説明

耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物及び、これを利用した絶縁材料と電線

本発明による樹脂組成物は、エチレン共重合体とエチレンプロピレンゴムのベース樹脂100重量部に対して、難燃剤が10重量部乃至120重量部;無機添加剤が5重量部乃至50重量部;及び所定の架橋調剤を含むことを特徴とする。本発明は、低結晶性のエチレン共重合体及びエチレンプロピレンゴムなどのような一定量の電子ビームに露出されても高い架橋密度を得ることができる架橋効率が高い高分子樹脂を使った樹脂組成物を発明し、架橋後の伸張率低下のような機械的特性の変化及び熱的特性の変化を取り除いた。また、高圧の電線に対する非常に重要な高温耐熱変形特性と耐カットスルー特性を満足する適切な架橋構造を有する樹脂組成物及び、これを利用した絶縁材料と電線を供給することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温での耐熱変形特性と耐カットスルー特性に優れた樹脂組成物及びこれを利用した絶縁材料と電線に関するものである。
本発明における「カットスルー」とは、電線の絶縁材料に鋭いエッジを有した金属片が接触する時、絶縁材料の損傷を言う。カットスルー測定方法は、本明細書の図1から参照可能である。本発明における「耐カットスルー」は、このような絶縁材料の損傷を意味するカットスルーを抑制するとか、防止する性質を意味する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の絶縁材料で使われる樹脂組成物として、ハロゲン元素である塩素を含有した極性樹脂などがよく使用されていた。極性樹脂には塩素化ポリエチレン、ポリビニールクロリドなどが使われる。また、エチレンビニールアクリレートにビニールクロリドが結合された樹脂と塩素化ポリエチレンとを混用して使用する場合もある。
【0003】
従来技術では、エチレンビニールアセテート共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体のようなエチレン共重合体の含量を適切に調節し、ポリエチレンと混用することにより電気的特性、耐熱性、耐熱変形特性などを向上させようとした。
【0004】
上記のような樹脂組成物を使うことにより、電線の絶縁材料で主に要求される難燃性を一定程度満足させることができる。器機用電線の難燃性は、完成品に対してUL規格による水平と垂直燃焼試験に対する評価が普遍的に要求される。ハロゲンを含有した樹脂などは、燃焼時、不燃の重いハロゲンガスを発生させ、添加剤と反応することにより固形化された灰を形成させることによって、材料の燃焼を抑制するものであると知られている。
【0005】
難燃性を測定することにおいては、上記のようなUL(UnderWriter‘s Labortary)規格での水平燃焼、垂直燃焼、板型試験方法に限定されず、この以外にも酸素指数方法とFMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard)302方法などとも可能である。
【0006】
このようにハロゲンを含有した樹脂組成物などは、基本的に難燃性を保有しているため、難燃性を向上させるための有機難燃剤又は無機難燃剤を少量添加することになり、この結果、樹脂の根本物性が維持されるので、絶縁材料は優れた機械的特性及び電気的特性を表す。有機難燃剤又は無機難燃剤を少量添加することは、絶縁材料の粘度上昇を誘発させないので、圧出加工性にも優れる。
【0007】
従来使用された多様な極性樹脂などは、単独に使われる場合、要求特性が満足できないが、ハロゲンを含有した極性樹脂などは、物理的及び化学的に相互親和性を有する。従って、異種の互いに異なる特性を有する極性樹脂などを混用することにより、それぞれの樹脂などが有する優れた固有特性などが発揮されるとか、相互上昇作用効果を発揮する絶縁材料を開発しようとする試みが続いている。
【0008】
従来技術では、塩素化ポリエチレン、ポリビニールクロリド、エチレンビニールアセテートにビニールクロリドなどのようなハロゲンを含有した極性樹脂組成物などをベース樹脂で使用した。このような樹脂組成物又はこのような樹脂組成物を利用した絶縁材料及び、これら絶縁材料などが被服された電線が高温で一定荷重によって変形されることを防ぎ、カットスルーを防止するために電子ビームで架橋する。
【0009】
しかし、このように電子ビームで樹脂組成物を架橋する過程において、ベース樹脂として使う樹脂組成物に含まれているハロゲン元素が分解される。このように架橋工程中で分解された絶縁材料は耐熱特性が顕著に低下され、むしろ耐熱変形及び耐カットスルー特性を満足できない場合が発生する。
【0010】
