説明

細胞および少なくとも20個の炭素原子を有する多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)を含んでなる組成物

本発明は、少なくとも20個の炭素原子を有する多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)と細胞を含んでなる組成物に関し、組成物は40℃で>24時間の熱誘導時間(T.I.T.)を有する。本発明はまた、組成物を40℃未満の温度で乾燥するステップを含んでなる、細胞およびLC−PUFAを含んでなる組成物を乾燥する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、細胞および少なくとも20個の炭素原子を有する多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)を含んでなる組成物と、細胞およびLC−PUFAを含んでなる組成物を乾燥させる方法と、細胞およびLC−PUFAを含んでなる組成物から、LC−PUFAまたはLC−PUFAを含有する油を得る方法に関する。
【0002】
LC−PUFAは、発酵過程において微小生物によって産生され得る。LC−PUFAはまた、植物中で産生され得る。次にLC−PUFAを含有する微生物または植物部位を前処理し得て、その後、LC−FUFAまたはLC−PUFAを含有する油を単離し得る。
【0003】
例えば国際公開第2006/085672号パンフレットは、LC−PUFAを微生物バイオマスから単離する方法を記載する。湿潤細胞は、二段階乾燥工程で乾燥される。120℃以上の乾燥温度が使用され、水分含量が1〜2重量%である乾燥細胞が得られる。
【0004】
LC−PUFA含有組成物が生成した直後に、それからLC−PUFAおよび/またはLC−PUFAを含有する油を単離することが可能である。しかし実際には、LC−PUFA含有組成物は、LC−PUFAおよび/またはLC−PUFAを含有する油の単離などのさらなる用途に先だって、保存および/または輸送されることが多い。
【0005】
LC−PUFA含有組成物は、自己発熱を起こしやすいことが今や判明した。すなわち保存中に温度が自発的に上昇し得て、最終的に思わぬ爆発および火災をもたらす。この自己発熱性は、LC−PUFA含量の増大とLC−PUFAの二重結合数の増大に伴って、増大することもさらに判明した。
【0006】
本発明の目的は、(i)LC−PUFAおよび(ii)細胞を含んでなる、より安全した組成物を提供することである。
【0007】
本発明は今や、(i)少なくとも20個の炭素原子を有する多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)と(ii)細胞を含んでなる組成物を提供し、組成物は40℃で>24時間の熱誘導時間(T.I.T.)を有する。
【0008】
本発明に従った組成物は、その安全性が改善されており、自発的温度上昇、意外な破裂および火災の危険性が低減されている利点を有する。本発明の組成物のさらなる利点は、組成物の保存が、LC−PUFAまたはLC−PUFAを含有する油の質に悪影響を与えず、または少なくとも質に与える影響がより小さいことである。
【0009】
本発明に従った組成物は、40℃で>24時間の熱誘導時間(T.I.T.)を有する。組成物のT.I.T.は、Recommendations on the Transport of Dangerous Goods,Manual of Tests and Criteria,Section 28.4.4,Test H.4,United Nations,New York,1999に記載される熱蓄積試験を使用して、以下の適合と規格を用いて測定される。内径57mmで高さ210mmの0.5Lガラス製デュワー瓶を使用する。デュワー瓶の熱損失は16mW/Kである。サンプルサイズはデュワー瓶容量の75%である。デュワー瓶に高さおよそ50mmのゴム栓をして、通気するように緩く締める。蓋の中央にある孔を通じて、熱電対をデュワー瓶に挿入する。初期温度20℃のサンプルを収容するデュワー瓶を40℃で制御されるチャンバーに入れ、熱電対を使用してサンプル温度をモニターする。熱誘導時間は、サンプル温度がチャンバー温度よりも2℃低い温度(したがって38℃)に達した時点から、サンプル温度がチャンバー温度を2℃超える温度(したがって42℃)に達する時点の間に経過する時間と定義される。T.I.T.の測定を図1に示す。
【0010】
好ましくは本発明に従った組成物は、40℃における測定で、少なくとも2日間(48時間)、好ましくは少なくとも3日間(72時間)、好ましくは少なくとも4日間(96時間)、好ましくは少なくとも5日間のT.I.T.を有する。T.I.T.は、40℃における測定で、例えば少なくとも10日間など、少なくとも8日間であってもよい。T.I.T.に特定の上限はない。T.I.T.は、40℃における測定で、例えば20日間未満など、25日間未満であってもよい。
【0011】
本発明に従ったT.I.T.が増大している組成物は、本発明によって提供される教示に基づいて得られ得る。
