胃腸の鎮痛作用を有するラクトバチルスアシドフィラスの菌株
【課題】鎮痛効果を有するプロバイオティクス細菌の菌株を提供すること。
【解決手段】胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与する担体を調製するために、ラクトバチルス アシドフィラスの少なくとも一つの菌株を使用すること。更に、そのための微生物を選択する、以下の段階を含む方法:i)試験微生物を準備し、少なくとも一つの上皮細胞と接触させる段階、及び、ii)少なくとも一つの上皮細胞のオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を検出する段階。
【解決手段】胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与する担体を調製するために、ラクトバチルス アシドフィラスの少なくとも一つの菌株を使用すること。更に、そのための微生物を選択する、以下の段階を含む方法:i)試験微生物を準備し、少なくとも一つの上皮細胞と接触させる段階、及び、ii)少なくとも一つの上皮細胞のオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を検出する段階。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与する担体を調製するための、少なくとも一つのラクトバチルス アシドフィラスの菌株の使用に関する。微生物、特に細菌において、幾つかのものは免疫系に好ましい影響を及ぼし、特に乳酸菌及びビフィドバクテリウム属細菌は、「プロバイオティクス」細菌又は菌株と呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
通常、プロバイオティクス細菌又は菌株とは、生きたまま摂取され、宿主の健康又は生理機能に対して有益な効果を与える非病原の微生物を意味する。これらのプロバイオティクス菌株は一般に、上部の消化管を通過する間は生存できる。それらは非病原性、非毒性であり、また一方では消化管内の定住フローラとの生態学的相互作用により、また一方では「GALT」(消化管関連のリンパ組織)を介して免疫系好ましい影響を与えるその能力により、健康上有益な効果を発揮する。プロバイオティクスの定義によると、充分な菌数が存在する場合には、これらの細菌は生きた状態で腸内を移行できるが、しかしながら、それらは腸のバリアを通過できないため、それらの主要な効果はルーメン側及び/又は胃腸管の壁において発揮される。それにより、その投与期間の間、定住フローラの一部が形成される。このコロニー形成(又は一時的なコロニー形成)によって、プロバイオティクス細菌は、例えばフローラに存在する潜在的に病原性の微生物の抑制や、腸内の免疫系との相互作用により、有益効果を発揮できる。
【0003】
特に乳製品において最も良く使用されるプロバイオティクス菌株は、主にラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ビフィドバクテリウム属及びサッカロミセス属の細菌及び酵母である。これらの細菌において知られているプロバイオティクス効果には、ラクトース耐性、胃腸及び泌尿器の感染症の予防又は治療効果の改善、癌の予防、血液コレステロールレベルの減少が例として挙げられる。しかしながら、重要なことは、上記の属の全ての菌株が個々に上記の効果を有するわけではなく、ごく一部だけが有し、ゆえに慎重に選別しなければならないことである。
【0004】
当該分野の技術者の要求を満たすためには、菌株又は菌株の混合物を発見することが必要であり、それは、胃腸のレベルでの炎症であって、しばしば痛みとなる腸の不快感(特に過敏性腸症候群(IBS))、又は、特に大腸炎又は下痢の間、胃腸のレベルで経験される痛みを緩和するのに効果的であり、またそのための手段を提供するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、本発明が解決する課題は、鎮痛効果を有するプロバイオティクス細菌の菌株を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明において、胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与される担体の調製における、少なくとも一つのラクトバチルス アシドフィラスの菌株の使用が提案される。
【0007】
本発明ではまた、胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与される担体を調製するための微生物を選択する、以下の段階を含む方法が提案される。
i)試験微生物を準備し、少なくとも一つの上皮細胞と接触させる段階、及び
ii)少なくとも一つの上皮細胞のオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を検出する段階。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、明白であり、かつ利用可能な菌株の範囲を拡大する長所を提案する意味で有効である。
【0009】
本発明はそのほかにも、胃腸の治療又は予防の目的に使用可能なであるという効果がある。
【0010】
本発明は、それが胃腸の治療又は予防目的でヒト又は動物に投与されるときに特に有効であり、特に、過敏性腸症候群の場合若しくは炎症性反応によって生じる痛みの場合に経験される痛みの減少、又は、腸の炎症の調節に有効である。
【0011】
本発明はまた、治療又は予防目的でヒト又は動物に投与されたとき、分泌及び消化機能を調節することで腸の輸送の制御を可能にするため、有用である。
【0012】
本発明にはまた、薬学的に許容できる担体又は食品に組み込まれたときもその全ての機能が保持されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】4種の微生物による刺激の間、ATCC HTB−38上皮細胞において発現される、μオピオイド受容体のメッセンジャーRNA発現の動態を、時間ごとに表すグラフである。
【図2】3種の微生物による刺激の間、ATCC HTB−38上皮細胞において発現される、CB1受容体のメッセンジャーRNA発現の動態を、時間ごとに表すグラフである。
【図3】3種の微生物による刺激の間、ATCC HTB−38上皮細胞において発現される、CB2受容体のメッセンジャーRNA発現の動態を、時間ごとに表すグラフである。
【図4】異なる条件下でのMOR mRNAの発現を表すグラフである。
【図5】未処理マウス及びL.アシドフィラス処理マウスにおける、結腸TNFαのmRNA発現を表すグラフである。
【図6】未処理マウス及びL.アシドフィラス処理マウスにおける、結腸KCのmRNA発現を表すグラフである。
【図7】未処理マウス及びL.アシドフィラス処理マウスにおける、結腸IL−1βのmRNA発現を表すグラフである。
【図8】上皮細胞の免疫染色の写真である。
【図9】免疫染色された上皮細胞のパーセンテージを表すグラフである。
【図10】上皮細胞の免疫染色の写真である。
【図11】免疫染色された上皮細胞のパーセンテージを表すグラフである。
【図12】上皮細胞の免疫染色の写真である。
【図13】免疫染色された上皮細胞のパーセンテージを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の他の効果及び特性は、以下の説明及び実施例(単なる具体例に過ぎず、本発明を限定しない)の記載により明確になると考えられる。
【0015】
本発明は、胃腸の鎮痛の目的でヒト又は動物に投与される担体を調製するための、少なくとも一つのラクトバチルス アシドフィラスの菌株の使用に関する。
【0016】
本発明において使用するラクトバチルス アシドフィラスは、グラム陽性の菌株である。好ましくは、乳酸の産生を生じさせるホモ発酵代謝型の、カタラーゼ陰性菌株である。本発明において使用されるラクトバチルス アシドフィラスはまた、他の微生物に対して活性を有するバクテリオシン(例えばラクタシン)を産生できる。
【0017】
好ましくは、ペプシンに対する良好な耐性を有し、酸性pH条件下で、パンクレアチンに対する良好な耐性を有し、また胆汁酸塩に対する良好な許容度を示すラクトバチルス アシドフィラスである。
【0018】
