説明

置き敷きタイルの施工方法

【課題】ズレが生じ難く、施工作業が容易であり、交換作業性に優れた置き敷きタイルの施工方法を提供する。
【解決手段】置き敷きタイルを施工する床施工面のうち、固定備品Cを設置する区域の外周線を施工開始線L1、L2として定める段階と、施工開始線L1、L2に沿って一部の置き敷きタイルAを敷設して床施工面上に仮止めする段階と、仮止めした置き敷きタイルAを基準として、その他の置き敷きタイルBを床施工面上に敷設する段階とからなることを特徴とする置き敷きタイルの施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床施工面に敷設して使用する置き敷きタイルの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーペットや合成樹脂からなる床材が知られており、これらの床材では床施工面に接着剤や粘着剤で貼着する施工方法が採用されていた。
【0003】
近年、あらゆる分野の産業において廃棄物量の削減、リサイクルおよびリユースの推進等、環境に対する負荷を低減することが強く要望されており、床材についても使用済み床材の削減、それらのリサイクル、リユース等への要求が高まっている。しかしながら、従来の床材は、床施工面に貼着されているために使用済み床材を床施工面から剥離することが困難であり、また除去した使用済み床材は接着剤やコンクリート等の混入物を含むので、粉砕し原材料としてリサイクルすることも費用面等で問題があった。また使用済み床材を床材自身としてリユースすることは全く行われていなかった。
【0004】
上記の要望に答えるものとして、床材を床施工面に貼着することなく敷設して使用する所謂置き敷きタイルが開発された。この置き敷きタイルは、接着剤等で貼着せずに床施工面に単に敷き並べて施工するものであるから、使用済みの置き敷きタイルを容易に床施工面から剥離でき、また施工時に使用した接着剤等の混入もないので、リサイクルに適した床材となる。また、表面に汚れや損傷が生じた一部のもののみを、新しいものまたは損傷の軽微なものと容易に置き換えることができ、使用済み床材を削減することもできる。
【0005】
さらに前記置き敷きタイルとして、タイル本体と、該タイル本体の上面に剥離可能に被せられた保護用フィルムとからなるプラスチックタイルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。カーペットタイル以外の床材では、艶出しや強度確保の目的で、ワックス材の塗布作業、吹き付け作業等によりその上面に保護膜が設けられるが、人の歩行による履物との接触、重量物の引き摺り、物体の落下等により保護膜の汚れや損傷が生じる場合がある。そして従来の床材では、損傷した保護膜を補修して均一な厚さの保護膜を再生するために、残存する保護膜を除去した後に再度ワックス剤の塗布、吹き付け等を行うメンテナンス作業が必要であった。しかしながら、メンテナンス作業は多くの手間と時間を要し、例えば24時間営業の店舗において営業を中断することなくこの作業を行うことは実質不可能であった。これに対して特許文献1に記載のプラスチックタイルは、汚れや損傷が生じたタイルを新しいものと交換することでワックス剤の塗布等のメンテナンス作業が不要になると共に、交換された使用済みタイルを回収し、工場等で保護用フィルムを剥離し、そして新たな保護用フィルムを設けることにより、タイル本体をリユースすることができる。
【0006】
一方、上記の置き敷きタイルでは、接着剤等で床施工面に貼着されていないことに起因して、所定の位置に正確にタイルを敷設することが困難で施工作業に長時間を要し、また使用時には人の歩行等によりタイルのズレが生じ易いという問題があった。これに対して、出入り口部分および/または通路部分に敷設するタイルを接着剤または粘着剤により床施工面に貼着し、その他の部分を敷設する置き敷きタイルの施工方法(例えば、特許文献2参照。)、並びに床施工面に引かれた施工基準線に沿って敷設するタイルを床施工面に貼着し、その他の部分を敷設する置き敷きタイルの施工方法(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。これらの施工方法は何れも、一部の置き敷きタイルを床施工面に貼着して固定し、固定した置き敷きタイルを基準としてその他のタイルを置き敷くことによって施工作業を容易にするものである。
【特許文献1】特開2004−44272号公報
【特許文献2】特開2003−138734号公報
