説明

組電池管理装置および組電池管理方法ならびに組電池システム

【課題】 複数の単組電池を組電池として使用する場合に、内部短絡、断線など単組電池の異常を的確に把握する。
【解決手段】 単電池2が複数直列に接続されて単組電池3が構成され、単組電池3が複数並列に接続して組電池3Aとして使用する場合に、各単組電池3の充電電流値Iを測定し、測定された各単組電池3の充電電流値Iの相対比較、または、使用初期の充電電流値Iと使用経過後の充電電流値Iとの差に基づいて、特定の単組電池3の異常を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、単組電池が複数並列に接続された組電池を管理する組電池管理装置および組電池管理方法ならびに組電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、電池材料コストが低いために単電池(セル)の価格が低く、大容量電池の作製も容易であることから、これまでに各種バックアップ用電池や自動車用蓄電池として広く使用されてきている。一方、近年では、鉛蓄電池と同様の定電流定電圧充電による使用が可能で、鉛蓄電池よりもエネルギー密度が高いなどという利点を有するリチウムイオン二次電池が着目され、自動車用蓄電池や電気・電子機器用蓄電池などとして鉛蓄電池に置き換えて使用されてきている。ところで、二次電池の使用にあたっては、使用目的に応じた電圧や容量を得るために、単電池である鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池を複数接続して単組電池を構成し、使用することが多い。このようにして単組電池として使用する場合、充電時において各単電池の充電状態にバラツキが生じる場合がある。そして、単組電池内にこのような電圧のバラツキがあると、電圧の低い単電池は早期に放電終止電圧を下回って、過放電状態に陥りやすく、過放電状態においては異常発熱が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、内部抵抗が高くなった電池の熱劣化を促進させないために、単電池x個と1つの電流値計測手段を直列に接続した電池列と、電池列をy列並列に接続した電池群と、電流値計測手段からの電流値計測信号に基づいて電流値を検知、比較し、充放電開始または停止を制御する組電池に関する技術(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0004】
また、組電池や単組電池の異常を判定するための、停電後または放電容量試験を制御する手段のリセット後に放電容量試験を最初に実行すべき二次電池セル列を、組電池の中からランダムに選択し、放電させて容量を確認する技術(例えば、特許文献2参照。)や、並列セルブロックの各々の電圧を検出する電圧検出部と、二次電池ブロックの通電電流を検出する電流検出部と、通電前後の並列セルブロックの電圧変化量を算出すると共に、二次電池ブロックの通電前後の電流変化量を算出し、算出した電圧変化量及び電流変化量から各並列セルブロックの直流内部抵抗を算出する演算部と、算出された直流内部抵抗を基に、セルの異常を判定する電池監視装置に関する技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−059541号公報
【特許文献2】特開平10−002943号公報
【特許文献3】特開2006−138750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の単組電池で組電池を構成した場合には、異常発熱などのリスク、危険性が高まり、また、一部の単組電池の異常が組電池全体の障害を引き起こすおそれがある。このため、単組電池を組電池として使用する場合には、より高い安全性が求められ、単組電池の異常を迅速、かつ、確実に判定する必要がある。特に、リチウムイオン二次電池を用いた電源装置では、通常、組電池毎に電圧監視などで内部短絡の検出が行われているが、上述のように、リチウムイオン二次電池は鉛電池などに比べてエネルギー密度が高いので、安全性の観点から単組電池における内部短絡、断線などの異常を的確に把握する技術が求められる。
【0007】
そこでこの発明は、複数の単組電池を組電池として使用する場合に、内部短絡、断線など単組電池の異常を的確に把握することが可能な組電池管理装置および組電池管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、単組電池が複数並列に接続された組電池を管理する組電池管理装置であって、各単組電池の充電電流を測定する電流測定手段と、電流測定手段によって測定された各単組電池の充電電流の相対比較に基づき特定の単組電池の異常状態を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、各単組電池間で充電電流の相対比較が行われ、他の単組電池に対して著しく充電電流が異なる特定の単組電池が異常であると判定される。