説明

背もたれ付き椅子

【課題】背アウターシェルを、大型化することなく背フレームに強固に取り付け可能ならしめる。
【手段】背アウターシェル12は樹脂製であり、サイドリブ23とその内側に位置したインナーリブ24とを有する。背もたれ5は、その背面をサイドリブ23に当接させた状態に配置されている。背フレーム8の後端から幅広の背支持部11が立ち上がっており、背支持部11の左右両端部に背支柱13を設けている。背インナーシェル16のうちサイドリブ23とインナーリブ24とで囲われた空間に、背支柱13の上部13aが嵌まるポケット部25を形成している。ポケット部25は背アウターシェル12のデッドスペースに設けているため、背アウターシェル12は大型化を招来することなく背フレーム8に取り付けられる。背インナーシェル16は、下部ストッパー29,コーナー係合爪32を背フレーム8に係合させることで、背フレーム8に抜け不能に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれを備えた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロッキング椅子において、ベースに後傾動自在に連結された背フレームに背アウターシェルを取り付けて、この背アウターシェルに背もたれを取り付けたり、背フレームに背もたれを取り付けたりすることが行われている。
【0003】
背もたれを背フレームに取り付ける例として特許文献1には、背もたれが前後に開口した枠構造のバックサポートにメッシュ材を取り付けた構造になっている椅子において、背フレームの左右両端部に起立部を突設し、バックサポートを構成する左右サイドメンバーの下端部を前記起立部に嵌め込むことが開示されている。また、特許文献2には、左右に配置された背支持部にシェル状の背板を嵌め込むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−122461号公報
【特許文献2】特開2007−143961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記両公報は背もたれの構成要素を背支柱に嵌め込むものであり、いずれも椅子の組み立てが簡単である等の利点をする。他方、背アウターシェルを背フレームに取り付ける構造として、ねじ止めも採用されているが、特許文献2のような嵌め込み方式を採用すると組み立てを簡単に行える利点がある。
【0006】
その場合、背アウターシェルは背もたれを後ろから覆う美粧機能も発揮しているため、背フレームはできるだけ外部に露出しないのが好ましい。また、背アウターシェルには大きな背もたれ荷重が作用するため、背アウターシェルと背フレームとの連結部は高い支持機能を発揮する必要がある。
【0007】
本願発明は、このような現状に鑑み成されたものであり、特許文献2のような取り付けの容易性は確保しつつ高い支持強度を確保すること等を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明(請求項1の発明)の椅子は、座の後ろ側に配置した背支柱に背アウターシェルを取り付けており、背もたれを、前記背アウターシェルのみ又は背アウターシェルと背支柱とに取り付けている構成において、前記背アウターシェルの前面には前向きに突出したリブの群を突設しており、前記背支柱は前記リブで囲われた空間に収まるように配置されていると共に、前記背アウターシェルの前面には、前記背支柱の上部が下方から嵌まる下向き開口のポケット部を形成している。
【0009】
本願発明は様々に展開できる。その例を請求項2,3で特定している。このうち請求項2の発明は、請求項1において、まず、前記座の下方には脚支柱の上端が嵌着するベースが配置されており、前記ベースに後傾動自在に連結された背フレームの後端に、左右方向に広がる略板状の背支持部が立ち上がっていてこの背支持部の左右両側部から前記背支柱が立ち上がっている。
【0010】
更に、請求項2では、前記背アウターシェルの下部のうち左右中間部と左右両端部とに、前記背支持部と背フレームの左右後端部とに形成した前係合部に後ろから引っ掛かり係合する後ろ係合部を設けており、前記背もたれの後ろ係合部は、前記背支柱の上端部をポケット部に嵌めた状態で背もたれの下部を手前に押すことにより、弾性変形してから前記背アウターシェルの前係合部に係合するようになっている。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記背支持部の前面には前向きに開口した上下長手の縦溝を形成している。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、背アウターシェルの前面にはリブの群を形成しているため、背アウターシェルは全体的に薄肉化しつつ極めて高い強度を確保できる。そして、背もたれはリブの手前に位置するため、リブで囲われた空間はデッドスペースになっているが、背支柱はデッドスペースである空間に配置されているため、背アウターシェルは、大型化したり強度低下させたりすることなく背支柱に連結することができる。