【0012】
組成物は、乾燥組成物であってもよい。乾燥温度が低下すると、T.I.T.は増大することが分かった。組成物中のLC−PUFA含量、またはLC−PUFAの二重結合数が高い場合は、乾燥温度を低くすることが有利であることもさらに分かった。
【0013】
例えば乾燥温度は、40℃未満、好ましくは35℃未満、より好ましくは33°未満、より好ましくは30℃未満、より好ましくは25℃未満であってもよい。本明細書で使用するとき、乾燥温度とは、乾燥機内の製品温度を指す。例えば乾燥機が流動床乾燥機であれば、乾燥温度は床温度を指す。
【0014】
したがって本発明は、組成物を40℃未満、好ましくは35℃未満、好ましくは33℃未満、好ましくは30℃未満、好ましくは25℃未満の温度で乾燥させるステップを含んでなる、細胞およびLC−PUFAを含んでなる組成物を乾燥する方法もまた提供する。
【0015】
乾燥は、任意の適切な方法によることもできる。乾燥は、任意の適切な乾燥機内で実施してもよい。ホットスポットの形成を防止または最小化する乾燥機を使用することが好ましい。好ましい実施形態では、乾燥は流動床乾燥機を使用して行われる。
【0016】
乾燥時間の短縮と共に、T.I.T.は増大することが分かった。
【0017】
好ましい実施形態では、乾燥は調整空気を使用して行われる。露点が<15℃、好ましくは<10℃、好ましくは<5℃である空気を使用することが好ましい。露点を低下させることは、好ましい(低)乾燥温度で、好ましい水分含量を効率的に達成させる利点がある。
【0018】
したがって本発明は、組成物を<15℃、好ましくは<10℃、好ましくは<5℃の露点を好ましくは有する調整空気に接触させるステップを含んでなる、細胞およびLC−PUFAを含んでなる組成物を乾燥させる方法もまた提供する。乾燥は、上述の好ましい乾燥温度で行うことが好ましい。
【0019】
組成物の水分含量が増大すると、T.I.T.が増大することもさらに分かった。(例えば乾燥)組成物は、水分含量が少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも4重量%であることが好ましい。水分含量に特定の上限はない。組成物は、水分含量が例えば15重量%未満、例えば12重量%未満、例えば10重量%未満、例えば9重量%未満など、20重量%未満であってもよい。水分含量を好ましい値未満に低下させると、組成物の微生物安定性が増大することが分かった。
【0020】
本明細書で使用するとき、水分含量は、湿潤重量を基準にして、すなわち(乾燥物質、油、および水分を含めた)組成物総重量に基づいて計算される。これおよびは、当業者によって、例えば105℃の温度で水を蒸発させ、蒸発した水分重量を測定することにより求められ得る。
【0021】
好ましい本発明の実施形態では、本明細書で開示される組成物の乾燥が、本明細書で開示される好ましい水分含量をもたらす。
【0022】
組成物の処理中にフリーラジカルの形成を避けることが、T.I.T.値を増大し得ることもさらに分かった。この見識に基づいて、当業者は、フリーラジカル形成をもたらす工程を回避できる。したがって例えば高温および/または酸素への曝露など、フリーラジカル形成を促進し得る状況への細胞の曝露を最小化することが、一般に好ましい。
【0023】
細胞が微生物細胞である場合、発酵ブロス中に存在することもできる酵素を十分に根絶するように、細胞を含有する発酵ブロスを加熱することが有利である。好ましい加熱プロトコルは、参照によって本明細書に援用する、国際公開第97/037032号パンフレットおよび国際公開第2004/001021号パンフレットに記載される。例えば<10ppm、例えば<5ppm、例えば<2ppm、例えば<1ppmなどの低い溶解酸素含量を有する発酵ブロスを加熱することが好ましい。特に上で言及されているプロトコルを使用した酵素の根絶は、T.I.T.値の増大をもたらすこともある。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明に従った組成物は、油含量が、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%など、少なくとも10重量%である。油含量は、例えば60重量%未満など、70重量%未満であってもよい。油含量は、当業者に知られている方法によって測定されてもよい。 本明細書で使用する組成物の油含量を測定する適切な方法は、溶剤としてn−ヘキサンを使用するソックスレー抽出の使用であり、抽出対象の組成物の水分含量は<15重量%であり、組成物および細胞は(確実に全ての油が細胞から放出され溶剤に溶解され得るように)微粉砕される。本明細書で使用するとき、油含量は、乾燥ベースで、すなわち組成物の総乾燥重量(乾燥物質および油を含むが、水分を除く)に基づいて計算される。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明に従った組成物は、油含量が上で定義されるとおりであり、油組成は下述の好ましい実施形態のとおりである。
【0026】
