説明

粘着剤、電子デバイス用粘着剤、それを用いた電子デバイス、ならびに粘着剤組成物

【課題】 低い体積抵抗率を示し、更には透明性にも優れる粘着剤を提供すること。
【解決手段】 アクリル系樹脂(A)と、エチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和モノマー(B)とを含有する粘着剤組成物[I]が、活性エネルギー線及び/又は熱により硬化されてなる粘着剤であって、アクリル系樹脂(A)が、水酸基含有モノマーを15〜50重量%含有する単量体成分を重合してなるアクリル系樹脂であり、エチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和モノマー(B)が、2つ以上の置換基で置換された芳香環または脂環を有するものであり、かつ、該エチレン性不飽和モノマー(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して30〜300重量部であることを特徴とする粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤、電子デバイス用粘着剤、電子デバイス、粘着剤組成物に関し、更に詳しくは、低い体積抵抗率を示し、透明性にも優れる粘着剤、及びそれを得るための粘着剤組成物、更には電子デバイス用粘着剤、電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示方式のトレンドとしてタッチパネル式のものが注目されており、特に静電容量方式のタッチパネルが普及している。このような静電容量方式のタッチパネルでは、透明部材を貼り合わせる目的に加えて、絶縁層として粘着剤層(粘着剤による層)が使用されている。
静電容量方式のタッチパネルは、タッチパネルを指などで触れた際、その位置の出力信号が変化し、その信号の変化量がある閾値を超えた場合にセンシングする仕組みになっているためセンサーと指の間にある材料の電気抵抗が高いと動作不良や反応が遅くなることがある。
しかしながら、従来の粘着剤層が使用された静電容量方式のタッチパネルにおいては、粘着剤層に起因すると考えられる誤作動が発生する場合があり、特に外部からの信号変化を感度よく読み取ることができない場合に動作不良が発生する場合があった。
また、タッチパネルに限らず、ツイストボール型電子ペーパーなどの静電容量検知式のデバイスにおいても、上記のような誤作動が発生する場合や反応速度が遅くなる場合があった。
【0003】
そこで、静電容量方式のタッチパネルや電子ペーパーなどの静電容量検知式デバイスにおける部材を貼り合わせるために使用されても、信号の誤作動や遅延の発生を防止することができる電子デバイス用粘着剤を求めて研究が行なわれてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシエステル、極性基含有モノマーから形成されるアクリル系ポリマーからなる粘着剤層を有する粘着シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/147047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では一定の低い体積抵抗率を示すものの、かかる技術を用いて近年の更に高いレベルでの電気特性に対する要求をクリアーするためには不十分なものであった。
【0007】
そこで、本発明ではこのような背景下において、低い体積抵抗率を示し、更には透明性にも優れる粘着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂と単官能性モノマーとからなる粘着剤組成物からなる粘着剤において、従来よりも水酸基含有量が多いアクリル系樹脂を用い、更に、分極率が高い特定のエチレン性不飽和モノマーを、従来使用される単官能性モノマーの量よりも比較的多く使用した粘着剤組成物を用いることにより、得られる粘着剤が低体積抵抗率を示し、更には透明性に優れるため、特には電子デバイス用粘着剤として有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、アクリル系樹脂(A)と、エチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和モノマー(B)とを含有する粘着剤組成物[I]が、活性エネルギー線及び/又は熱により硬化されてなる粘着剤であって、アクリル系樹脂(A)が、水酸基含有モノマーを15〜50重量%含有する単量体成分を重合してなるアクリル系樹脂であり、
エチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和モノマー(B)が、2つ以上の置換基で置換された芳香環または脂環を有するものであり、かつ、該エチレン性不飽和モノマー(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して30〜300重量部であることを特徴とする粘着剤に関するものである。
更には、電子デバイス用粘着剤、電子デバイス用粘着剤を用いた電子デバイス、ならびに粘着剤組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着剤は、低体積抵抗率を示すことが可能であり、更に透明性にも優れるため、特には静電容量方式タッチパネル、静電容量検知型デバイス、電子ペーパー用構成部材等の電子デバイスを構成する部材を貼り合わせる用途等に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0012】
まず、本発明の粘着剤組成物[I]について説明する。
本発明の粘着剤組成物[I]は、アクリル系樹脂(A)及びエチレン性不飽和基を1つ含有する芳香族化合物(B)を含有してなるものである。
【0013】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、水酸基含有モノマー(a1)を必須成分として15〜50重量%含有し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)、必要に応じて更に官能基含有共重合性モノマー(a3)、その他の重合性モノマー(a4)を含有してなる単量体成分を重合して得ることができる。
【0014】
上記水酸基含有モノマー(a1)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜16(好ましくは1〜12)の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーが挙げられる。
【0015】
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマー(a1)としては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを用いることも好ましく、更に0.2%以下、殊には0.1%以下のものを使用することが好ましく、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