【0013】
また、ポケット部も背アウターシェルの補強効果を発揮するため、強度アップにも貢献できる。また、背支柱は背アウターシェルの手前側において露出した部分を有するため、実施形態のように肘掛け装置の取り付けに利用することも可能である。
【0014】
請求項2の構成を採用すると、背もたれは、ポケット部を背支柱に嵌めこんでから下部を背フレームに押し付けるというごく簡単な操作により、背フレームにしっかりと取り付けられる。従って、椅子の組み立て作業の能率を格段に向上できる。
【0015】
背支柱には背アウターシェルの荷重が後ろから作用するため、背アウターシェルの狭い部位に応力が集中することを防止するためには、背支柱はある程度の左右幅が存在するのが好ましい。すなわち、背支柱と背アウターシェルとの当接面はある程度の大きさを有するのが好ましい。他方、背フレームは金属のダイキャスト品や樹脂の成形品とするのが好ましいが、背支柱にある程度の左右横幅を持たせると、必要以上の強度になる可能性があると共に素材の使用量が増えて不経済になるおそれがある。
【0016】
これに対して、本願請求項3のように背支柱の前面に縦溝を形成すると、必要な強度は確保しつつ材料の使用量を減らすことができる利点がある。また、実施形態に示すように、縦溝を背もたれの取り付けに利用することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る椅子の外観図で、(A)手前から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は側面図である。
【図2】(A)は椅子の主要構成要素の分離斜視図、(B)は背フレーム及び背アウターシェルの部分斜視図である。
【図3】背フレームと背アウターシェルとの分離斜視図である。
【図4】(A)は背フレームと背アウターシェルとの分離斜視図、(B)は背フレームと背アウターシェルとの連結部の部分的な縦断側面図、(C)は背フレームの後ろコーナー部の部分斜視図、(D)は背アウターシェルの部分的な斜視図である。
【図5】(A)(B)とも肘掛け装置の取り付け構造を示す斜視図である。
【図6】背アウターシェルと背フレームとより成るバックサポートと背インナーシェルとを並べて配置した図である(背インナーシェルは裏返して表示している。)。
【図7】背インナーシェルとバックサポートとの分離斜視図である。
【図8】背インナーシェルとバックサポートとの分離斜視図である。
【図9】(A)(B)は背インナーシェルの部分的な斜視図、(C)は背アウターシェルの部分的な斜視図である。
【図10】(A)(C)は背アウターシェルの部分的な斜視図、(B)(D)は背インナーシェルの部分的な斜視図である。
【図11】(A)はキャッチ部材と背アウターシェルとの分離斜視図、(B)はキャッチ部材を背インナーシェルに取り付けた状態での斜視図、(C)は背インナーシェルとキャッチ部材との分離斜視図、(D)はキャッチ部材の斜視図である。
【図12】背もたれの略上半部を図6のY−Y線で切断した断面図である。
【図13】背もたれの上半部を図6のY−Y線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、この前後左右の文言は着座した人を基準にしている。正面視方向は着座した人と対峙した方向であり、従って、正面視での左右と着座した人から見た左右とは逆になる。
【0019】
(1).椅子の概略
まず、椅子の概要を主として図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態は事務用等に多用されている回転椅子に適用しており、図1に示すように、椅子は、脚支柱1及びキャスタを有する脚装置2と、脚支柱2の上端に固定したベース3と、ベース3の上に配置した座4と、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ5とを有している。
【0020】
ベース3の上には、図1(B)に表れている中間部材(座受け部材)6が配置されており、この中間部材6に樹脂製の座アウターシェル7が取り付けられている。座4は、樹脂製の座インナーシェル(座板)とその上面に重ね配置した座クッション材とを有しているが、本願との直接の関係はないので説明は省略する。
