説明

背面形状分類判定方法及び背面形状分類判定装置

【課題】判定対象の背面形状に対して所定の分類中最も的確な分類を客観的に判定することができる背面形状判定分類方法及びそれを用いて自動的に判定を行う背面形状分類判定装置を提供することにある。
【解決手段】背面形状分類判定装置1は、人体背面の凹凸を関数化した背面形状データを複数のクラスタに分けて記憶した背面形状データベースを構成する記憶部11と、判定対象の背面形状を測定して当該判定対象の背面の凹凸を関数化した背面形状データを取得する背面形状取得手段と、前記判定対象の背面形状データと前記複数のクラスタに含まれる背面形状データとの間の距離に基づいて前記判定対象の背面形状が属するクラスタを決定する判定手段としての機能を備えた演算処理部11と、分離判定に基づいてレポートを表示する表示部12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の背面形状を分類する背面形状分類判定方法及び背面形状分類判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体の背面形状を分類する方法としては、従来、所謂Staffelの分類法という方法がある。この方法は、人体の背面形状を視覚的、審美眼的観点から、S字型(脊柱が生理的に自然な湾曲をした形状)、平背型(首〜腰にかけて凹凸がなく平坦な形状)、凹背型(背中が凹んで臀部が突出した形状)、円背型(首〜腰にかけて丸く突出した形状)、凹円背型(S字型の各部の凹凸が大きい形状)の五種類に分類する方法である。
【0003】
また、視覚的分類を定量的に分類する方法もある。この方法は、図15(a)に示すような背面形状計測装置100を用いて、以下のような手順により背面形状を分類する方法である。
【0004】
尚背面形状計測装置100は、水平方向に変位可能なプローブ101を例えば上下方向に一定間隔を開けて複数備えたもので、図15(b)に示すように被測定者Mの背面にプローブ101を押し当てそのときのプローブ101の変位量によって図16に示す被測定者Mの背面正中線Xの形状を計測する。
【0005】
さて、この分類方法は、背面形状測定後、背面形状の凹凸部の度合い距離と角度などの特徴点を用いて関数近似し、その後近似関数の数値及び変曲点を算出し、背面形状に関する各種パラメータを導出し、このパラメータを基に、計数型樹木構成法など、各種統計的分類手法を用いて背面形状を分類する方法である。
【0006】
また人体の姿勢データを予め規定した姿勢パラメータに変換し、この姿勢パラメータを用いて行い、姿勢のゆがみを人体模式図に適用して視覚化して提示する姿勢診断方法等も提供されている(例えば特許文献1)
【特許文献1】特開2003−256568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のStaffelの分類法を用いる場合、分類者が背面形状を視覚的主観により分類したものであるため、分類基準が明確でないという問題があった。
【0008】
また、視覚的分類を定量的に分類する方法は、背面形状の凹凸部の距離と角度などの特徴点を用いているが、その距離と角度が背面形状の曲線近似関数から算出されたものであるため、特徴点算出時の誤差などにより情報量が低下する恐れがあった。また、被測定者の身長差などを考慮しておらず、精度の良い背面形状の判定を行うことができなかった。
【0009】
更に、分類後、S字型は理想とされているが、その他に分類された姿勢がどの程度理想から離れているか等の情報を得ることができず、またS字型と判定された場合においても頭が前方に出ていて理想的な姿勢には見えないという問題点もあった。
【0010】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、判定対象の背面形状に対して所定の分類中最も的確な分類を客観的に判定することができる背面形状判定分類方法及びそれを用いて自動的に判定を行う背面形状分類判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、請求項1の背面形状分類判定方法に係る発明では、判定対象の背面形状から人体背面の凹凸を関数化した背面形状データと、予め複数のクラスタに分けて背面形状データベースに記憶してある人体背面の凹凸を関数化した背面形状データとの距離に基づいて前記判定対象の背面形状が属するクラスタを判定することを特徴とする。
【0012】