樹脂組成物は熱変形に対する特性を満足するために高い架橋密度を確保しなければならず、このために過量の電子ビームに樹脂組成物が露出されることになる。上記のような溶融温度が一定温度以上の結晶性樹脂などは、過量の電子ビームに露出される場合、伸張率のような機械的特性が急激に低下され、電子ビームに露出される過程で高分子樹脂の分解が促進され、材料の耐熱変形が顕著に低下され特定温度で長時間露出された場合、低い伸張率を表す。絶縁材料などに要求される一般的な機械的特性を考慮する場合、結晶性樹脂などに過量の有機添加剤又は無機添加剤を添加することはできない。この結果、絶縁材料は低い難燃性を表し、完成品も望む分の難燃性が満足できない。
【0011】
普通、エチレン共重合体の共重合体含量が適切に調節され、ポリエチレンと混用された樹脂組成物などは根本的に高い溶融温度を有する。ポリマーのうち、結晶性ポリマーは、結晶率が高ければ高いほど分子などが規則的に配列され、結晶率が低いポリマーより溶融温度が高い。ポリマーの結晶性程度と結晶性を有するポリマーの溶融温度に対する具体的な資料は公知された技術として、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5などの書籍を参考して分かる。
【0012】
【非特許文献1】ピー.ジェイ.フロリー(P.J.Flory)著、「プリンシプル オブ ポリマーケミストリー」Principles of Polymer Chemistry 、1953年版
【非特許文献2】エフ.ダブリュー.ビルマイヤー(F.W.Billmeyer)著、「高分子科学教科書(Textbook of Polymer Science 4版
【非特許文献3】ジェイ.エフ シャラックフォールド(J.F Sharckefold)著、「イントラダクション トゥー マテリアル サイエンス アンド エンジニアリング(Introduction to materials science and engineering)」、マクミリアン出版会社(Macmillan Publishing Company)1998版
【非特許文献4】ジェイ.ディー.フェリー(J.D.Ferry)著、「ヴィスコエラステッィック プロパティ オブ ポリマー(Viscoelastic Properties of Polymers)」
【非特許文献5】ピー.シー.イーマンズ(P.C.Hiemenz)著、「ポリマー ケミストリ−ザ ベーシック コンセプト(Polymer Chemistry−The Basic Concepts)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように樹脂などは電子ビームによる架橋効率が非常に低いだけでなく、器機用電線に使われる樹脂組成物の耐熱変形及び耐カッティング性評価は、100℃以上の高温で行われるが、結晶性樹脂組成物の溶融温度がこの温度付近である。
【0014】
そして、樹脂組成物内のハロゲン元素が分解されることによって絶縁材料の難燃性が不安定になり、材料と完成品上の電線で難燃特性の差を表す。ハロゲンを含有した樹脂組成物を適用した絶縁材料などは、架橋条件によって特性などがよく変わるので、架橋条件を確立することに難しさを表す。
【0015】
本発明は、上記のような問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、低結晶性のエチレン共重合体及びエチレンプロピレンゴムなどのような一定量の電子ビームに露出されても高い架橋密度を得ることができる架橋効率が高い高分子樹脂を使用した樹脂組成物を提供するものである。これにより、架橋後の伸張率の低下のような機械的特性の変化及び熱的特性の変化を除去又は減少させた。また、高圧の電線に対する非常に重要な高温耐熱変形特性と耐カットスルー特性とを満足する適切な架橋構造を有する絶縁材料を供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記のような本発明の目的を果たすために、本発明による樹脂組成物は、エチレン共重合体とエチレンプロピレンゴムのベース樹脂100重量部に対して難燃剤が10重量部乃至120重量部;無機添加剤が5重量部乃至50重量部;及び所定の架橋調剤を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明による樹脂組成物における低結晶性のエチレン共重合体は、エチレンビニールアセテート、エチレンエチルアクリレート、エチレンブチルアクリレート、エチレンブテン共重合体、エチレンオクテン共重合体のうち、少なくとも1つとして上記ベース樹脂全体含量100重量部に対して20重量部乃至80重量部であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、本発明による樹脂組