好ましくは、「疎水性」と称されるラクトバチルス アシドフィラス、すなわち、極性又は無極性の疎水性有機溶媒(例えばn−デカン、クロロホルム、ヘキサデカン又はキシレン)に対する強い親和性を有するものが使用される。本発明において好ましいラクトバチルス アシドフィラス菌株は、ラクトバチルス アシドフィラスPTA−4797及びラクトバチルス アシドフィラスNCFMである。ラクトバチルス アシドフィラスの中で、ラクトバチルス アシドフィラスPTA−4797菌株は、Rhodia Chimie(26、quai Alphonse Le Gallo、92 512 BOULOGNE−BILLANCOURT Cedex、フランス)によって、ブタペスト条約に従い、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(登録番号PTA−4797として登録)に寄託されている。この菌株は、国際公開第2004/052462号パンフレットにおいて開示されている。
【0019】
本発明における使用法の技術的範囲内において、胃腸の鎮痛は、オピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体を介して好適に行われる。上記のオピオイド受容体は、δ、K及びμの合計3つが存在する。それらは、7回膜貫通ヘリックスを有する、G蛋白質結合受容体スーパーファミリーに属する。受容体の細胞内側の一部はG蛋白質と接触してそれと連結し、使用されるアゴニストのタイプ(主にタンパク質Gαi3>Gαi2>Gαi1)に応じて変化できる。
【0020】
オピオイド受容体(特にμ受容体)は、幾つかの機能を有する。主なものは鎮痛作用であり、ヘマト髄膜のバリアを通過するこの受容体に特異的なβ−エンドルフィン又はモルヒネ型のアゴニストの使用により示される。消化管におけるこの受容体の第2の機能は、分泌及び消化機能を阻害することによって腸への輸送を減少させることである。最後に、オピオイド受容体は、腸の炎症の調節にも関与している。
【0021】
μオピオイド受容体は、中枢神経系のみならず末梢神経にも存在する。その存在は、人体の大部分の主要器官、例えば脾臓、肝臓、腎臓、小腸及び大腸、特に、粘膜下及び腸間膜のニューロンにおける腸の神経系、並びに、インビトロではリンパ球、単球/マクロファージ及び上皮細胞において検出されている。
【0022】
カンナビノイド受容体(CB1及びCB2と呼ばれる)は、7回膜貫通ヘリックスからなる、G蛋白質結合受容体スーパーファミリーに属する。それらは基本的に、CB1は中枢及び末梢神経系において、及びCB2は免疫反応細胞において発現する。ヒトにおいては、これらのカンナビノイド受容体に対する2つの内因性リガンドが存在し、それは腸の上皮細胞において内生的に産生される。
【0023】
腸の神経系にて発現されるカンナビノイド受容体CB1は、胃及び小腸の蠕動の低下、及び胃液分泌阻害の原因となりうる。カンナビノイド受容体によるその他の抗下痢作用及び制癌作用も推定される。
【0024】
本発明の使用法の技術的範囲内において、胃腸の鎮痛は、好ましくはμオピオイド受容体及び/又はCB1受容体及び/又はCB2受容体によりなされる。
【0025】
本発明の使用において使用される担体は、好ましくは薬学的に許容できる担体又は食品である。
【0026】
薬学的に許容できる担体とは、とりわけ、圧縮錠剤、錠剤、カプセル、軟膏、坐薬又は可飲溶液の形態の担体を意味する。
【0027】
好ましくは、本発明において使用される担体は、食品(例えば乳に基づく補助食品、飲料又は粉末)である。好ましくは、動物又は植物由来の乳製品である。
【0028】
乳製品とは、動物及び/又は植物由来の乳液を含む媒体を意味する。動物由来の乳液は、ウシ、ヒツジ、ヤギ又はバッファロー由来の乳であってよい。植物由来の乳液は、本発明にて使用可能な植物由来のいかなる発酵可能な物質であってよく、特に大豆、米又は穀類に由来するものである。
【0029】
より好ましくは、本発明において使用される担体は、発酵乳又はヒト用に調整された乳である。
【0030】
本発明の担体の調製に用いるラクトバチルス アシドフィラスの菌株は、細菌懸濁液の形態でも、前後に凍結させても、濃縮形態でも、乾燥、凍結乾燥又は冷凍形態のいずれの形態でも調製できる。どの形態を用いる場合でも、菌株を凍結できる。
【0031】
本発明による担体の調製に用いるラクトバチルス アシドフィラスの菌株は、その乾燥又は凍結乾燥の間に他の添加物を添加してもよい。
【0032】
本発明にて用いるラクトバチルス アシドフィラスの菌株は、106〜1012細菌/g担体のCFU、特に108〜1012細菌/g担体のCFUで含まれてもよい。CFUは、「コロニー形成単位」を表す。「g担体」とは、好ましくは食品又は薬学的に許容できる担体を意味し、好ましくは凍結乾燥形態においては109〜1012CFU/gである。
【0033】
本発明の担体の調製に用いるラクトバチルス アシドフィラスの菌株は、乳酸菌と混合された形態であってもよい。本発明において適切と考えられる乳細菌には、通常の農業、食品又は医薬産業にて使用される全ての乳酸菌が含まれる。
【0034】
大まかには、最も良く使用され、発酵物に存在する乳細菌としては、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、ラクトバチルス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、ビフィドバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、カルノバクテリウム属、エンテロコッカス属、ミクロコッカス属、バゴコッカス属、スタフィロコッカス属、バチルス属、コクリア属、アルスロバクター属、プロプリオニバクテリウム属及びコリネバクテリウム属のものが挙げられる。これらの乳酸菌を、単独で又は混合して使用する。なお、このリストは網羅的なものではない。
【0035】
本発明はまた、胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与する担体の調製に用いる微生物を選択する、以下の段階を含む方法に関する。
i)試験対象の微生物を準備し、少なくとも一つの上皮細胞と接触させ、
ii)少なくとも一つの上皮細胞におけるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を検出する。
【0036】
段階i)又はii)において使用する上皮細胞は、好ましくはATCC HTB−38細胞株由来(通常HT−29と称する)又はCaco−2細胞株由来である。これらは、大腸癌由来の細胞株である。それらは、ヒトの手術時に得られる生検標本における細胞を用いて単離、精製できる。段階i)は、好ましくは少なくとも一つの上皮細胞による試験において、108〜1012CFUの微生物を使用して行われる。接触時間は、段階i)の間、0時間から24時間で変化させることができ、好ましくは3時間である。
【0037】
通常、段階i)における細胞の接触は、当業者に公知の、常温で、調整された大気及び無菌性状況の下で実施され、インビトロにおける上皮細胞培養条件下で行われる。
【0038】
本発明の段階ii)における選別工程は、好ましくはμオピオイド受容体(MOR)及び/又はCB1受容体及び/又はCB2受容体の発現の検出により行われる。典型的には、一つの受容体のみ(MOR単独、CB1受容体単独又はCB2受容体単独)の発現を検出できる。あるいは、2つの受容体(MOR及びCB1受容体;MOR及びCB2受容体;CB1受容体及びCB2受容体)の発現を検出することもできる。あるいは、3つの受容体(MOR、CB1受容体及びCB2受容体)の発現を検出することもできる。
【0039】
本発明の段階ii)における選別工程は、好ましくは、例えば定量的PCRなどのPCRによるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体のメッセンジャーRNAの発現、並びに任意にそのレベルの検出、又は免疫組織化学的に検出することにより行われる。当業者に公知のmRNAの検出法、及びその測定法を用いてもよい。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
以下の実施例において、本発明の非限定的な例を示す。
1/ 上皮細胞の調製:
大腸癌細胞株HT−29(ATCC HTB−38)を、5%のCO2条件下、37℃にて、それぞれ20%及び10%の子牛胎児血清を含むDMEM培地で培養した。ATCC HTB−38細胞株を、幾つかの試験微生物菌株と1、3、4、8、18又は24時間接触させた。ATCC HTB−38上皮細胞をその後回収し、液体窒素に浸漬し、μオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体のmRNA及びタンパク質を定量化に供した。
【0041】
2/ μオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体のメッセンジャーRNAの検出及び定量化:
リアルタイムPCR:
培養組織の上皮細胞の全RNAを、カラム抽出キット(Macherey−Nagel社製)を用いて分離した。端的には、細胞を1%のβ−メルカプトエタノールを含む溶解バッファーに懸濁し、その後第一のカラムを通過させ、全ての細胞残渣を除去した。DNAse処理後、RNAを相補DNAに逆転写し、更にμオピオイド受容体又はカンナビノイド受容体に特異的なプライマーを使用し、60℃のハイブリダイゼーション温度でリアルタイムPCR(ABPrism 7000、パーキン社)によって増幅した。
【0042】
−μオピオイド受容体(MOR)
センス:ATgCCAgTgCTCATCATTAC;
アンチセンス:gATCCTTCgAAgATTCCTgTCCT;
−また、対照遺伝子として、β−アクチン
センス:TCACCCACACTgTgCCCATCTACgA;
アンチセンス:CAgCggAACCgCTCATTgCCAATg);
−カンナビノイド受容体
CB1センス:CCT AGA TGG CCT TGC AGA TAC C;
CB1アンチセンス:TGT CAT TTG AGC CCA CGT ACA G;
CB2センス:GCT AAG TGC CCT GGA GAA CGT;
CB2アンチセンス:TCA GCC CCA GCC AAG CT。
【0043】
3/ 結果:
結果を、図1から3に示す。結果を、標的遺伝子(β−アクチン)/μオピオイド(MOR)受容体及び/又はカンナビノイド受容体(CB1、CB2)の比率で表した。μオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体は、ATCC HTB−38上皮細胞において発現していた(図1〜3)。
【0044】
ラクトバチルス属のような若干の微生物では、μオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体のmRNA発現の誘導が可能である。
【0045】
結果は、培養組織中の上皮細胞における、μオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の顕著な誘導を示した。
【0046】
この誘導は、特に菌株ラクトバチルス アシドフィラスにおいて強く表れた。
【0047】
図1及び2は、ラクトバチルス アシドフィラスと上皮細胞との3時間のインキュベート後、mRNAのベースの発現量において、約1000倍の増加がμオピオイド受容体(図1)及びCB1(図2)にて観察されたことを示す。
【0048】
図3は、ラクトバチルス アシドフィラスと上皮細胞との3時間のインキュベート後、mRNAのベースの発現量において、約100倍の増加がCB2受容体(図3)にて観察されたことを示す。
【0049】
一方、大腸菌菌株との共存(図1)においては、μオピオイド受容体の誘導が検出されなかった。ラクトバチルス アシドフィラス菌株によるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の誘導は、10ng/mLのTNF−αの場合と同じオーダーであった。
【0050】
(実施例2)
1/ 材料及び方法。
菌株
本発明のラクトバチルス アシドフィラスNCFM菌株を、37℃で一晩、deMan、Rogosa、Sharpe(MRS)培地(Becton Dickinson)で嫌気培養した。対数増殖期の細菌をインビトロ実験に使用した。培養液を動物に接種する前に、グラム染色により純度を解析した。
【0051】
動物及び試験感染
動物実験は、政府のガイドラインに従い、パスツール研究所(リール)の公認の機関において行った。Balb/cマウスをケージ当たり5匹収容し、12時間の光周期にて、標準のマウス餌料及び水道水を自由に摂取させた。一日に一度、14日間、109CFUのラクトバチルス アシドフィラス菌株(0.5%のCMC(カルボキシメチルセルロース、Sigma社)中に再懸濁)を強制的に動物の胃に供給した。動物を、頚椎脱臼によって屠殺した。全ての結腸を動物から切除し、2つのパーツに分割した。一つのパーツを一晩、4%のパラホルムアルデヒド酸で固定し、パラフィン包埋した。第二の結腸のパーツを、μオピオイド受容体(MOR)、カンナビノイド受容体(CB1及びCB2)、及び炎症性サイトカインTNFα、KC、及びIL−1βmRNAの定量化に用いた。
【0052】
TNBS結腸炎の誘導及び試験計画
MORの発現が炎症により制御されるとの知見(Philippe Dら、JCI 2003;Pol Oら、Mol Pharmacol 2001;Pol Oら、Curr Top Med Chem 2004)より、TNBSによって誘導された結腸炎を陽性コントロールとして用いた。動物実験は、政府のガイドラインに従い、パスツール研究所(リール)の公認の機関において行った。動物をケージ当たり5匹収容し、標準のマウス餌料及び水道水を自由に摂取させた。結腸炎誘導の際、マウスを90〜120分間麻酔にかけ、0.9%のNaClと100%のエタノールの1:1混合液中に溶解させたTNBS(40μL、150mg/kg)を直腸内投与した。コントロールのマウスの場合、0.9%のNaClと100%のエタノールの1:1混合液又は生理食塩水を、同じ方法で投与した。動物をTNBS投与の4日後に屠殺した。
【0053】
定量的リアルタイムPCR
Rneasyキット(Macherey−Nagel社製、ウルト、フランス)を使用し、メーカーの指示に従い、全RNAを全結腸組織から単離した。分光光度法を用い、RNAを定量した。RNaseフリーのDNaseI(ロシュダイアグノスティック社、インディアナポリス、イリノイ、米国)20〜50ユニットを用い、30分間37℃処理の後、オリゴ−dTプライマー(ロシュダイアグノスティック社、インディアナポリス、イリノイ、米国)を用いて一本鎖cDNAを合成した。GeneAmp Abiprism 7000(Applera、Courtaboeuf、フランス)を用い、SYBR green Master Mix(Applera社製Courtaboeuf、フランス)を使用し、特異的なマウスオリゴヌクレオチド(表1を参照)によりmRNAを定量した。各アッセイにおいて、検量された、鋳型を含まないコントロールを含めた。各サンプルにつき、三回試験を行った。SYBR green色素の強度を、Abiprism 7000 SDSソフトウェア(Applera社製、Courtaboeuf、フランス)を使用して解析した。
全ての結果は、影響のないハウスキーピング遺伝子であるβ−アクチンにより標準化した。
【0054】
【表1】
【0055】
MOR−CB1−CB2の免疫組織化学法
ラクトバチルス アシドフィラス菌株を投与されたマウス結腸のパラフィン切片を作製し、免疫組織化学法を行った。無処置の動物をコントロールとして用いた。0.1%のTriton X−100を含むPBSにおいて4℃で5分間浸透処理を行った後、切片を1.5%のヤギ正常血清にて15分、及びブロッキングバッファー(ミルク中1%BSA)にて15分インキュベートし、抗体の非特異的吸着を最小化した。その後組織を室温で2〜12時間、CB1(1:200、Cayman Chemical社、アナーバー、米国)、又はCB2(1:10、Alpha Diagnostic社、サンアントニオ、米国)、又はMOR(1:500、Diasorin社、アントニー、フランス)と反応するウサギポリクローナル一次抗体とインキュベートした。その後切片を、Alexa 488 ヤギ抗ウサギIgGのFITC蛍光色素(1:100希釈、Dako Laboratories社、Trappes、フランス)とのコンジュゲートと、室温で1時間インキュベートした。各工程の間、切片を0.05%のTritonX−100を含むPBSにより5分間ずつ二回洗浄した。その後スライドをHoescht溶液(0.125mg/mL)で対比染色し、顕微鏡検査に供した。陰性コントロールの場合、特異抗体の代わりに正常ウサギ血清による染色を行った。蛍光顕微鏡(ライカ社、Bensheim、ドイツ)を用い、免疫蛍光を観察した。MOR、CB1及びCB2における免疫反応した上皮細胞の数を、5箇所の強拡大視野(HPF)において計数し、100個の上皮細胞当たりの個数として表した。
