説明

粒状物繰出機

【課題】前後方向に複数の繰出部を有する、施肥機又は播種機のような粒状物繰出機では、繰出部上のホッパーを合体して大容量ホッパーとしていたが、該大容量ホッパーは装着車両の旋回時に一緒に傾き、内部の種子等が流動して傾倒側に大きく偏るため、車両旋回後に水平に戻って作業を再開しても、種子等の流動性が悪いと元の分布状態には復帰せず、各繰出部に供給される粒状物の量に大きな差が生じる、という問題があった。
【解決手段】ホッパー36と、その下部空間36aに連通する繰出装置38とを有し、該繰出装置38は、作業中に前記ホッパー36が傾倒する方向86と略同一方向に並設した複数の繰出部60・61より成り、該複数の繰出部60・61のそれぞれが前記下部空間36aとの間に連通口72・73を備える粒状物繰出機15にて、前記下部空間36aを前記連通口72・73の間で仕切る仕切体81を、ホッパー36内に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料や種子等の粒状物を所定量だけ圃場に繰り出す粒状物繰出機に関し、特に、トラクタや管理機に装着されて移動されながら施肥や播種を行う播種機や施肥機等に設けられた粒状物繰出機のホッパー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラクタや管理機等の車両に装着され、施肥と播種を同時に作業可能とした施肥播種機が知られており、該施肥播種機には、施肥用のホッパーと繰出部とから成る施肥装置と、播種用のホッパーと繰出部とから成る播種装置とを前後に並設して一体とし、施肥播種機全体をコンパクトな構成としたもの(例えば特許文献1)が公知となっている。そして、このような一体型の施肥播種機のホッパー及び繰出部を利用し施肥又は播種のいずれか一方の作業を行う際は、両ホッパーへ投入する粒状物を同じものにするだけで、一つの繰出機で複数条に所定の粒状物を繰り出すことができる。
更に、このような一体型の施肥機又は播種機を使う際には、ホッパーへの粒状物の投入等の作業性を向上させるべく、施肥用と播種用の前記繰出装置はそのままで、ホッパーのみを合体して一個のホッパー(以下、「単一ホッパー」とする)として、ホッパーの大容量化を図ることが行われている。
【特許文献1】特開昭62−239907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記施肥機又は播種機は、車両に装着されて牽引されながら作業を行うが、該車両が圃場端等に到達すると、装着部を支点として持ち上げられた状態で車両と一緒に旋回し、旋回が完了すると、下降して圃場に着地してから再び作業を開始する。この車両旋回時には、前記ホッパーも同時に大きく傾き、該ホッパー内の粒状物残量が少ない場合には、粒状物は単一ホッパーの傾倒側に大きく偏ることとなる。
従って、繰出部ごとに別々に設けられたホッパーにおいては、たとえ車両旋回時に該ホッパーが大きく傾いても、両ホッパーの下部空間には略同量の粒状物が充填された状態にあり、前記繰出部内への粒状物供給は略同一タイミングで終えることができるが、複数のホッパーを合体させて大容量化を図った単一ホッパーにおいては、図8に示すように、水平位置5にあった単一ホッパー1が角度7だけ回動して傾倒位置6まで上昇すると、水平位置5では、単一ホッパー1底部に開口した前後の連通口1a・1b上にほぼ同じ厚さで存在していた粒状物も、傾倒位置6では、傾倒方向8に向かって流動し、前連通口1a上は厚く覆われる一方、後連通口1b上には粒状物はほとんど存在しなくなる。
そのため、車両旋回後に再び水平位置5に戻って作業を開始しても、粒状物の流動性が悪い場合には、元の状態には復帰できず、各連通口1a・1bを覆う粒状物4の量が大きく異なり、各繰出部2・3への粒状物の供給量に差が生じ、各繰出部2・3から各々の条への粒状物供給を略同一タイミングで終えることができない。従って、条によっては未播種や未施肥の部分が発生し、作物の生産性や品質が低下する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、粒状物を蓄えるホッパーと、該ホッパーの下部空間に連通する繰出装置とを有し、該繰出装置は、作業中に前記ホッパーが傾倒する方向と略同一方向に沿って並設した複数の繰出部より構成し、該複数の繰出部のそれぞれが前記下部空間との間に連通口を備える粒状物繰出機において、前記下部空間を前記連通口の間で仕切る仕切体を、前記ホッパー内に設けたものである。
