説明

給水機

【課題】ペルチェ素子による温度低下を効率化すると共に、低下した温度を長期間維持できるようにする、熱逆流防止機能を備える温度制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の温度制御装置は、冷却対象および加熱対象のいずれかの対象物と、対象物と受熱面41で熱的に接触し、対象物の熱を放熱面42に移動させるペルチェ素子4と、ペルチェ素子4の放熱面42と熱的に接触可能であって、対象物から移動された熱を外部に排出する排熱部材6と、所定条件に基づいて、ペルチェ素子4の放熱面42と排熱部材6との熱的な接触面積を減少させる離隔制御部7と、を備える熱逆流防止機能を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫や給水機などの熱交換を必要とする機器に用いられる温度制御装置であって、熱逆流防止機能を備える温度制御装置および給水機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保温庫、冷蔵庫、給水機など内部の温度を低下させたり上昇させたりする必要のある機器が多く存在する。このような機器は、温度の低下や上昇のために、外気との熱を交換する熱交換器を備えている。このような熱交換器としては、コンプレッサが一般的に用いられる。
【0003】
コンプレッサは、フロンガスなど化学的媒体を用いることで、外気と内部との熱を交換することで、所定の内部空間の温度を低下させたり上昇させたりする。例えば給水機であれば、給水機は、冷水と温水とを供給する機能を有するが、冷水を生成する冷水タンクは、コンプレッサを備えることが多い。このコンプレッサにより、冷水タンクは、内部に貯留する水を冷却して冷水を生成する。
【0004】
近年の健康ブームや水道水の品質劣化に伴い、ミネラルウォーターや天然水を収容した水容器から、温水や冷水を得る給水機、浄水器あるいはウォーターサーバーが家庭やオフィスで利用されている。このようなコンプレッサを用いた冷水タンクを有すると共に加熱手段によって温水を得る温水タンクとを備える。例えば、このような冷水タンクと温水タンクとを備える給水機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方で、コンプレッサは、フロンガスや代替フロンガスを用いる必要がある。これらの化学的ガスは、オゾン層の破壊や大気中の二酸化炭素の増加などの環境問題を引き起こす懸念を有する。このため、熱交換機能の実現においては、コンプレッサのような環境破壊の懸念のある要素以外の技術が求められていた。
【0006】
加えて、コンプレッサは、消費電力や騒音の点でも不十分な点がある。冷蔵庫や給水機は、住居やオフィスに設置されるので、消費電力や騒音が小さいことが求められる。
【0007】
このような状況で、ペルチェ素子を用いて冷水タンクを冷却して冷水を得る技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−48488号公報
【特許文献2】特開2008−025913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される給水機は、冷水を得るのにコンプレッサを用いているので、環境問題への対応ができないのは上述の通りである。
【0010】
また、特許文献2に開示される給水機は、ペルチェ素子を用いて冷水タンクの水を冷却する技術を開示する。ペルチェ素子とは、電気的な処理によって、一方の面に接触する物体の熱を他方の面に移動させる機能を有する。ペルチェ素子は、平板状の部材であり、一方の面に接触する物体の熱を、他方の面に移動させて、当該物体の温度を低下させる機能を有する。ペルチェ素子は、熱移動の方向性を有しており、電極の向きによって、熱移動の方向を変えることができる。
【0011】
ペルチェ素子は、フロンガスなどの化学物質を用いることがなく、騒音も生じさせないメリットがある。
【0012】
図8は、従来技術におけるペルチェ素子を取り付けた冷水タンクの側面図である。内部の温度を低下させる必要のある機器の例として、給水機に備えられる冷水タンクを例として、従来技術におけるペルチェ素子の仕様態様について説明する。
【0013】
冷水タンク800は、その内部に水801を貯留しており、この水801の温度を低下させるために、ペルチェ素子802を用いる。ペルチェ素子802は、一方の面に水801と接触するヒートシンク803を備える。ヒートシンク803は、水801と広い接触面積で接触して水801からの熱を受熱する。ペルチェ素子802には、制御部805から信号線806を通じて電気信号が供給されるので、ペルチェ素子802は、ヒートシンク803が受熱した熱を、他方の面に移動させる。すなわち、冷水タンク800内部の熱を冷水タンク800の外部に移動させる。移動された熱は、ヒートシンク804を通じて外部に排出される。この排出によって、冷水タンク800内部の熱は外部に排出されて冷水タンク800内部が冷却され、水801は冷水になる。
【0014】
しかしながら、従来技術に示されるペルチェ素子を用いた冷水タンクでは、冷水タンク800内部の水801が一定の温度以下になると、節電のためにペルチェ素子802に対する電力の供給が停止する。一方、ヒートシンク804は、大きな表面積および体積を有するので、ヒートシンク804は一種の熱源になってしまっている。ペルチェ素子802への電力供給が停止されると、ペルチェ素子802による熱移動機能が停止するので、ヒートシンク804が蓄積している熱が、ペルチェ素子802を通じて冷水タンク800内部に逆流する問題がある。ヒートシンク804(要は、冷却対象である冷水タンク800の外部に存在する部材)からの熱が冷水タンク800内部に逆流すれば、冷水タンク800内部で生成された冷水が再びぬるくなる問題がある。水801の温度が上昇したことに合わせてペルチェ素子802に電力を供給する必要が生じる。結果として消費電力が増加する。
【0015】
ペルチェ素子802に対して永続的に電力を供給すれば、ペルチェ素子802が永続的に動作するので、ヒートシンク804からの熱の逆流はなくなるが、消費電力が高くなる問題もある。熱の逆流を防止するためにヒートシンク804などの熱排出部材を無くすことも考えられるが、こうなると、ペルチェ素子802によって冷水タンク800内部の熱を排出する能力が低下し、結局は、ペルチェ素子802の負担が高まり、必要となる消費電力も増加する。