請求項1の背面形状分類方法に係る発明によれば、判定対象の背面形状データと前記複数のクラスタに含まれる背面形状データとの距離により数値的に分類(クラスタ)を判定するので、その結果明確な基準で精度良く最も的確な分類を客観的に判定することできる。
【0013】
請求項2の背面形状分類判定装置に係る発明では、人体背面の凹凸を関数化した背面形状データを複数のクラスタに分けて記憶した背面形状データベースと、判定対象の背面形状を測定して当該判定対象の背面の凹凸を関数化した背面形状データを取得する背面形状取得手段と、前記判定対象の背面形状データと前記複数のクラスタに含まれる背面形状データとの間の距離に基づいて前記判定対象の背面形状が属するクラスタを決定する判定手段とを備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項2の背面形状分類判定装置に係る発明によれば、判定対象の背面形状データと前記複数のクラスタに含まれる背面形状データとの距離により数値的に分類(クラスタ)を判定するので、その結果明確な基準で精度良く最も的確な分類を客観的に自動的に判定することができる。
【0015】
請求項3の背面形状分類判定装置に係る発明では、請求項2の発明において、前記判定手段は、前記判定対象の背面形状データと前記各クラスタの背面形状データの代表値との距離を比較して距離が最小となるクラスタに属するように判定することを特徴とする。
【0016】
請求項3の背面形状分類判定装置に係る発明によれば、分類判定を高速に判定することができる。
【0017】
請求項4の背面形状分類判定装置に係る発明では、請求項2の発明において、前記判定手段は、前記判定対象の背面形状データと前記各クラスタの背面形状データの全てとの距離を比較して距離が最小となるクラスタに属するように判定することを特徴とする。
【0018】
請求項4の背面形状分類判定装置に係る発明によれば、クラスタの大きさやクラスタ内のデータ分散を考慮した判定を行うことができる。
【0019】
請求項5の背面形状分類判定装置に係る発明では、請求項2の発明において、前記判定手段は、各クラスタの背面形状データの代表値と、当該クラスタ内の各背面形状データとの距離に基づいて算出した分散度合いを表す指標により前記判定対象の背面形状データを除した値を比較して距離が最小となるクラスタに属するように判定することを特徴とする。
【0020】
請求項5の背面形状分類判定装置に係る発明によれば、少ない計算量でクラスタの大きさやクラスタ内のデータ分散を考慮した判定を行うことができる。
【0021】
請求項6の背面形状分類判定装置に係る発明では、請求項2の発明において、前記判定手段は、理想の背面形状を示す曲線と、前記判定対象の背面形状データとの距離に基づいて理想状態からの前記判定対象の背面形状の乖離状態を評価することを特徴とする。
【0022】
請求項6の背面形状分類判定装置に係る発明によれば、予め定められた理想の背面形状や、理想状態の背面形状を示す示すクラスタの代表値との間の距離を求めて理想の背面形状に対する判定対象の背面形状の乖離を評価することができる。
【0023】
請求項7の背面形状分類判定装置に係る発明では、請求項2の発明において、前記判定手段の判定結果を表示する表示部を備え、該表示部は、前記各クラスタの代表値間の距離に基づいて座標系に各クラスタを配置し、前記判定対象の背面形状をクラスタ間の距離に基づいて前記座標系内に表示することを特徴とする。
【0024】
請求項7の背面形状分類判定装置に係る発明によれば、各クラスタからどの程度離れているかということを表示部によってグラフ上に表示することができる。
【0025】
請求項8の背面形状分類判定装置に係る発明では、請求項7の発明において、前記表示部は、前記座標系の軸が背面形状についての特徴を示す指標と相関を持つように軸の設定を行うことを特徴とする。
【0026】
請求項8の背面形状分類判別測定装置に係る発明によれば、背面形状についてより見易く且つ理解し易いレポートとすることができる。
【0027】
請求項9の背面形状分類判定装置に係る発明では、請求項7の発明において、前記表示部は、前記座標系の軸が背面形状についての特徴を示す指標と相関を持つように軸を回転させることを特徴とする。
【0028】
請求項9の背面形状分類判定装置に係る発明によれば、クラスタ間の距離により乖離度合いを表現しつつ、軸に意味を持たせることができる。
【0029】
