説明

精米機の米受け容器兼用の上蓋及び精米機

【課題】精米機の部品コストを減らし、コスト低減を図る。
【解決手段】ケーシング内上部にホッパー2が設置され、開口5からホッパー2に玄米を投入し、精米して下方に放出するようにした精米機において、開口5に設置する上蓋17を米受け容器及び玄米供給容器兼用とする。上蓋17は、開口5に収まる天井壁18とその下に形成された筒状壁19からなり、天井壁18は筒状壁19の周囲に張り出すフランジ部を有する。筒状壁の外側と天井壁にそれぞれ把手21,24が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米機の改良に係り、詳しくは精米機の玄米投入開口に設置する上蓋(又は米受け容器)の改良に関わる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、ケーシング内上部にホッパーが設置され、ケーシング上面にホッパーに玄米を投入する開口が形成され、投入された玄米を精米し下方に放出するようにした精米機が記載されている。
特許文献1に記載された精米機はいわゆる1回通し精米機であり、ホッパーから搗精部に入った玄米は、回転する操出ロールにより前方に送られ、搗精部の搗精ロールと除糠ケーシングの間で摩擦を受けながら先端の吐出口に向かって進み、その過程で搗精されて精米となり、抵抗蓋の圧力に抗して吐出口から溢れ出し、落下して下方の米受け容器に入る。一方、分離した糠は除糠ケーシングの穴から抜け出し落下して下方の糠受け容器に入る。
【0003】
また、特許文献2に記載された精米機はいわゆる循環式精米機であり、ホッパーから搗精部に入った玄米は、回転する精米ロールにより前方に送られ、精米ロールと除糠ケーシングの間を摩擦を受けながら通過して再びホッパーに戻り、さらにこの循環が繰り返され、しだいに搗精されて精米となる。搗精が終了して、循環通路に設置したシャッターを開放すると、精米は下方の米受け容器に入る。一方、分離された糠は除糠ケーシングの穴から抜け出し、この例ではサイクロン装置を介して、下方の糠受け容器に入る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−237611号公報(図3)
【特許文献2】特開2003−311165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の精米機では、米受け容器と糠受け容器、場合によりさらに玄米供給容器(計量容器)がそれぞれ個々の用途のための付属部品としてセットで用意されている。当然それぞれの部品コストが発生し、精米機全体のコストを引き上げている。
本発明はこのような精米機の現状に鑑みてなされたもので、部品コストを減らし、精米機のコスト低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ケーシング内上部にホッパーが設置され、前記ケーシング上面に前記ホッパーに玄米を投入する開口が形成され、投入された玄米を精米し下方に放出するようにした精米機において、特に前記開口に設置する上蓋を米受け容器兼用とし、付属部品の点数を減らしてコスト低減を図ったものである。より具体的には、前記上蓋の構造を、前記開口に収まる天井壁とその下に形成された筒状壁により構成し、これを天地逆にしたとき前記天井壁を底壁とする米受け容器となるようにした。また、前記筒状壁の外側と天井壁にそれぞれ把手を形成し、上蓋をもともとの用途(上蓋)に用いる場合にも、天地逆にして米受け容器として用いる場合にも、前記把手を持てるようにした。
【0007】
上記上蓋は、少なくとも天井壁と筒状壁についてプラスチックを一体成形したものとするのが好ましく(さらに好ましくは、把手を含めて全体を一体成形)、その場合さらに、前記天井壁の一部として、筒状壁の周囲の全部又は一部に前記筒状壁より外周側に突出するフランジ部が形成されていることが望ましい。上蓋の天井壁がフランジ部を有する場合、前記開口の内側縁部に段部が形成され、前記上蓋を前記開口に設置したとき、前記フランジ部が前記段部に係止されるようになっていることが望ましい。
また、前記上蓋を前記開口に設置したとき、前記筒状壁の下端が前記ホッパー内に係止されるようにしてもよい。この場合、フランジ部を係止する前記段部は必要でない。
【0008】
前記上蓋は玄米供給容器として用いることもできる。この場合、容器としての容積(筒状壁内部の容積)を、例えば3合などと所定の数値に決めておくと計量器の代わりとなり、あるいは筒状壁に計量マークを付けると、適宜量の玄米を計量でき、さらに便利である。上蓋が玄米供給容器を兼ねることで、さらに部品点数を削減し、精米機のコスト削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る精米機の上蓋は、米受け容器を兼ね、必要があれば玄米供給容器を兼ねるので、部品点数を削減し、精米機のコスト削減を図ることができる。
上蓋は、精米中に前記開口に被せておく必要はなく、玄米をホッパーに供給するときは必ず外す(つまり不要である)ものであるから、精米中に米受け容器として用い、さらに玄米供給時に玄米供給容器を兼ねることに何ら問題はない。