【0021】
図2に示すように、ベース3には背フレーム8が後傾動自在に連結されており、この背フレーム8に背アウターシェル9が取り付けられている。背フレーム8は、略前後方向に延びる左右のサイドアーム9とその後端に一体に繋がった左右横長のリア部10と、リア部10の後端から立ち上がった背支持部11とを有しており、この背支柱部11に背アウターシェル12が取り付けられている。
【0022】
背支柱部11は概ね板状の状態で立ち上がっており、その左右両側部には上向きに突出した背支柱13を一体に設けている(背支柱13も背支持部11の一部であり、従って、背支持部11は基部と左右背支柱13とを有する上向き開口コ字形になっている。)。左右サイドアーム9の前後中途部にはジョンイントバー14が一体に繋がっている。このため、背フレーム8は頑丈な構造になっている。
【0023】
なお、本実施形態の椅子はロッキングに際して座が後退しつつ後傾するシンクロタイプであり、ジョンイントバー14には、中間部材6に連結された連結軸15が一体成形又は溶接で設けられている。図3(A)で軸15の右端に嵌まっているのは、中間部材6に装着される抜け止めキャップである。
【0024】
背フレーム8はガラス繊維入りポリアミド系樹脂のようなエンジニアリングプラスチック製であるが、アルミ等の金属のダイキャスト品や板金製品も採用可能である。背アウターシェル12は、ポリプロピレン等の樹脂を素材にした成形品である。図1(B)に示すように、背アウターシェル12の上部は、側面視でカーブしながら背もたれ5の後ろにはみ出た後ろ向き突出部12aになっており、この後ろ向き突出部12aの箇所は上下に開口している。
【0025】
図1(A)に示すように、背もたれ5は、樹脂製の背インナーシェル(背板)16とその前面に張ったクッション17とを備えており、クッション17はクロス等の表皮材18で覆われている。表皮材18は背インナーシェル16の後ろに回り込んでいるが、背インナーシェル16の裏面の全体は覆っていない。そして、本実施形態では、背フレーム8の背支持部11及び背アウターシェル12でバックサポートが構成されており、このバックサポートに対して背もたれ5が2段階に高さを変えて取り付けられる。この点を次に説明する。
【0026】
(2).背フレームと背アウターシェルとの取り付け構造
まず、主として図3〜5を参照して背フレーム8に対する背アウターシェル12の取り付け構造を説明する。図4(A)に示すように、背支柱13は概ね角柱のような外観を呈しており、背支柱13の前面には、背支持部11の下端まで延びる縦溝20が形成されている。また、背支柱13の上端には、左右外向きに突出したブロック部21が一体に形成されている。背支柱13の上端部とブロック部21との間には上向きに開口溝22が形成されている。
【0027】
他方、例えば図3に示すように、背アウターシェル12の左右側部には上下長手のサイドリブ23が形成されていると共に、サイドリブ23の内側には上下長手のミドルリブ24が形成されている。従って、サイドリブ23とミドルリブ24との間は前向きに開口した空間になっている。そして、インナーリブ24の外側に下向きに開口したポケット部25を形成しており、ポケット部25が背支柱13の上端部13aに上から嵌まっている。これにより、背アウターシェル12は背支柱13の上端部13aに対して左右動不能で前後移動不能に保持されている。
【0028】
ポケット部25とサイドリブ23との間の空間にブロック部21がきっちり嵌まっている。また、ポケット部25の外側板25aが、背支柱13とブロック部21の間の上向き開口溝22に嵌まっている。なお、背アウターシェル12はその表面を成形する第1金型と裏面側を成形する第2金型とを主要要素とした金型装置で成形されるが、ポケット部25は第1金型に装着したスライド型によって成形される。そして、背アウターシェル12はポケット部の下方部位が最も前に位置するように縦断側面視で湾曲しているため、第1金型にスライド型をスライド自在に装着することを簡単に行える。
【0029】
サイドリブ23は背アウターシェル12の側端からある程度の寸法だけ内側に寄った部位に設けている。また、例えば図2(A)に示すように、左右サイドリブ23の上端には左右横長のアッパリブ26が一体に繋がっている一方、左右ミドルリブ24の下端には左右横長のロアリブ27が繋がって、ロアリブ27とアッパリブ26とは上下長手のインナーリブリブ28で繋がっている。背インナーシェル16は、サイドリブ23とアッパリブ26とに当接している(少なくともサイドリブ23で支持されておれば足り、アッパリブ26と背インナーシェル16との間には隙間が空いていてもよい。)。
