説明

耐火物の厚み測定用端子

【課題】耐火物の厚みの測定箇所の選択の自由度を向上させ、しかも精度よく耐耐火物の厚みを測定する
【解決手段】筒状の本体2は、その上面が露出するようにカーボンブロックCに埋設して固定されている。本体2内には、カーボンブロックC側から順に、接合材7、圧電素子6、接合材9、電極8、絶縁ワッシャ10、バネ11及びバネ押え部材12が配置されている。本体2の上端には、外側面にネジ山13aが形成された固定部材13が配置され、本体2と螺合して固定されている。固定部材13は、バネ11を圧縮した状態で本体2に固定され、圧電素子6及び接合材7は、バネ11によってカーボンブロックC側に付勢されている。接合材7の測定用端面7aは、カーボンブロックCの表面に付勢されて密着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火物の厚みを測定する際に用いる耐火物の厚み測定用端子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高炉の炉壁は、通常外側より鉄皮、不定形耐火物、冷却用ステーブ、スタンプ材、耐火煉瓦によって構成されているが、高炉炉底部の耐火煉瓦は常に溶銑にさらされているため、高炉の操業に伴い徐々に損耗する。そのため耐火煉瓦の残存厚み(残厚)の変化を高炉操業中に精度よく測定して管理することは、溶銑による鉄皮の溶損、溶銑の流出等の防止、さらには高炉の設備診断のために極めて重要である。
【0003】
このため、耐火煉瓦の残存厚みを測定する方法が従来から種々提案されており、例えば特許文献1には、最外側の壁面の表面から内側の耐火煉瓦に向けて弾性波を送信し、耐火物最内面からの反射信号を最外側の壁面の表面にて受信して、耐火煉瓦の厚みを測定する方法が開示されている。また特許文献2においては、超音波振動子を内蔵した端子を被測定物の表面に接触させ、超音波の反射時間を測定して被測定物の厚みを測定することが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−294918号公報
【特許文献2】特開2005−354281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら最外側の壁面の表面から内側の耐火煉瓦に向けて弾性波を送信する方法では、前記したスタンプ材の存在によって弾性波が吸収、散乱されて測定精度が影響を受ける場合があり、さらなる改良が望まれるところである。また超音波振動子を内蔵した端子を被測定物に接触させる方法は、振動子と被測定物との間に台座が介在しているため、振動子からの超音波を確実に、かつ測定に必要なレベルの出力で被測定物に伝わらせる必要上、導電性の台座を被測定物に接触させた状態で、端子全体を被測定物に強く押し付けなければならず、そのような押し付けのための装置が別途必要となっていた。またそのような装置を測定箇所近傍に設置する必要があり、その装置の設置には例えば直径約1500mmもの大きな占有領域が必要となっていた。そのため、測定場所によってはステーブ等の冷却構造の存在によって測定箇所に制約を受けたり、高炉炉底部におけるスペース的に余裕がない箇所では、測定できない場合があった。それゆえかかる点でさらなる改善が望まれている。
【0006】
本発明はそのような点に鑑みてなされたものであり、耐火物の厚みを測定するにあたって、測定箇所の選択の自由度を向上させ、しかも精度よく耐火煉瓦等の耐火物の厚みを測定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、耐火物の厚みを超音波によって測定するための端子であって、一端面が露出するように前記耐火物に埋設された筒状の本体と、前記本体内に配置された付勢部材と、前記本体内に配置され、測定用端面が前記耐火物の表面に密着するように配置された圧電部と、前記本体の一端面側に配置され、前記付勢部材を前記圧電部側に押圧した状態で前記本体に固定自在な固定部材と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、本体はその端面が露出するように耐火物に埋設され、圧電部の測定用端面は耐火物の表面に密着しているので、例えば圧電部を超音波発信用の耐火物の厚み測定用端子として使用した場合、圧電部からの超音波は、従来のように途中で他の物質を経由することはなく、直接測定対象である耐火物へ伝えることができる。これによって、精度よく耐火物の厚みを測定することができる。また、付勢部材は圧電部側に押圧した状態で固定部材によって本体に固定され、このとき圧電部は付勢部材によって耐火物側に付勢されるから、端子全体を耐火物に対して強く押し付ける必要はない。これによって、従来必要とされていた押し付けのための装置が不要となり、端子の占有領域を小さくできるので、任意の箇所での測定が可能であり、測定箇所の選択の自由度を向上させることができる。