従来のように上蓋、米受け容器及び玄米供給容器が全て揃っている場合、例えば精米中は不要な上蓋や玄米供給容器が、保管中(不使用時)は不要な米受け容器や玄米供給容器が、そこらに無意識に散らばり、あげく散逸することもあったが、本発明では、保管時は上蓋として、精米中は米受け容器として、さらに玄米供給時は玄米供給容器としてというように、同じ部品を使い続けることで、かえって部品の散逸、紛失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る精米機の断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明に係る上蓋の平面図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】図3の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図5を参照して、本発明に係る精米機及び上蓋について説明する。
図1,2に示す精米機は特許文献1と同種の1回通し精米機であり、プラスチック製のケーシング1内にホッパー2、精米装置3、モータ4等が配置されている。
ホッパー2はプラスチック製でケーシング1内の上部に配置され、ケーシング1の上面に形成された開口5に連なっている。ホッパー2の上半部は上蓋収容部2aであり、開口5とほぼ同程度の広さに形成されている(ただし、成形時の抜き勾配のため下方になるほど狭くなっている)。ホッパー2の下半部は窄まり、下端の狭窄部2bにおいて精米装置3の内部に連通している。
【0012】
精米装置3の構造は、本質的に特許文献1又は特開平7−100395号公報に記載されたものと同じで、搗精部6の内部に互いに逆向きのスクリューが形成された操出ロール部7aと搗精ロール部7bを有するロール7が回転自在に配置されている。操出ロール部7aと搗精ロール部7bの周囲は筒状の操出ケーシング6a及び搗精ケーシング6bで包囲され、両ケーシング6a,6bが搗精部6の外形を構成している。操出ケーシング6aの上部には前記狭窄部2bに連通する穴(通路)が形成され、搗精ケーシング6bの周囲には図示しないが多数の穴(スリット)が形成されている。搗精部6は、後述するブラケット9等により所定位置に支持されている。
搗精ケーシング6bの先端の吐出口には抵抗蓋8が設置され、所定の調整可能な加圧力で搗精ケーシング6bの先端に押し付けられている。
【0013】
モータ4はケーシング1内の底部に固定されたブラケット9に設置され、その動力がプーリ11、ベルト12及びプーリ13を介してロール7を回転させる。
そのほか、搗精ケーシング6bの周囲から下方にかけて糠ガイド部材14が配置され、搗精ケーシング6bの先端の吐出口の下方に精米ガイド部材15が配置されている。精米時は、糠ガイド部材14の下方位置に糠受け容器16が設置され、精米ガイド部材15の下方位置に後述する米受け容器(図1に一点鎖線で一部を図示)が配置される。。
【0014】
精米装置3の機能も、本質的に特許文献1又は特開平7−100395号公報に記載されたものと同じで、ホッパー2に投入された玄米は、狭窄部2bから搗精部6の操出ケーシング6a内に入り、回転する操出ロール部7aにより前方に送られ、続いて搗精ロール部7bと除糠ケーシング6bの間で摩擦を受けながら先端の吐出口に向かって進み、その過程で搗精されて精米となり、抵抗蓋8の圧力に抗して先端の吐出口から溢れ出し、精米ガイド部材15にガイドされて落下し、後述する米受け容器内に入る。
一方、搗精ロール部7bと除糠ケーシング6bの間で玄米から糠が分離し、その糠は除糠ケーシング6bの周囲の穴から抜け出し、糠ガイド部材14にガイドされて落下し、糠受け容器16に入る。
【0015】
図1,2に、上蓋17が開口5に設置された状態が示されている。
上蓋17は、プラスチックの一体成形体であり、図3〜5に示すように、天井壁18とその下に形成された筒状壁19、及び筒状壁19の外側に形成された把手21からなる。
筒状壁19は全周で略同じ高さ(深さ)を有し、成形上の都合で全周に抜き勾配が付与され、天井壁18から下向きに広がる方向に少し傾斜している。平面視では略四角筒状であるが、把手21の反対側に略円弧上に張り出した注ぎ口22が形成されている。
天井壁18は、筒状壁19の全周囲において筒状壁19より外周側に突出するフランジ部23を有し、該フランジ部23は把手21の付近で大きく突出している(フランジ部23a)。前記把手21は、上端がフランジ部23aに下から連結し、下端が筒状壁の19の側面に延びて接続している。天井壁は全体として略平らな板状に形成され、上方側に突出する部分はなく、略中央部に一対の窪み(下方側に突出する部分)からなる把手24が形成されている。
【0016】
この精米機において、上蓋17は、天井壁18を上にしたとき上蓋として機能し、天地逆(天井壁18を下)にしたとき容器として機能する。上蓋17を上蓋として用いるときは、把手24を外側から摘み、容器として用いるときは、把手21を摘めばよい。
図1,2に実線で示す上蓋17は上蓋として用いられ、開口5に設置されている。開口5の内側縁部全周に段部25が形成され、この段部25に上蓋17の天井壁18のフランジ部23が係止され、天井壁18の上面はケーシング1の上面と略面一の高さに位置している。上蓋17の筒状壁19及び把手21は段部25の内側を通過し、ホッパー2の上蓋収容部2a内に配置されている。
【0017】