【0056】
結果を図4から13に示す。
【0057】
2週にわたるラクトバチルス アシドフィラスの投与(1日当たり109CFU)後、結腸においてMOR mRNA発現が無処置の動物(p<0.05)と比較し24倍増加していることが明らかとなった。ラクトバチルス アシドフィラス菌株によるMOR mRNAの誘導は、陽性コントロールとして準備した、TNBS誘導された結腸炎における2倍の誘導と比較し、より顕著であった(図4)。
【0058】
翻訳のレベルでの、特に結腸上皮細胞におけるMOR、CB1及びCB2の誘導を評価するため、特にこれらの受容体と反応する抗体を使用し、免疫組織化学法を行った。ラクトバチルス アシドフィラス菌株を投与されたマウスにおいて、全ての切片において、MOR(60±10%対5±3%)、CB1(60±8%対20±4%)又はCB2(40±7%対20±5%)に関して染色された上皮細胞の数は、コントロールのマウス(図8から13)と比較し顕著に多かった。管腔内細菌(図8から13)と接触した場合、主に上皮表面に存在する上皮細胞において局所的に緑色の染色が観察された。第一抗体を省略した、又は無関係な抗体を使用したコントロールでは陰性だった。
【0059】
ラクトバチルス アシドフィラス誘導による結腸上皮細胞におけるMOR、CB1及びCB2の発現が、マウスの機能上重要か否かを評価するため、無処置のマウス及び14日間ラクトバチルス アシドフィラス菌株の投与を受けたマウスにおける、数種類の炎症性サイトカインのmRNA濃度を比較した。コントロールと比較し、炎症性サイトカインTNFα、KC及びIL−lβのmRNA濃度の50%以上の発現減少が、ラクトバチルス アシドフィラスを処理された動物において観察されたことから、ラクトバチルス アシドフィラス菌株が、少なくとも部分的に、上皮細胞におけるMOR、CB1及びCB2の過剰発現によるマウス結腸の炎症性サイトカインの生理的発現を減少させることを示唆する。
【0060】
1/ 材料及び方法
インビトロにて、結腸上皮細胞のHT−29又はCaco−2を、数種のプロバイオティクス又は細菌(L.acidophilus(NCFM)、L.salivarius(UCC118)、L.paracasei(LPC37)、共生大腸菌、付着性浸潤性大腸菌(LF82))(100細菌/細胞)と0〜6時間インキュベートした。プロバイオティクスによるμオピオイド受容体(MOR)及びカンナビノイド受容体(CB1及びCB2)の発現誘導におけるNFκB経路の役割を、特異的な抑制物質(カフェイン酸フェネチルエステル(CAPE))を用いてHT−29細胞を前処理することにより試験した。TNFα(10ng/mL、2時間)(G共役タンパク質の発現誘導源)を陽性コントロールに使用した。インビトロで受容体(MOR1、CB1及びCB2受容体)の発現誘導に最も効果的なプロバイオティクスを選別した後、プロバイオティクスを109CFUにて15日間Balb/cマウス(n=10)に経口投与し、インビボ試験を行った。マウスの上皮細胞及び結腸におけるMOR、CB1及びCB2の発現を、リアルタイムPCR及び免疫組織化学により解析した。炎症性サイトカイン(TNFα、KC及びIL−1β)のmRNAを、マウス結腸のリアルタイムPCRにより解析した。
【0061】
L.アシドフィラス及びL.サリヴァウスのみ、培養開始後わずか1時間の時点で、上皮細胞において強力なMOR発現を急速に誘導しうることが解明された。この発現誘導は、TNFα誘導細胞において観察された発現誘導と類似していた。CB1(848±180対229±55、p<0.05)及びCB2(1498±333対341±163、p<0.01)に関しては、L.アシドフィラスのみがこれらの受容体の発現を誘導した。CAPEによるNFκB経路の阻害により、L.アシドフィラスで刺激された上皮細胞によるMORの発現の変動が誘導されなかった。インビボにおいて、L.アシドフィラスの投与により、結腸のレベルでMOR mRNA(24±0.75、p<0.01)の発現が強力に誘導された。免疫組織化学による解析より、L.アシドフィラスを投与された動物の結腸細胞におけるインビボでのMOR、CB1及びCB2発現の誘導が確認された。これらの受容体の誘導は、結腸での炎症性サイトカイン発現の少なくとも50%の減少と関連していた。
【0062】
L.アシドフィラスは、インビトロでの上皮細胞、及びインビボでの結腸における、MOR、CB1及びCB2の発現を最も効率的に誘導する菌株であった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与する担体を調製するための、少なくとも一つのラクトバチルス アシドフィラスの菌株の使用に関する。微生物、特に細菌において、幾つかのものは免疫系に好ましい影響を及ぼし、特に乳酸菌及びビフィドバクテリウム属細菌は、「プロバイオティクス」細菌又は菌株と呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
通常、プロバイオティクス細菌又は菌株とは、生きたまま摂取され、宿主の健康又は生理機能に対して有益な効果を与える非病原の微生物を意味する。これらのプロバイオティクス菌株は一般に、上部の消化管を通過する間は生存できる。それらは非病原性、非毒性であり、また一方では消化管内の定住フローラとの生態学的相互作用により、また一方では「GALT」(消化管関連のリンパ組織)を介して免疫系好ましい影響を与えるその能力により、健康上有益な効果を発揮する。プロバイオティクスの定義によると、充分な菌数が存在する場合には、これらの細菌は生きた状態で腸内を移行できるが、しかしながら、それらは腸のバリアを通過できないため、それらの主要な効果はルーメン側及び/又は胃腸管の壁において発揮される。それにより、その投与期間の間、定住フローラの一部が形成される。このコロニー形成(又は一時的なコロニー形成)によって、プロバイオティクス細菌は、例えばフローラに存在する潜在的に病原性の微生物の抑制や、腸内の免疫系との相互作用により、有益効果を発揮できる。
【0003】
特に乳製品において最も良く使用されるプロバイオティクス菌株は、主にラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ビフィドバクテリウム属及びサッカロミセス属の細菌及び酵母である。これらの細菌において知られているプロバイオティクス効果には、ラクトース耐性、胃腸及び泌尿器の感染症の予防又は治療効果の改善、癌の予防、血液コレステロールレベルの減少が例として挙げられる。しかしながら、重要なことは、上記の属の全ての菌株が個々に上記の効果を有するわけではなく、ごく一部だけが有し、ゆえに慎重に選別しなければならないことである。
【0004】
当該分野の技術者の要求を満たすためには、菌株又は菌株の混合物を発見することが必要であり、それは、胃腸のレベルでの炎症であって、しばしば痛みとなる腸の不快感(特に過敏性腸症候群(IBS))、又は、特に大腸炎又は下痢の間、胃腸のレベルで経験される痛みを緩和するのに効果的であり、またそのための手段を提供するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、本発明が解決する課題は、鎮痛効果を有するプロバイオティクス細菌の菌株を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明において、胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与される担体の調製における、少なくとも一つのラクトバチルス アシドフィラスの菌株の使用が提案される。
【0007】
本発明ではまた、胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与される担体を調製するための微生物を選択する、以下の段階を含む方法が提案される。
i)試験微生物を準備し、少なくとも一つの上皮細胞と接触させる段階、及び