上記水酸基含有モノマー(a1)の全単量体成分中における含有量としては、15〜50重量%であることが必要であり、好ましくは20〜45重量%、特に好ましくは30〜40重量%である。
かかる水酸基含有モノマー(a1)の含有量が少なすぎると後述のエチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和モノマー(B)との相溶性が低下したり、体積抵抗率が高くなったりしてしまい、多すぎると水酸基含有モノマー中に含有されるジエステル体を多く含有することになるため重合反応中にゲル化しやすくなる。
【0017】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)としては、アルキル基の炭素数が、通常1〜20、特には1〜12、更には1〜8、殊には4〜8であることが好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0018】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)の中でも、重合性、粘着物性、取り扱いやすさ及び原料入手しやすさの点で、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、更に好ましくは耐久性に優れる点でn−ブチル(メタ)アクリレートが用いられる。
【0019】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)の全単量体成分中における含有量としては、好ましくは50〜85重量%、特に好ましくは55〜80重量%、更に好ましくは60〜75重量%であり、(メタ)アクリル酸エアルキルステル系モノマー(a2)の含有量が少なすぎると、粘着剤として使用した場合の粘着力が不足する傾向にあり、多すぎると相対的に(a1)の含有量が少なくなるため本発明の効果が得られにくい傾向がある。
【0020】
官能基含有共重合性モノマー(a3)((a1)を除く)としては、例えば、オキシアルキレン基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、窒素含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等の官能基含有共重合性モノマーがあげられ、これらから選ばれる1種もしくは2種以上が用いられる。
【0021】
オキシアルキレン基含有モノマーとしては、例えば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の脂肪族系の(メタ)アクリル酸エステルや、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等の芳香族系の(メタ)アクリル酸エステル等があげられる。
【0022】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)メタクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド−3−メチルブチルメチルアミン、ジメチルアミノアルキルアクリルアミド、ジメチルアミノアルキルメタクリルアミド等があげられる。
【0023】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやその4級化物等があげられる。
【0024】
窒素含有モノマーとしては、例えば、アクリロイルモルフォリン等があげられる。
【0025】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等があげられる。
【0026】
官能基含有共重合性モノマー(a3)の全単量体成分中における含有割合は、好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは0.1〜5重量%であり、官能基含有共重合性モノマー(a3)が少なすぎると粘着性能が低下する傾向があり、多すぎると保存安定性が低下する傾向がある。
【0027】
その他の重合性モノマー(a4)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等のモノマーが挙げられる。
【0028】
また、その他の重合性モノマー(a4)としては、本発明の効果を損ねない範囲で、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン等の芳香環含有モノマーを使用してもよい。
【0029】
その他の共重合性モノマー(a4)の全単量体成分中における含有割合は、好ましくは0〜20重量%、特には好ましくは0.1〜15重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%であり、その他の共重合性モノマー(a4)の含有量が多すぎると粘着性能が低下する傾向がある。
【0030】
また、高分子量化を目的とする場合、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等のエチレン性不飽和基を二つ以上有する化合物等を併用することもできる。
【0031】
上記(a1)〜(a4)の単量体成分を重合することによりアクリル系樹脂(A)を製造するのであるが、かかる重合に当たっては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などの従来公知の方法により行なうことができる。この中でも、溶液ラジカル重合で作ることが、分子量のコントロールがしやすく、乳化剤を使わないでよく、また、ポリマー成分以外を乾燥により容易に除去できる点で好ましい。例えば、有機溶媒中に、水酸基含有モノマー(a1)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)、官能基含有共重合性モノマー(a3)、その他の重合性モノマー(a4)、重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50〜90℃で2〜20時間重合する。
【0032】
かかる重合に用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0033】
かかるラジカル重合に使用する重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が具体例として挙げられる。
【0034】
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量については、通常20万〜300万、好ましくは40万〜200万、特に好ましくは80万〜150である。重量平均分子量が小さすぎると、耐久性能が低下する傾向があり、大きすぎると希釈溶剤を大量に必要とし、塗工性やコストの面で好ましくない傾向となる。
【0035】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特に好ましくは10以下、更に好ましくは6以下である。かかる分散度が高すぎると粘着剤層の耐久性能が低下し、ウキや剥がれ等が発生しやすい傾向がある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常2である。