【0016】
このように、従来技術におけるペルチェ素子を用いた温度制御では、ペルチェ素子によって排出した熱が逆流することになって、温度上昇、消費電力の増加といった問題を生じさせる。
【0017】
冷水タンク800内部の温度を低下させれば、その後は自然的な温度上昇以外の要因による温度上昇を防止することが、消費電力の効率化の点で好ましい。すなわち、(1)なるべく効率的かつ高速に冷水タンク800内部の温度を低下させ、(2)低下した後では、その低下した温度の状態を長期間保つ、ことの2点が実現することが、消費電力削減、環境保護に適した温度制御となる。
【0018】
本発明は、上記問題を解決するために、ペルチェ素子による温度低下を効率化すると共に、低下した温度を長期間維持できるようにする、熱逆流防止機能を備える温度制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題に鑑み、本発明の温度制御装置は、冷却対象および加熱対象のいずれかの対象物と、対象物と受熱面で熱的に接触し、対象物の熱を放熱面に移動させるペルチェ素子と、ペルチェ素子の放熱面と熱的に接触可能であって、対象物から移動された熱を外部に排出する排熱部材と、所定条件に基づいて、ペルチェ素子の放熱面と排熱部材との熱的な接触面積を減少させる離隔制御部と、を備える熱逆流防止機能を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の温度制御装置は、ペルチェ素子によって冷却対象を冷却しペルチェ素子の動作が停止した後でも、ペルチェ素子を通じた熱の逆流を防止できる。結果として、冷却された冷却対象の温度を長時間維持できる上、ペルチェ素子に供給する消費電力を低減できる。
【0021】
また、ペルチェ素子の外部にヒートシンクなどの排熱部材を設けることができるようになるので、ペルチェ素子による冷却能力が高まる。結果として、冷却対象を所定の温度まで低下させるのに必要となる消費電力や時間が短縮される。更に低下させられた温度を、電力などのエネルギーを要さずに長期間維持できる。
【0022】
これらの効果が相まって、本発明の温度制御装置は、消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における温度制御装置の模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1における制御部の動作グラフである。
【図3】本発明の実施の形態1における離隔制御部の一例を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における離隔制御部による動作を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1における離隔制御部による動作を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1における温度制御装置の側面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における給水機の模式図である。
【図8】従来技術におけるペルチェ素子を取り付けた冷水タンクの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の発明に係る温度制御装置は、冷却対象および加熱対象のいずれかの対象物と、対象物と受熱面で熱的に接触し、対象物の熱を放熱面に移動させるペルチェ素子と、ペルチェ素子の放熱面と熱的に接触可能であって、対象物から移動された熱を外部に排出する排熱部材と、所定条件に基づいて、ペルチェ素子の放熱面と排熱部材との熱的な接触面積を減少させる離隔制御部と、を備える熱逆流防止機能を備える。
【0025】
この構成により、温度制御装置は、節電のためにペルチェ素子への電力の供給が停止している期間においても、排熱部材からの熱の逆流を防止できる。
【0026】
本発明の第2の発明に係る温度制御装置では、第1の発明に加えて、ペルチェ素子に電力を供給する制御部を更に備える。
【0027】
この構成により、ペルチェ素子は、電力供給と電力停止との制御を受ける。
【0028】
本発明の第3の発明に係る温度制御装置では、第2の発明に加えて、制御部は、対象物が所定温度以下になると、ペルチェ素子への電力供給を停止する。
【0029】
この構成により、ペルチェ素子に必要となる消費電力が削減できる。
【0030】
本発明の第4の発明に係る温度制御装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、離隔制御部は、ペルチェ素子の放熱面と排熱部材との間を広げる押し出し部材を備える。
【0031】
この構成により、温度制御装置は、所定条件下で、ペルチェ素子と排熱部材との距離を離隔させる。
【0032】
本発明の第5の発明に係る温度制御装置では、第4の発明に加えて、離隔制御部は、押し出し部材の押し出しの起動力として電磁石を備え、電磁石に電力が供給されると、押し出し部材が突出して、ペルチェ素子の放熱面と排熱部材との間が広がる。
【0033】
この構成により、押し出し部材は、簡便な構成で、ペルチェ素子と排熱部材との距離を離隔させることができる。
【0034】
本発明の第6の発明に係る温度制御装置では、第4又は第5の発明に加えて、押し出し部材は、ペルチェ素子の放熱面と排熱部材とを離隔させる、もしくはペルチェ素子と排熱部材とが接続している位置を基準に相互の角度を傾かせることで、ペルチェ素子の放熱面と排熱部材との接触面積を減少させる。
【0035】
この構成により、押し出し部材は、容易にペルチェ素子と排熱部材とを離隔させることができる。
【0036】
本発明の第7の発明に係る温度制御装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、所定条件は対象物を冷却する際に定まる第1温度もしくは加熱する際に定まる第2温度であり、離隔制御部は、対象物が第1温度以下もしくは対象物が第2温度以上になると、ペルチェ素子と排熱部材との接触面積を減少させる。