請求項10の背面形状分類判定装置に係る発明では、請求項2乃至9の何れかの発明において、前記背面形状は、頭頂部から臀部下端までを上限値及び下限値とするための拡大縮小を行う身長補正と、凹凸方向の基準値を一定にする立ち位置補正をしたものであることを特徴とする。
【0030】
請求項10の背面形状分類判定装置に係る発明によれば、精度の高い判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、判定対象の背面形状データと前記複数のクラスタに含まれる背面形状データとの距離により数値的に分類(クラスタ)を判定するので、その結果明確な基準で精度良く最も的確な分類を客観的に判定することでき背面形状分類判定方法を提供できるとともに、この背面形状分類判定方法を用いて分類分けが自動的にできる背面形状分類判定装置を提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下本発明の背面形状分類判定方法及びその装置を実施形態により説明する。
【0033】
(実施形態1)
図1に示す本実施形態の背面形状分類判定装置1は、マイクロコンピュータ等から構成され、演算処理とハードウェアの制御とを行う演算処理部10と、読み書き自在の記憶部11と、グラフィック表示が可能な表示部12と、インターネット等のネットワーク2上に存在する背面形状計測装置3で計測した判定対象の背面形状データや、データベース4に格納されている判定対象の背面形状のデータを外部から取得するための通信部13とを備えている。通信部13はネットワーク2からデータ取得を行わない場合は設けなくても良い。尚図1では演算処理部10と、記憶部11,表示部12,通信部13との間のインターフェースについては図示を省略している。
【0034】
さて、記憶部11は、判定処理を行うのに必要な人体背面の凹凸を関数化した背面形状データを複数のクラスタに分けて基本データ11aとしてデータベース(背面形状データベース)化して記憶する。この基本データ11aはユーザーにより容易に書き換え可能なものである。また他に、背面形状の分類の判断基準となる数値や後述する点数換算用のマトリクス表(表3参照)なども基本データ11aとして記憶する。
【0035】
更に記憶部11は、通信部13を介してネットワーク2上の背面形状計測装置3やデータベース4から対象となる背面形状の計測データを取得して記憶したり、或いは当該背面形状分類判定装置1に備えている入力手段(図示せず)を用いて入力された判定対象の背面形状の計測データや、解析対象とする範囲を定める始点(頭頂部)/終点(臀部下端)などのデータを計測データ11bとして記憶する。
【0036】
演算処理部10は、分類判定の演算処理のための機能として、判定対象の計測データと、複数のクラスタに分けた判断基準となる背面形状データとの距離を算出する距離演算機能10aと、距離演算機能10aで算出された距離データを基に、判定対象の背面形状データがどのクラスタに属するかを判定する判定処理機能10bと、両処理機能10a,10bの処理結果を受けて、2次元座標マップの座標の計算や姿勢点数の変換などの処理を行う出力用演算機能10cとを備えている。
【0037】
表示部12は、判定処理機能10bにより判定された結果や、出力用演算機能10cで算出された算出結果に基づいたレポートを後述するように表示する。
【0038】
次に本実施形態の背面形状分類判定装置1の分類判定の動作を図2に示すフローチャートに沿って説明する。
【0039】
まず、演算処理部10は、通信部13を通じてネットワーク2上の背面形状計測装置3やデータベース4から判定対象とする背面形状の計測データを取得するか、或いは記憶部11の計測データ11bから判定対象とする背面形状の計測データを取得する(S1)。
【0040】
ここで被測定者から判定対象の背面形状を計測する背面形状計測装置(ネットワーク2の背面形状計測装置3を含む)は、図15に示す背面形状計測装置100と同じものであって、例えば上下方向のプローブの数が例えば41本でその間隔を備え夫々のプローブの変位量(突出量)を出力するようになっている。尚ここではプローブ間隔を30mmとしたものを用いる。
【0041】
図3(a)は、各プローブ毎の突出量を示す計測データの一例であり、この計測データ値を、縦軸(y軸)にプローブの位置(Noで示す)を、横軸(x軸)に突出量(mm)としたグラフ化したものであり、このグラフの曲線が対象背面の曲線を示すことになる。
【0042】
ここで被測定者の身長や計測に用いる背面形状計測装置3に対する被測定者の立ち位置の違いなどを補正するために、事前処理S2を行う。
【0043】