請求項2においては、前記仕切体は、前記ホッパーから着脱自在な構成とするものである。
請求項3においては、前記仕切体は、前記ホッパー内の対向する側壁に設けた固定部材によって固定するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1においては、粒状物を蓄えるホッパーと、該ホッパーの下部空間に連通する繰出装置とを有し、該繰出装置は、作業中に前記ホッパーが傾倒する方向と略同一方向に沿って並設した複数の繰出部より構成し、該複数の繰出部のそれぞれが前記下部空間との間に連通口を備える粒状物繰出機において、前記下部空間を前記連通口の間で仕切る仕切体を、前記ホッパー内に設けたので、前記下部空間を仕切体によって小さな区画空間に区切ることができ、たとえ、作業が進んでホッパーに蓄えた粒状物の残量が少なくなってから車両が旋回し、ホッパーも一緒に大きく傾いたとしても、粒状物は、小容量の前記区画空間内にそのまま保持され、ホッパーの傾動方向に向かって流出することもなく、各連通口上を同様な厚さで覆うことができる。このため、車両旋回後に再び水平に戻して作業を再開する際、たとえ流動性の悪い粒状物であっても、各連通口から各繰出部内への粒状物の供給量の差は小さく、各繰出部から各々の条への粒状物供給を略同一タイミングで終えることができ、未播種や未施肥等の部分の発生を防止して作物の生産性や品質を向上させることができる。
請求項2においては、前記仕切体は、前記ホッパーから着脱自在な構成とするので、仕切体をホッパー内から容易に取り外すことができ、繰出部に粒状体が詰まった場合の清掃作業や、粒状体の大きさや形態に応じて適切な仕切体に交換する場合の交換作業を容易かつ迅速に行うことができ、メンテナンス性を向上させることができる。更に、大豆等のように粒径が大きかったり、微粒でも粘着性が低く、そのために粒状物の流動性が高い場合は、車両旋回後にホッパーが水平に戻ると粒状体も即座に均されて、複数の前記連通口上が粒状体によってほぼ均一な厚さで覆われるため、仕切体が不要となるが、このような場合でも、ホッパーから仕切体を取り外すだけで済み、同一構成の繰出機によって様々な粒状物への適用が可能となる。
請求項3においては、前記仕切体は、前記ホッパー内の対向する側壁に設けた固定部材によって固定するので、対向する固定部材によって仕切体を両側縁から挟持して強固に支持することができ、作業中の振動等によっても仕切体が粒状物によって押し倒されることがなく、下部空間を連通口の間で確実に仕切ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係わる粒状物繰出機を備えた施肥播種機の全体側面図、図2は本発明に係わる粒状物繰出機の側面図、図3は粒状物繰出機下部の側面図、図4は同じく正面図、図5は仕切板の正面図、図6は同じく平面図、図7は本発明に係わる粒状物繰出機の傾倒前後の側面図、図8は従来の粒状物繰出機の傾倒前後の側面図である。なお、本実施例においては、図1に向かって左側を前方と定義する。
【0007】
まず、トラクタ10の後部に、本発明に関わる粒状物繰出機を備えた施肥播種機9を装着した場合の全体構成について、図1により説明する。
トラクタ10の後部の作業機装着装置にはロータリ耕耘装置11が昇降自在に装着され、該ロータリ耕耘装置11に、施肥機12と播種機13とから成る施肥播種機9が装着されている。
【0008】
このうちのロータリ耕耘装置11においては、機体左右中央にギアボックス16が配置され、該ギアボックス16から前方に入力軸17が突出され、該入力軸17は、図示せぬユニバーサルジョイントやドライブ軸等を介して前記トラクタ10のPTO軸と連結し、トラクタ10からの動力をギアボックス16内に伝達するようにしている。
【0009】
該ギアボックス16の側面より両側方にはビーム18・18が突出され、該ビーム18・18のそれぞれの中途部には本体プレート19が固定され、該本体プレート19の左右略中央部からは左右の支持杆21・21が前方に突設されており、該支持杆21・21は前記トラクタ10のロアリンク23・23に連結されている。更に、該支持杆21・21近傍の本体プレート19からは正面視門型状のマスト20が立設され、該マスト20上部に前記トラクタ1のトップリンク22が連結されている。このようなトップリンク22、マスト20、ロアリンク23・23を介することにより、ロータリ耕耘装置11をトラクタ10の後部に確実に連結支持した上で牽引できるようにしている。
【0010】
