説明

絶縁抵抗測定装置搭載システムおよび車両駆動用システム

【課題】電気回路と、当該電気回路に対して電気的に絶縁されている部材との間の絶縁抵抗を測定する装置とを含む絶縁抵抗測定装置搭載システムにおいて、絶縁抵抗の測定誤差を低減したシステムを提供する
【解決手段】電源10および電気機器12−1〜12−nは、導電性部材34との間に電気的な絶縁を施された上で、当該導電性部材34に固定される。機器回路12biにはスイッチング素子12ciを制御するための制御信号Fiが制御回路12aiから入力される。スイッチング素子12ciは、制御信号Fiが示す電圧の変化に従ってオン状態とオフ状態との間の切り換えが行われる。制御信号F1〜Fnの周波数は、これらの相互間の差が所定の隔離周波数fs以上となるよう決定される。絶縁抵抗測定部2は、電力供給線16bと導電性部材34との間の絶縁抵抗を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路と当該電気回路に対して電気的に絶縁されている部材との間の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置とを備える絶縁抵抗測定装置搭載システム、およびそれを利用した車両駆動用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建造物、工場設備等へ電力を供給する電力供給設備、電動機の制御装置等に用いられる電力制御回路は、導電性部材に電気的な絶縁を施した上で固定されることが多い。
【0003】
しかし、異物の存在等により電力制御回路と導電性部材との間の絶縁抵抗が低下すると、導電性部材に電流が漏洩し、電力制御回路の故障を惹き起こすおそれがある。そこで、電力制御回路と導電性部材との間の絶縁抵抗を随時測定し監視することが好ましい。
【0004】
図5に電力制御装置52と導電性部材54との間の絶縁抵抗rを測定するための絶縁抵抗測定装置5を示す。絶縁抵抗測定装置5は、電圧発生器18、分圧抵抗20、絶縁コンデンサ22、フィルタ24、電圧測定器26、絶縁抵抗算出部28、表示部30、導電性部材34、測定端子Msを備えて構成される。導電性部材34は、絶縁抵抗測定装置5を収納する筐体をなす。電圧発生器18の片側の端子は、直列接続された分圧抵抗20および絶縁コンデンサ22を介して測定端子Msに接続され、他方の端子は導電性部材34に接続される。フィルタ24の入力端子Finは分圧抵抗20および絶縁コンデンサ22の接続点に接続される。電圧測定器26は、フィルタ24の出力端子Foutと導電性部材34との間に接続される。
【0005】
絶縁抵抗測定装置5の測定端子Msは、測定対象となる電力制御回路52に接続される。また、絶縁抵抗測定装置5の導電性部材34は、電力制御回路52を固定する導電性部材54と同電位となるよう接続される。
【0006】
電圧発生器18は、所定の測定周波数の電圧を発生する。これによって、電力制御回路52と導電性部材54との間には有限の絶縁抵抗rを介して測定電流が流れ、絶縁抵抗測定装置5の測定端子Msと導電性部材54との間には測定電流による電圧(以下、測定電圧VMとする。)が現れる。このようにして現れた測定電圧VMによって、フィルタ24の端子Finと導電性部材34との間にはフィルタ入力電圧Vinが現れる。フィルタ24は、フィルタ入力電圧Vinに対して測定周波数以外の周波数の電圧を低減したフィルタ出力電圧Voutをフィルタ出力端子Foutと導電性部材34との間に出力する。電圧測定器26は端子Foutと導電性部材34との間の電圧を測定する。なお、絶縁コンデンサ22は、電力制御回路52と絶縁抵抗測定装置5との間で直流電流を遮断するために設けられている。
【0007】
絶縁抵抗測定装置5においては、電圧発生器18が発生する電圧の波高値V0、分圧抵抗20の抵抗値R0、および絶縁コンデンサ22のインピーダンスは既知である。そこで、絶縁抵抗算出部28は、これらの既知の値と電圧測定器26から読み込んだ電圧とに基づいて、絶縁抵抗rの測定値rsを算出し表示部30に入力する。表示部30は入力された値を表示する。
【0008】
なお、特開2004−104923号公報には絶縁抵抗検出装置についての記載がある。また、特開2003−219551号公報には漏電検出装置についての記載がある。
【0009】
【特許文献1】特開2004−104923号公報
【特許文献2】特開2003−219551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、電力制御回路は、昇圧コンバータ回路やインバータ回路等のスイッチング素子を備える。スイッチング素子は、所定の制御周波数の制御信号に従って電流の断続を繰り返す。それに伴い、電力制御回路と導電性部材との間には、制御周波数の電圧成分を含むコモンモード電圧が現れる。