【0009】
前記固定部材の外周面には、ネジ山が形成され、前記本体の内周面上部には、前記ネジ山に適合するネジ溝が形成され、これらネジ山とネジ溝との螺合によって、前記固定部材は前記本体に対して固定自在であってもよい。
【0010】
前記本体の外周面には、ネジ山が形成され、前記本体は、前記耐火物に予め形成された穴のネジ溝に螺合することで、前記耐火物内に埋設されていてもよい。
【0011】
前記固定部材を貫通して前記圧電部にケーブルを接続した際に当該ケーブルを保護する保護部材が、前記固定部材に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐火物の厚みを測定するにあたって、圧電部の測定用端面を耐火物の表面に密着させて、圧電部からの超音波を直接耐火物へ伝えることができ、測定精度を高くすることができる。また、従来のような端子全体を耐火物側に押し付ける事が不要であり、そのための装置も必要ない。したがって任意の箇所での測定が可能であり、測定箇所の選択の自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、 本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は本実施の形態にかかる測定用端子1の断面を示しており、本実施の形態では耐火物としてのカーボンブロックCで構成された高炉の耐火煉瓦の厚みを測定する端子として構成されている。
【0014】
測定用端子1は、例えばステンレス鋼からなる筒状の本体2を有している。本体2は、例えばその上面が露出するようにカーボンブロックCに埋設されている。本体2の外周面にはネジ山2aが形成されている。ネジ山2aはカーボンブロックCに螺合し、本体2はカーボンブロックCに固定されている。本体2の上下両端は開口しており、下端部の開口部周縁には、内側に環状に突出した保持段部3が形成されている。保持段部3上には、中空の筒状のガイド4が設けられている。なお、ネジ山2aのピッチと高さの比(アスペクト比)は、例えば1:1が好ましく、ネジ山2aのピッチは、例えばカーボンブロックCの粗骨材の平均粒径約0.5mmの2倍である約1mmであるのが好ましい。また、ネジ山2aとカーボンブロックCとの微小な隙間には、接着剤を充填してもよい。これによって、本体2をカーボンブロックC内に、より強固に固定させることができる。この場合の接着剤の材料には、例えばカーボンブロックCと同じ材料を主成とし、これにフェノール系樹脂をバインダとして混合したものが適している。
【0015】
前記本体2内には、まず最も下端側に圧電部5が挿入、配置されている。この圧電部5は、略円柱形上の圧電素子6と、圧電素子6の下端面に密着して設けられた軟金属からなる接合材7とを有している。したがって、接合材7は、圧電素子6の下端面とカーボンブロックCとの間に位置することになる。また接合材7の下面、すなわち測定用端面7aは、図2に示すように、本体2の下端面からわずかに突出している。突出長Dは、1mm以下が好ましい。このように接合材7の測定用端面7aを突出させるのは、後述のように測定対象物に密着させる際に、測定用端面7a全面を、測定対象物の表面に確実に密着させるためである。なお、接合材7に使用する軟金属としては、たとえば銅、インジウムが挙げられる。また圧電素子6の材料には、耐熱性に優れたニオブ酸リチウムが使用されている。
【0016】
圧電素子6の上端面には、図1に示すように、円盤状の電極8が配置されている。この場合、電極8の下端面と圧電素子6の上端面との間に、前記接合材7と同様な材料からなる接合材9を介在させてもよい。
【0017】
電極8の上端面には、中心に孔10aが形成された絶縁ワッシャ10が配置されている。絶縁ワッシャ10の上面には、圧電素子6及び接合材7をカーボンブロックC側に付勢する付勢部材としてのバネ11が設けられている。より詳述すると、バネ11の下端は、絶縁ワッシャ10に当接し、このバネ11はバネ押え部材12の周囲に設けられている。このバネ押え部材12は、バネ11の上方に設けられ、中心に貫通孔12aが形成されたフランジ状の押え板12bと、押え板12bの中心から下方に延伸する管部12cとを有している。そして管部12cの外周にバネ11が設けられ、バネ11の中心位置が保持されている。