ii)少なくとも一つの上皮細胞のオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を検出する段階。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、明白であり、かつ利用可能な菌株の範囲を拡大する長所を提案する意味で有効である。
【0009】
本発明はそのほかにも、胃腸の治療又は予防の目的に使用可能なであるという効果がある。
【0010】
本発明は、それが胃腸の治療又は予防目的でヒト又は動物に投与されるときに特に有効であり、特に、過敏性腸症候群の場合若しくは炎症性反応によって生じる痛みの場合に経験される痛みの減少、又は、腸の炎症の調節に有効である。
【0011】
本発明はまた、治療又は予防目的でヒト又は動物に投与されたとき、分泌及び消化機能を調節することで腸の輸送の制御を可能にするため、有用である。
【0012】
本発明にはまた、薬学的に許容できる担体又は食品に組み込まれたときもその全ての機能が保持されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】4種の微生物による刺激の間、ATCC HTB−38上皮細胞において発現される、μオピオイド受容体のメッセンジャーRNA発現の動態を、時間ごとに表すグラフである。
【図2】3種の微生物による刺激の間、ATCC HTB−38上皮細胞において発現される、CB1受容体のメッセンジャーRNA発現の動態を、時間ごとに表すグラフである。
【図3】3種の微生物による刺激の間、ATCC HTB−38上皮細胞において発現される、CB2受容体のメッセンジャーRNA発現の動態を、時間ごとに表すグラフである。
【図4】異なる条件下でのMOR mRNAの発現を表すグラフである。
【図5】未処理マウス及びL.アシドフィラス処理マウスにおける、結腸TNFαのmRNA発現を表すグラフである。
【図6】未処理マウス及びL.アシドフィラス処理マウスにおける、結腸KCのmRNA発現を表すグラフである。
【図7】未処理マウス及びL.アシドフィラス処理マウスにおける、結腸IL−1βのmRNA発現を表すグラフである。
【図8】上皮細胞の免疫染色の写真である。
【図9】免疫染色された上皮細胞のパーセンテージを表すグラフである。
【図10】上皮細胞の免疫染色の写真である。
【図11】免疫染色された上皮細胞のパーセンテージを表すグラフである。
【図12】上皮細胞の免疫染色の写真である。
【図13】免疫染色された上皮細胞のパーセンテージを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の他の効果及び特性は、以下の説明及び実施例(単なる具体例に過ぎず、本発明を限定しない)の記載により明確になると考えられる。
【0015】
本発明は、胃腸の鎮痛の目的でヒト又は動物に投与される担体を調製するための、少なくとも一つのラクトバチルス アシドフィラスの菌株の使用に関する。
【0016】
本発明において使用するラクトバチルス アシドフィラスは、グラム陽性の菌株である。好ましくは、乳酸の産生を生じさせるホモ発酵代謝型の、カタラーゼ陰性菌株である。本発明において使用されるラクトバチルス アシドフィラスはまた、他の微生物に対して活性を有するバクテリオシン(例えばラクタシン)を産生できる。
【0017】
好ましくは、ペプシンに対する良好な耐性を有し、酸性pH条件下で、パンクレアチンに対する良好な耐性を有し、また胆汁酸塩に対する良好な許容度を示すラクトバチルス アシドフィラスである。
【0018】
好ましくは、「疎水性」と称されるラクトバチルス アシドフィラス、すなわち、極性又は無極性の疎水性有機溶媒(例えばn−デカン、クロロホルム、ヘキサデカン又はキシレン)に対する強い親和性を有するものが使用される。本発明において好ましいラクトバチルス アシドフィラス菌株は、ラクトバチルス アシドフィラスPTA−4797及びラクトバチルス アシドフィラスNCFMである。ラクトバチルス アシドフィラスの中で、ラクトバチルス アシドフィラスPTA−4797菌株は、Rhodia Chimie(26、quai Alphonse Le Gallo、92 512 BOULOGNE−BILLANCOURT Cedex、フランス)によって、ブタペスト条約に従い、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(登録番号PTA−4797として登録)に寄託されている。この菌株は、国際公開第2004/052462号パンフレットにおいて開示されている。
【0019】
本発明における使用法の技術的範囲内において、胃腸の鎮痛は、オピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体を介して好適に行われる。上記のオピオイド受容体は、δ、K及びμの合計3つが存在する。それらは、7回膜貫通ヘリックスを有する、G蛋白質結合受容体スーパーファミリーに属する。受容体の細胞内側の一部はG蛋白質と接触してそれと連結し、使用されるアゴニストのタイプ(主にタンパク質Gαi3>Gαi2>Gαi1)に応じて変化できる。
【0020】
オピオイド受容体(特にμ受容体)は、幾つかの機能を有する。主なものは鎮痛作用であり、ヘマト髄膜のバリアを通過するこの受容体に特異的なβ−エンドルフィン又はモルヒネ型のアゴニストの使用により示される。消化管におけるこの受容体の第2の機能は、分泌及び消化機能を阻害することによって腸への輸送を減少させることである。最後に、オピオイド受容体は、腸の炎症の調節にも関与している。
【0021】
μオピオイド受容体は、中枢神経系のみならず末梢神経にも存在する。その存在は、人体の大部分の主要器官、例えば脾臓、肝臓、腎臓、小腸及び大腸、特に、粘膜下及び腸間膜のニューロンにおける腸の神経系、並びに、インビトロではリンパ球、単球/マクロファージ及び上皮細胞において検出されている。
【0022】
カンナビノイド受容体(CB1及びCB2と呼ばれる)は、7回膜貫通ヘリックスからなる、G蛋白質結合受容体スーパーファミリーに属する。それらは基本的に、CB1は中枢及び末梢神経系において、及びCB2は免疫反応細胞において発現する。ヒトにおいては、これらのカンナビノイド受容体に対する2つの内因性リガンドが存在し、それは腸の上皮細胞において内生的に産生される。
【0023】
腸の神経系にて発現されるカンナビノイド受容体CB1は、胃及び小腸の蠕動の低下、及び胃液分泌阻害の原因となりうる。カンナビノイド受容体によるその他の抗下痢作用及び制癌作用も推定される。
【0024】
本発明の使用法の技術的範囲内において、胃腸の鎮痛は、好ましくはμオピオイド受容体及び/又はCB1受容体及び/又はCB2受容体によりなされる。
【0025】
本発明の使用において使用される担体は、好ましくは薬学的に許容できる担体又は食品である。
【0026】
薬学的に許容できる担体とは、とりわけ、圧縮錠剤、錠剤、カプセル、軟膏、坐薬又は可飲溶液の形態の担体を意味する。
【0027】
好ましくは、本発明において使用される担体は、食品(例えば乳に基づく補助食品、飲料又は粉末)である。好ましくは、動物又は植物由来の乳製品である。
【0028】
乳製品とは、動物及び/又は植物由来の乳液を含む媒体を意味する。動物由来の乳液は、ウシ、ヒツジ、ヤギ又はバッファロー由来の乳であってよい。植物由来の乳液は、本発明にて使用可能な植物由来のいかなる発酵可能な物質であってよく、特に大豆、米又は穀類に由来するものである。
【0029】
より好ましくは、本発明において使用される担体は、発酵乳又はヒト用に調整された乳である。
【0030】
本発明の担体の調製に用いるラクトバチルス アシドフィラスの菌株は、細菌懸濁液の形態でも、前後に凍結させても、濃縮形態でも、乾燥、凍結乾燥又は冷凍形態のいずれの形態でも調製できる。どの形態を用いる場合でも、菌株を凍結できる。
【0031】
本発明による担体の調製に用いるラクトバチルス アシドフィラスの菌株は、その乾燥又は凍結乾燥の間に他の添加物を添加してもよい。
【0032】
本発明にて用いるラクトバチルス アシドフィラスの菌株は、106〜1012細菌/g担体のCFU、特に108〜1012細菌/g担体のCFUで含まれてもよい。CFUは、「コロニー形成単位」を表す。「g担体」とは、好ましくは食品又は薬学的に許容できる担体を意味し、好ましくは凍結乾燥形態においては109〜1012CFU/gである。
【0033】
