説明

継手用部材

【課題】 接合する端部が開口した筒状の第1,第2部材の端部間を接合するために用いる継手用部材が、その第1,第2部材の外側に大きく突出することを防止することができるような継手用部材を提供する。
【解決手段】 複数の位置に嵌合用孔41aが形成された平板状の継手用添え板41と、継手用添え板41と第1,第2部材44,45の互に接合される各端部を第1,第2部材の長さ方向と直角方向にネジ止めするネジ部材とを備え、このネジ部材として、継手用添え板の嵌合用孔に、圧入等の方法で嵌合固着され、その長さが継手用添え板の板厚より短く形成された小径部47aと、嵌合用孔より大径のフランジ部47cとからなり、その軸線部にネジ孔47bを有する段付ナット47と、ネジ軸部50aの先端部が第1,第2部材の外側から内側に、第1,第2部材及び継手用添え板を貫通して挿し込まれ、段付ナットのネジ孔に締結される頭付きボルト50とを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建築構造物等において、鋼管など筒状の鉄骨部材を用いた柱等の部材の端部間を、その長さ方向に連結するために用いられる継手用部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、鋼管など筒状の鉄骨部材の継手構造としては、図15,16に示すような、仮組立て用の仮設板部材71,72を使用して、筒状の鉄骨部材74,75の端部同士を溶接で接合する溶接継手が大部分であった(例えば特許文献1に記載の従来例参照)。同図に示す仮設板部材71は、鉄骨部材74端部の周部4面の各中心線に沿ってその側辺が溶接により接合され、鉄骨部材75端部の周部4面にもその各中心線に沿ってその側辺が溶接により接合される。
【0003】
そして、鉄骨部材74,75の端部同士を突き合わせて、鉄骨部材74,75それぞれに接合した2枚の仮設板部材71に1枚又は2枚の仮設板部材72を重ねて配置し、仮設板部材71,72間をボルトとナットで締め付けて互いを固定する(図16参照)。このようにして、筒状の鉄骨部材74,75相互間の断面方向の位置合せをする仮組立てが終わったら、鉄骨部材74,75間を溶接Wで接合するようになっている(図16参照)。
【0004】
しかしながら、このような鉄骨部材の溶接継手は、その施工が現場で溶接作業を行うために風及び雨など天候の影響を受けると共に、溶接作業には熟練した溶接技能者を必要とし、溶接後に溶接部の検査が必要となる。さらに、仮組立て用の仮設板部材71,72が必要となり、それらは鉄骨部材74,75の外側に大きく突出するため、鉄骨部材74,75間の溶接後に溶断して除去しなければならなかった。
【0005】
そのため溶接を用いない継手構造として、例えば特許文献1に記載されているような、高力ボルトを用いたボルト接合による継手構造が各種提案されている。このような接合に高力ボルトを用いた筒状の鉄骨部材の接合構造は、溶接や仮組立て用の仮設板部材を用いない接合構造を提供すること、また接合に用いられる部材が鉄骨部材の外側に大きく突出するのを防止することを目的としている。
【特許文献1】特開平7−127142号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような筒状の鉄骨部材の接合に高力ボルトを用いた接合構造においては、ボルトの挿入及び締結の作業を、接合される部材の外側から行わなければならないため、例えば特許文献1の図5に示す植込みボルト25のような特殊なボルトとする必要がある。
【0007】
また、接合される部材の内側もしくは接合される部材内側の継手部材にナットを前もって取り付けておくか、または接合される部材内側の継手部材にネジ孔を形成しておく必要がある。接合される部材の外側からボルト締結を行う場合、ナットにより締付ける方法と、ボルトの頭部より締付ける方法がある。
【0008】
ナットにより締付けを行う場合、ナットの高さ寸法はボルトの頭部より大きく、またボルトのネジ部には余長が必要であるため、依然として締結部材が接合される部材の外側に大きく突出してしまうという問題がある。またボルトの頭部により締め付けを行う場合、ナットが固定されていないとナットが共に回転して充分な締結ができない状態が生じるという問題がある。