【0036】
更に、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、−100〜0℃、特には−80〜−10℃、更には−70〜−20℃であることが好ましく、ガラス転移温度が高すぎるとタックが低下し貼り合わせなどの作業性が低下する傾向があり、低すぎると糊のはみ出しなど加工適正が低下する傾向がある。
【0037】
尚、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法を用いることができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。またガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。

Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0038】
本発明で用いられるエチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和モノマー(B)(以下、「単官能性モノマー(B)」と略すことがある。)は、分子内に1つのエチレン性不飽和基と、2つ以上の置換基で置換された芳香環または脂環を有する化合物であることが必要である。
【0039】
かかるエチレン性不飽和基を含有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基、クロトノイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、中でも(メタ)アクリロイル基であることが、活性エネルギー線及び/又は熱により硬化する際に、反応が進行しやすい点で好ましい。
【0040】
単官能性モノマー(B)の含有する芳香環としては、芳香族炭化水素環{例えば、ベンゼン環、多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合多環式芳香族炭化水素環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、フルオランテン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ペリレン環、ベンゾ[a]ピレン環、ベンゾ[e]ピレン環などの縮合2乃至6環式芳香族炭化水素環など)、複数の芳香族炭化水素環(縮合多環式芳香族炭化水素環であってもよい)が直接結合した芳香族炭化水素環(例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ターフェニル環などの2乃至6のC6-10アレーン環が直接結合した芳香族炭化水素環)など]など}、芳香環を構成する原子としてヘテロ原子(特に、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子)を含む芳香環{例えば、ピロール環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、アゾール環(例えば、ジアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環など)、ピラジン環などのヘテロ原子含有単環式芳香環;縮合多環式芳香族ヘテロ環[例えば、チエノ[2,3-b]チオフェン環、インドール環、ベンゾ[b]フラン環、3,4-エチレンジオキシチオフェン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾピラン環、キノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、キサンテン環、チアントレン環などの縮合2乃至6環式芳香族ヘテロ環]、環集合芳香族ヘテロ環(例えば、ビピリジル環、ビフリル環、ターピリジン環などの2乃至6の芳香族ヘテロ環が直接結合した芳香環など)などのヘテロ原子含有多環式芳香環など]など}が挙げられるが、これらの中でも、入手のし易さ、アクリル系樹脂(A)との相溶性の点で、ベンゼン環が好ましい。
【0041】
単官能性モノマー(B)の含有する脂環としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等の単環式脂環、シクロアルケン、ビシクロウンデカン、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環式脂環、3環以上の多環式脂環、スピロ式脂環等が挙げられる。
【0042】
単官能性モノマー(B)の含有する置換基としては、公知一般の置換基であればよいが、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、イミド基であることが低体積抵抗率の粘着剤が得られる点で好ましく、腐食性、原料の入手のしやすさなどの観点からヒドロキシル基が更に好ましい。
【0043】
単官能性モノマー(B)として具体的には、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルーフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート等のフタル酸誘導体、o-フェニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート等のビフェニル骨格含有(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート等クレゾール誘導体、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート等のノニルフェノール誘導体、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等のハロゲン化芳香族系(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等のイソボロニル基含有(メタ)アクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のシクロヘキサン誘導体等が挙げられ、これらの中でも、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、イミド基を含んだモノマーであることが体積低効率が低い点で好ましく、特に好ましくはフタル酸誘導体、更に好ましくは2−アクリロイロキシエチル−2―ヒドロキシエチル−フタル酸である。
【0044】
単官能性モノマー(B)の分子量としては、好ましくは200以上、特に好ましくは230〜3000、更に好ましくは250〜2000である。
かかる分子量が大きすぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向があり、小さすぎると揮発しやすくなる傾向がある。
【0045】
単官能性モノマー(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、30〜300重量部であることが好ましく、更に好ましくは50〜250重量部、特に好ましくは70〜200重量部、殊に好ましくは、100〜200重量部である。
