説明

耳掻き付き筆記具

【課題】 耳掻きの機能を筆記具に内装することにより、仕事上のストレスに起因する緊張の緩和や気分転換、あるいは精神的な疲れに起因する思考力低下の回復等を、この耳掻きを使用することでいつでも簡単に行うことができる耳掻き付き筆記具を提供する。
【解決手段】 筆記部2を内装した前部軸筒3の後端に後部軸筒5を同軸状に連設し、当該前部軸筒3に対する後部軸筒5の軸周り回転操作または軸方向への進退操作で、前部軸筒3の先端側から筆記部2を出没させるように構成した筆記具において、上記後部軸筒5に、その後端から後方に向けて出没自在な耳掻き6を内装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具に係り、詳しくは、筆記具に耳掻きの機能を付加し、筆記可能な使用状態を保持したまま、耳の清掃を行うことができる耳掻き付き筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耳掻きは、耳の孔をかいたり、耳の垢などを取る時に用いる道具として古くから知られており、耳掻きを使用しての定期的な耳垢の除去は、
1.耳垢腺の分泌物やはがれた皮膚、ごみ、毛などが外耳道を閉塞すると、難聴や耳鳴りなどを誘発し易い 2.外耳道が耳垢で完全につまってしまうと、耳鼻科の専門医でなければ除去できなくなる
3.耳垢の除去を行わないまま、水泳や洗髪などで耳に水が入ると、耳垢が膨張して内耳や外耳に無理がかかる 等を防止するうえで重要である。
【0003】
また、その他の効用としては、耳掻きで外耳を刺激することにより、緊張緩和・気分転換・鼻づまり解消・右脳刺激による創作力の向上、等があり、例えば、金属製(銀製)の耳掻きを冷蔵庫で5度くらいに冷やしてから使用すると、「脳内モルヒネ」と呼ばれるβ−エンドルフィンの分泌の活性化につながることが報告されている。そして、市販品としては、竹・金属・プラスチック製の種々の耳掻きがあるが、これらは耳掻き専用品であるため、家庭での常備は一般的ではあるものの、職場や移動先にまで持ち歩くことは少ない。
【0004】
そこで、耳掻きの使用範囲を拡大すべく、以下のような提案がなされている。
【特許文献1】特開2003−199774
【特許文献2】特開2004−247859
【0005】
上記特許文献1のものは、爪楊枝の槍形部の反対側にくぼみを設けて耳かきとしたものであるが、口内の清掃に使用する爪楊枝に、耳垢を取る耳掻きを兼用させることは衛生上の問題を内包するものであり、また特許文献2のものは、携帯電話のロッドアンテナの先端部を耳掻きとする構成であるが、携帯電話本体を把持して耳垢を取ることになるので使い勝手が悪く、いずれの構成においても使用者の満足を十分に得られるまでには至らないものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、叙上のような実状に鑑み、常時携帯される日用品として広く普及している筆記具に着目し、これに耳掻きの機能を内装することにより、利便性を向上させることができると共に、思考の道具である筆記具の使用時に、仕事上のストレスに起因する緊張の緩和や気分転換、あるいは精神的な疲れに起因する思考力低下の回復、等をいつでも簡単に行うことができる耳掻き付き筆記具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するため、本発明が採用した技術手段は、筆記部を内装した前部軸筒の後端に後部軸筒を同軸状に連設し、当該前部軸筒に対する後部軸筒の軸周り回転操作または軸方向への進退操作で、前部軸筒の先端側から筆記部を出没させるように構成した筆記具において、上記後部軸筒に、その後端から後方に向けて出没自在な耳掻きを内装したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