【特許文献3】特開2004−100379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献2に記載の施工方法は、歩行量の多い出入り口部分や通路部分の置き敷きタイルを床施工面に貼着することにより、施工作業を容易にし、またタイルのズレを防止できるけれども、これらの部分のタイルは汚れや損傷が起こり易いため交換を頻繁に行う必要があり、頻繁に交換すべきタイルを貼着してしまうことは、置き敷きタイルの交換作業性を著しく低下させる。
【0008】
また特許文献3に記載の施工方法は、施工基準線に沿って敷設する置き敷きタイルのみを床施工面に貼着するものであるが、該施工基準線とは、施工床面の中心線に沿って置き敷きタイルを敷設したときに生じる置き敷きタイルと壁との間の余り寸法を調節するために、該中心線から僅かにずらして引かれた線であり、歩行量の多さ等による置き敷きタイルの交換頻度に関しての考察はない。従って、該施工基準線が出入り口部分や通路部分を通過する場合には、特許文献2に記載の施工方法と同様、交換頻度が高い部分の置き敷きタイルを床施工面に貼着することとなり交換作業性が低下する。
【0009】
従って本発明は、施工した置き敷きタイルにズレが生じ難く、施工作業が容易であり、さらには交換作業性に優れた置き敷きタイルの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、置き敷きタイルを施工した床面に商品用陳列棚、本棚、什器等の固定備品を設置する場合、該固定備品の下となる部分の置き敷きタイルには履物との接触、重量物の引き摺り、物体の落下等による汚れや損傷が殆ど生じないこと、また固定備品が設置される区域の外周部分では、そのような汚れや損傷が僅かであることに着目した。そして、これらの軽微な汚れおよび損傷しか生じない部分の置き敷きタイルを床施工面に仮止めすることにより、上記の課題を解決し得ることを見出して本発明を完成させた。
【0011】
従って、本発明は、
置き敷きタイルを施工する床施工面のうち、固定備品を設置する区域の外周線を施工開始線として定める段階と、
前記施工開始線に沿って一部の置き敷きタイルを敷設して床施工面上に仮止めする段階と、
仮止めした置き敷きタイルを基準として、その他の置き敷きタイルを床施工面上に敷設する段階とからなることを特徴とする、置き敷きタイルの施工方法
に関する。
【0012】
本発明の置き敷きタイルの施工方法の好ましい態様は、
使用により汚れまたは損傷が生じた使用済み置き敷きタイルを、新たな未使用置き敷きタイルと交換する施工に、または該使用済み置き敷きタイルを、使用による汚れまたは損傷が軽微な使用済み置き敷きタイルと配置換えする施工に適用することを特徴とする前記置き敷きタイルの施工方法、
前記仮止めした置き敷きタイルは置き敷きタイル全体の10〜40%を占めることを特徴とする前記置き敷きタイルの施工方法、および
前記仮止めは両面粘着テープを用いて行うことを特徴とする前記置き敷きタイルの施工方法
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、施工開始線に沿って置き敷きタイルを敷設して床施工面に仮止めし、そして該仮止めした置敷タイルを基準としてその他の置き敷きタイルを敷設することにより、タイルの位置決めが容易となり施工作業性が向上する。また該仮止した置き敷きタイルの上には固定備品が設置され、大重量の固定備品によりしっかり固定されるので、人の歩行等によるタイル全体のズレやタイル間の目開きが発生し難い。
【0014】
また、本発明の施工方法では、固定備品を設置する区域の外周線を施工開始線として定めるので、床施工面上に仮止した置き敷きタイルは固定備品の下の部分または外周部分に位置し、軽微な汚れおよび損傷しか生じないため、仮止めした置き敷きタイルを頻繁に交換する必要はない。他方、固定備品を設置する区域以外の出入り口部分、通路部分等、汚れや損傷が生じ易く頻繁に交換することが必要な部分のタイルは置き敷かれているのみであって、容易に交換できる。従って、たとえ一部のタイルが床施工面に仮止されていても、タイルの交換作業性は著しく低下しない。
【0015】