前記ビーム18・18の外側端には左右のチェーンケース24・24上部が固設され、これら左右のチェーンケース24・24の間に耕耘爪軸25が横架され、該耕耘爪軸25上にナタ爪よりなる多数の図示せぬ耕耘爪が側面視で放射状に植設されている。そして、該耕耘爪の回転軌跡26の後方は耕耘カバー27によって覆われ、該耕耘カバー27は、その前端を前記本体プレート19後端を中心として上下揺動可能に垂設されると共に、耕耘カバー27の後端と、本体プレート19から後方に突設されたフレーム28の後端との間には、ガイドロッド29と付勢バネ30が介装されており、耕耘カバー27を下方に付勢した状態で支持可能として耕耘カバー27と土壌面との隙間をなくし、耕土の飛散を確実に防止するようにしている。
【0011】
これにより、耕耘爪軸25は、前記入力軸17よりギアボックス16内のギア、ビーム18内の伝動軸、チェーンケース24内のスプロケット、チェーンを介して回転駆動され、図示せぬ複数の耕耘爪が回転して耕耘できるようにしている。
【0012】
前記施肥機12においては、前記ギアボックス16に前メインフレーム31が固設され、該前メインフレーム31上と前記マスト20にタンクフレーム32が固設され、該タンクフレーム32に複数の施肥ホッパー35が左右に載置されている。該施肥ホッパー35下部には、図示せぬ駆動機構を介して繰出駆動される肥料繰出装置37が配置され、これら施肥ホッパー35、肥料繰出装置37から肥料繰出機14が構成されている。
【0013】
各肥料繰出装置37は、前記タンクフレーム32に横架された第一ツールバー33に、取付フレーム41を介して支持されると共に、各肥料繰出装置37の下部は、施肥ホース39に連通されている。そして、該施肥ホース39の下端は前記ロータリ耕耘装置11の前部まで延設されており、耕土中に肥料が均一に混合できるようにしている。更に、前記前メインフレーム31後端からは後メインフレーム40が後斜め上方に突設されている。
【0014】
前記播種機13においては、前記後メインフレーム40上端に第二ツールバー34が横設され、該第二ツールバー34には、嵌合体42を介して、図示せぬ駆動機構によって繰出駆動される複数の種子繰出装置38が左右に並設されている。各種子繰出装置38の下部は、播種ホース43に連通されると共に、各種子繰出装置38上には単一の播種ホッパー36が載置され、これら播種ホッパー36、種子繰出装置38から本発明に関わる種子繰出機15が構成されている。
【0015】
更に、前記第二ツールバー34からは取付ステー44が垂設され、該取付ステー44の下部には作溝部取付バー45が横設され、該作溝部取付バー45には、複数の嵌合体49が、外嵌されて図示せぬフックネジによって左右位置調節可能に固定されている。該複数の嵌合体49の後部には、平行リンク47・48の前部が回動自在に枢支され、該平行リンク47・48の後端には、支持バー50が枢結されると共に、平行リンク47・48の対角線上には付勢バネ80が介装されている。そして、この支持バー50の下端には作溝器である作溝ディスク51の回転軸52が軸支されており、作溝ディスク51が、特定姿勢を保ったままで常に下方に回動するように付勢されている。
【0016】
この作溝ディスク51は、平面視V字状に構成して前方下部を閉じる一方、後方は開放して該開放部分に前記播種ホース43の下端を臨ませ、該播種ホース43の下端は固定具87によって前記支持バー50に固定されている。これにより、播種ホース43の下端を作溝ディスク51と共に昇降させ、作溝ディスク51の前記開放部分に形成された播種溝内の所定位置に、確実に播種できるようにしている。
【0017】
前記取付ステー44の上下略中央部からは後方に支持フレーム53が上下回動可能に突出され、該支持フレーム53の後端には鎮圧部取付バー46が横設されており、該鎮圧部取付バー46には、下端に鎮圧輪57を軸支した複数の支持ステー56が左右に並設されている。更に、前記取付ステー44の上下略中央部からは鎮圧フレーム59が突設され、該鎮圧フレーム59の後端と前記支持フレーム53の後端との間には、ガイドロッド54と付勢バネ55とが介装されており、鎮圧輪57を下方に付勢した状態で支持できるようにし、前記付勢バネ55等によって鎮圧時の圧力を調整できるようにしている。なお、鎮圧輪57にはスクレーパ58を付設して付着土を除去し、作業効率の向上を図るようにしている。
【0018】