成物におけるエチレン共重合体は極性基が導入された変性エチレン共重合体を含有しており、上記変性エチレン共重合体は無水マレイン酸を含有するエチレンビニールアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンブチル共重合体のうち、少なくとも1つであり、上記ベース樹脂全体含量100重量部に対して1重量部乃至20重量部であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、本発明による樹脂組成物における上記エチレンプロピレンゴムは、エチレンプロピレン2元共重合体、エチレンプロピレンジエンの3元の共重合体のうち、少なくとも1つであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、本発明による樹脂組成物における上記難燃剤は、ブロム又は塩素などのハロゲンや窒素又は燐のうち、少なくとも1つである有機難燃剤を5重量部乃至60重量部さらに含むとか、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムカボネート、硼酸又は亜鉛のうち、少なくとも1つの無機難燃剤を5重量部乃至60重量部さらに含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明では、本発明による樹脂組成物における上記無機添加剤はタルク又はクレーのうち、少なくとも1つであり、上記無機添加剤は脂肪酸又はシランなどで表面処理されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の他の目的など、明らかなメリットなど及び新規な特徴などは、以下の詳細な説明及び添付された図面などによる望ましい実施例などからさらに明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下では本発明の構成に対して添付された図面を参照し、以下で詳しく説明する。本発明は、化学架橋及び水架橋、照射架橋が可能な高温での低熱変形特性と耐カットスルー特性に優れた樹脂組成物及び、これを利用した絶縁材料と電線である。絶縁材料の構成物のうち、本発明のベース樹脂を作るためにエチレン共重合体とエチレンプロピレンゴムとを使用する。
【0024】
エチレン共重合体としては、エチレンビニールアセテート(EVA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)、エチレンブテン共重合体、エチレンオクテン共重合体などのうち、少なくとも1つを使用する。
【0025】
本発明で絶縁材料の機械的及び熱的特性の向上のために、ベース樹脂は極性基が導入された変性エチレン共重合体を含むことができる。上記の変性エチレン共重合体には無水マレイン酸を含有するエチレンビニールアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンブテン共重合体などのうち、少なくとも1つを使用する。
【0026】
本発明で絶縁材料の難燃性のための難燃剤は、有機難燃剤と無機難燃剤とがある。有機難燃剤は、ブロム又は塩素などハロゲンや窒素又は燐を含有する。無機難燃剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムカボネート、亜鉛又は硼酸などを使用する。このような無機難燃剤は、脂肪酸又はシランなどで表面処理されている。
【0027】
本発明の絶縁材料は、補強剤としてタルクとクレーなどとの無機添加剤を使用した。無機添加剤などは、脂肪酸又はシランなどで表面処理されている。絶縁材料は、熱的特性及び電線で要求される機械的特性を満足させるために、化学架橋又は水架橋、照射架橋が可能である。化学架橋のために架橋剤として有機過酸化物を使用し、架橋密度を高めるために架橋調剤としてトリメチロールプロパン、トリメタクリルレート(trimethacrylate)、トリアリルイソシアヌレート、有機過酸化物などのうち、少なくとも1つを使用する。水架橋のためにシラン、錫、白金などを添加し、照射架橋のために架橋調剤としてトリメチロールプロパン、トリメタクリルレート、トリアリルイソシアヌレートなどのうち、少なくとも1つを使用する。
【0028】
本発明は、化学架橋及び水架橋、照射架橋が可能な高温での低熱変形特性と耐カットスルー特性に優れた高圧器機用電線の絶縁材料である。
【0029】
絶縁材料の構成物のうち、ベース樹脂としてエチレン共重合体とエチレンプロピレンゴムを使用し、選択的に変性エチレン共重合体を共に使用することができる。
【0030】
エチレンプロピレンゴムとしては、エチレン含量が40重量部乃至85重量部であるエチレンプロピレン2元共重合体又はエチレンプロピレンジエンの3元共重合体などを使用する。