好ましい実施形態では、組成物は油を含んでなり、油は、油中の総脂肪酸を基準にして、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%など、少なくとも10重量%の少なくとも3つの二重結合があるPUFA、油中の総脂肪酸を基準にして、例えば80重量%未満、例えば70重量%未満、例えば60重量%未満の少なくとも3つの二重結合があるPUFAを含んでなる。本明細書で使用するとき、少なくとも3つの二重結合があるPUFAの重量%は、少なくとも3つの二重結合がある全てのPUFAの合計を指す。
【0027】
好ましい実施形態では、組成物は油を含んでなり、油は、油中の総脂肪酸を基準にして、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%など、少なくとも10重量%のアラキドン酸(ARA)、油中の総脂肪酸を基準にして、例えば80重量%未満、例えば70重量%未満、例えば60重量%未満のARAを含んでなる。
【0028】
好ましい実施形態では、組成物は油を含んでなり、油は、油中の総脂肪酸を基準にして、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%など、少なくとも10重量%のドコサヘキサエン酸(DHA)、油中の総脂肪酸を基準にして、例えば80重量%未満、例えば70重量%未満、例えば60重量%未満のDHAを含んでなる。
【0029】
本明細書で使用するとき、油組成を判定する適切な方法は、上述のようにn−ヘキサンを使用するソックスレー抽出を使用して組成物から油を抽出し、抽出された油の脂肪酸組成を判定することである。
【0030】
油含量および/または二重結合数が比較的高い場合は、乾燥機内でより低い乾燥温度とより短い滞留時間を選択することが望ましい。
【0031】
本明細書の教示に基づいて、油含量の高い組成物および/または少なくとも3つの二重結合があるPUFAの濃度が高い油を含有する組成物においてさえも、高いT.I.T.値が実現可能である。
【0032】
本明細書では、以下の略語を本明細書全体を通じて使用する。
PUFAは多価不飽和脂肪酸を指す。
LC−PUFA(長鎖多価不飽和脂肪酸)は少なくとも20個の炭素原子を有するPUFAを指す。
HUFA(高度不飽和脂肪酸)は、少なくとも3つの二重結合を有するPUFAを指す。
LC−HUFA(長鎖高度不飽和脂肪酸)は、少なくとも20個の炭素原子と少なくとも3つの二重結合を有する多価不飽和脂肪酸を指す。
【0033】
本発明は、特定のLC−PUFAに限定されるものではない。本発明の実施形態では、LC−PUFAは少なくとも3つの二重結合を有する。本発明のさらなる実施形態では、LC−PUFAは少なくとも4つの二重結合を有する。自己加熱に対する感受性は二重結合数の増大に伴って増大するため、本発明の利点は、二重結合数が増大しているLC−PUFAでなおもより明白である。
【0034】
LC−PUFAは、ω3 LC−PUFAまたはω6 LC−PUFAであってもよい。
LC−PUFAとしては、例えば、
ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA、20:3 ω−6)
アラキドン酸(ARA、20:4 ω−6)
エイコサペンタエン酸(EPA、20:5 ω−3)
ドコサペンタエン酸(DPA、22:5 ω−3、またはDPA22:5、ω−6)、
ドコサヘキサエン酸(DHA:22:6 ω−3)
が挙げられる。
【0035】
好ましいLC−PUFAとしては、アラキドン酸(ARA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)が挙げられる。特にARAが好ましい。
【0036】
本発明に従った組成物は、細胞を含んでなる。細胞は、LC−PUFAを含有するおよび/またはそれを産生した任意の細胞であってもよい。
【0037】
本発明の実施形態では、細胞は微生物細胞(微生物)である。
【0038】
微生物細胞の例としては、酵母細胞、細菌細胞、真菌細胞、および藻類細胞が挙げられる。真菌が好ましく、好ましくはケカビ目(Mucorales)の真菌である。実例は、モルティエラ属(Mortierella)、ヒゲカビ属(Phycomyces)、ブラケスレア属(Blakeslea)、アスペルギルス属(Aspergillus)、スラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、クサレカビ属(Pythium)またはハエカビ属(Entomophthora)である。好ましいアラキドン酸(ARA)源は、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)である。藻類は渦鞭毛藻類であり得て、および/またはチノリモ(Porphyridium)、ニッチア(Nitszchia)、またはクリプテコジニウム(Crypthecodinium)(例えばクリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii))が挙げられる。酵母としては、ピキア・シフェリイ(Pichia ciferii)などのピキア属(Pichia)またはサッカロミセス属(Saccharomyces)の酵母が挙げられる。細菌は、プロピオニバクテリウム属(Propioni)の細菌であり得る。
