説明

耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤

【課題】II型糖尿病で見られる耐糖能低下に対する改善作用および血中トリグリセリド低下作用を有し、耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤として有効な医薬を提供すること。
【解決手段】1−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸などのキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する化合物は、II型糖尿病で見られる耐糖能低下に対する改善作用および血中トリグリセリド低下作用を有し、耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤となりうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
II型糖尿病は、高脂肪食や肥満により誘起され、耐糖能の低下、高トリグリセリド血症を呈する病態である。近年、高脂血症、高血圧、耐糖能異常、肥満などの多くの生活習慣病といわれる病態と痛風・高尿酸血症が高率に合併することが知られており、痛風・高尿酸血症が心・血管障害の危険因子であるか否かが注目されている(非特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、インスリン抵抗性を基盤とするII型糖尿病、高脂血症、高血圧症、内臓脂肪型肥満、脂肪肝や非アルコール性脂肪性肝炎を含む非アルコール性脂肪性肝疾患などの一連の病態群を合併した状態を示すメタボリックシンドロームが問題視されており、これらは、シンドロームX、インスリン抵抗性症候群、内臓脂肪症候群、マルチプルリスクファクター症候群などの称呼でも知られている。
【0004】
一方、痛風や高尿酸血症の治療薬としてキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有するアロプリノール(allopurinol)が古くから使用されている。また、キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する化合物として、2−フェニルチアゾール誘導体(特許文献1参照)、1−フェニルピラゾール化合物(特許文献2参照)、3−フェニルピラゾール化合物(特許文献3参照)、3−ピリジル−5−フェニルトリアゾール化合物(特許文献4参照)などが報告されている。
【0005】
活性酸素は、炎症、虚血−再灌流障害、発癌や老化など、いわゆる酸化ストレス疾患の病因となることが示唆されている(非特許文献2参照)。一方、キサンチンオキシダーゼ(Xanthine oxidase (XO))は、プリン代謝において尿酸合成に関わる酵素であるとともに、スーパーオキシドアニオン産生にも関わることから、生体内における活性酸素の発生源として考えられてきた(非特許文献3参照)。XO阻害剤としてアロプリノールが知られており、従来より上記疾病の予防に対してアロプリノールが有効であるとの報告がある(非特許文献4参照)。しかし、アロプリノールは、それ自身がラジカル除去(スカベンジ)作用を示す(非特許文献5参照)。したがって、XOの酸化ストレス疾患への関与について詳細に検討することは困難であった。
【0006】
最近、アロプリノールよりもはるかに強力で且つラジカルスカベンジ作用を示さないXO阻害剤として、1−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸等が報告され、現在、痛風および高尿酸血症治療薬として開発中である。
【0007】
【特許文献1】WO92/09279号公報
【特許文献2】WO98/18765号公報
【特許文献3】特開平10−310578号公報
【特許文献4】WO03/064410号公報
【非特許文献1】細谷龍男、高尿酸血症の合併症、Medical Practice (1999), 16, 1080 - 1087
【非特許文献2】大柳善彦 著:O2−/NO薬理学(日本医学館, 1997)
【非特許文献3】McCord JM:Oxygen-derived free radicals in postischemic tissue injury, N. Engl. J. Med., 312, 159 - 163 (1985)
【非特許文献4】Parks DA and Granger DN:Ischemia-induced vascular changes: role of xanthine oxidase and hydroxyl radicals, Am. J. Physiol., 245, G285 - 289 (1983)
【非特許文献5】Moorhouse PC, Grootveld M, Halliwell B, Quinlan JG, Gutteridge JM:Allopurinol and oxypurinol are hydroxyl radical scavengers, FEBS Lett., 213, 23 - 28 (1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、XO阻害剤、特にXO阻害剤の一つである1−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸の投与により、血中尿酸濃度を低下させた場合、高脂肪食摂取による耐糖能の低下や高トリグリセリド血症がどのような影響を受けるのかを明らかにすることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、XO阻害作用によって血中尿酸濃度を低下させると、高脂肪食摂取による耐糖能の低下や高トリグリセリド血症が改善されるのではないかとの作業仮説を設け、鋭意研究を行なった。その結果、XO阻害作用を有する化合物が、II型糖尿病で見られる耐糖能低下に対する改善作用および血中トリグリセリド低下作用を有することを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤に関するものである。
【0010】
本発明は以下の通りである。
(1)キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する化合物を含む耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤。