【0031】
エチレン共重合体としては、エチレンビニールアセテート、エチレンエチルアクリレート、エチレンブチルアクリレート、エチレンブテン共重合体、エチレンオクテン共重合体などをベース樹脂全体含量100重量部に対して20重量部乃至80重量部エチレンプロピレンゴムなどと混用してベース樹脂で使用した。使用量が20重量部未満では、引張強度と熱的特性とが低下され、80重量部超過では、高温での熱変形特性が顕著に低下され、電線でのカットスルー特性を満足できなかった。
【0032】
本発明において、絶縁材料の機械的及び熱的特性の向上のために使用される変性エチレン共重合体としては、無水マレイン酸を含有するエチレンビニールアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンブテン共重合体などがあり、ベース樹脂100重量部に対して1重量部乃至20重量部を使用する。1重量部未満では、引張強度と耐熱特性に対する変性樹脂の効果を期待することができず、20重量部超過では、伸張率が急激に低下され、粘度が上昇して圧出加工性が不良であった。
【0033】
本発明においては、絶縁材料の難燃性のために、ブロム又は塩素などのハロゲンを含有した有機難燃剤と窒素及び燐を含有した有機難燃剤とを5重量部乃至60重量部を使用する。5重量部未満では、難燃性を期待することができず、60重量部超過では、引張強度、伸張率、そして耐熱特性が低下された。
【0034】
有機難燃剤と混用して水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムカボネート、硼酸又は亜鉛などのような無機難燃剤を10重量部乃至60重量部を使用する。10重量部未満では、難燃性を確保することができず、60重量部超過では、引張強度と伸張率、耐熱特性及び圧出加工性が急激に低下された。
【0035】
本発明の絶縁材料は、補強剤としてタルクとクレーなどの無機添加剤を5重量部乃至50重量部使用した。5重量部未満では、引張強度の向上効果を得ることができず、50重量部を超過する場合、伸張率と圧出加工性が顕著に低下された。
【0036】
本発明の樹脂組成物は水架橋、照射架橋又は化学架橋を介して架橋することができる。化学架橋のために、化学架橋調剤として有機過酸化物、トリメチロールプロパン、トリメタクリルレート、トリアリルイソシアヌレート、ポリブタジエンのうち、少なくとも1つを1重量部乃至15重量部使用した。1重量部未満では、架橋度が低くて引張強度と耐熱特性とが低く、15重量部以上では、伸張率が低下された。照射架橋のために照射架橋調剤としてトリメチロールプロパン、トリメタクリルレート、トリアリルイソシアヌレート、ポリブタジエンなどのうち、少なくとも1つを1重量部乃至5重量部使用した。1重量部未満では、引張強度と耐熱特性が向上された材料を得ることができず、5重量部を超過して使う場合、伸張率が低下された。水架橋のために水架橋調剤として、シラン、錫又は白金触媒を使った。上記の化学架橋では架橋剤として有機過酸化物を使った。
【0037】
また、本発明による樹脂組成物には、上記の成分外にも高圧器機用電線の絶縁材料に通常的に含まれる酸化防止剤とタルクなどの添加物とを一定含量含むことができることは勿論である。
【0038】
本発明による樹脂組成物は、架橋を介して本発明が望む耐熱変形及び耐カットスルー特性を得ることができる。
【実施例】
【0039】
高圧器機用電線の絶縁材料として高温での耐熱変形特性と耐カットスルー特性に優れた照射架橋、化学架橋及び水架橋が可能な難燃材料を発明するための望ましい実施例は下記のようである。
【0040】
実施例1乃至実施例4は、エチレン共重合体のうち、エチレンビニールアセテートのみを含んでおり、実施例1と実施例6とは変性エチレン共重合体を含まず、エチレンプロピレンゴムとエチレン共重合体だけでベース樹脂がなっている。無機添加剤としてはタルク、有機難燃剤としてはブロム系難燃剤、無機難燃剤としては水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウム、照射架橋調剤としてはトリメチロールプロパン トリメタクリルレート、化学照射架橋としては有機過酸化物を使用した。
【0041】
また、本発明の望ましい実施例では、高圧器機用電線の絶縁材料に通常的に含まれる酸化防止剤とタルクとを一定含量使用した。
下記の表1は、本発明による望ましい実施例の樹脂組成物の成分である。
【0042】
【表1】

【0043】