【0018】
本体2の上端開口部には、中心に孔13aが形成された固定部材13が設けられている。この固定部材13の外周面にはネジ山13bが形成され、本体2の内周面上部に形成されたネジ溝2bと螺合する。この固定部材13を本体2に螺合させていくと、バネ押え部材12の押え板12bの上端位置が下降していく。このとき、本体2内の下端に配置されている接合材7はカーボンブロックCの表面と接しているので、絶縁ワッシャ10と押え板12bとの間のバネ11を押圧して圧縮させることができる。そのときのバネ11による付勢圧力は固定部材13の締め付け度によって調整できるが、少なくともカーボンブロックCの破断強度より小さく、例えば7.35MPa以下とすることが適当である。
【0019】
固定部材13の孔13aには、後述するケーブル20の引き出し部を保護する保護部材14が設けられている。保護部材14はその中心に孔14aを有し、その外周面にはネジ山14bが形成されている。このネジ山14bは固定部材13の内周面上部に形成されたネジ溝13cに螺合し、保護部材14は固定部材13に固定されている。
【0020】
本実施の形態に測定用端子1は、以上の構成を有しており、例えばこの測定用端子1を超音波発信用の端子として使用する場合には、図1に示したように、電極8に接続されたケーブル20を貫通孔12aから引き出して、このケーブル20を介して、例えばパルス電源21によって、超音波発信用のパルス電圧を印加すればよい。
【0021】
次に、この測定用端子1をカーボンブロックC内に設置し、当該カーボンブロックCの厚みを測定する方法について説明する。まず、図3に示すように、カーボンブロックC内に、本体2の径と同一の径、又は本体2の径より僅かに小さい径を有する穴Hを形成する。この穴Hの深さは、本体2を穴Hに固定した際に本体2の上面が露出する深さとなっている。穴Hを形成する際、穴Hの内周にネジ溝30を形成する。
【0022】
カーボンブロックCに穴Hを形成した後、図4に示すように、この穴H内に、ガイド4が設置された本体2をネジ込んでいく。このとき、本体2を回してカーボンブロックCの穴Hに対して螺合させる。そうすると、本体2が穴Hに固定される。なお、本体2を穴Hに挿入する際に、本体2の外周面に接着剤を付着させておき、本体2の外周面とカーボンブロックCの表面との間を接着剤で固定してもよい。
【0023】
本体2がカーボンブロックCの穴Hに固定されると、予め接合材7、圧電素子6、接合材9、電極8、絶縁ワッシャ10、バネ11及びバネ押え部材12を下から順に組み立てたものを、図5に示すように、ガイド4に沿って本体2内に挿入する。このとき、接合材7の測定用端面7aが本体の下端開口部から露出するように挿入される。
【0024】
その後、例えばアムスラー等によってバネ押え部材12に所定の外力を加えてバネ11を圧縮させた状態で、図6に示すように、固定部材13を回してネジ山13bを本体2のネジ溝2bに螺合させながら挿入する。そして、固定部材13によってバネ押え部材12の上端位置が固定されると、バネ押え部材12に加えていた外力を除去する。そうすると、圧電素子6及び接合材7をカーボンブロックC側に付勢させることができ、接合材7の測定用端面7aをカーボンブロックCの表面に密着させることができる。なお、バネ押え部材12にかかる外力を除去した後に、固定部材13を回してバネ押え部材12の上端位置を調整し、その付勢圧力を調整してもよい。
【0025】
以上のように接合材7の測定用下端面7aがカーボンブロックCの表面と密着するように、測定用端子1をカーボンブロックC内に複数設置する。そしてカーボンブロックCの厚みを測定する際には、例えば一の測定用端子1を超音波発信用として用い、他の測定用端子1を反射波の受信用として使用する。具体的には、例えば一の測定用端子1の圧電素子6に測定用の電圧、例えばバルス電圧を印加することで、圧電素子6から超音波が発信され、接合材7を介してそのままカーボンブロックC内に伝播する。そしてカーボンブロックCの炉壁内周面で反射した反射波を、他の受信用の測定用端子1で受信する。そうすると、反射時間と超音波の伝播速度から、カーボンブロックCの厚みを測定することができる。
【0026】
以上の実施の形態によれば、カーボンブロックCの厚みを測定するにあたり、圧電素子6の下端面に接して設けられた接合材7の測定用端面7aはカーボンブロックCの表面に密着しているので、圧電素子6からの超音波は、従来のように途中で他の物質を経由することはなく、直接カーボンブロックCへ伝えることができ、超音波の十分な発信レベル、受信レベルを確保できる。これによって、精度よくカーボンブロックCの厚みを測定することができる。