以上のような構成により、施肥播種機9はトラクタ10によって確実に牽引され、その間、ロータリ耕耘装置11前方に前記施肥機12の肥料繰出機14より肥料を繰り出し、この肥料と一緒に土壌を耕耘爪によって耕起し、続いて、この耕土上を作溝ディスク51が進行して播種溝を形成し、該播種溝内に前記播種機13の種子繰出機15より種子を繰り出した後、その上を鎮圧輪57が転動し播種された部分を軽く覆土して押圧することができる。この際、これら作溝ディスク51、鎮圧輪57のいずれも、下方に付勢された状態で回動しながら上下動するので、たとえ、耕起条件によって圃場表面に大きな凹凸が生じたり、牽引するトラクタ10の機体が上下動しても、圃場表面に対して略水平を保ちながら上下することができ、播種深さを略均一に保つことができる。
【0019】
次に、本発明に係わる粒状物繰出機である前記種子繰出機15について、図2乃至図7により説明する。
図2に示すように、前述の如く、種子繰出機15は播種ホッパー36と種子繰出装置38とから構成され、このうちの種子繰出装置38は、前繰出部60と後繰出部61とから成り、該前繰出部60と後繰出部61とは前記播種ホッパー36の下部に前後方向に配置されている。そして、これら播種ホッパー36、前繰出部60、及び後繰出部61とは、複数の装着具64・65・66によって相互に連結して一体化された上で、前記嵌合体42の前面に固着され、該嵌合体42は、フックネジ67によって、前記第二ツールバー34上に左右位置調節可能に固定されている。
【0020】
前記前繰出部60と後繰出部61において、前繰出ケース62と後繰出ケース68内には、それぞれ前繰出ロール63と後繰出ロール69とが軸支され、該前繰出ロール63と後繰出ロール69のロール表面には、軸方向にそれぞれ前ロール溝63aと後ロール溝69aとが複数形成されている。更に、前繰出ロール63と後繰出ロール69は、それぞれ前ロール軸63bと後ロール軸69bによって軸支され、これら前ロール軸63bと後ロール軸69bとは、図示せぬ駆動機構を介して一体的に回転できるようにしている。加えて、前記前繰出部60と後繰出部61は、内部にそれぞれ前ブラシ70と後ブラシ71が備えられ、このうちの前ブラシ70は前繰出ケース62の前面から、後ブラシ71は後繰出ケース68の後面から、それぞれ前繰出部60と後繰出部61内に挿着され、前記前繰出ロール63と後繰出ロール69の上面にブラシの先端が当接されるように配置されている。
【0021】
これにより、前繰出ロール63と後繰出ロール69が回転すると、播種ホッパー36の下端から前記前繰出ケース62と後繰出ケース68内に流入してくる種子が、前記前ロール溝63a内と後ロール溝69a内に捕捉されて下方に搬送されるが、これらの前ロール溝63aと後ロール溝69aに入りきらない種子は、回転搬送途中で前ブラシ70と後ブラシ71とによって掻き落とされるため、所定量の種子だけが、前繰出部60と後繰出部61に供給され、その下部からそれぞれ播種ホース43・43を経由して、左右の作溝ディスク51・51の各開放部分の所定位置に確実に播種される。
【0022】
そして、図2乃至図4に示すように、前記播種ホッパー36の底部には、前連通口72と後連通口73が前後に開口され、該前連通口72と後連通口73は、前繰出部60の前繰出ケース62内と、後繰出部61の後繰出ケース68内に、それぞれ上方より挿嵌固定されている。そして、前記前連通口72と後連通口73の入口上方には、前シャッター74と後シャッター75がそれぞれ前後方向に抜き差し可能に取り付けられている。
【0023】
これにより、前シャッター74と後シャッター75のいずれも最も奥まで差し込んだ状態では、播種ホッパー36から前繰出部60と後繰出部61には種子が全く供給されず、前シャッター74と後シャッター75のいずれも引き出した状態では、播種ホッパー36は、前連通口72を介して前繰出部60に、後連通口73を介して後繰出部61に連通されており、播種ホッパー36から前繰出部60と後繰出部61とに種子が供給され、前記播種ホース43・43を介して所定量の種子を圃場に繰り出すことができる。また、前シャッター74と後シャッター75の一方のみを引き出すことにより、二条播種から一条播種への切替を簡単かつ迅速に行うこともできる。
【0024】
また、前記播種ホッパー36の下部空間36aにおいて、前後方向略中央であって前記前連通口72と後連通口73との境界線上にある左右側壁36b・36cには、上部にそれぞれ上固定ガイド76・77が固設され、該上固定ガイド76・77は、互いに対向配置されると共に、それぞれは、並設された二枚のガイド板76a・76b、77a・77bから構成される。同様にして、左右側壁36b・36cの下部には、それぞれ下固定ガイド78・79が固設され、該下固定ガイド78・79は、互いに対向配置されると共に、それぞれは、並設された二枚のガイド板78a・78b、79a・79bから構成される。
