説明

絞り板

【課題】レンズにエアーを吹き付けたときにレンズ鏡筒から外れてしまうことを防止できる絞り板を提供する。
【解決手段】投写レンズ10の組み立て時には、先ず、収束レンズ13をレンズ鏡筒11に固定する。この後、絞り板14の段差11aから突出するカシメピン11bをカシメ孔14bに挿入して熱カシメを行い、絞り板14をレンズ鏡筒11に固定する。絞り板14の固定後、絞り開口14aを介して絞り板14の前面14e側から収束レンズ13に向けてエアーを吹き付けて異物を除去する。収束レンズ13に吹き付けたエアーは、エアー逃がし用切り欠き14dから絞り板14の前面14e側に逃げる。このため、絞り板14の熱カシメ部分に圧力が集中してカシメピン11bが破損することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタの投写レンズなどのレンズ鏡筒内に固定される絞り板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタは、画像表示部からの画像光を投写レンズに入射させてスクリーンに画像を投影する。投写レンズのレンズ鏡筒内には、画像表示部からの画像光が入射する収束レンズや、収束レンズに入射した画像光が通過する絞り開口を有する絞り板、絞り開口を通過した光を結像させる結像レンズなどが収納されている。近年、プロジェクタの製造コストを低減するための工夫として、各レンズがプラスチックで形成され、また、絞り板は厚みが0.5mm程度の薄い樹脂(フイルム)で形成されている。
【0003】
投写レンズの組み立ては、先ず、収束レンズを挿入し、その後に絞り板が取り付けられる。投写レンズのレンズ鏡筒の内面には、その中心軸に向けて突出する段差が形成されている。絞り板は、レンズ鏡筒の段差にその一方の面を押し付けるとともに、段差からレンズ鏡筒の中心軸の軸方向と平行に延びるカシメピンにそのカシメ孔を挿入して熱カシメすることによりレンズ鏡筒に固定される。ここで、収束レンズがプラスチックで形成されていると、熱カシメを行ったときに塵や埃などの異物が静電気によって収束レンズの表面に付着しやすくなる。このため、絞り板をレンズ鏡筒に固定した後に、絞り開口を介して収束レンズにエアーを吹き付けて、収束レンズの表面に付着した異物を除去することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−219049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、収束レンズにエアーを吹き付けると、吹き付けたエアーの流れが変化して絞り板に向けてエアーが吹き付けられる。そして、上述したように、絞り板は薄い樹脂で形成されているため、絞り板にエアーが吹き付けられたときの圧力は熱カシメ部分に集中してしまい、この圧力によってカシメピンが破損してしまうことがあった。カシメピンが破損してしまうと、絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまい、再度、熱カシメによって絞り板を固定しなければならないため、投写レンズの製造効率が低下していた。
【0006】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、レンズにエアーを吹き付けたときにレンズ鏡筒から外れてしまうことを防止できる絞り板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するにあたり、本発明は、略中央部に形成された絞り開口を有し、レンズ鏡筒内のレンズと対面するように前記レンズ鏡筒に取り付けられる絞り板において、
前記絞り開口の周囲に、前記絞り開口を介して前記レンズに吹き付けたエアーを逃がすエアー逃がし用開口又はその端縁を切り欠いたエアー逃がし用切り欠きの少なくともいずれか一方を形成したものである。
【0008】
なお、前記レンズ鏡筒は、その内面から突出する段差と、前記段差から前記中心軸の軸方向と平行に延びるカシメピンとを備え、前記絞り開口の周囲に形成されたカシメ孔に前記カシメピンを挿通して熱カシメを行うことにより、前記レンズ鏡筒に固定されることが好ましい。
【0009】
また、前記段差に予備用の前記カシメピンを形成し、前記段差に固定された状態では、予備用の前記カシメピンが前記エアー逃がし用開口又は前記エアー逃がし用切り欠きから突出することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、レンズに吹き付けたエアーを逃がすことが可能になるので、レンズにエアーを吹き付けたときに絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまうことを防止できる。なお、絞り板の重量が軽くなるので、絞り板を使用した製品重量を軽くすることも可能になる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、熱カシメ部分に圧力が集中してカシメピンや絞り板が破損することを防止することが可能になるので、レンズにエアーを吹き付けたときに絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまうことを防止できる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、エアーによってカシメピンが破損してしまってもレンズ鏡筒を交換せずに再利用できるので、レンズ鏡筒を交換することに起因する製造コストの上昇を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を用いたレンズ鏡筒の概略的な縦断面図である。
