説明

耐動荷重性床材およびその床構造

【課題】
本発明は、下地との接合面が搬送車や椅子のキャスターによる荷重に対して、破壊されることがない耐動荷重性に優れた軟質系塩化ビニル樹脂系床材、および床材を特定の接着剤によって下地に施工してなる耐動荷重性に優れた床構造を提供することを目的とする。
【解決手段】
係る課題を解決するために本発明の講じた手段は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とするショアーA硬度が80以上の表層と、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、紡錘形状または立方形状の軽質炭酸カルシウム50〜300重量部を添加してなる裏層とを積層した、耐動荷重性の優れる軟質塩化ビニル樹脂系床材とすることであり、この床材を、硬化後のショアーA硬度が85以上の硬化型接着剤を用いて下地に施工してなる、耐動荷重性に優れる床構造としたことである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地に接合した際の耐動荷重性が優れる床材に関するものであって、特に搬送車や椅子のキャスターによる荷重に対して、床材が接着剤から剥離することのない耐動荷重性に優れた軟質ポリ塩化ビニル系床材に関するものである。さらに前記床材を特定の接着剤で下地に接着施工してなる耐動荷重性に優れる床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の軟質ポリ塩化ビニル系床材としては、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする表層と、重質炭酸カルシウムなどの安価な充填剤を主成分とする裏層が積層されたものや、裏面に基布が積層されたものが良く広く知られている。そして、これらの床材は種種の接着剤で下地に貼り付けてられていた。
【0003】
しかし、これらの床材の接合面は、下地に接合した時、キャスターなどの繰り返し荷重に対する破壊強さが劣るという問題があった。たとえば、搬送車や椅子のキャスターなどから0.5N/mm程度の繰り返し荷重や、一時的にそれ以上の局所荷重が加えられた場合には、接合剤から床材が剥離してしまう。また、やわらかい接合剤を使用した場合や、ポリ塩化ビニル系樹脂と相溶性が乏しい接合剤を使用した場合は、繰り返し荷重により、やはり床材が剥離してしまうという問題があった。
【0004】
以上のような観点から、床材の裏層に発泡倍率を規定した発泡層を設けて、耐動荷重性を付与することが行なわれていた。(例えば、特許文献1参照)。この方法では、幅の広いキャスターに対する耐動荷重性能は有しているものの、幅の狭いキャスターの繰り返し荷重によって表面が凹んでしまう場合があり、耐久性能が十分にあるとは言えなかった。
【0005】
他に、床材に硬質シート中間層を一体成型する方法があるが、これもまた、接合面の破壊強さが十分なものではなく、キャスターの繰り返し荷重により接着剤から剥離してしまう問題があった(例えば、特許文献2参照)。このような現状から、キャスターの繰り返し荷重に対して長期の耐動荷重性を兼ね備えた軟質系床材の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特許第3184093号公報
【特許文献2】実用新案公開平05−430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、下地との接合面が搬送車や椅子のキャスターによる荷重に対して、破壊されることがない耐動荷重性に優れた軟質系塩化ビニル樹脂系床材、および前記床材を特定の接着剤によって下地に施工してなる耐動荷重性に優れた床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
係る課題を解決するために本発明の講じた手段は、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とするショアーA硬度が80以上の表層と、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、紡錘形状または立方形状の軽質炭酸カルシウム50〜300重量部を添加してなる裏層とを積層した、耐動荷重性の優れる軟質塩化ビニル樹脂系床材とすることであり(請求項1)、この床材を、硬化後のショアーA硬度が85以上の硬化型接着剤を用いて下地に施工してなる、耐動荷重性に優れる床構造としたことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐動荷重性が効果的に発揮できる床材を提供することができる。また、この床材を特定の接着剤で下地に施工するため、キャスターなどの繰り返し荷重に対する破壊強さが優れ、工場などにおいて長期間、安定的に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施態様について説明する。