この事前処理S2では、計測データとともに取得した解析対象とする範囲を定める始点(頭頂)/終点(臀部下端)のデータに基づいて計測データから始点から臀部下端の範囲の計測データのみを切り出す。図4(a)は切り出したプローブ毎の突出量を示し、図4(b)は切り出したデータをグラフ化したものを示す。
【0044】
この切り出し後、この切り出したデータを規定の長さ(y軸)に拡大又は縮小し、また横方向(突出量)についても拡大又は縮小することで、身長補正を行う。例えば100の長さで身長補正を行う場合には、y軸=(プローブNo−始点)/(100/(終点−始点))、突出量/(100/(終点−始点))と補正する。図5(a)はこの100で身長補正した後のプローブ毎の突出量を示し、図5(b)はそのデータをグラフ化したものを示す。
【0045】
この身長補正後、立ち位置の前後の誤差を補正するために身長補正したデータの中央値を0に持ってくるようにx軸処理を行う。この場合x軸=突出量−突出量の中央値という形で補正を行う。図6(a)は立ち位置補正後のプローブ毎の突出量を示し、図6(b)はそのデータをグラフ化したものを示す。
【0046】
さて、事前処理S2を終えたデータを用いて滑らかな曲線を得るための近似曲線を求める処理を行う(S3)。この処理S3では例えば9次関数近似を用いて近似式を求め、この近似式から予測値を求める。この予測値を以後の処理において判定対象の背面計測データとして用いる。尚被測定者毎に何次関数近似が最適かを、生の計測データ、又はスプライン近似曲線等との差を見て自動判断を行っても良い。
【0047】
ここまでが演算処理装置1の背面形状データ取得手段としての演算処理部10の機能の働きとなる。
【0048】
さてこの処理S3を終了した後、演算処理部10は距離演算機能10aによって、記憶部11から基本データ11aを読み出し、各クラスタの背面形状データと判定対象の背面形状データとの距離を演算し、この演算結果を用いて判定処理機能10bにより判定対象の背面形状データがどの分類(クラスタ)に所属するかを判定する(S4)。
【0049】
この場合、例えば記憶部11の基本データ11aから各クラスタに所属するn名の背面形状データにおけるx軸方向の平均値、又は中央値からなる各クラスタの代表値と、判定対象の背面形状データとの距離(ユークリッド距離、ユークリッド平方距離、市街地距離等)を算出し、距離が最も小さい分類(クラスタ)を選択する。
【0050】
図7は各クラスタ、例えばクラスタ”1”〜”4”の代表値(黒点で示す)と、判定対象のデータαとの距離のイメージを示しており、この図7の例ではクラスタ”3”が選択されることになる。
【0051】
次にクラスタを選択した後、距離演算機能10aにより、当該判定対象の背面形状と理想の背面形状との離れ値を算出する処理を行う(S5)。
【0052】
この処理では、基本データ11aとして登録されている理想の背面形状データ[最良のクラスタ(例えば近似直線の傾きが垂直に近く、凹凸の少ない形状)の代表値(当該クラスタに所属する所属するn名の背面形状データにおけるx軸方向の平均値、又は中央値)又は姿勢に関する研究者等の専門家から理想形状と認定された一個人の背面形状データ]と、判定対象の背面形状データとの距離(ユークリッド距離、ユークリッド平方距離、市街地距離等)を理想形状との差(離れ値)として算出する。この算出によって理想の背面形状に対する当該判定対象の背面形状の乖離状態を評価するのである。
【0053】
この算出後、演算処理部10は出力用演算機能10aによって背面形状データを2次元データに落とし、座標を算出するとともに、x軸に特徴となる指標との相関を持たせるために回転をかける処理を行って、マップ座標算出の処理を行う(S6)。
【0054】
この場合各クラスタの代表値(各クラスタに所属する所属するn名の背面形状データにおけるx軸方向の平均値、又は中央値)間の距離(ユークリッド距離、ユークリッド平方距離、市街地距離等)から座標を算出する。
【0055】
表1は、7分類(クラスタ)の中央値間のユークリッド平方距離を示しており、この表1に基づいて上述の座標の算出を詳説する。尚表の””内の数字はクラスタNoを示す。
【0056】
【表1】

【0057】
ここで、各クラスタ”1”〜”7”の位置Piを次のようにおく。
【0058】
P1:(x1,y1)
P2:(x2,y2)
P3:(x3,y3)
P4:(x4,y4)
P5:(x5,y5)
P6:(x6,y6)
P7:(x7,y7)