【0027】
また、バネ11は圧縮された状態で固定部材13によって本体2に固定され、そしてバネ11によって圧電素子6及び接合材7をカーボンブロックC側に付勢させることができるので、測定用端子1全体をカーボンブロックCに対して強く押し付ける必要はない。これによって、従来必要とされていた押し付けのための装置が不要となり、その結果、測定用端子1の占有領域が例えば直径約250mm程度で済むので、任意の箇所での測定が可能であり、測定箇所の選択の自由度を向上させることができる。
【0028】
なお、以上の実施の形態では、固定部材13を本体2内に挿入する際に、バネ押え部材12に所定の外力を加えてバネ11を圧縮させた状態で、固定部材13を本体2に螺合させながら挿入していたが、この外力を加えずに、固定部材13を回して本体2に螺合させていくことで、バネ押え部材12の上端位置を固定しバネ11を圧縮してもよい。かかる場合でも、圧電素子6及び接合材7をカーボンブロックC側に付勢させることができ、接合材7の測定用端面7aをカーボンブロックCの表面に密着させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、例えば高炉の炉底部、熱風炉、転炉、真空脱ガス設備における耐火物の厚みを測定する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態にかかる測定用端子の側面断面図である。
【図2】図1の測定用端子の下端部分の拡大図である。
【図3】図1の測定用端子をカーボンブロックに設置する際に、カーボンブロックに測定用端子を埋設するための穴を形成した様子を示す説明図である。
【図4】図1の測定用端子をカーボンブロックに設置する際に、カーボンブロックに本体を固定した様子を示す説明図である。
【図5】図1の測定用端子をカーボンブロックに設置する際に、本体内に圧電素子等を挿入した様子を示す説明図である。
【図6】図1の測定用端子をカーボンブロックに設置する際に、本体内の圧電素子等を固定した様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 測定用端子
2 本体
2a ネジ山
2b ネジ溝
3 保持段部
4 ガイド
5 圧電部
6 圧電素子
7 接合材
7a 測定用端面
8 電極
9 接合材
10 絶縁ワッシャ
10a 孔
11 バネ
12 バネ押さえ部材
12a 貫通孔
12b 押え板
12c 管部
13 固定部材
13a 孔
13b ネジ山
13c ネジ溝
14 保護部材
14a 孔
14b ネジ山
20 ケーブル
21 パルス電源
30 ネジ溝
C カーボンブロック
H 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火物の厚みを超音波によって測定するための端子であって、
一端面が露出するように前記耐火物に埋設された筒状の本体と、
前記本体内に配置された付勢部材と、
前記本体内に配置され、測定用端面が前記耐火物の表面に密着するように配置された圧電部と、
前記本体の一端面側に配置され、前記付勢部材を前記圧電部側に押圧した状態で前記本体に固定自在な固定部材と、を有することを特徴とする、耐火物の厚み測定用端子。
【請求項2】
前記固定部材の外周面には、ネジ山が形成され、
前記本体の内周面上部には、前記ネジ山に適合するネジ溝が形成され、
これらネジ山とネジ溝との螺合によって、前記固定部材は前記本体に対して固定自在であることを特徴とする、請求項1に記載の耐火物の厚み測定用端子。
【請求項3】
前記本体の外周面には、ネジ山が形成され、
前記本体は、前記耐火物に予め形成された穴のネジ溝に螺合することで、前記耐火物内に埋設されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐火物の厚み測定用端子。
【請求項4】
前記固定部材を貫通して前記圧電部にケーブルを接続した際に当該ケーブルを保護する保護部材が、前記固定部材に設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の耐火物の厚み測定用端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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