本発明の床材の表層および裏層の配合としては、ポリ塩化ビニル系樹脂に可塑剤、安定剤、帯電防止用や分散用の界面活性剤、充填材、抗菌剤、難燃剤、着色剤などの各種添加剤を混合したものを用いることができる。ポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合樹脂、塩化ビニル−エチレン共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等が挙げられ、これらを単独或いは併用して使用することができる。また、本発明の性能を逸脱しない限り、加工助剤、強化剤等として他の樹脂を添加してもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度としては600〜3000のものを使用することができ、700〜1500の範囲がより好ましい。平均重合度が700〜1500の範囲であれば床材の強度が向上し、成形性も良好となる。
【0011】
上記可塑剤としては、例えば、ジ2−エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル、ジイソノニルアジペート、ジ2−エチルヘキシルアジペート等のアジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン、エポキシ化大豆油などが挙げられ、これらは単独或いは併用して使用することができる。
【0012】
上記安定剤としては、例えば、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系安定剤、ジオクチルスズラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズβ−メルカプトプロピオン酸アルキルエステル等の有機錫系安定剤、モノトリデシルジフェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレンジホスファイト等のホスファイト系安定剤、過塩素酸処理ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイト系安定剤、ジベンゾイルメタン等のβジケトン、ペンタエリスリトール等のポリオールなどが挙げられ、これらは単独或いは併用して使用することができる。
【0013】
これらのポリ塩化ビニル樹脂系組成物はカレンダー成形機、押出成形機、そしてプレス成形機などでシート状に加工することができ、さらに、そのシートをタイル状に加工することもできる。
【0014】
本発明の床材の表層および裏層は、単層でも、2層以上の複数層でも良い。また、裏面及び/又は中間に寸法安定性の向上を目的として編物、織物等の基材を積層することも可能であり、裏面に積層する場合は、基材が裏層に埋まるように積層し、裏層の接合面を露出させる必要がある。また、表層側に意匠フイルムの積層やポリエステルチップを混合するなどして意匠を付与しても良い。厚みは通常の床材と同様でよく、1.0〜5.0mm程度が一般的である。キャスターの走行性や凹み難さの点から、表層と裏層を積層したあとの床材としてのショアーA硬度は、好ましくは80以上であり、さらに好ましくは85以上である。
ここでショアーA硬度とは、ASTM D2240に規定されるタイプAデュロメーターで測定した、加圧開始から15秒後の硬度のことであり、このときの測定温度は20℃である。以下の硬度の測定についてもこの方法で行った。
【0015】
本発明の床材の表層はショアーA硬度が80以上であり、85以上であればさらに好ましい。硬度が80未満では、キャスターの走行性が劣り、かつキャスターの荷重による凹みが顕著になる。また、表層の硬度は95以下であれば床材が柔軟になり、下地の不陸に追従でき、また、巻いて保管したものを広げた時に、癖がとれやすいので好ましい。この表層には表面処理を行ってもよく、硬化型の塗料を塗布することができる。
塩化ビニル樹脂組成物では、ショアーA硬度は、重合度を含めたポリ塩化ビニル系樹脂の種類、充填剤の種類及びその添加量の影響を受けるが、可塑剤添加量の影響が最も大きく、ショアーA硬度を80以上とするには、ポリ塩化ビニル系樹脂の種類、充填剤の種類及びその添加量により多少の変動はするが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、概ね可塑剤の添加量を50重量部以下にすればよい。また、ショアーA硬度を95以下とするには、同様にポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、概ね可塑剤の添加量を25重量部以上にすればよい。
【0016】