すなわち、特定の単組電池の充電電流が他の単組電池に比べて著しく増加している場合は、特定の単組電池で内部短絡が生じていると判定され、特定の単組電池に充電電流がまったく流れていない場合は、特定の単組電池で断線が生じていると判定される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、単組電池が複数並列に接続された組電池を管理する組電池管理装置であって、各単組電池の充電電流を測定する電流測定手段と、各単組電池の電流測定手段による使用初期の充電電流値を記憶する記憶手段と、各単組電池について記憶手段による使用初期の充電電流値と電流測定手段による使用経過後の充電電流値との差を算出して充電電流変動値とし、単組電池の充電電流変動値に基づいて特定の単組電池の異常を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、各単組電池について使用初期の充電電流値と使用経過後の充電電流値との差(充電電流変動値)を算出し、特定の単組電池の充電電流変動値が使用初期の充電電流値に対して大幅に変化している場合は、特定の単組電池が異常と判定される。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の組電池管理装置において、単組電池の各単電池の電圧を測定する電圧測定手段と、判定手段によって異常であると特定された単組電池の電圧測定手段によって測定された電圧に基づいて異常状態にある単電池を特定する単電池判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、単組電池が複数並列に接続された組電池を管理する組電池管理方法であって、各単組電池の充電電流を測定し、各単組電池の充電電流値の相対比較に基づき特定の単組電池の異常状態を判定する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、単組電池が複数並列に接続された組電池を管理する組電池管理方法であって、各単組電池の充電電流を測定し、各単組電池の使用初期の充電電流値を記憶し、各単組電池について使用初期の充電電流値と使用経過後の充電電流値との差を算出して充電電流変動値とし、単組電池の充電電流変動値に基づいて特定の単組電池の異常を判定する、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、単組電池が複数並列に接続された組電池システムであって、各単組電池の充電電流を測定する電流測定手段と、電流測定手段によって測定された各単組電池の充電電流の相対比較に基づき特定の単組電池の異常状態を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、単組電池が複数並列に接続された組電池システムであって、各単組電池の充電電流を測定する電流測定手段と、各単組電池の電流測定手段による使用初期の充電電流値を記憶する記憶手段と、各単組電池について記憶手段による使用初期の充電電流値と電流測定手段による使用経過後の充電電流値との差を算出して充電電流変動値とし、単組電池の充電電流変動値に基づいて特定の単組電池の異常を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、4、6に記載の発明によれば、単組電池の充電電流の相対比較に基づいて、組電池を構成する単組電池の内部短絡や断線などの異常を的確に判定することができ、組電池の安全性を確保することができる。また、異常の単組電池を容易に特定することができることから、異常の単組電池のみについて対策を施すことにより、停電発生時の組電池によるバックアップ機能・予備電源としての機能を維持することができる。
【0018】
請求項2、5、7に記載の発明によれば、使用初期の充電電流値と使用経過後の充電電流値との差である充電電流変動値に基づいて、単組電池の異常を判定するようにしているので、単組電池間に使用初期において特性にバラツキがある場合でも、単組電池の異常を正確に判定することができる。また、充電電流変動値に基づき、経年による単組電池の内部抵抗の変化を知ることができ、単組電池の劣化度を把握することが可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、単組電池の電圧測定手段によって測定された電圧に基づいて異常状態にある単電池を特定するので、多くの単電池の中から異常状態の原因となった単電池を容易に特定することができる。そのため、異常が特定された単電池の交換をより迅速に行うことができ、組電池をより迅速に正常な状態に復旧させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1に係る組電池システムの適用例を示す概略構成図である。
【図2】図1の組電池システムにおける組電池監視制御部の概略構成図である。
【図3】図1の単組電池の充電電流の相対比較を示す特性図である。
【図4】図1の単組電池の充電電流の相対比較を示す特性図である。
【図5】図1の単組電池の充電電流の相対比較を示す特性図である。
【図6】図1の単組電池の充電電流の相対比較を示す特性図である。
【図7】図1の単組電池の充電電流変動値を示す特性図である。
【図8】図1の単組電池の充電電流変動値を示す特性図である。
【図9】図1の単組電池の充電電流変動値を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1ないし図6は、この実施の形態に係る組電池システム1を整流装置に適用した状態を示す概略構成図である。この実施の形態では、単組電池3を負荷設備102のバックアップ電源とし、整流器101によってフロート充電で運用する場合について説明する。
【0023】