また、理想背面形状のクラスタであるクラスタ”2”の座標を(0,0)と定め、もう一点をクラスタ”1”とし、y座標を0に固定すると、三平方の定理より、以下の連立方程式が成り立つ。
【0059】
x3+y3=d23 …(1)
x4+y4=d24 …(2)
x5+y5=d25 …(3)
x6+y5=d26 …(4)
x7+y7=d23 …(5)
(x3−√d12)+y3=d13 …(6)
(x4−√d12)+y4=d14 …(7)
(x5−√d12)+y5=d15 …(8)
(x6−√d12)+y6=d16 …(9)
(x7−√d12)+y7=d17 …(10)
尚x、yの後ろの数字はクラスタNoを、またdは2点間の距離を示し、後ろの2つの数字は対応する2点のクラスタNoを夫々示す。
【0060】
さて、各クラスタ同士の距離dは、表1より明らかであるため、(1)〜(10)の連立方程式を解くと、全てのxとyが求まり、上記例では次のような座標が求められた。
【0061】
P1:(−1.1964,0)
P2:(0,0)
P3:(1.2862,0.76141)
P4:(2.1208,2.6698)
P5:(−0.67218,1.5764)
P6:(1.0087,1.9164)
P7:(0.24599,0.94683)
次に各クラスタの中央値の背面形状データにおける近似曲線の係数を求める。表2は求めた結果を示しており、この表2に示す係数は姿勢が後傾であればマイナス、前傾であればプラス、真っ直ぐに近ければ0に近い値となる。これによりx軸が傾きを表すとした場合は、クラスタ”2”とクラスタ”5”がy軸上にほぼ並ぶように位置すると言えることになる。
【0062】
【表2】

【0063】
図8は、クラスタ”1”〜”7”の2次元座標のプロットを示し、各黒点は求められた座標であって、夫々に付した数字はクラスタNoを示す。尚図中の実線の曲線は各クラスタの背面形状の曲線、破線は理想の背面形状の曲線を示す。
【0064】
ここで、例えば図9に示すようにクラスタ”5”の座標P5:(x5,y5)をx=0のy軸上に持ってくるには、座標P2を中心として時計方向に回転させれば良く、この回転角θは、θ=cos−1 (y5/√d25)と表すことができ、これを解くとθ=23.1°が求まる。
【0065】
そして回転後の座標P5’:(x5’,y5’)は、
x5’=x5cosθ−y5sinθ
y5’=x5sinθ−y5cosθ
となる。
【0066】
そして座標P2を中心としてその他の全ての座標P1〜P7を上述のように時計方向に23.1°回転させたときの、新しい座標P1’〜P7’は次のようになる。
【0067】
P1’:(−1.1005,0.46926)
P2’:(0,0)
P3’:(1.4818,0.19593)
P4’:(2.998,1.6242)
P5’:(0,1.7138)
P6’:(1.6795,1.3672)
P7’:(0.59764,0.77448)
図10(a)はこの回転後の座標をプロットしたものである。図10(b)は各クラスタ”1”〜”7”の回転後のx座標と近似直線との傾きがどの程度の相関があるかを見るために作成した散布図である。この散布図には正の相関が見られ、相関係数は0.998と非常に強い相関関数であることが分かる。
【0068】
同様にしてクラスタ”1”と、クラスタ”2”からの判定対象のデータに対する距離を用いて座標を求めることが可能である。
【0069】
上述のようにしてマップ座標の算出処理(S6)が終了したのち、演算処理部10は出力用演算機能10cにより、姿勢点数の算出処理を行う(S7)。
【0070】
この算出処理は、まず判定対象の背面形状データの近似曲線の傾きをx軸、S5で求めた理想からの離れ値(距離)をy軸とし、離れ値から、記憶部11に基本データ11aとして記憶している距離と姿勢点数の関係を示すマトリクス表(表3)を用いて姿勢点数を算出する。
【0071】
【表3】

【0072】
尚頭や腰、臀部などの部位別の項目毎に重み付けして点数を付けるようにしても良い。
【0073】
而して、演算処理部10は、判定処理機能10bでの分類(クラスタ)判定の結果や、出力用演算機能10cでの2次元座標や姿勢点数の算出結果に基づいて表示部12を通じてユーザーに提示するレポート排出の処理を行う(S8)。
【0074】
図11は表示部12で表示したレポートを示しており、図示するように被測定者の姿勢点数や被測定者の背面形状データの補正・近似後の背面形状と理想の背面形状を重ね表示しあり、被測定者の背骨に対する評価のコメント、Strffelによる分類結果、更に被測定者の姿勢(背面形状)を、各クラスタ間の距離に基づいて2次元座標系内で表示したり、更に各種コメントが表示される。