本発明の床材の裏層に使用する軽質炭酸カルシウムの形状は紡錘状または立方状である。この形状であれば軽質炭酸カルシウムとポリ塩化ビニル系樹脂を混練してシート状に成形した際、軽質炭酸カルシウムがポリ塩化ビニル系樹脂のマトリックスに包み込まれた構造となり、両者の接合力は高いものとなる。その結果、裏層の接合部界面はキャスターなどの繰り返し荷重に対する破壊強さが向上する。一方で、不定形の重質炭酸カルシウムや、燐片形のタルクおよび水酸化マグネシウムなどをポリ塩化ビニル系樹脂と混ぜてシート状に成形した場合は、不定形の重質炭酸カルシウムや、燐片形のタルクおよび水酸化マグネシウムなどの無機フィラーが裏層の接合部界面から剥がれやすく破壊強さが劣る。本発明の床材の裏層には、紡錘状または立方状をした軽質炭酸カルシウムを使用するが、他の充填剤の添加を制限するものではなく、本発明の性能を逸脱しない範囲で他の充填剤を併用してもよい。
【0017】
この、軽質炭酸カルシウムの添加量はポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して50〜300重量部の範囲であり、さらに好ましくは80〜200重量部である。軽質炭酸カルシウムが50重量部未満であると接着剤に対する接着性が低下し、特に低温での接着性は著しく低下してしまう。軽質炭酸カルシウム300重量部を越えると、加工性が劣るので成形が困難となる。
【0018】
この軽質炭酸カルシウムの平均粒径は1〜5μmであることが好ましい。軽質炭酸カルシウムの平均粒径が1μm以上であれば混練性がより良好となり、材料コストも抑えることができる。平均粒径が5μm以下であれば裏層の接合面の平滑性が向上し、キャスターの荷重などに対する破壊強さが、より優れるものとなる。また、平滑性を向上させるためには、軽質炭酸カルシウムの粒度分布の標準偏差は2.0以下、最大粒径は15μm以下であることが好ましい。つまり、平均粒径5μm以下、粒度分布の標準偏差2以下、最大粒径15μm以下であれば、平滑な接合面を形成することができる。この平滑性は、JIS B 0601に規定される算術平均粗さが2.5μm以下、および最大高さが20μm以下であることが好ましく、この範囲の平滑性でれば、床材裏層の接合面と接合剤の界面に気泡が存在することがなくなり、その結果としてキャスターなどの荷重に対する破壊強さが向上する。
上記の軽質炭酸カルシウムの平均粒形、粒度分布は、レーザー粒度分析計により測定した。また、接合面の平滑性は、算術平均粗さおよび最大高さを測定する時のカットオフ値、評価差長さ、基準長さは、JIS B 0601に記載される標準値を用いた。また、前記の算術平均粗さおよび最大高さは、5箇所以上の測定値を平均したものである。
【0019】
この軽質炭酸カルシウムは分散性を向上させるために、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、シランカップリング剤等の表面処理を施してもよい。
【0020】
本発明の床構造に使用する接着剤は、硬化後のショアーA硬度が85以上の反応性硬化型接着剤であることが好ましい。硬度が85以上の反応性硬化型接着剤であれば、キャスターの荷重などによって破壊されにくく、凹みの発生も殆どない。反応性硬化型接着剤としては、安価に入手可能で、しかも破壊強さや耐水性に優れているという点から、ウレタン樹脂系またはエポキシ樹脂系の接着剤を用いることが好ましい。
【0021】
本発明の床構造に使用する接着剤は、溶解性パラメーターが8〜10の有機溶剤を5重量%以上含む事が好ましい。溶解性パラメーターが8〜10の有機溶剤を5重量%以上含んでいれば、特に低温においても床材の接合面と接着剤が高い接着力を発現する事ができる。これは、この有機溶剤が床材の裏層接合面のポリ塩化ビニル系樹脂層を溶かし、接着剤樹脂成分と軽質炭酸カルシウムの濡れを向上したことが主な理由と考えられる。
これらの有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、アルキルメチルシクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ジメチルカーボネートなどを挙げることができる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらのうち、毒性が低く、臭気の少ない点でジメチルカーボネート、アセトン、メチルエチルケトン、アルキルシクロヘキサンが好ましい。
【0022】
本発明の床構造に使用する接着剤は、硬化したあとの内部に存在する気泡が少ないことが望ましい。これらの気泡には、もともと含まれている有機溶剤、反応によって生成する炭酸ガス、そして施工中に巻き込まれた空気などによるものがある。これらの気泡は、直径0.5mm以下で、気泡端部から隣接する気泡の端部までの最短距離が20mm以上であれば、キャスターなどの繰り返し荷重に対する破壊強さが優れるのでより好ましい。