本発明の施工方法は、使用により汚れや損傷が生じた置き敷きタイルを新規なものと交換する施工に好ましく適用できる。また、交換するまでもない程度の軽微な汚れや損傷が生じた置き敷きタイルを、殆ど汚れや損傷が生じていない置き敷きタイルと交換して配置換えする施工にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に使用される置き敷きタイルは、表面に汚れや損傷が生じたときにそれらのみを交換できるものであり、例えば、通常の置き敷きタイルに保護層として剥離可能なフィルムを設けたタイル、互いに分離可能な状態で積層された基材部分と表面部分とを少なくとも含んでなる積層タイル、上層部分の保護層を研磨等により除去し再度保護層を形成できるタイル等が好ましい。しかしながら、従来の置き敷きタイルをメンテナンス作業なしに交換して用いる場合にも、本発明の施工方法は使用可能である。
【0017】
前記置き敷きタイルの材質としては、ポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系等の合成樹脂、ケイ酸カルシウム、バーミキュアライト等の無機質を使用でき、合成樹脂と無機質とを積層した構造であってもよい。
【0018】
前記置き敷きタイルの寸法は、通常使用される範囲で適宜選択でき、例えば1辺が100〜1000mm程度の矩形形状を有し、厚さ2〜10mm程度のものを使用できる。
【0019】
本発明では、上記の置き敷きタイルの一部を施工開始線に沿って床施工面に仮止めし、次いで仮止めした置き敷きタイルを基準として、その他の置き敷きタイルBを床施工面に貼着することなく敷設する。
【0020】
前記施工開始線は、商品用陳列棚、本棚、什器等の固定備品を設置する区域の外周線である。例えば、固定備品が長方形の底面を有する場合には、該長方形の四辺のうち一方の長辺に平行な直線と、該長辺と直行する一方の短辺に平行な直線とを施工開始線に定めることができる。実際の施工時には、設計図面等を参照して固定備品を設置する区域を決定し、該区域の外周線の何れかを墨打ち等の方法で床施工面に記して施工開始線とする。
【0021】
上記の如くして定めた施工開始線に沿って、一部の置き敷きタイルを床施工面に仮止めする。該仮止めは、施工開始線の上および/または施工開始線に沿った部分に置き敷きタイルより狭い幅で粘着剤を塗布するか、さもなくば仮止めする置き敷きタイルの裏面に粘着剤を塗布して行うことができる。該粘着剤としては一般的なものを使用でき、例えばゴ
ム系、ウレタン系、アクリル系、シリコン系、酢酸ビニル系等の粘着性樹脂が使用できる。またその使用形態としては、粘着性樹脂を水、アルコール、有機溶剤等の溶媒に分散させて液状粘着剤を作成し、これを床施工面または置き敷きタイルに塗布できる。作業性の観点から好ましいのは、テープ状物の両面に粘着剤層を設けてなる両面粘着テープにより置き敷きタイルを仮止めすることである。
【0022】
前記粘着剤は、置き敷きタイルの裏面の全面に設けてもよい。しかしながら、本発明では、仮止めしたタイルの上に大重量の固定備品が設置されて床施工面にしっかり固定されるので、タイルのズレを防止するために仮止めしたタイルを強力に床施工面に貼着する必要はなく、その他の置き敷きタイルの施工時にズレない程度に置き敷きタイルを固定できれば良い。よって、ストライプ状やドット状のように部分的に粘着剤を設け、仮止めした置き敷きタイルを床施工面から剥離するために必要な力が減じて、置き敷きタイルの交換作業性を向上させることが好ましい。
【0023】
仮止した置き敷きタイルの置き敷きタイル全体に対する割合は、施工する置き敷きタイルの寸法や床施工面の面積に応じて適宜決定されるが、10〜40%であることが好ましい。仮止めした置き敷きタイルの割合が10%未満であると、施工時に仮止めしたタイルが少ないために、その他の置き敷きタイルを敷設する際に位置決めが困難になって作業性が低下し、また使用時に置き敷きタイルのズレ等が生じ易くなる。他方、仮止めした置き敷きタイルの割合が40%を超えると、頻繁な交換が必要な部分のタイルまで仮止めされてしまう可能性が高くなり交換作業性が低下して好ましくない。
【0024】
こうして仮止めした置き敷きタイルを基準とし、これに基いてその他の置き敷きタイルを敷設して床施工面全体の施工を完了する。施工完了後、仮止めした置き敷きタイルは床施工面に貼着されたままの状態にしてもよいし、全ての置き敷きタイルの敷設が完了した時点で仮止めした置き敷きタイルを一度剥離し、粘着剤を除去して再度敷設することもできる。仮止めした置き敷きタイルの粘着剤を除去した場合、もはや全ての置き敷きタイルが床施工面に貼着されていないこととなるが、仮止めされていた置き敷きタイルの上には大重量の固定備品が設置されるので、床施工面上にしっかり固定されてズレ等の発生を抑制できる。