【0025】
四ヶ所の固定ガイド76・77・78・79を構成する各ガイド板76a・76b、77a・77b、78a・78b、79a・79bの隙間には、それぞれガイド溝76c、77c、78c、79cが形成されている。そして、該ガイド溝76c、77c、78c、79c内に、本発明に係わる板状の仕切体81を上方から挿入して下方にスライドさせることにより、前記播種ホッパー36内に仕切体81を着脱自在に固定できるようにしている。
【0026】
図2、図4乃至図6に示すように、該仕切体81は、両側縁が互いに平行な仕切下部81aと、両側縁が上方に開いた仕切上部81bとから構成され、前記下部空間36aの内側横断面と略同一形状に形成されている。そして、前記仕切上部81bの左右略中央の前後面には、複数の凸部81cが上下平行に左右に延設されており、該複数の凸部81cを前後から挟んで仕切体81を滑らないように確実に把持した上で、前記固定ガイド76・77・78・79にスライドさせ装着できるようにしている。
【0027】
これにより、仕切体81を把持して投入口36dから播種ホッパー36内に挿入し、仕切体81の幅狭の前記仕切下部81aを下にした状態で、前記固定ガイド76・77・78・79のガイド溝76c・77c・78c・79cに沿って仕切体81をスライドさせることにより、下部空間36aに仕切体81を着脱自在に装着することができ、下部空間36aを、前後の連通口72・73の間で確実に仕切れるようにしている。
【0028】
図7に示すように、このような仕切体81を播種ホッパー36内に設けた場合には、下部空間36aは、上方で連通する前区画空間36eと後区画空間36fとに区切られ、該区画空間36e・36fは、それぞれ前連通口72と後連通口73を介して、前記前繰出部60と後繰出部61に連通されている。このため、水平位置82にある播種ホッパー36では、種子85は小容量の前区画空間36eと後区画空間36fの二ヶ所に分離して蓄えられており、この状態で車両が旋回して播種ホッパー36が角度84だけ回動し傾倒位置83まで上昇しても、両区画空間36e・36fの種子85はいずれも傾倒方向86に向かって若干流動するだけであり、両連通口72・73とも全面が種子85によって同程度に覆われることとなる。
【0029】
すなわち、粒状物である種子85を蓄えるホッパーである播種ホッパー36と、該播種ホッパー36の下部空間36aに連通する繰出装置である種子繰出装置38とを有し、該種子繰出装置38は、作業中に前記播種ホッパー36が傾倒する方向である傾倒方向86と略同一方向に沿って並設した複数の繰出部である前繰出部60・後繰出部61より構成し、該前繰出部60・後繰出部61のそれぞれが前記下部空間36aとの間に連通口である前連通口72・後連通口73を備える粒状物繰出機である種子繰出機15において、前記下部空間36aを前記前連通口72・後連通口73の間で仕切る仕切体81を、前記播種ホッパー36内に設けたので、前記下部空間36aを仕切体81によって小さな区画空間である前区画空間36e・後区画空間36fに区切ることができ、たとえ、作業が進んで播種ホッパー36に蓄えた種子85の残量が少なくなってから車両であるトラクタ10が旋回し、播種ホッパー36も一緒に大きく傾いたとしても、種子85は、小容量の前記前区画空間36e・後区画空間36f内にそのまま保持され、播種ホッパー36の傾動方向86に向かって流出することもなく、前連通口72・後連通口73上を同様な厚さで覆うことができる。このため、トラクタ10旋回後に再び水平に戻して作業を再開する際、たとえ流動性の悪い種子85であっても、前連通口72・後連通口73から前繰出部60・後繰出部61内にそれぞれ供給される種子85の供給量の差は小さく、前繰出部60・後繰出部61から各条への種子85の供給を略同一タイミングで終えることができ、未播種等の部分の発生を防止して作物の生産性や品質を向上させることができる。なお、本実施例では粒状物として種子85を用いているが、該種子85の代わりに肥料等を用いても良く、これにより、未施肥の部分をなくすことができる。
【0030】