【0023】
本発明に使用するこれらの接着剤は、JIS A5536に規定されるクシ目ゴテを用いて下地に塗布することができ、前記床材を貼り付けて十分に圧着して施工するものである。この施工で得られた床構造は、キャスターなどの動荷重で、床材の剥離や変形が発生しないので、耐荷重性を向上できる。
【0024】
耐動荷重性は、たとえばJIS A1454 B法に規定されるキャスター性試験に準拠して評価することができる。このときの試験条件として、キャスター(ナイロン製、直径75mm、幅25mm)一輪に780Nの荷重をかけ、このキャスターを6rpmの速度で15秒間毎に反回転させて1500回転させたときに、接着剤で下地に貼り付けた床材に剥離や凹みを生じなければ、耐動荷重性は概ね問題ない範囲となる。従来の床材は前記試験において1500回転未満で、膨れや凹みを発生するが、本発明の工法は、1500回転以上でも膨れや凹みを生じることが無い、耐動荷重性に優れた床材および床構造である。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例1〜7と比較例1〜7は床材として評価し、実施例8〜10と比較例8、9は床構造として評価した。
【0026】
<実施例1〜7>
表1、2に示す表層の配合組成物を180℃でロール成形し、厚さ0.4mmの塩化ビニル樹脂製表層シートを作成した。次に、表2に示す裏層の配合組成物を180℃でロール成形し、厚さ0.8mmの塩化ビニル樹脂製シートを2枚作製した。そして、2枚の裏層と表層を積層して厚さ2.0mmの床材を得た。この床材を一液性の反応硬化形ウレタン樹脂系接着剤(硬化後ショアーA硬度88、有機溶剤は溶解性パラメーターが9.3のメチルエチルケトンを15重量%含む)を用いて厚さ8mmのスレート板に貼付けて、7日間静置して床構造を得た。接着剤の塗布はJIS A5536に規定されるクシ目ゴテを用いて行い、所定の待ち時間後に床材を貼付け、ローラーで十分に圧着した。評価結果を表2に示す。
<比較例1〜7>
表1、3に示す表層の配合組成物および表3に示す裏層の配合組成物について、実施例1〜7と同様の方法で成形して、厚さ2.0mmの床材を得た。そして、この床材を一液性の反応硬化形ウレタン樹脂系接着剤(硬化後ショアーA硬度88、有機溶剤は溶解性パラメーターが9.3のメチルエチルケトンを15重量%含む)を用いて厚さ8mmのスレート板に貼付けて、7日間静置して床構造体を得た。この時の施工は実施例1〜5と同様の方法で行った。なお、比較例6、7は加工性が悪く床材が得られず施工は未実施である。評価結果を表3に示す。
【0027】
<実施例8〜10>
実施例2の床材を表4に示す5種類の接着剤を用いて厚さ8mmのスレート板に貼付けて、7日間静置して床構造体を得た。この時の施工は実施例1〜7と同様の方法で行った。評価結果を表4に示す。
<比較例8、9>
実施例2の床材を表5に示す2種類の接着剤を用いて厚さ8mmのスレート板に貼付けて、7日間静置して床構造体を得た。この時の施工は実施例1〜7と同様の方法で行った。評価結果を表5に示す。
【0028】
これら実施例1〜7と比較例1〜7について、裏層の加工性、床材の施工性、および耐動荷重性に関して、以下の評価方法及び評価基準により評価を行った。実施例8〜10と比較例8および9に関しては耐動荷重性に関して評価を行った。
<評価方法及び評価基準>
[裏層の加工性]
8インチテストロールに実施例および比較例の裏層配合200gを投入し、前記厚みで混練した時の、金属ロールとの剥離性、及び混練性を評価した。
(剥離性)
○:金属ロールから容易に剥離し、シートを引き取ることができる。
×:金属ロールに対して粘着が強く、安定加工できない。
(混練性)
○:ロール間隙上の樹脂バンクがロール間に均一に食い込み、混練性が良好である。
△:ロール間隙上の樹脂バンクがロール間に不均一に食い込むが、比較的混練性は良
い。
×:ロール間隙上の樹脂バンクのロール間への食い込みが不均一で、混練性が劣る。
[施工性]
○:床材が柔軟で下地の不陸に追従し、巻き癖も取れやすく、施工性が良好である。
△:床材がやや硬く、下地の不陸が大きいと追従できない場合がある。また、巻き癖
を解消するのに長時間を要するが、実用上は問題ない範囲。
[耐動荷重性]
JIS A1454 B法に規定されるキャスター性試験に準拠して、耐動荷重性を評価した。キャスター(ナイロン製、直径75mm、幅25mm)一輪に780Nの荷重をかけ、このキャスターを6rpmの速度で15秒間毎に反回転させて膨れが発生する回転数を測定した。
○:3000回転させたときに膨れの発生がなく、耐久性が優れる。
△:1500〜3000回転未満で膨れ、または凹みが発生するが、実用上は問題な
い範囲。
×:1500回転未満で膨れ、または著しい凹みが発生する(耐久性が劣る)。