【0030】
他方、図12に示すように、人が背もたれ5にもたれ掛かっていない状態では、ミドルリブ24とインナーリブ28及びロアリブ27と背インナーシェル16との間には隙間が空いている。従って、背インナーシェル16は着座者の体圧で多少は変形し得る。但し、背インナーシェル16の左右両側部と上部は背アウターシェル12に設けたサイドリブ23等にきちり保持されている。従って、大きくベンディングはしない。例えば図2(A)に示すように、背インナーシェル16は着座者の腰部に当たる部分(ランバーサポート部)が最も前に位置するように側面視(或いは縦断側面視)で前向き凸状に湾曲しており、これに倣って、背アウターシェル12も側面視で前向き凸状に湾曲している。
【0031】
図4(A)(B)に示すように、背アウターシェル12の下部の左右中間部には、請求項に記載した後ろ係合部の一環として、左右側板29aの前端にバー部29bが連結された下部ストッパー29を前向きに突設している一方、背フレーム8の背支持部11には、請求項に記載した前係合部の一環として、下部ストッパー29が嵌まる下部ストッパー穴30を形成している。
【0032】
そして、下部ストッパー29のバー部29bに、側面視で斜め後ろ上に突出した爪片29cを形成している一方、ストッパー穴の上内面には、爪片29cが手前から引っ掛かり係合する係合段部31を形成している。このため、背アウターシェル12は上向き抜け不能に保持されている。
【0033】
更に、図4(A)(C)(B)に示すように、背アウターシェル12の左右コーナー部に、請求項に記載した後ろ係合部の一環として、側面視で斜め後ろ上向きに突出したコーナー係合爪32を設けている一方、背フレーム8の左右後部のコーナー部には、請求項に記載した前係合部の一環として、コーナー係合爪32が嵌まるコーナー係合穴33を形成している。コーナー係合穴33には、コーナー係合爪32が弾性変形してから戻ることで引っ掛かる下向きのコーナー係合突起34を形成している。
【0034】
図4(A)(C)(B)よち矢印35で示すように、コーナー係合爪32は後ろからコーナー係合穴33に嵌め込まれる。同様に、下部ストッパー29のバー部29bも、後ろから手前に押すことでストッパー穴30に嵌入し、いったん弾性変形してから戻ることで段部31に手前から引っ掛かり係合する。背アウターシェル12の下端と背フレーム8の後端とは、同一部材であるかのように外面が滑らかに連続していると共に、背支持部11や背支柱13は外部に露出していない。このため、高い美粧効果を発揮している。
【0035】
以上のように、ポケット部25はサイドリブ23とミドルリブ24との間のデッドスペースに配置されているため、背アウターシェル12が大型化することはない。また、背もたれ荷重により、背もたれ5には背支柱13の上端を中心にして下部が手前に押されるようなモーメントが生じるが、背もたれ5の下部(背インナーシェル16の下部)は広い範囲で背支持部11に重なっているため、背支持部11で背もたれ5をしっかりと支えることができる。
【0036】
なお、図5に示すように、ブロック部21には後ろ向きに開口した凹部36が形成されており、この凹部36に固定式肘掛け37の上端部38を嵌め込んでビス39で固定することができる。固定式肘掛け37の上端部38には、ナット40が嵌まるナット穴41をその先端に開口するように形成しており、ビス39はブロック部21に前から挿通されてナット40にねじ込まれる。固定式肘掛け37を取り付けるときは、背アウターシェル12のサイドリブ23のうちポケット部25の外側の部分23aは除去又は内向きに折り畳まれる(或いは折り返される)。。この除去又は折り畳みを容易ならしめるため、サイドリブ23には上下2本のスリット42を形成している(除去又は折り畳まれる部分23aの付け根も薄肉化している。)。
【0037】
(3).第1係合部
次に、背支持部11及び背アウターシェル12より成るバックサポートに対する背もたれ5の取り付け構造を、主として図6以下の図面を参照して説明するが、これに先だって、背インナーシェル16の基本構成を説明しておく。
【0038】
背インナーシェル16はポリプロピレン等の樹脂を素材とした成形品であるが、略下半部には多数の横長スリット45が多段に形成されている。背インナーシェル16は横長スリット45の群を有しつつ全体としては連続しており、このため、おおよそ下半部はきわめて柔軟な構造になっている。また、背インナーシェル16には、ある程度の腰を持たせるために、多数の横長リブ46を形成している。
