状物質を除去する除去手段を更に備えたものを用いる請求項10に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項12】
前記電気的特性として、静電容量又は抵抗値を測定する請求項10又は11に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項13】
前記粒子状物質検出装置として、装置内部を加熱するヒータを更に備えたものを用いる請求項10〜12のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項14】
前記粒子状物質検出装置として、前記電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものを用い、前記誘電体を昇温させながら、前記電極部の前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の変化から、前記電極部の断線、接触不良及び前記誘電体の破損を更に検査する請求項10〜13のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項15】
前記誘電体の温度変化に対して、測定される前記電気的特性が変化しない場合に、前記電極部の断線、又は接触不良と判断する請求項14に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項16】
前記粒子状物質検出装置として、前記電極部の少なくとも一部が誘電体によって被覆されたものを用い、前記電極部の電気的特性を測定する際に、前記電極部に印加する電圧の周波数を変化させながら前記電気的特性を測定し、測定される前記電気的特性の推移によって、前記誘電体の破損を検査する請求項10〜15のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項17】
前記初期静電容量の測定に変えて、前記粒子状物質検出装置の構成に適した初期電気的特性を予め設定し、設定された前記初期電気的特性と、測定した電気的特性との値を比較して、前記粒子状物質検出装置の異常を検査する請求項10〜16のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項18】
前記粒子状物質検出装置として、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体を更に備え、
前記電極部が、前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、前記貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、前記一対の計測電極の埋設位置よりも前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極とを有するものを用いる請求項10〜17のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【請求項19】
前記初期電気的特性と、測定した前記電気的特性との値を比較して、前記計測電極の断線、接触不良若しくは破損、前記一対の計測電極の短絡、及び前記誘電体の破損からなる群より選択される少なくとも一種の異常を検査する請求項18に記載の粒子状物質検出装置の検査方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−141209(P2011−141209A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2300(P2010−2300)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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