【0009】
また、このような高力ボルトを用いた接合構造の施工においては、仮組立て時の仮止めに使用する仮ボルトに本組立て用のボルトを使用することは、ボルトを傷める場合が多く、その場合は充分な締結ができなくなる。このため、上記仮ボルトに本組立て用のボルトを使用することは原則としてできない。
【0010】
そのため仮ボルトを本組立て用のボルトと取替えを行うか、或は本組立て用のボルトとは別に仮設ボルトを設ける必要があり、その仮設ボルトが特殊なボルトの場合は本組立て用のボルトとの取替えに手間が掛かり、仮設ボルトを別の場所に設けた場合はそのスペースが必要となって継手添え板が大きくなるという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、接合する端部が開口した筒状の第1,第2部材の端部間を接合するために用いる継手用部材が、その第1,第2部材の外側に大きく突出することを防止することができるような継手用部材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、
接合する端部が開口した筒状の第1,第2部材の端部間を接合する継手用部材であって、
一端側の略半分を前記第1部材の内周面に接触させると共に、他端側の略半分を前記第2部材の内周面に接触させて用いられ、複数の位置に嵌合用孔が形成された平板状の継手用添え板と、
前記継手用添え板と前記第1,第2部材の互に隣接する各端部を第1,第2部材の長さ方向と直角方向にネジ止めするネジ部材とを備え、
前記ネジ部材として、
前記継手用添え板の嵌合用孔に、圧入等の方法で嵌合固着され、その長さが前記継手用添え板の板厚より短く形成された小径部と、嵌合用孔より大径のフランジ部とからなり、その軸線部にネジ孔を有する段付ナットと、
ネジ軸部の先端部が前記第1,第2部材の外側から内側に、第1,第2部材及び前記継手用添え板を貫通して挿し込まれ、前記段付ナットのネジ孔に締結される頭付きボルトとを用いた構成としたものである。
【発明の効果】
【0013】
このような構成の継手用部材によれば、接合する端部が開口した筒状の第1,第2部材の端部間を接合するために用いる継手用部材が、その第1,第2部材の外側に大きく突出することを防止することができる。また、筒状の第1,第2部材内のナットが共に回転して充分な締結ができない状態が生じることを防止することができる。また、頭付ボルトを接合部材の外側から取付けて締結することができるので、仮ボルトとの取替えが容易で作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1ないし図7は、本発明の第1の実施の形態に係る継手用部材について説明するために参照する図である。
【0015】
図1,2に示す内側継手用添え板41(継手用部材)及び外側継手用添え板42(継手用部材、第2の継手用添え板)は、図3に示すような、接合する端部が開口した上柱部材44(第1部材)と下柱部材45(第2部材)の上下端部間をその長さ方向に接合するのに用いられる。
【0016】
そして、内側継手用添え板41及び外側継手用添え板42は単なる板状(平板状)に形成されている。図2に示すように、内側継手用添え板41は上下柱部材44,45の肉厚の内側に設けられ、外側継手用添え板42は上下柱部材44,45の肉厚の外側に設けられている。
【0017】
すなわち、図1,6に示すように、内側継手用添え板41の一端側(図中上端側)の略半分を上柱部材44の内周面に接触させて、上柱部材44の長さ方向と直角方向(図中水平方向)にネジ止めすると共に、内側継手用添え板41の他端側(図中下端側)の略半分を下柱部材45の内周面に接触させて、下柱部材45の長さ方向と直角方向(図中水平方向)にネジ止めするようになっている。
【0018】
また、外側継手用添え板42の一端側(図中上端側)の略半分を上柱部材44の外周面に接触させて、上柱部材44の長さ方向と直角方向(図中水平方向)にネジ止めすると共に、外側継手用添え板42の他端側(図中下端側)の略半分を下柱部材45の外周面に接触させて、下柱部材45の長さ方向と直角方向(図中水平方向)にネジ止めするようになっている。