【0039】
本発明の実施形態では、組成物は、モルティエラ属(Mortierella)の真菌、好ましくはモルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)種の真菌を含んでなり、好ましくはLC−PUFAは、ARAまたはDGLAである。
【0040】
本発明の実施形態では、組成物は、例えばスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)またはシゾキトリウム属(Schizochytrium)の真菌などのヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)の真菌を含んでなり、好ましくはLC−PUFAは、DHAおよび/またはEPAである。
【0041】
本発明の実施形態では、組成物は、クリプテコジニウム属(Crypthecodinium)の藻類、好ましくはクリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)種である藻類を含んでなり、好ましくはLC−PUFAはDHAである。
【0042】
別の本発明の実施形態では、細胞は植物細胞である。細胞は、遺伝子導入植物の植物細胞であってもよい。
【0043】
適切な植物および種子は、例えばその内容を参照によって本明細書に援用する、国際公開第2005/083093号パンフレット、国際公開第2008/009600号パンフレット、および国際公開第2009/130291号パンフレットに記載される。本発明で使用し得るその他の植物および種子は、例えば、その内容を参照によって本明細書に援用する、国際公開第2008/100545号パンフレット、国際公開第2008/124806号パンフレット、国際公開第2008/124048号パンフレット、国際公開第2008/128240号パンフレット、国際公開第2004/071467号パンフレット、国際公開第2005/059130号パンフレットで開示される。これらの種子は、(導入遺伝子)ダイズまたは(導入遺伝子)カノーラ種子であってもよい。植物は、(導入遺伝子)ダイズ植物または(導入遺伝子)カノーラ植物であってもよい。
【0044】
好ましい実施形態では、植物は、例えばアブラナ属(Brassica)などのアブラナ科(Brassicaceae)の、アマナズナ属(Camelina)、メラノシナピス属(Melanosinapis)、シナピス属(Sinapis)、アラビドプシス属(Arabidopsis)、例えばシロガラシ(Brassica alba)、アビシニアガラシ(Brassica carinata)シロガラシ(Brassica hirta)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、カブ(Brassicaa rapa)種、ノハラガラシ(Sinapis arvensis)、カラシナ(Brassica juncea)、カラシナ・ユンケア変種(Brassica juncea var.juncea)、カラシナ・クリスピフォラ変種(Brassica juncea var.crispifolla)カラシナ・フォリオザ変種(Brassica juncea var.foliosa)、クロガラシ(Brassica nigra)、ブラシカ・シナピオイデス(Brassica sinapioides)、ナガミノアマナズナ(Camelina sativa)、メラノシナピス・コミュニス(Melanosinapis communis)、キャべツ(Brassica oleracea)、またはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)などの属および種の(遺伝子導入)植物である。
【0045】
組成物は、LC−PUFAを含んでなる任意のバイオマスであってもよい。組成物は、本明細書で開示される乾燥方法によって得られる、または得られ得る(乾燥)組成物であることが好ましい。
【0046】
組成物は、微生物およびLC−PUFAを含んでなる、微生物バイオマスであってもよい。好ましい微生物およびLC−PUFAについては、上で言及されている。
【0047】
実現可能な本発明の実施形態では、本発明に従った微生物(微生物細胞)を含んでなる組成物は、微生物細胞を含んでなる発酵ブロスを加熱するステップ(低温殺菌または滅菌とも称される)と、例えば濾過によって微生物細胞を脱水するステップと、上述の方法で微生物細胞を乾燥するステップを含んでなる方法で得られる。好ましい実施形態では、脱水された微生物細胞は、好ましくは押し出しによって乾燥前に顆粒化される。顆粒化、例えば押出しは、25℃未満の温度で実施されることが好ましい。好ましい方法は、本明細書に参照によって援用する、国際公開第97/037032号パンフレットに記載される。
【0048】