明が採用した一つの好ましい態様では、上記耳掻きは、先端に耳垢掻き出し部を形成した棒体と、該棒体の外周面から外方に曲成した板状弾機と、その先端に一体形成したボタンとからなり、後部軸筒に内装したガイド杆に圧縮コイル弾機を介して上記耳掻きを弾持すると共に、上記棒体のボタンを、後部軸筒の外周面に一体に凹設した窪み部の係止孔に係止させ、該ボタンの押圧操作で、圧縮コイル弾機の弾発力により上記耳掻きを後部軸筒の後端から後方に向けて突出し、かつ突出した耳掻きの耳垢掻き出し部を、窪み部の係止孔にボタンが係止されるまで上方から下方へ押し込むことで、耳掻きを後部軸筒内に収納保持するように構成したことを特徴とするものである。本発明が採用した他の好ましい態様では、上記耳掻きは、先端に耳垢掻き出し部を形成した棒体と、該棒体の外周面に突設したボタンとからなり、後部軸筒の外面長手方向に切欠形成したスライド溝に沿う上記ボタンの上下方向摺動操作で、後部軸筒の後端から耳掻きを出没させるように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明が採用した他の技術手段は、軸筒の先端側に筆記部を備えた筆記具において、上記軸筒に、その後端から後方に向けて出没自在な耳掻きを内装したことを特徴とするものである。筆記部は、軸筒の先端側から出没自在であっても、あるいは、軸筒の先端側から常時突出していてもよい。一つの好ましい態様では、上記耳掻きは、先端に耳垢掻き出し部を形成した棒体と、該棒体の外周面から外方に曲成した板状弾機と、該板状弾機の先端に一体形成したボタンとからなり、該軸筒に内装したガイド杆に圧縮コイル弾機を介して上記耳掻きを弾持すると共に、上記棒体のボタンを、該軸筒の外周面に一体に凹設した窪み部の係止孔に係止させ、該ボタンの押圧操作で、圧縮コイル弾機の弾発力により上記耳掻きを該軸筒の後端から後方に向けて突出し、かつ突出した耳掻きの耳垢掻き出し部を、窪み部の係止孔にボタンが係止されるまで上方から下方へ押し込むことで、耳掻きを軸筒内に収納保持するように構成したことを特徴とするものである。他の好ましい態様では、上記耳掻きは、先端に耳垢掻き出し部を形成した棒体と、該棒体の外周面に突設したボタンとからなり、該軸筒の外面長手方向に切欠形成したスライド溝に沿う上記ボタンの上下方向摺動操作で、該軸筒の後端から耳掻きを出没させるように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
したがって本発明によれば、専用品として市販されている耳掻きと同等の機能を筆記具に内装したので、これを所持しているときは、いつでも自分専用の耳掻きで耳を掻くことができ、また、専用品の耳掻きに比べて筆記具の使用頻度は高いので、自宅等においても、耳が痒くなったときに耳掻きを探し回ることが少なくなると共に、筆記具に内装する関係上、必要最小限の短尺長で耳掻きを構成することになるため、耳掻きの先端が必要以上に外耳内に進入することがなく、鼓膜を突き破るような不具合を防止することができ、安全性の高い耳掻きの機能を筆記具に付与することができる。
【実施例1】
【0011】
本発明の構成を添付図面に基づいて詳細に説明する。 図において、1は回転出没式の筆記具であり、該筆記具1は、筆記部2の図示しない出没機構を内装した前部軸筒3の後端に、クリップ4を備えた後部軸筒5を同軸状に連設してなり、当該前部軸筒3に対する後部軸筒5の軸周り回転操作で、前部軸筒3の先端側から筆記部2を出没させると共に、上記後部軸筒5には、その後端から後方に向けて出没自在な耳掻き6が内装されており、後部軸筒5の外周面に一体に凹設した窪み部7の底部から突出するボタン8を押圧操作することにより、上記耳掻き6を、後部軸筒5の後端から後方に向けて突出するように構成されている。
【0012】