【0019】
このように、上下柱部材44,45の互に隣接する各端部の内周面と外周面に内側継手用添え板41と外側継手用添え板42を接触させて、内側継手用添え板41、上柱部材44、外側継手用添え板42を上柱部材44の長さ方向と直角方向にネジ止めすると共に、内側継手用添え板41、下柱部材45、外側継手用添え板42を下柱部材45の長さ方向と直角方向にネジ止めすることにより、上下柱部材44,45の端部間を接合するようになっている。
【0020】
図4に示すように、内側継手用添え板41の、上下柱部材44,45と接触しない方の面(非接触面41c)のネジ止め位置には、段付ナット47(継手用部材)が設けられている。すなわち、内側継手用添え板41にあけられた嵌合用孔41aに非接触面41c側から、段付ナット47の小径部47aが圧入等により嵌合固着され、段付ナット47の小径部47aより大径のフランジ部47cが、内側継手用添え板41の非接触面41cに当接するようにして、段付ナット47が内側継手用添え板41に一体的に設けられている。
【0021】
上記段付ナット47の小径部47aの嵌合作業は予め工場等で行われ、圧入等によって嵌合されることにより、運搬時や、柱部材44,45への取り付け時に、段付ナット47が内側継手用添え板41から脱落することを防止することができる。また、図6に示す頭付ボルト50と段付ナット47との締結時に、段付ナット47が頭付ボルト50と共に回転して充分な締め付けができない状態が生じるのを防止することができる。
【0022】
図3に示すように、上柱部材44及び下柱部材45のネジ止め位置には、頭付ボルト50(図1,6,7参照)のネジ軸部50aが緩く貫通するボルト孔44a及び45aが複数形成されている。また図5に示すように、外側継手用添え板42の各ネジ止め位置には、やはり頭付ボルト50のネジ軸部50aが緩く貫通するボルト孔42aが複数形成されている。
【0023】
図6,7に示すように、内側継手用添え板41及び外側継手用添え板42と上下柱部材44,45は、この上下柱部材44,45の外側、すなわち外側継手用添え板42の外側から、外側継手用添え板42、上柱部材44(下柱部材45)、内側継手用添え板41を貫通して挿入された頭付ボルト50のネジ軸部50aの先端部が、内側継手用添え板41の嵌合用孔41aに嵌合された段付ナット47のネジ孔47bにネジ結合して締付けられている。
【0024】
内側継手用添え板41に形成される嵌合用孔41aは、位置出し治具等の計測装置を備えたボール盤等の工作機械により加工され、それらの位置を計測装置により計測して加工されるようになっている。
【0025】
このような本実施の形態に係る継手用部材を用いて上下柱部材44,45の端部間を接合する手順について、以下に説明する。
まず、下柱部材45の内側に内側継手用添え板41の下端側の略半分を挿入して下柱部材45の内周面に接触させると共に、下柱部材45の外周面の、上記内側継手用添え板41に対向する位置に外側継手用添え板42の下端側の略半分を配置させる。
【0026】
次に、仮ボルトとしての頭付ボルト50のネジ軸部50aの先端部を、下柱部材45の外側から内側に、すなわち外側継手用添え板42のボルト孔42a、下柱部材45のボルト孔45aの順に挿し込んでから、内側継手用添え板41の嵌合用孔41aに嵌合された段付ナット47のネジ孔47bに仮止めの締め付けを行う。
【0027】
このような操作を下柱部材45のボルト孔45aの必要数(総数の1/3程度)について行うことにより、下柱部材45への内側,外側継手用添え板41,42の仮止めを行う。この仮止めが終了したときは、内側,外側継手用添え板41,42の上端側の略半分は下柱部材45の上端より上方に伸びていると共に、それらの上端部は互いに離隔して開いた状態になっている。
【0028】
このような開いた状態の内側,外側継手用添え板41,42の上端側の間に上柱部材44の下端部を降ろしていき、上柱部材44の下端が下柱部材45の上端の上に載置されたら、下柱部材45の側のすべての仮ボルトをさらに締め付けて、内側継手用添え板41と外側継手用添え板42を上下柱部材44,45の内外周面に密着させる。