本発明の実施形態では、組成物はLC−PUFAを含んでなる種子を含んでなり、および/または組成物は種子の形態であってもよく、前記種子は40℃で>24時間の熱誘導時間(T.I.T.)を有する。種子は、上で言及されている植物の種子であることが好ましい。
【0049】
損傷種子の百分率を低く保つことは、T.I.T.の増大をもたらすことが分かった。
【0050】
12%未満の種子が総損傷種子であることが好ましく、好ましくは8%未満、好ましくは5%未満、好ましくは3%未満の種子が総損傷種子である。
【0051】
6%未満の種子が際立って未熟な種子であることが好ましく、好ましくは4%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満の種子が際立って未熟な種子である。
【0052】
0.5%未満の種子が加熱された種子であることが好ましく、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.05%未満の種子が加熱された種子である。
【0053】
好ましい実施形態では、8%未満の種子が総損傷種子であり、4%未満の種子が際立って未熟な種子であり、0.3%未満の種子が加熱された種子である。別の好ましい実施形態では、5%未満の種子が総損傷種子であり、2%未満の種子が際立って未熟な種子であり、0.1%未満の種子が加熱された種子である。別の好ましい実施形態では、3%未満の種子が総損傷種子であり、1%未満の種子が際立って未熟な種子であり、0.05%未満の種子が加熱された種子である。
【0054】
本明細書で使用する、総損傷種子、際立って未熟な種子、および加熱された種子の百分率は、Canadian Grain CommissionのOfficial Grain Grading Guide,2001(カノーラおよびナタネ用)に従って判定される。
【0055】
総損傷種子、際立って未熟な種子、および/または加熱された種子の百分率が好ましい種子は、収穫後の種子の適切な選択によって得られ得る。
【0056】
本発明のさらなる態様では、本発明はLC−PUFAを含んでなる種子を提供し、種子は、総損傷種子、際立って未熟な種子および/または加熱された種子の百分率が、上で開示されるとおりである。
【0057】
好ましくは種子は、種子中の総脂肪酸を基準にして、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%のLC−PUFAを含む(例えば本明細書に記載されるLC−PUFA。
【0058】
好ましくは種子は、種子中の総脂肪酸を基準にして、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%のω−6 LC−PUFAを含む。
【0059】
好ましくは種子は、種子中の総脂肪酸を基準にして、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%のARAを含む。
【0060】
好ましくは種子は、種子中の総脂肪酸を基準にして、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%のω−3 LC−PUFAを含む。
【0061】
好ましくは種子は、種子中の総脂肪酸を基準にして、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%のDHAを含む。
【0062】
好ましくは種子は、種子中の総脂肪酸を基準にして、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満のエルカ酸を含む。
【0063】
本発明に従った組成物は、さらなる使用および/または加工に先だって、適切に保存してもよい。
【0064】
組成物を10℃未満、好ましくは5℃未満、好ましくは0℃未満、好ましくは零下5℃未満、好ましくは零下10℃未満の温度で保存することが有利である。保存温度に特定の下限はない。一般に組成物は、零下30℃を超える温度で保存される。
【0065】
組成物が種子を含んでなり、または種子の形態である場合、種子は、水分含量が、例えば12重量%未満、例えば10重量%未満、例えば9.5重量%未満、例えば6重量%を超え、例えば7重量%を超え、例えば8重量%を超えるなど、15重量%未満であることが好ましい。水分含量は、例えば6〜15重量%、例えば7〜12重量%、例えば8〜10重量%であってもよい。好ましい水分含量は、上で述べたように種子を乾燥することで得られ得る。
【0066】
組成物は、任意の適切な期間にわたり保存されてもよい。組成物は、例えば少なくとも1日間、例えば少なくとも1週間、例えば少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、例えば少なくとも3ヶ月間保存されてもよい。保存期間に特定の上限はない。組成物は、例えば12ヶ月間未満、例えば6ヶ月間未満保存されてもよい。
【0067】
本発明は、本発明に従った組成物から、または本発明に従った方法によって得られるまたは得られ得る組成物から、前記LC−PUFAまたはLC−PUFAを含んでなる油を単離するステップを含んでなる、LC−PUFAまたはLC−PUFAを含んでなる油を得る方法をさらに含んでなる。