【図2】絞り板の構成を示す説明図である。
【図3】矩形のエアー逃がし用開口を形成した絞り板の構成を示す説明図である。
【図4】円形のエアー逃がし用開口を形成した絞り板の構成を示す説明図である。
【図5】矩形の開口をマトリクス状に配置したエアー逃がし用開口を形成した絞り板の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、プロジェクタ用の投写レンズ10はレンズ鏡筒11を備えている。レンズ鏡筒11は、プロジェクタ筐体12の前面にネジ止めされている。レンズ鏡筒11の内部には、収束レンズ13、絞り板14、結像レンズ15、フォーカスレンズ16が保持されている。これらの各部材は光軸P(中心軸)に沿って並べて配置されている。絞り板14は、その厚みが0.5mmの樹脂によって弾性を有するシート状に形成されている。また、収束レンズ13や結像レンズ15、フォーカスレンズ16はプラスチックで形成されている。なお、各レンズは、1ブロック化して図示してあるが、これらは単レンズ又は複数枚レンズのいずれであってもよい。
【0015】
プロジェクタ筐体12の内部には、簡略的に示してあるが画像表示部17が組み込まれ、フルカラーの画像光をレンズ鏡筒11に組み込まれた投写光学系に入射させる。画像表示部17は、例えば光源からの白色光をダイクロイックミラーで分割して得たR,G,Bの基本色光で照明される3枚の液晶パネルと、これらの液晶パネルからの画像を合成するクロスダイクロイックプリズムから構成されている。
【0016】
画像表示部17からの画像光(光)は収束レンズ(レンズ)13に入射し、絞り板14の略中央部に形成された絞り開口14aを通過する。絞り開口14aを通過した画像光は結像レンズ15で結像され、フォーカスレンズ16を介して図示しないスクリーンに画像が投影される。絞り開口14aを介して画像光を結像レンズ15に入射させることにより、スクリーン上に投影した画像のフレアやゴーストを防止している。
【0017】
レンズ鏡筒11の内面には、光軸Pに向けて突出する段差11aが全周にわたって形成されている。段差11aには、光軸Pの軸方向と平行に延びる円柱状のカシメピン11bが突接されている。カシメピン11bは、絞り板14の一方の面であって収束レンズ13と対面する後面14cに向けて突出している。また、カシメピン11bは、レンズ鏡筒11の周方向に120度間隔で配置した3本が1組となっており、レンズ鏡筒11の周方向の位置を異ならせて2組の計6本形成されている。絞り板14の絞り開口14aの周囲には、カシメピン11bを挿入するカシメ孔14bがその周方向に120度間隔で3箇所に形成されている。絞り板14は、3つのカシメ孔14bにいずれか一組のカシメピン11bを挿入するとともに、その一方の面であって収束レンズ13と対面する後面14cを押し当て、カシメピン11bを熱カシメすることにより、レンズ鏡筒11に固定されている。他方、絞り板14の固定に使用されていない1組のカシメピン11bは予備用となっている。図中では、熱カシメしたカシメピン11bはその先端が潰れて絞り板14に溶着した状態を示し、予備用のカシメピン11bは熱カシメ前の円柱状の状態を示している。なお、カシメピン11bの数及びその組数は適宜数設けてよい。
【0018】
図2に示すように、絞り板14には、その端縁を切り欠いたエアー逃がし用切り欠き14dが3箇所に形成されている。エアー逃がし用切り欠き14dは、カシメ孔14bと同様に絞り板14の周方向に120度間隔で配置されており、各々がカシメ孔14bの間に配置されている。また、エアー逃がし用切り欠き14dは、全領域が段差11aに遮られることのない深さに切り欠かれている。このため、エアー逃がし用切り欠き14dを介して、絞り板14の後面14c側と、その他方の面である前面14e側とが連通している。絞り板14をレンズ鏡筒11に固定した状態では予備用のカシメピン11bはエアー逃がし用切り欠き14dから絞り板の前面14e側に突出してエアー逃がし用切り欠き14dを介して逃がされている。
【0019】
次に、上記構成による作用について説明する。
【0020】
投写レンズ10の組み立て時には、先ず、収束レンズ13が絞り板14の後面14c側(図1の画像表示部17側)からレンズ鏡筒11に挿入されて固定される。収束レンズ13の固定後、絞り板14が反対側からレンズ鏡筒11内に挿入されるとともに、段差11aから突出する2組のカシメピン11bのうちいずれか1組に絞り板14のカシメ孔14bが挿通される。この後、熱カシメが行われて絞り板14がレンズ鏡筒11に固定される。収束レンズ13はプラスチックで形成されているため、熱カシメを行ったときに静電気によって塵や埃などの異物がその表面に付着しやすい。このため、絞り板14の固定後、絞り開口14aを介してその前面14e側から収束レンズ13に向けてエアーが吹き付けられ、収束レンズ13の表面に付着した異物が除去される。収束レンズ13に吹き付けたエアーは、収束レンズ13の表面でその流れが変化して絞り板14の後面14cに向けて吹き付けられる。絞り板14の後面14cに吹き付けられたエアーは、エアー逃がし用切り欠き14dから前面14e側に逃げる。このため、絞り板14の熱カシメ部分に圧力が集中してカシメピン11bが破損することを防止できる。仮に、絞り板14の固定に使用されている1組のカシメピン11bが破損したときには、予備用の1組のカシメピン11bを絞り板14の固定に使用できるので、レンズ鏡筒11を交換することなく使用できる。