【0039】
本実施形態では、背もたれ5をバックサポートに連結する手段として、背インナーシェル16の背面に、その上部でかつ左右両側部に位置した第1前部係合部47と、下端寄り部位でかつ左右両側部に位置した第2前部係合部48と、上側でかつ中心寄りに位置した左右一対の第3前部係合部49と、第3前部係合部49の左右外側に位置した第4前部係合部40とを形成している。他方、背アウターシェル12には、第1前部係合部47に対応した左右の第1後部係合部51と、第2前部係合部48に対応した第2後部係合部52と、第3前部係合部49に対応した第1後部係合部53と、第4前部係合部50に対応した第4後部係合部54とを設けている。
【0040】
図11(B)(C)に示すように、第1前部係合部47は、左右の羽根部47aを有していて基本的には底面視Tになっており、羽根部47aの上端には上面板47bが連続している。他方、第1後部係合部51は背アウターシェル12とは別体のキャッチ部材で構成されている。そして,この第1後部係合部51は、背インナーシェル16に重なる基板51aから左右足部51bを手前に突出させた平面視コ字形の基本形態であり、左右足部51bの前端に、第1前部係合部47を手前から抱持する内向きフランジ51cを形成している。内向きフランジ51cの上下内面は、第1前部係合部47の誘い込みのため傾斜ガイド面になっている。
【0041】
第1後部係合部51の基部51aには、上下一対の外向きフランジ51dを形成している。他方、背アウターシェル12には、第1後部係合部51の上下外向きフランジ51dを手前から抱持するキャッチ部55の対が上下に2対(2組ずつ)ずつ形成されている。キャッチ部55はサイドリブ23に寄った箇所に配置しており、従って、第1後部係合部51は、ミドルリブ24の側に寄せた状態で背アウターシェル12に近接させてから左右外側にずらすことにより、キャッチ部55に装着される。これにより、第1後部係合部61は背アウターシェル12に前向き移動不能に取り付けられる。
【0042】
図11(B)に示すように、キャッチ部55の対の間には左右横長のリブ56を設けているが、このリブ56に凹所56aを形成している一方、図11(B)に示すように、第1後部係合部51の後面には、凹所56aに嵌まる後ろ向き突起51eを形成している。このため、第1後部係合部51は簡単には脱落しない状態で背アウターシェル12に保持される(組み立て工程で背アウターシェル12をひっくり返す等しても、第1後部係合部51が脱落することはない。)。例えば図7に示すように、キャッチ部55の左右外側には第1後部係合部51を位置決めするための規制板57を設けている。
【0043】
そして、背もたれ5の上部を重ねてから下にずらすことにより、背インナーシェル16の第1後部係合部51は第1後部係合部51に上から嵌合し、これにより、背もたれ5の上部は背アウターシェル12に対して前後離反不能で左右動不能に保持される。背もたれ5の高さ位置は、第1前部係合部47の上面板47bが第1後部係合部51に当たることで規制できる。
【0044】
また、背アウターシェル12にはキャッチ部55を上下に2組形成しているため、第1後部係合部51を上下いずれかのキャッチ部55に取り付けることにより、背もたれ5の高さを2段階に変更できる。図7と図11(A)では上下2個の第1後部係合部51を表示しているが、実際に使用するのは上下いずれか一方(左右2個)である。また、図6では第1後部係合部51は表示していない。第1後部係合部51は樹脂の成形品である。
【0045】
(4).第2係合部
図10に示すように、背インナーシェル16の第2前部係合部48は後ろ向きに突設しており、その先端(後端)に平面視内向きの係合爪48aを設けている。他方、第2後部係合部52は背フレーム8を構成する背支持部11の縦溝20の内部に形成しており、従って、第1前部係合部48は縦溝20に嵌まって左右動不能に保持される。そして、第2後部係合部52は、第1前部係合部48の係合爪48aが弾性変形して乗り越えて、乗り越えると手前に戻り不能に引っ掛かる矢尻状の係合突起になっている。
【0046】
第1前部係合部47を第1後部係合部51に嵌め込んだ状態(すなわち通常の使用状態)では、第2前部係合部48は第2後部係合部52と重なる高さに位置しており、従って、背もたれ5の取り付けに際しては、まず、第1前部係合部47を第1後部係合部51に嵌め込んでから、背もたれ5を背アウターシェル12に対して強く押し付けると、第2前部係合部48の係合爪48aは弾性変形してから第2後部係合部52の後ろに移行し、これにより、背もたれ5は手前に離反不能に保持される。
【0047】