【0037】
この構成により、冷却や加熱の対象物の温度条件に合わせて、温度制御装置は、ペルチェ素子を通じた熱の逆流を防止できる。
【0038】
本発明の第8の発明に係る温度制御装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、離隔制御部は、ペルチェ素子への電力の供給が停止されると、ペルチェ素子と排熱部材との接触面積を減少させる。
【0039】
この構成により、ペルチェ素子の動作制御と離隔制御とが連動できる。
【0040】
本発明の第9の発明に係る温度制御装置では、第8の発明に加えて、離隔制御部は、ペルチェ素子への電力の供給が停止されると、電磁石へ電力を供給し押し出し部材を突出させる。
【0041】
この構成により、押し出し部材の制御が容易となる。加えて、ペルチェ素子の制御と押し出し部材の制御とを連動させることができる。
【0042】
本発明の第10の発明に係る温度制御装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、ペルチェ素子の受熱面は、対象物と熱的に接触する吸熱部材をさらに備える。
【0043】
この構成により、ペルチェ素子は、より効率的に対象物からの熱を奪う。
【0044】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0045】
(実施の形態1)
【0046】
まず、図1を用いて、実施の形態1における温度制御装置の全体概要を説明する。温度制御装置1は、冷却対象となる対象物から奪って排出する熱の逆流を防止する機能を備える。
【0047】
図1は、本発明の実施の形態1における温度制御装置の模式図である。
【0048】
温度制御装置1は、制御対象となる対象物の温度を制御する。温度を制御するとは、対象物を冷却したり加熱したりする。但し、一般的には冷却することが多い。図1では対象物として給水機や浄水器に用いられる冷水タンク2が示されている。冷水タンク2はその内部に冷水3を貯留している。冷水タンク2は、貯留する冷水3を供給可能である。
【0049】
温度制御装置1は、ペルチェ素子4と、ペルチェ素子4が移動させた熱を外部に排出する排熱部材6と、離隔制御部7と、を備える。温度制御装置1は、冷水タンク2に取り付けられており、温度制御装置1は、冷水タンク2が貯留する冷水3を冷却する。
【0050】
ペルチェ素子4は、対象物と熱的に接触して熱を受ける受熱面41と受熱面41で受けた熱を移動させる先となる放熱面42とを備える。ペルチェ素子4は、受熱面41において冷水タンク2と熱的に接触する。この熱的な接触によって、ペルチェ素子4は、冷水タンク2からの熱を受熱面41から放熱面42に移動させる。ペルチェ素子4は、放熱面42において排熱部材6と熱的に接触できる。この熱的な接触によって、ペルチェ素子4が移動させた冷水タンク2の熱が、外部に輩出される。結果として、温度制御装置1は、冷水タンク2を(すなわち、貯留される冷水3を)冷却できる。
【0051】
また、温度制御装置1は、離隔制御部7を備える。離隔制御部7は、ペルチェ素子4の放熱面42と排熱部材6との熱的な接触面積を減少させる。熱的な接触面積の減少とは、例えば、ペルチェ素子4の放熱面42と排熱部材6との間を離隔させたり、断熱部材を入れたりすることである。離隔制御部7による接触面積の減少によって、排熱部材6からの熱が、非動作中のペルチェ素子4を通じて冷水タンク2に逆流することが防止される。
【0052】
また、ペルチェ素子4に電力を供給する制御部9と、制御部9からの電気信号を伝える信号線8が、温度制御装置1に接続される。
【0053】
従来技術においては、ペルチェ素子4を温度制御の対象物である冷水タンク2に取り付けられ、ペルチェ素子4が吸い上げた熱が、排熱部材6を通じて排出されていた。このとき、冷水タンク2の温度が所定値以下となれば、節電のためにペルチェ素子4に対する電力供給が停止する。ペルチェ素子4への電力供給が停止されると、ペルチェ素子4は、受熱面41から放熱面42に向けた熱移動を行えなくなる。この状況では、排熱部材6の温度は冷水タンク2の温度よりも高く、排熱部材6は、一種の熱源となってしまっている。
【0054】
一般的には、ペルチェ素子4から排熱部材6へ効率的に熱を移動させるために(熱の移動が効率的であることで、ペルチェ素子4によって吸い上げられた冷水タンク2の熱が、排熱部材6を通じて効率的に外部に輩出されるからである)、ペルチェ素子4の放熱面42と排熱部材6との間にはグリースなどの熱的接合材が塗布されている。この熱的接合材によって、排熱部材6からペルチェ素子4には熱が移動しやすくなり、ペルチェ素子4の動作停止中には、排熱部材6の熱が容易にペルチェ素子4に入り込んで、冷水タンク2に逆流してしまう。
【0055】
このため、従来技術における温度制御装置は、ペルチェ素子への電力供給を停止させないか熱の逆流を容認するかしかなく、消費電力を無駄に使用している状態である。
【0056】
離隔制御部7は、放熱42と排熱部材6との熱的な接触面積を減少させるので、ペルチェ素子4への電力供給が停止した後でも(ペルチェ素子4の動作が停止中でも)排熱部材6の熱が逆流しない。このため、ペルチェ素子4によって冷却した冷水タンク2の温度は長時間維持されるし、ペルチェ素子4に必要となる電力も減少させることができる。
【0057】
実施の形態1における温度制御装置1は、以上のように消費電力を低減させることができる。図1においては、給水機や浄水器に備えられる冷水タンク2を例として説明したが、冷蔵庫や保温庫に適用される場合でも同様である。
【0058】
次に、各部の詳細について説明する。
【0059】
(冷水タンク)
温度制御装置1は、温度制御の対象となる対象物を冷却したり加熱したりする。温度制御装置1は、ペルチェ素子4を備えることで、対象物の温度を制御する。図1では、給水機や浄水器に含まれる冷水タンク2が対象物の一例として示されている。
【0060】
冷水タンク2は、給水機などに含まれて、水容器から供給されるミネラルウォーターや天然水を一時的に貯留し、貯留する中で冷却して冷水3を得る。得られた冷水3を、冷水タンク2は、一時的に貯留する。なお、冷水3とは、冷却された水および冷却されうる水を全て含むものであり、実際に冷たい状態となっていない水であっても、冷水タンク2に貯留されている水を冷水3と定義する。