単官能性モノマー(B)の含有量が多すぎると、アクリル系樹脂(A)との相溶性が低下したり、粘着剤層が硬くなりすぎる傾向があり、少なすぎると体積低効率が高くなる傾向がある。
【0046】
本発明においては、上記アクリル系樹脂(A)、単官能性モノマー(B)を必須成分として含有する粘着剤組成物[I]が、活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)により硬化されて粘着剤が得られるものである。
【0047】
上記活性エネルギー線および/または熱による硬化を行なう際には、粘着剤組成物[I]が、更に、エチレン性不飽和基を2つ以上含有するエチレン性不飽和モノマー(C)(以下、「多官能モノマー(C)」と略すことがある。)を含有することが粘着剤層全体の凝集力を調整できる点で好ましく、重合開始剤(D)を含有することが、活性エネルギー線照射時および/または加熱時の反応を安定化させることができる点で好ましい。
かかる硬化では、単官能性モノマー(B)、および多官能モノマー(C)が活性エネルギー線および/または熱により重合(ポリマー化)され、硬化される。
【0048】
また、本発明においては、上記粘着剤組成物[I]を硬化する方法として、上記(A)成分および(B)成分(必要に応じて(C)成分あるいは(D)成分)に加えて、更に後述の架橋剤(E)を含有させたものとし、粘着剤組成物[I]を、活性エネルギー線及び/又は熱による硬化と架橋剤による硬化を行わせる方法もあげられる。なお、架橋剤(E)を用いる場合には、アクリル系樹脂(A)は官能基を有するものであることが好ましく、この官能基と架橋剤が反応することにより硬化(架橋)が行なわれる。
【0049】
本発明においては、上記活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)による硬化は、ごく短時間の紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化させることが可能となる点で好ましいものであるが、更に、架橋剤による硬化(架橋)を併用することも好ましく、粘着剤の架橋密度を上げ、凝集力を上げて耐久性に関してより一層優れたものが得られるようになる。
【0050】
また、アクリル系樹脂(A)が、不飽和基含有アクリル系樹脂である場合には、活性エネルギー線および/または熱による単官能性モノマー(B)(および多官能モノマー(C))のポリマー化に限らず、不飽和基含有アクリル系樹脂(A)と単官能性モノマー(B)(および多官能モノマー(C))とのポリマー化等に伴う硬化も生じることとなる。
【0051】
上記多官能モノマー(C)としては、例えば、1分子内に2つ以上のエチレン性不飽和基を含有するエチレン性不飽和モノマー、例えば、2官能モノマー、3官能以上のモノマーや、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート系化合物を用いることができる。これらの中でも、エチレン性不飽和モノマー、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いることが硬化速度や到達物性の安定性に優れる点で好ましい。
【0052】
上記2官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を2つ含有するモノマーであればよく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートジエステル等があげられる。
【0053】
上記3官能以上のモノマーとしては、エチレン性不飽和基を3つ以上含有するモノマーであればよく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0054】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物としては、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート系化合物であり、水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物と多価イソシアネート系化合物(必要に応じて、ポリオール系化合物)を、公知一般の方法により反応させて得られるものを用いればよく、その重量平均分子量としては、通常300〜4000のものを用いればよい。
【0055】
多官能モノマー(C)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが望ましく、好ましくは0.5〜30重量部、更に好ましくは5〜20重量部である。多官能モノマー(C)の含有量が多すぎると、タックが低下し貼り合わせなどの作業性が低下する傾向があり、少なすぎると架橋密度が低くなり耐久性が低下する傾向にある。
【0056】
本発明においては、架橋密度を適切にし、タック感を適切に調整することが可能となり、更には耐久性のバランスをとることが可能となる点で、上記単官能性モノマー(B)と多官能モノマー(C)の合計量に対する単官能性モノマー(B)の含有割合(mol%)が50mol%よりも大きいことが好ましく、特に好ましくは50mol%より大きく100mol%未満、更に好ましくは55〜99mol%、殊に好ましくは60〜98mol%である。
【0057】
単官能性モノマー(B)と多官能モノマー(C)の合計量に対する単官能性モノマー(B)の含有割合が小さすぎると、単官能性モノマー(B)に対する多官能モノマー(C)の含有量が多くなるため架橋密度が上がりすぎタック感に欠ける傾向がある。なお、単官能性モノマー(B)と多官能モノマー(C)の合計量に対する単官能性モノマー(B)の含有割合が大きすぎると、単官能性モノマー(B)に対する多官能モノマー(C)の含有量が少なくなるため架橋密度があまり上がらず耐久性に劣る傾向がある。
【0058】
上記重合開始剤(D)としては、例えば、光重合開始剤(d1)、熱重合開始剤(d2)等の種々の重合開始剤を用いることが可能であるが、特には光重合開始剤(d1)を使用することが、ごく短時間の紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化させることが可能となる点で好ましい。
【0059】
また、上記光重合開始剤(d1)を用いるときは、活性エネルギー線照射により粘着剤組成物[I]を硬化させ、熱重合開始剤(d2)を用いるときは、加熱により粘着剤組成物[I]を硬化させるのであるが、必要に応じて、両方を併用することも好ましい。
【0060】
上記光重合開始剤(d1)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等があげられる。なお、これら光重合開始剤(d1)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
【0062】
これらの中でも、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを用いることが好ましい。
【0063】