【0011】
絶縁抵抗測定装置5の電圧測定器26で測定される電圧は、フィルタ24によって周波数帯域制限が施されている。そのため、測定電圧VMにそのようなコモンモード電圧が重畳されたとしても、制御周波数がフィルタ24の通過周波数帯域外であれば、測定値rsに大きな誤差が現れることはない。ところが、電力制御回路52が複数のスイッチング素子を備え、複数のスイッチング素子のそれぞれを制御する制御信号の周波数が近接している場合には次のような問題が生ずる。
【0012】
電力制御回路と導電性筐体との間には、ある1つのスイッチング素子に対する制御信号の制御周波数と、そのスイッチング素子とは異なる他のスイッチング素子に対する制御信号の制御周波数との差であるビート周波数の電圧が現れる。そして、このビート周波数が、フィルタ24の通過周波数帯域内の値である場合、ビート周波数の電圧が電圧測定器26で測定される電圧に重畳され測定値rsの誤差が増大する。
【0013】
本発明はこのような課題に対してなされたものであり、複数のスイッチング素子を含む電気回路と、当該電気回路に対して電気的に絶縁されている部材との間の絶縁抵抗を測定する装置とを含む絶縁抵抗測定装置搭載システムにおいて、絶縁抵抗の測定誤差を低減したシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、電気回路と、前記電気回路に対して電気的に絶縁されている部材との間の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置と、を備える絶縁抵抗測定装置搭載システムであって、前記電気回路は、第1の周波数で動作する第1のスイッチング素子と、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で動作する第2のスイッチング素子と、を備え、前記絶縁抵抗測定装置は、前記電気回路と前記部材との間に所定の測定周波数の信号が重畳された測定電流を流す測定電流発生部と、前記測定周波数に対する通過率が、前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数に対する通過率よりも大きいフィルタと、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る絶縁抵抗測定装置搭載システムにおいては、前記フィルタの透過率の周波数特性は、絶縁抵抗測定装置で測定される絶縁抵抗の許容誤差に基づいて決定することが好適である。
【0016】
また、本発明に係る絶縁抵抗測定装置搭載システムにおいては、前記フィルタの透過率の周波数特性は、前記電気回路と前記部材との間に発生するコモンモード電圧に基づいて決定することが好適である。
【0017】
また、本発明に係る車両駆動システムは、前記絶縁抵抗測定装置搭載システムを備え、前記電気回路は、前記第1のスイッチング素子を含む第1のインバータ回路と、前記第2のスイッチング素子を含む第2のインバータ回路と、を備え、前記第1のインバータ回路および前記第2のインバータ回路は、それぞれ電動機に接続されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る車両駆動用システムにおいては、前記絶縁抵抗測定装置における絶縁抵抗の測定値が所定の基準値以下である場合、前記電動機への電力の供給を停止させる構成とすることが好適である。
【0019】
また、本発明に係る車両駆動用システムにおいては、前記絶縁抵抗測定装置における絶縁抵抗の測定値が所定の基準値以下である場合、ユーザへその旨を知らせる情報を呈示する情報呈示装置を備える構成とすることが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、絶縁抵抗の測定誤差を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1に本発明の実施形態に係る電気機器システム1の構成を示す。電気機器システム1は、絶縁抵抗測定部2、電源10、電気機器12−1〜12−n(nは2以上の整数)、および導電性部材34を備えて構成される。
【0022】
電源10は、出力端子aおよびbから電気機器12−1〜12−nに電力を供給する。電源10としては、例えば、商用交流電力を直流電力に変換する直流安定化電源回路、燃料電池等を用いることができる。
【0023】
電気機器12−1〜12−nは、それぞれ電動機の回転制御装置、電圧変換装置、空調装置、照明装置等である。電気機器12−i(iは1〜nの任意の整数)は、制御回路12aiおよび機器回路12biを備える。電気機器12−iの電力供給端子14aiは電力供給線16aを介して電源10の出力端子aに接続され、電力供給端子14biは電力供給線16bを介して電源10の出力端子bに接続される。