(2)キサンチンオキシダーゼ阻害活性がIC50値で1μM以下である化合物を含む耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤。
(3)キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する化合物が一般式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1は水素、ハロゲンまたはアミノを示す。
はカルボキシまたはC1−4アルコキシカルボニルを示す。
はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、カルボキシ、C1−4アルコキシカルボニルおよびアシルオキシから選ばれる1〜2個の置換基で置換されていてもよいC3−6アルキル、C3−6シクロアルキルまたはC3−6シクロアルキル−C1−4アルキルを示す。)
により表される1−フェニルピラゾール化合物、その光学異性体もしくはその医薬上許容しうる塩である上記(1)記載の耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤。
(4)キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する化合物が一般式(II)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R1は水素、ハロゲンまたはアミノを示す。
はカルボキシまたはC1−4アルコキシカルボニルを示す。
は水素、C1−4アルキルまたはハロC1−4アルキルを示す。
はシアノまたはニトロを示す。
はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、カルボキシ、C1−4アルコキシカルボニルおよびアシルオキシから選ばれる1〜2個の置換基で置換されていてもよいC3−6アルキル、C3−6シクロアルキルまたはC3−6シクロアルキル−C1−4アルキルを示す。)
により表される3−フェニルピラゾール化合物、その光学異性体もしくはその医薬上許容しうる塩である上記(1)記載の耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤。
(5)1−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸もしくはその医薬上許容しうる塩を有効成分とする耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤。
(6)II型糖尿病の予防・治療剤である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の予防・治療剤。
(7)高脂血症の予防・治療剤である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の予防・治療剤。
(8)メタボリックシンドロームの予防・治療剤である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の予防・治療剤。
(9)内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の予防・治療剤。
【発明の効果】
【0015】
キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する化合物は、II型糖尿病で見られる耐糖能低下に対する改善作用および血中トリグリセリド低下作用を有し、耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する化合物とは、キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有するすべての化合物を包含するものである。
【0017】
好ましくは、上記に挙げた特許文献1(WO92/09279号公報)、特許文献2(WO98/18765号公報)、特許文献3(特開平10−310578号公報)、特許文献4(WO03/064410号公報)に記載された化合物を包含するものである。
【0018】
また、上記一般式(I)および(II)につき、各記号の定義は以下のとおりである。
におけるハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
におけるC1−4アルコキシカルボニルとは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、第3級ブトキシカルボニルなどのアルコキシ部が炭素数1〜4であるアルコキシカルボニルを示す。
【0019】
におけるC3−6アルキルは直鎖状または分枝状の炭素数3〜6のアルキルを表し、たとえば、プロピル、イソプロピル、2−エチルプロピル、ブチル、イソブチル、第2級ブチル、第3級ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−エチルブチルなどが挙げられる。C3−6シクロアルキルは炭素数3〜6のシクロアルキルを意味し、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。またC3−6シクロアルキル−C1−4アルキルのC3−6シクロアルキル部は上記したのと同じ基が例示でき、C1−4アルキル部は直鎖状でも分枝状でもよく、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、第2級ブチル、第3級ブチルなどの炭素数1〜4のアルキルが例示される。C3−6シクロアルキル−C1−4アルキルの具体例として、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロヘキシルプロピル、4−シクロヘキシルブチルなどが挙げられる。
【0020】
におけるC3−6アルキル、C3−6シクロアルキルまたはC3−6シクロアルキル−C1−4アルキルに置換してもよい置換基であるハロゲンとして、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。C1−4アルコキシとは、炭素数1〜4のアルコキシを意味し、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシなどが挙げられる。C1−4アルコキシカルボニルとは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、第3級ブトキシカルボニルなどのアルコキシ部が炭素数1〜4のアルコキシカルボニルを示す。アシルオキシとしては、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、バレリルオキシ、イソバレリルオキシ、ヘキサノイルオキシ、オクタノイルオキシなどのC2−8アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシなどのC7−15アロイルオキシなどが挙げられる。