上記耳掻き6は、先端側に耳垢掻き出し部としてのさじ6aを形成した棒体6b本体の基部6cから内方の軸芯方向に案内孔(図示せず)を穿設し、かつ上記棒体6bの外周面から外方に曲成した板状弾機9の先端に、前記ボタン8を一体に形成して耳掻き6が構成されると共に、上記案内孔に挿通する長尺状のガイド体10aを先端側に一体形成したガイド杆10に圧縮コイル弾機11を外嵌し、当該ガイド杆10と棒体6bの基部6c下面との間に作用する圧縮コイル弾機11の弾発力で、棒体6bを図示で上方に押圧するようになっている。
【0013】
そして、上記棒体6bの先端に設けたさじ6aを、後部軸筒5の後端から突出し、かつ圧縮コイル弾機11の弾発力に抗してさじ6aを後部軸筒5内に押し込み操作した際には、当該後部軸筒5の内面から窪み部7の裏面に沿って倣うボタン8を、窪み部7の係止孔7aに係止させて、耳掻き6を後部軸筒5内に保持するように構成されている。
【0014】
なお、12は後部軸筒5に充填された樹脂材であって、該樹脂材12は、ガイド杆10の基部を固定支持すると共に、耳掻き6を突出させた際に、基部6cの上面を係止する段差部12aが一体に形成されている。
【0015】
本発明は、叙上のように構成されているから、筆記具1の使用中に耳掻きを行う場合に、後部軸筒5のボタン8を押圧すると、該ボタン8が窪み部7の係止孔7aから内方に離脱し、圧縮コイル弾機11の弾発力により棒体6bが後部軸筒5の後方に突出して、その先端に設けたさじ6aによる耳掻きが可能になる。
【0016】
また、突出した耳掻き6のさじ6aを、親指等で窪み部7の係止孔7aにボタン8が係止されるまで上方から下方に押し込めば、上記耳掻き6が後部軸筒5内に収納保持された状態となり、通常の筆記具としての体裁で筆記作業を行うことができる。
【0017】
図4は、本発明の耳掻き付き筆記具の他の実施例を示すものであって、同図(a)、(b)では、複数の円盤をスクリュー状に一体形成した耳掻き6´を採用した構成を示すものであって、この例では最上位に位置する耳垢掻き出し部としての円盤状の頭部6a´上面を半球面に形成することにより、耳掻き6´を使用しない場合の押し込み操作を簡単に行うことができ、またデザイン上の外観を向上させることが可能となる。また、同図(c)は、ノック式ボールペンに多く見られるオルタネートタイプの出没機構を耳掻き6´の出没構造に採用した構成を示すものであって、この例では、収納状態にある耳掻き6´の頭部6a´を一旦押すと、当該耳掻き6´が突出し、突出状態にある頭部6a´を押し込めば、当初の収納状態に保持されるようになっているため、前記実施例のように、窪み部7の係止孔7aにボタン8を係脱させる構成が不要となり、デザイン上の外観をより一層シンプルな印象にすることができる。
【0018】
更に、図4(d)、(e)は、前記実施例の窪み部7の係止孔7aにボタン8を係脱させる構成に代えて、ボタン8´をスライド溝8aに沿って上下方向に摺動移動することにより、耳掻き6を出没させる構成としたものであって、このように構成すれば、後部軸筒5内の収納および出没構造を簡素化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
現在市販されている種々の耳掻き、例えば、竹製、象牙製、金属製などの異なる素材で構成される耳掻きや、前記したスクリュー形状、スパイラル形状等の耳垢掻き出し部を有する耳掻きを交換できるようにすれば、個人の好みや外耳形状の相違などに合わせて、最適な耳掻き付き筆記具とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は耳掻きを収納した状態の筆記具の側面図、(b)は耳掻きを突出した状態の筆記具の側面図、(c)は同上耳掻きを収納した状態の筆記具の正面図、(d)は耳掻きを突出した状態の筆記具の正面図
【図2】(a)は耳掻きを突出した状態の筆記具の要部拡大斜視図、(b)は耳掻きを収納した状態の筆記具の要部拡大斜視図