この組電池システム1は、主として、図1に示すように、単電池2としてのリチウムイオン二次電池が複数直列に接続されて単組電池3が構成され、さらにこの単組電池3が複数並列に接続されてリチウムイオン組電池(組電池)3Aが構成されており、このような組電池3Aを管理する組電池管理装置4Aを備えるものである。ここで、組電池3Aは、後述するように、フロート充電で運用され、停電発生時を除く通常運用時は常に充電状態となっている。この実施の形態においては、すべての単組電池3の公称容量は同一となっている。
【0024】
組電池3Aは、負荷設備102と並列に電力供給系統100に接続されている。すなわち、負荷設備102と組電池3Aは、整流器101を介して、商用電源100に接続されており、商用電源100からの交流電力が整流器101によって直流電力に変換され、この直流電力が負荷設備102および組電池3Aに供給されるようになっている。
【0025】
組電池3Aは、組電池管理装置4Aによって管理されている。組電池管理装置4Aは、単組電池監視制御装置4、ダイオード5、組電池監視制御装置6、電流計測手段7、総電圧電流計測部8を有している。各単組電池3には、単組電池監視制御装置4が取り付けられている。この単組電池監視制御装置4は、単組電池3の温度、単組電池3の電圧、各単電池2の電圧を測定する装置であり、具体的には、単組電池3の両端子に接続され単組電池3の電圧を測定する単組電池電圧計(図示略)と、単組電池3の温度を測定する単組電池温度計(図示略)と、単電池2の電圧を測定する単電池電圧計(図示略)とを備えている。すべての単電池2には、所定の電圧まで充電された場合に、過充電を防止するために、並列にダイオード5が接続されている。
【0026】
図1に示すように、電流計測手段7は、3つの単組電池3にそれぞれ設けられており、整流器101から各単組電池3に向けて流れる充電電流を計測する機能を有している。電流計測手段7は、停電時における単組電池3からの放電電流も計測する機能を有している。
【0027】
組電池監視制御装置6は、図2に示すように、商用電源100からの電力を制御に必要な電力に変換する電源部6aを有している。電源部6aには、判定手段6bが接続されている。判定手段6bは、測定条件設定値入力部6c、組電池情報記憶部6d、演算部6e、データ入力部6fとから構成されている。測定条件設定値入力部6cは、判定精度を高めるための測定条件を入力する部位であり、例えばコンピュータのキーボードなどから構成されている。組電池情報記憶部6dは、例えば単組電池3を構成する単電池2の初期の放電特性などを記憶する機能を有している。演算部6eは、組電池情報記憶部6dからの情報と、データ入力部6fを介して入力された各単組電池3の使用初期の充電電流Iの情報とに基づき、各単組電池3の異常を判定する機能を有している。警報部6gは、単組電池3が異常と判定された場合や、異常のある単電池2が特定された場合に、警報を発するものであり、警報ランプや警報ブザーや警報画面などで構成されている。
【0028】
組電池監視制御装置6は、単組電池3の充電電流Iと他の単組電池3の充電電流Iとの差に基づいて、次のように判定する機能を有している。ここで、組電池3Aの組電池総電圧をVとし、組電池充電電流がIct一定とする。そして、各単組電池3の公称容量が等しい場合は、図3に示すように、すべての単組電池3(単組電池A、B、C)の充電電流Iが等しくなり、この場合は、すべての単組電池3は正常であると判定する。
【0029】
また、図4に示すように、組電池監視制御装置6は、単組電池3のいずれか(単組電池A)の充電電流がI+αであり、他の単組電池(単組電池B、C)の充電電流Iよりも著しく大きい場合には、当該単組電池Aは内部短絡を起こしている、つまり、異常であると判定する。この場合、組電池充電電流はIct+αとなるが、組電池総電圧はVのままである。また、図5に示すように、組電池監視制御装置6は、単組電池3のいずれか(単組電池A)の充電電流がI+β(α<β)であり、他の単組電池(単組電池B、C)では放電電流が測定されている場合は、当該単組電池Aは内部短絡を起こしている、つまり、異常状態であると判定する。
【0030】
さらに、図6に示すように、組電池総電圧Vが変化せず、組電池3A全体の充電電流Ictが低下し、さらに、単組電池3のいずれか(単組電池A)の充電電流が0である場合は、当該単組電池Aは断線が生じている、つまり、異常であると判定する。これは、断線によって当該組電池(単組電池A)に充電電流が流れなくなるためである。このとき、他の単組電池(単組電池B、C)の充電電流Iは等しい値になっている。なお、この時、別途測定している単組電池総電圧や、単電池電圧の測定値も併用することで異常(断線)判断の正確さが増す。
【0031】
ここで、異常である単組電池Aの温度は、他の単組電池B、Cの温度より高温となっている。これは、単組電池Aにおける内部短絡の発生に伴い、単組電池Aを流れる充電電流Iが増加するためである。したがって、測定している温度情報を併用することによって、単組電池3の異常検出の精度向上を図ることが出来る。
【0032】
上記のように単組電池Aが異常状態にあると判定された場合には、単組電池Aの単組電池監視制御装置4から受信した各単電池2の単電池電圧に基づいて、異常の原因となっている単電池2を特定する。そして、組電池監視制御装置6は、警報部6gに信号を送信し、警報部6gは異常状態にある単組電池Aと単電池2とを表示する。
【0033】
次に、組電池管理システム1を用いた組電池管理方法および作用について説明する。
【0034】