【0024】
制御回路12aiは、機器回路12biを制御するために設けられている。制御回路12aiは、機器回路12biに周波数fiの矩形波の制御信号Fiを入力する。機器回路12biは少なくとも1つのスイッチング素子12ciを含んで構成される。スイッチング素子12ciは、制御信号Fiの電圧の変化に従ってオン状態とオフ状態との間の切り換えが行われる。したがって、周波数fiでオン状態とオフ状態との間の切り換えが繰り返され、それに伴って電流の断続が繰り返される。そして、スイッチング素子12ciにおける電流の断続に伴って、電気機器12−iの電源供給端子14aiおよび14biには、周波数fiで変化する電流が流れる。
【0025】
制御信号F1〜Fnのそれぞれの周波数f1〜fnは、これらの相互間の差が所定の隔離周波数fs以上となるよう決定される。すなわち、|fj−fk|≧fs(jおよびkは互いに異なる1〜nまでの任意の整数)が成立するように周波数f1〜fnが決定される。
【0026】
導電性部材34は、絶縁抵抗測定部2、電源10、電気機器12−1〜12−nを収納する筐体の一部である。電源10および電気機器12−1〜12−nは、導電性部材34との間の電気的な絶縁が施された上で、当該導電性部材34に固定される。
【0027】
絶縁抵抗測定部2は、電圧発生器18、分圧抵抗20、絶縁コンデンサ22、フィルタ24、電圧測定器26、絶縁抵抗算出部28、表示部30、警告部32を備えて構成される。図5の絶縁抵抗測定装置5と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。絶縁抵抗測定部2の測定点36は電力供給線16bに接続される。
【0028】
電圧発生器18は、測定周波数fmの矩形波電圧を発生する。分圧抵抗20の抵抗値R0および電圧発生器18が発生する電圧の波高値V0は、フィルタ出力電圧Voutが電圧測定器26で測定可能な範囲となるよう決定することが好ましい。
【0029】
具体的には、絶縁抵抗の予想値re、周波数fmにおける絶縁コンデンサ22のインピーダンス、および周波数fmにおけるフィルタ24の透過率Pmに基づいて、フィルタ出力電圧Voutと抵抗値R0との関係、およびフィルタ出力電圧Voutと波高値V0との関係を求め、フィルタ出力電圧Voutが電圧測定器26で測定することが可能な範囲となるよう抵抗値R0および波高値V0を決定すればよい。予想値reは、シミュレーションや経験値によって予め決定しておくことが好ましい。また、抵抗値R0の決定に際しては、絶縁抵抗rの十分な測定分解能が得られるよう、絶縁抵抗rに対するフィルタ出力電圧Voutの変化率を考慮することが好ましい。
【0030】
フィルタ24は測定周波数fmを通過周波数帯域の中心周波数とした図2のような周波数特性を有する。隔離周波数fsでの透過率Psは、測定周波数fmでの透過率Pmに対して透過比As倍(0<As<1)となるよう設定される。すなわち、As=Ps/Pmが成立する。また、隔離周波数fs以上の周波数帯域における透過率はAs・Pm以下である。
【0031】
透過率Asは、絶縁抵抗測定部2で得られる測定値rsの許容誤差eに基づいて決定することが好ましい。許容誤差eは、フィルタ入力電圧Vinに含まれる測定周波数fmの成分の波高値Vm、およびビート周波数|fj−fk|の成分の波高値Vjkに基づいて求めることができる。
【0032】
波高値Vmは、分圧抵抗20の抵抗値R0、電圧発生器18が発生する電圧の波高値V0、絶縁抵抗rの予想値re、周波数fmにおける絶縁コンデンサ22のインピーダンスによって算出することができる。具体的には、絶縁抵抗rが予想値reであるとした図3に示す等価回路によって、フィルタ入力電圧Vinのに含まれる測定周波数fmの成分の波高値Vmを算出すればよい。
【0033】
波高値Vjkは、フィルタ入力電圧Vinに含まれるビート周波数|fj−fk|の成分の波高値Vjkを測定することによって取得することができる。測定は、電圧発生器18の出力を停止したときのフィルタ入力電圧Vinをシンクロスコープ等によって観測することによって行うことができる。ただし、透過率Asの決定には、波高値Vjkをそのまま用いるのではなく、周波数範囲がfs≦|fj−fk|≦fmaxであるjおよびkの組み合わせに係る波高値Vjkを加算合計した加算合計波高値Vbを用いる。ここでfmaxは、設計において考慮する任意の周波数上限値である。このように考慮する周波数範囲を定めず、すべてのjおよびkの組み合わせに係る波高値jkを加算合計して加算合計波高値Vbを求めることとしてもよい。また、加算合計波高値Vbを測定によって取得する代わりに、経験的にその値を見積もることとしてもよい。
【0034】
許容誤差eを比率で定義するものとすれば、透過比As、波高値Vm、加算合計波高値Vbおよび許容誤差eは次の(1)式の関係を満たすことが好適である。