【0061】
また、冷水タンク2は、貯留している冷水3を供給する冷水供給手段を更に備える。例えば、水道のような開栓コックや開栓ノズルを備えており、これらの開栓機構によって、冷水供給手段は、貯留されている冷水を外部に供給できる。たとえば、使用者が開栓機構を開くことで、冷水を得る。
【0062】
冷水タンク2は、温度制御装置1によって、冷水タンク2自身およびその内部の温度を制御される。このとき、冷水タンク2は、内部に貯留する冷水3の温度を低下させることが目的であるので、温度制御装置1は、冷水タンク2を冷却する。このため、ペルチェ素子4の受熱面41は、冷水タンク2と熱的に接触する。熱的な接触とは、例えば、ペルチェ素子4の受熱面41が、冷水タンク2の表面と接触(直接的に接触しても良いし、グリースのような熱的接合材を介して接触しても良い)することである。あるいは、ペルチェ素子4の受熱面41が、冷水3と接触しても良い。
【0063】
また、図1に示されるように、ペルチェ素子4は、冷水タンク2および冷水3から熱を効率的に従熱するために、ヒートシンク5を備えることも好適である。ペルチェ素子4の受熱面41にヒートシンク5が接続されており、このヒートシンク5は、受熱面41に接続されており、冷水3と広い面積で接触する。この接触により、ヒートシンク5が冷水3より熱を吸い上げてペルチェ素子4に伝導する。ペルチェ素子4は、伝導された熱を、受熱面41より放熱面42に移動させる。移動された熱は、排熱部材6を介して外部に排出されるので、結果として、冷水3の熱は、外部に排出される。
【0064】
ヒートシンク5は、必須の部材ではないので、備えられなくてもよいが、備えられることで、冷却効果が高まる。熱の移動方向が逆であれば、ヒートシンク5は、加熱効果を高める。
【0065】
また、冷水タンク以外でも、給水機や浄水器に含まれる温水タンク、冷蔵庫、保温庫など、外部との熱交換によって温度が制御される必要のある機器や装置などが、対象物として選択される。
【0066】
(ペルチェ素子)
ペルチェ素子4は、受熱面41から放熱面42に向けて熱を移動させる。図1においては、対象物が冷水タンク2であるので、ペルチェ素子4は、受熱面41を冷水タンク2に熱的に接触させて、冷水タンク2から奪った熱を放熱面42に移動させる。
【0067】
ペルチェ素子4は、平板状の形状を有する板状の部材であり、対向する一対の面を有する。この一対の面の内、一方の面が受熱面41であり受熱面41と対向する面が放熱面42である。受熱面41は対象物と熱的に接触し、放熱面42は、排熱部材6と熱的に接触する。ペルチェ素子4は、電力が供給されている状態では、受熱面41から放熱面42に向けて熱を移動させる。この移動は一方通行である。
【0068】
放熱面42は、排熱部材6と熱的に接触しているので、放熱面42に移動された熱は、排熱部材6に伝導されて外部に排出される。外部に排熱されることで、冷水タンク2(冷水3)から受熱面41が奪い取った熱が排出されて、対象物が冷却されることになる。
【0069】
もちろん、ペルチェ素子4の熱移動方向を逆にすれば(ペルチェ素子4に加える電気信号を切り替えることで、ペルチェ素子4の熱移動方向は逆転する)、外部の熱を、ペルチェ素子4を通じて対象物に与えることができる。すなわち、対象物を加熱することができる。例えば、対象物が冷水タンク2ではなく温水タンクである場合には、温水タンクに対してペルチェ素子4が熱を与え、結果として温水タンクが加熱される。
【0070】
このように、ペルチェ素子4は、電気信号と電力の供給を受けることで、所定方向における熱移動を実現する。
【0071】
また、制御部9は、ペルチェ素子4に電力(電気信号)を供給する。この供給される電力によって、ペルチェ素子4は、動作する。一方で、対象物の温度が所望の温度に制御されると、ペルチェ素子4による熱移動および排熱は、不要となるので、消費電力削減の観点からペルチェ素子4への電力供給が停止されることが好ましい。このため、制御部9は、対象物(図1では冷水タンク2)が所定温度以下になるとペルチェ素子4への電力供給を停止する。また、対象物がある温度以上になるとペルチェ素子4への電力供給を再開する。制御部9は、対象物が冷却対象である場合には、第1温度と第2温度を基準に、電力の供給と再開とを行う。
【0072】
図2は、本発明の実施の形態1における制御部の動作グラフである。図2は、制御部9がペルチェ素子4に与える電力の停止と再開とを示している。グラフは、縦軸が電力値を示し、横軸は時間を示している。
【0073】
制御部9は、冷水タンク2が第1温度T1となると(制御部9は、温度センサを備えており、温度を計測できる)ペルチェ素子4に電力を供給する。第1温度T1は、所定の温度であって、冷水タンク2としては冷却が不十分である温度である。このため、第1温度T1以上であると、ペルチェ素子4が動作して、冷水タンク2を冷却する必要がある。このため、制御部9は、第1温度T1以上となると、ペルチェ素子4に電力を供給する。グラフでは、第1温度T1で、電力が増加している。
【0074】
一方、制御部9は、冷水タンク2が第2温度T2とあると、ペルチェ素子4への電力供給を停止する。第2温度T2は、第1温度T1よりも低い温度であって、冷水タンク2の冷却状態としては十分な温度である。この状態となれば、ペルチェ素子4がさらに冷水タンク2を冷却することは、消費電力の点で無駄である。このため、消費電力削減のために、ペルチェ素子4への電力供給を停止することが好ましい。制御部9は、第2温度T2となると、グラフに示されるように供給する電力を低減(停止)させてペルチェ素子4の動作を停止させる。この結果、消費電力が削減できる。
【0075】
また、図2では、対象物が冷却対象である場合に基づいて、第1温度T1で動作を開始し、第2温度T2で動作を停止することを説明したが、対象物が加熱対象である場合には、動作開始と停止とが逆転する。
【0076】
また、制御部9は、対象物の温度に基づいて電力の供給と停止を制御するだけでなく、時間に基づいて電力の供給と停止を制御しても良い。
【0077】
(離隔制御部)