【0029】
それから仮ボルトとしての頭付ボルト50のネジ軸部50aの先端部を、上柱部材44の外側から内側に、すなわち外側継手用添え板42のボルト孔42a、上柱部材44のボルト孔44aの順に挿し込んでから、内側継手用添え板41の嵌合用孔41aに嵌合された段付ナット47のネジ孔47bに仮止めの締め付けをして継手用添え板41,42を柱部材44,45の内外周面に密着させる。
【0030】
次に、仮ボルトを残したまま残りのボルト孔すべてに本組立て用の頭付ボルト50を挿入して1次締め付けを行い、その後仮ボルトを取り外して本組立て用の頭付ボルト50に取り替えて同じく1次締め付けを行う。
【0031】
このような1次締め付けが完了したら、下柱部材45の、上柱部材44との接合部に近い側から順に頭付ボルト50をさらに締め付ける最後の締め付けを行う。続いて、上柱部材44の、下柱部材45との接合部に近い側から順に頭付ボルト50をさらに締め付ける最後の締め付けを行う。
【0032】
このようにして、上下柱部材44,45の互に隣接する各端部の、仮ボルトと取り替えたものも含めたすべての、本組立て用の頭付ボルト50の最後の締め付けが完了することにより、上下柱部材44,45の端部間の接合が完了する。
【0033】
このように上下柱部材44,45の外側から頭付ボルト50の頭を締め付けるときに、段付ナット47はその小径部47aを、内側継手用添え板41の嵌合用孔41aに圧入等により嵌合固着されているので、段付ナット47が頭付ボルト50と共に回転して充分な締め付けができない状態が生じるのを防止することができる。
【0034】
このような本実施の形態に係る継手用部材によれば、外側継手用添え板42の外側には頭付ボルト50の頭部と座金しか突出しないで済むので、頭付ボルト50の頭部より高い高さを有するナットや、それにネジ結合してナットの外側に突出するボルトの先端部のような部材が、上下柱部材44,45の外側に大きく突出することを防止することができる。
【0035】
また、段付ナット47は内側継手用添え板41の嵌合用孔41aに圧入等により嵌合固着されているので、筒状の上下柱部材44,45内の段付ナット47が頭付ボルト50と共に回転して充分な締結ができない状態が生じたり、段付ナット47が内側継手用添え板41から脱落することを防止することができる。
【0036】
また、頭付ボルト50を筒状の上下柱部材44,45の外側から取付けて締結することができるので、仮ボルト用と本組立て用の双方に用いる頭付ボルト50の取替え作業が容易となって、その作業効率を向上させることができる。
【0037】
また、内側継手用添え板41の嵌合用孔41aは、その位置を計測装置により計測されて加工されるようになっているので、嵌合用孔41aの位置は極めて正確に出すことができるため、柱部材44,45の外側から挿し込まれる頭付ボルト50のネジ軸部50aを、容易に段付ナット47のネジ孔47bに合わせて締め付けをすることができる。
【0038】
なお、上記実施の形態においては一般的な形状を有する頭付ボルト50を用いたが、図9に示すような、その頭部にトルク管理部52bを有する、締付けトルクを管理できる頭付ボルト52を用いることもできる。このような頭付ボルト52のトルク管理部52bは、頭付ボルト52の締付けトルクが所定値を超えると破断して除去されるようになっている。
【0039】
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る継手用部材について説明するために参照する図である。
【0040】
図7に示すような前記実施の形態においては、段付ナット47の小径部47aが内側継手用添え板41の嵌合用孔41aに圧入等で嵌合されていたのに対し、この第2の実施の形態においては、図10に示すように、段付ナット57の小径部外周にはオスネジ部57aが形成され、このオスネジ部57aが内側継手用添え板41に形成されたネジ孔41bに予めネジ結合するようになっている。
【0041】
そして、段付ナット57のオスネジ部57aと内側継手用添え板41のネジ孔41bには、頭付ボルト50のネジ軸部50aの右ネジとは逆向きの左ネジが形成されている。
【0042】
