説明

緩衝材付き床材

【課題】部分的に接着剤2を塗布して緩衝材3を接着積層して得られる緩衝材付き床材10において、接着剤の使用量を低減しながら、床基材1と緩衝材3との剥離分別回収作業を、一層容易かつ確実に行うことを可能とする。
【解決手段】緩衝材付き床材10において、接着剤2の塗布面積は床基材1の裏面面積の30〜70%の範囲とする。前記接着剤2が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量を、床基材1の裏面全面に接着剤を塗布して緩衝材を接着積層するときの接着剤の単位面積当たりの塗布量と等しいか、40%増量までの範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材付き床材に関する。
【背景技術】
【0002】
合板やMDFのような木質繊維板を床基材とし、その裏面に、不織布や合成樹脂発泡体(例えば、EVA系樹脂発泡シート:カルプ材)のように、床基材と異なる材料からなる緩衝材を接着積層した構成を備える緩衝材付き床材は知られている。このような緩衝材付き床材は、遮音性あるいは防音性に優れており、例えば、直貼り用のフローリング材として広く用いられる。また、緩衝材付き床材において、床基材と緩衝材とを部分接着すること(特許文献1)、床基材の裏面全面に接着剤を塗布するとともに、一部に接着剤塗布量の多い部分を形成して、床基材に緩衝材を接着すること(特許文献2)も知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−274064号公報
【特許文献2】特開平9−203195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように床基材と緩衝材とを部分接着するようにした緩衝材付き床材は、例えば、製品処分時に異なる材料である床基材と緩衝材とを剥離分別する作業が、緩衝材を床基材に全面接着した形態のものと比較して容易になると考えられるが、部分接着するときの接着剤の塗布量については考察がなされていない。特許文献2に記載される形態の緩衝材付き床材は、基本的には床基材の裏面全面に緩衝材を接着する形態であり、剥離分別にやや困難性があるとともに、接着剤の使用量も、緩衝材を床基材に全面接着したものと比較してほぼ同量となる。
【0005】
本発明は、緩衝材付き床材において、製品処分時に異なる材料である床基材と緩衝材とを剥離分別する作業が容易でありながら、接着剤の使用量を低減することができ、かつ施工時などにおいて緩衝材が不用意に分離することのない、緩衝材付き床材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による緩衝材付き床材は、部分的に接着剤が塗布された床基材の裏面全面に、該接着剤を介して緩衝材が積層されている構成を少なくとも備える緩衝材付き床材であって、接着剤の塗布面積は床基材の裏面面積の30〜70%の範囲であり、前記接着剤が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量は、床基材の裏面全面に接着剤を塗布して緩衝材を接着積層するときの接着剤の単位面積当たりの塗布量と等しいか、40%増量までの範囲とされていることを特徴とする。
【0007】
上記の緩衝材付き床材では、緩衝材は床基材の裏面面積の30〜70%の範囲で床基材に接着しており、裏面全面で接着している形態と比較して、床基材からの緩衝材の剥離は容易であり、剥離後に床基材側に残存する緩衝材の量も少なくすることができる。
【0008】
また、前記接着剤が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量は、床基材の裏面全面に接着剤を塗布して緩衝材を接着積層するときの接着剤の単位面積当たりの塗布量と等しいか、40%増量までの範囲であり、本発明者らの実験では、そのような接着剤塗布量とすることにより、接着剤の塗布面積が床基材の裏面面積の30〜70%の範囲であれば、施工時などにおいて緩衝材が不用意に床基材の端部から剥離するのを回避することができた。さらに、床基材の裏面全面に接着剤を塗布する場合と比較して、接着剤の使用量を減少させることができ、コストダウンももたらされる。
【0009】
なお、接着剤の塗布量が上記の範囲内であっても、塗布面積が30%よりも小さくなると、搬送時や施工時に緩衝材が不用意に床基材の端部から剥離することが起こり、作業性が悪くなる。塗布面積が70%を超えると、分別回収時において緩衝材を床基材から剥離する作業が困難となるとともに、剥離後に床基材側に残存する緩衝材の量も多くなる。さらに、接着剤使用量の低減効果ももたらされない場合がある。
【0010】
本発明による緩衝材付き床材において、床基材には、従来の緩衝材付き床材で用いられている床基材を任意に用いることができる。合板が一般的であるが、MDFなどの木質繊維板を含む加工木質材であっても、また合板と木質繊維板の複合基材であってもよい。床基材の表面には銘木単板、紙や合成樹脂の化粧シートのような化粧が施されていてもよい。床基材は矩形状であってもよく、雁木状であってもよい。複数本の長尺状の単位ピースを接着剤により雁木状に接ぎ合わせて一体化したものでもよい。いずれの場合も、周囲に本ザネや雇いザネ、相欠きザネ等の係合手段が形成されていてもよい。
【0011】
また、緩衝材も従来の緩衝材付き床材で用いられている緩衝材を任意に用いることができる。特に限定はされないが、例として、厚さ2〜5mm程度の不織布や合成樹脂発泡体が挙げられる。合成樹脂発泡体の場合、連続気泡のものでも独立気泡のものでもよいが、連続気泡のものは接着剤が連続気泡を通して緩衝材の内部に過度に入り込んで緩衝機能や遮音性能を阻害する恐れがあるので、独立気泡のものがより好ましい。合成樹脂発泡体の一例として、床材の分野でカルプ材と通称されているEVA系樹脂発泡シートを挙げることができる。また、不織布と合成樹脂発泡体の積層体を緩衝材として用いることもできる。
【0012】
本発明者らの実験では、緩衝材が不織布の場合、接着剤が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量は9〜12g/(30cm×30cm)であることが好ましく、緩衝材がEVA系樹脂発泡シートの場合、接着剤が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量は8〜10g/(30cm×30cm)であることが好ましかった。なお、(30cm×30cm)は、いわゆる尺角に相当する数値として用いている。
【0013】