ペルチェ素子4は、放熱面42において排熱部材6と熱的に接触する。この熱的な接触によってペルチェ素子4が移動させた熱は、排熱部材6を通じて外部に放出される。ペルチェ素子4に電力が供給されている間は、ペルチェ素子4は、受熱面41から放熱面42に向けて熱を移動させる。このため、対象物から奪った熱は、連続的に排熱部材6を通じて外部に排出される。
【0078】
しかし、上述のように、ペルチェ素子4は所定条件になるとその動作を停止する。動作が停止している状態では、ペルチェ素子4は、板部材に過ぎない。排熱部材6は、図1に示されるようにヒートシンクであったりするので、排出するべき熱を蓄積してしまう。ペルチェ素子4が停止中では、排熱部材6の温度は冷水タンク2の温度よりもずっと高く、排熱部材6からペルチェ素子4を通じて冷水タンク2に熱が逆流する。逆流すると、折角冷却された冷水タンク2の温度が上昇することになってしまう。
【0079】
離隔制御部7は、ペルチェ素子4の放熱面42と排熱部材6との熱的な接触面積を減少させる。
【0080】
離隔制御部7は、種々の部材を用いて、ペルチェ素子4の放熱面42と排熱部材6との熱的な接触面積を減少させる。離隔制御部7が備える部材の一例として、放熱面42と排熱部材6との間を広げる押し出し部材が用いられても良い。
【0081】
図3は、本発明の実施の形態1における離隔制御部の一例を示す側面図である。図3は、離隔制御部7の一例として押し出し部材71を示している。押し出し部材71は、放熱面42と排熱部材6との距離を広げている。図3では、ペルチェ素子4の一辺と排熱部材6の一部とが接続されており、押し出し部材71が排熱部材6を押し出すことで、この接続されている一辺を支点として放熱面42と排熱部材6との距離が広がる。結果として、接続されている一辺以外の領域においては、放熱面42と排熱部材6との熱的な接触はほとんどなくなる。
【0082】
このように、押し出し部材71によって、離隔制御部7は、ペルチェ素子4の放熱面42と排熱部材6との熱的な接触面積を減少させる。
【0083】
また、離隔制御部7は、押し出し部材71の押し出しの起動力としての電磁石を備えて、この電磁石の作用によって押し出し部材71を押し出すことも好適である。図4は、本発明の実施の形態1における離隔制御部による動作を示す説明図である。
【0084】
押し出し部材71には、電磁石72が接続されている。電磁石72は、電力の供給を受けることで磁力を発生させたり磁力を解除したりする。例えば、電磁石72が磁力を有している状態では、押し出し部材71は電磁石72の内部(あるいはペルチェ素子4の内部)の収納されており、電磁石72が磁力を有していない状態では、押し出し部材71は電磁石72の内部から突出して排熱部材6を押し出す。すなわち、押し出し部材71の押し出しによって、ペルチェ素子4の放熱面42と排熱部材6との間が広がる。電磁石72と押し出し部材71とがこのような構造を有している場合には、電磁石72に電力が供給される場合に、放熱面42と排熱部材6との熱的な接触面積が減少する。
【0085】
また、電磁石72への電力の供給と解除は、ペルチェ素子4への電力の供給と解除を制御する制御部9によって行われれば良い。押し出し部材71によるペルチェ素子4と排熱部材6との離隔は、ペルチェ素子4への電力の供給と解除の切り替わりによって必要となるからである。
【0086】
図4では、制御部9は、電力をペルチェ素子4に供給する。同様に、制御部9は、電力を電磁石72に供給する。電磁石72は、制御部9より電力が供給されている期間では、磁力を有しているので、押し出し部材71をとどめておくことができる。
【0087】
一方、対象物の温度が所定値以下(対象物が加熱対象の場合には所定値以上)となると、制御部9は、ペルチェ素子4に対する電力供給を停止する。節電のためである。この結果、制御部9は、電磁石72に対しても電力の供給を停止する。電磁石72に対する電力の供給が停止されると、磁力を失い、押し出し部材71を留めておく事ができなくなって押し出す。この押し出し部材71の押し出しによって、離隔制御部7は、ペルチェ素子4と排熱部材6との熱的な接触面積を減少させることができる。接触面積の減少は、図4に示されるとおりである。
【0088】
すなわち、離隔制御部7は、所定条件が整うことでペルチェ素子4と排熱部材6との熱的な接触面積を減少させるが、この所定条件は、対象物を冷却する際に定まる所定温度および対象物を加熱する際に定まる所定温度の少なくとも一方である。すなわち、対象物を冷却する際には、所定温度以下となると制御部9がペルチェ素子4と電磁石72に供給している電力を停止する。この電力供給の停止に合わせて、ペルチェ素子4の動作は停止し、電磁石72は磁力を失う。
【0089】
電磁石72が磁力を失うことで、押し出し部材71は、電磁石72より突出して排熱部材6を押し出す。この押し出しによって、ペルチェ素子4と排熱部材6との間が離隔する。ペルチェ素子4が非動作状態となると、排熱部材6からの熱の逆流の可能性が生じる。しかし、ペルチェ素子4が非動作状態となると同時に、押し出し部材71によってペルチェ素子4と排熱部材6との熱的な接触面積が減少して熱の逆流が防止される。
【0090】
所定温度以上に戻ると、制御部9は、ペルチェ素子4および電磁石72に電力の供給を再開する。電力の供給が再開されることで、電磁石の磁力が復活して押し出し部材71が電磁石72に収納される。この結果、ペルチェ素子4と排熱部材6とが再び熱的に接触する。ペルチェ素子4の動作も再開されるので、ペルチェ素子4は、対象物から奪った熱を排出できる。
【0091】
また対象物が加熱対象である場合には、所定温度以上となることで、制御部9が、ペルチェ素子4と電磁石72への電力供給を停止する。この停止によって、ペルチェ素子4を通じた熱の逆流が防止される。
【0092】
このように、ペルチェ素子4への電力の供給と電磁石への電力の供給とが対応することで、ペルチェ素子4の動作停止時間には、ペルチェ素子4と排熱部材6との熱的な接触面積が減少する。これによって、熱の逆流が防止される。すなわち、離隔制御部7の動作の所定条件は、ペルチェ素子4への電力供給と停止とを定める所定条件である。
【0093】
また、図4に示されるように、ペルチェ素子4と排熱部材6とが、接続している位置を基準に相互の角度を傾かせることで、相互の熱的な接触面積を減少させてもよい。また、図5に示されるように、押し出し部材71がペルチェ素子4の放熱面42から排熱部材6を完全に押し出すことで、相互が完全に離隔するようにされてもよい。図5は、本発明の実施の形態1における離隔制御部による動作を示す説明図である。