【0021】
以上のように、収束レンズ13に吹き付けたエアーをエアー逃がし用切り欠き14dから逃がすことにより、カシメピン11bの破損を防止できることに加え、レンズ鏡筒11は改造を施すことなく従来のものを使用できるので、これに改造を施した場合に比べて製造コストの上昇を抑えることも可能になる。また、エアー逃がし用切り欠き14dを形成することによって絞り板14の重量を軽量化できるので、投写レンズ10の重量を軽量化できる。
【0022】
上記実施形態では、エアー逃がし用切り欠き14dを形成したがこれに変えてエアー逃がし用開口を形成する、あるいは、エアー逃がし用切り欠きとエアー逃がし用開口との両方を形成してもよい。また、エアー逃がし用切り欠きあるいはエアー逃がし用開口の数は適宜数にしてよい。
【0023】
具体的には、図3に示すように、例えば、絞り板20の絞り開口20aの周囲に、絞り板20の周方向に延びる矩形状のエアー逃がし用開口20bを3箇所に形成する。エアー逃がし用開口20bは、レンズ鏡筒11の段差11aの内側に配置され、また、各々は絞り板20の周方向に120度間隔で配置されている。エアー逃がし用開口20bにおいても収束レンズ13に吹き付けたエアーを逃がすことができる。
【0024】
また、図4に示すように、例えば、絞り板30の絞り開口30aの周囲に、円形のエアー逃がし用開口30bを3箇所に形成する。エアー逃がし用開口30bは、レンズ鏡筒11の段差11aの内側に配置され、また、各々は絞り板30の周方向に120度間隔で配置されている。エアー逃がし用開口30bにおいても収束レンズ13に吹き付けたエアーを逃がすことができる。
【0025】
さらに、図5に示すように、例えば、絞り板40の絞り開口40aの周囲に、絞り板40の周方向に延びる矩形状の開口をマトリクス状に配置してメッシュ状にしたエアー逃がし用開口40bを3箇所に形成する。エアー逃がし用開口40bは、レンズ鏡筒11の段差11aの内側に配置され、また、各々は絞り板40の周方向に120度間隔で配置されている。エアー逃がし用開口40bにおいても収束レンズ13に吹き付けたエアーを逃がすことができる。
【0026】
上記実施形態では、熱カシメによって絞り板をレンズ鏡筒に固定したが、例えば、周面の一部に切れ目を入れるとともに切れ目を入れた部分を一面側に折り曲げた金属板をネジ止めによってレンズ鏡筒に取り付け、金属板の折り曲げ部分に絞り板のカシメ開口を挿入してカシメを行う、あるいは、接着によって絞り板をレンズ鏡筒に固定するなど、絞り板をレンズ鏡筒に固定する方法は適宜の方法でよい。
【0027】
上記実施形態では、プロジェクタに用いる投写レンズのレンズ鏡筒に本発明を適用したが例えばカメラなどプロジェクタ以外のレンズ鏡筒に本発明を適用してもよい。また、さらに、エアーを吹き付けるレンズは収束レンズ13に限らず、結像レンズやオートフォーカスレンズなど他のレンズでもよい。
【符号の説明】
【0028】
11 レンズ鏡筒
11a 段差
11b カシメピン
13 収束レンズ(レンズ)
14,20,30,40 絞り板
14a,20a,30a,40a 絞り開口
14c 後面
14d エアー逃がし用切り欠き
14e 前面
20b,30b,40b エアー逃がし用開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略中央部に形成された絞り開口を有し、レンズ鏡筒内のレンズと対面するように前記レンズ鏡筒に取り付けられる絞り板において、
前記絞り開口の周囲に、前記絞り開口を介して前記レンズに吹き付けたエアーを逃がすエアー逃がし用開口又はその端縁を切り欠いたエアー逃がし用切り欠きの少なくともいずれか一方を形成したことを特徴とする絞り板。
【請求項2】
前記レンズ鏡筒は、その内面から突出する段差と、前記段差から前記中心軸の軸方向と平行に延びるカシメピンとを備え、
前記絞り開口の周囲に形成されたカシメ孔に前記カシメピンを挿通して熱カシメを行うことにより、前記レンズ鏡筒に固定されることを特徴とする請求項1記載の絞り板。
【請求項3】
前記段差に予備用の前記カシメピンを形成し、
前記段差に固定された状態では、予備用の前記カシメピンが前記エアー逃がし用開口又は前記エアー逃がし用切り欠きから突出することを特徴とする請求項2記載の絞り板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−185940(P2010−185940A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28501(P2009−28501)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】