【0029】
【表1】

【0030】
【表2】




















【0031】
【表3】

【0032】
【表4】














【0033】
【表5】

【0034】
表2の結果から、実施例1〜3および5、6の床材は耐動荷重試験において3000回転で凹みや膨れは発生しなかった。実施例4および7のものでは1500回転で凹みや膨れは発生せず、本発明の床材が優れていることがわかる。これは、本発明がショアーAを特定した表層と、特定形状の軽質炭酸カルシウムを所定量添加した裏層とを組み合わせた効果である。また、実施例2〜7のものは床材が柔軟で、下地の不陸に追従し、巻き癖も取れやすく、施工性が良好であった。
一方、本発明が特定する表層或いは裏層の範囲を外れれば上記効果は得られず、表3の結果から明らかなように、比較例1〜5の床材は耐動荷重性が劣り、実用上、耐動荷重性床材として耐え得るものではなかった。このなかで、比較例1および2のものには凹みが発生し、特に比較例2のものは表層が柔らかいので、凹みは顕著であった。また、比較例6および7のものでは、加工性に問題があった。
表4の結果から、実施例8および9の床構造は耐動荷重試験において3000回転で凹みや膨れは発生しなかった。また、実施例10のものでは1500回転でも凹みや膨れは発生せず、本発明の床材構造が優れていることがわかる。一方、表5の結果から、比較例8および9の床構造は耐動荷重性が劣るものであることが分かった。つまり、床材として優れた耐動荷重性能を有していても、適切な接着剤を選定しなければ耐動荷重性の優れた床構造とはならず、耐動荷重性能の優れた床材を適切な接着剤で施工することにより耐動荷重性の優れた床構造となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により、耐動荷重性に優れた床材及び床構造が得られ、床面に搬送車や椅子のキャスターなどから繰り返し荷重が加えられる部位で広く使用することができる。なかでも特に大きな荷重が加えられる工場、病院などに適した、耐動荷重性に優れた床材、および床構造であり広範に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とするショアーA硬度が80以上の表層と、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、紡錘形状または立方形状の軽質炭酸カルシウム50〜300重量部を添加してなる裏層とを積層したことを特徴とする軟質ポリ塩化ビニル樹脂系の耐動荷重性床材。
【請求項2】
前記請求項1に記載の床材を、硬化後のショアーA硬度が85以上の反応性硬化型接着剤を用いて下地に接着してなることを特徴とする耐動荷重性に優れる床構造。

【公開番号】特開2008−285874(P2008−285874A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131264(P2007−131264)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】