また、上記熱重合開始剤(d2)としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α′−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノオエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメトルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2′−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤;等があげられる。なお、これらの熱重合開始剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記重合開始剤(D)の含有量については、前記アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、特には0.1〜7重量部、さらには0.3〜3重量部であることが好ましい。上記重合開始剤(D)の含有量が少なすぎると、硬化性に乏しく物性が安定しなくなる傾向がみられ、多すぎてもそれ以上の効果が得られない傾向がみられる。また、単官能性モノマー(B)と多官能モノマー(C)の合計100重量部に対して、重合開始剤(D)が0.01〜100重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜20重量部、特に好ましくは1〜12重量部である。
【0065】
上記架橋剤(E)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性を向上させる点やベースポリマーとの反応性の点で、イソシアネート系架橋剤が好適に用いられる。
【0066】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0067】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0068】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0069】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0070】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0071】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0072】
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0073】
また、これらの架橋剤(E)は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記架橋剤(E)の含有量は、通常は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜5重量部、特に好ましくは0.1〜2重量部である。架橋剤(E)が少なすぎると、凝集力が不足し、充分な耐久性が得られにくい傾向がみられ、多すぎると柔軟性、および粘着力が低下し、耐久性が低下し、剥離が起こりやすくなるため光学部材、特に電子デバイス用光学部材としての使用が困難となる傾向がみられる。
【0075】
また、粘着剤組成物[I]には、本発明の効果を損なわない範囲において、さらにシランカップリング剤、帯電防止剤、その他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の従来公知の添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を配合することができる。
また、上記添加剤の他にも、粘着剤組成物[I]の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであっても良い。
【0076】
上記シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、水酸基含有シランカップリング剤、カルボキシル基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、アミド基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤等をあげることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ガラスに対する密着性を向上させる点でエポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0077】
上記帯電防止剤としては、例えば、イミダゾリウム塩、テトラアルキルアンモニウムスルホン酸塩等の第4級アンモニウム塩のカチオン型帯電防止剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールアルコールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のアニオン型帯電防止剤、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドや塩化リチウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等があげられる。
【0078】
かくして、本発明では、アクリル系樹脂(A)および単官能性モノマー(B)を必須成分として含有する粘着剤組成物[I]が硬化されてなる粘着剤が得られる。
【0079】
本発明の粘着剤は、上記粘着剤組成物[I]からなる粘着剤層と基材とを含有する粘着シートとして用いることが好ましい。
【0080】
次に、上記粘着剤組成物[I]を基材上に塗布、乾燥し、活性エネルギー線照射および/または加熱により硬化し、粘着シートを作成する方法について説明する。
【0081】
上記基材としては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド等の合成樹脂シート,アルミニウム、銅、鉄の金属箔,上質紙、グラシン紙等の紙,硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布、及びこれらにITOなどの金属を蒸着させたものが挙げられる。これらの基材は、単層体として又は2種以上が積層された複層体として用いることができる。
なお、上記基材を溶剤等や乾燥の際の熱、活性エネルギー線の照射等により劣化させる可能性がある場合などには、まずシリコーン等を塗布し離型性をもたせたセパレーターに塗ってから上記基材に貼合することが好ましい。
また、基材レスの両面粘着シートにする際には、セパレーターに塗布し、セパレーターで貼合すればよい。好ましいセパレーターとしてはポリエステル系樹脂が挙げられ、特に好ましくはポリエチレンテレフタラートにシリコーン処理をしたものである。
【0082】
上記粘着剤組成物[I]の塗布に際しては、粘着剤組成物[I]を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、加熱残分濃度として、好ましくは5〜90重量%、特に好ましくは10〜60重量%、更には20〜50重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物[I]を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