【0021】
ハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、カルボキシ、C1−4アルコキシカルボニルおよびアシルオキシから選ばれる1〜2個の置換基で置換されていてもよいC3−6アルキルとしては、たとえば、3−フルオロ−3−フルオロメチルプロピル、3−フルオロ−2,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル、2,2−ジメチル−3−メトキシプロピル、2−カルボキシ−2−メチルプロピル、3−アセチルオキシ−2,2−ジメチルプロピル、3−ベンゾイルオキシ−2,2−ジメチルプロピルなどが挙げられる。
【0022】
上記一般式(II)につき、RにおけるC1−4アルキルとは炭素数1〜4のアルキルであって、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3級ブチルなどを示し、ハロC1−4アルキルとは炭素数1〜4のハロアルキルであって、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、1,3−ジフルオロ−2−プロピル、4−フルオロブチルなどを示し、R、R、Rにおける記号は前記と同義である。
【0023】
として特に水素が好ましい。Rとして特にカルボキシが好ましい。Rとして特にC4−6アルキルが好ましい。
【0024】
一般式(I)に含まれるXO阻害作用を有する化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
(1)5−アミノ−1−(3−シアノ−4−イソブトキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸、
(2)1−(3−シアノ−4−イソブトキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸エチル、
(3)1−(3−シアノ−4−イソブトキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸、
(4)1−(4−ブトキシ−3−シアノフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸、
(5)1−(3−シアノ−4−シクロプロピルメトキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸、
(6)1−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸、
(7)1−(3−シアノ−4−(2−エチルブトキシ)フェニル)ピラゾール−4−カルボン酸、
(8)1−(3−シアノ−4−(1−エチルプロポキシ)フェニル)ピラゾール−4−カルボン酸、
(9)1−(3−シアノ−4−(3−メチルブトキシ)フェニル)ピラゾール−4−カルボン酸、
(10)1−(3−シアノ−4−((S)−2−メチルブトキシ)フェニル)ピラゾール−4−カルボン酸、
(11)5−アミノ−1−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸、および
(12)5−クロロ−1−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸
から選ばれる1−フェニルピラゾール化合物、その光学異性体もしくはその医薬上許容しうる塩。
【0025】
一般式(II)に含まれるXO阻害作用を有する化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
(13)3−(4−イソブトキシ−3−ニトロフェニル)ピラゾール−5−カルボン酸、
(14)3−(4−イソブトキシ−3−ニトロフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸メチル、
(15)3−(4−イソブトキシ−3−ニトロフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(16)4−クロロ−3−(4−イソブトキシ−3−ニトロフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(17)3−(3−シアノ−4−イソブトキシフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(18)3−(3−シアノ−4−シクロプロピルメトキシフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(19)3−(4−ブトキシ−3−シアノフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(20)3−(3−シアノ−4−イソプロポキシフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(21)3−(3−シアノ−4−シクロヘキシルメトキシフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
【0026】
(22)3−(3−シアノ−4−プロポキシフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(23)3−(3−シアノ−4−(3−メチルブトキシ)フェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(24)3−(4−ブトキシ−3−ニトロフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(25)3−(4−イソプロポキシ−3−ニトロフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(26)3−(4−(3−メチルブトキシ)−3−ニトロフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(27)3−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(28)4−クロロ−3−(3−シアノ−4−イソブトキシフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(29)4−クロロ−3−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(30)4−アミノ−3−(3−シアノ−4−イソブトキシフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、および