また、図10(B)に明示するように、第2後部係合部52は第2前部係合部48の上向き動を阻止する上記載部52aも有しており、このため、背もたれ5は上向き動不能に保持される。背もたれ5を取り外すに際しては、背もたれ5の下端部を下向きに引っ張ることで第2前部係合部48を下方にずらし、それから背もたれ5の下部を手前に移動させる。背インナーシェル16は多数の横長スリット45の存在により、下端を引っ張ると背もたれさの下半部が伸びて第2前部係合部48は下降動するため、第2後部係合部52に対する係合を解除することができる。
【0048】
(5).第3係合部・第4係合部
図7〜9に示すように、第3前部係合部49は下向きに延びるレバー形状になっており、背インナーシェル16に切り抜き形成した状態になっている。そして、第3前部係合部49の付け根寄りの上部に角形の係合穴59を空けており、この係合穴59が第3後部係合部53に嵌まるようになっている。第3係合部53は、下面を係合面とする側面視三角形に形成されている。
【0049】
図12,13に示すように、第3前部係合部49は、背インナーシェル16に形成した後ろ向きに突出部60から下向きに延びる形態になっており、その全体が背インナーシェル16の後ろに位置している。そして、第1前部係合部47を第1後部係合部51に嵌め込んでから背もたれ5を背アウターシェル12に押し付けると、第3前部係合部49の係合穴59が第3後部係合部53に嵌まり込む。これにより、背もたれ5は上向き動不能にしっかりと保持される。すなわち、背もたれ5の上向き動阻止機能を、この第3係合部49,53が最も強く担っている。
【0050】
第3前部係合部49は、背インナーシェル16のうち横長スリット45の群を設けている部分の上部に設けている。従って、図12に一点鎖線で示すように、背インナーシェル16は、第2前部係合部48と第2後部係合部52との係合を解除してから下端を手前に引くと、背インナーシェル16の下半部を手前に捲ることができる。これにより、人は指先を第3前部係合部49に掛けてこれを手前に引いて、第3係合部49,53の係合を解除できる。
【0051】
例えば図7に示すように、第3前係合部49の内側部には側面視上向き鉤型の補助係合爪49bを設けている。そして、背インナーシェル16のうち補助係合爪49bの上側には、第3前係合部49を手前に引くと補助係合爪49bが引っ掛かる補助係止部49cを設けている。従って、第3前係合部49を手前に引いた状態に保持できる。
【0052】
このように補助係合爪49bと補助係止部49cとを有するため、背もたれ5を取り外すに際しては、左右の第3前係合部49を1つずつ簡単に係合解除できる。従って、片方の第3前係合部49を手前に引いた状態に保持しておく必要がなくて、背もたれ5の取り外し作業を楽に行える。補助係止部49cとは1つの第3前係合部49について左右一対ずつ設けてもよい。また、片側だけに設ける場合、左右方向の外側に設けてもよい。
【0053】
図9に示すように、第3前部係合部50は略角形の形態を成して後ろ向きに突出しており、その先端には平面視で斜め手前外向きに突出した係合溝54を形成している。他方、第4後部係合部54は、ミドルリブ24の外側に配置した上下長手の補助リブ62の内側面に突設しており、爪状の形態を成している。第3前部係合部50は、補助リブ62とミドルリブ24との間に入り込んでいる。従って、背もたれ5は、第4係合部50,54の嵌まり合いによって手前にずれ不能に保持されているのみならず、補助リブ62とミドルリブ24との規制作用で左右動不能に保持されている。
【0054】
第3係合部49,53は背もたれ5を上下動不能に保持するものであり、背もたれ5が手前に離反することを阻止する機能は備えていないが、第4係合部50,54が第3係合部49,53の左右外側に位置しているため、例えば、背インナーシェル16のうち使用者の体圧によって第3係合部49,53の近辺に前後方向の振動が作用しても、第3前部係合部49が第3後部係合部53から外れることはない。
【0055】
第4前部係合部50の付け根寄り部位には、第4後部係合部53に手前から当接するストッパー片50bを設けている。このため、背インナーシェル16のうち第4前部係合部50の近辺部が前後方向にバウンドするようなことはない。これにより、第3前部係合部50が第3後部係合部53から外れることを確実に防止できる。
【0056】