【0094】
図5では、離隔制御部7は、2つの押し出し部材71とこれらに組み合わされる2つの電磁石72を備える。2つの電磁石72のそれぞれには、制御部9より電力の供給と停止が行われる。制御部9は、ペルチェ素子4および2つの電磁石72に電力を供給する。電力が供給されている間は、電磁石72は磁力を有するので、2つの電磁石72のそれぞれは、押し出し部材71を収納する。一方、ペルチェ素子4が所定条件(温度が所定値以上であったり所定値以下であったりする場合)を満たすと、制御部9は、電力の供給を停止する。2つの電磁石72のそれぞれも電力の供給を受けることができなくなり、磁力を失う。この結果、2つの押し出し部材71のそれぞれが突出して、図5に示されるように、ペルチェ素子4に対して排熱部材6が離隔する。
【0095】
この離隔の結果、ペルチェ素子4と排熱部材6とは熱的に接触しなくなり、熱の逆流が防止される。
【0096】
また、電磁石72には、ペルチェ素子4と反対の電力供給が行われても良い。
【0097】
例えば、ペルチェ素子4に電力が供給されている期間においては電磁石72には電力が供給されず、ペルチェ素子4に電力が供給されていない期間においては電磁石72に電力が供給される。電磁石72は、磁力によって押し出し部材71を突出させる。突出した押し出し部材71は、ペルチェ素子4と排熱部材6との接触面積を減少させる。
【0098】
以上のように、離隔制御部7は、押し出し部材71、電磁石72などを備えることで、ペルチェ素子4の動作が停止している期間において、ペルチェ素子4と排熱部材6との熱的な接触面積を減少させる。
【0099】
また、ペルチェ素子4の受熱面41は、対象物と熱的に接触しやすいように、吸熱部材を更に備えることも好適である。例えば、受熱面41と対象物との間に、熱伝導率が高く板状の部材が挟まれる。この板状部材は、広い面で対象物と接触した上で、対象部材から奪った熱を受熱面41に伝導する。このような吸熱部材によって、受熱面41は、効率的に対象物からの熱を吸い上げることができる。
【0100】
(排熱部材)
排熱部材6は、ペルチェ素子4から伝導される熱を外部に排出する。
【0101】
図4,5などに示されるように、排熱部材6は、ヒートシンク構造を有していることも好適である。ヒートシンク構造を有していることで、ペルチェ素子4から伝導される熱を広い表面積を利用して外部に排出できるからである。また、図6に示されるように、ヒートシンク構造の先に冷却ファンを備え、冷却ファンによって排熱効率を更に上げることもよい。
【0102】
図6は、本発明の実施の形態1における温度制御装置の側面図である。排熱部材6は、その先端に風を送る冷却ファン61を備えている。冷却ファン61は、風をヒートシンク構造の排熱部材6に当てることで、排熱部材6による排熱を促す。この結果、排熱部材6は、効率的に外部に熱を排出できる。
【0103】
もちろん、排熱部材6は、冷却ファン以外にも、液冷ジャケットやその他の部材を備えることも好適である。
【0104】
以上のように、実施の形態1における温度制御装置1は、ペルチェ素子4の熱移動効果を利用して対象物を冷却したり加熱したりするとともに、節電のためにペルチェ素子4への給電が停止している期間の熱の逆流を防止できる。この結果、冷却や加熱された対象部の温度を長時間保つことができる。加えて、ペルチェ素子4への不要な電力の供給が削減でき、消費電力が削減できる。消費電力が削減できることで、温度制御装置1が備えられる給水機、浄水器、冷蔵庫、保温庫などの機器の消費電力も削減でき、環境負荷が低減できる。
【0105】
(実施の形態2)
【0106】
次に実施の形態2について説明する。
【0107】
実施の形態2では、実施の形態1で説明した温度制御装置を用いた給水機について説明する。
【0108】
実施の形態1で説明した温度制御装置1は、ペルチェ素子4を用いて、対象物を冷却したり加熱したりして、対象物の温度を制御する。更には、節電のためにペルチェ素子4への給電を停止している期間でも、ペルチェ素子4を通じた熱の逆流が防止できる。
【0109】
このように、実施の形態1で説明した温度制御装置1は、対象物を冷却したり加熱したりできる上、ペルチェ素子4を用いることで、環境負荷や騒音を低減できる。更には、電力停止期間における熱の逆流も防止できるので、消費電力も提言できる。
【0110】
以上のことから、実施の形態1で説明した温度制御装置1は、様々な機器に応用が可能である。特に、消費電力、騒音を削減しつつ、環境負荷の少ない機器であることが求められる給水機には、好適に用いられる。
【0111】
図7は、本発明の実施の形態2における給水機の模式図である。図7は、筐体103内部に冷水タンク2と温水タンク10とを備える給水機100を示している。
【0112】
給水機100は、外形を作る筐体103を備え、筐体103内部に種々の要素が含まれる。給水機100は、水を収容する水容器101、水容器101に収容されている水を吸引する吸引手段102、吸引された水を加熱して得られる温水を一時的に貯留する温水タンク10、吸引された水を冷却して得られる冷水を一時的に貯留する冷水タンク2、温水タンク10から温水を供給可能な温水供給手段11と、冷水タンク2から冷水を供給可能な冷水供給手段21と、を備える。
【0113】
冷水タンク2には、冷水タンク2および内部の冷水を冷却するために、温度制御装置1が取り付けられている。
【0114】
(水容器)
水容器101は、ミネラルウォーターや天然水を収容する。
【0115】
水容器101は、樹脂、ビニール、金属などの素材で形成されており、所定形状と所定の容量を有する。容量は適宜定められれば良いが、家庭やオフィスでの使用あるいは配達は回収の容易性などから10リットル〜50リットル程度の大きさが適当である。また所定形状も適宜定められれば良いが、方形や筒型などが使用や保管の容易性から適当である。
【0116】