(31)4−アミノ−3−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸
から選ばれる3−フェニルピラゾール化合物、その光学異性体もしくはその医薬上許容しうる塩。
また、本発明は以下の化合物も包含する。
(32)3−(3−シアノ−4−(2−メトキシエトキシ)フェニル)−1−メチルピラゾール−5−カルボン酸、
(33)2−(3−シアノ−4−イソブトキシフェニル)−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸、
(34)アロプリノール、
(35)3−(2−メチル−4−ピリジル)−5−(3−シアノ−4−イソブトキシフェニル)−1,2,4−トリアゾール。
【0027】
本発明の化合物、たとえば、特許文献1(WO92/09279号公報)、特許文献2(WO98/18765号公報)、特許文献3(特開平10−310578号公報)、特許文献4(WO03/064410号公報)に記載された化合物、および、一般式(I)または(II)の化合物の医薬上許容しうる塩としては、カルボキシ基における金属(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛など)、有機塩基(ジエタノールアミン、エチレンジアミンなど)との塩が挙げられる。
【0028】
本発明の化合物、たとえば、特許文献1(WO92/09279号公報)、特許文献2(WO98/18765号公報)、特許文献3(特開平10−310578号公報)、特許文献4(WO03/064410号公報)に記載された化合物、および、一般式(I)または(II)の化合物およびその医薬上許容しうる塩は水和物あるいは溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物(1/2水和物、1水和物、2水和物など)、溶媒和物も本発明に包含される。また、一般式(I)または(II)の化合物が不斉原子を有する場合には少なくとも2種類の光学異性体が存在する。これらの光学異性体およびそのラセミ体は本発明に包含される。
【0029】
上記(1)〜(12)の化合物はWO98/18765号公報に記載の方法、(13)〜(32)の化合物は特開平10−310578号公報に記載の方法、また(33)の化合物はWO92/09279号公報に記載の方法、(35)の化合物はWO03/064410号公報に記載の方法によって合成することができる。また、(34)のアロプリノールは市販されており、容易に入手することができる。
【0030】
1μM以下(IC50値)のキサンチンオキシダーゼ阻害活性を有する化合物はII型糖尿病で見られる耐糖能低下に対する改善作用および血中トリグリセリド低下作用を有し、耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤として用いることができる。
【0031】
好ましくは、1−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸またはその医薬上許容しうる塩は耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤として使用することができる。
【0032】
キサンチンオキシダーゼ阻害活性は標準的な方法により測定することができる。たとえば、WO98/18765号公報に記載の方法により測定することができる。
【0033】
本発明に含まれるXO阻害作用を有する化合物は、経口でも、非経口でも投与することができる。投与剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、注射剤等が挙げられる。これらは汎用されている技術を用いて製剤化することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口剤であれば、乳糖、結晶セルロース、デンプン、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロース カルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂等のコーティング剤、ゼラチン皮膜等の皮膜剤などを必要に応じて用いて調製することができる。
【0034】
投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、経口剤であれば通常成人1日当り0.01〜150mg、好ましくは0.1〜100mgを1回または数回に分けて投与することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、実験例および製剤例を示すが、これらの実施例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
以下の試験は、XO阻害作用を有する化合物が、II型糖尿病で見られる耐糖能低下に対する改善作用および血中トリグリセリド低下作用を有し、耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤に有用であることを示している。XO阻害作用を有する化合物として1−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸(化合物Aと称する)を用いた。本化合物はWO98/18765号公報に記載の方法によって合成することができる。
【0036】
実験例1:高脂肪食摂取ラットにおける血中グルコース及び血中トリグリセリドに対する影響の検討
(実験方法)
1群8〜9匹の雄性SD系ラット(4週齢)に、化合物Aを58日間混餌投与した。化合物A投与終了後に、血清グルコース(血糖)、血清トリグリセリドおよび血清尿酸の濃度を測定した。
群構成は以下のとおりである。