【図3】(a)は耳掻きを収納した状態の筆記具の要部拡大断面図、(b)は耳掻きを突出した状態の筆記具の要部拡大断面図
【図4】(a)は耳掻きを収納した状態の他の構成例を示す要部斜視図、(b)は同上耳掻きを突出した状態の要部斜視図、(c)は耳掻きを突出した状態の要部斜視図、(d)は耳掻きを突出した状態の他の構成例を示す要部斜視図、(e)は同上耳掻きを収納した状態の要部斜視図
【符号の説明】
【0021】
1 筆記具 2 筆記部 3 前部軸筒 5 後部軸筒 6 耳掻き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記部を内装した前部軸筒の後端に後部軸筒を同軸状に連設し、当該前部軸筒に対する後部軸筒の軸周り回転操作または軸方向への進退操作で、前部軸筒の先端側から筆記部を出没させるように構成した筆記具において、上記後部軸筒に、その後端から後方に向けて出没自在な耳掻きを内装したことを特徴とする耳掻き付き筆記具。
【請求項2】
上記耳掻きは、先端に耳垢掻き出し部を形成した棒体と、該棒体の外周面から外方に曲成した板状弾機と、該板状弾機の先端に一体形成したボタンとからなり、後部軸筒に内装したガイド杆に圧縮コイル弾機を介して上記耳掻きを弾持すると共に、上記棒体のボタンを、後部軸筒の外周面に一体に凹設した窪み部の係止孔に係止させ、該ボタンの押圧操作で、圧縮コイル弾機の弾発力により上記耳掻きを後部軸筒の後端から後方に向けて突出し、かつ突出した耳掻きの耳垢掻き出し部を、窪み部の係止孔にボタンが係止されるまで上方から下方へ押し込むことで、耳掻きを後部軸筒内に収納保持するように構成したことを特徴とする請求項1記載の耳掻き付き筆記具。
【請求項3】
上記耳掻きは、先端に耳垢掻き出し部を形成した棒体と、該棒体の外周面に突設したボタンとからなり、後部軸筒の外面長手方向に切欠形成したスライド溝に沿う上記ボタンの上下方向摺動操作で、後部軸筒の後端から耳掻きを出没させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の耳掻き付き筆記具。
【請求項4】
軸筒の先端側に筆記部を備えた筆記具において、上記軸筒に、その後端から後方に向けて出没自在な耳掻きを内装したことを特徴とする耳掻き付き筆記具。
【請求項5】
上記耳掻きは、先端に耳垢掻き出し部を形成した棒体と、該棒体の外周面から外方に曲成した板状弾機と、該板状弾機の先端に一体形成したボタンとからなり、該軸筒に内装したガイド杆に圧縮コイル弾機を介して上記耳掻きを弾持すると共に、上記棒体のボタンを、該軸筒の外周面に一体に凹設した窪み部の係止孔に係止させ、該ボタンの押圧操作で、圧縮コイル弾機の弾発力により上記耳掻きを該軸筒の後端から後方に向けて突出し、かつ突出した耳掻きの耳垢掻き出し部を、窪み部の係止孔にボタンが係止されるまで上方から下方へ押し込むことで、耳掻きを軸筒内に収納保持するように構成したことを特徴とする請求項4記載の耳掻き付き筆記具。
【請求項6】
上記耳掻きは、先端に耳垢掻き出し部を形成した棒体と、該棒体の外周面に突設したボタンとからなり、該軸筒の外面長手方向に切欠形成したスライド溝に沿う上記ボタンの上下方向摺動操作で、該軸筒の後端から耳掻きを出没させるように構成したことを特徴とする請求項4記載の耳掻き付き筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−8137(P2007−8137A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195604(P2005−195604)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(596099077)
【Fターム(参考)】