フロート充電においては、整流器101から負荷設備102および組電池3Aに対して直流電力が供給され、組電池3Aの各単組電池3が充電される。この充電時においては、単組電池監視制御装置4によって、単組電池3の温度、単組電池3の単組電池総電圧および単電池2の単電池電圧が測定され、電流計測手段7によって単組電池3の充電電流Iが測定される。また、総電圧電流計測部8によって組電池3Aの組電池総電圧Vおよび総充電電流Ictが測定される。
【0035】
組電池監視制御装置6は、電流計測手段7によって測定された各単組電池3の充電電流Iと他の単組電池3の充電電流Iとの差に基づいて、単組電池3の異常を判定する。図1に示すように、3つの単組電池A、B、Cのうち、単組電池Aの充電電流がI+αであり、単組電池B、Cの充電電流Iより著しく大きい場合は、異常であると判定される。また、単組電池Aの充電電流がI+β(α<β)であり、単組電池B、Cでは放電電流(<I)が測定されている場合も異常と判定される。さらに、単組電池Aの充電電流がI=0である場合は、単組電池Aは異常であると判断される。
【0036】
このように、単組電池の充電電流の相対比較に基づいて、組電池3Aを構成する単組電池3の内部短絡や断線などの異常を的確に判定することができ、組電池3Aの安全性を確保することができる。また、異常の単組電池3を容易に特定することができることから、異常の単組電池3のみについて対策を施すことにより、停電発生時の組電池によるバックアップ機能・予備電源としての機能を維持することができる。そして、異常状態にある単組電池3があると判定された場合には、警報が発せられるので、即時に当該単組電池3を交換することができ、異常状態での充電・放電を阻止することができる。
【0037】
さらに、異常状態であると判定された単組電池3の中の単電池電圧の測定値に基づいて、異常状態にある単電池2を特定することができる。そのため、異常の検出とともに原因となっている単電池2が特定されるので、異常の判定された単組電池3について、単電池2の交換、修理をより迅速に行うことができる。つまり、組電池をより迅速に復旧させることができる。
【0038】
(実施の形態2)
図7ないし図9は、この実施の形態2に係る組電池システム1における使用期間に対する充電電流変動値を示している。この実施の形態では、単組電池3が異常状態であるか否かの判定方法が、実施の形態1と異なり、その他の構成については、実施の形態1と同等である。なお、この実施形態においても、各単組電池3の公称容量は等しいものとする。
【0039】
この実施の形態2では、充電時において、組電池監視制御装置6の単組電池3の充電電流変動値に基づいて、当該単組電池3の異常を判定する。ここで、各単組電池3が正常な場合は、図7に示すように、全ての単組電池3の充電電流変動値は略0である。つまり、すべての単組電池3の充電電流変動値が略0の場合は、すべての単組電池3は正常であると判定する。
【0040】
また、図8に示すように、組電池3Aの使用期間tである場合において、3つの単組電池3のうち例えば単組電池Aの充電電流変動値が著しく大である場合は、単組電池Aは内部短絡を起こしている、つまり、異常であると判定する。このとき、異常でない他の単組電池(単組電池B、C)の充電電流変動値は略0である。
【0041】
さらに、図9に示すように、組電池3Aの使用期間tである場合において、3つの単組電池3のうち例えば単組電池Aの充電電流変動値が著しく減少し、充電電流I=0となった場合は、単組電池Aには断線が生じている、つまり、異常であると判定する。これは、断線によって単組電池Aに充電電流Iが流れなくなるためである。このとき、異常でない他の単組電池(単組電池B、C)の充電電流変動値は略0である。
【0042】
組電池3Aを一定期間運用することにより、単電池2の内部抵抗が使用初期に比べて増加することになる。この単電池2の内部抵抗の増加は充電電流の変化となって表れるので、電流計測手段7によって計測される各単組電池3の充電電流を使用初期の充電電流と比較することにより、各単組電池3の劣化度を把握することが可能となる。
【0043】
このように構成された実施の形態2においては、使用初期の充電電流値と使用経過後の充電電流値との差である充電電流変動値に基づいて、単組電池3の異常を判定するようにしているので、単組電池3間に使用初期において特性にバラツキがある場合でも、単組電池3の異常を正確に判定することができる。また、充電電流変動値に基づき、経年による単組電池3の内部抵抗の変化を知ることができ、単組電池3の劣化度を把握することが可能となる。
【0044】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、単組電池監視制御装置4と組電池監視制御装置6とを一体にしてもよい。また、単組電池3が異常状態にあると判定された場合には、警報部6gから警報が発せられるとともに、異常のある単組電池3を回路から切り離すように、組電池監視制御装置6から充電スイッチ(図示略)に制御信号を送信するようにしてもよい。
【0045】
さらに、単組電池3を整流装置に適用した場合について説明したが、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)や自動車用蓄電池などにも適用することができる。
【0046】