化合物A 無添加群(対照群)n=8
化合物A 30mg/kg混餌群 n=9
混餌条件として餌1kgあたり、化合物Aを30mg含有するように添加した。高脂肪食の組成は、30% 牛脂、20% カゼイン、0.3% L-システイン、1% ビタミン混合(AIN-93)、3.5% ミネラル混合(AIN-93)、5% セルロース、20% シュークロース、及び 20.2% コーンスターチとした。
化合物A投与後50日目に、耐糖試験を行った。すなわち、朝8時に餌をケージから抜き取り、13時から16時の間に、グルコース(3g/kg体重)をラットの腹腔内に注射し、注射後0, 30, 60および120分目の血糖を測定した。また、飼育最終日の朝8時にケージから餌を抜き取り、13時から15時の間に体重測定後屠殺し、体重、肝トリグリセリド、空腹時血糖、空腹時血清トリグリセリドおよび空腹時血清尿酸濃度を測定した。
【0037】
(結果および考察)
表1に実験例1の結果を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
高脂肪食摂取の条件下において、化合物A投与により、グルコース投与30分および60分後の血糖上昇は、有意に抑制された。更に、化合物A投与により、血中トリグリセリドおよび肝トリグリセリドの有意な低下も認められた。
なお、化合物Aは、空腹時の血糖に影響を及ぼさず、化合物A投与によると考えられる体重変動も認められなかった。
【0040】
これらの実験結果から、化合物Aは、II型糖尿病における耐糖能低下および高トリグリセリド血症、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎に対して改善作用を有することが示唆された。
【0041】
化合物Aの耐糖能および血中トリグリセリド・肝トリグリセリドに及ぼす作用は、いずれも有意な血中尿酸低下作用を示す用量でみられた。したがって、XO阻害作用と耐糖能改善作用および血中トリグリセリド・肝トリグリセリド低下作用には、何らかの関係がある可能性が示唆された。
【0042】
製剤処方例1:錠剤
化合物A 50.0mg
乳糖 98.0mg
トウモロコシデンプン 45.0mg
ヒドロキシプロピルセルロース 3.0mg
タルク 3.0mg
ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
全量 200.0mg
【0043】
上記組成の割合に従って、化合物Aを乳糖とトウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルセルロースと練合機中で十分に練合する。練合物を200メッシュの篩を通し、50℃で乾燥し、さらに24メッシュの篩を通す。タルクおよびステアリン酸マグネシウムと混合し、直径9mmの杵を用いて、1錠200mgの錠剤を得る。この錠剤は必要に応じ、糖衣またはフィルムコート処理することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する化合物を含む耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤。
【請求項2】
キサンチンオキシダーゼ阻害活性がIC50値で1μM以下である化合物を含む耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤。
【請求項3】
キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する化合物が一般式(I)
【化1】

(式中、R1は水素、ハロゲンまたはアミノを示す。
はカルボキシまたはC1−4アルコキシカルボニルを示す。
はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、カルボキシ、C1−4アルコキシカルボニルおよびアシルオキシから選ばれる1〜2個の置換基で置換されていてもよいC3−6アルキル、C3−6シクロアルキルまたはC3−6シクロアルキル−C1−4アルキルを示す。)
により表される1−フェニルピラゾール化合物、その光学異性体もしくはその医薬上許容しうる塩である請求項1記載の耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤。
【請求項4】
キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する化合物が一般式(II)
【化2】

(式中、R1は水素、ハロゲンまたはアミノを示す。
はカルボキシまたはC1−4アルコキシカルボニルを示す。
は水素、C1−4アルキルまたはハロC1−4アルキルを示す。
はシアノまたはニトロを示す。
はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、カルボキシ、C1−4アルコキシカルボニルおよびアシルオキシから選ばれる1〜2個の置換基で置換されていてもよいC3−6アルキル、C3−6シクロアルキルまたはC3−6シクロアルキル−C1−4アルキルを示す。)
により表される3−フェニルピラゾール化合物、その光学異性体もしくはその医薬上許容しうる塩である請求項1記載の耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤。
【請求項5】
1−(3−シアノ−4−ネオペンチルオキシフェニル)ピラゾール−4−カルボン酸もしくはその医薬上許容しうる塩を有効成分とする耐糖能障害、II型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤。
【請求項6】
II型糖尿病の予防・治療剤である請求項1〜5のいずれかに記載の予防・治療剤。
【請求項7】
高脂血症の予防・治療剤である請求項1〜5のいずれかに記載の予防・治療剤。
【請求項8】
メタボリックシンドロームの予防・治療剤である請求項1〜5のいずれかに記載の予防・治療剤。
【請求項9】
内臓脂肪型肥満、脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎の予防・治療剤である請求項1〜5のいずれかに記載の予防・治療剤。

【公開番号】特開2007−210978(P2007−210978A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35347(P2006−35347)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)
【Fターム(参考)】