【0068】
脂質LC−PUFAまたはLC−PUFAを含んでなる油は、好ましくは溶剤抽出によって、組成物から、LC−PUFAまたはLC−PUFAを含んでなる油を抽出することにより得られてもよい。例えばC1〜10アルキルエステル(例えば酢酸エチルまたは酢酸ブチル)、トルエン、C1〜3アルコール(例えばメタノール、プロパノール)、C3〜6アルカン(例えばヘキサン)または超臨界流体(例えば液体COまたは超臨界プロパン)などの任意の適切な溶剤を使用してもよい。溶剤は、例えばC〜Cアルカン(好ましくはヘキサン)などの非極性溶剤、または超臨界流体(好ましくは超臨界COまたは超臨界プロパン)であることが好ましい。好ましい抽出手順は、国際公開第97/037032号パンフレットに記載される。
【0069】
組成物が種子を含んでなり、または種子の形態である場合、LC−PUFAおよび/またはLC−PUFAを含んでなる油は、次のようにして単離されてもよい。
【0070】
種子および/または種子を含んでなる組成物は、粉砕および/または圧扁してもよい。これにより、LC−PUFAまたはLC−PUFAを含有する油の回収を促進することもできる。次に粉砕および/または圧扁種子、および/または種子を含んでなる組成物を、例えば60℃を超える温度で加熱してもよい。加熱は比較的低温であってもよい。例えば種子および/または種子を含んでなる組成物を、例えば60〜80℃などの50〜90℃の温度で、好ましくは2〜60分間にわたり、好ましくは5〜30分間加熱してもよい。温度の増大を選択する場合は、加熱継続時間を短縮することが好ましい。
【0071】
種子および/または種子を含んでなる組成物は、高速に加熱してもよい。方法は、例えばそれにより温度が1分未満、好ましくは30秒未満、好ましくは20秒未満で、40℃から70℃になる、種子または種子を含んでなる組成物を加熱するステップを含んでなってもよい。方法は、例えばそれにより温度が1分未満、好ましくは30秒未満、好ましくは20秒未満で、40℃から100℃になる、種子および/または種子を含んでなる組成物を加熱するステップを含んでなってもよい。
【0072】
本発明に従った方法は、種子および/または種子を含んでなる組成物を、過熱蒸気を使用して加熱するステップを含んでなってもよい。本発明に従った方法は、例えば種子および/または種子を含んでなる組成物を、過熱蒸気に接触させるステップを含んでなってもよい。
【0073】
好ましくは本発明に従った方法は、種子および/または種子を含んでなる組成物を、例えば120〜160℃などの比較的高温で、比較的短時間加熱するステップを含んでなる。方法は、例えば種子および/または種子を含んでなる組成物を、例えば5分未満、例えば3分未満、例えば2分未満など、8分未満にわたり、例えば160℃未満などの120℃を超える温度に保つステップを含んでなる。種子および/または種子を含んでなる組成物を、例えば160℃以下などの120〜の温度に保つステップは、少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも10秒間にわたってもよい。
【0074】
種子および/または種子を含んでなる組成物を、比較的高速に冷却することが好ましい。種子および/または種子を含んでなる組成物の温度を、60分未満、好ましくは30分未満、好ましくは15分未満で、最大温度から40℃の温度に低下させることが好ましい。
【0075】
プロトコルを別々に、または組み合わせて使用してもよい。例えば高速に加熱することを、種子または種子を含んでなる組成物を比較的短時間にわたり好ましい温度に保つこと、および/または迅速な冷却速度と組み合わせてもよい。
【0076】
加熱は、特定の加工段階に限定されない。加熱は、種子の微粉砕(例えば粉砕または圧扁)の前または後に行ってもよい。さらなる態様では、本発明はLC−PUFAを含んでなる種子を加熱する方法を提供し、それによって種子は上で開示されるように加熱される。
【0077】
種子または種子を含んでなる組成物を圧搾することによって、油画分を得てもよい。油画分を放出させる種子の圧搾は、当該技術分野で知られている技術を使用して実施してもよい。スクリュープレスを使用してもよい。好ましい実施形態では、本発明は、例えば冷却されるスクリュープレスを使用して、種子または種子を含んでなる組成物を圧搾し、油を放出するステップを含んでなる。
【0078】
上述の圧搾後に得られるプレスケーキから、溶剤抽出によってさらなる油画分を得てもよい。
【0079】
油の精製は、脱ガム、精製、漂白および/または脱臭を含んでなってもよい。これら既知の工程であり、当業者によって実施され得る。好ましい実施形態では、脱臭は、200℃未満、好ましくは190℃未満、好ましくは185℃未満の温度で行われる。脱臭温度を好ましい値未満に低下させることは、油の品質を改善する。
【0080】
本発明は、本発明に従った組成物からLC−PUFAまたはLC−PUFAを含んでなる油を得るステップと、前記LC−PUFAまたは前記LC−PUFAを含んでなる油を前記食品に組み込むステップを含んでなる、特に乳児用調製粉乳である食品を得る方法をさらに提供する。