このため、頭付ボルト50のネジ軸部50aを段付ナット57のネジ孔57bに締付けていくときに、段付ナット57のオスネジ部57aと内側継手用添え板41のネジ孔41bとのネジ結合が緩むことを防止できると共に、逆にそれらのネジ結合を硬くすることができるため、ボルトの締結が不十分となることを防止することができる。
【0043】
このような本発明の第2の実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様に、外側継手用添え板42の外側には頭付ボルト50の頭部と座金しか突出しないで済むので、頭付ボルト50の頭部より高い高さを有するナットや、それにネジ結合してナットの外側に突出するボルトの先端部のような部材が、上下柱部材44,45の外側に大きく突出することを防止することができる。
【0044】
図12,13は、本発明の第3の実施の形態に係る継手用部材について説明するために参照する図である。
【0045】
図4に示すような前記第1の実施の形態においては、内側継手用添え板41の嵌合用孔41aに小径部47aが圧入等で嵌合された段付ナット47の軸線部にネジ孔47bが形成されていたのに対し、この第3の実施の形態においては、第1の実施の形態における内側継手用添え板41に相当する内側継手用添え板61そのものにネジ孔61aが形成されている点において異なるものである。
【0046】
そして、内側継手用添え板61のネジ孔61a近傍の肉厚は、それ以外の部分の肉厚よりも大きくなっていることにより、第1の実施の形態における段付ナット47のネジ孔47bと頭付ボルト50のネジ軸部50aとのネジ結合強度に比べて、上記ネジ孔61aとネジ軸部50aとのネジ結合強度が低減するのを防止することができる。
【0047】
このような本発明の第3の実施の形態によっても、図13に示すように、外側継手用添え板42の外側には頭付ボルト50の頭部と座金しか突出しないで済むので、頭付ボルト50の頭部より高い高さを有するナットや、それにネジ結合してナットの外側に突出するボルトの先端部のような部材が、上下柱部材44,45の外側に大きく突出することを防止することができる。
【0048】
図14は、本発明の第4の実施の形態に係る継手用部材について説明するために参照する図である。図6に示すような前記第1の実施の形態においては、上下柱部材44,45の外側に外側継手用添え板42が設けられていたのに対し、この第4の実施の形態においては、図14に示すように、上下柱部材44,45の外側には上記外側継手用添え板42のような部材が設けられていない点において異なるものである。
【0049】
なお、この第4の実施の形態に係る内側継手用添え板41及び段付ナット47の代りに、前記第2の実施の形態に係る図10の内側継手用添え板41及び段付ナット57を内側に用いて外側には外側継手用添え板42を設けないようにしてもよく、或は前記第3の実施の形態に係る図12の内側継手用添え板61を内側に設けて外側には外側継手用添え板42を設けないようにしてもよい。
【0050】
このような本発明の第4の実施の形態によれば、上下柱部材44,45の外側には頭付ボルト50の頭部と座金しか突出しないで済むので、頭付ボルト50の頭部より高い高さを有するナットや、それにネジ結合してナットの外側に突出するボルトの先端部のような部材が、上下柱部材44,45の外側に大きく突出することを防止することができるだけでなく、前記第1の実施の形態等に比べて外側継手用添え板42が設けられていない分、頭付ボルト50の頭部が上下柱部材44,45から外側に突出する量を低減することができる。
【0051】
なお、前記実施の形態においては上柱部材44と下柱部材45の端部間をその長さ方向に接合する場合について説明したが、本発明は、梁と梁の端部間をその長さ方向に接合する場合についても用いることができ、柱や梁以外の部材をその長さ方向に接合する場合についても用いることができる。
【0052】
また、前記実施の形態においては継手用添え板41の嵌合用孔41aに段付ナット47の小径部47aを圧入等により嵌合されて固定される場合について説明したが、圧入以外にも、焼き嵌めや冷やし嵌め等の他のどのような固定方法を用いてもよい。
【0053】