【0075】
このレポートを見た被測定者は自己の姿勢と理想の姿勢との離れ具合などが直感的に分かることになる。
【0076】
尚上述の座標の算出の代わりに、背面形状データの曲線の特徴となる指標を軸に対応付けた座標を算出するようにしても良い。
【0077】
つまり、この算出によれば、x軸、y軸が共に特徴となる指標と一致した座標を算出することができ、算出時間も短縮できる。
【0078】
この場合、例えは背面形状の近似直線の傾きをx軸とし、理想の背面形状とのユークリッド距離をy軸とする座標を算出するのである(尚背面形状の凹凸量などをy軸としても良い)。図12はこの算出した1000名分の座標をプロットした例を示しており、グレースケールの違いがクラスタの違いを示している。
(実施形態2)
本実施形態では、図2に示すフローチャートの判別の処理(S4)において、判定対象の背面形状のデータと各クラスタに属する全てのデータとの距離(ユークリッド距離、ユークリッド平方距離、市街地距離等)の平均を算出し、この平均値の最も小さい分類(クラスタ)を選択する点で実施形態1と相違する。
【0079】
例えば判定対象のデータと、あるクラスタ”N”に属する背面形状データとの距離をd1〜dnとしたとき、クラスタ”N”の該当データとの距離平均は、数1で示す式のように表せる。
【0080】
【数1】

【0081】
この距離平均値が最も小さい分類(クラスタ)を選択する判定を行うのある。図13はこの判定のイメージを示しており、該当データαと各クラスタ、例えば”1”〜”4”に属する各データ(黒点)との間の距離を求めてその平均値の最も小さい分類(クラスタ)を選択するのである。
【0082】
尚その他の構成や動作は実施形態1と同じであるので説明は省略する。
【0083】
而して本実施形態は、各分類(クラスタ)に属する全てのデータを用いることにより、各分類(クラスタ)の大きさや分散度合いなども考慮にいれた精度の良い判定を行うことができる。
(実施形態3)
本実施形態では、図2に示すフローチャートの判別の処理(S4)において、判定対象の背面形状のデータと各分類(クラスタ)の代表値(各クラスタに属するn名の背面形状データにおけるx軸の平均値又は中央値)と、その分類(クラスタ)に属する背面形状データとの距離平均で、判定対象データと各分離(クラスタ)の代表値の距離で除することにより、分布の大きさで規準化した指標を作成し、この指標が最も小さい分類(クラスタ)を選択する点で実施形態12と相違する。
【0084】
例えば分類(クラスタ)の代表値と、その分類(クラスタ)に属するデータとの距離平均をdm(このdmは予め記憶部1の基準データ11aとして記憶されているものとする)とし、判定対象データと分類(クラスタ)の代表値との距離をdとしたとき、判定対象データとそのクラスタとの基準化した指標は、
d/dm
で表すことができ、この指標が最も小さい分類(クラスタ)を選択する判定を行うのである。図14はこの判定のイメージを示しており、各クラスタ、例えば”1”〜”4”に属する各背面形状データ(小黒点)とその代表値(大黒点)との間の距離の平均値dmを求めるとともに、判定対象のデータαと各代表値との距離dを求めて上述のように指標を算出し、その指標が最も小さい分類(クラスタ)を選択するのである。
【0085】
尚その他の構成や動作は実施形態1と同じであるので説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施形態1の背面形状分類判定装置のブロック図である。
【図2】実施形態1の分類判定処理の動作説明用フローチャートである。
【図3】実施形態1に用いる判定対象の背面形状データ例図である。
【図4】実施形態1に用いる判定対象の背面形状データから切り出した後のデータ例図である。
【図5】実施形態1に用いる判定対象の背面形状データの身長補正後のデータ例図である。
【図6】実施形態1に用いる判定対象の背面形状データの立ち位置補正後のデータ例図である。
【図7】実施形態1の判定対象の背面形状データと各クラスタの代表値との距離を示すイメージ図である。
【図8】実施形態1の各クラスタの代表値の2次元座標のプロット例図である。
【図9】実施形態1の座標軸の回転設定の説明図である。
【図10】(a)は実施形態1の座標軸の回転設定後の2次元座標のプロット例図、(b)は実施形態1の各クラスタのx座標と近似直線の傾きの散布例図である。
【図11】実施形態1の表示部でのレポート表示例図である。