【0081】
さらなる好ましい態様、実施形態、および特徴は、特許請求の範囲で開示される。
【0082】
本発明の一実施形態および/または態様の好ましい特徴および特質は、変更すべきところは変更して、別の実施形態に当てはまる。本明細書で使用するとき、LC−PUFAの好ましい特徴および特質は、本発明の全ての態様および実施形態中のLC−PUFAに当てはまる。
【0083】
それに限定されない以下の実施例に言及して、本発明をさらに詳しく開示する。
【0084】
[実施例]
[実施例1]
8日間の発酵後に得られたモルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)の発酵ブロスを70℃で1時間低温殺菌した。低温殺菌ブロスを濾過して、水分含量50重量%の濾過ケークを得た。濾過ケークを崩し、15℃未満の温度で押し出した。押し出し物(直径3mm)を3つのゾーンがある連続流動床乾燥機内で、水分含量7%に乾燥させた。第1のゾーンでは床温度は32℃であり、空気温度は50℃であった(Tdew point=15℃)。
第1のゾーン:床温度32℃、空気温度50℃(Tdew point=15℃):45分間
第2のゾーン:床温度32℃、空気温度35℃(Tdew point=1℃):45分間
第3のゾーン:床温度15℃、空気温度15℃(Tdew point=1℃):30分間
乾燥バイオマスの油含量は39%であった。ARA含量は、油中の総脂肪酸を基準にして46%であった。
【0085】
40℃で測定された熱誘導時間(T.I.T.):9日間
【0086】
[比較実験A]
発酵および低温殺菌を繰り返す。連続脱水機を使用して湿潤細胞を回収し、破壊して、次に振動流動床を用いて熱風乾燥(熱風温度120℃)により乾燥を実施し、水分含量1重量%に乾燥させる。室温の空気を流動床に供給して、乾燥細胞を冷却する。ARAおよび油含量は、実施例1と同様である。
【0087】
40℃で測定された熱誘導時間(T.I.T.):<12時間
【0088】
[実施例2]
国際公開第2008009600号パンフレットに記載される手順を使用して、形質転換された遺伝子導入アブラナ属(Brassica)植物から、19%アラキドン酸(総脂肪酸基準)を含有する種子を得る。
【0089】
種子は以下の規格を有する(Canadian Grain CommissionのOfficial Grain Grading Guide,2001に従って測定される)。際立って未熟な種子<2%、全損傷種子<5%。
【0090】
水分含量17重量%の種子を、流動床乾燥機を使用して乾燥させる。床温度は28℃である。露点が10℃の調整空気を使用する。乾燥種子の水分含量は8.5重量%である。油含量は35重量%である。
【0091】
40℃で測定された熱誘導時間(T.I.T.):14日間
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】熱誘導時間(T.I.T.)の測定の概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも20個の炭素原子を有する多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)および(ii)細胞を含んでなる組成物であって、40℃で>24時間の熱誘導時間(T.I.T.)を有する組成物。
【請求項2】
1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、好ましくは3〜12重量%、好ましくは3.5〜10重量%、好ましくは4〜9重量%の水分含量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%、例えば70重量%未満、例えば60重量%未満など、少なくとも10重量%の油含量を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
油中の総脂肪酸を基準にして、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%など、少なくとも10重量%の少なくとも3つの二重結合があるPUFA、油中の総脂肪酸を基準にして、例えば80重量%未満、例えば70重量%未満、例えば60重量%未満の少なくとも3つの二重結合があるPUFAを含んでなる油を含んでなる、請求項1〜3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記LC−PUFAが少なくとも3つの二重結合を有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記LC−PUFAがω−3またはω−6 PUFAである、請求項1〜5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記LC−PUFAが、ジホモ−y−リノレン酸(DGLA、20:3 ω−6)、アラキドン酸(ARA、20:4 