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に従い施工された置き敷きタイルの施工状態を具体的に説明する。図1は、本発明の方法により施工された置き敷きタイルを示す斜視図であり、そして図2は、ある態様の置き敷きタイルの施工状態を示す模式図であり、図3は、他の態様の置き敷きタイルの施工状態を示す模式図であり、そして図4は、さらなる他の態様の置き敷きタイルの施工状態を示す模式図である。図2〜4に示す態様では、何れの場合も固定備品の底面は長方形であり、敷設する置き敷きタイルは正方形であるが、置き敷きタイルの寸法が異なる。
【0026】
図2は、固定備品Cの底面の短辺よりも置き敷きタイルの一辺が長い態様を図示する。この態様では、固定備品Cの底面と相似で一回り寸法が大きな長方形を固定備品Cの設置する区域とし、該長方形の一方の長辺を施工開始線L1とし、また該長方形の一方の短辺を施工開始線L2と定める。置き敷きタイルの施工後に固定備品Cを配置すると、固定備品Cの底面は全て、仮止めした置き敷きタイルAの上に含まれることとなる。
【0027】
図3は、固定備品の底面の短辺よりも置き敷きタイルの一辺が短いに図示する態様を図示する。この態様でも、図2に図示した態様と同様、固定備品Cの底面と相似で一回り寸法が大きな長方形を固定備品Cの設置する区域とし、該長方形の一方の長辺を施工開始線L1とし、また該長方形の一方の短辺を施工開始線L2と定める。一方、この態様では、固定備品の底面に対して置き敷きタイルの寸法が小さいため、全体が固定備品Cの下とな
り使用時に露出することのない置き敷きタイルDが生じる。置き敷きタイルDには人の歩行等による汚れや損傷が生じないので、このタイルを新しいものと交換する必要は殆どなく、配置換えにより汚れや損傷が生じた置き敷きタイルと交換するために使用できる。
【0028】
図4は、固定備品の底面の短辺よりも置き敷きタイルの一辺が短く、かつ底面の短辺の長さがタイルの一辺の2倍に相当する態様を図示する。この態様では、固定備品Cの底面の長辺方向の寸法が一回り大く、かつ短辺方向の寸法等しい長方形を固定備品Cの設置する区域とし、該長方形の一方の長辺を施工開始線L1とし、また該長方形の一方の短辺を施工開始線L2と定める。このように施工開始線を定めることにより、施工開始線L2に沿って敷設する2つの置き敷きタイルは、図3に図示する置き敷きタイルDと同様、使用時に全体が固定備品Cの下となり露出しない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の方法により施工された置き敷きタイルを示す斜視図である。
【図2】図2は、ある態様の置き敷きタイルの施工状態を示す模式図である。
【図3】図3は、他の態様の置き敷きタイルの施工状態を示す模式図である。
【図4】図4は、さらなる他の態様の置き敷きタイルの施工状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0030】
A 仮止した置き敷きタイル
B 仮止めしない置き敷きタイル
C 固定備品
L1、L2 施工開始線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
置き敷きタイルを施工する床施工面のうち、固定備品を設置する区域の外周線を施工開始線として定める段階と、
前記施工開始線に沿って一部の置き敷きタイルを敷設して床施工面上に仮止めする段階と、
仮止めした置き敷きタイルを基準として、その他の置き敷きタイルを床施工面上に敷設する段階とからなることを特徴とする、置き敷きタイルの施工方法。
【請求項2】
使用により汚れまたは損傷が生じた使用済み置き敷きタイルを、新たな未使用置き敷きタイルと交換する施工に、または該使用済み置き敷きタイルを、使用による汚れまたは損傷が軽微な使用済み置き敷きタイルと配置換えする施工に適用することを特徴とする、請求項1記載の置き敷きタイルの施工方法。
【請求項3】
前記仮止めした置き敷きタイルは置き敷きタイル全体の10〜40%を占めることを特徴とする、請求項1記載の置き敷きタイルの施工方法。
【請求項4】
前記仮止めは両面粘着テープを用いて行うことを特徴とする、請求項1記載の置き敷きタイルの施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−307563(P2006−307563A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132356(P2005−132356)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】