本発明の担体の調製に用いるラクトバチルス アシドフィラスの菌株は、乳酸菌と混合された形態であってもよい。本発明において適切と考えられる乳細菌には、通常の農業、食品又は医薬産業にて使用される全ての乳酸菌が含まれる。
【0034】
大まかには、最も良く使用され、発酵物に存在する乳細菌としては、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、ラクトバチルス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、ビフィドバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、カルノバクテリウム属、エンテロコッカス属、ミクロコッカス属、バゴコッカス属、スタフィロコッカス属、バチルス属、コクリア属、アルスロバクター属、プロプリオニバクテリウム属及びコリネバクテリウム属のものが挙げられる。これらの乳酸菌を、単独で又は混合して使用する。なお、このリストは網羅的なものではない。
【0035】
本発明はまた、胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与する担体の調製に用いる微生物を選択する、以下の段階を含む方法に関する。
i)試験対象の微生物を準備し、少なくとも一つの上皮細胞と接触させ、
ii)少なくとも一つの上皮細胞におけるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を検出する。
【0036】
段階i)又はii)において使用する上皮細胞は、好ましくはATCC HTB−38細胞株由来(通常HT−29と称する)又はCaco−2細胞株由来である。これらは、大腸癌由来の細胞株である。それらは、ヒトの手術時に得られる生検標本における細胞を用いて単離、精製できる。段階i)は、好ましくは少なくとも一つの上皮細胞による試験において、108〜1012CFUの微生物を使用して行われる。接触時間は、段階i)の間、0時間から24時間で変化させることができ、好ましくは3時間である。
【0037】
通常、段階i)における細胞の接触は、当業者に公知の、常温で、調整された大気及び無菌性状況の下で実施され、インビトロにおける上皮細胞培養条件下で行われる。
【0038】
本発明の段階ii)における選別工程は、好ましくはμオピオイド受容体(MOR)及び/又はCB1受容体及び/又はCB2受容体の発現の検出により行われる。典型的には、一つの受容体のみ(MOR単独、CB1受容体単独又はCB2受容体単独)の発現を検出できる。あるいは、2つの受容体(MOR及びCB1受容体;MOR及びCB2受容体;CB1受容体及びCB2受容体)の発現を検出することもできる。あるいは、3つの受容体(MOR、CB1受容体及びCB2受容体)の発現を検出することもできる。
【0039】
本発明の段階ii)における選別工程は、好ましくは、例えば定量的PCRなどのPCRによるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体のメッセンジャーRNAの発現、並びに任意にそのレベルの検出、又は免疫組織化学的に検出することにより行われる。当業者に公知のmRNAの検出法、及びその測定法を用いてもよい。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
以下の実施例において、本発明の非限定的な例を示す。
1/ 上皮細胞の調製:
大腸癌細胞株HT−29(ATCC HTB−38)を、5%のCO2条件下、37℃にて、それぞれ20%及び10%の子牛胎児血清を含むDMEM培地で培養した。ATCC HTB−38細胞株を、幾つかの試験微生物菌株と1、3、4、8、18又は24時間接触させた。ATCC HTB−38上皮細胞をその後回収し、液体窒素に浸漬し、μオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体のmRNA及びタンパク質を定量化に供した。
【0041】
2/ μオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体のメッセンジャーRNAの検出及び定量化:
リアルタイムPCR:
培養組織の上皮細胞の全RNAを、カラム抽出キット(Macherey−Nagel社製)を用いて分離した。端的には、細胞を1%のβ−メルカプトエタノールを含む溶解バッファーに懸濁し、その後第一のカラムを通過させ、全ての細胞残渣を除去した。DNAse処理後、RNAを相補DNAに逆転写し、更にμオピオイド受容体又はカンナビノイド受容体に特異的なプライマーを使用し、60℃のハイブリダイゼーション温度でリアルタイムPCR(ABPrism 7000、パーキン社)によって増幅した。
【0042】
−μオピオイド受容体(MOR)
センス:ATgCCAgTgCTCATCATTAC;
アンチセンス:gATCCTTCgAAgATTCCTgTCCT;
−また、対照遺伝子として、β−アクチン
センス:TCACCCACACTgTgCCCATCTACgA;
アンチセンス:CAgCggAACCgCTCATTgCCAATg);
−カンナビノイド受容体
CB1センス:CCT AGA TGG CCT TGC AGA TAC C;
CB1アンチセンス:TGT CAT TTG AGC CCA CGT ACA G;
CB2センス:GCT AAG TGC CCT GGA GAA CGT;
CB2アンチセンス:TCA GCC CCA GCC AAG CT。
【0043】
3/ 結果:
結果を、図1から3に示す。結果を、標的遺伝子(β−アクチン)/μオピオイド(MOR)受容体及び/又はカンナビノイド受容体(CB1、CB2)の比率で表した。μオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体は、ATCC HTB−38上皮細胞において発現していた(図1〜3)。
【0044】
ラクトバチルス属のような若干の微生物では、μオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体のmRNA発現の誘導が可能である。
【0045】
結果は、培養組織中の上皮細胞における、μオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の顕著な誘導を示した。
【0046】
この誘導は、特に菌株ラクトバチルス アシドフィラスにおいて強く表れた。
【0047】
図1及び2は、ラクトバチルス アシドフィラスと上皮細胞との3時間のインキュベート後、mRNAのベースの発現量において、約1000倍の増加がμオピオイド受容体(図1)及びCB1(図2)にて観察されたことを示す。
【0048】
図3は、ラクトバチルス アシドフィラスと上皮細胞との3時間のインキュベート後、mRNAのベースの発現量において、約100倍の増加がCB2受容体(図3)にて観察されたことを示す。
【0049】
一方、大腸菌菌株との共存(図1)においては、μオピオイド受容体の誘導が検出されなかった。ラクトバチルス アシドフィラス菌株によるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の誘導は、10ng/mLのTNF−αの場合と同じオーダーであった。
【0050】
(実施例2)
1/ 材料及び方法。
菌株
本発明のラクトバチルス アシドフィラスNCFM菌株を、37℃で一晩、deMan、Rogosa、Sharpe(MRS)培地(Becton Dickinson)で嫌気培養した。対数増殖期の細菌をインビトロ実験に使用した。培養液を動物に接種する前に、グラム染色により純度を解析した。
【0051】
動物及び試験感染
動物実験は、政府のガイドラインに従い、パスツール研究所(リール)の公認の機関において行った。Balb/cマウスをケージ当たり5匹収容し、12時間の光周期にて、標準のマウス餌料及び水道水を自由に摂取させた。一日に一度、14日間、109CFUのラクトバチルス アシドフィラス菌株(0.5%のCMC(カルボキシメチルセルロース、Sigma社)中に再懸濁)を強制的に動物の胃に供給した。動物を、頚椎脱臼によって屠殺した。全ての結腸を動物から切除し、2つのパーツに分割した。一つのパーツを一晩、4%のパラホルムアルデヒド酸で固定し、パラフィン包埋した。第二の結腸のパーツを、μオピオイド受容体(MOR)、カンナビノイド受容体(CB1及びCB2)、及び炎症性サイトカインTNFα、KC、及びIL−1βmRNAの定量化に用いた。