また、水容器101は変形可能な柔軟性を有していても良い。水容器101が変形可能な柔軟性を有することで、水容器101に収容される水が吸引されて減少するのに合わせて、水容器101は収縮できる。水容器101が、収容する水の減少に合わせて収縮できることで、水容器101に外部から空気が入らず水容器101に収容される水が、空気中の雑菌と接触せずに済む。この結果、水が衛生的に保たれる。
【0117】
水容器101がこのような柔軟性を有するために、水容器101の素材としては、柔軟フイルム(ポリプロピレンフイルムやポリエチレンラミネートフイルム等)が用いられ、又、人体に害を及ぼす(例えば環境ホルモンの溶出等)ことがないような素材が用いられる。
【0118】
なお、水容器101は、水が収容された状態で家庭やオフィスに配達され、水が無くなったら回収されても良い。このように使用者が水容器に水道水や天然水を自分で詰めることをしないことで、給水機1が供給する水の衛生面や安全性が維持できる。
【0119】
(吸引手段)
【0120】
吸引手段102は、水容器101の水を吸引して、温水タンク10および冷水タンク2に運搬する。例えば、吸引ポンプが用いられる。
【0121】
ここで、吸引ポンプは、温水タンク10や冷水タンク2の水位の変位によって、作動したり停止したりしてもよい。例えば、温水タンク10や冷水タンク2の内部には水位検知器が備えられ、水位検知器からの検知信号が吸引ポンプに出力される。水位が所定未満になったら吸引ポンプは、作動して水容器101から水を吸引する。
【0122】
また、図7では、水容器101からの水が冷水タンク2および温水タンク10のそれぞれに供給される構成になっているが、一旦冷水タンク2に水容器101からの水が供給され、冷水タンク2から温水タンク10に水が供給される構成でも良い。
【0123】
(冷水タンク)
【0124】
冷水タンク2は、水容器101から供給された水を冷却手段によって冷却する。
【0125】
ここで、冷却手段は、実施の形態1で説明した温度制御装置1である。温度制御装置1は、冷水タンク2と熱的に接触する受熱面41を備えるペルチェ素子4によって、冷水タンク2からの熱を奪う。ペルチェ素子4は、電力を供給されている期間においては受熱面で受けた熱を反対側の放熱面に移動させる。放熱面は、排熱部材6と熱的に接触しており、この熱的な接触によって、放熱面から排熱部材6に熱が伝導されて外部に排出される。
【0126】
この流れによって、冷水タンク2および内部に貯留される冷水は冷却される。また、温度制御装置1は、所定条件においてペルチェ素子4の放熱面と排熱部材6との熱的な接触面積を減少させる離隔制御部7を備える。実施の形態1で説明したように、例えば冷水タンク2の温度が所定値以下となると節電のためにペルチェ素子4に対する電力の供給が停止される。この電力の停止に伴って、離隔制御部7が動作して、ペルチェ素子4と排熱部材6とを離隔させる。結果として、排熱部材6からの熱が冷水タンク2に逆流することがない。このため、冷水タンク2の冷却の効率が下がることはなく、消費電力も削減できる。
【0127】
また、ペルチェ素子4を用いる温度制御装置1によって、冷水タンク2が冷却されることで、コンプレッサなどを用いる場合よりも、環境負荷が低く、騒音も小さくできる。
【0128】
冷水供給手段21は、冷水タンク2の上部から延伸するパイプとこれにつながる蛇口やコックによって冷水を供給しても良いし、冷水タンク2の底面から延伸するパイプとこれにつながる蛇口やコックによって冷水を供給しても良い。
【0129】
冷水タンク2においては底面に近い領域の水のほうが、より冷たい冷水となっているので、冷水供給手段21は、冷水タンク2の底面に近いところから冷水を供給することが好ましい。
【0130】
冷水タンク2は、冷却されるため、金属製であることが熱伝導率のよさから好ましい。なお、金属以外でも樹脂、ビニール、陶器などでもよい。
【0131】
冷水タンク2内部には殺菌用紫外線ランプが設けられても良い。殺菌用紫外線ランプは、常時点灯でもよいし所定期間のみ点灯しても良い。また、上述の通り吸引ポンプの作動と停止の基準となる水位検知器を備えていても良い。
【0132】
冷水タンク2の外周には、一対の磁石が対向状態で取り付けられ、この磁石は、磁場を水の中を通すことで水分子(クラスタ)を活性化させて、水の腐食を防止し、雑菌の繁殖を抑えることもできる。
【0133】
(温水タンク)
【0134】
温水タンク10は、加熱手段12を備え、加熱手段12によって内部の水を加熱して得られる温水を一時的に貯留する。得られる温水は、温水供給手段11によって供給される。温度の高い水は温水タンク10の上部に溜まりやすいので、温水供給手段11は、温水タンク10の上部に接続されていることが好ましい。温水供給手段11は、冷水供給手段21と同様の構成を有する。
【0135】
加熱手段12は、ヒーターバンドなど種々の手段を備える。これらの手段によって内部を加熱する。また、温度制御装置1が備える排熱部材6から排出される熱を流用して、温水タンク10が加熱されても良い。
【0136】
温水タンク10も冷水タンク2と同様に、金属製であることが熱伝導率のよさから好ましい。なお、金属以外でも樹脂、ビニール、陶器などでもよい。また温水タンク10内部には殺菌用紫外線ランプが設けられても良い。殺菌用紫外線ランプは、常時点灯でもよいし所定期間のみ点灯しても良い。
【0137】
また、図7では、温水タンク10は、冷水タンク2と並列して設置されているが、温水タンク10が冷水タンク2の下部に設置されても良い。
【0138】
実施の形態2の給水機100は、ペルチェ素子4を用いることで、環境にやさしく騒音も小さい機器となる。加えて、ペルチェ素子4の停止中に熱が逆流するのを防止できるので、消費電力を低減できる。結果として、低消費電力、低環境負荷の給水機100が実現できる。このような給水機100は、家庭、オフィスなどで幅広く用いられる。
【0139】
(実験結果)
【0140】
発明者は、実施の形態1、2で説明された温度制御装置1を備える給水機の冷水タンクおよび従来のペルチェ素子が固定された冷水タンクとの比較実験を行った。
【0141】
(比較例)
【0142】
比較例は、図8に示されるように、ペルチェ素子が取り付けられた冷水タンクである。ペルチェ素子に対して所定時間電力を与えて、ペルチェ素子の動作により冷水タンクを冷却する。その後、ペルチェ素子への電力供給を停止した場合に、ペルチェ素子への電力供給を必要とするまでの時間(すなわち、温度が上昇してペルチェ素子を再起動するまでの時間)を測定した。