【0083】
上記粘着剤組成物[I]の塗布に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
【0084】
また、粘着シートの粘着剤層の厚み(乾燥後膜厚)は、通常、3〜500μmであることが好ましく、特には5〜300μmであることが好ましく、更には10〜250μmで
あることが好ましい。
【0085】
上記乾燥条件については、乾燥温度が、通常50℃〜250℃、好ましくは60℃〜150℃、更に好ましくは65℃〜120℃、殊に好ましくは70℃〜95℃であり、乾燥時間は、通常10秒〜10分である。
【0086】
上記硬化条件については、粘着剤組成物[I]を活性エネルギー線照射により硬化せさる際には、活性エネルギー線として、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。なお、電子線照射を行なう場合は、上述の光重合開始剤(d1)を用いなくても硬化可能である。
【0087】
上記紫外線照射を行なう時の光源としては、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト等が用いられる。上記高圧水銀ランプの場合は、例えば、5〜3000mJ/cm、好ましくは10〜1000mJ/cmの条件で行われる。また、上記無電極ランプの場合は、例えば、2〜1500mJ/cm、好ましくは5〜500mJ/cmの条件で行われる。そして、照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、塗工厚、その他の条件によっても異なるが、通常は、数秒〜数十秒、場合によっては数分の1秒でもよい。
一方、上記電子線照射の場合には、例えば、50〜1000Kevの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜50Mradの照射量とするのがよい。
【0088】
また、硬化時に熱重合開始剤(d2)を用いる場合には加熱により重合反応を開始し、進行させる。加熱による硬化時の処理温度や処理時間は、使用する熱重合開始剤(d2)の種類によって異なるものであり、通常、開始剤の半減期より計算されるものであるが、処理温度は、通常70℃〜170℃であることが好ましく、処理時間は、通常0.2〜20分が好ましく、特には0.5〜10分が好ましい。
【0089】
なお、架橋剤(E)を用いる場合には、上記方法を用いて粘着シートを製造した後にエージング処理を施すことが好ましい。かかるエージング処理は、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温〜70℃、時間は通常1日〜30日であり、具体的には、例えば23℃で1日〜20日間、好ましくは、23℃で3〜10日間、40℃で1日〜7日間等の条件で行なえばよい。
【0090】
また、本発明においては、上記粘着剤からなる粘着剤層を光学部材(特には電子デバイス用光学部材)上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることもできる。
【0091】
かかる光学部材としては、ITO電極膜やポリチオフェン等の有機系導電幕等の透明電極膜、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、AR(アンチリフレクション)フィルム等が挙げられる。これらの中でも、透明電極膜であるときが本発明の効果を顕著に発揮でき、電気抵抗が低く感度がいい点で好ましく、特に好ましくはITO(インジウムチンオキサイド)電極膜である。
ここで、アクリル系樹脂(A)および単官能性モノマー(B)を必須成分とする粘着剤組成物が、酸性基を含有しない場合には、特に腐食が起こりにくく好ましい。
【0092】
なお、上記「酸性基を含有しない」とは、具体的には、(A)と(B)を合わせた状態での、酸価が10mgKOH/g以下であることが好ましく、特に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.1mgKOH/g以下である。
【0093】
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましく、実用に供する際には、上記離型シートを剥離してから粘着剤層と被着体を貼合することとなる。かかる離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0094】
上記離型シートが貼合された粘着剤層付き光学部材を作製するに際して、粘着剤組成物[I]を硬化/架橋させる方法については、〔1〕光学部材上に、粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なう方法、〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥した後、光学部材を貼合し、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なう方法、〔3〕光学部材上に粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥し、さらに活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なった後、離型シートを貼合する方法、〔4〕離型シート上に粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥し、さらに活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なった後、光学部材を貼合する方法、により製造することできる。これらの中でも、〔2〕の方法で活性エネルギー線照射のみを行なう場合が基材を痛めない点、作業性や安定製造の点で好ましい。
【0095】
上記乾燥工程における乾燥条件については、乾燥温度が、通常50℃〜250℃、好ましくは60℃〜150℃、更に好ましくは65℃〜120℃、殊に好ましくは70℃〜95℃であり、乾燥時間は、通常10秒〜10分であるが、低温で長い時間乾燥するほうが有機溶剤をきっちりと揮発させ除去でき、かつ単官能性モノマーを揮発させずに粘着剤層中にとどまらせることが可能となる点で好ましい。また、経済性、生産効率性を考慮すると、乾燥時間は短い方が好ましい。
【0096】
なお、粘着剤組成物[I]に架橋剤(E)を用いる場合には、上記方法を用いて粘着剤層付き光学部材を製造した後にエージング処理を施すことが好ましい。かかるエージング処理は、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温〜70℃、時間は通常1日〜30日であり、具体的には、例えば23℃で1日〜20日間、好ましくは、23℃で3〜10日間、40℃で1日〜7日間等の条件で行なえばよい。
【0097】
上記粘着剤組成物[I]の塗布に際しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