ω−6)、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5 ω−3)、ドコサヘキサエン酸(DHA:22:6 ω−3)、ドコサペンタエン酸(DPA 22:5 ω−3、またはDPA 22:5、ω−6)から選択される、請求項1〜6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記LC−PUFAがARAまたはDHAである、請求項1〜7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記細胞が微生物細胞である、請求項1〜9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記微生物細胞が、酵母細胞、細菌細胞、真菌細胞、または藻類細胞である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、モルティエラ(Mortierella)属、好ましくはモルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)種の微生物を含んでなり、好ましくは前記LC−PUFAがARAである、請求項1〜10の何れか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、例えばスラウストキトリウム(Thraustochytrium)属またはシゾキトリウム(Schizochytrium)属などのヤブレツボカビ(Thraustochytriales)目の微生物を含んでなり、好ましくは前記LC−PUFAがDHAまたはEPAである、請求項1〜10の何れか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、クリプテコジニウム(Crypthecodinium)属、好ましくはクリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)種の微生物を含んでなり、好ましくは前記LC−PUFAがDHAである、請求項1〜10の何れか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記細胞が植物細胞である、請求項1〜8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記細胞が遺伝子導入植物の植物細胞である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記細胞が、アブラナ科(Brassicaceae)、好ましくはアブラナ属(Brassica)の植物の植物細胞である、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
細胞およびLC−PUFAを含んでなる組成物を、40℃未満、好ましくは35℃未満、好ましくは33℃未満、好ましくは30℃未満、好ましくは25℃未満の温度で乾燥させるステップを含んでなる、組成物を乾燥する方法。
【請求項18】
前記組成物を≦15℃、好ましくは<10℃、好ましくは<5℃の露点を好ましくは有する調整空気に接触させるステップを含んでなる、細胞およびLC−PUFAを含んでなる組成物を乾燥させる、例えば請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物を、流動床乾燥機を使用して乾燥させるステップを含んでなる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
請求項17〜19の何れか一項に記載の方法によって得られ得る組成物。
【請求項21】
請求項2に記載の水分含量を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1〜21の何れか一項に記載の組成物から、あるいは請求項17または21に記載の方法のどちらか一項によって得られるまたは得られ得る乾燥組成物から、前記LC−PUFAまたはLC−PUFAを含んでなる油を単離するステップを含んでなる、LC−PUFAまたはLC−PUFAを含んでなる油を得る方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法に従ってLC−PUFAまたはLC−PUFAを含んでなる油を得るステップと、前記LC−PUFAまたは前記LC−PUFAを含んでなる油を食品に組み込むステップを含んでなる、特に乳児用調製粉乳である食品を得る方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−509860(P2013−509860A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535868(P2012−535868)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066598
【国際公開番号】WO2011/054800
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】