なお、上述の実施例においては電源システムに常設する使用形態で示したが、可搬型とし、必要に応じて対象電源に設置して組電池3Aの異常検出を行ってもよい。また、図1に示した実施例では、リチウムイオン電池を例として、単組電池監視制御装置4を含んだ構成で示したが、本願の対象は、このような単組電池監視制御装置4を含まない鉛蓄電池に適用することも可能である。同様に、他の種類の二次電池の組電池への適用も可能である。
【0047】
さらに、上述の実施例では、複数並列で使用される単組電池3の公称容量を同一として説明したが、各単組電池3の公称容量が同一でない場合にも適用可能である。この場合は、単組電池3の容量に応じて通電されるフロート充電電流値を基準として、それらの変化を追跡すればよい。
【符号の説明】
【0048】
1 組電池システム
2 単電池
3 単組電池
3A 組電池
4 単組電池監視制御装置
4A 組電池管理装置
6 組電池監視制御装置
7 電流計測手段
8 総電圧電流計測部
100 商用電源
101 整流器
102 負荷設備
フロート充電電流
ct 組電池総充電電流
V 組電池総電圧


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、前記単組電池が複数並列に接続された組電池を管理する組電池管理装置であって、
前記各単組電池の充電電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段によって測定された前記各単組電池の充電電流の相対比較に基づき特定の単組電池の異常を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする組電池管理装置。
【請求項2】
単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、前記単組電池が複数並列に接続された組電池を管理する組電池管理装置であって、
前記各単組電池の充電電流を測定する電流測定手段と、
前記各単組電池の前記電流測定手段による使用初期の充電電流値を記憶する記憶手段と、
前記各単組電池について前記記憶手段による使用初期の充電電流値と前記電流測定手段による使用経過後の充電電流値との差を算出して充電電流変動値とし、前記単組電池の充電電流変動値に基づいて特定の単組電池の異常を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする組電池管理装置。
【請求項3】
前記単組電池の各単電池の電圧を測定する電圧測定手段と、
前記判定手段によって異常であると特定された前記単組電池の前記電圧測定手段によって測定された電圧に基づいて異常状態にある単電池を特定する単電池判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の組電池管理装置。
【請求項4】
単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、前記単組電池が複数並列に接続された組電池を管理する組電池管理方法であって、
前記各単組電池の充電電流を測定し、
前記各単組電池の充電電流の相対比較に基づき特定の単組電池の異常を判定する、
ことを特徴とする組電池管理方法。
【請求項5】
単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、前記単組電池が複数並列に接続された組電池を管理する組電池管理方法であって、
前記各単組電池の充電電流を測定し、
前記各単組電池の使用初期の充電電流値を記憶し、
前記各単組電池について使用初期の充電電流値と使用経過後の充電電流値との差を算出して充電電流変動値とし、前記単組電池の充電電流変動値に基づいて特定の単組電池の異常を判定する、
を備えることを特徴とする組電池管理方法。
【請求項6】
単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、前記単組電池が複数並列に接続された組電池システムであって、
前記各単組電池の充電電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段によって測定された前記各単組電池の充電電流の相対比較に基づき特定の単組電池の異常を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする組電池システム。
【請求項7】
単電池が複数直列に接続されて単組電池が構成され、前記単組電池が複数並列に接続された組電池システムであって、
前記各単組電池の充電電流を測定する電流測定手段と、
前記各単組電池の前記電流測定手段による使用初期の充電電流値を記憶する記憶手段と、
前記各単組電池について前記記憶手段による使用初期の充電電流値と前記電流測定手段による使用経過後の充電電流値との差を算出して充電電流変動値とし、前記単組電池の充電電流変動値に基づいて特定の単組電池の異常を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする組電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−88097(P2012−88097A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233258(P2010−233258)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(000128083)株式会社 NTTファシリティーズ総合研究所 (42)
【Fターム(参考)】