(数1) As・Vb/(Vm+As・Vb)<e (1)
【0035】
これをAsについて解くことにより、次の(2)式に示す透過比Asに対する条件が定まる。
(数2) As<eVm/(Vb−eVb) (2)
【0036】
フィルタ24の周波数特性は、上記(2)式が成立するよう決定すればよい。すなわち、絶縁抵抗rの値が予想値reであるという条件の下、波高値Vm、加算合計波高値Vb、および許容誤差eを与えることで透過比Asの上限値を算出し、その上限値を満足するようフィルタ24を構成すればよい。
【0037】
例えば、フィルタ入力電圧Vinに含まれる測定周波数fmの成分の波高値Vm、および波高値Vbの大きさが同一である場合、許容誤差eを0.01未満に抑えるためには透過比Asを0.01未満とすればよい。隔離周波数fsを測定周波数fmの100倍とした場合、透過比Asが0.01未満の特性を有するフィルタは、阻止周波数帯域で−20dB/decadeの減衰特性を有する1次のフィルタで実現することが可能である。
【0038】
なお、上記の説明では、|fj−fk|≧fsが成立するよう、先に周波数f1〜fnを決定しておき、その後にフィルタ24の周波数特性を定めることとした。これとは逆に、先にフィルタ24の周波数特性を定めておき、その後に周波数f1〜fnを決定することも可能である。この場合、周波数範囲がfs≦|fj−fk|≦fmaxを満たすjおよびkの組み合わせについて(1)式が成立するという条件の下、周波数f1〜fnを決定すればよい。
【0039】
次に、絶縁抵抗測定部2の動作について説明する。絶縁抵抗測定部2は、電源供給線16bと導電性部材34との間の絶縁抵抗rを測定し、表示部30に表示する。また、警告部32は、絶縁抵抗算出部28が算出した測定値rsを読み込む。そして、異物の混入等により、電源供給線16bと導電性部材34との間の絶縁抵抗rが低下し、測定値rsが所定値未満となったときには、警告音を鳴動する鳴動手段や警告内容を表示する表示手段等によって絶縁抵抗rが低下した旨を警告する。
【0040】
電気機器システム1では、電気機器12−1〜12−nが共通の電力供給線16aおよび16bで接続されている。したがって、電気機器12−1〜12−nの回路内の節点と導電性部材34との間、ならびに電力供給線16aおよび16bと導電性部材34との間には、周波数f1〜fnの相互間の差の周波数|fj−fk|のコモンモード電圧が現れる。しかし、上述のように周波数f1〜fnおよびフィルタ24の透過率Pを決定することで、測定値rsの誤差の増大を回避することができる。
【0041】
また、電気機器システム1では、絶縁抵抗rが低下し、測定値rsが所定値未満となったときは警告部32が絶縁抵抗rが低下した旨を警告するため、導電性部材34へ電流が漏洩することによる故障を迅速に発見することができる。
【実施例】
【0042】
本発明の実施例として、図4に示す車両駆動用システム3について説明する。車両駆動用システム3は、電気エネルギーによって車両を駆動するシステムである。一般に、電気エネルギーによって走行する車両は、直流電圧を交流電圧に変換して電動機を駆動するインバータ回路を備える。インバータ回路では、ジュール熱による損失を極力低減しつつ車両を走行するのに必要な高電圧が用いられる。そこで、インバータ回路は、安全対策を万全にするため、ボデーとの間の電気的な絶縁が施された上で、当該ボデーに取り付けられる。そして車両には、インバータ回路と車両のボデ−との間の絶縁抵抗rを測定するための手段が設けられることが一般的である。
【0043】
また、電気エネルギーによって走行する車両には複数の電動機が備えられることが一般的である。この場合、複数のインバータ回路が動作することにより、複数のスイッチング素子の制御周波数の相互の差の周波数を示すコモンモード電圧が各インバータ回路に現れ、絶縁抵抗rの測定値rsの誤差が増大してしまうというおそれがある。本実施例は、このような問題を解決するものである。
【0044】
車両駆動用システム3は、絶縁抵抗測定部4、ボデー38、スイッチ40aおよび40b、電池42、インバータ回路46−1,46−2、制御部50−1,50−2、電動機M1,M2を備えて構成される。車両駆動用システム3は、車両のボデー38との間の絶縁を施した上で当該ボデー38に固定される。図5の絶縁抵抗測定装置5、図1の電気機器システム1と同一の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