背インナーシェル16を所定の高さよりやや高い状態にして背アウターシェル12に重ねてから下向きにずらすと、第1前係合部47が第1後係合部51に嵌まり込むと共に、第4前係合部50が第4後係合部54に係合し、かつ、第3係合部49は、第1及び第4係合部47,51,49,54の嵌まり合いに誘われて、弾性変形してから戻り変形することで、係合穴59が第4後係合部53に嵌合する。これにより、背もたれ5は前後動不能及び左右動不能で前後動不能に保持される。背もたれ5を手前に捲ることにより(或いは上向きに折り返すことにより)、第3前係合部49を手前に引いて第3後係合部53から離脱させることができる。すると、背もたれ5を上にずらと、第4前部係合部50と第4後部係合部54との係合を解除できる。
【0057】
例えば図7に示すように、背インナーシェル16の上部でかつ左右中間部に角形のアッパ突起63を設けており、このアッパ突起63が背アウターシェル12における左右インナーリブ28の間にきっちり嵌まるようになっている。また、アッパ突起63の左右両側には、ミドル突起28に当接する段部64を形成している。このアッパ突起63と段部64とによっても、背もたれ5の上部の前後位置と左右位置とが規定されている。
【0058】
なお、例えば図7に示すように、背インナーシェル16の背面には、表皮材18の周縁に取り付けたテープを嵌め混み係止するテープキャッチ66を周方向に沿って多数形成している。このテープキャッチ66の群は背アウターシェル12のサイドリブ23の内側に位置している。このため、背インナーシェル16はサイドリブ23の外側には露出しておらず、従って、美観を損なうことはない。
【0059】
本実施形態では、後部係合部51〜54は上下に離間して2組ずつ形成されているため、前部係合部47〜50を上下いずれかの後部係合部51〜54に選択して係合させることにより、背もたれ5を上下後部係合部51〜54の高さ寸法H(図6参照)だけ高さ変更(調節)することができる。すなわち、ローバックタイプをミドルバックタイプに変更したり、ミドルパックタイプをハイバックタイプに変更したりすることができる。
【0060】
本実施形態のように背支柱13に第2後部係合部52を設けると、背アウターシェル12に過大な負担が作用することを防止して高い体圧支持強度を確保できる利点がある。敢えて述べるまでもないが、本願発明は、背もたれの高さを変更できないタイプの椅子にも適用できる。また、背アウターシェルを背フレームに取り付けるための係合部の構造や位置などは必要に応じて任意に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明は椅子に具体化することができる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0062】
5 背もたれ
8 背フレーム
10 背フレームのリア部
11 背フレームの背支持部
12 背アウターシェル
13 背支持部の一部である背支柱
16 背インナーシェル
23 サイドリブ
24 ミドルリブ
25 ポケット部
29 後ろ係合部の一環である下部ストッパー
30 前係合部の一環であるストッパー穴
32 後ろ係合部の一環であるコーナー係合爪
33 前係合部の一環であるコーナー係合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座の後ろ側に配置した背支柱に背アウターシェルを取り付けており、背もたれを、前記背アウターシェルのみ又は背アウターシェルと背支柱とに取り付けている構成であって、
前記背アウターシェルの前面には前向きに突出したリブの群を突設しており、前記背支柱は前記リブで囲われた空間に収まるように配置されていると共に、前記背アウターシェルの前面には、前記背支柱の上部が下方から嵌まる下向き開口のポケット部を形成している、
椅子。
【請求項2】
前記座の下方には脚支柱の上端が嵌着するベースが配置されており、前記ベースに後傾動自在に連結された背フレームの後端に、左右方向に広がる略板状の背支持部が立ち上がっていてこの背支持部の左右両側部から前記背支柱が立ち上がっており、
更に、前記背アウターシェルの下部のうち左右中間部と左右両端部とに、前記背支持部と背フレームの左右後端部とに形成した前係合部に後ろから引っ掛かり係合する後ろ係合部を設けており、前記背もたれの後ろ係合部は、前記背支柱の上端部をポケット部に嵌めた状態で背もたれの下部を手前に押すことにより、弾性変形してから前記背アウターシェルの前係合部に係合するようになっている、
背もたれ1に記載した椅子。
【請求項3】
前記背支持部の前面には前向きに開口した上下長手の縦溝を形成している、
請求項1又は2に記載した椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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