【0052】
TNBS結腸炎の誘導及び試験計画
MORの発現が炎症により制御されるとの知見(Philippe Dら、JCI 2003;Pol Oら、Mol Pharmacol 2001;Pol Oら、Curr Top Med Chem 2004)より、TNBSによって誘導された結腸炎を陽性コントロールとして用いた。動物実験は、政府のガイドラインに従い、パスツール研究所(リール)の公認の機関において行った。動物をケージ当たり5匹収容し、標準のマウス餌料及び水道水を自由に摂取させた。結腸炎誘導の際、マウスを90〜120分間麻酔にかけ、0.9%のNaClと100%のエタノールの1:1混合液中に溶解させたTNBS(40μL、150mg/kg)を直腸内投与した。コントロールのマウスの場合、0.9%のNaClと100%のエタノールの1:1混合液又は生理食塩水を、同じ方法で投与した。動物をTNBS投与の4日後に屠殺した。
【0053】
定量的リアルタイムPCR
Rneasyキット(Macherey−Nagel社製、ウルト、フランス)を使用し、メーカーの指示に従い、全RNAを全結腸組織から単離した。分光光度法を用い、RNAを定量した。RNaseフリーのDNaseI(ロシュダイアグノスティック社、インディアナポリス、イリノイ、米国)20〜50ユニットを用い、30分間37℃処理の後、オリゴ−dTプライマー(ロシュダイアグノスティック社、インディアナポリス、イリノイ、米国)を用いて一本鎖cDNAを合成した。GeneAmp Abiprism 7000(Applera、Courtaboeuf、フランス)を用い、SYBR green Master Mix(Applera社製Courtaboeuf、フランス)を使用し、特異的なマウスオリゴヌクレオチド(表1を参照)によりmRNAを定量した。各アッセイにおいて、検量された、鋳型を含まないコントロールを含めた。各サンプルにつき、三回試験を行った。SYBR green色素の強度を、Abiprism 7000 SDSソフトウェア(Applera社製、Courtaboeuf、フランス)を使用して解析した。
全ての結果は、影響のないハウスキーピング遺伝子であるβ−アクチンにより標準化した。
【0054】
【表1】
【0055】
MOR−CB1−CB2の免疫組織化学法
ラクトバチルス アシドフィラス菌株を投与されたマウス結腸のパラフィン切片を作製し、免疫組織化学法を行った。無処置の動物をコントロールとして用いた。0.1%のTriton X−100を含むPBSにおいて4℃で5分間浸透処理を行った後、切片を1.5%のヤギ正常血清にて15分、及びブロッキングバッファー(ミルク中1%BSA)にて15分インキュベートし、抗体の非特異的吸着を最小化した。その後組織を室温で2〜12時間、CB1(1:200、Cayman Chemical社、アナーバー、米国)、又はCB2(1:10、Alpha Diagnostic社、サンアントニオ、米国)、又はMOR(1:500、Diasorin社、アントニー、フランス)と反応するウサギポリクローナル一次抗体とインキュベートした。その後切片を、Alexa 488 ヤギ抗ウサギIgGのFITC蛍光色素(1:100希釈、Dako Laboratories社、Trappes、フランス)とのコンジュゲートと、室温で1時間インキュベートした。各工程の間、切片を0.05%のTritonX−100を含むPBSにより5分間ずつ二回洗浄した。その後スライドをHoescht溶液(0.125mg/mL)で対比染色し、顕微鏡検査に供した。陰性コントロールの場合、特異抗体の代わりに正常ウサギ血清による染色を行った。蛍光顕微鏡(ライカ社、Bensheim、ドイツ)を用い、免疫蛍光を観察した。MOR、CB1及びCB2における免疫反応した上皮細胞の数を、5箇所の強拡大視野(HPF)において計数し、100個の上皮細胞当たりの個数として表した。
【0056】
結果を図4から13に示す。
【0057】
2週にわたるラクトバチルス アシドフィラスの投与(1日当たり109CFU)後、結腸においてMOR mRNA発現が無処置の動物(p<0.05)と比較し24倍増加していることが明らかとなった。ラクトバチルス アシドフィラス菌株によるMOR mRNAの誘導は、陽性コントロールとして準備した、TNBS誘導された結腸炎における2倍の誘導と比較し、より顕著であった(図4)。
【0058】
翻訳のレベルでの、特に結腸上皮細胞におけるMOR、CB1及びCB2の誘導を評価するため、特にこれらの受容体と反応する抗体を使用し、免疫組織化学法を行った。ラクトバチルス アシドフィラス菌株を投与されたマウスにおいて、全ての切片において、MOR(60±10%対5±3%)、CB1(60±8%対20±4%)又はCB2(40±7%対20±5%)に関して染色された上皮細胞の数は、コントロールのマウス(図8から13)と比較し顕著に多かった。管腔内細菌(図8から13)と接触した場合、主に上皮表面に存在する上皮細胞において局所的に緑色の染色が観察された。第一抗体を省略した、又は無関係な抗体を使用したコントロールでは陰性だった。
【0059】
ラクトバチルス アシドフィラス誘導による結腸上皮細胞におけるMOR、CB1及びCB2の発現が、マウスの機能上重要か否かを評価するため、無処置のマウス及び14日間ラクトバチルス アシドフィラス菌株の投与を受けたマウスにおける、数種類の炎症性サイトカインのmRNA濃度を比較した。コントロールと比較し、炎症性サイトカインTNFα、KC及びIL−lβのmRNA濃度の50%以上の発現減少が、ラクトバチルス アシドフィラスを処理された動物において観察されたことから、ラクトバチルス アシドフィラス菌株が、少なくとも部分的に、上皮細胞におけるMOR、CB1及びCB2の過剰発現によるマウス結腸の炎症性サイトカインの生理的発現を減少させることを示唆する。
【0060】
1/ 材料及び方法
インビトロにて、結腸上皮細胞のHT−29又はCaco−2を、数種のプロバイオティクス又は細菌(L.acidophilus(NCFM)、L.salivarius(UCC118)、L.paracasei(LPC37)、共生大腸菌、付着性浸潤性大腸菌(LF82))(100細菌/細胞)と0〜6時間インキュベートした。プロバイオティクスによるμオピオイド受容体(MOR)及びカンナビノイド受容体(CB1及びCB2)の発現誘導におけるNFκB経路の役割を、特異的な抑制物質(カフェイン酸フェネチルエステル(CAPE))を用いてHT−29細胞を前処理することにより試験した。TNFα(10ng/mL、2時間)(G共役タンパク質の発現誘導源)を陽性コントロールに使用した。インビトロで受容体(MOR1、CB1及びCB2受容体)の発現誘導に最も効果的なプロバイオティクスを選別した後、プロバイオティクスを109CFUにて15日間Balb/cマウス(n=10)に経口投与し、インビボ試験を行った。マウスの上皮細胞及び結腸におけるMOR、CB1及びCB2の発現を、リアルタイムPCR及び免疫組織化学により解析した。炎症性サイトカイン(TNFα、KC及びIL−1β)のmRNAを、マウス結腸のリアルタイムPCRにより解析した。
【0061】
L.アシドフィラス及びL.サリヴァウスのみ、培養開始後わずか1時間の時点で、上皮細胞において強力なMOR発現を急速に誘導しうることが解明された。この発現誘導は、TNFα誘導細胞において観察された発現誘導と類似していた。CB1(848±180対229±55、p<0.05)及びCB2(1498±333対341±163、p<0.01)に関しては、L.アシドフィラスのみがこれらの受容体の発現を誘導した。CAPEによるNFκB経路の阻害により、L.アシドフィラスで刺激された上皮細胞によるMORの発現の変動が誘導されなかった。インビボにおいて、L.アシドフィラスの投与により、結腸のレベルでMOR mRNA(24±0.75、p<0.01)の発現が強力に誘導された。免疫組織化学による解析より、L.アシドフィラスを投与された動物の結腸細胞におけるインビボでのMOR、CB1及びCB2発現の誘導が確認された。これらの受容体の誘導は、結腸での炎症性サイトカイン発現の少なくとも50%の減少と関連していた。
【0062】