図1に示すように、ホッパー2の上蓋収容部2aには、成形上の都合で全周に抜き勾配が付与されており、この抜き勾配は上蓋17の筒状壁19とは逆向き(上向きに広がる方向)に形成されている。従って、もし上蓋17の天井壁18がフランジ部23を有しなければ、開口5の内周縁と天井壁18の外周縁との間に大きい隙間ができてしまうが、天井壁18がフランジ部23を有することにより、この隙間S(図2参照)を最小に設定することができる。
なお、上記の例では、開口5の内側縁部全周に段部25を形成し、この段部25に上蓋17の天井板18のフランジ部23を係止させたが、ホッパー2の内部に上蓋17の筒状壁19の下端を係止する係止部を形成し、前記筒状部19をこの係止部に係止させることで、上蓋17を開口5に設置することもできる。
【0018】
図1に2点鎖線(仮想線)で示す上蓋17は、米受け容器として用いられるときの状態である。上蓋17は天地逆とされ、天井壁18が床に置かれている。
さらに、上蓋17は、玄米供給容器(計量器)として用いることもでき、その場合、筒状壁19に計量マーク(例えば2合、3合などの計量ライン)が付いていることが望ましい。
なお、ホッパー2の容積より玄米供給容器(上蓋17)の容積を小さくしておけば、玄米供給容器(上蓋17)にいっぱいの玄米をホッパー2に投入しても、玄米がホッパー2からあふれることはない。また、精米の容積は玄米の容積より少ないから、できた精米が米受け容器(上蓋17)からあふれることはない。
【0019】
次に上記精米機の特に上蓋17の使用形態の一例を説明する。
(1)把手24を摘んで上蓋17を取り、上蓋17を天地逆にし、玄米を計量し、把手21を摘んで注ぎ口22から開口5を通してホッパー2内に投入する。このとき、上蓋17は玄米供給容器として用いられる。
(2)図1の2点鎖線に示すように、上蓋17を天地逆にした状態で、精米ガイド部材15の下におく。このとき、上蓋17は米受け容器として用いられる。
(3)モータ4のスイッチをオンとし、精米を開始する。精米が精米ガイド部材15を通して上蓋17(米受け容器)内に落下し、糠が糠ガイド部材14を通して糠受け容器16に入る。
(4)精米が終了すると、上蓋17(米受け容器)内の精米を炊飯器の釜に移し、天地を元に戻して(天井壁19を上にして)把手24を摘み、開口5に嵌め入れる。このときから、上蓋17は再び開口5の上蓋として用いられる。
【0020】
以上の説明は1回通し精米機を例示して説明したが、本発明に係る上蓋は循環式精米機の上蓋としても適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 ケーシング
2 ホッパー
3 精米装置
4 モータ
5 開口
6 搗精部
6a 操出ケーシング
6b 搗精ケーシング
7 ロール
8 抵抗蓋
17 上蓋
18 天井壁
19 筒状壁
21,24 把手
23 天井壁のフランジ部
25 開口の段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内上部にホッパーが設置され前記ケーシング上面に形成された開口を通して前記ホッパーに投入される玄米を精米し下方に放出する精米機の前記開口に設置される上蓋であり、前記開口に収まる天井壁とその下に形成された筒状壁からなり、天地逆にしたとき前記天井壁を底壁とする米受け容器となり、前記筒状壁の外側と天井壁にそれぞれ把手が形成されていることを特徴とする精米機の米受け容器兼用の上蓋。
【請求項2】
前記上蓋の少なくとも天井壁と筒状壁はプラスチックを一体成形したもので、前記天井壁は、前記筒状壁の周囲の全部又は一部に前記筒状壁より外周側に突出するフランジ部を有することを特徴とする請求項1に記載された精米機の米受け容器兼用の上蓋。
【請求項3】
前記開口の内側縁部に段部が形成され、前記上蓋を前記開口に設置したとき、前記フランジ部が前記段部に係止されることを特徴とする請求項2に記載された精米機の米受け容器兼用の上蓋。
【請求項4】
前記上蓋を前記開口に設置したとき、前記筒状壁の下端が前記ホッパー内に係止されることを特徴とする請求項1又は2に記載された精米機の米受け容器兼用の上蓋。
【請求項5】
前記筒状壁に計量マークが付与されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された精米機の米受け容器兼用の上蓋。
【請求項6】
ケーシング内上部にホッパーが設置され、前記ケーシング上面に前記ホッパーに玄米を投入する開口が形成され、投入された玄米を精米し下方に放出するようにした精米機において、前記開口に設置される上蓋が、前記開口に収まる天井壁とその下に形成された筒状壁からなり、前記筒状壁の外側と天井壁にそれぞれ把手が形成され、天地逆にしたとき前記天井壁を底壁とする米受け容器となることを特徴とする精米機。
【請求項7】
前記上蓋の少なくとも天井壁と筒状壁はプラスチックを一体成形したもので、前記天井壁は、前記筒状壁の周囲の全部又は一部に前記筒状壁より外周側に突出するフランジ部を有することを特徴とする請求項6に記載された精米機。
【請求項8】
前記開口に段部が形成され、前記上蓋を前記開口に設置したとき、前記フランジ部が前記段部に係止されることを特徴とする請求項7に記載された精米機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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