インバータ回路46−1の電力供給端子48a1およびインバータ回路46−2の電力供給端子48a2は、スイッチ40aを介して電池42の正極端子+に接続される。また、インバータ回路46−1の電力供給端子48b1およびインバータ回路46−2の電力供給端子48b2は、スイッチ40bを介して電池42の負極端子−に接続される。スイッチ40aおよび40bは制御部50−1によって制御される。インバータ回路46−1の出力端子u1,v1,およびw1は電動機M1に接続される。また、インバータ回路46−2の出力端子u2,v2,およびw2は電動機M2に接続される。
【0046】
インバータ回路46−1は、スイッチング素子S1−1〜S6−1を備えて構成される。スイッチング素子S1−1〜S3−1のそれぞれは電力供給端子48a1に接続される。また、スイッチング素子S4−1〜S6−1のそれぞれは電力供給端子48b1に接続される。さらに、スイッチング素子S1−1〜S3−1の電力供給端子48a1に接続されている端子とは反対側の端子は、それぞれS4−1〜S6−1に接続される。スイッチング素子S1−1とS4−1の接続点は出力端子u1に、スイッチング素子S2−1とS5−1の接続点は出力端子v1に、スイッチング素子S3−1とS6−1の接続点は出力端子w1に、それぞれ接続される。スイッチング素子S1−1〜S6−1には、制御部50−1から引き出された制御線T1−1〜T1−6がそれぞれ接続される。スイッチング素子S1−1〜S6−1は、それぞれ制御線T1−1〜T6−1によって供給される制御信号C1−1〜C6−1によって制御される。
【0047】
インバータ回路46−2は、スイッチング素子S1−2〜S6−2を備えて構成される。インバータ回路46−2はインバータ回路46−1と同一の構成であるため、各構成部の末尾の符号「−2」を以てインバータ回路46−1が備える構成部と区別し、説明を省略する。
【0048】
制御信号C1−1〜C6−1は周波数がf1の矩形波電圧である。制御信号C1−1〜C6−1のデューティ比および制御信号C1−1〜C6−1の相互間の位相差は、電動機M1を制御するための最適な値に、制御部50−1によって設定される。同様に、制御信号C1−2〜C6−2は周波数がf2の矩形波電圧であり、これらの信号のデューティ比および相互間の位相差は、電動機M2を制御するための最適な値に、制御部50−2によって設定される。また、周波数f1と周波数f2は、これらの差が所定の値fs以上となるように決定される。
【0049】
絶縁抵抗測定部4は、電圧発生器18、分圧抵抗20、絶縁コンデンサ22、フィルタ24、電圧測定器26、絶縁抵抗算出部28、表示部30、警告部32を備えて構成される。図1の絶縁抵抗測定部2と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。絶縁抵抗測定部4の測定点36は電力供給線44bに接続される。絶縁抵抗算出部28が算出した測定値rsは、表示部30および警告部32のみならず制御部50−1にも入力される。制御部50−1は測定値rsに基づいて、スイッチ40aおよび40bを制御する。
【0050】
電圧発生器18が発生する矩形波電圧の波高値V0、分圧抵抗20の抵抗値R0、透過比As、および周波数f1と周波数f2との差の周波数fsは、上述の電気機器システム1と同様にして決定することができる。
【0051】
次に、車両駆動用システム3の動作について説明する。インバータ回路46−1は、電力供給端子48a1と電力供給端子48b1との間に電池42によって印加された直流電圧を交流電圧に変換し、出力端子u1,v1,およびw1から出力する。電動機M1は出力端子u1,v1,およびw1から出力された交流電圧に従って回転する。制御部50−1は、車両の走行に応じて制御信号C1−1〜C6−1のデューティ比を変化させて電動機M1を制御する。この動作は、インバータ回路46−2、電動機M2、および制御部50−2についても同様である。
【0052】
インバータ回路46−1および46−2とボデー38との間の絶縁抵抗rは、絶縁抵抗測定部4によって測定される。測定値rsは、表示部30、警告部32、および制御部50−1に入力される。
【0053】
電源供給線44bとボデー38との間の絶縁抵抗rが低下し、絶縁抵抗算出部28で算出された測定値rsが所定値未満となると、前述のように警告部32は絶縁抵抗rが低下した旨の警告を行う。また、制御部50−1は絶縁抵抗算出部28から入力された測定値rsが所定値未満となると、スイッチ40aおよび40bをオフ状態とし、インバータ回路46−1および46−2への電力の供給を遮断する。
【0054】
車両駆動用システム3においては、インバータ回路46−1および46−2が共通の電力供給線44aおよび44bで接続されている。したがって、インバータ回路46−1および46−2の各節点とボデー38との間には、周波数|f1−f2|のコモンモード電圧が現れる。しかし、上述のように周波数f1およびf2、ならびにフィルタ24の透過率Pを決定することで、測定値rsの誤差の増大を回避することができる。
【0055】