L.アシドフィラスは、インビトロでの上皮細胞、及びインビボでの結腸における、MOR、CB1及びCB2の発現を最も効率的に誘導する菌株であった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮細胞においてオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を誘導するラクトバチルス アシドフィラスの菌株の、上皮細胞におけるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現の誘導を介したヒト又は動物の胃腸の鎮痛の治療薬の製造における使用であって、前記ラクトバチルス アシドフィラスの菌株は唯一の有効成分である使用。
【請求項2】
上皮細胞においてオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を誘導するラクトバチルス アシドフィラスの菌株の、上皮細胞におけるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現の誘導を介したヒト又は動物の胃腸の鎮痛の治療薬の製造における使用であって、前記ラクトバチルス アシドフィラスの菌株は他の乳酸菌との混合物の形態ではない使用。
【請求項3】
前記ラクトバチルス アシドフィラスの菌株がATCC寄託番号:PTA−4797(Lactobacillus acidophilus NCFM菌株としても知られる)である、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
前記鎮痛がオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体を経てなされる、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記菌株は、薬学的に許容できる担体中に製造される、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記菌株は、動物又は植物由来の乳製品中に製造される、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
以下の段階を含み、:
i) 少なくとも一つの上皮細胞を試験微生物と接触させる段階、
ii) 少なくとも一つの前記上皮細胞においてオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を検出する段階
前記試験微生物は、前記少なくとも一つの上皮細胞においてオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を誘導していた場合に選択される、
上皮細胞におけるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現の誘導を介したヒト又は動物の胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与するための単一の微生物を選別する方法。
【請求項8】
工程i)又はii)における少なくとも一つの上皮細胞が、ATCC HTB−38細胞株又はCaco−2細胞株に由来する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程ii)が、μオピオイド受容体及び/又はCB1受容体及び/又はCB2受容体を検出することによって行われる、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
工程ii)が、オピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体のメッセンジャーRNAの発現を検出することによって行われる、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
上皮細胞においてオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を誘導するラクトバチルス アシドフィラスの菌株の、上皮細胞におけるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現の誘導を介したヒト又は動物の胃腸の鎮痛の治療薬の製造における使用であって、前記ラクトバチルス アシドフィラスの菌株は唯一の有効成分である使用。
【請求項2】
上皮細胞においてオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を誘導するラクトバチルス アシドフィラスの菌株の、上皮細胞におけるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現の誘導を介したヒト又は動物の胃腸の鎮痛の治療薬の製造における使用であって、前記ラクトバチルス アシドフィラスの菌株は他の乳酸菌との混合物の形態ではない使用。
【請求項3】
前記ラクトバチルス アシドフィラスの菌株がATCC寄託番号:PTA−4797(Lactobacillus acidophilus NCFM菌株としても知られる)である、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
前記鎮痛がオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体を経てなされる、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記菌株は、薬学的に許容できる担体中に製造される、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記菌株は、動物又は植物由来の乳製品中に製造される、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
以下の段階を含み、:
i) 少なくとも一つの上皮細胞を試験微生物と接触させる段階、
ii) 少なくとも一つの前記上皮細胞においてオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を検出する段階
前記試験微生物は、前記少なくとも一つの上皮細胞においてオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現を誘導していた場合に選択される、
上皮細胞におけるオピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体の発現の誘導を介したヒト又は動物の胃腸の鎮痛を目的としてヒト又は動物に投与するための単一の微生物を選別する方法。
【請求項8】
工程i)又はii)における少なくとも一つの上皮細胞が、ATCC HTB−38細胞株又はCaco−2細胞株に由来する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程ii)が、μオピオイド受容体及び/又はCB1受容体及び/又はCB2受容体を検出することによって行われる、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
工程ii)が、オピオイド受容体及び/又はカンナビノイド受容体のメッセンジャーRNAの発現を検出することによって行われる、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−246300(P2012−246300A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172823(P2012−172823)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2007−531724(P2007−531724)の分割
【原出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(397060588)デュポン ニュートリション バイオサイエンシーズ エーピーエス (67)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2007−531724(P2007−531724)の分割
【原出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(397060588)デュポン ニュートリション バイオサイエンシーズ エーピーエス (67)
【Fターム(参考)】
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