【0098】
ここまで、一旦離型シートが貼合された粘着剤層付き光学部材を製造した後に、かかる上記離型シートを剥離してから粘着剤層と被着体(その他光学部材)を貼合する粘着剤の使用方法について説明したが、本発明においては、上記粘着剤組成物[I]を用いて両面粘着シートを作製することも好ましく、かかる両面粘着シートを用いて光学部材どうしを貼合する方法を用いてもよい。
【0099】
かかる両面粘着シートとしては、上記アクリル系粘着剤を用いて公知一般の構成の両面粘着シートを適用すればよいが、特には透明性に優れ、構成する厚みに対しての粘着力が高い点で基材レス両面粘着シートとすることが好ましい。かかる基材レス両面粘着シートは、離型シート上に上記アクリル系粘着剤からなる粘着剤層を形成した後、該粘着剤層の離型シートのない側に、更に別の離型シートを貼合することにより得ることができる。使用方法は、一方の離型シートを剥がして被着体に貼合した後、他方の離型シートを剥がして被着体に貼合すればよい。
【0100】
上記粘着シート、粘着剤層付き光学部材の粘着剤層、および両面粘着シートの粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と粘着力の点から30〜98%であることが好ましく、特には40〜95%が好ましく、殊には60〜90%であることが好ましい。ゲル分率が低すぎると凝集力が不足することに起因する耐久性不足になる傾向がある。また、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下してしまう傾向がある。
【0101】
なお、粘着シート、光学部材用粘着剤及び両面粘着シートのゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、架橋剤の種類と量を調整すること等により達成される。
【0102】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0103】
上記粘着シート、粘着剤層付き光学部材、両面粘着シートにおける粘着剤層の厚みは、通常、5〜3000μmであることが好ましく、特には50〜1000μmであることが好ましく、更には100〜500μmがあることが好ましい。
かかる粘着剤層の厚みが薄すぎると衝撃吸収性が低下する傾向があり、厚すぎると光学部材全体の厚みが増しすぎてしまう傾向がある。
【0104】
また、厚膜の粘着剤層を得ることが必要な用途においては、100μm以上の膜厚で塗工することが好ましく、特に好ましくは110μm以上、更に好ましくは140μm以上であり、乾燥後に得られる粘着剤層の膜厚で、50μm以上であることが好ましく、特に好ましくは80μm以上、更に好ましくは100μm以上である。
かかる膜厚の上限としては、塗工時の膜厚で通常3000μm、乾燥後の膜厚で通常2000μmである。
また、特に衝撃吸収や空気層等の空隙を埋めるための用途に用いる場合には、乾燥後の粘着剤層の膜厚が100μm以上であることが好ましく、特に好ましくは120μm以上であり、上限としては通常2000μmである。
【0105】
本発明の粘着剤層の粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定されるが、例えば、ガラス基板、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、ITO層を蒸着したPETシートに貼着する場合には、3N/25mm〜500N/25mmの粘着力を有することが好ましく、更には5N/25mm〜100N/25mmが好ましい。
【0106】
なお、上記粘着力は、つぎのようにして算出される。厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に厚み25μmの粘着剤層が形成された粘着剤層付きPETを、幅25mm幅に裁断し、離型シートを剥離して、粘着剤層側を上記被着体に25mm×100mmの上記粘着シートを23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、常温で剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0107】
本発明における電子デバイスとしては、例えば、静電容量方式タッチパネル、静電容量検知型デバイス、電子ペーパー用構成部材等が挙げられ、本発明の粘着剤は、高誘電率低体積抵抗率を示すことが可能であり、更には透明性に優れるため、特には上記電子デバイスを構成する部材を貼り合わせる用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは
、重量基準を意味する。
【0109】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂を調製した。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
なお、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0110】
〔アクリル樹脂(A)の調製〕
[アクリル系樹脂(A−1)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a1)70部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)30部及び酢酸エチル100部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部を加え、酢酸エチル還流温度で3.5時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)溶液(重量平均分子量(Mw)80万、分散度(Mw/Mn)4.3、ガラス転移温度−45℃、固形分35.7%、粘度5500mPa・s(25℃))を得た。
【0111】
[アクリル系樹脂(A’−1)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a1)94.8部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)0.2部、アクリル酸5.0、酢酸エチル100部及びアセトン50部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15部を加え、溶剤還流温度で3.5時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−1)溶液(重量平均分子量(Mw)150万、分散度(Mw/Mn)3.5、ガラス転移温度−55℃、固形分22.5%、粘度8,000mPa・s(25℃))を得た。
【0112】
[単官能性モノマー(B)]
単官能性モノマー(B−1)として、以下のものを用意した。
・2−アクリロイロキシエチル−2―ヒドロキシエチルフタル酸(共栄社化学社製、商品名「HOA−MPE)
【0113】
[多官能モノマー(C)]
多官能モノマー(C−1)として、以下のものを用意した。
・トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学社製、商品名「TMP-A」)
【0114】
[重合開始剤(D)]
光重合開始剤(D−1)として、以下のものを用意した。
・ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの質量比1:1の混合物(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア500」)
【0115】
[架橋剤(E)]
架橋剤(E−1)として、以下のものを用意した。
・トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の55%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製、「コロネートL−55E」)
【0116】
〔実施例1〜3、比較例1〜4〕
上記のようにして調製,準備した各配合成分を、下記表1に記載の配合割合で配合し粘着剤形成材料となる粘着剤組成物を調製し、これを酢酸エチルにて粘度2,000mPa・s(25℃)に希釈し、粘着剤組成物溶液を作製した。
【0117】
そして、上記で得られた粘着剤組成物溶液を、ポリエチレン系軽離型シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥し、粘着剤組成物層を形成させ、得られた粘着剤組成物層をポリエチレン系重剥離(厚み38μm)上に転写した。
次いで、実施例1〜3、比較例1〜3においては、フュージョン社製無電極ランプ[LH6UVランプのHバルブ]にてピーク照度:600mW/cm,積算露光量:240mJ/cmで紫外線照射を行ない(120mJ/cm2×2パス)、23℃×50%R.H.の条件下で10日間エージングさせて両面セパレーター付粘着剤層を得た。
また、比較例4においては、紫外線照射は行なわず23℃×50%R.H.の条件下で10日間エージングさせて両面セパレーター付粘着剤層を得た
【0118】
このようにして得られた両面セパレーター付粘着剤層を用いて、体積抵抗率および粘着剤層の透明性を下記に示す各方法に従って測定・評価した。
【0119】
[体積抵抗率]
上記両面セパレーター付粘着剤層を23℃×50%RH雰囲気下で24時間放置した後、5cm×5cmにカットし、体積抵抗率測定装置(三菱化学アナリテック株式会社製、装置名「Hiresta−UP MCP-HT450」)を用い、一方の軽剥離PETを剥がし装置付属の金属板に粘着剤を貼り合わせ、次いで他方の後重剥離PETを剥がし電極と貼り合せ、体積抵抗率を測定した。
(評価基準)
◎ … 1.0E+10未満
○ … 1.0E+10以上5.0E+10未満
△ … 5.0E+10以上1.0E+11未満
× … 1.0E+11以上
【0120】
[透明性]
上記両面セパレーター付粘着剤層のセパレーターを両面剥がし、得られた粘着剤層の透明性を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
○ …透明である
× …白濁している
【0121】
【表1】

【0122】
実施例1〜3の粘着剤からなる粘着剤層は、体積抵抗率が低く、かつ透明性にも優れるものであることがわかる。
一方、比較例1〜3に記載の粘着剤からなる粘着剤層は、ある程度低い体積抵抗率を示すものもあるものの、アクリル系樹脂とモノマー成分の相溶性が悪いため粘着剤層が白濁してしまい透明性に劣るものである。
また、比較例4の粘着剤からなる粘着剤層は透明性には優れるものの体積抵抗率が高く電子デバイス用粘着剤としては使用し難いものである。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の粘着剤は、低体積抵抗率を示すことが可能であり、更には透明性にも優れるため、静電容量方式タッチパネル、静電容量検知型デバイス、電子ペーパー用構成部材を構成する部材を貼り合わせる用途等に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)と、エチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和モノマー(B)とを含有する粘着剤組成物[I]が、活性エネルギー線及び/又は熱により硬化されてなる粘着剤であって、
アクリル系樹脂(A)が、水酸基含有モノマーを15〜50重量%含有する単量体成分を重合してなるアクリル系樹脂であり、
エチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和モノマー(B)が、2つ以上の置換基で置換された芳香環または脂環を有するものであり、かつ、該エチレン性不飽和モノマー(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して30〜300重量部である
ことを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
エチレン性不飽和モノマー(B)の分子量が、200以上であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
粘着剤組成物[I]が、エチレン性不飽和基を2つ以上含有するエチレン性不飽和モノマー(C)を含有することを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤。
【請求項4】
粘着剤組成物[I]が、重合開始剤(D)を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の粘着剤。
【請求項5】
粘着剤組成物[I]が、架橋剤(E)を含有し、架橋剤により架橋されてなることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の粘着剤。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の粘着剤を用いてなることを特徴とする電子デバイス用粘着剤。
【請求項7】
請求項6記載の電子デバイス用粘着剤を用いてなることを特徴とする電子デバイス。
【請求項8】
アクリル系樹脂(A)と、エチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和モノマー(B)を含有する粘着剤組成物であって、アクリル系樹脂(A)が、水酸基含有モノマーを15〜50重量%含有する単量体成分を重合してなるアクリル系樹脂であり、エチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和モノマー(B)が、2つ以上の置換基で置換された芳香環または脂環を有するものであり、かつ、アクリル系樹脂(A)100重量部に対するエチレン性不飽和モノマー(B)の含有量が30〜300重量部であることを特徴とする粘着剤組成物。

【公開番号】特開2013−40326(P2013−40326A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150065(P2012−150065)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】