【0143】
(実施例)
【0144】
実施例は、図1や図7に示されるように、実施の形態1,2で説明された温度制御装置を取り付けた冷水タンクである。比較例と同時間に渡って、ペルチェ素子に対して電力を供給し、その後ペルチェ素子への電力供給を停止した場合に、ペルチェ素子への電力供給を必要とするまでの時間(すなわち、温度が上昇してペルチェ素子を再起動するまでの時間)を測定した。
【0145】
(実験結果)
【0146】
いずれも水温が5℃になるまでペルチェ素子を動作させる。5℃となった時点で、自動でペルチェ素子の動作は停止する。また、水温が17℃となるところで、ペルチェ素子の動作は再開する。このペルチェ素子の動作の停止から再開までの時間を比較例と実施例のそれぞれで測定した。
【0147】
比較例においては、ペルチェ素子の動作停止から再開までの時間は、67分であった。これに対して実施例では、93分であり、実施例ではペルチェ素子の動作が再開する必要のある時間、すなわち温度が所定値まで上昇する時間は、比較例に対して約40%長いことが分かる。すなわち、一旦冷却された冷水タンクが放置された後で、温度上昇するまでの時間は、比較例(従来技術)よりも40%長い。これは、熱の逆流が防止されていることを示す。言い換えると、比較例では、熱が逆流することによって、冷却された冷水タンクの温度が所定値以上まで、短時間で上昇することを示している。
【0148】
以上のように、実験結果からも、本発明の温度制御装置が熱の逆流を防止して、高い効率で冷却や加熱を行いつつ消費電力を削減できることが分かる。
【0149】
なお、実施の形態1〜2で説明された温度制御装置および給水機は、本発明の趣旨を説明する一例であり、将来の技術進歩に伴って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0150】
1 温度制御装置
2 冷水タンク
3 冷水
4 ペルチェ素子
41 受熱面
42 放熱面
5 ヒートシンク
6 排熱部材
61 冷却ファン
7 離隔制御部
71 押し出し部材
72 電磁石
8 信号線
9 制御部
10 温水タンク
11 温水供給手段
12 加熱手段
21 冷水供給手段
100 給水機
101 水容器
102 吸引手段
103 筐体
800 冷水タンク
801 水
802 ペルチェ素子
803、804 ヒートシンク
805 制御部
806 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象および加熱対象のいずれかの対象物と、
前記対象物と受熱面で熱的に接触し、前記対象物の熱を放熱面に移動させるペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の放熱面と熱的に接触可能であって、前記対象物から移動された熱を外部に排出する排熱部材と、
所定条件に基づいて、前記ペルチェ素子の放熱面と前記排熱部材との熱的な接触面積を減少させる離隔制御部と、を備える熱逆流防止機能を備える温度制御装置。
【請求項2】
前記ペルチェ素子に電力を供給する制御部を更に備える、請求項1記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記対象物が所定温度以下になると、前記ペルチェ素子への電力供給を停止する、請求項2記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記離隔制御部は、前記ペルチェ素子の放熱面と前記排熱部材との間を広げる押し出し部材を備える、請求項1から3のいずれか記載の温度制御装置。
【請求項5】
前記離隔制御部は、前記押し出し部材の押し出しの起動力として電磁石を備え、前記電磁石に電力が供給されると、前記押し出し部材が突出して、前記ペルチェ素子の放熱面と前記排熱部材との間が広がる、請求項4記載の温度制御装置。
【請求項6】
前記押し出し部材は、前記ペルチェ素子の放熱面と前記排熱部材とを離隔させる、もしくは前記ペルチェ素子と前記排熱部材とが接続している位置を基準に相互の角度を傾かせることで、前記ペルチェ素子の放熱面と前記排熱部材との接触面積を減少させる、請求項4又は5記載の温度制御装置。
【請求項7】
前記所定条件は前記対象物を冷却する際に定まる第1温度もしくは加熱する際に定まる第2温度であり、前記離隔制御部は、前記対象物が前記第1温度以下もしくは前記対象物が前記第2温度以上になると、前記ペルチェ素子と前記排熱部材との接触面積を減少させる、請求項1から6のいずれか記載の温度制御装置。
【請求項8】
前記離隔制御部は、前記ペルチェ素子への電力の供給が停止されると、前記ペルチェ素子と前記排熱部材との接触面積を減少させる、請求項1から6のいずれか記載の温度制御装置。
【請求項9】
前記離隔制御部は、前記ペルチェ素子への電力の供給が停止されると、前記電磁石へ電力を供給し前記押し出し部材を突出させる、請求項8記載の温度制御装置。
【請求項10】
前記ペルチェ素子の受熱面は、前記対象物と熱的に接触する吸熱部材をさらに備える請求項1から9のいずれか記載の温度制御装置。
【請求項11】
前記対象物は、給水機に備えられる冷水タンクおよび冷水タンクに貯留される冷水の少なくとも一方である請求項1から10のいずれか記載の温度制御装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか記載の温度制御装置と、
前記温度制御装置を備えると共に冷水を貯留可能な冷水タンクと、
前記冷水タンクと別体であって温水を貯留可能な温水タンクと、
前記冷水タンクから冷水を供給可能な冷水供給手段と、
前記温水タンクから温水を供給可能な温水供給手段と、を備える給水機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−83019(P2012−83019A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229281(P2010−229281)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(591018040)株式会社九州開発企画 (11)
【Fターム(参考)】