【図12】実施形態1の座標の別の算出法によって算出された結果の2次元座標のプロット例図である。
【図13】実施形態2における分類判定に用いる各クラスタの代表となる背面形状データの値とクラスタ内の背面形状データとの距離を示すイメージ図である。
【図14】実施形態3における分類判定に用いる判定対象の背面形状データと各クラスタ内の各背面形状データとの距離を示すイメージ図である。
【図15】(a)は背面形状計測装置の側面図、(b)は背面形状計測装置を用いて計測中の状態を示す側面図である。
【図16】人体背面の背面正中線の説明図である。
【符号の説明】
【0087】
1 背面形状分離判定装置
10 演算処理部
10a 距離演算機能
10b 判定処理機能
10c 出力用演算機能
11 記憶部
11a 基本データ
11b 計測データ
12 表示部
13 通信部
2 ネットワーク
3 背面形状計測装置
4 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
判定対象の背面形状から人体背面の凹凸を関数化した背面形状データと、予め複数のクラスタに分けて背面形状データベースに記憶してある人体背面の凹凸を関数化した背面形状データとの距離に基づいて前記判定対象の背面形状が属するクラスタを判定することを特徴とする背面形状分類判定方法。
【請求項2】
人体背面の凹凸を関数化した背面形状データを複数のクラスタに分けて記憶した背面形状データベースと、判定対象の背面形状を測定して当該判定対象の背面の凹凸を関数化した背面形状データを取得する背面形状取得手段と、前記判定対象の背面形状データと前記複数のクラスタに含まれる背面形状データとの間の距離に基づいて前記判定対象の背面形状が属するクラスタを決定する判定手段とを備えていることを特徴とする背面形状分類判定装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記判定対象の背面形状データと前記各クラスタの背面形状データの代表値との距離を比較して距離が最小となるクラスタに属するように判定することを特徴とする請求項2記載の背面形状分類判定装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記判定対象の背面形状データと前記各クラスタの背面形状データの全てとの距離を比較して距離が最小となるクラスタに属するように判定することを特徴とする請求項2記載の背面形状分類判定装置。
【請求項5】
前記判定手段は、各クラスタの背面形状データの代表値と、当該クラスタ内の各背面形状データとの距離に基づいて算出した分散度合いを表す指標により前記判定対象の背面形状データを除した値を比較して距離が最小となるクラスタに属するように判定することを特徴とする請求項2記載の背面形状分類判定装置。
【請求項6】
前記判定手段は、理想の背面形状を示す曲線と、前記判定対象の背面形状データとの距離に基づいて理想状態からの前記判定対象の背面形状の乖離状態を評価することを特徴とする請求項2記載の背面形状分類判定装置。
【請求項7】
前記判定手段の判定結果を表示する表示部を備え、該表示部は、前記各クラスタの代表値間の距離に基づいて座標系に各クラスタを配置し、前記判定対象の背面形状をクラスタ間の距離に基づいて前記座標系内に表示することを特徴とする請求項2記載の背面形状分類判定装置。
【請求項8】
前記表示部は、前記座標系の軸が背面形状についての特徴を示す指標と相関を持つように軸の設定を行うことを特徴とする請求項7記載の背面形状分類判定装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記座標系の軸が背面形状についての特徴を示す指標と相関を持つように軸を回転させることを特徴とする 請求項7記載の背面形状分類判定装置。
【請求項10】
前記背面形状は、頭頂部から臀部下端までを上限値及び下限値とするための拡大縮小を行う身長補正と、凹凸方向の基準値を一定にする立ち位置補正をしたものであることを特徴とする請求項2乃至9の何れかの1項に記載の背面形状分類判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−178605(P2008−178605A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15450(P2007−15450)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】