また、車両駆動用システム3では、絶縁抵抗rが低下し、測定値rsが所定値未満となったときには、警告部32が絶縁抵抗rが低下した旨を警告するため、ボデー38に電流が漏洩することによる故障を迅速に発見することができる。さらに、制御部50−1は、測定値rsが所定値未満となったときには、スイッチ40aおよび40bをオフ状態とし、インバータ回路46−1および46−2への電力の供給を遮断するため、ボデー38に電流が漏洩することに対する安全対策を万全なものとすることができる。
【0056】
なお、車両にはインバータ回路の他、電池の電圧を変換する昇圧コンバータ回路が用いられることが一般的である。昇圧コンバータ回路はインバータ回路と同様、特定の周波数の制御信号によって制御されるスイッチング素子を備える。したがって、昇圧コンバータ回路についても本発明を適用することができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】電気機器システムを示す図である。
【図2】フィルタの周波数特性を示す図である。
【図3】フィルタ入力電圧Vinに含まれる測定周波数fmの成分の波高値Vmを算出するための等価回路を示す図である。
【図4】車両駆動用システムを示す図である。
【図5】絶縁抵抗測定装置、電力制御回路、および導電性部材を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 電気機器システム、2,4 絶縁抵抗測定部、3 車両駆動用システム、5 絶縁抵抗測定装置、10 電源、12−1〜12−n 電気機器、12a1〜12an 制御回路、12b1〜12bn 機器回路、12c1〜12cn,S1−1〜S6−1,S1−2〜S6−2 スイッチング素子、14a1〜14an,14b1〜14bn,48a1,48b1,48a2,48b2 電力供給端子、16a,16b,44a,44b 電力供給線、18 電圧発生器、20 分圧抵抗、22 絶縁コンデンサ、24 フィルタ、26 電圧測定器、28 絶縁抵抗算出部、30 表示部、32 警告部、34,54 導電性部材、36 測定点、38 ボデー、40a,40b スイッチ、42 電池、46−1,46−2 インバータ回路、50−1,50−2 制御部、52 電力制御回路、T1−1〜T6−1,T1−2〜T6−2 制御線、u1,v1,w1,u2,v2,w2 出力端子、M1,M2 電動機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路と、
前記電気回路に対して電気的に絶縁されている部材との間の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定装置と、を備える絶縁抵抗測定装置搭載システムであって、
前記電気回路は、
第1の周波数で動作する第1のスイッチング素子と、
前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で動作する第2のスイッチング素子と、
を備え、
前記絶縁抵抗測定装置は、
前記電気回路と前記部材との間に所定の測定周波数の信号が重畳された測定電流を流す測定電流発生部と、
前記測定周波数に対する通過率が、前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数に対する通過率よりも大きいフィルタと、
を備えることを特徴とする絶縁抵抗測定装置搭載システム。
【請求項2】
請求項1に記載の絶縁抵抗測定装置搭載システムを備え、
前記電気回路は、
前記第1のスイッチング素子を含む第1のインバータ回路と、
前記第2のスイッチング素子を含む第2のインバータ回路と、を備え、
前記第1のインバータ回路および前記第2のインバータ回路は、それぞれ電動機に接続されていることを特徴とする車両駆動用システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両駆動用システムであって、
前記絶縁抵抗測定装置における絶縁抵抗の測定値が所定の基準値以下である場合、前記電動機への電力の供給を停止させることを特徴とする車両駆動用システム。
【請求項4】
請求項2に記載の車両駆動用システムであって、
前記絶縁抵抗測定装置における絶縁抵抗の測定値が所定の基準値以下である場合、ユーザへその旨を知らせる情報を呈示する情報呈示装置を備えることを特徴とする車両駆動用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−101424(P2007−101424A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293114(P2005−293114)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】