本発明による緩衝材付き床材において、床基材への接着剤の塗布領域あるいは塗布形状に特に制限はないが、少ない接着剤塗布面積で安定した接着状態が得られるように、間隔をおいて複数本の線状に接着剤を塗布することが望ましく、より好ましくは、床基材の周辺には接着剤が配されるようにして、塗布することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、部分的に接着剤を塗布して緩衝材を接着積層して得られる緩衝材付き床材において、種類の異なる床基材と緩衝材との分別回収作業を、一層容易かつ確実に行うことが可能となる。また、接着剤の使用量を低減して低コスト化することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明を実施の形態に基づき説明する。図1aは本発明による緩衝材付き床材の一例を示す断面図であり、図1bは緩衝材付き床材の床基材に接着剤を部分的に塗布した状態を説明する図である。
【0016】
図において、1は4本の単位ピース1aが雁木状に組み付けられている床基材であり、例えば厚み9〜10mmの合板やMDF、あるいは合板に半裁等で得られる厚さ0.5〜2.5mmの薄物のMDFを積層したもの等が用いられる。その裏面に、図1bに示すように、例えば酢酸ビニル系接着剤のような接着剤2が塗布される。この例では、接着剤2は間隔をおいた5本の線状体として塗布され、接着剤2の合計の塗布面積は、床基材1の裏面面積の30〜70%の範囲とされている。接着剤2の塗布態様は複数本の線状体に限ることはなく、点状の規則的なパターンなどであってもよい。3は緩衝材であり、例えば不織布あるいはEVA系樹脂発泡シートが用いられる。前記床基材1の接着剤2を塗布した面に緩衝材3を接着積層することにより、緩衝材付き床材10とされる。
【0017】
前記接着剤2が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量は、例えば11g/(30cm×30cm)(緩衝材が不織布の場合の好ましい数値である)であり、この量は、床基材1の裏面全面に接着剤2を塗布して緩衝材3を接着積層するときの接着剤の単位面積当たりの塗布量と等しい。すなわち、床基材1の裏面面積が30cm×90cmのものである場合、そこに同じ塗布量で接着剤を塗布すると、11g/(30cm×30cm)×3倍、すなわち33gの接着剤が必要となるが、図示される本発明による床基材1での接着剤塗布量は、11g/(30cm×30cm)×3倍×(0.3〜0.7)の範囲であり、9.9g〜23.1gの範囲となる。
【0018】
また、前記接着剤2が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量を、床基材1の裏面全面に接着剤2を塗布して緩衝材3を接着積層するときの接着剤の単位面積当たりの塗布量(例えば、11g/(30cm×30cm))よりも40%増量とする場合には、接着剤2が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量は、11g/(30cm×30cm)×1.4=15.4g/(30cm×30cm)となるが、この場合でも、図示される本発明による床基材1での接着剤塗布量は、15.4g/(30cm×30cm)×3倍×(0.3〜0.7)の範囲であり、13.86g〜32.34gの範囲となり、最大でも、33gを超えることはない。
【0019】
また、前記接着剤2が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量が、例えば9g/(30cm×30cm)(緩衝材が前記したカルプ材の場合の好ましい数値である)の場合に、床基材1の裏面面積が30cm×90cmのものである場合、そこに同じ塗布量で接着剤を塗布すると、9g/(30cm×30cm)×3倍、すなわち27gの接着剤が必要となるが、図示される本発明による床基材1での接着剤塗布量は、9g/(30cm×30cm)×3倍×(0.3〜0.7)の範囲であり、8.1g〜18.9gの範囲となる。40%増量とする場合でも、27gを超えることはない。
【0020】
前記のように、本発明による緩衝材付き床材10では、床基材1の裏面の30〜70%の範囲で緩衝材3が接着した状態とされており、分別回収時に異種材料である床基材1と緩衝材3とを容易にかつ確実に剥離分別することができる。また、接着剤の使用量も低減できるので、製造コストも安くなる。さらに、施工時等において緩衝材が不用意に床基材の端部から隔離することもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1aは本発明による緩衝材付き床材の一例を示す断面図、図1bは床基材に接着剤を部分的に塗布した状態を説明する図。
【符号の説明】
【0022】
10…緩衝材付き床材、1…床基材、2…接着剤、3…緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に接着剤が塗布された床基材の裏面全面に、該接着剤を介して緩衝材が積層されている構成を少なくとも備える緩衝材付き床材であって、接着剤の塗布面積は床基材の裏面面積の30〜70%の範囲であり、前記接着剤が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量は、床基材の裏面全面に接着剤を塗布して緩衝材を接着積層するときの接着剤の単位面積当たりの塗布量と等しいか、40%増量までの範囲とされていることを特徴とする緩衝材付き床材。
【請求項2】
緩衝材が不織布であり、接着剤が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量は9〜12g/(30cm×30cm)であることを特徴とする請求項1に記載の緩衝材付き床材。
【請求項3】
緩衝材がEVA系樹脂発泡シートであり、接着剤が塗布された領域での単位面積当たりの接着剤塗布量は8〜10g/(30cm×30cm)であることを特徴とする請求項1に記載の緩衝材付き床材。
【請求項4】
接着剤は間隔をおいた複数本の線状体として塗布されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝材付き床材。

【図1】
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【公開番号】特開2008−156868(P2008−156868A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345605(P2006−345605)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】