従来技術による比較例1乃至比較例5では電線の絶縁材料であって、溶融温度が高く、結晶性を有し、硬質である高密度ポリエチレン又は線形低密度のポリエチレン、エチレンビニールアセテート、ポリビニールクロリド、クロリネーティードポリエチレン(chlorinated polyethylene)を全量又は一部使用した。難燃性などを考慮し、ポリビニールクロリドと塩素が導入されたエチレンビニールアセテート、クロリネーティードポリエチレンなどが高温耐熱変形特性及び耐カットスルー特性を満足するための難燃材料として使用される場合もあった。比較例4と比較例5とではポリビニールクロリドとクロリネーティードポリエチレンを介してハロゲン元素を利用した。
下記の表2に従来技術に適用された技術などに対する比較例の材料の構成を整理した。
【0044】
【表2】

【0045】
本発明が有する優れた特性を満足する材料などに対する実施例と比較例とに対する特性比較結果は下記のようである。本発明の実施例では、エチレンプロピレンゴムとエチレン共重合体にブロム系難燃制、水酸化アルミニウムとタルクなどを充填させることにより、高温での加熱変形率は実施例が比較例より顕著に低く表し、耐カットスルー特性においても比較例ではいずれも不満足であるが、実施例ではいずれも満足の結果が表した。
下記の表3は、実施例と比較例の性質比較表である。
【0046】
【表3】

【0047】
引張強度と伸張率とはASTM(American Society forTesting and Materials)D638に準して試した。加熱変形率は105℃で一定規格の試片に刃形態の治具を位置させ、450gの荷重を加えながら評価し、試験前後の厚さ変化率である。カットスルー試験は下記の絵のように電線完成品に対して評価した結果である。カットスルー試験は、図1で見るように、金属支持チャンネル2を介して突出された金属マンドリル1に、本発明による電線完成品をかけ、高電圧連結部3を介して高電圧をかけてカットスルー性能を測定する。
【0048】
以上、本発明の望ましい実施例及び比較例を説明することにより、本発明をさらに詳細に説明した。しかし、本発明の権利範囲は上記の実施例に限定されることではなく、添付された特許請求の範囲内で、多様な形態の実施例として具現されることができる。特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱しなく、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、誰でも可能な多様な変形可能な範囲まで本発明の請求範囲の記載の範囲内にあることと見る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による樹脂組成物は、エチレン共重合体とエチレンプロピレンゴムの複合樹脂をベース樹脂とし、一定量の難燃剤、無機添加剤、架橋調剤を含むものであって、このような本発明による樹脂組成物及びこれを利用した絶縁材料と電線は、樹脂組成物を架橋させるために一定量の電子ビームを露出させても高い架橋密度を得ることができ、このような高い架橋効率を有する樹脂組成物は、架橋後の伸張率の低下、機械的特性の変化、熱的特性の変化を除去又は減少させる。また、本発明による樹脂組成物を利用した電線は、高圧がかかっても高圧用電線において非常に重要な耐熱変形特性と耐カットスルー特性を満足できる。
【0050】
たとえ発明が上記で言及された望ましい実施例に関して説明されたが、発明の要旨と範囲を逸脱しなく、様々な他の可能な修正と変形ができる。従って、添付された請求の範囲は、発明の真正な範囲内で属するこのような修正と変形を含むものであると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による電線完成品のカットスルー抵抗を測定することを示す概略図である。
【符号の説明】
【0052】
1…金属マンドリル
2…金属支持チャンネル
3…高電圧連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン共重合体とエチレンプロピレンゴムとを含むベース樹脂100重量部に対して、
難燃剤が10重量部乃至120重量部;
無機添加剤が5重量部乃至50重量部;及び
架橋調剤を含むことを特徴とする耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン共重合体は、エチレンビニールアセテート、エチレンエチルアクリレート、エチレンブチルアクリレート、エチレンブテン共重合体、エチレンオクテン共重合体のうち、少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン共重合体は、前記ベース樹脂100重量部に対して20重量部乃至80重量部であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項4】
前記ベース樹脂は、極性基が導入された変性エチレン共重合体をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項5】