また、前記実施の形態においては、図7に示すように、段付ナット47のフランジ部47cの軸線部分に加えて、小径部47aの軸線部分にもネジ孔47bが形成されていたが、図8に示すように、そのネジ孔47bはフランジ部47cの軸線部分のみに形成され、小径部47aの軸線部分には頭付ボルト50のネジ軸部50aより径が大きな軸孔を形成して、ネジ孔47bは形成されないようにしてもよい。
【0054】
このように小径部47aの軸線部分にはネジ孔47bが形成されないようにすることにより、段付ナット47の小径部47aが圧入等により嵌合用孔41aにきつく嵌合されることによって、そのネジ孔47bへのネジ軸部50aの締め付けに支障を来たすことを防止することができる。
【0055】
また、前記実施の形態においては、図10に示すように、段付ナット57のフランジ部57cの軸線部分に加えて、小径部57aの軸線部分にもネジ孔57bが形成されていたが、図11に示すように、そのネジ孔57bはフランジ部57cの軸線部分のみに形成され、小径部57aの軸線部分には形成されないようにしてもよい。
【0056】
小径部57aの外周部をオスネジとし、内周部をメスネジとした場合は小径部57aの外径が大きくなってしまうが、上記のように小径部57aの軸線部分にはネジ孔57bが形成されず単なる軸孔とすることにより、小径部57aの外径が大きくなることを防止することができる。このため、小径部57aの外径を小さくすることによって、継手用添え板41,42の断面欠損が少なくなり、継手用添え板41,42及び頭付ボルト50による柱部材44,45の接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る継手用部材を示す上下柱部材44,45の接合部の側面図である。
【図2】図1における内側継手用添え板41、外側継手用添え板42、上柱部材44のA−A線断面図である。
【図3】上下柱部材44,45の各端部接合前の状態を示す斜視図である。
【図4】内側継手用添え板41を示す図であり、図4(a)は内側継手用添え板41の正面図、図4(b)は内側継手用添え板41の圧入用孔41aを通る側面断面図である。
【図5】外側継手用添え板42を示す図であり、図5(a)は外側継手用添え板42の正面図、図5(b)は外側継手用添え板42のボルト孔42aを通る側面断面図である。
【図6】図2における内側継手用添え板41、外側継手用添え板42、上下柱部材44,45のB−B線断面図である。
【図7】図6における段付ナット47及び頭付ボルト50を示す拡大断面図である。
【図8】他の実施例に係る段付ナット47及び頭付ボルト50を示す拡大断面図である。
【図9】他の実施例に係る頭付ボルト52の拡大側面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る段付ナット57及び頭付ボルト50の拡大断面図である。
【図11】他の実施例に係る段付ナット57及び頭付ボルト50の拡大断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る内側継手用添え板61を示す図であり、図12(a)は継手用添え板61の正面図、図12(b)は内側継手用添え板61のネジ孔61aを通る側面断面図である。
【図13】図12における内側継手用添え板61の使用状態を示す拡大断面図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る継手用部材を示す内側継手用添え板41、上下柱部材44,45の断面図である。
【図15】従来の接合構造の分解側面半断面図である。
【図16】従来の接合構造の組立側面半断面図である。
【符号の説明】
【0058】
41 内側継手用添え板
41a 嵌合用孔
41b ネジ孔
41c 非接触面
42 外側継手用添え板
42a ボルト孔
44 上柱部材
44a ボルト孔
45 下柱部材
45a ボルト孔
47 段付ナット
47a 小径部
47b ネジ孔
47c フランジ部
50 頭付ボルト
50a ネジ軸部
52 頭付ボルト
52b トルク管理部
57 段付ナット
57a オスネジ部
57b ネジ孔
61 内側継手用添え板
61a ネジ孔