前記仕切体81は、前記播種ホッパー36から着脱自在な構成とするので、仕切体81を播種ホッパー36内から容易に取り外すことができ、前記前繰出部60・後繰出部61に種子85が詰まった場合の清掃作業や、種子の大きさや形態に応じて適切な仕切体81に交換する場合の交換作業を容易かつ迅速に行うことができ、メンテナンス性を向上させることができる。更に、大豆等のように粒径が大きかったり、微粒でも粘着性が低く、そのために種子85の流動性が高い場合は、車両旋回後に播種ホッパー36が水平に戻ると種子85も即座に均されて前連通口72・後連通口73上が種子85によってほぼ均一な厚さで覆われるため、仕切体81が不要となるが、このような場合でも、播種ホッパー36から仕切体81を取り外すだけで済み、同一構成の繰出機によって様々な粒状物への適用が可能となる。
【0031】
更に、前記仕切体81は、前記播種ホッパー36内の対向する側壁36b・36cにそれぞれ設けた固定部材である上下の固定ガイド76乃至79によって固定するので、対向する上固定ガイド76・77及び下固定ガイド78・79によって仕切体81を両側縁から挟持して強固に支持することができ、作業中の振動等によっても仕切体81が種子等の粒状物によって押し倒されることがなく、下部空間36aを、前連通口72と後連通口73の間で確実に仕切ることができる。
【0032】
また、本実施例では、仕切体81を播種ホッパー36とは別部材として着脱可能な構成としているが、仕切体81を播種ホッパー36と一体成形により製造してもよく、下部空間36aを、前連通口72と後連通口73の間で確実に仕切ることが可能な構成であれば特に限定されるものではない。これにより、播種ホッパー36を構成する部品点数を減少させることができ、組立性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0033】
また、仕切体81は、本実施例では板状としているが、前記区画空間36e・36fの間の粒状物移動を妨げるものであれば網状等でもよく、仕切体81の種類や形状等は特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係わる粒状物繰出機は、前後方向の複数の繰出部からなる繰出装置毎に一つのホッパーを設けているが、この繰出装置を左右方向に複数並設し、この複数の繰出装置に共通な単一のホッパーを設けることにより、ホッパーへの粒状物投入等の作業性を更に向上させた粒状物繰出機にも、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係わる粒状物繰出機を備えた施肥播種機の全体側面図である。
【図2】本発明に係わる粒状物繰出機の側面図である。
【図3】粒状物繰出機下部の側面図である。
【図4】同じく正面図である。
【図5】仕切板の正面図である。
【図6】同じく平面図である。
【図7】本発明に係わる粒状物繰出機の傾倒前後の側面図である。
【図8】従来の粒状物繰出機の傾倒前後の側面図である。
【符号の説明】
【0036】
15 粒状物繰出機
36 ホッパー
36a 下部空間
36b・36c 側壁
38 繰出装置
60・61 繰出部
72・73 連通口
76・77・78・79 固定部材
81 仕切体
85 粒状物
86 傾倒する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物を蓄えるホッパーと、該ホッパーの下部空間に連通する繰出装置とを有し、該繰出装置は、作業中に前記ホッパーが傾倒する方向と略同一方向に沿って並設した複数の繰出部より構成し、該複数の繰出部のそれぞれが前記下部空間との間に連通口を備える粒状物繰出機において、前記下部空間を前記連通口の間で仕切る仕切体を、前記ホッパー内に設けたことを特徴とする粒状物繰出機。
【請求項2】
前記仕切体は、前記ホッパーから着脱自在な構成とすることを特徴とする請求項1記載の粒状物繰出機。
【請求項3】
前記仕切体は、前記ホッパー内の対向する側壁に設けた固定部材によって固定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の粒状物繰出機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−319142(P2007−319142A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156520(P2006−156520)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】