前記変性エチレン共重合体は、無水マレイン酸を含有するエチレンビニールアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンブチル共重合体のうち、少なくとも1つであることを特徴とする請求項4に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項6】
前記変性エチレン共重合体は、前記ベース樹脂100重量部に対して1重量部乃至20重量部であることを特徴とする請求項4に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項7】
前記エチレンプロピレンゴムは、エチレンプロピレン2元共重合体、エチレンプロピレンジエンの3元の共重合体のうち、少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項8】
前記難燃剤は、5重量部乃至60重量部の有機難燃剤であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項9】
前記有機難燃剤は、ブロム又は塩素などのハロゲンや窒素又は燐のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項8に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項10】
前記難燃剤は5重量部乃至60重量部の無機難燃剤であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機難燃剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムカボネート、硼酸又は亜鉛のうち、少なくとも1つであることを特徴とする請求項10に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項12】
前記無機添加剤は、タルク又はクレーのうち、少なくとも1つであり、前記無機添加剤は、脂肪酸又はシランなどで表面処理されていることを特徴とする請求項1に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項13】
前記架橋調剤は、トリメチロールプロパン、トリメタクリルレート、トリアリルイソシアヌレート、ポリブタジエンのうち、少なくとも1つの照射架橋調剤を利用し、前記樹脂組成物を照射架橋させることを特徴とする請求項1に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項14】
前記照射架橋調剤は、1重量部乃至5重量部であることを特徴とする請求項13に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項15】
前記架橋調剤は、有機過酸化物、トリメチロールプロパン、トリメタクリルレート、トリアリルイソシアヌレート、ポリブタジエンのうち、少なくとも1つの化学架橋調剤を利用し、前記樹脂組成物を化学架橋させることを特徴とする請求項1に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項16】
前記化学架橋調剤は、1重量部乃至15重量部であることを特徴とする請求項15に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項17】
前記架橋調剤は、シラン、錫又は白金のうち、少なくとも1つの水架橋調剤を利用して前記樹脂組成物を水架橋させることを特徴とする請求項1に記載の耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のうち、いずれか1つによる樹脂組成物からなることを特徴とする絶縁材料。
【請求項19】
請求項1乃至請求項17のうち、いずれか1つによる樹脂組成物からなった絶縁材料で作られることを特徴とする電線。

【図1】
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【公表番号】特表2008−501846(P2008−501846A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526963(P2007−526963)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001429
【国際公開番号】WO2005/123828
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(505032311)エルジー ケーブル リミテッド (4)
【Fターム(参考)】