71,72 仮設板部材
74,75 鉄骨部材
W 溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合する端部が開口した筒状の第1,第2部材の端部間を接合する継手用部材であって、
一端側の略半分を前記第1部材の内周面に接触させると共に、他端側の略半分を前記第2部材の内周面に接触させて用いられ、複数の位置に嵌合用孔が形成された平板状の継手用添え板と、
前記継手用添え板と前記第1,第2部材の互に隣接する各端部を第1,第2部材の長さ方向と直角方向にネジ止めするネジ部材とを備え、
前記ネジ部材として、
前記継手用添え板の嵌合用孔に、圧入等の方法で嵌合固着され、その長さが前記継手用添え板の板厚より短く形成された小径部と、嵌合用孔より大径のフランジ部とからなり、その軸線部にネジ孔を有する段付ナットと、
ネジ軸部の先端部が前記第1,第2部材の外側から内側に、第1,第2部材及び前記継手用添え板を貫通して挿し込まれ、前記段付ナットのネジ孔に締結される頭付きボルトと
を用いたことを特徴とする継手用部材。
【請求項2】
前記第1,第2部材の互に隣接する各端部外側の、前記継手用添え板と対向する位置にも第2の継手用添え板を配置し、前記頭付きボルトのネジ軸部の先端部が、前記第1,第2部材の外側から内側に挿し込まれるとき、この第2の継手用添え板を最初に貫通して前記段付ナットのネジ孔に締結されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の継手用部材。
【請求項3】
前記継手用添え板における嵌合用孔の各位置を加工装置に備えられた計測装置により計測して嵌合用孔を形成したことを特徴とする請求項1に記載の継手用部材。
【請求項4】
前記段付ナットのネジ孔は、前記小径部及び前記フランジ部の両方の軸線部、又は前記フランジ部のみの軸線部に形成されることを特徴とする請求項1に記載の継手用部材。
【請求項5】
接合する端部が開口した筒状の第1,第2部材の端部間を接合する継手用部材であって、
一端側の略半分を前記第1部材の内周面に接触させると共に、他端側の略半分を前記第2部材の内周面に接触させて用いられ、複数の位置にネジ孔が形成された平板状の継手用添え板と、
前記継手用添え板と前記第1,第2部材の互に隣接する各端部を第1,第2部材の長さ方向と直角方向にネジ止めするネジ部材とを備え、
前記ネジ部材として、
前記継手用添え板の前記第1,第2部材の内周面に接触する面の裏側から前記ネジ孔に小径部のオスネジが予めネジ止めされ、軸線部に前記ネジ孔と逆向きのネジ孔を有し、その長さが前記継手用添え板の板厚より短く形成された小径部と、前記ネジ孔より大径のフランジ部とからなる段付ナットと、
ネジ軸部の先端部が前記第1,第2部材の外側から内側に、第1,第2部材及び前記継手用添え板を貫通して挿し込まれ、前記段付ナットのネジ孔に締結される頭付きボルトと
を用いたことを特徴とする継手用部材。
【請求項6】
接合する端部が開口した筒状の第1,第2部材の端部間を接合する継手用部材であって、
一端側の略半分を前記第1部材の内周面に接触させると共に、他端側の略半分を前記第2部材の内周面に接触させて用いられ、複数の位置にネジ孔が形成された平板状の継手用添え板と、
前記継手用添え板と前記第1,第2部材の互に隣接する各端部を第1,第2部材の長さ方向と直角方向にネジ止めするネジ部材とを備え、
前記ネジ部材として、ネジ軸部の先端部が前記第1,第2部材の外側から内側に貫通して挿し込まれ、前記継手用添え板のネジ孔に締結される頭付きボルトを用いたことを特徴とする継手用部材。
【請求項7】
前記継手用添え板のネジ孔近傍部の厚さを他の部分の厚さより大きくしたことを特徴とする請求項6に記載の継手用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−46007(P2006−46007A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231576(P2004−231576)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】